平成23年版男女共同参画白書

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第2節 世界のポジティブ・アクション

1 政治分野におけるポジティブ・アクション

(1) 世界におけるクオータ制の導入状況

列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union, 以下「IPU」という。)の発表によると,世界の議会における女性議員の割合は19.2%(2011年3月31日現在)であり,2000年の13.1%,2005年の16.3%と比較して着実に増加している。

諸外国における女性議員の増加の要因には,各国の社会的状況の変化のほか,女性の政治参加の拡大に向けたポジティブ・アクションの導入があると言える。政治分野におけるポジティブ・アクションの手法の一つとしてクオータ制があるが,IPU,民主主義・選挙支援国際研究所(The International Institute for Democracy and Electoral Assistance, 以下「IDEA」という。),スウェーデンのストックホルム大学が共同で行うクオータ制に関する各国の情報を集めたプロジェクト(以下「クオータ・プロジェクト」という。)では,政治分野におけるクオータ制の種類を次の3つに分類の上,各国におけるクオータ制の導入状況を調査している(以下,クオータ制を導入する国数は,全て2011年3月31日現在で表記。)。


ア 憲法又は法律のいずれかによる議席割当制(Reserved seats,以下「議席割当制」という。)とは,議席のうち一定数を女性に割り当てることを憲法又は法律のいずれかにおいて定めているものである。国会(下院又は一院制)において議席割当制を導入している国は17か国である。


イ 憲法又は法律のいずれかによる候補者クオータ制(Legislated Candidate Quotas,以下「候補者クオータ制」という。)は,議員の候補者名簿の一定割合を女性が占めるようにすることを憲法又は法律のいずれかにおいて定めているものである。国会議員(下院又は一院制)の選挙につき候補者クオータ制を導入している国は34か国である。


ウ 政党による自発的なクオータ制(Voluntary Political Party Quotas)は,政党が党の規則等により,議員候補者の一定割合を女性とすることを定めるものである。国会議員選挙において政党による自発的クオータ制を導入している国は52か国であり,このうち36か国は政党による自発的クオータ制のみを導入しており,16か国では議席割当制又は候補者クオータ制(以下「法的クオータ制」という。)と政党による自発的クオータ制が併用されている。


クオータ・プロジェクトでは世界地図に各国が導入するクオータ制の種類を記号で書き入れた図を作成・公開している(http://www.quotaproject.org/index.cfm)。この図では,法的クオータ制と政党による自発的クオータ制が併用されている場合,2つのクオータ制を併用する国としてではなく単に「法的クオータ制を導入する国」として表記し,政党による自発的クオータ制のみを導入する場合を「政党による自発的クオータ制を導入する国」として表記している。

そこで,本白書において国政レベルでの世界地域別のクオータ制の導入状況を概観するに当たっても,クオータ・プロジェクトにおける上記整理に倣い,議席割当制を導入する国,候補者クオータ制を導入する国,政党による自発的クオータ制のみを導入する国の3つの分類によることとする。

上記の分類に基づいた調査によると,世界で国政レベルにおいてクオータ制の導入が判明している国の数は87か国(議席割当制:17か国,候補者クオータ制:34か国,政党による自発的クオータ制のみ:36か国の合計)となり,政党による自発的クオータ制のみを導入している国が最も多い。

また,国政レベルにおけるクオータ制の導入状況を世界地域別に見ると,アフリカでは53か国中,政治分野におけるクオータ制を導入している国は24か国であり,そのうち12か国では議席割当制が導入されている。世界全体で議席割当制を導入しているのは17か国であるから,議席割当制を導入する国の約7割がアフリカに位置していることになる。

アメリカ大陸については,政治分野におけるクオータ制を導入する国はカリブ諸国では13か国中ドミニカ共和国の1か国のみであるが,中米・北米・南米では22か国中17か国と多くの国々で政治分野におけるクオータ制が導入されている。導入されているクオータ制の種類は,候補者クオータ制を導入している国が多くなっており(17か国中12か国),議席割当制を導入している国はない。

大洋州については,政治分野におけるクオータ制を導入する国は15か国中オーストラリアと東ティモールの2か国のみである。また,国会議員に占める女性割合は,オーストラリアで下院24.7%,上院35.5%,ニュージーランドで33.6%,東ティモールで29.2%と高いものの,多くの国々では5%以下であり,うち5か国では0%である等,全体的に低い数値となっている。

アジアでは,政治分野におけるクオータ制を導入している国は41か国中13か国であり,議席割当制を導入している国が5か国,候補者クオータ制を導入している国が5か国,政党による自発的クオータ制のみを導入している国が3か国となっている。

欧州では,48か国のうち政治分野におけるクオータ制を導入している国は30か国であり,クオータ制を導入している国の割合は5つの地域の中で最も高い。なお,30か国のうち,政党による自発的なクオータ制のみを導入している国が19か国,候補者クオータ制を導入している国が11か国であり,議席割当制を導入している国はない(第1-特-1表)。

第1-特-1表 地域別・諸外国の国会議員に占める女性の割合とクオータ制の取組 別ウインドウで開きます
第1-特-1表 地域別・諸外国の国会議員に占める女性の割合とクオータ制の取組

▲CSVファイル [Excel形式:6KB]CSVファイル

(2) 諸外国におけるポジティブ・アクション

我が国における国会議員に占める女性割合は長期的には増加傾向にあるが,2011年3月現在,186か国中121位であり(IPU発表資料を基に内閣府でカウントし直したもの。以下,諸外国の国会議員に占める女性割合の順位も同様の方法による。),政治分野における女性の参画状況は国際的に見て遅れていると言える(第1-特-2図)。

第1-特-2図 我が国と諸外国の国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-2図 我が国と諸外国の国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

そこで,国会議員に占める女性割合のランキングにおいて我が国よりも上位に位置する国の状況を知るため,国会議員に占める女性割合の推移や,政治分野における女性の参画推進に向けた取組を見ていくこととする。


ア スウェーデン

2011年3月現在,スウェーデンの国会議員(一院制)に占める女性割合は45.0%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界2位である。

1970年代から1990年代にかけて国会議員に占める女性割合は大きく増加し,近年は40%以上と高い水準で推移している(第1-特-3図)。

第1-特-3図 スウェーデンの国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-3図 スウェーデンの国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

スウェーデンにおける女性国会議員増加の背景には,多くの政党が議会に男女が均等な割合で参加することを目標に掲げ,女性候補者を多く擁立する方針をとっていたことがあると考えられている。

また,スウェーデンの国会議員選挙では政党名簿式比例代表制がとられており,1990年代以降,政党による候補者名簿におけるクオータ制の導入が進んだ。1993年,社会民主党が候補者名簿を男女交互とするジッパー制を導入し,左翼党では候補者名簿のうち最低50%を女性とするクオータ制を導入した。

1997年には,環境党が候補者名簿の女性数を候補者全体の50%±1名の範囲内とするクオータ制を導入した。

また,2009年,穏健党では候補者名簿の上位4名を男女2名ずつとするクオータ制を導入した。


イ ノルウェー

2011年3月現在,ノルウェーの国会議員(一院制)に占める女性割合は39.6%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界7位である。

1970年代から1980年代にかけて国会議員の女性割合が10%未満から30%以上へと大きく増加している(第1-特-4図)。ノルウェーの国会議員選挙では政党名簿式比例代表制がとられており,1970年代から1990年代にかけて,政党による候補者名簿におけるクオータ制の導入が進んだ。

第1-特-4図 ノルウェーの国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-4図 ノルウェーの国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

左派社会党は,1975年に候補者名簿における男女の割合をそれぞれ40%以上とするクオータ制を導入した。1983年に,労働党が候補者名簿における男女の割合をそれぞれ50%とするとともに,上位2名には男女双方が含まれるようにするというクオータ制を導入し,1989年には,中央党が候補者名簿における男女の割合をそれぞれ40%以上とするクオータ制を導入した。その後,1993年にキリスト教民主党が候補者名簿における男女の割合をそれぞれ40%以上とするクオータ制を導入した。


ウ ドイツ

2011年3月現在,ドイツの国会議員(下院)3に占める女性割合は32.8%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界20位である。

1970年代から1980年代中盤にかけては,国会議員に占める女性割合は10%を下回る数値であった。しかし,1985年には9.8%だった女性割合は2000年には30.9%と約3倍に増加している(第1-特-5図)。

第1-特-5図 ドイツの国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-5図 ドイツの国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

ドイツの下院議員選挙では小選挙区比例代表併用制がとられており,比例代表部分につき1986年に緑の党が候補者名簿を男女交互とすること,奇数順位を女性とすることという内容のクオータ制を導入した。その後,1990年代にかけて他の政党も候補者名簿におけるクオータ制を導入した。社会民主党では,1970年代から党内においてクオータ制導入に関する議論が始まり,1990年に候補者名簿に占める女性割合を25%とするクオータ制が導入された。その後,候補者名簿に占める女性の割当比率は引き上げられ,1994年からは33%,1998年以降は40%となっている。

1996年には,キリスト教民主同盟が候補者名簿の3分の1を女性とするクオータ制を導入した。また,左派党では候補者名簿の上位2名を女性とし,それ以降は男女交互となるようにするクオータ制を導入している。

3 上院議員は国民の直接選挙ではなく各州政府の代表により構成されている。


エ シンガポール

2011年3月現在,シンガポールの国会議員(一院制)に占める女性割合は23.4%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界47位である。

1970年代から1990年代まで国会議員に占める女性割合は5%を超えたことはなく,女性国会議員が全くいなかった期間も存在していたが,2000年代に入ってからは大幅に増加し20%を超えるようになった(第1-特-6図)。

第1-特-6図 シンガポールの国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-6図 シンガポールの国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

シンガポールの国政選挙では小選挙区とグループ選挙区の並立制がとられている。グループ選挙区制とは,1選挙区につき1政党3~6名の候補者がグループとなって立候補する制度である。これらの選挙制度において,議席割当制,候補者クオータ制,政党による自発的なクオータ制は導入されていない。

また,選挙を経ることなく,大統領の任命により政党に所属しない者に議員資格を与える大統領任命議員制度が1990年に導入されており,2000年代に入ってからは大統領任命議員制度において積極的に女性の任命が行われている。


オ 英国

2011年3月現在,英国の国会議員(下院)4に占める女性割合は22.0%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界55位である。


1970年代から1980年代中盤までは,国会議員に占める女性割合は4%前後で推移していたが,1990年代に入ると大きく伸び始め,2000年には18.4%となり,以降も増加傾向は続いている(第1-特-7図)。

第1-特-7図 英国の国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-7図 英国の国会議員に占める女性割合の推移

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

英国の下院議員選挙では,小選挙区制度がとられており1992年に労働党が候補者名簿におけるクオータ制を導入した。

これは,労働党が引退議席の半分と,労働党が有利な選挙区のうち半分について,候補者を女性のみとする女性単独候補者名簿制であり,1996年に裁判所によって性差別禁止法に照らし違法との判断が示された。

その後2002年の性差別禁止法の改正により,候補者名簿における女性割合を従前より高いものにすることが可能になったことから,労働党は2005年の選挙において1996年以前に導入していた女性単独候補者名簿制を再び導入した。

また,2001年には自由民主党が候補者名簿における女性割合を40%とするクオータ制を導入している。

4 上院議員は非民選議員であり,首相により推薦され,国王に任命される。


カ フランス

2011年3月現在,フランスの国会議員(下院)5に占める女性割合は18.9%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界75位である。

フランスでは,2000年に,選挙の候補者を男女同数とすることを定める法律(パリテ法)が成立し,法律による候補者クオータ制が導入された。

パリテ法により,小選挙区制がとられている下院議員選挙では政党の候補者を男女同数とすること,比例代表制がとられている上院議員選挙では候補者名簿の登載順を男女交互とすることが定められている。

なお,小選挙区制がとられている下院議員選挙につき,男女の候補者の比率の差が2%を超えた政党は助成金が減額される。

1990年代中盤までは国会議員に占める女性割合は10%を下回っていたが,パリテ法の導入後の2000年代には大きく増加している(第1-特-8図)。

第1-特-8図 フランスの国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-8図 フランスの国会議員に占める女性割合の推移

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また,このパリテ法の導入に先立ち,1999年には両性の政治参画平等を促進する条文を追加する憲法改正が行われている。

5 上院の元老院議員は,国民の直接選挙ではなく国会議員や地方議会議員等による県単位の間接選挙により選出される。


キ 米国

2011年3月現在,米国の国会議員(下院)に占める女性割合は16.8%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界85位である。

米国の女性議員割合は1970年代から現在まで比較的緩やかに一定の速度で増加を続けている(第1-特-9図)。

第1-特-9図 米国の国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-9図 米国の国会議員に占める女性割合の推移

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政治分野におけるクオータ制は導入されておらず,政治活動委員会(Political Action Committee, 以下「PAC」という。)と呼ばれる民間の選挙支援組織のうち女性候補者の支援を目的とする団体(2008年現在14団体)が女性候補者に対する資金援助,女性候補者への投票の呼びかけ等を行っている。

また,PACの中には,女性の州議会議員を対象に,議員活動や政策策定のための学習機会の提供等の支援や,若い女性を対象とした研修等を行っているものもある。


ク 韓国

2011年3月現在,韓国の国会議員(一院制)に占める女性割合は14.7%であり,国会議員に占める女性割合の順位は世界97位である。

1990年代半ばには2.0%だった国会議員に占める女性割合は2000年には5.9%,2005年には13.4%に増えている(第1-特-10図)。

第1-特-10図 韓国の国会議員に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-10図 韓国の国会議員に占める女性割合の推移

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韓国の国会議員選挙では小選挙区比例代表併用制がとられており,2000年,政党法の改正により比例代表候補における女性クオータ制が法律により導入された。当初,割当比率は30%であったが,その後の2004年の法改正により50%に引き上げられた。2005年には候補者名簿の奇数順位に女性を割り当てることが定められ,これに違反する候補者名簿は無効となる。

2004年には,政党に対し小選挙区の候補者のうち30%を女性とする努力義務が政党法により課された。政党法は,2005年に公職選挙法に移管されたことから,これらのクオータ制は現在は公職選挙法において規定されている。

また,政党に対しては小選挙区における女性の候補者の比率に応じて補助金が支給される。

クオータ制の導入に加え,2004年には政治資金法により,各党は国庫からの政党助成金の10%を女性政治家の育成・発展のために使うことが規定された。

2 行政分野におけるポジティブ・アクション

諸外国の中には,行政分野における女性の参画拡大に向け,クオータ制やゴール・アンド・タイムテーブル方式等のポジティブ・アクションを導入している例がある。

以下,韓国,ドイツ,米国の具体的な取組内容を紹介する。


(1) 韓国

2009年現在,韓国の女性国家公務員割合は27.4%であり,うち課長相当職(4級)以上の上位の役職の女性割合は,6.8%である。

韓国では,公務員において女性の上位職進出を図ることを目的として,1996年から女性国家公務員の採用目標(10人以上採用する試験において10%,その後引き上げ)を設定し,追加合格を認める「女性公務員採用目標制」を導入した。当初は,女性の参加が少ない分野において,合理的な範囲内で女性の参画を促進するためにとられる暫定的な優遇措置であったが,2003年からは「両性平等採用目標制」となり,選抜予定人員が5名以上の採用試験において,いずれかの性が各級ごとに3割を下回らないこととされ,片方の性の合格者の比率が30%未満の場合,合格線の範囲以内で該当する性(男性・女性)の応募者を目標率まで追加合格させることとなった。同目標は2008年から2012年まで5年延長されている。

また,管理職の女性公務員を養成するため,2002年からは,2001年末現在で4.8%の課長補佐相当職(5級)以上の女性国家公務員について,2006年末までに10%以上とする努力目標を設定した「女性管理者任用拡大計画」を推進し,2006年現在で9.6%となった。その後,2006年末現在で5.4%の課長相当職(4級)以上の女性国家公務員について,2011年末までに10%以上とする努力目標を設定した「女性管理者任用拡大計画」に2007年から取り組んでいる。


(2) ドイツ

2009年現在,ドイツの女性国家公務員割合は35.3%であり,うち上位の役職(本省庁の俸給表A-15等級(相当)以上)の女性割合は,23.4%である。

ドイツでは,連邦公務員について,1994年から女性の地位向上のための取組が行われていたが,2001年の連邦平等法制定により,女性の割合が少ない領域では,適性,業績,能力が同等であることを条件として,競争相手の男性の個人的事情が当該女性よりも重大でない場合に限り,職業訓練生の受入れ,採用,昇進の際に,女性を優先することができるという「プラス要素方式」のポジティブ・アクションを実施してきた。また,同法では,公務員を採用する際,採用面接の一次審査に男女同数を招かなければならず,候補者に対して,家族構成や妊娠の可能性等に関する質問をすることができないと規定されている。


(3) 米国

2009年現在,米国の女性国家公務員割合は44.2%であり,うち上級管理職の女性割合は,30.4%である。

1978年の公務員改革法により,連邦政府におけるマイノリティーや女性の雇用の機会均等を進めるため,連邦機会均等採用計画が設けられ,連邦政府におけるマイノリティーや女性の雇用割合が,労働力人口におけるマイノリティーや女性の雇用割合を下回らないことが求められている。同計画に基づき,省庁ごとに政策と計画等を策定することとなっており,人事管理庁は,各省庁の報告書を毎年議会に提出している。

3 経済分野におけるポジティブ・アクション

近年,諸外国において管理職や取締役における女性の参画促進に向けた新たな取組を導入する動きが見られる。


(1) 取締役会におけるクオータ制

取締役会におけるクオータ制とは,個々の企業に対し,取締役会の構成メンバーに占める男女双方が一定の割合以上になることを求める制度である。

これまでに,法律により取締役会におけるクオータ制を導入した国として,イスラエル,ノルウェー,スペイン,オランダ,アイスランド,フランスがある(第1-特-11表)。

第1-特-11表 各国の法律に基づく取締役クオータ制の概要 別ウインドウで開きます
第1-特-11表 各国の法律に基づく取締役クオータ制の概要

▲CSVファイル [Excel形式:2KB]CSVファイル

具体的には,上場企業や従業員数が一定以上の企業を適用対象とする国が多い。

一方,ノルウェーでは,全ての株式会社を対象とした上で,取締役の人数に応じた割当を行っており,取締役が2~3名の場合は取締役に男女両方含まれること,4~5名の場合は一方の性が2名を下回らないこと,6~8名の場合は一方の性が3名を下回らないこと,9名の場合は一方の性が4名を下回らないこと,10名以上の場合は男女双方がそれぞれ40%以上とすることが定められている。

法律で定められた割合を遵守しない場合,オランダでは,企業に対し遵守しない理由の説明が求められている。また,ノルウェーでは,割当を遵守しない企業に対しては,企業名の公表,企業の解散という制裁を課すことを定めている。

一方,スペインでは,割当を遵守しない企業に対する制裁は定められていないが,スペイン政府は法律で定められた割合を遵守している場合,その点を公共契約において考慮することを発表している。


(2) 女性管理職に関する諸外国の取組

アイスランドでは,2010年,従業員25名以上の企業に対し,男女別の従業員数と管理職数の公表を求める法律が制定された。

また,デンマークでは,2008年に政府と企業等の団体の連携により,女性の管理職を増やすための憲章が作成された。大企業,中小企業,大学,政府機関等がこの憲章に署名しており,署名した団体は女性管理職数の目標とその達成期限を設定し,女性管理職の増加に向けた自主的取組を行う。さらに,署名団体は取組の進捗状況に関する報告書を2年ごとに提出することとなっている。

4 科学技術・学術分野におけるポジティブ・アクション

諸外国では,法律により,科学技術・学術分野における女性クオータ制を導入している例も見られる。

(1) オーストリア

オーストリアでは,大学法により大学の全ての部局の職員の40%を女性にすることが定められている。

(2) ギリシャ

ギリシャでは,2008年法3653号第57条により,研究所,科学技術に関連する国家機関及び委員会の科学者の採用に当たって3分の1を女性とするというクオータ制を定めた。

コラム2 男女の平等推進と組織の社会的責任~ISO26000社会的責任に関する手引~

コラム3 国連グローバル・コンパクトとUNIFEMの「女性のエンパワーメントのための指針」