「共同参画」2014年 3・4月号

「共同参画」2014年 3・4月号

特集1

企業における女性の活躍状況の「見える化(可視化)」の推進について
内閣府男女共同参画局推進課・調査課

内閣府男女共同参画局では、本年1月と2月に女性の活躍状況の「見える化」に関する取組の公表を行いました。この内容について、ご紹介します。

1.はじめに

1.企業における女性の活躍状況の「見える化」の趣旨

昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」においては、「女性の活躍」は我が国の成長戦略の中核であるとして、「出産・子育て等による離職の減少」、「指導的地位に占める女性の割合の増加」に向けた施策を盛り込み、現在、具体化に向けた取組を進めています。今回の特集では、中でも、今年度から力を入れて取り組んでいる「企業における女性の活躍状況に関する『見える化(可視化)』」をご紹介します。

女性の活躍に関する情報のほとんどは非財務情報に分類されますが、役員会における女性の割合を始めとする企業の各種男女別情報またはジェンダー・ダイバーシティへの取組を、企業の評価に当たっての重要な判断材料の一つとする投資家も現れています。「女性の活躍を推進している企業である」との評価が、資本市場でもポジティブに評価され得るとの期待が高まりつつあり、企業の取組状況を「見える化」する仕組みづくりが喫緊の課題となっています。

2.諸外国の取組

海外の取組を見ると、例えば韓国では、政府が企業に対して、従業員や管理職のそれぞれに女性が占める割合に関するデータの作成・届出を求め、それらの割合が一定の水準に達しない企業に対して改善策の策定と実施を要請しています。

オーストラリアでは、2012年から、従業員100人以上の企業に法律で定められた男女共同参画に関する6項目に関する報告書を政府に提出することを義務付ける仕組みが導入されました。報告書が提出されない場合は、企業名の公表や、政府との契約や補助金受給に係る資格を失うといった措置も用意されています。

さらに、英国、オーストラリア等では、上場企業が自主的に取締役会における女性の割合に係る目標等を設定・公表して事業年度ごとにその進捗状況を開示することを通じて、女性の活躍促進を後押ししています。

3.我が国の取組

我が国では、現在のところ、義務的な情報開示ではなく企業の任意によるものとし、開示しない場合のペナルティも設けていません。このため、まずは、政府のホームページや「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を通じて、企業による主体的な情報開示を促進することとしています。

女性の活躍推進に向けた企業の取組を、投資家、就業希望者、消費者等の皆様から「見える」ようにし、当該企業が市場で評価されること、また、学生の皆様の就職活動にも役立てていただくことを通じて、企業の自主的な取組が、他の企業にも波及していくような好循環を実現したいと考えています。


2 「女性の活躍『見える化』サイト」の開設

「見える化」の取組の1つ目は、「女性の活躍『見える化』サイト」の開設です。本年1月末から、上場企業のうち了解をいただいた1,150社(全上場企業の32.4%)について、女性の活躍状況等に関する情報を内閣府ホームページで公表しています。

公表情報は、役員・管理職の女性比率や女性登用に関する目標のほか、男女別の勤続年数、新卒者の定着率、育休の取得者数・復職率、残業時間、年休取得率等の13項目です。

本サイトの特徴は、(1)業界により、女性の活躍状況が異なる点に配慮し、企業情報を業種毎(※33業種)に整理していること、(2)統一フォーマットを用いて一覧表形式で公表するため、企業間の比較がしやすいことです。


女性の活躍「見える化」サイトのイメージ(1)


女性の活躍「見える化」サイトのイメージ(2)


※ 33業種

水産・農林、鉱業、建設、食料品、繊維製品、パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭、ゴム製品、ガラス・土石製品、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品、電気・ガス、情報・通信、陸運、海運、空運、倉庫・運輸、卸売業、小売業、銀行、証券・商品先物、保険、その他金融、不動産、サービス

現在、この「女性の活躍『見える化』サイト」について、各企業や教育機関から多くの問い合わせや情報登録の依頼を頂いています。皆様、ぜひアクセスしてみてください。

http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/mierukasite.html


3 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」における女性の活躍に関する開示状況(中間報告)

「見える化」の取組の2つ目は、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」における女性の活躍に関する開示の促進です。

本年2月6日に、「『女性の活躍』と非財務情報の開示~経営戦略としての取組に向けて~」と題するシンポジウムを開催しました。

同シンポジウムでは、小林いずみ氏(多数国間投資保証機関(MIGA)前長官)による基調講演、有識者によるパネルディスカッションのほか、内閣府男女共同参画局より、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」における女性の活躍状況の開示状況と好事例の発表を行いました。本稿では、本発表の概要について、ご紹介いたします。

1.「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領の改訂について

内閣府からの要請を受けて、平成25年4月、各金融商品取引所(※1)は、上場企業に作成を求める「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(※2、以下「CG報告書」という。)の記載要領(ガイドライン)の改訂を行いました。本改訂では、企業における女性の活躍状況の開示促進の観点から、任意の記載事項として、「役員等の男女別構成」や「役員への女性の登用に関する現状」が新たに盛り込まれました(「共同参画」25年7月号参照)

※1 東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所
※2 投資者に各企業のコーポレート・ガバナンスの状況をより明確に伝えることを目的として、国内の上場企業が金融商品取引所の有価証券上場規程等に基づいて作成を求められるもの。同報告書に記載すべき事項は、各金融商品取引所が定める「記載要領」で定められている。

2.企業における「女性活躍状況」の開示状況の調査結果

内閣府男女共同参画局では、本改訂を踏まえ、調査時点を平成25年9月末としCG報告書で女性活躍状況を自主的に開示している企業数や開示内容等を調査しました。なお、今回の調査結果は中間報告であり、今後、平成25年12月末時点での開示状況を取りまとめる予定です。

(1)「女性活躍状況」の記載状況

全上場企業(約3,500社)のうち、上記調査時点において、CG報告書の最終更新日がCG報告書「記載要領」の改訂(平成25年4月18日)の翌日以降の2,995社を対象として、「女性の活躍状況」(役員の男女別構成、女性の活躍推進の方針、性別にかかわらず処遇・登用等)の開示状況について分析を行いました。

「女性の活躍状況」に関して記載のある企業は、526社・17.6%となっています。また、取締役に女性がいる旨の記載がある企業は、4.1%・124社となっています(図表1)。

「女性の活躍状況」を記載している526社について、具体的な記載内容をみると、「役員の男女別構成」が66.7%、「両立支援・WLB促進に関する具体的な取組内容」が42.0%、「性差にかかわらずに処遇・登用」が23.4%などとなっています(図表2)。


図表1 CG報告書における開示状況


図表2 「女性の活躍状況」に関する記載内容


(2)企業の属性別にみた特徴

また、どのような企業で女性の活躍状況や、取締役に女性がいる旨の記載が多いのかについて分析を行いました。その結果、(1)取締役の人数が多い、(2)社外取締役の人数が多い(図表3)、(3)外国人持株比率が高い(図表4)、(4)売上高(連結)が高いほど記載が多い、といった特徴がみられました。

また、東証17業種別では、おおむね女性従業員比率が高い業種ほど記載が多いという特徴がみられました。ただし、「銀行」、「電力・ガス」については、女性従業員比率の水準と比べて女性の活躍状況の記載している企業の比率が高くなっています(図表5)。


図表3 社外取締役人数別にみた記載状況


図表4 外国人持株比率別にみた記載状況


図表5 業種別(東証17業種)にみた記載状況


3.「女性活躍状況」に関する記載の好事例

続いて、CG報告書における「女性の活躍状況」に関する記載内容の好事例と、その選定の基本的な考え方をご紹介します。

(1)選定の基本的な考え方

好事例の選定の基本的な考え方として、「CG報告書での記載がとりわけ期待される、取締役等の役員の男女別構成が何らか記載されている」ことを必須条件と考えました。当該条件でスクリーニングされた好事例の対象企業は、351社となっています。

加えて、(1)投資家にとって、企業における女性の活躍状況がわかりやすい内容となっているか(例:女性管理職比率のデータ等)、(2)経営戦略における女性の活躍推進の位置づけが明確か、(3)他企業や時系列での比較が可能か(例:人数ではなく比率、女性管理職の目標値と現状値等)といった観点が優れている記載を、好事例と考えました。

(2)好事例の紹介

このような考え方に基づいて、「最重要」「重要」「関連」の3段階に分けて具体的な着眼点(図表6)を設定し、着眼点ごとに好事例を選定しました(図表7)。

図表7に掲載した全20社の実際の記載例は、シンポジウム第2部資料に詳しく掲載しておりますので、内閣府男女共同参画局HP内の「シンポジウムの開催報告」をご覧下さい。

http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/eventreport.html


図表6 好事例選定の具体的な着眼点


図表7 着眼点ごとの記載事例


ここでは、特に「役員の男女別構成詳細」について、記載の好事例を以下に2つご紹介いたします。

各種ガバナンス機構(取締役会・監査役会等)別に役員の男女別構成詳細を記載

取締役5名のうち、1名が独立社外取締役であり、男性5名で構成しております。また執行役員は、社長を除き5名の常務執行役員で構成されており、うち1名は女性であります。

(中略)

監査役3名全員が独立社外監査役であり、男性2名、女性1名で構成しております。内部統制に関わる専門的事項について審議し、取締役会への提言、報告を行う専門委員会として、指名報酬諮問委員会(独立社外委員過半数、うち女性1名)、内部統制委員会、リスクマネジメント委員会、財務報告の信頼性確保委員会等を設置し、ガバナンス体制を整備しております。

(株式会社メックの抜粋)

取締役及び監査役の社内/社外別の男女別構成を記載

当社は監査役会設置会社です。取締役会は社内取締役9名(うち女性0名)、社外取締役2名(うち女性1名)の計11名、監査役会は社内監査役2名(うち女性0名)、社外監査役3名(うち女性0名)の計5名で構成しております。

(日本電産株式会社の抜粋)


4.おわりに

今回の開示状況調査では、企業における役員への女性の登用状況等について、CG報告書「記載要領」の改訂(平成25年4月)以降、一定程度開示が進んだことが明らかになりました。しかし、何らかの開示を行っている企業は全体の2割弱と、決して十分ではありません。

内閣府では今後も、取締役を始めとする役員の男女別構成等の開示や、投資家にとって、分かりやすく使いやすい記載内容の普及、経営戦略上の「女性の活躍」の位置付けが明確な記載内容の普及など、一層の開示促進に向けて、企業への働きかけや、好事例の紹介等を行っていきます。