第1節 家族の姿の変化・人生の多様化

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第1節 家族の姿の変化・人生の多様化

この節では、結婚と家族の現状について、婚姻関係の変化、家族の姿の変化から整理を行い、人生の多様化と課題について概観する。

1 結婚と家族の現状

(1) 婚姻関係の変化

(結婚・離婚・再婚件数の推移)

結婚・離婚・再婚件数の推移を見ると、第1次ベビーブーム世代3が20代前半の年齢を迎えた昭和45(1970)年は、婚姻件数は約100万件、離婚件数は約10万件だった。婚姻件数は、昭和47(1972)年にピーク4となった後は減少し、第2次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた平成7(1995)年~平成12(2000)年に再び一時的に増加5し、その後は減少傾向となり、近年(平成27(2015) 年~ 令和元(2019) 年) は、約60万件で推移していた。離婚件数は、戦後最も少なかった昭和36(1961)年6以降変動しつつ増加傾向をたどり、近年(平成27(2015) 年~ 令和元(2019) 年) は、約20万件と、婚姻件数の約3分の1で推移していた。コロナ下の令和2(2020)年以降は、婚姻件数は、令和2(2020)年52.6万件、令和3(2021)年51.4万件(速報値)7と、戦後最も少なくなり、離婚件数は、令和2(2020) 年19.3万件、令和3(2021) 年18.8万件(速報値)7となっている(特-1図)。

全婚姻件数に占める再婚件数の割合は1970年代以降増大傾向にあり、令和2(2020)年の再婚件数は13.9万件と、婚姻の約4件に1件が再婚となっている。再婚件数に占める夫妻の初婚―再婚の組み合わせ別割合を見てみると、令和2(2020)年は、夫再婚―妻再婚は5.2万件(37.3%)、夫再婚―妻初婚は5.0万件(36.3%)、夫初婚―妻再婚は3.7万件(26.4%)と、「夫妻とも再婚」が最も多い(特-2図)。

特-1図 婚姻・離婚・再婚件数の年次推移別ウインドウで開きます
特-1図 婚姻・離婚・再婚件数の年次推移

特-1図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-2図 夫妻の初婚―再婚の組合せ別再婚件数・割合(令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
特-2図 夫妻の初婚―再婚の組合せ別再婚件数・割合(令和2(2020)年)

特-2図[CSV形式:1KB]CSVファイル

3ベビーブームとは、赤ちゃんの出生が一時的に急増することをいう。日本では、第2次世界大戦後、2回のベビーブームがあった。第1次ベビーブームは昭和22(1947)年から昭和24(1949)年、第2次ベビーブームは昭和46(1971)年から昭和49(1974)年である。第1次ベビーブーム世代は「団塊の世代」、第2次ベビーブーム世代は「団塊ジュニア」と呼ばれている(内閣府「平成27年版少子化社会対策白書」)。

4昭和47(1972)年の婚姻件数は、109万9,984件(厚生労働省「人口動態統計」)。

5平成5(1993)年から平成13(2001)年は、おおむね79万件台で推移(厚生労働省「人口動態統計」)。

6昭和36(1961)年の離婚件数は、6万9,323件(厚生労働省「人口動態統計」)。

7令和3(2021)年の数値は、日本における外国人等を含む速報値。

(配偶関係別の人口構成比)

昭和55(1980)年と令和2(2020)年の配偶関係別の人口構成比を見ると、この40年間で、男女ともに「未婚」と「離別」の割合が大幅に増加している。30歳時点の未婚割合は、女性は11.3%(1980年)から40.5%(2020年)へ、男性は31.1%(1980年)から50.4%(2020年)にそれぞれ増加している。50歳時点で「未婚」「離別」「死別」により配偶者のいない人の割合は、昭和55(1980)年時点では、女性約2割、男性1割未満だったものの、令和2(2020)年には約3割となっている。この内訳を見ると、女性は、未婚15.8%、離別10.2%、死別1.4%、男性は、未婚24.6%、離別5.7%、死別0.5%である(特-3図)。

特-3図 配偶関係別の人口構成比(男女別)の変化別ウインドウで開きます
特-3図 配偶関係別の人口構成比(男女別)の変化

特-3図[CSV形式:16KB]CSVファイル

50歳時の未婚割合8を見ると、昭和55(1980)年時点では、男女ともに非常に低く(女性4.45%、男性2.60%)、男性と比較して女性の方がやや高かった。しかし、平成2(1990)年以降、男性の50歳時の未婚割合が急上昇しており、女性を大きく上回り続けている。令和2(2020)年の50歳時の未婚割合は、女性は17.81%であり、50歳の女性の約6人に1人は結婚経験がない。男性は28.25%となり、50歳の男性の約4人に1人は結婚経験がない(特-4図)。

特-4図 50歳時の未婚割合別ウインドウで開きます
特-4図 50歳時の未婚割合

特-4図[CSV形式:1KB]CSVファイル

845~49歳の未婚割合と50~54歳の未婚割合の平均値。

(2) 家族の姿の変化

(世帯の家族類型別構成割合)

家族の姿の変化を見てみると、昭和55(1980)年時点では、全世帯の6割以上を「夫婦と子供(42.1%)」と「3世代等(19.9%)」の家族が占めていた。令和2(2020)年時点では、「夫婦と子供」世帯の割合は25.0%に、「3世代等」世帯の割合も7.7%に低下している一方で、「単独」世帯の割合が38.0%と、昭和55(1980)年時点の19.8%と比較して2倍近く増加している。また、子供のいる世帯が徐々に減少する9中、「ひとり親と子供」世帯は増加し、令和2(2020)年に「3世代等」世帯の数を上回っている(特-5図)。

特-5図 家族の姿の変化別ウインドウで開きます
特-5図 家族の姿の変化

特-5図[CSV形式:1KB]CSVファイル

世帯の家族類型別構成割合の推移を見ると、「単独」世帯の割合は、平成27(2015)年に34.5%と全世帯の3分の1を超え、その後も上昇すると推計されている。昭和55(1980)年に42.1%と、4割を超えていた「夫婦と子供」の世帯は、平成27(2015)年は26.9%と、全世帯の約4分の1にまで減少し、その後も減少すると推計されている(特-6図)。

特-6図 世帯の家族類型別構成割合の推移別ウインドウで開きます
特-6図 世帯の家族類型別構成割合の推移

特-6図[CSV形式:1KB]CSVファイル

9児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯の推移を見ると、昭和61(1986)年17,364千世帯(全世帯に占める割合46.2%)、令 和元(2019)年11,221千世帯(同21.7%)となっている(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。

コラム1 平均値と最頻値考察~「平均初婚年齢」と「初婚年齢の最頻値」の間には3歳から4歳の差~

2 人生の多様化

昭和の時代(戦後)、女性の人生は、最終学歴卒業後、結婚するまで就業、もしくは就業せずに家事手伝いをし、結婚して専業主婦になる、または家族従業者として農業や家業に携わることが多く、昭和35(1960)年、50歳時点で結婚経験のある女性は約98%10であり、社会の制度・慣行は、多くの場合、これを前提としたものとなっていた。

現在は、結婚と家族の姿が変化・多様化する中で、女性の人生も多様化している。令和2(2020)年、50歳時点で有配偶の女性は69.3%であり、配偶者のいない人の内訳は、前述のとおり、未婚15.8%、離別10.2%、死別1.4%となっている。結婚せずに未婚のまま単独世帯となる女性、親と暮らしている女性、結婚後、離死別により、ひとり親もしくは単独世帯となる女性、離死別後、再婚し有配偶となる女性等、様々である。

男性の人生についても、最終学歴卒業後、雇用者として就業し、結婚後は、家庭のことは専業主婦の妻に任せ、仕事にまい進した昭和の時代、例えば、昭和55(1980)年は、50歳時点での有配偶の男性は94.1%だったが、令和2(2020)年は64.2%と変化してきている(特-3図再掲)。

1045~49歳と50~54歳の未婚割合の平均(1.9%)から算出(総務省「国勢調査」)。

(1) 専業主婦の減少

「雇用者の共働き世帯11」数と「男性雇用者と無業の妻から成る世帯(いわゆるサラリーマンの夫と専業主婦の世帯)12」数の推移を見てみると、「雇用者の共働き世帯」は増加傾向にある一方、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は減少傾向となっており、令和3(2021)年では、「雇用者の共働き世帯」は1,177万世帯、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は458万世帯となり、夫婦のいる世帯全体13の23.1 % となっている(特-7図)。

特-7図 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)別ウインドウで開きます
特-7図 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)

特-7図[CSV形式:2KB]CSVファイル

「雇用者の共働き世帯」について、妻の働き方別に見ると、妻がフルタイム労働(週35時間以上就業)14の世帯数は、昭和60(1985)年以降、400~500万世帯と横ばいで推移しており、令和3(2021)年に486万世帯となっている一方、妻がパートタイム労働(週35時間未満就業)の世帯数は、昭和60(1985)年以降、約200万世帯から約700万世帯へ増加しており、令和3(2021)年に691万世帯となっている(特-8図)。

特-8図 共働き等世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)別ウインドウで開きます
特-8図 共働き等世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)

特-8図[CSV形式:2KB]CSVファイル

「子供がいる世帯」の、妻の就業状態別割合の変化について、平成17(2005)年と令和3(2021)年で比較すると、平成17(2005)年時点では、どの年齢階級においても全体に占める割合が最も高かった非労働力人口(専業主婦15)の割合が、令和3(2021)年では減っており、全体の約20~30%となっている。一方、妻がパートタイム労働(週35時間未満就業)の割合は増加しており、令和3(2021)年では全体の約40~45%と、全体に占める割合が最も高くなっている。妻がフルタイム労働(週35時間以上就業)の割合は横ばいとなっており、令和3(2021)年では全体の20~30%となっている。共働き世帯は増えているが、増加の大宗は、女性のパートタイム労働の増加によるものと考えられる(特-9図)。

特-9図 夫婦と子供から成る世帯の妻の就業状態別割合(妻の年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-9図 夫婦と子供から成る世帯の妻の就業状態別割合(妻の年齢階級別)

特-9図[CSV形式:1KB]CSVファイル

有配偶の非正規雇用労働者の女性では、所得が50~99万円の者の57.5%、所得が100~149万円の者の54.4%が、収入を一定の金額以下に抑えるために就業時間や日数を調整する「就業調整」をしていると回答している(特-10図)。この就業調整が、女性の所得が低い要因の一つとなっており、有業の既婚女性16の約6割は、年間所得が200万円未満である(特-11図)。

特-10図 就業調整をしている非正規雇用労働者の女性の数・割合(配偶関係、所得階級別)(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-10図 就業調整をしている非正規雇用労働者の女性の数・割合(配偶関係、所得階級別)(平成29(2017)年)

特-10図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-11図 所得階級別有業者割合(男女、配偶関係、年齢階級別)(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-11図 所得階級別有業者割合(男女、配偶関係、年齢階級別)(平成29(2017)年)

特-11図[CSV形式:3KB]CSVファイル

女性が就業調整を行う背景として、昭和の時代に創設された各種制度や企業による家族手当の存在が指摘されている。

我が国の社会保障制度は、1960年代の高度経済成長期以降に、右肩上がりの経済成長と低失業率、正規雇用・終身雇用の男性労働者と専業主婦と子供という核家族モデル、充実した企業の福利厚生、人々がつながりあった地域社会を背景として、国民皆保険・皆年金を中心に形作られた17。しかし、前述のとおり、令和2(2020)年時点で、「単独」世帯と「ひとり親と子供」世帯の数は「夫婦と子供」世帯の2倍近くとなっている。また、有配偶世帯の中でも共働き世帯が増加傾向にある。現在の社会保障や税制の前提とされていた男性労働者と専業主婦と子供という家族の姿は年々減少しており、夫が就業、かつ妻が非就業、かつ子供が18歳未満の世帯は、昭和55(1980) 年は857万世帯、令和2(2020)年は218万世帯となっている18

社会経済情勢が変化する中で、税制については、平成29(2017)年税制改正において、配偶者控除が満額適用される配偶者の給与収入を103万円から150万円に引き上げ、同時に納税者本人に配偶者控除の適用を受けるための所得制限を設ける見直しを実施している。また、社会保障制度については、段階的に短時間労働者への被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大を進めており、平成28(2016)年に従業員500人超規模の企業への適用拡大を行った。今後は、令和4(2022)年10月から従業員100人超規模、令和6(2024)年10月から50人超規模の企業への拡大を予定している。

一方、家族手当を支給している企業は減少傾向にあるが、依然として令和3(2021)年時点で企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所の約4分の3が家族手当を支給しており、さらにそのうち約4分の3が配偶者に家族手当を支給している。配偶者に家族手当を支給している企業のうち、配偶者の収入による制限がある企業は86.7%で、その多くが103万円(45.4%)又は130万円(36.9%)といった、いわゆる「年収の壁」と連動した収入制限を設けている(特-12図)(特-13図)。

特-12図 関連制度の変遷別ウインドウで開きます
特-12図 関連制度の変遷

特-13図 家族手当の支給状況及び配偶者の収入による制限の状況別ウインドウで開きます
特-13図 家族手当の支給状況及び配偶者の収入による制限の状況

特-13図[CSV形式:1KB]CSVファイル

このように、税制、社会保障制度、企業の配偶者手当といった制度・慣行が、女性を専業主婦、または妻は働くとしても家計の補助というモデルの枠内にとどめている一因ではないかと考えられる。これまでの種々の制度の見直しにもかかわらず、就業調整をしている非正規雇用労働者の女性が多いことを踏まえると、更なる取組が必要である。

また、夫の所得階級別の妻の有業率を見ると、夫の所得階級が高くなるほど妻の有業率が低くなり、特に夫が30~39歳かつ子供のいる世帯でその傾向が顕著である。これは、社会保障制度等の昭和の時代の制度が、高所得者層に恩恵を与えている一例である。背景には、依然として、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」といった固定的性別役割分担意識が残っており、影響を与えていると考えられる(特-14図)。

特-14図 夫の所得階級別の妻の有業率(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-14図 夫の所得階級別の妻の有業率(平成29(2017)年)

特-14図[CSV形式:1KB]CSVファイル

11妻が64歳以下。

12妻が64歳以下。

13夫婦のいる世帯全体(妻64歳以下)は、1,984万世帯(総務省「労働力調査」)。

14ここでは、週35時間以上就業をフルタイム労働、週35時間未満就業をパートタイム労働とする。これは、総務省「労働力調査」において、追加就労希望就業者について、1就業者である、2週35時間未満の就業時間である、3就業時間の追加を希望している、4就業時間の追加ができる、と定義していることを参考にした。

15平成17(2005)年は完全失業者、令和3(2021)年は失業者を含む。

16ここでの「既婚」とは、配偶関係「総数」から「未婚」を除いたものを指し、「死別・離別」「不詳」を含む。

17平成24年版「厚生労働白書」を参照。

18総務省「国勢調査」より。

(2) ひとり親の増加

子供のいる世帯は徐々に減少している19が、ひとり親世帯20は昭和63(1988)年から平成28(2016) 年までの約30年間に102.2万世帯(母子世帯数84.9万世帯、父子世帯数17.3万世帯)から141.9万世帯(母子世帯数123.2万世帯、父子世帯数18.7万世帯)へと増加しており、母子世帯で見ると約1.5倍、父子世帯で見ると約1.1倍となっている。また、平成28(2016)年のひとり親世帯における母子世帯の割合は、86.8%となっている(特-15表)(特-16図)。

特-15表 ひとり親世帯の状況別ウインドウで開きます
特-15表 ひとり親世帯の状況

特-15表[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-16図 母子世帯数及び父子世帯数の推移別ウインドウで開きます
特-16図 母子世帯数及び父子世帯数の推移

特-16図[CSV形式:1KB]CSVファイル

ひとり親世帯の世帯構成を見ると、父子世帯の場合、55.6%が父子以外の同居人と生活している一方で、母子世帯の場合は、61.3%が母子のみで生活している(特-17図)。

特-17図 ひとり親世帯の世帯構成別ウインドウで開きます
特-17図 ひとり親世帯の世帯構成

特-17図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、母子世帯、父子世帯ともに、長期的には、死別の割合が低下しており、平成28(2016)年は、母子世帯の約8割、父子世帯の約4分の3が、離婚によりひとり親世帯となっている21

離婚等で母子世帯になった女性の、母子世帯になった時の状況を見ると、30~39歳が48.4%と最も多く、続いて、20~29歳が28.8%、40~49歳が19.4%となっている。また、離婚等で母子世帯になった時の子供(末子)の年齢は、45.7%が0~2歳、22.7%が3~5歳と、7割近くに5歳以下の未就学の子供がいる(特-18図)(特-19図)。

特-18図 ひとり親世帯になった時の親の年齢別ウインドウで開きます
特-18図 ひとり親世帯になった時の親の年齢

特-18図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-19図 ひとり親世帯になった時の末子の年齢別ウインドウで開きます
特-19図 ひとり親世帯になった時の末子の年齢

特-19図[CSV形式:1KB]CSVファイル

離婚等で父子世帯になった男性の、父子世帯になった時の状況を見ると、30~39歳が43.0%と最も多く、続いて、40~49歳が31.2%、20~29歳が15.4%となっている。また、離婚等で父子世帯になった時の子供(末子)の年齢は、30.1%が3~5歳、24.0%が0~2歳と、5割以上に5歳以下の未就学の子供がいる。

母子世帯では、母親の81.8%は働いており、国際的に見て就業率は高い。しかしながら、雇用者のうち、非正規雇用労働者の割合は52.3%と高く、平均年間就労収入が200万円と、一般世帯の女性(293万円)と比べて低くなっている。また、離婚した元夫から養育費を受け取っていない世帯は全体の約4分の3となっている(特-15表再掲)。

子供がいる現役世帯のうち、大人が一人の世帯(ひとり親世帯)と全世帯の等価可処分所得22の分布を比較すると、平成30(2018)年では、ひとり親世帯の多くは貧困線(等価可処分所得の中央値の半分、平成30(2018)年は127万円)近くに分布しており、「大人が一人」の世帯員の「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は48.1%と、全体の15.4%を大きく上回っている(特-20図)。内閣府の調査23によると、現在の暮らしの状況について「苦しい」又は「大変苦しい」と回答した割合は、ひとり親世帯では51.8%、母子世帯では53.3%と、ふたり親世帯(21.5%)の2倍以上であった(特-21図)。

特-20図 全世帯とひとり親世帯の等価可処分所得の分布別ウインドウで開きます
特-20図 全世帯とひとり親世帯の等価可処分所得の分布

特-20図[CSV形式:2KB]CSVファイル

特-21図 現在の暮らしの状況について別ウインドウで開きます
特-21図 現在の暮らしの状況について

特-21図[CSV形式:1KB]CSVファイル

19児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯の推移を見ると、昭和61(1986)年17,364千世帯(全世帯に占める割合46.2%)、令和元(2019)年11,221千世帯(同21.7%)となっている(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。

20母子世帯:父のいない児童(満20歳未満の子供であって、未婚の者)がその母によって養育されている世帯。父子世帯:母のいない児童がその父によって養育されている世帯(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」)。

21厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」より。

22世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整した所得(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。

23内閣府「子供の生活状況調査の分析報告書」(令和3年12月)。

(3) 単独世帯の増加

単独世帯数(年齢階級別)を見ると、20歳以上の女性の単独世帯数は、昭和55(1980)年は288万世帯(うち未婚は134万世帯)であったが、令和2(2020)年は902万世帯(うち未婚は312万世帯)と3.1倍(うち未婚は2.3倍)となっている。20歳以上の女性の全ての年齢階級で増加しているが、とりわけ、配偶者と死別し、単独世帯となっている70歳以上の高齢女性24の増加幅が大きい。

20歳以上の男性の単独世帯は、昭和55(1980)年は358万世帯(うち未婚は277万世帯)、令和2(2020)年は944万世帯(うち未婚は464万世帯)と2.6倍(うち未婚は1.7倍)となっている。男性の場合は、30歳以上の年齢階級で増加しているが、特に40歳以上の未婚による単独世帯が増加している(特-22図)。

特-22図 単独世帯数(年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-22図 単独世帯数(年齢階級別)

特-22図[CSV形式:2KB]CSVファイル

世帯主が就業している単独世帯とそれ以外の世帯の所得の分布を見る。就業している単独世帯の女性と男性を比べると、世帯所得300万円未満の世帯は、女性は53.3%、男性は31.9%と、女性の割合が高く、単独世帯以外の世帯の女性と男性を比べてみても、世帯所得300万円未満の世帯は、女性は36.3%、男性は8.4%と女性の割合が高い。また、単独世帯もそれ以外の世帯も、女性の場合は200~299万円に分布が集中している(特-23図)。

特-23図 世帯主が就業している世帯の所得分布(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-23図 世帯主が就業している世帯の所得分布(平成29(2017)年)

特-23図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、女性有業者のうち単身者(未婚)の約2割(23.9%)は、世帯所得が200万円未満となっている(特-24図)。

特-24図 女性有業者のうち単身者(未婚)の世帯所得分布(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-24図 女性有業者のうち単身者(未婚)の世帯所得分布(平成29(2017)年)

特-24図[CSV形式:1KB]CSVファイル

さらに、近年、コロナ下で人とのつながりが希薄になりがちな中、孤独・孤立化が社会問題として注目されている。孤独感を年齢階級別に見ると男女ともに20~30代で大きく、配偶者の有無別では男女ともに未婚者・離別者で大きい。また、同居人の有無別では、同居人なしの単身男性で大きくなっており、さらに、年齢階級別に見ると、女性は30代、男性は50代で大きくなっている(特-25図)25。60歳以上の人の近所の人とのつきあいの程度を世帯タイプ別に見ると、単独世帯の男性においては、「あいさつをする程度」が半数以上であり、「つきあいはほとんどない」と回答する割合も他より高い(特-26図)。

特-25図 孤独感別ウインドウで開きます
特-25図 孤独感

特-25図 孤独感(続き)別ウインドウで開きます
特-25図 孤独感(続き)

特-25図[CSV形式:6KB]CSVファイル

特-26図 近所の人とのつきあいの程度別ウインドウで開きます
特-26図 近所の人とのつきあいの程度

特-26図[CSV形式:1KB]CSVファイル

東京都監察医務院26が公表しているデータによると、東京都区部における一人暮らしの人の自宅での死亡者数は、令和元(2019)年は、女性は約1,700人、男性は約3,900人となっている(特-27図)。

特-27図 東京都区部における年齢階級別の孤独死数の推移別ウインドウで開きます
特-27図 東京都区部における年齢階級別の孤独死数の推移

特-27図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、要因に「孤独感」がある自殺者は、男性の方が多く、男女ともコロナ下で増加している。女性は80歳以上が最も多く、男性は20歳以上の年齢階級でおおむね同じくらいの人数となっている(特-28図)。

特-28図 年齢階級別自殺者数(要因が孤独感)別ウインドウで開きます
特-28図 年齢階級別自殺者数(要因が孤独感)

特-28図[CSV形式:1KB]CSVファイル

24施設等に入っている高齢女性は含まれない。

25孤独という主観的な感情をより的確に把握するため、1直接質問と、2間接質問により孤独感の把握を試みている(内閣官房孤独・孤立対策担当室「人々のつながりに関する基礎調査(令和3年)」)。

26東京都監察医務院では、死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている。

3 家事・育児・介護参画に対する意識、介護の担い手の変化

家族の姿が変化してきている中、家族内で、主に女性によって行われてきた家事・育児・介護に対する意識、介護の担い手の変化について見てみる。

(1) 家事・育児参画に対する意識

(家事)

家事に関して、男女とも、若い世代ほど、「配偶者と半分ずつ分担したい」と希望する割合が高い傾向にあり、特に20~30代男性の7割以上が妻と半分ずつの分担を希望している。他方で、女性の2~3割が、「自分の方が配偶者(夫)より多く分担したい」と希望しており、30代以上の男性の2~3割も「配偶者(妻)の方が自分より多く分担してほしい」と希望している(特-29図)27

特-29図 家事・育児・介護参画に対する意識(性別、年齢別)別ウインドウで開きます
特-29図 家事・育児・介護参画に対する意識(性別、年齢別)

特-29図[CSV形式:4KB]CSVファイル

(育児)

育児に関しては、20代の女性、20~30代の男性の7割以上が、「配偶者と半分ずつ分担したい」と希望している。他方で、女性の2~4割が、「自分の方が配偶者(夫)より多く分担したい」と希望しており、30代以上の男性の2~3割も「配偶者(妻)の方が自分より多く分担してほしい」と希望している。

以上のとおり、家事・育児等に関する役割分担については、若い世代の男性ほど妻と半分ずつ分担したいという希望が多い。特に、20代、30代の男性では7割を超えており、男子も中学校、高等学校で家庭科を学んだ世代であり、1990年代からの家庭科共修の教育の成果とも考えられる。

しかしながら、現実には、共働き世帯でも、夫の家事・育児関連時間は極端に短く、妻が正社員で子供が小さいときでも、夫の家事・育児関連時間は妻に比べて相当短いという実態がある(特-30図)。特に、国際比較をすると、日本の男性の労働時間は長い一方、家事・育児などの無償労働時間は女性に大きく偏っており、固定的役割分担が顕著に表れている(特-31図)。

特-30図 夫婦の仕事時間、家事・育児関連時間(末子の年齢別)/共働き世帯(平成28(2016)年)別ウインドウで開きます
特-30図 夫婦の仕事時間、家事・育児関連時間(末子の年齢別)/共働き世帯(平成28(2016)年)

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特-31図 男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較)別ウインドウで開きます
特-31図 男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較)

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このように希望と現実が大きくかい離している背景には、様々な要因が考えられるが、男性に多くみられる長時間労働の問題や職場や周囲の理解に加え、父親が育児に参画しにくい環境があると考えられる。内閣府が実施した調査及び意見募集で、父親の育児参画を阻んでいる身近な問題について意見を募集したところ28、例えば、幼稚園・保育園などでは、母親にしか園から連絡が来ない、「お母さんに伝えてください」と言われてしまうなど、父親のやる気をくじくような場合があること、また、保護者会が平日午後に開催されるので参加できない、PTAや授業参観に参加するのが母親ばかりのため、父親が行きづらい雰囲気があるといった指摘もあった。また、公共交通機関や商業施設などの男性用トイレにおむつ交換台やベビーチェアが設置されていないという意見も多く寄せられた。男性の育児参画を促進するためには、こうした身近な慣行等の見直しや施設の整備など、一つ一つ着実に取り組んでいく必要がある。

27ここでは、18~29歳の回答を「20代」としている。

28内閣府の「仕事と子育て等の両立を阻害する慣行等調査」において、仕事と子育て等の両立を阻害したり、父親の育児参画を阻む身近な慣行等について、事例を収集・分析した。具体的には、インターネットモニターを対象に、個人オンライン調査(令和3(2021)年12月23日~28日)を実施し、さらに、主に子育て中の一般の方を対象に、「幼稚園・保育園・認定こども園」、「小学校・学童保育」、「習い事・課外教室」等の具体的な場面における子育てに関する困りごとと、それを乗り越える工夫等について、意見募集(令和4(2022)年1月18日~28日)を実施した。

(2) 介護の担い手の変化

介護の分担に関する希望を尋ねると、20~60代の男女とも6~8割が、「配偶者と半分ずつ分担したい」と希望している。他方で、30代以上の女性の2~3割が、「自分の方が配偶者(夫)より多く分担したい」と希望しており、50代以上の男性の約2割が、「配偶者(妻)の方が自分より多く分担してほしい」と希望している(特-29図再掲)。

実際の介護の担い手について、同居の家族介護者に占める義理の娘の割合は、この20年間で大きく低下する一方、夫・息子の介護者が増加している。特に介護する息子の増加幅が大きい(特-32図)。また、介護をしている者について、年齢階級別に有業率をみると、男性は45~49歳が88.0%と最も高く、次いで55~59歳(87.8%)となっている(特-33図)。

特-32図 介護の担い手別ウインドウで開きます
特-32図 介護の担い手

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特-33図 介護をしている者の有業率(男女別、年齢階級別)(平成29(2017)年)別ウインドウで開きます
特-33図 介護をしている者の有業率(男女別、年齢階級別)(平成29(2017)年)

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実際に介護に直面する中高年世代は、介護をする段階になって、初めて主体的に家事をする場合もあり、仕事との両立等の課題に直面し、ストレスから虐待につながる可能性もある(特-34図)。

特-34図 被虐待高齢者から見た虐待者の続柄別ウインドウで開きます
特-34図 被虐待高齢者から見た虐待者の続柄

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コラム2 歴史考察~昭和より前の時代の、我が国の家族を取り巻く状況~