少子化と男女共同参画に関する専門調査会

  1. 日時 平成17年4月15日(金)15:30~17:42
  2. 場所 内閣府3階特別会議室
  3. 出席委員
    佐藤会長、阿部委員、岩男委員、網野委員、大沢委員、杉山委員、高橋委員、武石委員、布山委員、橘木委員、藻谷委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 主要国の制度分析について
    (1)
    主要10か国の制度概要
    (2)
    EUの雇用戦略と家族政策
    <報告者>株式会社ニッセイ基礎研究所上席主任研究員、少子化と男女共同参画に関する専門調査会委員 武石惠美子氏
    (3)
    スウェーデン、ドイツ及びフランスにおける家族政策
    <報告者>内閣府政策統括官付企画官(日本21世紀ビジョン担当)兼  経済社会総合研究所主任研究官 林伴子氏
    (4)
    イギリスにおける雇用政策と家族政策
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
主要10か国の制度概要 <1> [PDF形式:329KB] 別ウインドウで開きます <2> [PDF形式:221KB] 別ウインドウで開きます
資料2
武石委員説明資料 [PDF形式:320KB] 別ウインドウで開きます
資料3
林主任研究官説明資料 [PDF形式:181KB] 別ウインドウで開きます
資料4
事務局説明資料(英国における雇用政策)[PDF形式:219KB] 別ウインドウで開きます
資料5
管理者を対象とした両立支援策に関する意識調査 [PDF形式:316KB] 別ウインドウで開きます
資料6
管理者を対象とした両立支援策に関する意識調査概要 [PDF形式:80KB] 別ウインドウで開きます
資料7
第3回専門調査会議事録

(議事内容)

佐藤会長
時間もまいりましたので、ただいまから男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会の第5回会合を始めさせていただきます。
 お忙しい中御参加いただいてどうもありがとうございます。議事に先立ちまして、事務局において審議官の人事異動と、新たな課の設置がございましたので、それについて御紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
原田審議官
4月1日から男女共同参画局担当審議官になりました原田でございます。今後お世話になりますが、よろしくお願いします。
塩満調査課長
4月1日から調査課が新たに設置されました。課長を務めさせていただきます塩満と申します。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
佐藤会長
ありがとうございました。では、お手元の議事次第に即して議事を進めたいと思います。
 本専門調査会では、統計分析について議論しているわけでありますけれども、本日は、その背景にある制度、「主要国の制度分析について」の素材について議論するということであります。制度分析の全体像については三菱総研の方から御説明いただくんですかね。その後、EUの雇用戦略と家族政策について、武石委員から。それからスウェーデン、ドイツ及びフランスにおける家族生活について、内閣府の経済社会総合研究所の林主任研究官にお話をいただくということになります。事務局の方で制度概要やイギリスの雇用制度についても資料を用意していただいているということになっています。
 それでは、まず事務局から主要10か国の制度概要について御説明いただいて、その後順次、先ほどの順に従って御説明いただければというふうに思います。それでは、よろしくお願いします。
三菱総研
それでは、お手元の資料1と右上に書かれております「主要10か国における制度分析」の方の御説明をさせていただきます。
 この後、詳細にそれぞれの国の御報告がございますので、こちらの方はコンパクトにポイントを御説明したいと思います。
 まず、調査目的でございますけれども、基本的に今回、海外先進諸国における少子化の動向ですとか、女性の労働力市場への参画に関係があると思われる制度、施策等を整理いたしました。この1ページの下にありますような10か国を今回モデルとして選ばせていただいております。
 2ページ目、3ページ目をお開きいただきたいんですけれども、まず、2ページ目の上にあります分析項目とございます1から4ですね。1として雇用関連制度、2としまして育児における経済的支援、児童手当等です。3としまして、地域における子育て支援、保育所のサービスです。そういったところ。4その他としまして、教育、税制等とありますけれども、税関係ですとか、教育制度等、その他ということで4つの分野に着目して整理いたしました。
 2ページ目の中ほどから下から3ページ目にかけて2つ表を入れております。(1)スウェーデンということで、これ以降各国同じような形で整理しておりますけれども、例えば、スウェーデンということで、まず1つ目の表は主な関連の施策・制度を整理しております。2つ目の表は過去30年間の主な動きということで、1970年以降、先ほど申し上げましたような関連の制度等で、あるいは制度以外にも、例えば合計特殊出生率ですとか、あるいは女性の労働力率に影響を与えると思われるような経済動向等も幾つか入れさせていただいて整理したものでございます。
 次の5ページ目が制度分析ということで、ここで合計特殊出生率と女性就業率の推移を並べております。タイトルが女性労働力率となっておりまして、これまでのは就業率でいろいろ議論されているところがありましたけれども、ここの就業率は、今後労働力率の方に差し替えるような形で考えたいと思っておりますが、基本的にこういった流れがあるというところで、特に合計特殊出生率のところでのグラフのところに、関連すると思われる制度を先ほど年表から抜き取って示しております。
 もう一つ、A3横長で「関連施策・制度一覧」というのがございます。こちらは説明資料を抜粋してまとめたものでございまして、この2ページ目、3ページ目に掲げているグラフと同じものですので、どちらを見ても同じですので、横並びに見ながら、これ以降御説明させていただきます。
 まず、スウェーデンなんですけれども、こちらの方ですね、家庭機能の外部化を割合積極的に進めていて、育児等への公的支援が非常に活発な国でございますけれども、そういった中で、この5ページ目のところでいきますと、合計特殊出生率の谷が2つございます。
 1980年代の前半ぐらいの谷があって、そこから上がってきて、90年代の経済的な低迷で、また合計特殊出生率が下がっていますけれども、90年代の後半でまた若干上がってきているという谷があります。
 80年代の前半から中盤にかけての谷のあたりでは、児童手当の引き上げですとか、保育サービスの権利保障などといったような動きが見られます。また、90年代の後半を見ますと、95年に保育サービスを法的に義務付けるという動きがあることですとか、あと90年代の終わりの方ですけれども、児童手当の支給額を引き上げるといったところ、あるいは両親手当の改善、そういったものがあると。こういったものが合計特殊出生率の変化に直接効いているのかどうかまではわかりません。わかりませんけれども、このあたりにこういったものがあったということを一応示しております。
 次に6ページ目以降、フィンランドなんですけれども、8ページ目の方に同様のグラフがございます。フィンランドはデータの制約上、合計特殊出生率が5年刻みが割合多くて、90年代後半はかなり細かくとれているんですけれども、若干、カーブがスムーズな流れになっていると思います。もう少しとれればとる中で、もう少し細かい動きが見えると思うんですけれども、こうやって見ますと、80年代の中盤に一回なだらかだったところが、合計特殊出生率が上がり始めている。また、90年代後半に一回谷がありますけれども、また上がってきている。80年代の中盤あたりには、自宅での育児をする人を対象とした手当を導入しているですとか、あと保育サービスの供給が需要に追いついたといったところがあります。また、90年代後半には民間保育園に対する補助金の支給というのがある。このあたりが合計特殊出生率の谷と関係しているのかどうかというところでございます。
 9ページ以降はオランダということで、11ページにオランダの方のグラフがございます。こちらはパートタイム労働の推進に力点を置いている国ということで、非常に顕著ですけれども、その起点となっておりますのは、ワッセナーの労使合意が80年代の前半にあります。このあたりから徐々に合計特殊出生率は緩やかに上がってきております。特に90年代以降ですね。出産休暇ですとか、あるいは「フルタイム・パートタイム労働の均等待遇に関する法律」ですとか、あるいは「雇用の柔軟性と安定のための法律」といった、そういった法制度が整いつつある中で、合計特殊出生率も顕著に延びているといった状況がございます。
 12ページ以降アメリカということで、アメリカは14ページに同様のグラフがございますけれども、アメリカの方はスウェーデンと同じように、男女平等意識が高いですし、あとオランダと違うところとしては、女性のフルタイムの就労が多いとございますけれども、そういう中で家庭機能の外部化が進んでいると。ただし、公的な支援というのは余りなくて、どちらかというと民間が中心になっているという中で、ここのグラフにありますように、余り制度としては落とし込めなかったところがございます。
 その中でも、あえて関係のありそうなものを見ますと、80年代後半の「家族援助法」の制定、それから90年代中盤の児童家庭庁に保育局が設置されたこと。このあたりがあるということでございます。
 15ページからドイツということでございますけれども、ドイツは子育ては基本的に家庭で行うべきという社会規範が根強い国ということですけれども、そういう中で、出産育児休暇というのは、かなり重視されているという中で、逆に保育サービスは遅れてきているというところで、17ページの合計特殊出生率を見ていただくと、基本的に90年代半ばぐらいまで下がってきていて、80年代中盤に「就業促進法」ですとか、家族手当の創設で若干上がっておりまして、その後、90年代の中盤あたりで「税法改正」、「母性保護法改正」のあたりで、またもう少し合計特殊出生率は上がり始めてきているというところがございますけれども、そういったところがございます。
 19ページがイギリスということで、22ページでグラフがございます。こちらもドイツと同じように、子どもは家庭で育てるべきという規範が強いところで、保育所はやはりドイツと同様に余り整備されてありません。これで経済的支援がもっぱら中心だったというところがございますけれども、80年代後半ぐらいに少し合計特殊出生率が緩やかに回復してきている後ぐらいに「児童法」が制定されていて、90年代に入ってから、また合計特殊出生率が下がり始めてきているわけですけれども、微妙なんですけれども、95年あたりは若干合計特殊出生率は回復しているときに「民間登録保育所の普及」、90年代を通じて、民間の保育所がようやく普及始めてきておりまして、その当たりが90年代を通してあるんですけれども、また、「行動準則の策定」ということで、男女共同参画の賃金格差を是正するためのガイドライン等ができておるというところがございます。そういう中で若干減少傾向にはあります。
 カナダが23ページ以降ですけれども、25ページにグラフがございます。こちらもデータの制約がありまして、90年代後半ぐらいまでしか合計特殊出生率がないんですけれども、これで見ますと、合計特殊出生率が一端上がっているのが80年代中盤です。このあたりで「雇用衡平法」ということで、労働者の機会均等を求めた法律ですとか、あと90年代後半ぐらいの「児童税額控除導入」しているというふうなできごとがございます。
 26ページからフランスということでございますけれども、29ページにグラフがございます。フランスの方の一つの目立つ谷として、90年代の初めぐらいにへこんだところがございまして、それ以降上がってきて、90年代中盤以降上昇のカーブがちょっと急になってきているかなというところがございます。このあたりに丸をつけていますけれども、90年代の前半ですと「保育ママの職業的地位強化」ですとか、「認定保育ママ制度支援」ということで、そういった保育制度が充実してきていること。また90年代後半では、「週35時間労働奨励法の公布」などがありました。
 31ページ以降イタリアということでございますけれども、33ページにグラフがございます。イタリアは合計特殊出生率は低下傾向で、少子化がかなり進行している国でございますけれども、ファシズムの国家政策の多産奨励の反動ということで、余り育児というか、特に出産とか、育児等の分は弱いのかなというとこが拾っていく中で感じられます。そういった中で、あえて挙げると、このグラフにあるような取組が見られます。90年代の後半ぐらいで、合計特殊出生率が若干底を打って、緩やかに上昇していますけれども、そのあたりで見られますのは、「家族手当拡充」ですとか、「新規保育所設置支援」、こういったものがありました。
 最後日本ですけれども、37ページにグラフを挙げております。合計特殊出生率は基本的に低下基調でずっと続いておりまして、回復の兆しというのは余り見られないということがございます。基本的にいろいろ育児ですとか、女性の就労と育児の両立支援等の策もいろいろとっているわけですけれども、こういった形で下がってきているというところでございます。
 すみません。駆け足ですけれども、一応御説明を終わります。
佐藤会長
どうもありがとうございました。合計特殊出生率と女性の就業率の関係は、制度的なものが媒介になっているということで、主要国について、それぞれに影響する制度についてレビューしていただいているんですけれども、余り時間がとれないんですけれども、一応、今こういう作業をやっている途中ですけれども、少しこの辺を見た方がいいとか、あるいは追加的にこういうデータを集めた方がいいとか、あるいは今のことで御質問があれば……。
岩男会長代理
よろしいですか。ほかの国でも同じようなことがあるかもしれませんけれども、特にアメリカの場合に、エスニックグループで非常に出生率が違うんですね。ですから、平均しないで、白人、それからアフリカ系、アジア系……というふうに、せめて3つぐらい分けてみた方がいいんじゃないかという気がいたしますけれども。たしか人口統計やなんかは、エスニックグループ別に出しているんですね。ですから、それを使われたら、ちょっと違う姿が浮かび上がるかもしれないというふうに思います。
佐藤会長
特にアメリカの場合は移民が多いですからね。その辺、データ分析のときでも留意するというようなことにできればと思います。
 ほかの方、いかがでしょうか。
藻谷委員
ちょっと本質な質問ではないんですが、世間でよく誤解されているのと数字が違うということで、非常におもしろいと思ったのは、日本では前々から、この委員会で言われていることなんですが、改めて諸外国に比べて、もともと女性就業率が高く、そして最近は、逆に抜かれつつあるわけですが、早い話、全然女性就業率は変わっていないし、別に雇用機会均等法ができたから、皆さん女性が就職して、その結果、子どもが減ったというマスコミのストーリーは、このグラフからは全くうそだということがわかるんですけれども、それについては、余りそういう制度は関係ないという、オランダなんかと好対照であるということは、改めて非常に強く思ったわけですが、今回の本題にないんですけれども、この点については、前に議論がありましたですかね。雇用機会均等法で急に悪化したんではないということについての確認というか。
矢島分析官
まだ検討は十分にされていないと思うので、御指摘いただいてありがたいんですけれども、基本的な認識としましては、そういった制度を整備してきても、出生率にどうも影響はないのではないかということで、今回の社会環境を見てみようという研究をしているのと理解しておりますけれども、ただ、制度についても、今回、どういったものが導入されているかというのを見ておりますが、諸外国と日本の制度でどこが違うのかといったあたりですね、質的な部分も含めて、少し検討する必要があるんじゃないかと思っております。
藻谷委員
いわゆる均等法、女性の就職、その結果、子どもの減少という三段論法の真ん中が全く欠落しているということは、やはりとてもとてもひどい話なので、非常に改めて認識を、私もあちこちで言っていきたいと思いますけれども、細かい話では、やはりグラフの見やすさと対立はするんですが、すべてのグラフを一応、左側をそろえた方がいいんじゃないかと思います。エクセルが勝手に調整するわけですが、下を0にして統一した方が、より水準までパッと見てわかるのでよろしいのかと、細かい話ですが。
佐藤会長
国ごとにという意味ですか。
藻谷委員
そうです。国ごとにスケールを変えないで、統一した方が……。
三菱総研
スケールはそろえて、スライドする形で幅は全部1.0 という形でずらして……。
藻谷委員
水準の高低も、私、好みとしてはわかった方がいいかなと思って、つまり、日本の女性就業率は、実はイタリアと比べて非常に高いというのが、イタリアと日本をパッと見たときにわかりませんですよね。ただ、もし下を0にそろえると、何だと就業率は非常に高いけれども、全然逆に増えていないのかということがわかるので、どうかなと。そのあたりは、私の好みとしては、そろえた方が、僕がやるんだったらそろえます。
杉山委員
例えば、日本の場合ですと、主な施策制度というときに、地域のおける子育て支援ということで、幾つかメニューが出ていて、諸外国もたくさんメニューで出ているんですけれども、多分、強弱があるんじゃないかなと思って、例えば、日本ですと保育所がすごく財源も豊かだし、数もあるし、歴史もあるけれども、集いの広場は予算も少ないし、まだちょっとみたいな、そういうことがあるわけで、それがちょっとわかるというかなという気がしていて、どういう出し方がいいのかというか、御苦労もあると思うのであれなんですが、特にここに力が入っているというのが予算規模であったりとか、いつからやっているのかというようなことでちょっとわかって、これは最近始めたもので、これからだみたいなことは見えるといいかなと思いました。
高橋委員
労働力率との関係なんですけれども、1つは、どういう女性就業率かという問題があると思うんです。30代のところの底というのが強調されたデータなのか、あるいは例えば、40代、50代になってパート就労が年々高くなってくると。それで相殺されてしまっている可能性もあるので、その辺の吟味が必要じゃないかなと思います。
大沢委員
関連しているんですが、労働力ではなくて、雇用就業率で見た方が多分いいのではないかと思います。日本の場合、特に70年代は家族従業と自営が非常に多くて、私も出生率を就業形態別に見たんですけれども、自営と専業主婦ではほとんど子ども数は変化がなくて、雇用就業者のみ低くなっていましたので、ここで最初に女性が社会進出して出生率が下がるときには、雇用就業して家庭の外に出るということが引き金になってきますので、そういう面では雇用就業率を見れば、かなり先進国と同じような動きをしているということがわかると思います。
佐藤会長
今の高橋先生と大沢先生の女性就業率のところ、雇用就業率を入れるのと、もう一つ例えば、30代の特定層の労働力率を入れるかというような御意見なんですが、それはもう少し検討していただけますか。
岩男会長代理
特に子どもを産む時期に焦点を当てないと。
佐藤会長
そうですね。子育て期の30代とか、あるいは20代後半から30代ぐらいの前半ぐらいを考えるか。データがうまくとれるかということもありますけれども。
 今日はすごく報告が多いので、このぐらいにして、また最後にまとめて前半まで戻って御質問いただくということにしたいと思いますが、とりあえず、報告ができないと困りますので、せっかくおいでいただいていますので。ちょっと駆け足ですけれども、続きまして、EUの雇用戦略と家族政策について、武石委員から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
武石委員
それでは資料2で御説明をさせていただきます。私はEUの専門家でも何でもないんですが、たまたま昨年の12月に矢島分析官と一緒にEUとイギリスに、この検討会のお仕事で調査に参りまして、EUの報告をしろということで、にわか仕立てで資料作成をいたしました。最初にお断りをさせていただきます。
 今日は雇用戦略と家族政策ということで、特に、この検討会で議論しているようなところを中心に御報告をさせていただきたいと思いますが、今、ざっといろんな国の制度を御紹介いただきましたが、こういった政策の背景として、EUはどういうことを考えているのかという概要と、あとは国別の若干の違いということを概略的にお話をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、EUの雇用戦略ということで、資料が冗長な資料になっていて見にくいんですけれども、EUの雇用戦略がどういう流れで出てきたかと簡単に御説明させていただきます。
 80年代のオランダ病とか、英国病と言われたような先進国の失業率が非常に上がっていく中で、雇用失業問題の解決というのは共通の課題になっていくわけですが、まず、OECDで雇用戦略に対する取組が始まっています。それでOECDは一言で言ってしまえば、規制緩和を進めて市場原理に委ねることで効率や競争を促進していこうと、それが雇用失業問題の解決にとって重要であるというスタンスで92年以降、99年ぐらいまで雇用戦略が行われてまいりました。
 こうした流れの中で、EUでも雇用戦略というのが1つの大きなテーマになって、EUは97年から始まります。ただ、OECDとの重要な違いとしまして、やはり市場メカニズムを重視しているという部分は一致する部分があるんですが、社会的に排除されてきていた人たちを労働市場に取り込んで、EUとしての社会連帯というものをきちんと位置付けいく。位置付けながら雇用を伸ばし、競争力につなげていこうと、この社会連帯を図るというところに強調点が置かれているというところが、OECDの違いではないかというふうに言われております。
 雇用戦略までの流れとしましては、93年の「ドロール白書」というところから流れが出ていくんですが、97年にアムステルダム条約、EUの憲法のようなものですが、これが調印されます。このときに、それまでのローマ条約の中には雇用関係に関する規定がなかったんですが、雇用政策条項というのが新たに盛り込まれます。
 条約の発行は99年なんですが、2ページに行きますけれども、雇用失業問題は予断を許さない状況にあるということで、97年にルクセンブルグで開かれたEUサミットで雇用戦略というのが決定されます。アムステルダム条約の中の雇用政策条項というのは、EU全体として雇用指針をつくって、それを加盟国がそれを受けて行動計画を策定し、毎年毎年の目標をつくって、それをさらに年次報告として、その結果を閣僚理事会、欧州委員会に報告し、それを欧州委員会が監視していくということ。そういう一連の流れをつくりまして、雇用戦略に着手したというのが97年です。
 EUの雇用戦略の概要といたしまして、まず1つ重要なのが2000年のリスボン会議で、就業率の目標値というのをつくっています。それまでは失業率の方が注目されていたんですけれども、就業率の目標値ということで、働かない、失業というのは求職意向があるわけですが、求職をしていない人たちまで労働市場に出てきてもらって、EU全体の競争力につなげるという就業率という目標というのが出てきます。2010年までに15から64歳が70%、それから女性に関しては60%に引き上げていく。それから翌年の欧州理事会では、さらに高齢者に関する就業率の目標値が50%まで引き上げるということで、今、この目標に向かって進んでいるというのがまず第一点です。
 それから2点目としまして、雇用戦略の柱の中に4つの柱があるんですけれども、この中でアダプタビリティ、それから機会均等というような考え方があります。機会均等というのは前からあるんですけれども、アダプタビリティという考え方が打ち出されています。働く人と企業が構造変化に適用するというアダプタビリティなんですが、この考え方として、雇用の柔軟性ということも1つはあるんですけれども、柔軟性だけを進めていってしまうと働く人が変化に十分適用できるだろうか、つまり、賃金とかが下がってしまうと、あるいは雇用が不安定になると働く人が適用できないということで、一方の雇用保障というところも非常に重要な視点であるということで、雇用の柔軟性と雇用の安定を確保するという考え方が、このアダプタビリティには盛り込まれているというふうに言われています。
 多分、この研究会との関係で言いますと、この就業率と雇用戦略のアダプタビリティ、それから機会均等というのが重要なポイントになっていくと思います。その中でEUの男女平等施策というのがどういうふうに進められているかということなんですけれども、そもそも男女平等、機会均等というのが欧州連合の発足当時から重要な基本理念として掲げられておりました。それが先ほどの就業率の目標で60%という目標値が掲げられて、これに向かって、女性の就業機会を増やしていくということへの取組が加速されてきているということではないかと思います。
 3ページのところに行きまして、就業率等の現状ということで、ちょっとデータ等が見にくいんですけれども、現在、就業率の男女間格差というのが、リスボンのときには、全体が61%、女性が51%だったんですけれども、それがその目標値を設定した後、また上がってきていまして、現在、男女間の差というのが17.2%という形になっています。
 それから、その下が学歴別の状況なんですが、一番右にジェンダーギャップというところがあって、学歴が低いところと中程度、高学歴とあるんですが、先ほどの制度分析をしていただいた国が○がついている国なんですが、例えば、イタリアは非常に男女のギャップが大きくて、高学歴でも13.3%というギャップがあるんですが、スウェーデンですと0.1 %ということで非常に差がない。ただ、学歴の低いところと比べると、高学歴の男女間のギャップが小さいという状況になっています。
 次に女性の就業率を上げていくためには、仕事と家庭の両立というのが環境整備として不可欠であるということで、子どもがいる、特に子育て期の女性の就業支援というのが重要なポイントになってまいります。
 4ページの図が子どもの年齢別の状況なんですが、1993年と2000年のデータがありまして、子どもがいない人、それから0から6歳、7歳から14歳の子どもがいる人について、男女ジェンダーギャップの数値が載っているというデータになっております。そうすると、まだ0から6歳の子どもがいるところというのは、ジェンダーギャップのところが30%からイタリアあたりは46.8%ということで、子どもがいるところで女性の就業率が男女間でかなり大きいということです。ただ、93年と比べると、このギャップが小さくなってきているということが言えるんですが、やはり子どもがいるということが、女性の労働参加に影響を及ぼしているということです。
 それから次のデータが学歴別に見たものなんすけれども、一番上がローエデュケーションということで、真ん中がミディアム、それから一番下がハイエディケーションというふうになっています。
 右から3列目のところを御覧いただくと、これが0から6歳のいる子どもについて、子どもがいない女性と子どもが0から6歳の子どもがいるお母さんの労働力率、ノーチャイルドを100 としてパーセンテージを出しています。そうすると、上にA、B、Cとありますが、Cの高い学歴のところは、このギャップが少ないということで、高学歴の女性は子どもがいても働いている割合が高い。学歴の低いところで子どもの影響というのは強く出ているというような状況になっております。
 子どもの存在というのは女性の就業にインパクトを及ぼしているため、その目標値を達成するためには、保育サービスというのが重要だということです。2002年だったと思いますが、このバルセロナで会議が開かれたときに、バルセロナ目標というのが設定されています。0から3歳の子どもの33%、それから3歳から未就学児については、90%をカバーできるだけの保育サービスを各国で整備していこうという目標値が設定されたということでございます。そしてこれに関しても、各国でそれに取り組みつつ行っているという状況です。
 その下の図が0から3歳、3歳から就学までの保育サービスを利用している人の割合なんですが、これが非常にデータがとりにくいデータらしくて、このバルセロナ目標とぴったり合ったデータでは、どうもないようなんです。バルセロナ目標の中には、保育ママさんとか、そういう保育サービスも含めていますので、多分、そのうちの一部が、このデータということになると思うんですが、上の3つの北欧諸国は0から3歳のところもその保育のサービスが比較的充実してきているんですけれども、例えば、下の方にイタリアとかがありますが、あとはドイツでも西ドイツのあたりは低年齢児の保育サービスが非常に少ないという現状にございます。
 次に7ページのところで、家族政策とか、こういう出生率の低下という問題に対して、EUがどういうスタンスが取り組んでいるかということを簡単に御紹介させていただきます。まずEUは人口政策とか、家族政策ということに関して権限を持っていないということす。それは加盟国が個別の国の問題ということで、EU全体としては、それに取り組むというのはしていないというのが公式見解のようです。
 ただ、人口の高齢化ということに関しては、非常に問題意識がありまして、高齢化に対応した社会のシステムということは非常に関心を持っていると。ただ、それを出生率の低下と絡めて議論することはしていないという状況です。そしてEUで家族政策と呼べるものは、雇用の分野における男女平等ですとか、女性の労働市場への参画を進める条件整備ということで位置付けられている側面が強いと言えるのではないかということです。
 EUにおける出生率の動向ということで、EUの欧州基金の分析したデータがありますので、(2)のところでは、それで若干御説明させていただきます。
 出生率の低下の要因というのは、やはり国によって違うわけなんですが、この報告書の中では3つの要因が指摘されています。1つが子どもがいない家庭が増加する。ドイツで、この傾向が顕著なようです。それから2番目として、子どもが多い家庭が減ってきたということ。それから3番目として晩婚化、非婚化ということ。マルタは女性の未婚率が高く、出生率も低いです。これらの要因の組み合わせの中で出生率の低下が生じてきているんじゃないかということです。
 8ページにデータがあるんですが、これが子ども数別の割合です。3人以上というところ、丸を付けているんですけれども、3人以上子どもがいる女性というのが、国によってもいろいろです。例えばフィンランドとか、オランダあたりは34~35%、イギリスも割と高い。イタリアになると23.6%ということで、3人以上子どもがいる家庭が少なくなっていくというような傾向があります。
 それで、その上の図表6というのが、この各国のデータで無子率、子どもがいない率と3人以上子どもがいる比率、これを子ども数との相関をとっているんですけれども、この0.93という右側の数字が3人以上子どもがいる割合と家族規模、子ども数との相関が高いということで、子どもがいないチャイルドレスの方はマイナス0.36ですから、こちらは関係が余り見られなくて、要は多子世帯が減ったことによって、出生率が全体として低下しているんじゃないかというような分析をしています。
 それから、次の図表8なんですけれども、これは理想子ども数と現実の子ども数とのギャップを見ているデータになります。それで左側が理想より現実が少ない。真ん中の黒っぽいところが、理想と現実が一致していて、右側の白いところが理想を上回る、理想より産み過ぎたということになるわけです。これも国によっていろいろなんですが、一番下にトルコ、これはEUには入っていないんですが、ここは産み過ぎているというのが51%と非常に多いんです。それ以外は、やはり理想子ども数に満たないという、一番上はギリシャ、次がキプロス、それからスウェーデン、イタリアというふうに続きますけれども、この辺は4割ぐらいが理想よりも少ないというふうに答えているという状況です。
 その下が学歴別にそれを見ているんですけれども、この丸の付けてあるところを御覧いただきますと、高い学歴のところで、理想よりも子ども数が少ないという割合が高い傾向が見られています。EU15という最初にEUに加盟した15か国で見ています。それから逆に理想よりも現実の子ども数が多い割合が高いのが、この教育が低い学歴のところです。、学歴の高い女性は、先ほど御覧いただいたように、子どもの影響というのがなく、労働市場に参加しているんですけれども、理想の子ども数を持っていない割合が高い現状ということです。
 次の10ページを御覧いただきますと、そういった理想の現実のギャップというものが、若い人たちで増えているんだろうかというのが、このデータなんです。それで、この白い四角が、凡例が間違っていまして、白い四角が理想と現実が同じという人の割合で、黒い四角ですかね。これが理想よりも少ないという人の割合ですが、一番上のEU15というので御覧いただきますと、黒い丸のデータが右が年齢が高い女性で、左が若い女性なんですけれども、若い女性のところで、特に増えているということは言えないんじゃないかというのが、この報告書の分析になっています。
 むしろ、この▲の子どもを理想よりも多く持っているという人たちが年齢の高い人で割と多いんだけれども、若い人たちのところでこれが減っている。つまり、産み過ぎという傾向がなくなって、理想を実現している人たちが増えたことによって、全体として出生率が下がっているのではないかというようなことを、このレポートでは分析しているということです。
 次の11ページのデータは、育児関連政策に関して、どういう希望があるかというのを国別に見ていて、これも傾向がばらばらなんですが、例えば下の方に丸がついているイギリスとか、フィンランド、それからスウェーデンといったところは保育サービス、それからオランダは柔軟な労働条件といったあたりのニーズが高いということになっているんです。次の12ページを御覧いただきまして、政策に対するニーズとマクロ指標との相関というのを見ているんですが、これを御覧いただきますと、まず1人当たりのGDPと政策ニーズを見るとフレキシブルワーキングアワーズという柔軟な労働時間というのが高い相関を示している。
 それから丸を付けていないのですが、下から2つ目の育児休業の水準、これも高い水準を示している。それから真ん中が就業している水準で就業率ですね。これとの関連を見ると、チャイルドケア、保育サービスの充実というものが「.51 」という相関を示しているということです。
 それから右の方に失業率との関連を見ると、失業率が高いところは、フレキシブルワーキングアワーズとか、育児手当、児童手当のような手当、経済的な支援を望んでいるというような傾向が出ているということで、比較的豊かな国といいますか、GDPが高いような国というのは、柔軟な働き方というのを望んでいて、失業率が高いような国というのは、手当を望んでいる傾向が見られるということです。
 それから次の12ページなんですが、労働時間とワーク・ライフ・バランスというのはどういうふうになっているかということで、これも欧州基金の報告書をベースにして、簡単に御報告をさせていただきたいと思います。労働時間の問題というのは、先ほどの欧州雇用戦略との関係でいいますと、1つはやはり就業率を向上させるということで重要な意味があると。それから、男女の機会均等を進めていくという意味でも重要である。それから、そもそも就業に関する希望と現状の格差を縮めるという意味で、労働条件の改善という大きな目標に資するという、この3つの観点から労働時間の問題との重要性というのを取り上げられているということです。
 労働時間の制度に関して言いますと、70年代ぐらいまでは労働時間の短縮というのがいろんな国で進んできたんですが、それ以降はフランスで法定労働時間の35時間制というのが2002年に法制化されていますが、それ以外の国では労働時間短縮というのは、労使の交渉事項にはなっても法律事項としては余り重要視されなくて、むしろフレキシビリティの拡大と、あるいはパートタイム労働に対する保護政策、均衡施策というのが重要な政策になってきているということです。
 13ページのところに労働時間の実態がありますが、イギリスは男女の労働時間の格差が非常に大きい。13.1時間、一番右にありますけれども、これが男女の格差になるわけですが、非常に大きい。それからオランダも男性のパートが多いと言われているんですが、11.7時間というような格差になっております。
 それから14ページのところは、そういった現状と比べて、労働者がどういう労働時間を希望、何時間ぐらい働くのを希望しているかということをみていますが、トータルで見ますと、男性が36.5時間、それから女性が30.1時間ということで、現状に比べるとさらに短い労働時間を希望しているというのが現状ということです。
 それから15ページのところでパートタイム労働の問題なんですけれども、ここで男女のパートタイムの比率、それから平均のパートタイムの労働時間というのを出しております。オランダは男性、女性のパートタイム比率が高い。それからパートの労働時間が短いというような特徴がございます。それからイギリスは女性のパートタイムが多いのと、パートで働く人の労働時間は短い。スウェーデンあたりは育児期の働き方ということで、育児休業のオプションのような形になるわけなんですけれども、そういったところでのパートが多いと。こういった国によってバックグラウンドは違うんですが、パートタイムの比率がこういう状況になっているということです。
 そして16ページがフルタイム労働者がパートタイム勤務をする場合に、どういう点が問題になるかということでデータを御紹介しております。各国とも現在の仕事はパートタイム勤務では難しいとか、事業主がそういった働き方を受け入れないだろう、こういう意識が高い。それから自分のキャリアにとって不利だとか、雇用の諸権利が弱いといったパートタイムで働くことの不利益というものを指摘する割合も比較的高くなっているということで、パートタイムが多いと言われるオランダあたりでも同じような問題意識というはあるのかなということを感じました。
 そして17ページからがワーク・ライフ・バランス政策ということで、この検討会でもひとつ注目している政策になろうかと思うんですけれども、保育サービスとともに休暇制度、それから労働時間の弾力化というものが仕事と家庭の両立で重要になってまいりますが、これに対して各国がどう取り組んでいるかということです。
 大きく2つのタイプに分かれまして、1つめが国家主導型といいますか、法律をつくって、それでいろんな規制をかけていくタイプ。フランスとか、ドイツ、フィンランド、ベルギーのように法律をつくるというやり方。それからもう一つがイギリス、アイルランドなどが典型なんですけれども、企業の任意の取組というものに、原則委ねていくというような形で取組を進めているというやり方があります。ただ、イギリスに関しては後ほども御紹介があるかと思いますが、最近はいろんな法律をつくりながら、このワーク・ライフ・バランスも企業の任意の取組プラス法律ということで推進してきているという状況にございます。
 そして、この労働時間の実態というのが、国によってさまざまで、パートの状況もさまざまなんですけれども、その労働時間の実態に影響を及ぼす要因ということで、1つは労働時間の規制、法律的な状況ですね。それから2番目として所得とか、収入の配分というのが、どういう仕組みになっているか。3番目として教育訓練システムがどうなっているか。4番目として家族制度、5番目として経済状況といったあたりが指摘されているということです。
 そして最後に図表17なんですが、勤務時間と仕事以外の責任との両立ということで、どういうふうに感じているかということで見ますと、上のデータが労働時間別にバランスがとれていないというふうに思っている人の割合も入れると、やはり労働時間の長い人たちが男女ともに、このバランスに対して難しいさを感じているということです。
 それから、下は子どもがいる、いない。それから男女別に状況を見ておりますが、子どもがいるお父さんとか、フルタイムで働いているお母さんといったあたりが、この辺のバランスが難しいというような状況になっているということで、非常に網羅的でまとまりのない御報告になったんですが、EUの雇用者の家族戦略と家族政策ということで全体の状況を報告させていただきました。
 1つ、私がこういう分析というか御紹介をして感じたのが、男女共同参画が高い国は出生率が高いというところから、この検討会は検討していますが、女性が働けば出生率が上がるとか、そういうことではなくて、男女が望むライフスタイルというのが実現できているかどうかというのが男女共同参画の指標で、それが実現できているかどうかというところで出生率に効いていくのかなと。だから、女が働けば出生率が上がるのかとか、男性が家事に参加すれば出生率が上がるのかというバックラッシュがありますけれども、男女共同参画の指標というのを、どういう意味づけでとるのか、考えるのかが重要かなというふうに思いました。
 以上です。
佐藤会長
どうもありがとうございました。EUの雇用戦略と家族政策。さらに詳細に御報告いただいたと思いますが、御質問なり御意見、最後の点は非常に大事な点かと思いますけれども、伺えればと思います。どなたからでも。
橘木委員
ヨーロッパの場合、パートタイマーとフルタイマーで、例えば社会保険に入る資格があるとかないとか、そのような区別というのははっきりしているんでしょうか。それともそうではないんでしょうか。
武石委員
基本的EU指令が出まして、パートタイマーとフルタイマーを差別してはいけない、均等待遇をしなくてはいけないという指令が出ています。これは国内法で整備している国が多くなっている。オランダはもう完全にそこは差別をしないという取扱いです。
橘木委員
育児休業に関しても全く差がないんですか。
武石委員
パートでも育児休業をとれるかということですか。
橘木委員
ええ。
武石委員
それは差がないといいます。
橘木委員
全く差がないと考えていいですか。
大沢委員
社会保障に関しては、労働時間の要件を設けている国はありますので、全く差がないとまでは言えないですが、育児休業、そういった権利に関しての方が平等性が高いように思いました。
佐藤会長
日本よりかドイツなんかでももう少し短いけれども、やはり極端に短いところは外すような形になっているところが多いと思います。
大沢委員
15時間ぐらいでしたかね。
佐藤会長
日本よりかはもっと短いのは間違いないですね。
 ほかにはいかがでしょうか。先ほど理想の子ども数と現実の子ども数、現実が理想より超えちゃった人が減ってきたのでというお話があったんですけれども、理想の子ども数自体が変わってきているということが、世代によってあるかなという気もするので、その辺はギャップだけじゃなくて、理想の子ども数自体の数も載っているんですか。
武石委員
載っていたと思います。
佐藤会長
それが変わらないで、理想の子ども数はずっと世代ごとに変わらないでギャップだけが変わってきたのか、理想の子ども数も動いていたのかというのは、ちょっとデータの読み方の意味が違ってくるかと思ったもので。
高橋委員
それに関してですけれども、多分、アンウォンテッドなチャイルドバースというのが減ってきていて、理想というのは、それほど大きく動いていなくてという可能性がありますね。何か研究で見た記憶があります。
佐藤会長
どうぞ。
網野委員
先ほどの主要国の制度分析とも関連するんでしょうが、今のEU戦略の話ですね。EUに加盟している国々の先ほどの報告と、今、武石先生がお話しされたことにかなり共通性があるというのは、まだまだの時代なのかもしれませんが、その中で1つ御質問したいんですが、6ページでバルセロナ目標というのが指摘されましたね。どちらかというと保育サービスに関して0から3歳についても目標値を上げるということが明確にされていますね。
 それともう一つは、7ページのいろんな状況から見ますと、むしろ柔軟な労働力とか、育児サービスの充実の重要性を感じて、一方、育児手当や育児休業の重要度というのは、比較的低いというようなお話がありました。その場合、例えば、先ほどの10か国の制度概要で、具体的にこれを当てはめてみますと、例えばスウェーデンとか、ドイツは0から3歳の段階での保育サービスというのは、どちらかというと抑制はしていませんが、とりわけ乳児保育については余り促進しようとしていない。その一方で育児休業とか、手当とかということを重視する。そのような趣旨からいいますと、いろんな国々の中での保育サービスの位置付けが、単純には、もちろん0歳から3歳の保育需要に対して、それを普及していくということが出生率の回復に結びつくかどうか。これはいろいろ議論がありますけれども、この点でEUは必ずしも統一がとれてはいないと思うんですが、そういう育児休業、育児休暇の側面と仕事と子育ての両立を進める。とりわけ、低年齢の子どもとの関連では、何か今回調査分析された中で比較した場合に、指摘できることはあるんでしょうか。
武石委員
全般的な傾向はよくわからないんですが、例えば、12月にイギリスにも調査に行ったんですけれども、イギリスは保育サービスが非常にないですよね。イギリスは一方で柔軟な働き方というのをかなり推進しています。行ったときの印象として、結局、保育サービスがなくて保育サービスを買おうとすると非常に高い。高いサービスを買うよりは、親が労働時間を減らした方がコストパフォーマンスがいいので、柔軟な働き方という方に、全体としてそちらの方に向かっているのかなというような印象を受けたんですね。だから、保育サービスと休業とか、働き方というのはどっちかが充実していれば、どっちかは要らなくなっていくと思うし、この報告書の中でも、確かに保育サービスがもっと充実すれば、パートタイムで働かずにフルタイムで働く人が増えるんじゃないかというような分析もあって、そこは両方充実させるというよりは、どういう方向に行くのかという選択の問題なのかなという気もしました。どこの国がどうということは、全体的にはわからないですが。
佐藤会長
ほかにはいかがでしょうか。
大沢委員
質問ではなくて、興味深く思ったのが、5ページの学歴別に見た女性の雇用率なんですが、これを日本とちょっと比較してやってみたらいいんじゃないかなというアイディアですが、それだけです。
佐藤会長
どうもありがとうございました。それでは続きまして、スウェーデン、ドイツ及びフランスにおける家族政策について、林主任研究官にお話を伺うわけですけれども、次がイギリスということなので、お二方続けて報告していただいて、まとめて国ごとということですのでやらせていただければというふうに思います。林主任よろしくお願いします。
林主任研究官
内閣府の経済社会総合研究所の林でございます。よろしくお願いいたします。
 内閣府の経済財政諮問会議で「日本21世紀ビジョン」というものをつくっておりまして、その経済財政展望ワーキング・グループのメンバーと、経済社会総合研究所の仕事を兼務してやっております。今日の御報告は、ドイツ、フランス、スウェーデンの3か国で政策、制度が実際、どういうふうに使われていて、それで実際、人々はどういう生活をしているのかということの実態を調べるために、家計経済研究所と富士通総研に委託をいたしまして、日本とも比較可能な形で現地でアンケート調査をした結果をまとめたものでございます。
 お手元に2つ資料を御用意しておりますが、1つは本の形でスウェーデンの家族と少子化対策への含意ということでお配りしているかと思うのですが、こちらの方はもう既に公表したものでございます。お手元にもう一つございますパワーポイントの印刷資料の方ですけれども、実はフランス、ドイツの調査結果につきましては、今、報告書を最終的にとりまとめている最中でございます。でき上がりましたら、先生方にお送りしたいと思いますが、大変恐縮ですが、それまでは委員限り、先生限りということで引用等は差し控えていただければ大変ありがたく存じます。よろしくお願いいたします。
 今日、御報告申し上げることでございますが、スウェーデンとフランス、特に女性の労働力率も高く、出生率も高い、その両立は何が支えているのか。他方、ドイツにつきましては、出生率は若干戻しておりますものの低い水準にございます。そして日本への含意は何かということでお話を申し上げたいと思います。
 問題意識でございますが、先ほども先生方からお話ございましたように、女性の労働力率の高い国の方が出生率が高いという傾向がクロスセクションで見ますとございます。実はこれは1980年代前半までは負の相関でございましたが、80年代後半以降、正の相関になっております。
 特にスウェーデン、フランス、ドイツ、日本と比べてみますと、出産期の25歳から44歳ということでとってみましたが、女性の労働力率を見ますと、スウェーデン、フランス、ドイツ、いずれも高い水準でございます。かつスウェーデンは合計特殊出生率も1.71、フランスは1.89と非常に高い水準にございます。他方、ドイツと日本は低い水準にございます。
 年齢別の女性労働力率を見ますと、日本はM字型、3か国は逆U字型というふうになっております。そして時系列的推移を見ますと、実はフランスも、1970年代あるいは80年代は、20代前半をピークに右下がりでありました。この20年ぐらいで状況が変わってきたということかと思います。そして、出生率の推移ですが、フランスの合計特殊出生率は、先進国の中でもかなり高水準を維持しております。スウェーデンも変動がございますけれども、高水準でございます。
 では、その一つ一つの国を見てまいりたいと思います。スウェーデンの高い労働力率と出生率を支えているものは何かということで、私どもは4つの要因があるかと思っております。1つは充実した育児休業制度でございます。育児休業は両親に合わせて480 労働日取得可能でございまして、そのうち390 労働日につきましては、両親保険によって休業直前の8割の所得を保障されております。毎日休業したとして、1 年半に相当いたします。
 また2年半以内に次の子どもを産みますと、労働時間を短縮して復職中であっても、先の子の出産の休業直前の所得の8割が、2人目の子どもの育児休業中に再び保障される。スピード・プレミアムと呼ばれておりますが、そういったものがございます。
 それから390 労働日のうち、60労働日はパパ・クォーターということで、父親だけしかとれない日ということでございます。他方、ママ・クォーターということで、同じように60労働日ございます。それから、こうした両親保険の財源ですが、これは事業主が支払う社会保険拠出でございまして、支払い給与の2.20%とするという強制保険になっております。
 さらに調べてみましたら、企業の負担で上乗せをして、9割の所得保障をしているところも少なくなくて、4社に1社の割合でやっているようでございます。
 実際にこうした制度がどの程度利用されているかということで、現地で調べてみましたところ、実際、出産した女性の大体4割ぐらいが15か月以上--321 日以上でございますが、これは15か月に相当します--をとっております。また、1年から15か月の間ぐらいとったという人は3割、両方併せて7割以上の女性が1年以上の育児休業をとっているということでございます。
 ちなみに日本は御案内のとおり、女性の取得率は平成15年度で73.1%となっておりますけれども、実際の取得期間は全体として短かいですし、また、出産前に7割弱の女性が仕事を辞めているという状況がございます。
 それからちなみに、スウェーデンの男性でございますが、スウェーデンの男性の育児休業の取得状況を見ますと、女性よりは日数が少ないです。ただ、全く取りませんでしたという人は1割しかいなかったということでございます。ちなみに日本はとったという人が0.44%ということでございます。
 ということでスウェーデンの女性の就業状況、25歳から34歳、出産数が一番多い年齢層についてみましたところ、実は休業者が非常に多く、出産期に非労働力化せず、休業する女性が多いということでございます。4人に1人が休んでいる。もちろん、病休とか、看護休暇も入っています。これは本人にとっては職業を続けられるメリットがありますし、経済全体にとっても、今まで蓄積した能力を生かしてもらうということで、労働力の質が維持され、非常にメリットがあるだろうと思います。
 ちなみに日本は、休業者は、この年齢層は1.9 %でございます。実は統計の関係で、日本の休業者には、企業から一切賃金等が支給されないで、育児休業基本給付金だけを受給して休業しているという人は入っていないのです。ですので、育児休業給付金だけをもらっているという人を加えると、もうちょっと多いかもしれません。
 それから、こんなに休んでいて、職場の方はどういうふうに回っているのかという、やや素朴な疑問で私ども調べてみたのですが、スウェーデンで企業、従業員にアンケート調査をしましたところ、育児休業を取得することについて、何かプレッシャーを感じたりとか、あるいは上司や同僚から不満を言われたりするということは、民間企業でも公的機関でも非常に少ないということで、不満を言われたなどというのは、ごくわずか数%でございました。
 それから、育児休業中の代替人員につきましては、臨時の契約社員の雇用、あるいは部内での業務の分担という対応が大変多くなっておりまして、この両方というのもありました。また、休業取得による昇進・昇格面への影響がないと感じている企業・従業員が多数派で約8割ぐらいということでございます。やはり、多くの人が育児休業をとっているということは、みんなお互いさまということで、そういった気持ちをみんな持っているということではないかというように解釈しております。
 それからスウェーデンの高い女性労働力率と出生率を支えるものの2つ目は、充実した保育サービスということでございます。0歳児保育は実はほとんどないのですが、1歳児以上については保障しておりまして、待機児童の問題はかつてはございましたが、現在はございません。
 それから、児童手当と住宅手当でございます。児童手当は16歳未満の子を持つ家庭に所得制限なしで支給されます。例えば、3人子どもがいますと、これを全部合計しまして、大体4万6,000 円、子どもが3人いる家庭の所得の1割ぐらいに相当いたします。日本ではちなみに5,000 円、5,000 円、1万円で、3人子どもがいて2万円でございます。しかも小学校3年生までで所得制限もございます。それから住宅手当ですが、住宅手当も所得制限はございますけれども、18歳未満の子を持つ家庭にございます。
 それから、もう一つ重要な要素は、勤務時間の短縮制度と早い帰宅ということがございます。スウェーデンでは、子どもが8歳になるまで勤務時間を4分の1短縮することができるという権利がございます。8時間の人は6時間ということであります。こういうことでありますから、実際復職したときに、どういう働き方をしたのかということを聞きましたところ、フルタイムで戻ったという人も4割ぐらいいるのですが、時間を短縮して戻ったという人もかなりいます。かなり典型的なパターンとしては、育休を1歳半ぐらいまでとって、それから勤務時間を短縮して働き、そして少し子どもに手がかからなくなってきたら、通常のフルタイムに戻るというのが1つのパターンのような感じになっているようでございます。
 それから実際、帰宅時間も男女とも早くて、男性は大体午後5時ぐらいで、女性は3時、4時、5時ぐらいということで、残業は少なくて定時退社、男性も6割以上が週の就労時間は35時間から40時間ということで、男女とも大体定時で仕事を終えて6時ぐらいには家に帰っているという状況でございます。
 ちなみに同じことを日本で調べますと、男性は9時、10時ぐらい以降に帰るという人が非常に多く、女性も全体として遅いということでございます。
 そういうことでスウェーデンにつきましては、高い出生率、労働力率を支えているものとしては、育児休業制度が充実しており、しかも実際に取得している。2つ目として保育サービス、3つ目として児童手当などの金銭給付、それから4つ目として短い労働時間と早い帰宅、そういったことがあるのではないかと思っております。
 次にフランスでございます。フランスでは、まず家族手当と税制がフランスの高い出生率を支えているのではないかと考えられます。
 多子家庭に非常に手厚い家族手当になっておりまして、例えば、子どもが3人いますと約3万5,000 円、さらに年齢加算があります。なお、子どもが1人だと0円になっております。そしてまた、一定の所得要件を満たした場合には、3人以上の子どもを持つ家庭では、さらに補足手当が約2万円、それから3歳未満の子どもがいると、さらに乳幼児基礎手当として約2万2,000 円、それから新学期になると、また新学期手当として約3万5,000 円というような形で非常にいろいろな手当があります。
 それから所得税制なのですが、ここは議論があるところかとは思うのですが、日本と違って世帯単位でN分N乗方式でございます。世帯の合計所得を家族人員Nで割った所得に対する税額を算出して、それにNをかけて所得税額を求める。したがいまして、Nが大きければ大きいほど累進税率のもとでは得になります。Nの中に子どもの数が入るということで、子どもも2人目までは0.5 、3人目から1人分ということで家族人員Nに入りますので、子どもが多ければ多いほど税制上有利という仕組みになっております。
 それから、家族給付による仕事と子育ての両立支援でございますが、育児休業制度は3年間休業する、あるいは勤務時間を短縮ということが認められております。そして、休業手当でございますが、第1子には6か月間、第2子以降については3歳になるまで休業、あるいは勤務時間の短縮の度合いに応じて、定額が支給されるというふうになっております。
 それから、もう一つ特徴的なのは、保育ママやベビーシッターを利用したときの一部補助があるということでございます。これは6歳未満の子どもがいる場合、その人の収入や子どもの数、年齢に応じて、ベビーシッターや保育ママを利用すると費用の一部補填がされるという形になっております。
 こうした家族給付の財源は、全国家族手当金庫というところから出ているのですが、これは社会保険拠出と、一種の目的税なのですが一般福祉税という税の税収からなっていまして、社会保険拠出の方は事業主の方からで支払い給与の5.4 %が財源になっております。
 実際、こういう充実した制度があるのですが、どういうふうに復職しているのか、あるいはどういうふうに育児休業をとっているのかということを聞いてみたところ、妻と書いてございますが、これは法律婚も事実婚も全部含んだものでございますが、女性が終日の育児休業を取得した期間を聞きますと、実は「なし」という人もかなりいます。夫の方はちなみに「なし」という人が9割でございます。
 復職時の働き方なのですが、フルタイムで戻りましたという人もいますし、育児休業を使って勤務時間を短縮した、あるいは使わないで短縮した、いろいろな人がパリでもリヨンでもいました。
 どうもこういうことが言えそうでございます。出産後に非常に多様な選択肢があり、その人の希望や、職種に応じていろいろであるということのようでございます。例えば、産休が明けて、もう、すぐにフルタイムで戻り、そのときにベビーシッターなどの費用などは給付でもらうという人、これは結構キャリア女性に多いようですけれども、こういった人がいます。あるいは産休をとって、その後、勤務時間を短縮して復職して、それからしばらくしてからフルタイムに戻る。これはホワイトカラーに多いようでございます。それから産休をとって、その後、終日で育児休業をとるという人もいます。ということで、多様な選択肢があるというところが、実は特徴なのではないかと思われます。
 それから、ドイツでございます。ドイツの家族政策は、実は金銭的なものはかなり手厚いのですが、出生率は1.34と低いという状況でございます。どういったことをやっているかということを見ますと、児童手当あるいは児童扶養控除の選択ができるようになっていまして、これは所得に応じて選択できるようになっております。
 児童手当の方を見ますと、1人の子どもについて154 ユーロということで、例えば、3人子どもがいると約6万3,000 円もらえるということであります。しかも支給は18歳未満の全ての子どもで、教育中なら27歳までOKというものでございます。
 それから、やや所得の高い人は控除の方、扶養控除の方を選ぶのですが、児童扶養控除は子ども一人当たり49万円、さらに教育控除というのもございまして、これが29万円ということであります。日本の扶養控除は38万円で、16歳から22歳の子どもについては特定扶養親族ということで63万円というようになっております。
 それから、育児休業ですが、最長3年間の育児休業が取得可能になっております。また、手当の方は2歳になるまで4万円ぐらい、あるいは1歳になるまで約6万2,000 円、どちらかを受けとることが可能となっております。ただ、これは収入による制限がございます。
 こういう手厚いいろいろな手当があるにもかかわらず、どうしてドイツの出生率が低いのかということでございます。これは一時的なものかと言いますと、どうもそうではなさそうであります。合計特殊出生率を分解して、1人の女性が生涯産む数と、それから出産のタイミングということで2つに分けて見てみますと、フランスの場合、74年以降の合計特殊出生率の低下というのは、ややタイミング効果で誇張されていまして、生涯出生力自体は2.0ぐらいという高い水準を維持しております。
 他方、ドイツの方は生涯出生力がもう既に1.5 まで下がってしまっています。したがいまして、晩産化のタイミング効果が落ち着いたとしても、あまり高い水準までは戻らないのではないかということが言われております。ということで、出生率が低いのは一時的なものではなく、構造的なものではないかと考えられます。
 こういった構造的な低さにはどういったことが考えられるか、要因はどういったことがあるかということなのですが、やはり保育所の不足ということがあるようでございます。特に0-3歳児までの保育所が不足していて、旧西ドイツ地域が非常に少ない。旧東ドイツの方は、実はベルリンの壁が崩壊するまで非常に高い水準だったのですが、ドイツ統一後は財政難で閉鎖する保育所もかなりあります。旧東ドイツ地域というのは、ドイツ人口全体の2割ぐらいにしかなりませんので、そういう意味でも比率がそんなに大きくはない。
 それから学校の大多数は半日制であるということも要因として大きいかと思われます。給食サービスもない場合がほとんどでございます。したがいまして、子どもは昼食前に下校して、家に帰ってくる、お昼は家で食べるということが通常でございまして、母親のフルタイム就労というのは事実上困難になっているということがございます。ちなみにスウェーデンは給食があります。それから、フランスも実は原則は給食がないのですが、母親が就業しているという証明があれば給食が出るという、そういう仕組みになっております。
 そういうことで保育所の不足、あるいは学校の問題ということもあって、出生率が低いのではないか、出生率が低いことに寄与しているのではないかというふうに考えられます。ただ、最近「家族のための地域同盟イニシアティブ」という動きもございまして、昨年ですけれども、家族省の大臣、それから産業商工会の会頭がリーダーシップをとって、地域ぐるみで家族にやさしい環境づくりをしましょうということで、コミュニティや企業、労働組合、ボランティアの方と連携しましょうという動きが広がっているようでございます。
 実際、保育所の利用経験率を調べてみましたところ、0歳児保育が少ないのですが、パリ、リヨンに比べてハンブルグ、ミュンヘンでは、やはり1-2歳の保育所を利用したことがあるという人は少ないという結果になっております。
 それから育児休業のとり方ですが、終日育児休業を1年以上取ったという人が6割ということであります。ちなみに男性は96%取っていない。そういうことですので、ドイツでは年齢別に女性の就業状況を見ますと、特に30歳代前半では9%の人が休業しているということでございます。復職の仕方なのですが、やはり、先ほどの学校が半日、給食がないということもあって、勤務時間を短縮して働く女性が多いという状況がございます。
 それからもう一つ、ドイツでよく言われますのは、伝統的な男女の役割分業意識が強いということでございます。女性の役割は3つのKと、Kinder-子ども、Kuche-台所、Kirche-教会ということがよくドイツで言われていたようですが、ヨーロッパの中でもやや保守的というように言われております。
 実際、調べてみましたところ、例えば、子どもが小さいうちは母親は家にいるべきだと考える人は、男性で見ますと、フランスよりもドイツの方が高くなっております。ただ、日本の方がもっと高くなっています。
 それから、妻には家事と育児の責任があると考える男性の割合も、フランスよりもドイツの方が高い。それから夫には収入を得る責任があると考える男性も、フランスよりもドイツの方が高いということで、男性の働く役割が強調されているということであります。
 そういうことでドイツの少子化の背景を見ますと、女性が子育てと職業を両立するのは非常に困難な状況にあって、子どもか仕事かという二者択一的な状況になっているということではないかと思われます。
 こういったコンテクストを見てまいりまして、日本への含意として、どういうことが言えるかということなのですが、あえて言うと、こういうことではないでしょうか。このグラフはスウェーデンの女性の労働力率を横軸に、それから出生率を縦軸にとって時系列的に見たものなのですが、実はスウェーデンも1980年代前半までは、この関係は右下がりだったわけでございます。俗に言えば、女性が働くほど出生率が下がるという、そういう関係だったわけですが、家族政策を70年代から80年代に拡大してきたことで、それが右上がりの関係になっております。その後90年代初めにバブルが崩壊しまして、失業率が上がったので、将来の見通しが立てづらくなり、出生率は下がり、女性の労働力参加はディスカレッジされて、反対方向の左下がりの関係になってしまいました。しかし、景気が回復したので、また右上がりになっているという状況でございます。
 フランスも同じように見ますと、実は最近、産み戻しの動きが非常に強くて、30代前半の出生率が上がっているという状況にございます。
 そして日本は、こういう関係で右上がりに反転するためには、政策的な後押しが必要なのではないかと考えられます。
 日本への含意ですが、経済学的に見ますと、子どもはかつては老後の面倒をみてもらうための投資という側面があったかと思いますが、今はそういう側面は薄らいでいるわけで、他方、子どもは社会全体で見ますと、日本社会の将来を支える担い手としての外部経済性を持つ存在でありますので、子育てにかかる負担が個人のみに過重になっていると、どうしても過少供給になってしまうということであります。
 やはり、次世代を担う子どもたちは公共財だという考え方に転換して、子どもを産み、育てることに伴う、いろいろなリスクとか、負担とか、そういったことをしっかり社会全体で支えるべきという考え方に転換すべきではないかと思われます。また、社会保障制度の一体的な見直しの中で、子育て支援を拡充し、高齢者に極端に偏っている資源配分を是正する必要があるのではないかと思われます。
 家族政策の財政支出を見ますと、スウェーデン、フランス、ドイツ、日本と見ますと、スウェーデン、フランスは非常に高い水準ですが、日本はGDP比で0.6% という数字になっております。また、分野別の社会支出を見ますと、日本の場合、高齢者に偏っていて、家族・子育てへの配分は低くなっているということがわかるかと思います。
 もう一つ、いろいろな国々を見て日本への含意として言えることは、3つあるかと思っております。1つは家族政策の中身も大事ではないか。いくら家族政策に関する支出が多くても、内容によって効果があるとは限らない。例えば、ドイツでは児童手当はかなり手厚いですけれども、保育施設は十分でない。他方、フランスでは児童手当に加えて、多様な保育形態があって、しかも利用している人も多いということがあります。
 それからもう一つは子育てをめぐるいろいろな政策の一貫性、首尾一貫性、よく国際会議の場でPolicy Coherenceと言いますが、こういったことも非常に重要な要素ではないかということです。いろいろな政策が子育てや職業との両立の観点から一貫性があるのかどうかを見てみるということが大事ではないかと思います。例えば、先ほどのドイツですけれども、子どもが昼食前に帰ってきてしまうということで、女性のフルタイム就業は事実上困難になっている。子どもを生み育てやすい環境づくりという観点からも、政策を一つずつ点検するということも大事ではないかと思います。
 それからもう一つ、出産後の働き方の多様な選択肢も大事ではないかということです。フランスでは非常に多様な保育サービスがあって、出産後フルタイムで働くことを可能にしている。こういったことも大事ではないかと思います。
 時間も押しておりますので、あと1点だけ申し上げたいと思うのは、実はスウェーデン、フランスでは婚外子が非常に多いということがございます。スウェーデンでは子どもの半分が婚外子、フランスでは4割が婚外子であります。実は、この背景には、スウェーデンでは、サムボと現地の言葉で申します事実婚、同棲の制度が法的に保護されていて、このサムボのときに生まれる子どもが婚外子ということがあります。
 それから、フランス、ドイツでも同棲が非常に一般化しておりまして、35歳から44歳のカップルのうち、フランスで3割、ドイツで2割が同棲中のカップルでございました。あと、フランスにはPACSという結婚と同棲の中間形態もございます。
 実際、調べてみますと、例えばスウェーデンの35歳から44歳のカップルを見ますと、法律婚のカップルが64%、サムボカップル(事実婚)が36%ですが、実は法律婚のカップルもサムボを経て結婚しましたという人は9割ということで、一種の試行期間として同棲が機能しているということのようでございます。これはフランスでも同じでして、フランスでは法律婚が6割強、同棲が3割ですが、同棲を経て結婚が77%、しかも結構長い年数を同棲で一緒に暮らしたりするということであります。それから、ドイツも同様でございまして、法律婚のカップルのうち、約9割は同棲を経験しているということでございます。
 日本の少子化の要因、大きく分けて2つございますが、夫婦の生む子どもの数の減少というのは、90年代から出てきた大きな要因ですが、もう一つ、より長期に大きな要因とされているのが、晩婚化、非婚化でございます。
 あえて大胆に言うと、日本では晩婚化に加えて、晩棲化が進んでいるのではないか。つまり、晩カップル形成化、安定したカップル形成が遅いということがあるのではないかと思います。
 その背景はいろいろと考えられますが、例えば、欧米のような「カップル社会」の伝統がないということが一つ大きな要因としてあるのだろうと思います。実際日本で同棲している人は、未婚者の2%ぐらいしかいない。さらに言うと、未婚男性の半分は交際している異性もいないという状況であります。
 人生80年時代の結婚をどう考えるかという問題もあるのかなと思っております。人生50年時代の結婚であれば、二十歳そこそこで結婚して、子どもを育てて、育ち上がると、もう40を過ぎていて、あとはもうお迎えが来るのを待つだけという、そういう人生なわけでありますけれども、やはり、人生80年時代というと、老後をカップル二人だけで過ごす期間が長い、そうすると、やはり今の若い人たちも非常に慎重に配偶者を選ぶということになるのだろうと思います。他方で人間の生殖年齢は生物学的に決まっていますので、どうしても少子化になってしまうということがあるのだろうと思います。
 今後も人生80年時代の結婚ということで、結婚や家族のあり方は多様化して、同棲ですとか、離婚してまた再婚ですとか、いろいろな形が出てくるのではないかと思います。そういった状況に対応して、それ自体を否定するのではなくて、むしろ、そういう中で子どもの生活をどう守っていくのか、子どもの生活の安定、健全な生育環境をどう確保していくのか、母子家庭をめぐる経済的な問題などが典型だと思いますが、こういったことに対応するために、仕組みや制度の整備ということが大事ではないかと思っております。
 以上でございます。
佐藤会長
どうもありがとうございました。スウェーデン、フランス、ドイツの家族政策とそこで働いている人たちが子育てしながら、どういう働き方をしているのかということについて御報告、どうもありがとうございました。
 今、すぐ御質問をしたいということはたくさんあると思いますけれども、矢島分析官の方からイギリスについて御報告をいただいて、その後、できるだけ残った時間を議論したいと思いますので、すみませんが、そうさせていただければと思います。
 「英国における雇用政策と家族生活について」矢島分析官の方から御報告いただければと思います。
矢島分析官
先ほど武石委員の方から「EUの雇用戦略と家族政策」についてお話をいただきましたけれども、昨年の12月に武石委員と私とで、EUの方とイギリスの方にヒアリング調査に行かせていただきまして、そのヒアリング調査の結果といろいろな資料の方から、今回とりまとめさせていただきました。
 イギリスにつきましては、EUのところでも少し御説明がありましたけれども、ワーク・ライフ・バランスの推進というところに注目させていただきまして、こちらに書きましたように、今回の研究の中でも働き方の見直しというところと子育て環境というところが字句の中でも重要ということで出ていると思いますけれども、そういったものの整理によるワーク・ライフ・バランスの推進ということで、イギリスでどのような政策が行われているかというところを御紹介したいと思います。したがいまして、今日は基本的にはイギリスの働き方ですとか、それから家庭の実態といったところについては割愛させていただきまして、いきなり政策の方に入らせていただきたいと思います。
 まず、法制としては最初に両立支援に関連した雇用・家族政策70年から2000年のところで、皆様お手元で先ほど10か国の制度分析ということで資料がありますが、19ページから資料がございますけれども、19ページのところから次の20ページのところに、この30年間の政策が載っておりますけれども、こちらの方でも一応確認させていただいております。
 こちらの方で、まず70年から2000年というところでは、同一賃金法が1970年にできて、それから性差別禁止法が75年、それから同じく75年に雇用保護法というのがつくられております。
 それから90年から98年ですけれども、こちらの方で確認しておいていただきたいのは、98年に「保育サービスと幼児教育の一元化」ということで、就学前の児童サービスについては、教育・雇用省の所管として一元化されているという点でございます。
 それから、98年に同じく労働時間規制ということで、1週間の総労働時間原則48時間以内というところで導入されています。
 次に99年から2000年ですけれども、ここではイギリスでは大変に遅くて、99年に育児休暇制度が導入されているというところでございます。また、2000年にはパートタイム労働者の不利益取り扱いの防止に関する規則が導入されております。この辺のことを頭に置いていただきまして、次の方に入りたいと思います。
 「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する主な取組」でございますけれども、ワーク・ライフ・バランスの推進に関しましては、イギリスでは97年のブレア政権の発足後に取組が行われておりまして、ここから個人が仕事と育児や介護の責任を両立できる労働慣行の確立を重視するというスタンスになっております。
 ここで考え方として重要なのは、両立を労働者の権利として直接認めるというよりは、雇用者の自発的な取組を促す形で進めるという考え方でございます。イギリスはやはり、日本と同じように長時間労働、EUの中でも長時間労働ということの課題を抱えている国でございますけれども、こういった考え方によっても比較的日本と近いものがあるのではないかと思われます。
 それから99年からSure Start Program、こちらの方は就学前の子育て環境の整備ということがスタートしております。それから2000年の3月からワーク・ライフ・バランス向上キャンペーンが開始ということで、こちらの方は当初教育技能省においてスタートしまして、女性のスキルアップの視点からの取組でした。しかし、2001年から所掌を貿易産業省に返しまして、企業への支援策に重心がシフトしております。このような考え方からビジネスケースに対する対処の必要性というものを認識しておりまして、企業、従業員にとっての具体的なメリットを提示することに重点が置かれています。
 2003年4月にFlexible Working法が施行されまして、6歳までの子を持つ親は、フレキシブルワークを要求できて、企業は要求を受ける義務はありませんが、要求を検討し、回答する義務があるとされました。また、2004年12月には子育て支援10か年計画が策定されまして、こちらはちょうど私たちが調査に行きました1週間前に発表されたものでしたが、すべての家庭を対象とした総合的子育て支援の取組がスタートしたというところでございます。
 こちらえんじの方で書いてありますのは、子育て環境の整備に関する取組でして、緑の方が働き方の見直しに関する主な取組として御覧いただければと思います。
 次にワーク・ライフ・バランス推進の必要性に関する考え方ですけれども、貿易産業省の方ではワーク・ライフ・バランスを進める背景としては、出産、子育てを理由に女性が離職し、その後再就職する際に、もとのスキルを生かせないことから、男女間の賃金ギャップが大きくなるという問題があったと。これを是正する一つの方策がワーク・ライフ・バランスであるということでした。
 また、柔軟な働き方というのは企業、労働者、そして労働者の家族など、あらゆる人々にとってメリットのある制度であると認識されております。
 また、教育技能省の方では政府の展望はすべての子どもが生れたときから最善の環境を与え、かつ両親の仕事と家庭の両立を図れるような、より多くの選択肢を提供することであるという考え方をしております。
 このワーク・ライフ・バランスの推進ということに関しましては、キャンペーンの方は現在、貿易産業省の所掌で行っておりますが、ワーク・ライフ・バランス推進の取組は全省庁挙げての取組ということになっております。
 次のワーク・ライフ・バランス向上のキャンペーンの内容でございます。まず1つ目にワーク・ライフ・バランス向上を目指す雇用者団体の設立ということで、22の大手企業、任意の部門から選ばれた14の提携団体、またロビーグループにより設立されました。それらの団体によりまして、企業社会において望ましい慣行を推進するために、政府と連携して活動に取り組むということを旨としております。
 また、チャレンジ基金の創設ということで、企業活動の効率化や働き方の柔軟性向上のためのマネージメントシステムを雇用者が開発するために利用できる基金を創設いたしました。
 それから3番目に解説書の発行とウェブサイトの設置ということで、雇用者、被雇用者双方が理解するための情報提供を十分に行うということを重視されております。また、チャレンジ基金によります取組事例の紹介も、こちらのウェブサイト上で行っています。
 キャンペーンの重点課題というのが企業側の努力を奨励していくということにあります。このために、リサーチングで明らかになった現状を伝えること。それから望ましい慣行導入のための資金を提供すること。その結果の実例を広く紹介すること。それから職場などの協議を奨励する。公共部門での模範例を示す。こういったことに重点を置かれてキャンペーンを推進されております。
 具体的な政策としては、一つには労働時間の調整、フルタイムの労働時間を団体交渉で短縮するのではなく、パートタイム労働、ジョブ・シェアリング・ターム・タイム・ワーキング等を重視するということで、このあたりも先ほど、EUのところで御説明があった考え方に近いことであります。あとは労働パターンの調整ということでフレックス性ですとか、労働時間抑制ですとか、労働時間の年換算、標準的時間外労働等を応用されております。
 また、働く場所の調整ということで在宅勤務、それから休暇の調整ということで被雇用者の休暇をとる権利を求める。被雇用者からも選択を増やすその他のパッケージとして、育児あるいは高齢社介護のバウチャー、段階的なフレキシブル退職などを書いていただいております。
 チャレンジ基金でございますけれども、こちらの方は雇用主がワーク・ライフ・バランスを実施する際の問題解決のために金銭的な支援を行うということです。これはファンドを受けた雇用主が取組に関する計画を提出しまして、そのかわり成果について情報提供を行うことを条件に支援を受けております。
 何を具体的に行うかといいますと、ワーク・ライフ・バランス実施のためのコンサルティングを行う。この費用をファンドにより支援するということでございます。なぜこういった手法をとったかといいますと、企業により効果的な取組内容が異なるだろうということで、それぞれの企業に合った方策を考えるということを重視しております。
 チャレンジファンドは2000年から2003年まで実施しましたが、トータルで400 社、2,130 万ポンドを利用しまして行われました。ただ、ワーク・ライフ・バランスを推進させるトリガーとしての意義から基金が設立されまして、その結果、企業の認識は大変高まったということで、トリガーとしての役割を終えたと考えられまして、現在は中小企業向けのもののみを残して収束しているということでございました。
 これに関しては、ファンドの成果はもう十分上がったという認識で政府は中小企業の対策に移行しているという説明でございました。
 次にFlexible Working法に基づく取組ですが、こちらの方は労働者と企業の参加するグループで検討して立法化がなされまして、こちらの方は労働組合ですとか、それからワーク・ライフ・バランスに関連したNPO団体等も入っております。
 それから6歳までの子を持つ親は、内容としましてはフレキシブルワークを要求できまして、企業は従業員の要求を受ける義務はないが、検討し回答する義務がある。拒否する場合も文書で理由を説明するということでございます。
 1年間で100 万人が要求しまして、80から90万人が利用していて、ただ、やはり大部分が女性でして、およそ1割が男性とみられている。こちらの詳細なデータはないようでしたが、貿易産業省の方と決められていることでございます。
 Flexible Working法における権利と責任ということが説明されているんですが、労働者の権利としては、柔軟な働き方を申請できる。明確な業務上の理由が存在する場合を除き申請は却下されない。それから話し合いの場に同伴者を参加させることができる。これは同じ雇用主のもとで働いている人なんですが、労働組合の代表等であっても構わないということでございました。想定されているのは、過去にこういった申請のある人ですとか、労働組合の人ということでございます。それから一定の条件下においては、雇用審判所の判断を仰ぐことができる。
 責任としましては、まず、入念に検討された申請書を作成しなければならない。Flexible Workingについては、労働者がまず考えて自ら行動を起こすようにということが求められていまして、単に申し込みだけではなくて、具体的に自分の仕事が職場の中で、どうしたら新しい働き方で回っていくんだろうかということを考えて申請を行うということが大変重要とされています。また、使用者と合意に至ることができるよう、自らもまた柔軟な姿勢を持たなければならないと説明されています。
 次に雇用者側ですが、雇用者側の権利としては、容認できない場合は申請を却下できる。それから勤務時間の延長について、労働者の合意を求めることもできる。使用者の責任としては、要求を適切に検討しなければならない。期限を厳守しなければならない。それから却下する場合は、書面で説明しなければならないということでございます。
 こうしたことは、労働者には柔軟な働き方を要求できる権利がありまして、雇用者には真剣に取り合うべき義務があるということを示しておりまして、これは保護者に仕事と育児の調和を可能にし、雇用者、労働者、そして子どもたちの利益を図ることを目的とした、一連の法的権利の1つであるというふうに書いてあります。
 適用対象者は6歳未満の幼児、あるいは18歳未満の障害児を養育しているということでございます。申請に基づきまして適用が行われますが、一番下の過去12か月間に行っていないというのは、先ほど御説明しました1年間に1度しか申請できないということと同じ意味でございます。
 ただ、大企業の多くですとか、それから公的機関におきましては、法の適用を超えて、すべての労働者を対象する取組が行われているところも少なくないのですが、これがなぜ行われるかという理由ですが、他の世代との多様な働き方に対するニーズがあると。一つにはやはり、親の介護のよるニーズ、特にPivot 世代というふうに言うそうなんですが、高齢者と子や孫の世話をする世代のニーズが大きいと。それから、段階的退職を望む高齢者のニーズ等もある。また、管理上のニーズとして、やはた、Flexible Workingをうまく運用するには、多様なニーズがあった方がニーズの調整が容易であるという考え方があります。子育て層のニーズだけでは希望が偏ってしまうので、労働者がさまざまな希望を持つグループごとに重要な働き方を選ぶことができたとしたら、管理はより容易になるという考え方があります。
 このさまざまな働き方のパターンとしては、年平均労働時間ですとか、集約勤務、フレックスタイム、在宅勤務、ジョブシェアリング等があります。男性でこういった制度を活用する人では、集約勤務を利用する人が比較的多いようでございまして、女性の場合は、週何度となく少しずつ短く選択するということが比較的多いようでございます。こちらは武石委員の方から先ほど御説明がありましたけれども、保育所にかかる費用をできるだけ少なくする働き方ということで、選択されているのではないということでございます。
 それから働き方の続きで時差勤務、それから、こちらの方でユニークなのは学期間勤務ということで、学校の休暇期間中に休んでいるような考え方でございます。休暇の種類としては、出産休暇、育児休暇、父親休暇等がございますが、こちらの方は先ほど説明しましたように、イギリスでは取組は遅れている方でございますけれども、下に書きましたように、2007年4月から出産休暇の受給資格期間を9か月に延長して、その後、12か月を目指すということでございます。また、母親がこの有給休暇の一部を父親に譲ることができるような法律の制定も検討していくということでございました。
 こちらの方はフレキシブルワークのための申請手続の概略ということで、後ほど見ていただきたいんですが、細かく先ほど申しました期限が設定されているということでございます。
 それから、この取組に対する労働組合会議における取組姿勢でございますけれども、労働組合会議としては、このワーク・ライフ・バランスは女性の方の課題ではない。男性をいかに引き込むかが重要である。それから2つ目には、イギリスは長時間労働の国である。イギリスの子どもを持つ家庭では、もっと子どもに時間をかけたいと考えている。その結果、どちらかがフルに働かないという家庭の選択が行われている。男女間の賃金格差を反映しまして、結果的に女性の労働時間が短くなりまして、女性のみが子どものニーズに合わせて、柔軟な労働時間設定による働き方やパートタイム選択をしている。そうしますと、仕事が低いスキルのものに限定され、子どもに手がかからなくなったときに、フルの仕事に戻っても経済性のよい仕事につけない。一方で男性は家庭の収入が減った分、より長い時間働かなければならなくなる。こうした働き方は21世紀の社会において、よい体系ではないという、このあたりもちょっと、日本と非常に似た問題意識を持っております。
 それからワーク・ライフ・バランスが欧州で注目されている背景ですが、経済のグローバル化やIT化の影響ということで、長時間勤務と健康の関係を見ますと、非常にストレスが強くなっているということで、経済の要請が1週間に7日間、24時間稼働している。こうなってきますと、逆にイギリスは、これまで長時間で対応してきたわけですけれども、もうフレキシブルアワーにして時間を分けないと働けないことは明らかであるということで、逆に、こういう経済の要請というのは、よい機会なのではないかと労働組合ではとらえているようでございます。
 それから企業の取組例としては、こちらの方は貿易産業省の方でいろいろな事例を紹介しておりますが、代表的なものを挙げますと、人材確保が容易になったですとか、社員の労働意欲が向上した、社員離職率の改善、欠勤率の改善等が挙げられております。
 このワーク・ライフ・バランス推進の評価ですけれども、ポイントは父親の育児参加増ということで、それが進めば子育てに父親が参加し続けるし、女性の職場復帰が早くなると。それからワーク・ライフ・バランスがマネジメントコストはかかるけれども、ほかのコスト節約の効果が大きい。こうしたメリットが企業に認知されるようになってきている。
 それから政策評価でよりまして、男女平等に貢献している。それは女性だけでなく、男性にもメリットがあるとされているということであります。
 それから、子育て環境整備に関する取組ですが、99年からこのSure Start Programというのが導入されておりまして、こちらの方は就学前からのアプローチが学校からの成果を向上させるために大変重要であると、早期教育の考え方があります。背景には共働き家庭の増加や単身家庭の増加、貧困な家庭で育つ子どもの増加等があります。当初、Sure Start Programも貧困家庭を対象にしたものがかなり中心になったわけですけれども、徐々にすべての方に拡大してきているということでございます。
 中身といたしましては、Free Nurseryとか、学童保育とか、保育施設整備等が含まれます。Free Nurseryというのは、1日2.5 時間分の費用を三、四歳児に対して補助するという考え方です。それから、下の方にまいりまして、Local Program というのは、地域で提供する子どもに関するサービスを総合化するということで、地方自治体が地域の実状にあわせて計画を立てる。それから、Children's Centre というのは、地域で一元的にサービスを提供する拠点ということで、これを設けているということでございます。
 この成果と課題ですが、保育関係の予算が1997年以降約3倍になりまして、保育サービスが53万5,000 か所、子ども約120 万人分増えたと。ただし、保育サービスの柔軟性がなく、まだコーディネートもできていない、保育の質が低い、それから保育サービスの費用が高過ぎるといった問題があります。こういった点につきましては、大規模な政策評価を行っておりまして、今後も継続的に行っていくということでございました。そういった課題を踏まえた新しい計画へ移行するということになっております。
 新しい計画が2004年12月からスタートしました子育て支援10か年計画でして、「~親には選択肢を 子どもの人生には最善のスタートを~」ということで、政策方針としては、すべての子どもに確実に乳幼児期からできる限り最善の環境を与えるということ。それから、雇用パターンの変化に対応し、両親、特に母親が確実に職に就き、キャリアを積むことができるようにする。それから、仕事と家庭生活の両立を図る上で、家族自身がその選択を行いたいという期待を尊重するということでございます。
 これについては、具体的な計画のマイルストーンが示されておりまして、2005年から2010年までに何をするかということが示されております。
 時間を超過してしまいましたけれども、これで終わらせていただきます。イギリスにつきましては、先ほどデータを見ていただきましたように、決して家族政策は、これまで充実していませんでしたし、出生率も2000年以降、若干改善していますが、それまでなだらかに下がっていたという状況なんですが、日本と同じ働き方の問題ですとか、それから、女性が子どもをみるというような固定的な意識がある中で、こういったワーク・ライフ・バランスの推進と子育て支援というものを体系的に進めようとしているということで御紹介いたしました。
佐藤会長
どうもありがとうございました。イギリスにおけるワーク・ライフ・バランスへの取組についてお話しいただきました。それでは林主任研究官の御報告と矢島分析官の御報告、両方について御質問を伺うようにしたいと思います。限られた時間ですので、御質問があって関連したものだったら続けて質問を出していただく方がいいかと思いますので、どなたからでも、いかがですか。
阿部委員
私は林さんにお伺いしたいところがあるんですが、この調査は大変おもしろいと思うんですね。ただ、調査票を見ましたら、働いている産業、業種、こういったものが調査されていないように思われます。それで、よくスウェーデンの話で同じようなストーリーの話がよく出てくるわけですけれども、よく見てみますと、スウェーデンの公務員の比率が就業者の約4割から5割の間ぐらいあって、日本と比較しますと、日本は公務員でいくと7%ぐらい、公共機関まで含めると何%までいくのかわかりませんけれども、いっても十数%だと思います。OECDの公務員の比率が大体OECD諸国平均で20%前後だったと思いますから、スウェーデンというのははるかに高い、スウェーデンの研究なんかを見ますと、民間企業と公務員とでは、やはり育児休業の取得も違うし、それに企業へのリテンションも全然違っているわけなんですね。そう考えていくと日本への示唆ということで、スウェーデンのようにやるとうまくいくかというと、ちょっとミスリードになるんではないかという気がしてならないんですが、いかがお考えでしょうか。
林主任研究官
産業、業種について調査していないという御指摘だったのですが、実は私ども2か年に分けて調査をやっていまして、今、お手元に配っている白い本の方は家庭生活ということで、カップルに調査をするという形でしています。その後、昨年の秋から企業と産業の調査ということで、企業と従業員両方のサンプル調査をして、育児休業の取得割合ですとか、あるいはその状況などを公的機関と民間企業に分けて分析をしているところでございます。また、その結果が出たら先生にも御紹介する機会があればと思いますが、御指摘のとおり公務員が非常に多いということでございます。私どももスウェーデンの家庭生活調査をやってみて、こんなにうまくいっていて、非常にうまく行き過ぎのような感じもするものですから、また公務員が多いからではないかという御指摘も随分いただきましたものですから、産業、それから企業の大きさ、大企業と中小企業では状況は違うということもありますので、それから、公的機関か民間かといったようなことに分けて分析をしております。
 ただ、今分析中なのですけれども、思ったよりも民間企業も育児休業を取得している、特に大企業は取得しているようです。先ほど賃金の上乗せの話もいたしましたが、8 割国から出るところへ、さらに1割上乗せしているというものですけれども、民間企業でも特に大企業では、3割の企業が上乗せをしているというデータが得られましたし、あるいは育児休業をとることで同僚にいじめられないかという質問についても、民間企業でも非常に少ない割合になっていたということでございます。いずれにしても、まとまったところでまた先生に御紹介させていただければと思います。
佐藤会長
データ的には公務員かどうか聞いているんですね。
林主任研究官
これは聞いております。
佐藤会長
推計すれば出てくると。
林主任研究官
既にやった調査で出すことは可能でございます。
佐藤会長
既にやったものも分けて分析もできる。
林主任研究官
はい。
佐藤会長
ほかに、どうぞ。
橘木委員
林さんと矢島さんにお聞きしたいんですが、この4か国を今ざっと私流に理解しますと、日本は何となくイギリスに似ていると。イギリス流に似ている一つの理由は、何とか企業にやらせたいという意図が非常に強い。ドイツは男女の役割分担が非常に強いと。これは日本もそうですよね。スウェーデンは先ほど阿部さんが言われたように、公務員があるからやや特殊だし、彼らは非常に高い負担を受け入れた国なので、日本はそれをどうも目指せない。となると、どうもフランスが我々にとっては一番モデルとしてもいいんじゃないかなという、今日お聞きした範囲での、私の単純な理解なんですが、お二人はどうでしょうか。
矢島分析官
フランスがいいというのは、どのあたりの……。
橘木委員
割合個人の自主性に任せて、かといって政府も育児手当とか、いろんなことをやっているし、完全に企業にも依存はしていないという意味で、逆に言えば、日本やイギリスやドイツと違う方式をとっているかなと。日本はドイツ、イギリスなんかと似ていると、いきなりフランスにいくのは無理かなという感じもしないでもないですよね。
矢島分析官
イギリスが企業にやらせているというのは、ちょっと私の言い方が悪かったと思うんですけれども、自主的な取組を奨励することであって……。
橘木委員
自主的な取組をやらせたってやらないですよ、企業は。
矢島分析官
ですから、法律で縛るのではなくて、企業が自ら計画してやることを奨励するという意味で……。
橘木委員
日本と似ているじゃないですか。
矢島分析官
ですから、依存するという形とはちょっと違うのかなと思っていまして、フランスの方について言いますと、やはり手当の評価というところが、大変問題になるのではないかと思うんですけれども、今回の調査をスタートする前に、定量的な分析において、手当の効果というのが、出生率に対する効果というのが、どのように研究されているか、既存の研究成果について調べてみたんですけれども、なかなか手当の出生率に対する効果については、肯定的な研究成果は余り出ていませんで、ただ、フランスの第三子については、かなり高い水準で出していますので、わずかにあると。ただ、それ以外については、ほとんど効果が認められないんではないかと。
 あと問題なのは、手当については、始めてしまうと短期間に間に所得の水準の中に取り込まれてしまって、効果が短期間で終わってしまうと。そして持続させるためには、追加的な支出が必要になって、あるいは、やめたり減らしたりするとマイナスの効果が大変大きいというような研究成果が出ておりました。そちらについて、実際出生率が高水準なわけで、今、林さんから御説明があったんですが、ほかにもいろいろな手当だけではなくて、保育との相乗効果等もあるんだと思われますけれども、そのあたりで、なかなか一慨にどこがいいというのも言いにくいかなと。
橘木委員
逆に言えば、この4か国のいいとこどりですか、今のサジェスチョンは。
矢島分析官
林さんがおっしゃったように、やはりその国の一貫性ということが非常に重要なのではないかなと。政策の一貫性というのは重要なのではないかなと思われますけれども、網野先生から先ほど御指摘があったように、例えば、低年齢児の保育と育児休業との環境をどう考えるかとか、そういった考え方というものの一貫性が重要ではないかと思うんですけれども。
林主任研究官
私は2つございます。先ほどの手当の効果の評価なのですが、矢島さんおっしゃるように、非常に難しい面がございます。家族手当の制度が非常に頻繁に変わっておりまして、あるときに金額を上げたのが、いつの出生率に効果が出てきたのか、必ず10か月後に出るというものでもないと思いますので、そこが非常にわかりにくい。したがいまして計量分析が難しいということがまずございます。いい計量分析の結果が出にくいということがあります。
 あともう一つは、やや政治的な駆け引きの道具になっている側面もあって、一時的に増えたり減ったりしているということもあるようでございます。
 ただ、やはり研究者によっては、手当の効果はある程度出生率を底支えするという点ではあったのではないかという人もいます。特にフランスの研究者では多いようでございます。
 もう1点申し上げたいのは、フランスではそもそも出生促進政策に対して、非常に支持があるということです。国民的なコンセンサスがあるということであります。これはいろいろ言われていますけれども、一番大きな要因としてよく言われるのが、ドイツに負け続けた歴史というのがありまして、1871年に普仏戦争で負けて以来、ドイツに第一次大戦のときにも攻め込まれていますし、第二次大戦のときもそうであった。負け続けたのは兵隊が足りなかったからで、それは結局、人口が少ないからであるという、そういう考え方が割合あるようでございまして、それで出生促進をすることについて、家族手当のような形で多子家庭を支えるということは良いことなのだという考え方について、非常に支持があるのだと言われております。そのあたりの歴史が違うということもあります。
 さらにモデルとする標準家庭もドイツですと、子ども2人ぐらいというのが多いですが、フランスだと子どもが3人いるのが理想的な状態と思っているような伝統的なイメージがあるようでございまして、そういったことも関係しているのではないかと思われます。
 モデルになり得るのではないかということですけれども、私自身はフランスの、どの点がというといろいろございますけれども、モデルになるところは十分あるのではないかと思っております。
佐藤会長
先ほど政策の一貫性ということで、林さんが36ページの日本への含意のところで2つ挙げられていて、スウェーデンとかフランスを見ると出産後の働き方ですね。これは短時間の勤務がかなり使われていて、日本はメニューがあるけど使われていない。ですから、そこは企業で短時間勤務をどうしていくかということがあると思うんですけれども、上の方の子育て施策をめぐる一貫性と言ったときに、ほかの国を見ていて、政策の一貫性ということを日本にあてはめるとどういう点にあるか、ちょっと教えていただくとありがたいんですが。
林主任研究官
いろいろなことがあるかと思うのですが、今、一つ非常に大きな問題と思うのは、パートタイムの問題があると思います。ドイツやフランスでは、それからスウェーデンでは当然そうですが、EU指令もあって、パートタイム労働者と正社員の取扱いは必ず均等にしなければいけないということになっていますが、日本の場合はそうではない。一応、パートタイム労働指針というのが大臣告示でございますけれども、法制化されているわけではなくて、実際に非正規で今、日本で働いている契約社員やパートタイムの方々、あるいは派遣の人々という人たちの賃金水準を見ると、同じような仕事をして、しかも労働時間も結構長かったりするのですが、時間当たり賃金が正社員と比べて相当低い。こういうことがあると、正社員の地位から離れたくないということで、産むのをためらうという人がいるのではないか。女の人生だけではないですけれども、男の人生もそうですけれども、人生いろいろなことが起こるわけで、仕事を辞めたくなくても、例えば片方の転勤で一緒に行くとか、親の介護の関係とか、いろいろな事情で辞めざるをえない方もいるわけであります。いろいろな働き方をする場合に、短時間勤務だからといって賃金が安いという状況は、やはり直さないとうまくいかないのではないかと思います。これが実は子育てをめぐる政策のPolicy Coherenceの中で、日本については重要なことではないかと思います。
佐藤会長
時間がちょっと過ぎているんですけれども、せっかくの機会ですから御質問を伺って、そうしたら布山さんから続けて伺っていくということにしましょう。質問を先に出していたければと思います。
布山委員
多分、どこの国のどの施策がいいとか、悪いとかという話は、恐らくないと思っています。フランスについては、やはり考えなければいけないのは、林さんの方の最後の方の資料に付いているとおり、事実婚というものを社会規範の中で認めているかどうかということについても違うのかなという気がしています。それとちょっと議論が違う方に行ってしまうんで、深くは言いませんけれども、パートと正社員のところはいろいろ別のところの議論がありますが、職務給概念でお給料の処遇が決まっている国と日本とまるっきり同じに考えれるのはどうかなという気は、私は個人的に思います。
 あと別途先ほど先生の方にもおしかりを受けましたが、企業に任したら何もやらないというおしかりを受けたんですけれども、イギリスに4年ぐらい前に行ったときに、全然こんな感じの話じゃなかったんですよ。先ほどの矢島さんからの話ですと、ブレア政権で変わっていったということなんですが、企業に対して自発的に取組を促すもとになるような施策というか、どういうことを政府の方でしたのかというのをちょっと伺いたいんですけど。
佐藤会長
質問を出していただいて、あとでまとめてということで。
杉山委員
林さんに質問なんですけれども、22ページのドイツのところで、最近家族のための地域同盟イニシアチブというのが始まったというようなお話があって、地域ぐるみで子育て支援をしようということらしく、日本もそう言っているんですが、違いは何かなとか、どうもちょっと日本だと地域ぐるみでやりましょうというと、何というのかな、専業主婦のお母さんを応援しましょうみたいな感じになるところがあって、似たような国だけにどういうふうにしているか、ちょっと気になるので教えていただけますか。
大沢委員
布山さんがおっしゃったことと似ているんですが、労使関係の仕組みと出生率の関係について、ここでは家族政策が中心でしたが、ドイツを見ると、やはり日本と似ているというのは、労使関係の仕組みとか、正社員のあり方が関係しているのかなというところで、ちょっとお話をいただけたらと思いました。どちらでも構いませんが。
高橋委員
少子化の問題でいうと、1975年以降、日本の場合7割が結婚の問題で少子化が起きているんですけれども、そういう意味で日本の問題というのは未婚女性に対する非常に強い労働需要があって、既婚女性については、パートというようなところに集中して労働需要があると。その辺の未婚に対する労働需要というのは、ヨーロッパでは、そういう既婚者と未婚の人で差異があったのかないかという、その辺をちょっとお聞きします。
佐藤会長
御回答できる範囲内という形で林さん、矢島さんという順番で伺えればと、よろしくお願いします。
林主任研究官
フランスでは事実婚がかなり寄与しているのではないかと、私もそう思います。実は私自身、ヨーロッパの複数の国に仕事で赴任しておりまして、フランスにも3年ほど住んでいたのですけれども、欧米はみなカップル社会ですが、フランスのカップル社会というのは非常に強烈であります。例えば、夜パーティによばれるとか、あるいは友人の家によばれるというと、夜ですと大体カップルで、それは別に法律婚でなくていいのですが、ボーイフレンドでもよいのですけれども、カップルで一緒に招待されるのが通常です。バカンスも長いですから、その間、普通はカップルで楽しむという社会で、コンサートなどもカップルで出かけることが多いものですから、はっきり言って、カップルでないと、社会生活を営む上で何かと不便だったり、居心地がよくなかったりすることも少なくない。そういう国なものですから、法律婚をしなくてもいいのですけれども、男女が一緒に暮らす、かなり若い時期から暮らすというのがあって、その間に子どもができて、その後法律婚に移行するといったことが多いと思われます。考えてみれば、男と女は一緒に暮らしてみないとわからないという面もあるわけで、そういう点でもとりあえず一緒に暮らしてみるのは非常にリーズナブルだという考え方が背景にあるのではないかと思います。
 それからドイツの「家族のための地域同盟イニシアティブ」ですけれども、企業ですとか、コミュニティ、ボランティアが連携するということなのですが、具体的には、例えばある地域の企業が、こういう勤務時間なのでその地域の保育所に開園時間を調整してほしいという要請をするといった形で連携するとか、そういう成果が多少出てきているようですが、実は昨年から始まったものですから、まだ評価は分かれるところでございまして、大して効果がないのではないかとおっしゃる方もいるという状況でございます。
 それから、先ほど高橋先生からございました未婚か、既婚かということで、雇用の差別というか、そういった区別があるのかということなんですが、私はあまりないと思います。そもそもパートナーや子どもと一緒に暮らしている同棲の人も多いわけですから、この人が法律婚しているのかどうかもよくわからないということもあるので、そこはあまり日本のような差があるとは思われないような気がいたします。
佐藤会長
どうもありがとうございました。矢島さん。
矢島分析官
イギリスについて、企業の取組を促すきっかけになったということだったですが、先ほど御紹介したチャレンジ基金ということが、まさにトリガーとして創設したということにとりまして、ここでコンサルティングの支援をするとかということで、個々の企業が取組を促していくということでございました。ただ、やはり、これは貿易産業省に行っても、労働組合に行っても、それから幾つかの企業を回っても同じことを言っていたんですが、Flexible Workingの取組とかをやってみたら思ったよりはるかに簡単だった、容易だったんだということをすごく強調されました。それで3年間で大企業については、トリガーの役割は終えたんだということで、これは貿易産業省だけが言っていることではありませんでした。ただ、EUからも指摘されているように、中小企業ですとか、それから対象になる労働者もすべてに権利が認められているわけではないので、やはりそこで技術的なものを専門性などで、そういったものがある労働者は利用しやすいだろう。そうでない労働者が利用しにくいのではないかという指摘が大きく出ることも事実ですし、これによって女性がキャリアアップをしていく方にきちんとつながっていくかどうかというあたりが、今後の課題をしていくということです。
佐藤会長
どうもありがとうございました。まだまだ御議論をしたいんですけれども、時間も過ぎましたので、本日の調査会はここまでにさせていただきたいと思います。実は資料の積み残しもあるんですけれども、これの扱いと今後の進め方について、まず事務局から御説明いただければというふうに思います。
矢島分析官
本日でお手元にお配りしておりますのが、アンケートの集計結果と、その概要版でございます。こちらにつきましては、以前単純集計の結果について御報告いたしておりますけれども、それに加えて一部クロス集計を入れております。こちらにつきまして、また次の機会に御説明したいと思いますけれども、御覧いただいて、また先生方、御意見ありましたらいただければと思います。
 それから資料の取扱いとしまして、先ほど御説明がありましたけれども、こちらの経済社会総合研究所からいただきました資料につきましては、まだ公表前ということでお取扱いには御注意いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それからお手元の方で議事録の方をお渡しさせていただきました。第3回の方が本日配らせていただいたもので確定ということで公開ですが、第4回の議事録につきましては、委員の皆様にお配りしておりますので、また見え消しをしていただきまして、事務局の方に送り返していただけたらと思います。
 それから大変恐縮ですが、その次の回は5月27日でもうセットさせていただいているわけですけれども、さらにその次の回、第7回についての日程調整の用紙を皆様にお配りさせていただいております。6月の半ばから7月の前半にかけての予定ということで、また、こちらの方も皆様お忙しいでしょうが、速やかに事務局の方にお返しいただければありがたいと思っております。
 それから今後の調査会の日程ということもお配りしておりますが、この調査会は7月までに報告書をとりまとめるということで進めておりますので、ただ、いろいろなさまざまなデータ等の検討について、次の調査会で概ね終わらせて、その後、検討して7月に公表したというふうに考えておりますので、よろしくお願い申します。
 それから今回の調査会を立ち上げるに当たって、もう一つ、大きなテーマとして男女共同参画が経済、企業に与える影響というところがありまして、そちらにつきましては、7月に報告書をとりまとめて、以降に検討させていただければと思いますので、皆様にはそのような形でまた御検討いただくことになると思います。
 以上です。
藻谷委員
黙っていたんですが、実は企業がどう考えているかというのは、第3の変数として個人と政策以外に非常に大きいということが今日わかったと思ったんですが、流れと違うのでは黙っていたんですけれども、労働時間のものとか、非常に参考になりまして、ぜひそれは、そういうことだったんですね、黙っていてよかったです。
佐藤会長
経済社会なり企業への影響の方は7月以降ということで、そういう意味で7月以降も専門調査会は続くということのようですので、今後もぜひ御出席いただいて、熱心に御議論いただければというふうに思います。
 本日はこの研究会にお出でいただいて貴重なお話をどうもありがとうございました。ちょっと延びましたけれども、これで終わりにさせていただければと思います。どうもありがとうございました。

以上