特集 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~

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特集 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は、男女ともに大きいが、特に女性の就業や生活への影響は甚大である。飲食・宿泊業等をはじめ、女性の就業者が多いサービス業を直撃し、非正規雇用労働者を中心に雇用情勢が急速に悪化したほか、女性の自殺者数が急増した。DV(配偶者暴力)相談件数の増加や、女性の貧困の問題等が可視化され、令和3年版「男女共同参画白書」で明らかにしたとおり、我が国において男女共同参画が進んでいなかったことが改めて顕在化した1。こうした問題の背景には、ひとり親世帯や単独世帯の増加等、家族の姿が変化しているにもかかわらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、様々な政策や制度等が、依然として戦後の高度成長期、昭和時代のままとなっていることが指摘されている2。例えば、男女間の賃金格差を見ると、同じ正社員でも年齢とともに男女間の賃金格差が拡大する傾向があり、また、平均的に見ると、大卒女性の正社員の給与は高卒男性とほぼ同水準である。

他方、今や、女性の半数は90歳以上まで生きる。平均寿命は女性87.71歳、男性81.56歳であるが、死亡年齢最頻値は女性93歳、男性88歳であり、100歳を超える人は、令和2(2020)年時点で女性69,757人、男性9,766人となっている。まさに人生100年時代といえる。

もはや昭和ではない。昭和の時代、多く見られたサラリーマンの夫と専業主婦の妻と子供、または高齢の両親と同居している夫婦と子供という3世代同居は減少し、単独世帯が男女全年齢層で増加している。人生100年時代、結婚せずに独身でいる人、結婚後、離婚する人、離婚後、再婚する人、結婚(法律婚)という形を取らずに家族を持つ人、親と暮らす人、配偶者や親を看取った後ひとり暮らしをする人等、様々であり、一人ひとりの人生も長い歳月の中でさまざまな姿をたどっている。このように家族の姿は変化し、人生は多様化しており、こうした変化・多様化に対応した制度設計や政策が求められている。

第1節、第2節では、家族の姿の変化と人生の多様化、結婚と家族を取り巻く状況について、政府統計を中心とした各種統計データ及び内閣府で実施した意識調査等を中心に整理した上で、実態とかい離した制度・慣行、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を含む固定的な性別役割分担意識等に基づく構造的な問題に起因する課題を明らかにし、第3節で、人生100年時代における男女共同参画の課題について考察する。

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コロナ下の女性への影響

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男女間賃金格差

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男女の寿命

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1コロナ下の女性への影響については、令和3年版「男女共同参画白書 特集(コロナ下で顕在化した男女共同参画の課題と未来)」、内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書~誰一人取り残さないポストコロナの社会へ~」(https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/covid-19/index.html)で分析している。

2内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」にて指摘。

特集のポイント


第1節 家族の姿の変化・人生の多様化

  • 近年(平成27(2015)年~令和元(2019)年)は、婚姻件数は約60万件で推移。離婚件数は、約20万件と、離婚件数は婚姻件数の約3分の1で推移。
  • コロナ下の令和2(2020)年以降は、婚姻件数は、令和2(2020)年52.6万件、令和3(2021)年51.4万件(速報値)と、戦後、最も少なくなった。
  • 昭和55(1980)年と令和2(2020)年の配偶関係別の人口構成比を見ると、この40年間で、男女ともに「未婚」と「離別」の割合が大幅に増加。
  • 30歳時点の未婚割合は、令和2(2020)年時点で、女性は40.5%、男性は50.4%。
  • 50歳時点で「未婚」「離別」「死別」により配偶者のいない人の割合は、令和2(2020)年時点では男女ともに約3割。
  • 「雇用者の共働き世帯」は増加傾向にある一方、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は減少傾向。
  • 昭和55(1980)年から令和2(2020)年にかけて、20歳以上の女性の単独世帯は3.1倍(うち未婚は2.3倍)、男性の単独世帯は2.6倍(うち未婚は1.7倍)に増加。
  • 就業している単独世帯の女性と男性を比べると、世帯所得300万円未満の世帯は、女性は53.3%、男性は31.9%と、女性の割合が高い。単独世帯もそれ以外の世帯も、女性の場合は200~299万円に分布が集中している。

第2節 結婚と家族を取り巻く状況

  • 「配偶者、恋人はいない(未婚)」との回答は、男女ともに、全世代で2割以上。特に20代の女性の約5割、男性の約7割が、「配偶者、恋人はいない(未婚)」と回答。
  • 「配偶者(法律婚)がいる」と回答した人は、女性は20代で約2割、30代で約6割、40代以降で約7割。男性は20代で14%、30代で約5割、40代以降で6~8割。
  • 20代の独身者では、女性の方が男性よりも「結婚意思あり」の割合が高いが、40代以降は、女性は割合が減る一方、男性の場合は、40~60代も2~4割が結婚願望を持っている。
  • 「結婚意思なし」との回答をしたのは、女性は20代で14.0%、30代で25.4%、男性は20代で19.3%、30代で26.5%。
  • 積極的に結婚したいと思わない理由について、独身の男女で比較すると、女性の場合、5割前後となっている項目は、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」、「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」。男女間で差があり、女性の方が高いものは、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」、「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」など。男性の方が高いものは、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」。
  • 令和2(2020)年に、別居し離婚した人の別居を開始した年齢は、男女ともに30代が最も多く(女性32.5%、男性30.3%)、続いて40代(女性27.5%、男性28.8%)、20代(女性21.4%、男性15.8%)。
  • 50代女性は19.4%、60代女性は18.4%、50代男性は13.3%、60代男性は12.9%が離婚経験がある。50~60代の現在独身の人に着目すると、女性は約半数が離婚経験があり、男性は半数以上がこれまで一度も結婚していたことはない。
  • 将来、「離婚可能性あり」と回答した人は、男女ともに約15%。
  • 40~50代の男女について、既婚者と独身者(居住形態別)の個人年収を見てみると、独身女性で個人年収300万円未満(収入なし含む)なのは、「一人暮らし」が約5割、「親と同居」が約6割。独身男性では、「700万円台以上」の割合が既婚者と比較して低い。

第3節 人生100年時代における男女共同参画の課題

  • 人生100年時代を迎え、日本の家族と人々の人生の姿は多様化し、昭和の時代から一変。
  • 今後、男女共同参画を進めるに当たっては、常にこのことを念頭におき、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指すとともに、幅広い分野で制度・政策を点検し、見直していく必要がある。
  • 長い人生の中で経済的困窮に陥ることなく、尊厳と誇りをもって人生を送ることができるようにするために優先的に対応すべき事項。
    1. 女性の経済的自立を可能とする環境の整備
    2. 世帯単位から個人単位での保障・保護/無償ケア労働を担っている人への配慮
    3. 早期からの女性のキャリア教育
    4. 柔軟な働き方を浸透させ、働き方をコロナ前に戻さない
    5. 男性の人生も多様化していることを念頭においた政策