特集 男女共同参画の視点からの防災・復興

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特集 男女共同参画の視点からの防災・復興

多くの尊い命が失われ,我が国に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から1年3か月が経過した。今もなお,深い悲しみの中,多くの方々が不自由な生活を余儀なくされており,福島県では,東日本大震災に伴う原子力発電所事故により,大変な心労や不安を抱えている。

被災地では,一日も早い生活の安定や地域における暮らしの再生に向け,様々な取組が行われている。震災への対応は正に継続中であるが,一方で,今後このような大規模災害が発生したときに備え,防災対策の充実・強化が急務である。

本特集では,東日本大震災時の状況及び国等の対応について,男女共同参画の視点から検証を行うとともに,現在進行中の防災・復興対策の中で,あるいは未来に向けて,教訓として常に留意すべき事柄を明らかにする。

特集のポイント


第1節 東日本大震災の発生

  • 岩手県,宮城県及び福島県における死者数は女性が男性より多く,女性の死者数の約4分の1が80歳以上となっている。
  • 津波避難等に関する被災者へのアンケート調査では,女性は避難の呼びかけ等の情報を家族や近所の人から入手し,複数人で避難するなど,地域の人とのつながりが強いことが分かる。

第2節 被災者の状況

  • 人口移動の状況を見ると,福島県では,0~14歳の男女とその親世代の中心となる25~44歳の女性の転出超過数が前年に比べ大幅に増加している。
  • 沿岸部では,女性の求職者数が比較的多い食料品製造の職業で求人倍率が低い一方,建設・土木の職業等では求人件数が求職者数を上回っている上,女性の求職者数が極めて少ない。
  • 震災による健康への影響を見ると,睡眠障害,心の元気さ共に,男性よりも女性でより強い影響が見られる。

第3節 復興に関する施策

  • 東日本大震災からの復興の基本方針において,「復興のあらゆる場・組織に,女性の参画を促進する」こととされているが,被災地方公共団体における復興計画策定に当たっての委員会等への女性の参画割合は低い。
  • 被災地における女性の就業・起業等を支援する取組が実施されている。

第4節 東日本大震災の教訓を未来へ

  • 東日本大震災の発生を踏まえ,防災基本計画が修正され,男女共同参画の視点からの記述が拡充したが,地方防災会議における女性委員の割合は低い。
  • 東日本大震災の教訓からは,災害対応における男女共同参画の視点が重要であること,多様な主体による円滑な災害対応のためには,国・地方公共団体,男女共同参画センター,大学,NPO,NGO,地縁団体,企業等の日頃からの連携が重要であること,また,防災・復興における政策・方針決定過程への女性の参画が必要不可欠であることが改めて明らかとなった。