特集 新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて~

本編 > 1 > 特集 > 第1節 働き方や就業に関する意識の変遷、家事・育児等・働き方の現状と課題

第1節 働き方や就業に関する意識の変遷、家事・育児等・働き方の現状と課題

この節では、働き方や就業に関する意識の変化を世代別に整理した上で、家事・育児等・働き方の現状と課題について概観する。

1. 働き方や就業に関する意識の変遷

社会・経済情勢は人々の働き方や意識にも影響を与える。とりわけ、考え方や意識は心身が発達する子供の頃に大きく形作られるため、育った時代の社会・経済情勢がその後の働き方や意識に与える影響は大きいと考えられる。そこで、男女雇用機会均等法施行の昭和61(1986)年を1つの軸として、施行20年前の昭和41(1966)年、10年前の昭和51(1976)年、施行時の昭和61(1986)年、そして、施行後15年の平成13(2001)年生まれの4つの世代を例に取り、どのような社会・経済情勢の中で育ってきたかを考察する。

まず、昭和41(1966)年生まれは、幼少期に高度成長を体感し、安定成長期の中で成長し、20歳でバブル経済を迎え、25歳でバブル経済崩壊を経験している。昭和51(1976)年生まれは、中学卒業頃まで安定成長期の中で過ごし、進学、就職の時期に景気が著しく悪化した、いわゆる「就職氷河期世代3」である。昭和61(1986)年生まれは、物心がついた頃にはバブル経済が崩壊し、日本経済が停滞する中で育っている。同時に、男女雇用機会均等法が施行された年に誕生しており、男女共同参画に関する法整備と共に育ってきた世代でもある。平成13(2001)年生まれは、物心がついてから成人するまでに、リーマン・ショックという世界的な金融危機や、東日本大震災、コロナ感染拡大といった人々の生活を大きく変えるような出来事を経験してきた世代であり、意識が大きく変化している可能性がある。また、生まれる前に男女雇用機会均等法、中学生の頃に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が施行されており、男女共同参画に関する意識が最も高い世代でもあると考えられる。

このように、世代によって、育ってきた社会・経済情勢は大きく異なり、働き方や意識も影響を受けていると考えられる。以下では、世代別の働き方や就業に関する意識の変化を概観する(特-1図)。

特-1図 社会・経済情勢の変遷別ウインドウで開きます
特-1図 社会・経済情勢の変遷

特-1図[CSV形式:3KB]CSVファイル

3第4回就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム(令和4(2022)年5月12日開催)資料1では、「いわゆる就職氷河期世代についての明確な定義は存在しないが、おおむね平成5(1993)年~平成16(2004)年に学校卒業期を迎えた者を指し、浪人・留年等を経験していない場合、令和4(2022)年4月現在、大卒でおおむね40~51歳、高卒でおおむね36~7歳である。」とされている。

(働き方・収入の変化)

25~34歳、35~44歳、45~54歳の男女の、平成14(2002)年、平成24(2012)年、令和4(2022)年時点での働き方を見ると、どの年齢階級においても女性の就業率は上昇してきており、結婚や出産を契機に仕事を辞める人は減ってきていると考えられる(特-2図)。このことは、女性の年齢階級別労働力人口比率にも表れている。かつて、女性の年齢階級別労働力人口比率は25~29歳及び30~34歳を底とするM字カーブを描いていたが、令和4(2022)年ではカーブが浅くなり、台形に近づいている(特-3図)。しかしながら、女性は35~44歳以上で、若い年代(25~34歳)と比べて非正規雇用割合が上昇する傾向は直近でも変わらない。男性について見てみると、どの年齢階級も就業率は9割前後で推移している。非正規雇用割合は、女性と比較すると低いが、平成24(2012)年に、特に25~34歳の若い年代で10年前と比べて増加し、その後横ばいで推移している(特-2図再掲)。

特-2図 年代別男女の働き方の変化別ウインドウで開きます
特-2図 年代別男女の働き方の変化

特-2図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-3図 女性の年齢階級別労働力人口比率の推移別ウインドウで開きます
特-3図 女性の年齢階級別労働力人口比率の推移

特-3図[CSV形式:1KB]CSVファイル

収入を見ると、女性の平均給与(実質)は男性と比較して低いが、この30年間、おおむね横ばいで推移している。一方、男性の平均給与(実質)は、平成4(1992)年頃までは上昇傾向にあったが、それ以降は減少傾向にある。特に35~44歳、45~54歳の男性の平均給与(実質)の減少幅が大きく、令和3(2021)年の35~44歳、45~54歳の男性の平均給与(実質)は、平成12(2000)年の9割程度となっている(特-4図)。

特-4図 平均給与(実質)の推移(男女別、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-4図 平均給与(実質)の推移(男女別、年齢階級別)

特-4図[CSV形式:5KB]CSVファイル

令和4(2022)年の二人以上世帯のうち勤労者世帯4の1か月間の勤め先収入(実質)は、平成12(2000)年と比較して増加しているにもかかわらず、世帯主収入は減少、世帯主の配偶者の収入の占める割合が増加しており、片働きでは、以前と同じ収入を維持できなくなってきている状況がうかがえる(特-5図)。

特-5図 1世帯当たり1か月間の勤め先収入と消費支出の推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯(世帯主の年齢60歳未満))別ウインドウで開きます
特-5図 1世帯当たり1か月間の勤め先収入と消費支出の推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯(世帯主の年齢60歳未満))

特-5図[CSV形式:2KB]CSVファイル

4世帯主の年齢60歳未満。

(就業継続に関する意識の変化)

続いて、20~29歳、30~39歳、40~49歳の男女の、平成12(2000)年、平成21(2009)年、令和元(2019)年時点での女性の就業継続に関する意識を比較する。「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考える男女の割合はどの年齢階級でも増加傾向にあり、特に女性の方がそのように考える割合が大きい。また、女性の中でも年齢階級が高い方がそのように考える傾向があり、令和元(2019)年時点では、20~29歳の57.7%、30~39歳の68.4%、40~49歳の73.7%が「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と回答している。さらに、平成12(2000)年時点で20~29歳の30.3%、平成21(2009)年時点で30~39歳の47.0%、令和元(2019)年時点で40~49歳の73.7%が「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と回答しており、同じ世代でも、年齢が上がるにつれて、そのように考える傾向が強くなる。逆に、「子供が大きくなったら再び職業を持つ方がよい」と考える割合は、どの年齢階級でも減少傾向にある。

なお、令和4(2022)年においても、20~29歳の女性の約6割、30~49歳の女性の約7割が「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と回答している5(特-6図)。

特-6図 年代別女性の就業継続に関する意識の変化別ウインドウで開きます
特-6図 年代別女性の就業継続に関する意識の変化

特-6図[CSV形式:2KB]CSVファイル

5令和4(2022)年調査から、調査方法が個別面接聴取法から郵送法に変更となり、選択肢も一部変更となっているため、過去の調査結果との比較はできない(内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」)。

2. 1日の時間の使い方、家事・育児等・働き方の現状

(1) 1日の時間の使い方、家事・育児等の現状

前述のとおり、時代の変遷とともに働き方・収入や意識が変わってきているが、男女別の1日の時間の使い方のデータを見ると、現在でも有償労働(仕事)時間が男性、無償労働(家事関連)時間が女性に大きく偏っている(特-7図)。男性の家事関連時間は少しずつ増加しており、長期的には家事関連時間の妻の分担割合は減っているものの、令和3(2021)年時点で、6歳未満の子供を持つ妻・夫の家事関連時間の妻の分担割合を見ると、妻が無業(専業主婦)の場合は家事関連時間の84.0%、有業(共働き)であっても77.4%を妻が担っている(特-8図)。

特-7図 1日の時間の使い方(週全体平均)(令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-7図 1日の時間の使い方(週全体平均)(令和3(2021)年)

特-7図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-8図 6歳未満の子供を持つ妻・夫の家事関連時間及び妻の分担割合の推移(週全体平均)別ウインドウで開きます
特-8図 6歳未満の子供を持つ妻・夫の家事関連時間及び妻の分担割合の推移(週全体平均)

特-8図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、生活時間の国際比較を行うと、我が国においては、諸外国に比べて男性の有償労働時間が極端に長く、無償労働時間が極めて短いことが特徴であり、このことが我が国の女性の社会での活躍、男性の家庭や地域での活躍を阻害する一因になっていると考えられる(特-9図)(特-10図)。

特-9図 無償労働時間と有償労働時間の状況(週全体平均)(1日当たり、国際比較)別ウインドウで開きます
特-9図 無償労働時間と有償労働時間の状況(週全体平均)(1日当たり、国際比較)

特-9図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-10図 男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較)別ウインドウで開きます
特-10図 男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較)

特-10図[CSV形式:1KB]CSVファイル

コラム1 生活時間の国際比較

(2) 働き方の現状

ここでは、男女間の働き方の違いについて見ていく。

(第1子出産後の就業継続)

前述のとおり、かつて、我が国の女性は出産後に退職する場合が多く、女性の年齢階級別労働力人口比率は、25~29歳及び30~34歳を底とするM字カーブを描いていた(特-3図再掲)。しかしながら、女性活躍推進法や働き方改革関連法6に基づく企業の取組、保育の受け皿整備、両立支援等、これまでの官民の積極的な取組により、年々、第1子出産後も就業継続する女性は増加しており、直近では、第1子出産前有職者の約7割が就業を継続している(特-11図)。

特-11図 子供の出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴別ウインドウで開きます
特-11図 子供の出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴

特-11図[CSV形式:1KB]CSVファイル

別調査7でも、第1子について、母親が有職である割合を見ると、令和2(2020)年度は、第1子全体の62.9%と、前回(平成27(2015)年度)の45.8%から17.1%ポイント上昇している。第2子及び第3子以上の母親が有職である割合も、第2子で57.7%(前回39.7%)、第3子以上で54.7%(前回38.4%)と、それぞれ、前回より上昇している。

しかし、従業上の地位別に第1子出産後の就業継続率を見ると、「正規の職員」及び「自営業主・家族従業者・内職」の就業継続率は8割を超えているのに対し、「パート・派遣」の就業継続率は約4割にとどまっており、雇用形態別に見ると大きな差がある(特-12図)。

特-12図 第1子出産前有職者の就業継続率別ウインドウで開きます
特-12図 第1子出産前有職者の就業継続率

特-12図[CSV形式:2KB]CSVファイル

6正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。

7厚生労働省「人口動態職業・産業別統計」。

(雇用形態)

女性は男性と比較して正規雇用比率が低く、令和4(2022)年の雇用者の雇用形態別の割合を男女別に見ると、女性雇用者の半分以上が非正規雇用労働者となっている一方で、男性雇用者の約8割が正規雇用労働者となっている。非正規雇用労働者全体の男女比を見ると、男性よりも女性の割合が大きく、産業別に見ると、女性雇用者の割合が大きい「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「卸売業、小売業」において、非正規雇用労働者の割合も大きい(特-13図)。また、年齢階級別の正規雇用8比率を見ると、男性は20代後半から50代までは7割を超えているものの、女性は25~29歳の60.0%をピークに低下し、年齢の上昇とともに下がる、L字カーブを描いている(特-14図)。出産を契機に働き方を変える、もしくは一旦退職し、子供が大きくなったら非正規雇用労働者として再就職する場合が多いと考えられる。

特-13図 産業別雇用者の雇用形態別割合(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-13図 産業別雇用者の雇用形態別割合(令和4(2022)年)

特-13図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-14図 年齢階級別労働力人口比率の就業形態別内訳(男女別、令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-14図 年齢階級別労働力人口比率の就業形態別内訳(男女別、令和4(2022)年)

特-14図[CSV形式:2KB]CSVファイル

8「役員」と「正規の職員・従業員」の合計。

非正規雇用労働者の現在の雇用形態に就いている理由を見ると、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」が一番多い(女性34.5%、男性31.2%)が、女性の場合は「家計の補助・学費等を得たいから」(22.1%)、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」(15.4%)が続き、上記3つの理由の合計が約7割となっている。なお、年齢階級別に見ると、35~44歳の女性の約3割、25~34歳、45~54歳の女性の約2割が「家事・育児・介護等と両立しやすいから」としている(特-15図)。

特-15図 現在の雇用形態に就いている理由(非正規雇用労働者)(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-15図 現在の雇用形態に就いている理由(非正規雇用労働者)(令和4(2022)年)

特-15図[CSV形式:2KB]CSVファイル

別調査9でも、女性は、パートタイムを選んだ理由として、「家庭の事情(育児・介護等)で正社員として働けないから」と回答する割合が男性と比べて大きい(女性18.0%、男性4.3%)(特-16図)。また、パートタイムを選んだ理由の男女差を年齢階級別に見ると、女性の場合、「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」「勤務時間・日数が短いから」「家庭の事情(育児・介護等)で正社員として働けないから」「就業調整(年収の調整や労働時間の調整)ができるから」と回答する割合が男性と比較して大きい年齢階級が多い。対して、男性の場合は、女性と比較して、「専門的な知識・技能を活かせるから」「正社員として採用されなかったから」を理由として挙げる割合が大きい年齢階級が多い(特-17図)。

特-16図 現在の就業形態を選んだ理由(パートタイム)別ウインドウで開きます
特-16図 現在の就業形態を選んだ理由(パートタイム)

特-16図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-17図 現在の就業形態を選んだ理由(女性と男性の差、パートタイム)別ウインドウで開きます
特-17図 現在の就業形態を選んだ理由(女性と男性の差、パートタイム)

特-17図[CSV形式:1KB]CSVファイル

これらのことにより、女性と男性では非正規雇用労働者として働くことを選択する理由が異なり、女性は、正規雇用労働者として働くことと家事・育児等を両立させることに課題を感じ、非正規雇用労働者として働くことを選択している場合が多いことが分かる。

9厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」。

(育児休業の取得・各種両立支援制度の利用状況)

育児休業取得率の推移を見ると、男性の育児休業取得率はここ数年で上昇しており、令和3(2021)年度の男性の育児休業取得率は民間企業で13.97%、国家公務員で34.0%、地方公務員で19.5%となったものの、8割を超えている女性の取得率(民間企業85.1%、国家公務員104.2%、地方公務員100.6%)と比較すると、依然として大きな差がある(特-18図)。

特-18図 育児休業取得率の推移別ウインドウで開きます
特-18図 育児休業取得率の推移

特-18図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、育児休業取得期間を見ると、男女間で大きな差がある。令和3(2021)年度の民間企業の男性の育児休業取得期間は、約半数が2週間未満、約9割が3か月未満であり、平成24(2012)年度と比較すると長期化しているものの、約8割が10か月以上取得している女性と比較して、短期間の取得となっている。国家公務員、地方公務員においても同様の傾向が見られ、国家公務員の男性の育児休業承認期間は、約7割が1か月以下である一方で、女性の場合は、約8割が9か月を超えている。地方公務員においても、男性の育児休業承認期間は約半数が1か月以下である一方、女性の場合は約9割が9か月を超えている(特-19図)。なお、民間企業の事業所規模・産業別の育児休業者割合を見ると、事業所規模が大きい方が、男性の育児休業取得率が高く、産業別に見ると、「金融業、保険業」が40.64%と最も高い。一方、女性雇用者の割合が大きい「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」については、女性の育児休業取得率が最も低い(特-20図)。

特-19図 育児休業取得期間別ウインドウで開きます
特-19図 育児休業取得期間

特-19図[CSV形式:2KB]CSVファイル

特-20図 事業所規模・産業別育児休業者割合(民間企業、令和3(2021)年度)別ウインドウで開きます
特-20図 事業所規模・産業別育児休業者割合(民間企業、令和3(2021)年度)

特-20図[CSV形式:1KB]CSVファイル

さらに、民間企業における、育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度の利用状況を見ると、育児の場合に利用できるフレックスタイム制度やテレワーク(在宅勤務等)は男性の利用率も比較的高いが、短時間勤務制度や所定外労働の制限など、勤務時間を制限する制度は「女性のみ利用者有り」の事業所が9割以上である(特-21図)。

特-21図 育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度の利用状況(民間企業、令和3(2021)年度)別ウインドウで開きます
特-21図 育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度の利用状況(民間企業、令和3(2021)年度)

特-21図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(妊娠・出産前との仕事の変化)

末子の妊娠・出産前との仕事の変化を見ると、正規雇用労働者の女性は「帰宅時間を配慮されるようになった」(33.4%)の割合が最も大きく、「労働時間が短くなった」(32.6%)がこれに続く。非正規雇用労働者の女性の場合は「特に変化はない」(36.6%)の割合が最も大きく、「労働時間が短くなった」(24.9%)がこれに続く。その一方で、男性の場合は約7割が「特に変化はない」としている(特-22図)。

特-22図 末子の妊娠・出産前との仕事の変化別ウインドウで開きます
特-22図 末子の妊娠・出産前との仕事の変化

特-22図[CSV形式:1KB]CSVファイル

これらのことから、子供が生まれたことにより、仕事との向き合い方を変え、仕事の時間を制限するのは、男性と比べて女性が多く、共働きでも性別役割分業を行っている夫婦が多いと考えられる。両立支援制度等の充実により、女性が第1子出産後も就業継続を行うことが可能となったが、両立支援制度の利用者が女性に偏れば、「家事・育児等は女性が担うもの」といった性別役割分業を固定化することにつながる可能性がある点には注意が必要である。

コラム2 女性活躍の3つのステージ ~資生堂の働き方改革と21世紀職業財団の調査結果より~

(労働時間)

令和4(2022)年の「雇用者の共働き世帯10」数は1,191万世帯と、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯(いわゆるサラリーマンの夫と専業主婦の世帯)11」数(430万世帯)の3倍近くとなっている。しかし、現在でも、有償労働時間が男性、無償労働時間が女性に偏る背景の一つには、高度成長期に確立された、長時間労働や転勤等を当然とする働き方を前提とした雇用慣行の存在の影響もあると考えられる。

男女の労働時間を見ると、週間就業時間49時間以上及び60時間以上の就業者の男性の割合は減少傾向にあるが、令和4(2022)年時点で、男性就業者の約2割が週間就業時間49時間以上、約1割が週間就業時間60時間以上となっており、女性と比較すると高い水準となっている(特-23図)。年代別に見ると、働き盛りと言われる30代後半から50代前半について、男性の場合は、週間就業時間49時間以上及び60時間以上の就業者の割合が他の年代と比較して大きくなっているのに対し、女性の場合は、子育て期と重なることもあり、下の年代と比較して小さくなっている(特-24図)。

特-23図 週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合の推移別ウインドウで開きます
特-23図 週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合の推移

特-23図[CSV形式:5KB]CSVファイル

特-24図 年齢階級別週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-24図 年齢階級別週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合(令和4(2022)年)

特-24図[CSV形式:1KB]CSVファイル

10妻が64歳以下。

11妻が64歳以下。

(平均帰宅時刻)

特に子育て期の女性の労働時間が短い一方で、男性の労働時間が長いことは、平均帰宅時刻にも反映されている。ライフステージ別の仕事からの平均帰宅時刻を見ると、17時台以前に帰宅する女性の割合は独身女性で約3割であり、独身期の男女の平均帰宅時刻には大きな差は無い。一方、子供のいない有配偶女性は約5割、子育て期の有配偶女性は約7割が17時台以前に帰宅しており、有配偶になると、子供の有無にかかわらず、女性の平均帰宅時刻は早くなる傾向にある。特に子育て期の有配偶女性の平均帰宅時刻が一番早いが、男性においては、子育て期の有配偶男性の平均帰宅時刻が一番遅い。なお、子育て期のひとり親の女性の平均帰宅時刻は子育て期の有配偶女性よりも遅く、ひとり親の男性の平均帰宅時刻は子育て期の有配偶男性よりも早い傾向にある(特-25図)。

特-25図 ライフステージ別仕事からの帰宅時刻(平日、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-25図 ライフステージ別仕事からの帰宅時刻(平日、令和3(2021)年)

特-25図[CSV形式:1KB]CSVファイル

末子の年齢が6歳未満の妻・夫の平日の主な行動の平均時刻を見てみると、妻の就業の有無・就業形態にかかわらず、夫の仕事からの平均帰宅時刻は19:40頃となっており、夕食開始平均時刻は仕事からの帰宅の平均時刻とほぼ同じ、もしくは、わずかに早くなっている(特-26図)。

特-26図 末子の年齢が6歳未満の妻・夫の主な行動の平均時刻(平日、子供のいる世帯)(令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-26図 末子の年齢が6歳未満の妻・夫の主な行動の平均時刻(平日、子供のいる世帯)(令和3(2021)年)

特-26図[CSV形式:1KB]CSVファイル

別調査12で、共働きで配偶者と同居している女性の仕事のある日の、自分と配偶者の平均的な帰宅時刻について見てみても、同様の結果となっている(特-27図)。

特-27図 仕事がある日の自分と配偶者の平均的な帰宅時間(共働き・配偶者と同居している女性)別ウインドウで開きます
特-27図 仕事がある日の自分と配偶者の平均的な帰宅時間(共働き・配偶者と同居している女性)

特-27図[CSV形式:2KB]CSVファイル

以上から、独身期は男女の生活には大きな違いはないものの、結婚後、特に子供を持った後は、女性がライフスタイルを変え、夕方以降の家事・育児等を一人で担い、男性は労働時間が増える傾向にあることが分かる。

このような背景もあり、単独世帯の世帯主である有業男女の平日の生活時間を比較すると、性別による大きな違いはないものの、末子の年齢が6歳未満の共働き夫婦の妻と夫の平日の生活時間を見てみると、家事関連時間は妻、仕事時間は夫に偏っている(特-28図)。

特-28図 時刻区分別行動者率(平日、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-28図 時刻区分別行動者率(平日、令和3(2021)年)

特-28図[CSV形式:28KB]CSVファイル

12「令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査」(令和4年度内閣府委託調査)。

3. 現行の家事・育児等・働き方が抱える課題

働く女性が増える一方で、家事関連時間は妻、仕事時間が夫に偏ることで、社会に様々な歪みが生じている可能性がある。

(1) 女性の社会での活躍の遅れ

家事・育児等の負担が女性に偏ること、長時間労働の慣行が変わらないことの弊害の一つに、我が国の女性の社会での活躍が遅れていることがあると考えられる。実際、内閣府の実施した世論調査13において、「育児や介護、家事などに女性の方がより多くの時間を費やしていることが、職業生活における女性の活躍が進まない要因の一つだという意見がありますが、あなたはこの意見について、どう思いますか」という質問に対して、女性の場合は、全ての年齢階級で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が8割を超えている。特に有配偶女性ではその割合が大きくなる傾向にあり、18~29歳の有配偶女性では、95.2%となっている。男性も、どの年齢階級でも7~8割が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答している(特-29図)。

特-29図 職業生活において女性の活躍が進まない要因別ウインドウで開きます
特-29図 職業生活において女性の活躍が進まない要因

特-29図[CSV形式:2KB]CSVファイル

13内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和4(2022)年11月調査)。

(指導的地位に就く女性の割合)

女性の登用促進は、我が国経済の発展にも資するものであり、我が国にとって非常に重要な課題の一つである。

しかしながら、常用労働者100人以上を雇用する企業の労働者のうち役職者に占める女性の割合を役職別に見ると、上位の役職ほど女性の割合が小さく、令和4(2022)年は、係長級24.1%、課長級13.9%、部長級8.2%となっている(特-30図)。また、上場企業の役員に占める女性の割合を見ると、近年上昇傾向にあるが、令和4(2022)年7月現在で9.1%となっている(特-31図)。

特-30図 民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移別ウインドウで開きます
特-30図 民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移

特-30図[CSV形式:2KB]CSVファイル

特-31図 上場企業の役員に占める女性の人数及び割合の推移別ウインドウで開きます
特-31図 上場企業の役員に占める女性の人数及び割合の推移

特-31図[CSV形式:1KB]CSVファイル

我が国の就業者に占める女性の割合は、令和4(2022)年は45.0%であり、諸外国と比較して大きな差はない。しかしながら、管理的職業従事者に占める女性の割合は、諸外国ではおおむね30%以上となっているところ、我が国は令和4(2022)年は12.9%と、諸外国と比べて低い水準となっている(特-32図)。

特-32図 諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合別ウインドウで開きます
特-32図 諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合

特-32図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(男女間賃金格差)

職階や職責の男女差は、我が国の男女間賃金格差の一つの要因であると言われている。我が国の女性の賃金は男性の賃金の約8割にとどまり、諸外国と比較しても大きな格差が存在している(特-33図)。雇用形態別に見ると、男性の割合が大きい正社員と、女性の割合が大きい非正社員の間に給与差があることに加え、同じ雇用形態でも男女間に給与差があり、その差は年齢とともに上昇する傾向がある(特-34図)。

特-33図 男女間賃金格差の国際比較別ウインドウで開きます
特-33図 男女間賃金格差の国際比較

特-33図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-34図 所定内給与額(雇用形態別・年齢階級別)(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-34図 所定内給与額(雇用形態別・年齢階級別)(令和4(2022)年)

特-34図[CSV形式:1KB]CSVファイル

しかしながら、女性に家事・育児が集中すること、もしくは将来的に家事・育児を担うことを想定して職業選択を行うことで経済的な自立ができないと、長い人生の中で生じ得る様々な出来事に対応できなくなるリスクがある。

また、夫婦の家庭内分業では、家事・育児等の機会費用(家事・育児等を行うことで所得が減ることによるコスト)の少ない方がそれらの活動を担うことが経済的に合理的となる。そのため、男女間賃金格差の存在は、女性よりも男性の就労を促進、女性の技能形成・キャリア形成を阻害し、性別役割分担を後押しする要因となる可能性がある。

(2) 家族の姿の変化、人生の多様化への対応

(単独世帯、ひとり親世帯の増加)

我が国の家族の姿は変化しており、近年では単独世帯が全世帯の約4割を占めるようになった。また、子供がいる世帯が徐々に減少する中14、ひとり親世帯は昭和63(1988)年から令和3(2021)年までの約30年間に102.2万世帯(母子世帯数84.9万世帯、父子世帯数17.3万世帯)から134.4万世帯(母子世帯数119.5万世帯、父子世帯数14.9万世帯)へと増加している15

仕事か家庭の二者択一を求められる現状は、家事・育児を抱えているものの、夫婦間で役割分担をできないひとり親世帯にとって、特に厳しいものであると考えられる。配偶関係・就業状況・6歳未満の子供の有無別の男女の生活時間を見ると、ひとり親の女性は、有配偶女性と比較して仕事時間が長く、6歳未満の子供を持つひとり親の女性は、6歳未満の子供を持つ専業主婦の約5割、共働き女性の約7割の時間しか家事・育児に充てられていない(特-35図)。また、「子供がいても男性は長時間労働をするのが当然」「子育ては女性が行うもの」という性別役割分担意識は、ひとり親の男性を孤立させるおそれがある。

特-35図 配偶関係・就業状況・6歳未満の子供の有無別男女の生活時間(週全体平均、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-35図 配偶関係・就業状況・6歳未満の子供の有無別男女の生活時間(週全体平均、令和3(2021)年)

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結婚しても子供を持たない夫婦も増加している16。結婚・出産が誰にとっても当たり前の人生設計ではなくなった今、一部の人に両立支援制度の利用が偏り、その他の人の働き方が変わらなければ、子育てを行う女性のキャリアアップの機会が失われるだけでなく、職場内の不公平感にもつながる可能性がある。

14児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯の推移を見ると、昭和61(1986)年17,364千世帯(全世帯に占める割合46.2%)、令和3(2021)年10,737千世帯(同20.7%)となっている(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。

15厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」より。ここでの母子世帯:父のいない児童(満20歳未満の子供であって、未婚のもの)がその母によって養育されている世帯。父子世帯:母のいない児童(同上)がその父によって養育されている世帯。

16結婚持続期間15~19年の夫婦の出生子供数の分布をみると、「出生子供数0人」の割合は、昭和52(1977)年(第7回調査)3.0%、令和3(2021)年(第16回調査)7.7%となっている(国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」)。

(有業の介護者の増加)

15歳以上で家族の介護をしている人(以下「介護者」という。)は、長期的に見ると増加傾向にあり、令和3(2021)年では、平成3(1991)年と比較して、女性介護者は1.6倍、男性介護者は2.3倍となっている(特-36図)。男性の介護者が増加してきたことの背景には、女性(妻)が配偶者(夫)の親の介護に必ずしも従事しなくなってきていることや、単独世帯が増加する中、未婚男性が親を介護する場合が増加していることなどがあると考えられる。

特-36図 介護者数の推移(男女別)別ウインドウで開きます
特-36図 介護者数の推移(男女別)

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令和3(2021)年時点での介護者の有業率を見ると、40代以上では女性と比較して男性の有業率が高く、介護をしている50代男性の9割超が有業となっている(特-37図)。単独世帯や共働き世帯が増加している中、これからも、介護と仕事を両立する人が増加すると考えられる。

特-37図 介護者の有業率(男女別、年齢階級別、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-37図 介護者の有業率(男女別、年齢階級別、令和3(2021)年)

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女性も男性も、働きたい全ての人が仕事か家事・育児・介護かの二者択一を迫られることなく働き、活躍し続けることができる社会の実現のためには、介護や育児等を行っている人に配慮するだけではなく、長時間労働等の慣行を見直し、柔軟な働き方を浸透させることで、全ての人が働きやすい環境を作ることが重要である。そのことが、育児や介護等を行う人にとっても働きやすく、活躍しやすい環境を作ることにつながると考えられる。

(3) 男性への影響

伝統的な性別役割分担意識や長時間労働等の慣行は、男性の生活や健康にも影響を与えている可能性がある。

(性別役割分担意識)

内閣府の調査17によれば、特に20代の男性が、職場での役割に関して、性別役割分担意識を強く感じている。職場の役割分担に関する項目のうち、「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」「男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない」「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」「営業職は男性の仕事だ」「女性社員の昇格や管理職への登用のための教育・訓練は必要ない」の5項目について、女性よりも男性の方が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」傾向が強く、かつ、男性の中でも年代が低いほど「そう思う」「どちらかといえばそう思う」傾向が強い。また、「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」という項目についても、女性より男性の方が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」傾向が強い(特-38図)。

特-38図 職場の役割分担に関する意識別ウインドウで開きます
特-38図 職場の役割分担に関する意識

特-38図[CSV形式:3KB]CSVファイル

さらに、同調査では、女性よりも男性の方が性別役割の意識について強く感じていることが分かった。一方、男性は女性と比較して、性別に基づく役割を直接言われた、あるいは言動や態度で間接的に接した「経験」は少なく、伝統的な役割観に自身が捉われていることに気付いていない可能性がある(特-39図)。しかしながら、周囲に前述のような考え方を押し付けるような言動を取ってしまうと、価値観の問題では済まず、職場でのハラスメントにもつながるとの認識を持つ事が必要である。

特-39図 性別役割について意識及び経験別ウインドウで開きます
特-39図 性別役割について意識及び経験

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17内閣府「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」(令和4(2022)年11月公表)。

(男性の健康への影響)

健康面に目を向け、「気分障害」の患者数を見ると、どの年代においても女性の患者数が男性の患者数を上回っているが、男性の場合は、働き盛りの40~50代の患者が多いことが特徴である(特-40図)。また、「アルコール使用(飲酒)による精神及び行動の障害」の患者数を見ると、女性よりも男性の方が顕著に多い(特-41図)。

特-40図 男女別・年代別気分障害総患者数(令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
特-40図 男女別・年代別気分障害総患者数(令和2(2020)年)

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特-41図 アルコール使用(飲酒)による精神及び行動の障害総患者数別ウインドウで開きます
特-41図 アルコール使用(飲酒)による精神及び行動の障害総患者数

特-41図[CSV形式:1KB]CSVファイル

男性自殺者数は長期的には減少傾向にあるが、女性よりも高い水準にあり、年齢階級別に見ると、40~50代の働き盛りの男性の自殺が最も多い(特-42図)。自殺の原因別に見ると、男性は女性と比較して「経済・生活問題」「勤務問題」を原因とする自殺が多く、特に40~50代の男性でこれらを原因とする自殺が多い(特-43図)。

特-42図 男女別・年代別自殺者数別ウインドウで開きます
特-42図 男女別・年代別自殺者数

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特-43図 男女別自殺の原因別自殺者数(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-43図 男女別自殺の原因別自殺者数(令和4(2022)年)

特-43図[CSV形式:2KB]CSVファイル

男性もまた男女共同参画社会の主役である。前述のとおり、男性の有償労働時間は諸外国と比較しても極めて長く、男性が地域や家庭に活躍の場を広げることを望んでいても、叶っていない場合もあると考えられる。しかしながら、男性においても、仕事か家庭の二者択一を迫られることなく、のびのびと生きやすい社会を実現する必要がある。そのことが男女ともに生きやすく、活躍できる社会の実現につながるものと考えられる。

コラム3 国連女性機関(UN Women)「HeForShe(ヒーフォーシー)キャンペーン」活動