コラム3 国連女性機関(UN Women)「HeForShe(ヒーフォーシー)キャンペーン」活動

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コラム3

国連女性機関(UN Women)「HeForShe(ヒーフォーシー)キャンペーン」活動


ジェンダー平等への取組は、かつては女性だけによる女性のための取組として認識されていた。しかしながら、ジェンダー平等は女性だけの問題ではなく、全人類が関わる問題である。

国連女性機関(UN Women)は、ジェンダー平等の促進のためには、男性の関与が不可欠であるとして、平成26(2014)年から「HeForSheキャンペーン」活動を実施している。

平成26(2014)年9月20日、潘基文国連事務総長(当時)とエマ・ワトソンUN Women親善大使が同キャンペーン活動の立ち上げについて発表した。その際に、エマ・ワトソンUN Women親善大使が、「ジェンダー平等は男性の問題でもある。男女ともに繊細でいられる自由があり、男女ともに強くいられる自由がある」と呼び掛け、話題を呼んだ。

エマ・ワトソンUN Women親善大使の国連でのスピーチ「Gender equality is your issue too」一部抜粋

エマ・ワトソンUN Women親善大使 写真
cUN Women/Simon Luethi

男性の皆さん、この場を借りてみなさんを正式に御招待いたします。ジェンダー平等はあなた方の問題でもあると。

今日まで私の父の役割が軽んじられたのをこの目にしてきました。母と同等に大切であるにもかかわらず。

多くの若い男性をこの目にしました。「男らしくない」と見られる恐怖から精神を患い、しかし、支援は受けないのです。実際に英国では20~49歳の男性の死亡原因のトップは自殺です。交通事故、がん、心臓疾患を凌いでいます。男性としての成功を形作る意識が男性を傷つけ、不安にさせる姿を目にしてきました。男性もまた、平等の恵みを受けていないのです。

ジェンダーの固定観念に囚われている男性については、私たちは多くを語りません。しかし、男性が固定観念から自由になれば、女性にとっても自然と世界は変わるのです。

もし男性が男性として認められるために攻撃的になる必要がなければ、女性も服従する必要はないでしょう。もし男性が管理する必要がなければ、女性が管理されることもないでしょう。

男女ともに繊細でいられる自由があり、男女ともに強くいられる自由があるのです。今こそ、二つの考え方の対立ではなく、ジェンダーを広い視点で捉える時なのです。「私たちはちがう」という定義付けをやめ、「私たちとは誰なのか」を自分自身で定義すれば、私たちはもっと自由になれるのです。それこそが「HeForShe」そのものなのです。

(出典)国際連合広報センター。エマ・ワトソンUN Women親善大使が、国連本部で開催されたHe For Sheキャンペーン発表会で行ったスピーチの映像の日本語字幕の一部抜粋。
https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/audio_visual/learn_videos/gender/

エマ・ワトソンUN Women親善大使はスピーチの中で、男性は、「男らしくない」と見られる恐怖から精神を患っても支援を求めることに課題を感じる場合があり、英国の20~49歳の男性の死亡原因の一位が自殺であることを述べている。我が国においても、令和3(2021)年の10~44歳の男性の死亡原因の一位は自殺であった((図)年齢階級別死因順位(令和3(2021)年))。また、第1節で見てきたとおり、男性の自殺者数は減少傾向にあるが、女性よりも高い水準にあり、自殺の原因別に見ると、男性は女性と比較して「経済・生活問題」「勤務問題」を原因とする自殺が多い(特-42図、特-43図再掲)。この背景には、「男性は一家の大黒柱」という性別役割分担意識や長時間労働等の慣行等があると考えられ、我が国においても、男性が男女共同参画の恩恵を受けられていない側面があることが分かる。

(図)年齢階級別死因順位(令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
(図)年齢階級別死因順位(令和3(2021)年)

(図)[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、内閣府の調査1では、我が国の男性は、女性と比較して、性別役割の意識について強く感じていることが分かった(特-39図再掲)。しかしながら、エマ・ワトソンUN Women親善大使がスピーチで述べているとおり、男女ともに性別役割の意識から解放され、繊細でいられる自由、強くいられる自由があるはずであり、男女共同参画を推進することで、男女ともに恩恵を受けられるはずである。また、男性が固定観念から自由になることで、女性にとっても世界が変わるはずである。

男女共同参画は女性だけでなく、全ての人にとっての問題であるということを、一人一人が認識し、男女共同参画を推進していく必要がある。

1内閣府「令和4年度?性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」(令和4(2022)年11月公表)。