平成24年版男女共同参画白書

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第1節 東日本大震災の発生

1 震災の発生

平成23年3月11日(金)14時46分,三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生した。この地震により,宮城県北部で震度7,宮城県南部・中部,福島県中通り・浜通り,茨城県北部・南部及び栃木県北部・南部で震度6強,岩手県沿岸南部・内陸北部・内陸南部,福島県会津,群馬県南部,埼玉県南部及び千葉県北西部で震度6弱が観測された。また,太平洋沿岸を中心に高い津波が観測され,特に東北地方から関東地方の太平洋沿岸では大きな被害が生じた。さらに,東京電力福島第一原子力発電所が深刻な被害を受け,大規模な原子力発電所事故が発生した。

被害が大きかった岩手県,宮城県及び福島県の3県における死者のうち,検視等を終えた者(平成24年3月11日時点)は,女性8,363人,男性7,360人,性別不詳63人となっており,女性が男性より1,000人程度多い。この差は,ほとんどが70歳以上の死者数の差によるもので,高齢者で男女の死者数の差が大きくなっている(第1-特-1図)。

第1-特- 1 図 東日本大震災の男女別・年齢階層別死者数(岩手県・宮城県・福島県) 別ウインドウで開きます
第1-特- 1 図 東日本大震災の男女別・年齢階層別死者数(岩手県・宮城県・福島県)

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なお,平成7年に発生した阪神・淡路大震災における兵庫県の死者数は,女性3,680人,男性2,713人と,女性は男性に比べ約1,000人多く,女性は男性の約1.4倍であった(第1-特-2図)。

第1-特- 2 図 阪神・淡路大震災の男女別・年齢階層別死者数(兵庫県) 別ウインドウで開きます
第1-特- 2 図 阪神・淡路大震災の男女別・年齢階層別死者数(兵庫県)

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阪神・淡路大震災では,死因の70%以上が建物の倒壊等に伴う窒息・圧死によるものであったが,東日本大震災では,死因の90%以上が津波に巻き込まれたことによる溺死となっている。

岩手県,宮城県及び福島県の死者数と,平成22年国勢調査に基づく3県の人口とを男女別・年齢階級別に比較すると,人口に占める60歳以上の割合が,女性35.0%,男性28.9%であるのに対し,死者数に占める60歳以上の割合は,女性67.6%,男性63.7%となっており,人口に占める割合に比べて,男女を問わず高齢者が多く犠牲となったことが分かる。女性では,80歳以上の人口は1割に満たないが,死者数の4分の1以上となっている(第1-特-3図)。

第1-特-3図 東日本大震災における男女別死者数と地域人口の年齢構成比較(岩手県・宮城県・福島県) 別ウインドウで開きます
第1-特-3図 東日本大震災における男女別死者数と地域人口の年齢構成比較(岩手県・宮城県・福島県)

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2 救出・救助活動等

今回の震災では,被害が広範囲にわたったことから,警察,消防,海上保安庁及び自衛隊が連携し,大規模な救出・救助活動が行われた。

警察庁では,全国の警察機関から部隊を派遣し,広域緊急援助隊が,被災地の県警察と一体となって被災者の救出・救助や行方不明者の捜索等を実施した。平成24年5月28日現在,派遣された警察職員は延べ約9万8,700人となっている。

消防庁では,緊急消防救助隊の出動を指示し,発災から平成23年6月6日までの88日間で,延べ約10万9,900人の人員を派遣した。

海上保安庁では,発災直後から,全国の巡視船艇・航空機等を動員して人命救助や行方不明者の捜索等を実施した。平成24年5月21日現在,動員数は延べ,巡視船艇等約1万5,200隻,航空機約4,700機,特殊救難隊員等約2,500人となっている。

防衛省では,最大時で人員約10万7,000人に上る派遣態勢で捜索・救助活動に当たり,発災から平成23年8月31日までの174日間で,延べ人員約1,058万人を派遣した。

なお,警察庁,消防庁,海上保安庁及び防衛省における被災地への派遣人員数について,男女別の内訳は把握されていない。

また,国土交通省では,被災地方公共団体等が行う災害応急対策に対する技術的な支援を円滑かつ迅速に実施することを目的とし,緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)を派遣した。派遣人員数は延べ1万8,115人・日で,うち女性は延べ79人・日となっている。女性が従事した業務としては,被災自治体支援班(被災直後から先行的に派遣し,被災状況や被災自治体の支援ニーズを把握するなど,地方公共団体業務の支援を実施)延べ32人・日,被災状況調査班[ヘリ調査](災害対策用ヘリコプターにより,広域にわたる被災状況調査を実施)1人・日,被災状況調査班[現地調査](実地調査により,公共土木施設等の被害状況を調査し,被災箇所の早期把握を実施)延べ46人・日となっている。

コラム1 警察,消防,海上保安庁及び自衛隊の女性割合の推移
コラム2 災害派遣における女性自衛官等の活躍と託児支援の重要性

3 津波からの避難行動

今回の津波は,これまでの想定をはるかに超えたもので,数多くの方が犠牲となった。中央防災会議の専門調査会報告(平成23年9月)では,地震発生後の津波警報の発表・伝達状況,住民等による避難行動の仕方等が被害の拡大に影響したと考えられるとしている。

内閣府,消防庁及び気象庁では,津波避難行動と被害の関係を分析し,今後,必要な避難対策を講じる上での資料とするため,避難者の避難行動等に関する実態調査(「津波避難等に関する調査」)を共同で実施した。調査は,平成23年7月上旬から下旬にかけ,岩手県,宮城県及び福島県の沿岸地域で県内避難をしている被災者870人(女性525人,男性345人)を対象に,応急仮設住宅・避難所を訪問し,面接方式にて実施した。以下では,実際の避難行動やその背景にある意識等について,主に男女の違いに着目して取りまとめる。

なお,回答者の属性は,男女とも60歳代以上が半数以上で,回答者に占める高齢者の割合が高いことから,例えば,地震が発生したときに約6割が自宅にいたと回答しているなど,調査対象の代表性という点で注意が必要である(第1-特-8図,第1-特-9図)。

第1-特- 8 図 津波避難等に関する調査対象者の年齢階級(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特- 8 図 津波避難等に関する調査対象者の年齢階級(男女別)

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第1-特- 9 図 地震が発生したときにいた場所(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特- 9 図 地震が発生したときにいた場所(男女別)

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地震の揺れがおさまった後の行動は,女性は「家族や知人の安全を確認した」(28.6%)の割合が男性と比べてやや高く,男性は「ラジオから情報を得ようとした」(15.4%)の割合が女性と比べてやや高くなっている(第1-特-10図)。

第1-特-10図 地震の揺れがおさまった後の行動(男女別,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-10図 地震の揺れがおさまった後の行動(男女別,複数回答)

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避難するまでの間,大津波の津波警報や避難の呼びかけの見聞きについては,「見聞きした」と「見聞きしていない」が男女共ほぼ半数で,大きな差は見られない(第1-特-11図)。

第1-特-11図 津波警報や避難の呼びかけの見聞き(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特-11図 津波警報や避難の呼びかけの見聞き(男女別)

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大津波の津波警報を見聞きした人の情報の入手先は,女性は「防災行政無線から」(57.5%),「家族や近所の人から」(7.9%)の割合が男性に比べて高い。一方,男性は「ラジオから」(22.6%),「テレビから」(11.6%)の割合が女性に比べて高く,男女で情報の入手先に違いが見られる(第1-特-12図)。

第1-特-12図 津波警報を見聞きした人の情報の入手先(男女別,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-12図 津波警報を見聞きした人の情報の入手先(男女別,複数回答)

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また,避難の呼びかけを見聞きした人の情報の入手先でも,女性は「家族や近所の人から」(18.3%)と回答した人の割合が男性に比べて高い(第1-特-13図)。

第1-特-13図 避難の呼びかけを見聞きした人の情報の入手先(男女別,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-13図 避難の呼びかけを見聞きした人の情報の入手先(男女別,複数回答)

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さらに,避難したきっかけでも,女性は「家族または近所の人が避難しようといったから」(23.3%)の割合が男性に比べて高い(第1-特-14図)。

第1-特-14図 避難したきっかけ(男女別,複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-14図 避難したきっかけ(男女別,複数回答)

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避難するときに一緒に行動した人がいたかを尋ねたところ,「数名でまとまって避難した」と回答した人の割合は,女性が82.1%であるのに対して,男性は64.0%にとどまり,男性は「ひとりで避難した」(29.2%)の割合が女性に比べて高くなっている(第1-特-15図)。

第1-特-15図 避難するときに一緒に行動した人(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-特-15図 避難するときに一緒に行動した人(男女別)

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このように,同調査では,災害発生時において,女性は,家族や近所の人など周囲の声かけにより情報を入手し,複数人で避難をするなど,男性と比べて地域の人とのつながりが強いことが浮かび上がった。