特集 新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて~

本編 > 1 > 特集 > 第2節 根付きつつある新たな生活様式・働き方

第2節 根付きつつある新たな生活様式・働き方

この節では、内閣府の調査18等をもとに、主に若い世代を中心に変わってきている、生活様式や働き方についての考え方を明らかにし、考察を深める。

18「令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査」(令和4年度内閣府委託調査)。以下、本文中に具体的な調査名がなく、「調査」と記載してあるものは全て、同調査。

1. 若い世代の生活様式・働き方についての考え方

(1) 働き方に対する意識

仕事・働くことに対する現在の考え方19を男女別・年代別に比較すると、20代では男女で10%ポイント以上差がある項目はなく、上の年代と比べて男女差が小さい。20~30代で、女性の方が男性よりも5%ポイント以上高い項目は、「負荷の少ないことを仕事にして働きたい」「雇用の安定性を重視して働きたい」「残業が少ないことを優先して働きたい」「突発的な時にも休みやすいことを優先して働きたい」であり、女性は男性と比べて、働きやすい環境で働くことを求めていることが分かる。一方で、男性の方が女性よりも5%ポイント以上高い項目は、「専門性を磨けるように働きたい」「新しいことに挑戦できるかを優先して働きたい」となっており、男性は、女性と比較して仕事内容を重視する傾向が強い。40~50代の女性では、若い世代よりも「残業が少ないことを優先して働きたい」「突発的な時にも休みやすいことを優先して働きたい」の男女差が大きい。なお、男女ともに全体的な優先度は高くないが、若い年代ほど「新しいことに挑戦できるかを優先して働きたい」としている(特-44図)。

特-44図 仕事・働くことに対する現在の考え方(有業者)別ウインドウで開きます
特-44図 仕事・働くことに対する現在の考え方(有業者)

特-44図[CSV形式:2KB]CSVファイル

19対象は有業者。

(2) 生活時間の使い方に対する意識

第1節では、我が国では有償労働時間が男性、無償労働時間が女性に偏っていることを確認したが、ここでは、生活時間の使い方に対する希望を見ていく。

(家事・育児時間の増減希望)

子供のいる男女の家事・育児時間の増減希望について見てみると、女性は、いずれの年代においても、家事・育児時間を「減らしたい」が「増やしたい」を上回るが、20~30代で「減らしたい」と思う傾向が強く、40~60代と比較して13.3%ポイント高い(20~30代33.5%、40~60代20.2%)。男性は、いずれの年代においても「増やしたい」が「減らしたい」を上回るが、40~60代と比較して、20~30代で「増やしたい」と考える人が13.4%ポイント高く(20~30代27.7%、40~60代14.3%)、若い年代の方が、それ以外の年代よりも家事・育児参画意欲が高いことが分かる(特-45表)。

特-45表 生活の中の時間増減希望別ウインドウで開きます
特-45表 生活の中の時間増減希望

特-45表[CSV形式:2KB]CSVファイル

(仕事時間の増減希望)

子供のいる男女の仕事時間の増減希望について見てみると、女性は、20~30代は「減らしたい」と「増やしたい」に分かれる(「減らしたい」23.2%、「増やしたい」28.6%)一方、40~60代は「増やしたい」が「減らしたい」を上回る(「減らしたい」12.7%、「増やしたい」22.5%)。子供のいる女性は、出産を機に家事・育児時間が増えるために仕事時間を減らすものの、子育てが一段落した後に、仕事時間を増やしたいと考える場合が多いことが推察される。男性は、いずれの年代においても、「減らしたい」が「増やしたい」を上回るが、40~60代と比較して、20~30代で「減らしたい」が8.4%ポイント高く(20~30代34.1%、40~60代25.7%)、若い年代の方が、より仕事時間を「減らしたい」と考えていることが分かる(特-45表再掲)。

子供がいる女性がどの年代においても家事・育児時間を「減らしたい」と思っている背景には、第1節でも指摘したとおり、無償労働時間が女性に偏っていることがあり、若い世代において「減らしたい」と考える割合が大きいのは、子育て期においては特にその負担が重いためであると考えられる。一方、子供がいる男性はどの年代においても、家事・育児時間を「増やしたい」傾向にあり、特に若い世代で家事・育児への参画意欲が強いことが分かる。しかし、男性はいずれの年代においても仕事時間を「減らしたい」と考えており、特に若い世代において「減らしたい」意向が強いことから、労働時間が長いことが、特に若年男性の家事・育児への参画を阻んでいることが推察される。

なお、男女ともに、子供の有無にかかわらず、どの年代においても、「家族と遊んだりくつろいだりする時間」「自分のことに使う時間」は、「増やしたい」が「減らしたい」を大きく上回るが、特に20~30代の子供のいる女性において顕著であり、「自分のことに使う時間」を「増やしたい」が5割を超えている(特-45表再掲)。

(仕事とプライベート・家庭生活のバランス)

続いて、仕事とプライベート・家庭生活のバランスに関する「理想」と「現実」を見てみる。

「理想」については、男女ともに、いずれの年代、配偶状況、子供の有無別で見ても、「仕事とプライベート・家庭生活を両立」が4~5割を占め、「プライベート・家庭生活を優先」「プライベート・家庭生活に専念」したいという割合も合計で3~5割を占める。子供のいる20代男性の「理想」を見ると、37.6%が「プライベート・家庭生活を優先」「プライベート・家庭生活に専念」したいと考えており、40~50代と10%ポイント近く差がある(40代28.6%、50代28.5%)。逆に、「仕事に専念」「仕事を優先」したいという意向は、50代以下では、配偶状況、子供の有無別で見ても、女性は合計で1割未満、男性も同1割前後と、強くない。

しかし、「理想」と「現実」の間には大きな差がある。「現実」になると、男女ともに、いずれの年代、配偶状況、子供の有無別で見ても「仕事に専念」「仕事を優先」している人の割合が大きくなり、50代以下の男性においては、合計で35~45%程度を占める。また、特に男性においては「プライベート・家庭生活を優先」「プライべート・家庭生活に専念」している人の割合が理想と比較して大きく減少し、合計で1~2割となっている(特-46図)。

特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)別ウインドウで開きます
特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)

特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)(続き)別ウインドウで開きます
特-46図 仕事とプライベート・家庭生活のバランスの理想と現実(有業者)(続き)

特-46図[CSV形式:6KB]CSVファイル

(3) 長時間労働に対する意識

内閣府の調査で、年代別、配偶状況別に勤務時間を見ると、女性の場合、20代では有配偶者と独身者でフルタイム勤務者の割合に大きな差は無いが、30代以上では、有配偶者は独身者と比べてフルタイム勤務者の割合が小さい。また、30~50代では、月25時間以上残業をしている者の割合も小さい。一方、男性については、どの年齢階級においても、独身者よりも有配偶者の方が、フルタイム勤務者の割合が大きく、月25時間以上残業している者の割合も大きい傾向にある(特-47図)。

特-47図 勤務時間(年代別)別ウインドウで開きます
特-47図 勤務時間(年代別)

特-47図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(男性が長時間労働を行う理由)

内閣府の調査からは、長時間労働を行っている男性は、必ずしも長時間働くことによるメリットを感じているわけではないことが明らかになっている。現在の勤務時間による影響を見ると、フルタイムで残業が非常に多い(月46時間以上残業)男性が、フルタイムで残業が少ない(月24時間以下残業)男性と比較して、現在の勤務時間によるプラスの影響として感じている項目は、いずれの年代においても「昇進・昇給によい影響を与える」のみであるが、40~60代と比較して、20~30代の方が、差が小さい(20~30代:月46時間以上残業61.9%、月24時間以下残業55.0%、40~60代:月46時間以上残業54.2%、月24時間以下残業44.2%)(特-48図)。

特-48図 現在の勤務時間による影響(男性)別ウインドウで開きます
特-48図 現在の勤務時間による影響(男性)

特-48図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(勤務時間を減らしにくい理由)

月25時間以上残業を行っている男性の、勤務時間を減らしにくい理由を見てみると、残業時間、年代にかかわらず、「仕事量が多く仕事・業務が終わらない」(月25~45時間残業:20~30代58.5%、40~60代63.0%、月46時間以上残業:20~30代47.5%、40~60代52.4%)が最も多い。月46時間以上残業を行っている20~30代の男性と40~60代の男性を比較すると、20~30代は上の年代と比較して、「周囲が家族より仕事を優先すべきと考えている」(20~30代21.1%、40~60代11.4%)、「将来的に昇進・昇格しにくくなる」(20~30代15.7%、40~60代7.7%)、「残業する人を評価する風潮がある」(20~30代32.7%、40~60代25.6%)とする割合が大きい一方、40~60代は下の年代と比較して、「自分にしかできない仕事がある」(20~30代17.0%、40~60代28.2%)、「職場の人手不足」(20~30代38.6%、40~60代43.9%)、「残業代が必要」(20~30代6.7%、40~60代12.0%)とする割合が大きい(特-49図)。

特-49図 勤務時間を減らしにくい理由(男性)別ウインドウで開きます
特-49図 勤務時間を減らしにくい理由(男性)

特-49図[CSV形式:2KB]CSVファイル

これらのことから、男性は自ら望んで長時間労働を行っているのではなく、長時間労働をせざるを得ない状況にある場合も多いと考えられるが、その中でも、20~30代の男性は、上の年代と比較して、周囲の目を気にした結果、長時間労働となっている場合が多いと考えられる。

2. 女性の働き方を取り巻く状況

第1節では、女性は男性と比較して正規雇用比率が低く、令和4(2022)年時点で、女性雇用者の半分以上が非正規雇用労働者となっており、その理由として、女性に無償労働時間が偏っていることから、正規雇用労働者として働くことと家事・育児等を両立させることに課題を感じ、非正規雇用を選択している場合が多いことを指摘した。

(現在の職業・雇用形態で働いている理由)

非正規雇用労働者が現在の職業・雇用形態で働いている理由について、内閣府の調査でも確認をすると、全ての年齢階級で男女で割合に差異があり、女性の方が大きい項目は「自分で自由に使えるお金が欲しいので」「家事・育児等と両立がしやすいので」、男性の方が大きい項目は「その形でしか雇用されないので」となっている。女性については、世代間で10%ポイント以上差がある項目はないが、男性においては、40~60代で、20~30代と比較して「その形でしか雇用されないので」の割合が大きい(20~30代21.6%、40~60代36.7%)。一方、20~30代では、40~60代と比較して「特に理由はない」の割合が大きく(20~30代25.4%、40~60代10.6%)、男性の非正規雇用労働者として働くことに対する考え方が変わってきている可能性がある。

女性について配偶状況別でも見てみると、有配偶の場合、「家事・育児等と両立がしやすいので」の割合が最も大きく、40~60代と比較して20~30代で割合が大きい(20~30代51.5%、40~60代39.8%)。一方、「自分で自由に使えるお金が欲しいので」(20~30代25.9%、40~60代36.5%)、「社会保険料や配偶者控除などを考えて」(20~30代19.5%、40~60代24.2%)は20~30代と比較して40~60代で割合が大きい。子供のいる女性においても、同様の傾向が見られるが、子供のいる20~30代の女性の場合、特に「家事・育児等と両立がしやすいので」とする傾向が強く、約6割となっている(特-50図)。

特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)別ウインドウで開きます
特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)

特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)(続き)別ウインドウで開きます
特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)(続き)

特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)(続き)別ウインドウで開きます
特-50図 現在の職業・雇用形態で働いている理由(非正規雇用労働者)(続き)

特-50図[CSV形式:3KB]CSVファイル

20~30代の女性が非正規雇用労働者として働くことを選択する際には、仕事と家事・育児等を両立することを重視している一方、40~60代の女性は、20~30代と比較して、自分の収入はあくまで家計の補助と捉えている人が多いことがうかがえる。

(正規雇用労働者として働く条件)

現在、非正規雇用労働者もしくは無職者に、どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいかを聞いたところ、20~30代女性は、40~60代と比較して、「仕事と育児・介護との両立に関して理解のある職場であれば」(20~30代24.2%、40~60代11.1%)、「働く時間を調整しやすい・融通がきく仕事であれば」(20~30代43.8%、40~60代32.9%)の割合が大きく、仕事と家事・育児等を両立しながら、正規雇用で働くことを望んでいる人が多いことが分かる。一方、40~60代女性は、約4割が「わからない・考えたことがない」としており、20~30代と比較して16.4%ポイント高い(20~30代23.9%、40~60代40.3%)。

非正規雇用労働者として働いている女性について、配偶状況別に見てみると、有配偶の20~30代女性は、上の年代と比較して、「仕事と育児・介護との両立に関して理解のある職場であれば」(20~30代33.0%、40~60代15.7%)、「自分の家事・育児などの負担が軽くなれば」(20~30代30.9%、40~60代16.9%)、「働く時間を調整しやすい・融通がきく仕事であれば」(20~30代51.2%、40~60代38.0%)の割合が大きい。子供の有無別に見ても同様で、子供のいる20~30代女性は、上の年代と比較して「仕事と育児・介護との両立に関して理解のある職場であれば」(20~30代40.8%、40~60代16.1%)、「自分の家事・育児などの負担が軽くなれば」(20~30代33.9%、40~60代16.3%)、「働く時間を調整しやすい・融通がきく仕事であれば」(20~30代53.6%、40~60代37.4%)の割合が大きい(特-51図)。

特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか別ウインドウで開きます
特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか

特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか(続き)別ウインドウで開きます
特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか(続き)

特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか(続き)別ウインドウで開きます
特-51図 どのような条件であれば「正規雇用労働者」として働きたいと思うか(続き)

特-51図[CSV形式:3KB]CSVファイル

(仕事での昇進等について)

仕事での昇進等についての20代時点での考え方を見てみると、男性では、「昇進できると思っている・いた(以下「昇進できる」という。)」「いずれは管理職につきたいと思っている・いた(以下「管理職につきたい」という。)」について、年代の差はあまりないものの、「この仕事を長く続けたいと思っている・いた(以下「長く続けたい」という。)」とする割合は、若い年代ほど小さくなっている。女性では、若い年代ほど、「長く続けたい」、「昇進できる」、「管理職につきたい」と考える割合が大きい。特に「昇進できる」「管理職につきたい」は、20代と40~60代で10%ポイント以上の差があり、男女雇用機会均等法や女性活躍推進法などの法整備に伴い、自分が仕事を長く続けることができる・続けたい、昇進できる・したい、管理職につくことができる・つきたいと思う若い女性が増加してきていると推察される(特-52図)。

特-52図 仕事の継続希望、昇進希望(20代時点での考え方)別ウインドウで開きます
特-52図 仕事の継続希望、昇進希望(20代時点での考え方)

特-52図[CSV形式:2KB]CSVファイル

しかしながら、現状では、女性の正規雇用比率は、出産後に低下する傾向にある。前述のとおり、20~30代の女性が仕事と家事・育児等を両立することを重視して非正規雇用労働者として働くことを選択していることや、正規雇用労働者として働く条件として、仕事と育児・介護との両立に関して理解のある職場であること、自分の家事・育児負担が軽くなることとする割合が大きいことからは、無償労働時間が女性に偏っている我が国において、仕事と家庭の両立に課題を感じている女性が多いことが推察される。このことは、第1節で触れたとおり、内閣府の実施した世論調査20において、「育児や介護、家事などに女性の方がより多くの時間を費やしていることが、職業生活における女性の活躍が進まない要因の一つである」という意見について、女性の場合は、全ての年齢階級で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が8割を超えていることに表れている(特-29図再掲)。

我が国の未来を担う若い世代の、家庭でも社会でも活躍したいという希望が叶えられる社会を作ることは極めて重要であり、女性が家事・育児等を行いながら仕事を継続できるだけでなく、しっかりとキャリア形成ができるような環境を整えることが必要であると考えられる。そのためには、現在の雇用慣行を改め、長時間労働を是正し、柔軟な働き方を浸透させることに加え、男女間で家事・育児を公平に分担することも重要である。

20内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和4(2022)年11月調査)。

3. テレワークを取り巻く状況

コロナ前の令和元(2019)年は、テレワークを「導入している」企業は約2割にとどまっていたが、コロナ下の令和2(2020)年に急増し、約5割となった(特-53図)。ここでは、コロナ下で普及した新しい働き方といえる、テレワークが生活時間に与える影響を考察する。

特-53図 テレワークの導入状況の推移別ウインドウで開きます
特-53図 テレワークの導入状況の推移

特-53図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(テレワークの導入状況及び実施状況)

前述のとおり、コロナ下でテレワークは普及したが、テレワークの導入状況は業種別に見ると差があり、令和3(2021)年時点で、情報通信業では97.7%の企業で導入されている一方、運輸業・郵便業での導入率は27.6%にとどまっている(特-54図)。また、テレワーク実施率を男女別に見ると、この3年間で最もテレワークが多かった時期の実施率は、女性19.4%、男性35.7%、この3か月間21の実施率は、女性16.0%、男性30.4%となっており、男女間で実施率に差がある。雇用形態別に見ると、正規雇用労働者の場合は、この3年間で最もテレワークが多かった時期の実施率は、女性27.9%、男性39.3%、この3か月間の実施率は、女性22.4%、男性33.2%となっており、同じ正規雇用労働者であっても、男女間で実施率に差がある。非正規雇用労働者の場合は、この3年間で最もテレワークが多かった時期の実施率は、女性10.6%、男性17.8%、この3か月間の実施率は、女性8.7%、男性14.1%となっており、男女ともに正規雇用労働者と比較して実施率が低く、男女間でも実施率に差がある。女性のテレワーク実施率が男性と比較して低い理由は、女性は男性と比較して非正規雇用労働者が多いことに加え、女性労働者の多い産業では、男性労働者の多い産業と比較してテレワークの導入がされていないことが多く、同じ雇用形態内でも実施率に差が生じているものと考えられる(特-55図)。

特-54図 テレワークの導入状況(産業分類別)別ウインドウで開きます
特-54図 テレワークの導入状況(産業分類別)

特-54図[CSV形式:1KB]CSVファイル

特-55図 テレワークの実施状況別ウインドウで開きます
特-55図 テレワークの実施状況

特-55図[CSV形式:2KB]CSVファイル

21令和4(2022)年10~12月を想定。

(テレワークの日の時間の使い方)

有業者の仕事のある日の1日の時間の使い方を、テレワークの日と、テレワーク以外の日で比較してみると、テレワークの日は、男女ともに、どの年代も、通勤時間だけでなく、仕事時間が減り、男性の場合は家事・育児時間が増えている(特-56図)。

特-56図 テレワークをした日としない日の時間の使い方の差(仕事のある日、有業者)別ウインドウで開きます
特-56図 テレワークをした日としない日の時間の使い方の差(仕事のある日、有業者)

特-56図[CSV形式:1KB]CSVファイル

有配偶の正規雇用労働者の男性、フルタイムで残業の多い(月46時間以上残業)男性についても同様の傾向が見られ、特にフルタイムで残業の多い男性では、いずれの年代においても、テレワークの日の仕事時間がテレワーク以外の日よりも1時間以上短くなっており、家事・育児時間は30分以上長くなっていることが分かる(特-57表)。

特-57表 仕事のある日の時間の使い方(有配偶男性、テレワーク以外の日とテレワークの日)別ウインドウで開きます
特-57表 仕事のある日の時間の使い方(有配偶男性、テレワーク以外の日とテレワークの日)

特-57表[CSV形式:2KB]CSVファイル

総務省の社会生活基本調査において、有業者で、平日にテレワーク(在宅勤務)をした人とそれ以外の人の生活時間を比較してみても、テレワークをした男性は、それ以外の男性よりも65歳未満の全ての年齢階級で仕事時間が短く、家事・育児時間が長い。また、年齢階級別に見ると、35~44歳のテレワークをした女性はそれ以外の女性よりも育児時間が長く、25~34歳、45~54歳、55~64歳の女性は、仕事時間が長い。さらに、男女ともに15~24歳以外の全ての年齢階級で、3次活動の時間が長くなっている(特-58図)。

特-58図 テレワーク(在宅勤務)をした人とそれ以外の人の生活時間の差(平日、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-58図 テレワーク(在宅勤務)をした人とそれ以外の人の生活時間の差(平日、令和3(2021)年)

特-58図[CSV形式:2KB]CSVファイル

テレワークの場合、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気付きにくいなどの状況が生じる場合もある。また、勤務時間とそれ以外の区別がつけづらく、使用者は労働時間の管理の現認ができないため、コミュニケーションの取り方や労働時間の把握に工夫が必要である点には注意が必要である22。しかしながら、テレワークの実施は、主に男性の労働時間を減らし、家事・育児時間を増やす効果があることに加え、ほぼ全ての年齢階級で3次活動や睡眠の時間が長くなっていることから示唆されるように、通勤時間を短縮した時間を余暇や睡眠時間に充てることで、心身の負担の軽減につながる可能性がある23。また、フレックスタイム制度なども含めた柔軟な働き方を推進することにより、短時間勤務を選択していた女性がフルタイムで勤務することが可能となり、このことが女性のキャリア形成に寄与することも期待できる。さらに、テレワークの普及に伴い、転勤制度を見直す企業も一部出てきており、長時間労働や転勤を当然とする働き方を見直すきっかけにもなると考えられることから、一層の普及が期待される。

22テレワークのデメリットについては、内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(第1回~第6回)でも指摘されている。

23厚生労働省「令和4年版 過労死等防止対策白書」の中でも、テレワーク実施による心身への好影響が報告されている。

4. 育児休業を取り巻く状況

男女別の育児休業取得状況については、第1節で概観したが、ここでは、育児休業取得に関する希望と現実の差や、男性の育児休業取得率が女性と比較して低い理由について考察する。

(育児休業取得経験)

内閣府の調査において、育児休業取得経験を見ると、20~30代では、「過去に自分が育児休業を取った」「現在自分が育児休業取得中」の合計が、女性は41.4%、男性は22.2%となっている(特-59図)。

特-59図 育児休業の取得経験別ウインドウで開きます
特-59図 育児休業の取得経験

特-59図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(育児休業取得の希望)

こうした中、年代別、子供の有無別の育児休業取得の希望24を見てみると、子供のいない女性の場合、20~30代の約7割、40代以上の女性の約6割が「2か月以上取得したい」としており、20~30代の場合は5割以上が「半年以上取得したい」としている。子供がいる女性は、20代の約6割、30代の約5割、40代以上の約4割が「2か月以上取得したい」としており、20代の約5割、30代の約4割が「半年以上取得したい」としている。男性の場合は、女性と比較して長期での育児休業取得を希望する割合は小さいが、子供の有無にかかわらず、年代が低い方が「2か月以上取得したい」と考える割合が大きく、20代の約3割が「2か月以上取得したい」としている。また、年代が低い方が育児休業の取得意向25が強く、20~30代では、6割を超える(特-60図)。しかし、第1節でも見たとおり、令和3(2021)年度の実際の男性の育児休業取得率は、民間企業で13.97%、国家公務員で34.0%、地方公務員で19.5%となっている(特-18図再掲)。また、実際の男性の育児休業取得者の取得期間は、民間企業で約6割が1か月未満、国家公務員で約7割、地方公務員で約5割が1か月以下となっており(特-19図再掲)、男性の育児休業の取得について、希望と現実には差があることが分かる。

特-60図 育児休業取得の希望(年代別、子供の有無別)別ウインドウで開きます
特-60図 育児休業取得の希望(年代別、子供の有無別)

特-60図[CSV形式:2KB]CSVファイル

24子供がいる人は、実際の取得期間ではなく、希望としてどのように考えていたかを回答。

25「育児休業を半年以上取得したい」「育児休業を4~5か月(半年未満)取得したい」「育児休業を2~3か月取得したい」「育児休業を1か月程度取得したい」「育児休業を数日間取得したい」の合計。

(男性の育児休業取得率が女性と比較して低い理由)

男性の育児休業取得率が女性に比べて低い理由についての考え方を見てみると、男女ともに、総じて「男性の方が家計を支える必要があるから」「男性の方が昇進・昇給にマイナスの影響があるから」「男性の方が上司や同僚の支援を受けにくいから」の割合が大きい。また、「女性の方が給与が低い場合が多いから」は、若い世代での男女差が大きく、20~30代では女性の方が約10%ポイント大きい(特-61図)。男女間賃金格差や長時間労働等の慣行、性別役割分担等の意識の両面が、男性の育児休業取得率を上げられない要因となっていると考えられる。

特-61図 男性の育児休業取得率が女性に比べて低い理由別ウインドウで開きます
特-61図 男性の育児休業取得率が女性に比べて低い理由

特-61図 男性の育児休業取得率が女性に比べて低い理由(続き)別ウインドウで開きます
特-61図 男性の育児休業取得率が女性に比べて低い理由(続き)

特-61図[CSV形式:3KB]CSVファイル

しかし、男女ともに「男性の方が上司や同僚の支援を受けにくいから」「女性は家事・育児等に向いているから」と回答した者の割合は年代が低い方が小さい傾向にある。また、女性では、「男性の方が昇進・昇給にマイナスの影響があるから」「男性の方がより責任の重い仕事を担っているから」と回答した者の割合は年代が低い方が小さく、性別役割分担の意識は若い世代では少なくなってきている可能性がある。なお、別の調査26でも、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」について、20~40代の方が、50~60代と比較して、「そう思う27」割合が小さくなっている(特-62図)。

特-62図 性別役割意識(性・年代別)別ウインドウで開きます
特-62図 性別役割意識(性・年代別)

特-62図[CSV形式:1KB]CSVファイル

26内閣府「令和4年度?性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」(令和4(2022)年11月公表)。

27「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の累計値。

(育児休業取得への考え方)

育児休業取得経験者の育児休業取得への考え方を見てみると、男女で差が大きい項目は、20~30代では、「収入が減り不安な状態になる」(女性83.1%、男性70.9%)、「復帰後のスキル・経験に同僚との差が出る」(女性70.8%、男性58.6%)、「子供との良い関係を築くことができる」(女性90.0%、男性78.8%)、40~60代では「子供との良い関係を築くことができる」(女性87.8%、男性79.3%)で、いずれの項目も女性の割合の方が大きい。なお、20~30代女性で、「復帰後のスキル・経験に同僚との差が出る」の割合が大きいのは、女性の方が長期間の取得意向があることの影響もあると考えられる(特-63図)。

特-63図 育児休業取得への考え方(育児休業取得経験者)別ウインドウで開きます
特-63図 育児休業取得への考え方(育児休業取得経験者)

特-63図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(育児休業取得の効果)

育児休業取得経験者の育児休業取得への考え方では、男女ともに「子供との良い関係を築くことができる」とする割合が最も大きい。また、20~30代男性は、女性と比較して「仕事から離れることで価値観が広がる」(女性67.5%、男性72.4%)の割合が大きい。実際に育児休業を取得した男性が、取得によるプラスの効果を感じていることは、特筆すべきことであると考えられる(特-63図再掲)。

子供のいる男女の、自分自身の家事・育児スキルへの評価を見ると、育児休業取得経験のある男性の方が、育児休業取得経験のない男性と比較して、自分自身の家事・育児スキルへの評価が高い(特-64図)。また、配偶者が実施する家事・育児への満足度を見ると、男性では、配偶者(妻)が実施する家事・育児への満足度は、配偶者(妻)の育児休業取得経験の有無では大きく変わらないが、女性では、配偶者(夫)が実施する家事・育児への満足度は、配偶者(夫)に育児休業取得経験がある方が高い傾向にある(特-65図)。

特-64図 育児休業取得経験有無別家事・育児スキルの自己評価別ウインドウで開きます
特-64図 育児休業取得経験有無別家事・育児スキルの自己評価

特-64図[CSV形式:2KB]CSVファイル

特-65図 配偶者の育児休業取得経験有無別配偶者の実施する家事・育児への満足度別ウインドウで開きます
特-65図 配偶者の育児休業取得経験有無別配偶者の実施する家事・育児への満足度

特-65図[CSV形式:2KB]CSVファイル

さらに、生活時間に目を向けると、全ての年代で、育児休業取得経験のある男性の方が、育児休業取得経験のない男性と比較して、仕事がある日の家事・育児時間が長い(特-66図)。

特-66図 育児休業取得経験有無別仕事がある日の家事・育児時間別ウインドウで開きます
特-66図 育児休業取得経験有無別仕事がある日の家事・育児時間

特-66図[CSV形式:2KB]CSVファイル

上記のデータからは、家事・育児への参画意欲が高い男性が育児休業を取得しているのか、育児休業を取得することにより男性の家事・育児参画意欲が高まるのかの因果関係までは読み取れないが、育児休業取得と男性の家事・育児参画については正の相関関係があると考えられ、男性の育児休業取得を促進していくことには意味があると考えられる。

コラム4 我が国の育児休業制度は世界一!?男性の育児休業の変遷と背景

5. 家事・育児等を取り巻く状況

ここでは、家事・育児等への考え方と実態を概観した上で、外部サービスの利用や、男性が積極的に家事・育児等に取り組むために必要と考えられることについて見ていく。

(1) 家事・育児等への考え方と実態

(考え方)

家事・育児等について、女性では年代が高い方が、男性では年代が低い方が、「自分が率先してするべきことである」と回答する割合が大きい傾向にある。同年代の男女で比較すると、50~60代では男女で10%ポイント以上差異があるが、年代が低くなるほど男女の差異が小さくなり、20代では、ほとんど差異が見られない(女性70.1%、男性69.8%)(特-67図)。

特-67図 家事・育児等への考え方(自分が率先してするべきことである)別ウインドウで開きます
特-67図 家事・育児等への考え方(自分が率先してするべきことである)

特-67図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(実態)

第1節で、6歳未満の子供を持つ夫婦の家事関連時間について、妻の分担割合は、共働き世帯で77.4%であることを確認した(特-8図再掲)。さらに、末子の年齢別・妻の就労形態別に夫の家事・育児時間を見てみると、末子0~2歳時点で最も長く、妻の雇用形態別ではほとんど差異は無いが、末子の年齢が3歳以上の場合、妻が正規雇用労働者の男性の方が、妻が非正規雇用労働者や専業主婦(非就労)の男性よりも、家事・育児時間が長い。

妻が正規雇用労働者として働く男性の、家事・育児時間の分担割合を見てみると、末子0~2歳で35.9%、末子3~6歳で36.8%、末子小学生で34.6%、末子13~19歳で25.4%と、末子が小学生以下の場合は、3割強となっている(特-68図)。妻が正規雇用労働者として働いていても、依然として妻が家事・育児の大部分を担っていると見ることもできるが、若い世代、特に妻が正規雇用労働者として働いている男性を中心に、家事・育児参画が進みつつあると見ることもできる。

特-68図 末子年齢別・妻の就労形態別に見た夫の家事・育児時間、末子年齢別に見た正規雇用労働者の妻の家事・育児時間(仕事がある日)(平均値)別ウインドウで開きます
特-68図 末子年齢別・妻の就労形態別に見た夫の家事・育児時間、末子年齢別に見た正規雇用労働者の妻の家事・育児時間(仕事がある日)(平均値)

特-68図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(2) 外部サービスの利用

女性の家事・育児等の無償労働の負担を軽減するためには、外部サービスの利用も一つの解決策となると考えられる。

(外部サービス利用の現状)

我が国においては、家事の外部化はあまり進んでおらず、共働き世帯、専業主婦世帯、単独世帯いずれにおいても、1か月の消費支出のうち、「家事サービス」が占める割合は0.2%、金額にすると1,000円未満(共働き世帯645円、専業主婦世帯601円、単独世帯376円)となっている(特-69図)。

特-69図 消費支出に占める家事サービスの支出金額の割合別ウインドウで開きます
特-69図 消費支出に占める家事サービスの支出金額の割合

特-69図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(外部サービスの利用意向)

内閣府が実施した世論調査28によると、家事について、「外部サービスを利用しながら、それ以外は自分と配偶者で半分ずつ分担」したいと希望する割合が、どの年代でも女性は約3~5割、男性は約3~4割となっている。また、育児・介護については、「外部サービスを利用しながら、それ以外は自分と配偶者で半分ずつ分担」したいと希望する割合が家事と比較して大きく、育児については、女性は約6~7割、男性は約5~6割、介護については、男女とも約7~8割となっている(特-70図)。

特-70図 家事・育児・介護参画に対する意識(性別、年齢別)別ウインドウで開きます
特-70図 家事・育児・介護参画に対する意識(性別、年齢別)

特-70図[CSV形式:5KB]CSVファイル

内閣府の調査でも、家事・育児等への考え方について、「時短家電や外部サービス等を利用して効率化すればいい」と考える割合が、どの年齢階級においても、女性は約6~7割、男性は約6割となっている(特-71図)。サービス別に利用経験・意向を見てみると、男女ともに「市販のおかず購入」の利用経験・意向が最も高く、女性約8割、男性約7割となっている。他のサービスでは、「フードデリバリー・出前利用」は女性約5~7割、男性約5~6割となっている一方、「料理代行」は男女ともに約2~4割にとどまっている。また、「部分的なハウスクリーニング(エアコンだけ等)の利用」は女性約6割、男性4~5割となっている一方、「ハウスクリーニング(家全体)の利用」は女性約4~5割、男性約3~4割となっており、掃除や料理などの家事について丸ごと外部サービスを利用するよりも、一部分で補助的に利用する方が、抵抗が少ない人が多いことが分かる。また、「高齢者支援などヘルパーの利用」は女性約3~5割、男性約3~4割となっている一方、「子供の送迎の外部委託」は女性約1~3割、男性約1~4割、「キッズ・ベビーシッターの利用」は男女ともに約1~4割となっており、介護と比較して、育児では外部サービスを利用することに抵抗がある人が多いと考えられる。

特-71図 家事・育児等への考え方(時短家電や外部サービス等を利用して効率化すればいい)別ウインドウで開きます
特-71図 家事・育児等への考え方(時短家電や外部サービス等を利用して効率化すればいい)

特-71図[CSV形式:1KB]CSVファイル

しかし、年代別に比較すると、男女ともに「料理代行」「フードデリバリー・出前利用」「ハウスクリーニング(家全体)の利用」「子供の送迎の外部委託」「キッズ・ベビーシッターの利用」では、若い年代の方が利用経験・意向が高く、若い年代の方が外部サービス利用について抵抗が少ない傾向が見てとれる(特-72図)。

特-72図 家事・育児等に関する外部サービスの利用経験・意向(年代別)別ウインドウで開きます
特-72図 家事・育児等に関する外部サービスの利用経験・意向(年代別)

特-72図[CSV形式:4KB]CSVファイル

28内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和4(2022)年11月調査)。

(3) 家事・育児のスキル(能力)

男性の家事・育児参画を阻む要因として、男性の家事・育児への抵抗感や自信のなさがあることも考えられるが、内閣府の調査で男女の家事・育児スキルの自己評価及び配偶者の実施する家事・育児への満足度を見ると、特に若い男性ほど自分の家事・育児スキルへの評価が高く、配偶者から見た満足度も高い29

(家事)

配偶者と同居している者の自分自身の家事スキルへの評価と、配偶者の実施する家事への満足度を見てみると、女性は自分自身の家事スキルについて、20~40代は約6割、50代は64.7%、60代は75.0%と、年代が高い方が「十分にある」「どちらかといえばある」とする割合が大きい一方、配偶者(夫)の実施する家事への満足度は、若い世代の方が「とても満足」「まあ満足」とする割合が大きく、40~60代で49.3~55.0%、30代で59.1%、20代で70.4%となっている。男性は、若い世代の方が自分自身の家事スキルについて「十分にある」「どちらかといえばある」とする割合が大きく、40~60代で49.3~52.5%、30代で60.6%、20代で65.0%となっている。また、配偶者(妻)の実施する家事について「とても満足」「まあ満足」とする割合は約8~9割と大きく、年代が高くなるほど大きくなる(特-73表)。

特-73表 家事・育児スキルの自己評価と配偶者の実施する家事・育児への満足度別ウインドウで開きます
特-73表 家事・育児スキルの自己評価と配偶者の実施する家事・育児への満足度

特-73表[CSV形式:1KB]CSVファイル

ただし、配偶者が実施する家事について、女性の場合、「実施頻度が低い」、「本人がやりたいことしかしない」、「雑・おおざっぱ」と不満を持つ割合が大きく、特に「本人がやりたいことしかしない」の割合は、年代が高くなるほど大きくなる傾向にある。男性は「やるべき事によく気が付いてやっている」「丁寧にやっている」と配偶者の実施する家事を評価する項目の割合が大きく、特に「やるべき事によく気が付いてやっている」と評価する割合は年代が高くなるほど大きくなり、60代では約5割となっている(特-74図)。

特-74図 配偶者が実施する家事・育児について別ウインドウで開きます
特-74図 配偶者が実施する家事・育児について

特-74図[CSV形式:3KB]CSVファイル

29同一世帯内の調査(いわゆるカップル調査)ではないことに留意。

(育児)

小学生以下の子供と同居している者の自分自身の育児スキルへの評価と、配偶者の実施する育児への満足度を見てみると、女性は自分自身の育児スキルについて、全ての年代において約6割が「十分にある」「どちらかといえばある」とする一方、配偶者(夫)の実施する育児への満足度は、若い世代の方が「とても満足」「まあ満足」とする割合が大きい。男性は、若い世代の方が自分自身の育児スキルについて、「十分にある」「どちらかといえばある」と評価する割合が大きい。また、配偶者(妻)の実施する育児について「とても満足」「まあ満足」とする割合は、全ての年代で約8~9割と大きい(特-73表再掲)。

配偶者が実施する育児について、女性は、年齢が高くなるほど「実施頻度が低い・低かった」、「本人がやりたいことしかしない・しなかった」と不満を持つ割合が大きい一方、20代では「子供への接し方が丁寧・丁寧だった」「安心して子供を任せられる・任せられた」と評価する割合が上の年代と比較して大きく、男性の育児参画が少しずつ進んできていることが推察される。男性は、いずれの年代においても「やるべき事によく気が付いてやっている・やっていた」「子供への接し方が丁寧・丁寧だった」「安心して子供を任せられる・任せられた」といった、配偶者の育児を評価する項目の割合が大きい(特-74図再掲)。

(4) 男性が家事・育児等に積極的に参加するために必要なこと

内閣府が実施した世論調査30では、男性が育児や介護、家事、地域活動に積極的に参加するために必要なこととして、「男性が育児・家事などに参加することに対する男性自身の抵抗感をなくすこと」と回答する割合は、男性と比較して女性の方が大きく、女性では年代が低くなるほど大きくなる一方、男性では年代が低くなるほど小さくなる傾向にあり、20代では男女で30%ポイント近くの差が生じている(女性71.7%、男性43.3%)。女性が思うほど、男性は家事・育児を実施することに抵抗を感じておらず、若い男性においては特に抵抗が少ないと考えられる。

また、男女ともに、50代以下のどの年代でも「男性による育児・家事などについて、職場における上司や周囲の理解を進めること」の割合が最も大きく、特に、20~40代の女性では約8割となっている。「労働時間の短縮や休暇制度、テレワークなどのICTを利用した多様な働き方を普及することで、仕事以外の時間をより多く持てるようにすること」は、男女ともに年代間で大きな差があり、年代が低い方がそのように回答する割合が大きい傾向にある。男性が家事・育児等に積極的に参加するためには、職場の理解を進めることや、長時間労働の是正、多様かつ柔軟な働き方の推進など、職場での取組を進めていくことが重要であることが分かる(特-75図)31

特-75図 男性が家事・育児等に積極的に参加するために必要なこと別ウインドウで開きます
特-75図 男性が家事・育児等に積極的に参加するために必要なこと

特-75図[CSV形式:3KB]CSVファイル

30内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和4(2022)年11月調査)。

31ここでは、18~29歳の回答を「20代」としている。

ここまで、若い世代における意識の変化を中心に見てきたが、女性は、これまで行われてきた法整備や男女共同参画に関する取組の成果もあり、上の世代よりも、就業継続、昇進、管理職になることへの意欲が高いことが明らかになった。一方、働き方を見ると、依然として正規雇用比率は出産後に低下する傾向にある。無償労働時間が女性に偏っているため、仕事と家事・育児等の両立を課題に感じる者が多いことが、女性の職業生活での活躍が進まない要因の一つとなっている可能性が高い。

男性は、家事・育児等への抵抗感が上の世代と比較して少なく、家事・育児等への参画意欲や育児休業取得意欲も上の世代と比較して高いことが明らかになった。一方、若い世代の男性ほど仕事時間を減らしたいと考える傾向が強いことなどからも、長時間労働等の労働慣行がこの実現を阻んでいる可能性が高い。

コラム5 男性の家事・育児等参画の必要性・効果