はじめに 平成28年度を振り返って

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第1部 平成28年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

はじめに 平成28年度を振り返って

1 女性活躍推進法等による女性活躍の加速

「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月閣議決定。以下「第4次基本計画」という。)においては,女性も男性も全ての個人が,互いにその人権を尊重し,喜びも責任も分かち合いつつ,性別に関わりなく,その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現を目指している。第4次基本計画では,男性中心型労働慣行等の変革,あらゆる分野における女性の参画拡大,困難な状況に置かれている女性への支援,男女共同参画の視点からの防災・復興対策,女性に対する暴力の根絶に向けた取組の強化,国際的な規範・基準の尊重,地域における推進体制の強化を改めて強調している。

平成28年4月には,女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し,もって男女の人権が尊重され,かつ,急速な少子高齢化の進展,国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とする女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が,全面施行された。同法で,事業主行動計画の策定・届出等が義務付けられた常用労働者301人以上の一般事業主(民間企業等)について,行動計画の届出率が99.9%(29年3月末現在)と,円滑に施行が行われている。併せて,28年度から,国の調達において,女性活躍推進法に基づくえるぼし認定等を取得したワーク・ライフ・バランス等推進企業を総合評価落札方式等で加点評価する取組を開始し,独立行政法人等での実施や努力義務となっている地方公共団体で国に準じた取組が行われるよう働きかけを行った。また,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会や民間企業等の各種調達においても,国と同様の取組が進むよう働きかけを行っている(第2章第1節第3章第4節参照)。

また,働き方改革は日本経済再生に向けて,最大のチャレンジと位置付けられている。働き方改革は,働く人の視点に立って,労働制度の抜本改革を行い,企業文化や風土を変えようとするものであり,改革の目指すところは,働く方一人ひとりが,より良い将来の展望を持ち得るようにすることである。平成28年9月以降「働き方改革実現会議」が開催され,時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正,同一労働同一賃金の実現などによる非正規雇用の処遇改善,女性・若者が活躍しやすい環境整備等についての議論を経て,29年3月に「働き方改革実行計画」が取りまとめられた(第2章第1節参照)。

若年層を対象とした暴力の多様化を踏まえ,男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会において取りまとめた「若年層を対象とした性的な暴力の現状と課題~いわゆる『JKビジネス』及びアダルトビデオ出演強要の問題について~」の提言を踏まえ,平成29年3月に,男女共同参画担当大臣を議長とし,関係府省の部局長を構成員として設置された「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する関係府省対策会議」において,同月末,進学,就職等に伴い若者の生活環境が大きく変わる時期である,同年4月を「AV出演強要・『JKビジネス』等被害防止月間」と位置付け,政府一体となって必要な取組を緊急かつ集中的に実施する緊急対策を取りまとめた(第8章第4節2参照)。

2 男女共同参画に関わりの深い制度改革の動き

平成28年度は,女性の就業調整等につながる可能性のある税制・社会保障制度等の見直しが進められた(第2章第5節参照)。税制については,29年3月に所得税法(昭和40年法律第33号)等が改正され,配偶者控除等について,配偶者の収入制限を103万円から150万円に引き上げるなどの見直しが行われた(30年1月施行)。社会保障制度については,28年10月から,大企業で働く短時間労働者を対象に被用者保険の適用拡大が実施され,また,同年12月には,公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律(平成28年法律第114号。以下「年金改革法」という。)が成立し,中小企業等で働く短時間労働者についても,労使合意を前提に,企業単位で適用拡大の途が開かれた(29年4月施行)。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当については,平成28年11月に一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)が改正され,段階的に配偶者に係る手当額を他の扶養親族と同額まで減額するなどの見直しを行うこととされた(29年4月施行)。

仕事と育児等の両立支援については,平成29年3月に育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)が改正され,保育所に入れない等の場合に最長で子が2歳に達するまで育児休業を延長できることとされた(29年10月施行。第4章第1節2参照)。

女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けては,平成28年12月にストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号。以下「ストーカー規制法」という。)が改正され,規制対象行為が拡大されるとともに,罰則が引き上げられた(29年1月施行。第8章第3節参照)。また,強姦罪の構成要件及び法定刑の見直し等を内容とする「刑法の一部を改正する法律案」が,29年3月に第193回通常国会に提出された(第8章第4節1参照)。

3 国際的な動向への対応

2016(平成28)年に我が国が議長を務めたG7伊勢志摩サミットでは,女性分野を優先アジェンダの一つとして取り上げ,首脳宣言に,質の高い教育や訓練等を通じた女性の能力開花を支援し,そのための「G7行動指針」を支持すること,科学や技術,工学,数学分野における女性の進出を促進するために「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」を立ち上げること,女性に対するあらゆる暴力への対応強化にコミットすること等が盛り込まれた。男女共同参画と女性の活躍を全ての政策分野で反映する「主流化」の重要性は,2015(平成27)年9月に国連で策定された持続可能な開発目標(SDGs)で明記され,SDGs策定後,初めてとなるG7サミット開催国として,その趣旨を体現するため,首脳会合のみならず,全ての関連閣僚会合で女性活躍を議題として取り上げ,女性の活躍推進に向けたイニシアティブを主導した。同年6月,ペルーのリマで開催されたアジア太平洋経済協力(以下「APEC」という。)女性と経済フォーラムには,内閣府大臣政務官及び民間からの代表者等が参加した。また,女性が輝く社会を実現するための取組の一環として,3回目となる国際女性会議WAW!2016(World Assembly for Women)を2016(平成28)年12月に開催した。さらに,我が国が主導し,アジア各国の閣僚に参加を呼び掛けて,2006(平成18)年に東京で第1回会合を開催した,東アジア初の男女共同参画担当大臣会合である「東アジア男女共同参画担当大臣会合」と,「東アジア家族に関する大臣フォーラム」とを統合し,新たに発足した「東アジア家族・男女共同参画担当大臣フォーラム」の第1回会合が2016(平成28)年12月,タイ・バンコクで開催され,我が国から,男女共同参画・女性活躍担当大臣が参加した(第13章第2節5参照)。

我が国は,SDGsに係る施策を推進するため,2016(平成28)年5月に,内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置した。同年12月,同推進本部において決定された「SDGs実施指針」においては,ジェンダー平等の実現及びジェンダー視点の主流化をSDGsの全てのゴールの実現に不可欠なものとして位置付けている(第13章第2節1参照)。