男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成20年12月24日(月) 13:00~15:00
  • 場所: 内閣府庁舎5階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    袖井 孝子 お茶の水女子大学名誉教授、東京家政学院大学客員教授
    会長代理
    鹿嶋 敬 実践女子大学教授
    委員
    伊藤 公雄 京都大学大学院文学研究科教授
    帯野 久美子 株式会社インターアクト・ジャパン代表取締役
    加藤 さゆり 全国地域婦人団体連絡協議会事務局長
    河野 真理子 株式会社キャリアネットワーク代表取締役会長
    坂本 純子 特定非営利活動法人新座子育てネットワーク代表理事
    桜井 陽子 財団法人横浜市男女共同参画推進協会理事
    住田 裕子 弁護士
    田中 和子 国際基督教大学教授、ICUジェンダー研究センター長
    辻村 みよ子 東北大学大学院教授
    平野 治生 財団法人日本広報センター理事長
    山田 昌弘 中央大学教授

(議事次第)

  1. 男女共同参画基本計画(第3次)の策定に向けた意見交換

(配布資料)

資料1
男女共同参画基本計画(第2次)
資料2
男女共同参画基本計画(第2次)フォローアップ結果についての意見 [PDF形式:263KB] 別ウインドウで開きます
資料3
地域における男女共同推進の今後のあり方について [PDF形式:1540KB] 別ウインドウで開きます
資料4
施策・事業の推進に際して必要なこと及び障害(地方公共団体及び男女共同参画センター等に対するアンケート調査結果) [PDF形式:118KB] 別ウインドウで開きます
資料5
地域における男女共同参画推進の今後のあり方について(中間整理)意見募集結果について [PDF形式:16KB] 別ウインドウで開きます
資料6-1
基本問題専門調査会 第39回議事録(案)
資料6-2
基本問題専門調査会 第40回議事録(案)
資料6-3
基本問題専門調査会 第41回議事録(案)
袖井会長
ただいまから基本問題専門調査会の第42回会合を開催いたします。
 議事に入る前に、男女共同参画局の人事異動について御紹介いたします。推進課の安田企画官の後任として、大西企画官が就任されました。一言、ごあいさつをお願いいたします。
大西企画官
10月16日付けで安田の後任でまいりました大西知子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
袖井会長
それでは、議事に入ります。
 今後の男女共同参画行政の重要なテーマとして、第3次男女共同参画基本計画の策定があります。本日の調査会では第3次基本計画で重視するべき課題等について、委員の皆様から御意見をいただければと考えております。
 現在の委員の任期は来る1月5日までとなっておりますので、今回は現在の委員の皆様による最後の調査会となります。どうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、本日の論点につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
塚崎推進課長
それでは、私の方から資料の説明をさせていただきます。
 男女共同参画基本計画につきましては、現行の第2次のものは平成17年12月27日に閣議決定されております。その第2次の計画の中に「平成22年度には計画全体について見直しを行う」という文言が盛り込まれておりまして、次期計画を再来年度に策定することになっております。そこで、本日はこれからの重要なテーマである次期計画の策定について御議論いただこうということでございます。
 第3次計画の策定に関わることであれば、御自由に御議論いただきたいと思いますけれども、議論のきっかけにしていただこうということで、論点の例を挙げた資料を作成しております。
 まず、論点の1のところですけれども、「第3次計画の重点項目」という部分でございますが、3点挙げております。1点目は「第3次計画で特に重視するべきこと」ということでございます。資料1として「第2次計画のポイント」をお付けしておりますけれども、次期計画で重視すべきポイントとしてはどういうことが考えられるのか、という論点でございます。
 1の2つ目でございますが、第2次計画策定後、施策の進展が見られ、あるいは見込まれ、第3次計画においては見直し、または深化させる必要がある課題でございます。括弧の中に例を書いてございますが、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のための施策につきましては、現行の第2次計画の中にも、仕事と家庭、地域生活の両立支援と働き方の見直しということは盛り込まれていますが、この仕事と生活の調和につきましては、昨年末に憲章と行動指針が策定されまして、また実現度指標もつくられるなど、大きな進展が図られたところでございます。第3次計画ではこうした進展も踏まえた上で、更に深化したものを盛り込んでいくことになるかと思います。
 また、地域における男女共同参画推進につきましては、本調査会において御議論をいただいて、この10月に報告書を取りまとめたところでございます。その中で知識の習得や意識の啓発を中心とした第1ステージから、具体的な課題を解決する実践的活動を中心とした第2ステージへの転換を打ち出していただいております。こうしたことを更にどのように具体化していくかという課題が、第3次基本計画の策定においては大変重要なポイントになるかと思います。
 また、税制、社会保障制度改革については、現行の計画の中にも「男女の社会における活動の選択に対する中立性などの観点から総合的に検討する」とございますが、第3次計画においても一つの論点になるかと思います。
 重点項目として挙げている3番目の点でございますが、「社会情勢の変化に応じた課題」でございます。例えば、非正規労働者の割合でございますが、労働者の中でも年々増加しています。そして女性は、非正規労働者が既に正規労働者を上回っております。平成19年の数字でいいますと、女性労働力の53.4%が非正規労働者でございます。こうした観点も、第3次計画において検討していかなければならない課題となると考えられます。
 また、監視・影響調査専門調査会において御議論いただいています困難な立場にある女性に対する支援の問題。それから、医師不足の問題でございますが、医師、特に若い層で女性の医師が増えております。医師国家試験合格者のうち、女性の割合は3分の1を占めております。そうした中で女性医師が活躍しやすい環境を整備する、あるいは一旦辞められた女性医師が復帰しやすい環境を整備することは医師不足の問題を解決する上でも、大変重要な課題になっております。
 また、情報技術の発達でございますけれども、勿論、大きなメリットをさまざまな面でもたらしていますが、その一方でネットによる暴力など、新たな課題を惹起しております。四角で囲みましたその下の部分でございますが、今年の3月に参画会議で決定していただきました現行の基本計画のフォローアップ結果のうち、現状及び今後取組が求められる点等の概要を、御議論の参考にしていただくために記載しております。そのフォローアップ結果の本体も、資料2としてお付けしております。
 次に論点の2でございますが、「男女共同参画の推進体制等」ということで、4点挙げております。1点目でございますが、地域における多様な主体、男女共同参画センター、企業、大学、NPOなどの間の連携・協働の在り方でございます。これはまさにこの専門調査会において御議論をいただきました地域における男女共同参画推進のあり方の中でも重要なポイントでしたが、3次計画の策定に当たっても論点の一つとなると考えております。
 2点目でございますが、国と地方公共団体の連携のあり方でございます。現行の第2次計画の中にも「都道府県、市町村と一層の連携強化を図る」とありますけれども、次期の計画の中でその連携のあり方についても検討する必要があると考えております。
 それから、3点目でございますが、国際的な連携のあり方です。国際的な連携としましては、国際機関との関係、あるいは国際的な会合、例えば東アジア大臣会合が一昨年から開催されるようになっておりますし、2010年にAPECの女性リーダーズ会合が日本で開催される予定でございます。こういった会合に加えまして、国際協力も国際的な連携の一つでございます。こうしたさまざまな国際的な連携のあり方も、一つの重要な論点となるかと思います。
 4点目でございますが、広報のあり方としまして、その中に3点を挙げております。1点目は世代の違いに応じてどのようにアプローチをするかという点でございます。特に若い層に対するアプローチが重要な課題になるかと思います。それから、男性をどのように巻き込んでいくかということ。
 3点目としまして、反対・無関心層へのアプローチを挙げております。男女共同参画に対する誤解あるいは反発が、男女共同参画の推進を入口段階で困難にしている場合があるという御指摘も、委員の方からいただいているところでございます。
 この広報のあり方に関しましては、参考にしていただこうということで、下の四角い枠の中に2つの点を挙げております。一つは、昨年5月に実施した地方公共団体と男女共同参画センター等に対するアンケートの中の、「施策・事業の推進に際して必要なこと及び障害」についての回答でございます。その調査結果そのものも資料4としてお付けしておりますが、これは自治体、男女共同参画センター等を対象に、「男女共同参画について地域住民全体に理解してもらい、世代・性別を問わず幅広い人々に施策・事業に参加してもらうために必要なこと、障害になっていること」を伺ったものです。その回答の中で、「男女共同参画への誤解がある、この用語を使うと事業が敬遠される」という趣旨のものが37件と、全体の中で最も多い回答でございました。
 もう一点でございますけれども、今回の「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」の報告書をまとめていただく際に実施しましたパブリックコメントにおける、男女共同参画の基本的な考え方に対する反対意見の主なものを載せております。
 いくつか挙げておりますが、「性別固定的役割分担は合理性がある、有用である」、「男女共同参画が少子化、子どもの非行、晩婚化、離婚の増加を招いた」、「家族のつながりや地域の文化を破壊する」、「男性への差別になっている」、こうした意見がパブリックコメントの中で出てきたところでございます。このパブリックコメントにつきましても、資料5に詳しいものをお付けしております。
 それから、これも御議論の参考としていただくために、平成17年以降の主な動きをまとめたものを付けております。関連する法律の改正、それから男女共同参画会議の意見決定、専門調査会でまとめられた報告書、男女共同参画推進本部の決定、国際的な会合など、17年以降の主なものを挙げております。
 資料の説明につきましては、以上でございます。
袖井会長
どうもありがとうございました。それでは協議に入りたいと思います。今、御報告いただきました第3次基本計画についての論点は大きく2つに分かれております。1つが第3次計画の重点項目で、もう一つが男女共同参画の推進体制等ということです。まず、第一の第3次計画につきまして、重点項目にどういう点を挙げるかということについて、皆様方からの御意見をお伺いしたいと思います。どなたからでも結構です。
 伊藤委員、どうぞ。
伊藤委員
今、私どものところも女性研究者を支援する事業をしていますが、日本の女性研究者の割合が大変低いのは明らかです。第2次のときも「新たな取組を必要とする分野」ということで設定していただいているわけですけれども、女性研究者は少しずつ増えてはいますが、大きな変化につながらない。
 OECDのデータなどを見ますと、大体1990年代ぐらいに多くの国々が高等教育の強化へ向けてかなりの財政出動を含めて、重点政策として動き始めています。日本の場合は不況の問題もあって、ちょっと対応できなかったわけです。その結果、OECD平均でも大学型の高等教育の進学率は急激に上がっているわけです。日本はもうOECDの平均より低い状況ですよね。中でも女性の進学率が大変目だっておりまして、男性より10ポイントぐらい女性がオーバーしているのではないかと思います。1990年代頭ぐらいだと明らかに男性が上でしたが、この十数年で女性が明らかに急増しています。日本の場合は、男女で男性が15ポイントぐらいオーバーしている。つまり、OECDと比べると25ポイントぐらい、まだ女性が高等教育へ進学する余地があるという状態です。
 科学の問題だけではなく、知識集約型の、21世紀型の産業ということも考えて、これを埋めていかなければならないのではないかということです。ただ、どういう方向があるのか。進学はやはり個人の選択ですので、これをどういう形で水路づけるのかというのは、いろいろ工夫が要ると思います。世界の経済の発達した国々の流れの中で、女性の高等教育進学率が異様に低い状況というのは、やはり改善するべきですし、それが改善されると、かなりの分野で女性の社会参画をプッシュすることが可能になるのではないかと思います。これが一つです。
 もう一つは、先日、JICAと国立女性教育会館の連携で、人身取引の国際シンポジウムを、国連機関、各国政府の方やNGOと一緒にやりました。人身取引は政府も取り組んでおられるわけで、実際にかなり改善されているわけです。現在、日本の場合はいわゆる性風俗産業における人身取引問題が中心なのですが、これからケア労働であるとか家事労働という形で移民の受け入れの流れが始まると、移民政策の中での女性の家事労働者、ケア労働者に対する対応が、恐らくこの5年、10年の間には求められる可能性が高いのではないか。これは8月に自由民主党の「2050年までに1,000万人の移民受入計画」が出され、日本経団連もそれに対応して動き始めておりますので、それへの対応も第3次では少し視野に入れておく必要があるのではないかと思います。
 もう一つが企業の問題で、これも人身取引です。僕が専門に扱ったのが需要者、セックスワーカーの需要者研究を全国調査したのですが、需要者の男性の中で、やはり営業関係の方が結構目立つのです。営業・販売関係、あとは農林水産業が職業的には目立つ。営業関係の方が目立つということを考えると、やはりCSRの中に、女性の人権にきちんと取り組むというサジェスチョンのようなものをどこかで持ち込む必要がある。これは単に売買春の問題だけではなくて、企業のある種のガバナンスの問題として、従業員の人権という観点から女性の人権という観点にもう少しフォーカスするようなCSR。『Newsweek』などのデータで見ると、世界の標準はかなり女性の人権に配慮していますけれども、日本の企業のCSRを見ていると、この問題についてほとんど目配りがされていないわけです。日本の企業のCSRにおける女性の人権項目をもうちょっと強調するような形で動くと、結構、変化が導けるのではないかということを考えています。
袖井会長
どうもありがとうございました。はい、どうぞ。
板東局長
今、伊藤先生から御指摘の点で、多少コメントをさせていただいた方がいいかなと思いますのは、高等教育のところです。我が国の場合は短大の存在が非常に大きくて、少なくとも今までは大きかったということがございます。その短大を含めての大学への進学率ということで言いますと、男女の差がない。
伊藤委員
それは大体、同じぐらいですね。
板東局長
ただ、今は短大自体が4年制大学化したり、あるいは短大で今まで多かった看護や保育という分野が、だんだん4年制大学に移りつつある状況がありますので、大きな流動性のある部分だと思いますけれども、短大を抜きに高等教育の問題はなかなか語りにくい面があり、また、その短大の問題自体に役割分担の問題など、いろんなものもこれまで含まれていたことは事実だと思います。そこの背景のところが、欧米と違って多少複雑になっている部分があるのかなという感じがします。
伊藤委員
おっしゃるとおりだと思います。一時期は短大も含めた高等教育進学率で、女性が男性を追い抜いていた時期があったと思います。今は合わせるとまた男性が上になっていると思いますけれども。今申し上げた4年制型の、いわゆる大学型の高等教育への進学率という点で差をみる場合、おっしゃるように短大を視野に入れて、短大の再編のような問題も考えないと、混乱を招く可能性はあるだろうと思います。それにしても、数字の面で、どう見ても他の国々と大きな差がある状況が存在するのは事実だと思います。
袖井会長
どうもありがとうございました。短大の問題は、これから少し注目していかなければならないかなと思います。短大をやめたところが多いですし、多分、潰れるところも出てくると思いますので、今の伊藤委員の御指摘は大変重要かと思います。
 それから、女性研究者の問題ですが。最近、女性研究者は割に就職が増えているのですが、COEでもそうですけれども、何かのプロジェクトなどで短期的に雇用されている人が多いような気がいたします。何かその辺のデータを、伊藤先生は御存じでしょうか。
伊藤委員
いえ。
袖井会長
ないですか。私も周りの方から名刺をもらいますが、女性の方が任期付きのような形で結構就職していますので、これで本当に増えたと言っていいのかなと、すごく不安に思うのですが。辻村委員、何かありますか。
辻村委員
この点は後で触れさせていただきますが、まず、女性研究者問題をどう扱うか、という点についてご検討をお願いしたいと思います。これまでは第2次基本計画の第12項の「新たな取組を必要とする分野」ということで、科学技術分野という形でしか入っていませんでした。当然、第3次基本計画では本編のどこかに入れなければいけませんので、4月の参画加速プログラムにあった医師と女性研究者をどこに入れていくのかということは、非常に重要な点ではなかろうかと思います。
 最も近いのは、第10項の中に「教育・学習」だけではなく、「研究」というジャンルを含めていくということです。学術会議の科学者委員会男女共同参画分科会でアンケートをとりました結果、やはり理系分野を何とかしないといけない、著しい格差があるということがわかっております。理系分野を改善するためには、当然、研究者という段階からでは駄目で、中学校、高校の教育からということになりますから、第10項を拡充するということであろうかと思います。
 それから、取組の点では国立大学の方が進んでいるけれども、大学の女性教員比率は上がっていない。これに対して私立大学の方が国立に比べて比率は高いけれども、取組がほとんど行われていないという非常に顕著な結果が出ておりますので、私立大学も含めた全体の意識啓発、取組の強化、これはポジティブアクションも含むということで、取り組んでいく必要があろうかと思います。
 それで、先ほどの任期付きの研究者問題についてですが、確かに任期付きの特別研究員という形で若手を育成するシステムを作り始めていますけれども、この任期付きの研究者は地位が非常に不安定です。3年とか5年の任期をもらっても、その期間も、次の就職を探すためにやはり非常勤講師をしたり、本当に大車輪で働かなければいけなくて落ちついて研究ができないということがあります。まさに非正規雇用ですから、研究者をどのように本格的に育成していくかという点では、常勤の雇用者枠自体を拡大する方法が必要だと思います。
 これは人件費の国費による肩替わりとか、今、文部科学省の方でもいろいろ考えてくださっていると思いますけれども、そういったダイレクトなポジティブアクションの施策が必要になるのではないかと思いました。
 他の論点についてはまた後でお話しした方がよろしいでしょうか。
袖井会長
いや、ついでに言ってくださっても結構です。
辻村委員
もう一点だけ。第1の「政策方針決定過程への女性の参画の拡大」についてです。これまでにも何度か議論になりましたように、行政サイドとしては公務員とか審議会の女性委員割合の問題に限定せざるを得ないのかもしれませんけれども、やはり、政治分野について今後どのように働きかけるのかという点が重要です。
 ポジティブアクションについては、民間の企業に対して働きかけをするということは明記されていますけれども、政治分野、例えば政党あるいは政治団体についてはどこにも触れられていないという状況ですので、ここは、今回は避けて通れないのではないかという感じを持っております。
 2003年に女性のチャレンジ支援策の報告書をまとめたときに、ポジティブアクションが大きく前面に出てきていた。それで、ポジティブアクション研究会が2年間にわたって活動をしまして、2005年に報告書は出しましたが、その時期はちょうどさまざまな面で少し後退の時期であったものですから、ポジティブアクションということがあまり言えなかったと思います。ポジティブアクションは必ずしも強制的な割当制のようなものだけではないのです。一般にポジティブアクションというと「憲法違反だ」、「能力のない女性を優遇するのか」という反論が出てくるのですが、これはポジティブアクションについての誤解ですので、それを正しながら、憲法違反でもなく、現行法の中で実現できるポジティブアクションの類型を十分に探しながら、政治分野についてもかなり積極的にこれを進めていくということを明記すべきではないかと考えます。
 とりあえず、この点だけ指摘させていただきます。
袖井会長
どうもありがとうございます。ポジティブアクションといった場合、例えばクオータ制まで入れた方がよろしいでしょうか。
辻村委員
いえ。ポジティブアクションにはいろいろありまして、強制型のクオータ制を導入する場合には、当然、法律をつくるわけですけれども、その法律もまさに強制する形にするのか、それとも、例えば政党が自主的に女性候補者を30%擁立しなかった場合には政党助成金を減額するとか、いろいろ選択の余地があります。女性を30%擁立したところには助成金をプラスする韓国方式もありますし、フランスのように減額する方式もあります。韓国はプラス式の方がいいかもしれませんが、そういったことを明記して、少しプッシュしていくということもあろうかと思います。
 後ほどまた指摘させていただこうかと思っていましたが、御承知の国際人権規約についての規約委員会の最終勧告が2008年10月30日に出ておりまして、この中では民法改正の問題なども出てきております。また、意思決定過程への参加を促進するために、法定のクオータ制を入れなさいということが書いてあります。これは必ずしも拘束型・強制型ということではありませんが、法令上に明記して任意型、諮問型のクオータ制を入れるということでも構わないと思いますので、これは検討課題ではなかろうかと思います。すなわち、2020年までに30%にする方法を、ある程度具体的に指し示さなければならないのではないかということです。
袖井会長
どうもありがとうございました。どなたか他に。はい、どうぞ。
住田委員
今回の第3次計画の前に、今の大きな経済情勢の変化をどう受けとめておくかということを、一回考えておく必要があると思っています。これをまとめるまでにまだ何年かかかるわけですから、その間に落ちつけばよろしいのですが。実は私自身、いろんなエコノミストとお話をしていて感じるところは、これから本格的に経済的な問題が出てきて、特に女性の方にも影響が出てくる恐れがあると思っています。
 それを避けるために、いろんな意味でもう一度強く意識を持って、きちんと政策的に推進していく必要がありますが、まず懸念しておりますことは、政治の問題として、男女共同参画の重要性が低いものに落ちてしまっているのではないかということ。このことを非常に大きく懸念しています。こういう経済的な問題があるときに、特に女性問題を言わなければいけないのに、逆に政治の中枢のところでそういう認識が薄いということについて非常に危惧しているというのが、まず一つです。ですから、そのあたりはどういう状況であるのか、内閣府の中でどういう動きがあるのかについても、国民にも広く知らしめていただきたいし、また、こういう会議の席上でも、そういう政治情勢についてもお話があっていいのではないかという気がいたしました。
 2つ目が、非常に大きな経済的な問題がある中で、一過性であればいいのですが、これが今後かなりじわじわと影響してくる可能性があるときに、一番大きな効き方が国の財政、地方公共団体の予算の問題、もう一つ、企業で言えば会社の雇用の問題、これらが大きな問題になってくると思います。
 これは弁護士として本当に実感しているところですけれども、例えば、今、CSRの話が出ましたが、今までは余力があるから女性を活用しましょうとか、余力があるからCSRに使いましょうというように、そういう意味では余裕がある時代だったらいいのですが、いろんな会社が潰れまして、女性のいろんなプロジェクトのためにお金を出してくださっていたところまで、スポンサーがいくつか消えていることは事実です。「今までやっていたから、今後もやりましょう」とはもう言えないと。そういう意味では、潮目がもう大きく変わってしまったのではないかという気がしています。
 ですから、そういう認識を持って、少ない予算の中でいかに効果的にやるかということを本気で考えないといけない。今までと同じようなことを漫然と「施策としてやっていきましょう」と言っても、今の政治情勢の中ではなかなか一般的な共感を呼びにくい。そういう心配をしています。
 そういう意味で、女性の雇用は調整弁として使われ始めていまして、研究者の方も、「とにかく食べるに困るのであれば、まず男性」ということが、ひょっとして出てくるのではないかと思います。そういうことも含めて、監視の必要性が大きい。今の情勢をきちんと認識して、今の刻々とした変化についてどう見ていくか。推進する前に、今の変な動きがもしあるとしたら、それに対してストップをかけるような、そういう考え方をきちんと持っておかないと、いつの間にかずるずる行ってしまったということになるのではないかという心配があると思います。
 ですから、数値目標で実現していくという前向きな話ではなく、これ以上悪化させないという数字、特に非正規社員が増えるとか、女性の労働力率が下がるとか、育児休業などとんでもないというような方向になっていくことについて、数字をしっかりと追っていただくということを、まずお話ししたいと思います。そういう意味では、ちょっと基本計画のポイントに入りにくいことばかり申し上げましたが、それは、今の社会情勢からあまりかけ離れたこと、理想論だけを言っても、なかなか認識していただけないだろうなという危機感から申し上げていることです。以上です。
袖井会長
どうもありがとうございました。今、住田委員がおっしゃった社会情勢の変化、これは絶対に入れないとまずいと思います。次の基本計画が決まるのはいつでしたか。
塚崎推進課長
22年度、2年後です。
板東局長
前回は17年の12月に決定しましたので、ちょうどその5年後とお考えいただきたいと思います。
袖井会長
2年後ですね。そうすると、やはりきちんと視点を定めて、どの辺に着地するかを見ておかないといけない。確かに今までとは本当に全然違ってくると思います。激動の時代といいますか。CSRについても、例えば今まで企業のやっていた文化的な事業などもどんどんなくなっていますし、その辺のところはやはり背景としてしっかり見据えていかないといけないと思います。
 では、山田委員、どうぞ。
山田委員
私も住田委員と同じように、やはりここ10年、15年ぐらいの経済情勢の変化を見据えた整理にしていただきたいということが、一つあります。特に雇用面と家族、第2次計画の整理では、3番の「雇用等の分野」と5番の「男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援」のところに関心を持っております。
 今まではワーク・ライフ・バランスにせよ雇用、男女の機会の均等にせよ、とにかく機会を均等にすれば、共働きにすればうまくいくというような、バブル期の状況を引きずっているコンセプトではないかと思っています。まず雇用の面におきましては、例えば橘木先生が「女女格差」と述べられたように、ここ20年で大きく進んだのは明らかな女女格差です。私はいわゆる非正規雇用やフリーの人の話を聞きますけれども、こういう政策ができたと言っても、あるフリーライターの女性は「雲の上の話だ」と。つまり、「雇用されていなくて自立しているけれども、何の支援もない」といったようなお話をよく聞きます。
 もう一つは、やはり「男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援」のところですが、やはりこれも、望めば全員が正社員として働くことが可能だという前提のもとでの対策の表現のように見えています。例えば、子育て期の女性は就業と育児等の二者選択を迫られているということですが、迫られている人は、多分恵まれた立場の人だと思います。最近は、内閣府の調査であったとおり、20代、若年女性において専業主婦志向が明らかに復活しております。これは一度言ったかと思いますが、去年は私のゼミ生の中でも、「専業主婦になりたい」という国立大学卒業予定の人が出てきました。そういうように、「非正規雇用なり働き方がつらければ専業主婦を選択したい。けれども、相手がいない」という状況が出てきている。こういう状況があることを踏まえて策定しなくてはいけないと思っております。
 更にいくつか調査を紹介させていただきますと、私が住田先生の懸念も確かだなと思いますのは、私が今年調査した全国調査で、「夫、配偶者にもっと働いてもらいたいか」、「もっと時間を短くしてもらいたいか」という調査をしましたら、大体の夫婦において「夫にもっと働いてもらいたい」という方が多かったのです。つまり、収入減少で生活が困るという状況のときに、今の時点だと男性になってしまうのは、やはりそうせざるを得ないという状況があるのだと思います。また、私は今、統計研究所の客員調査員、客員教授としてデータを動かしていますが、子育て中の家庭で、1994年から2004年にかけて男性の収入が50万円、60万円減っている。女性の収入は50万円から58万円ぐらいに増えています。男性の収入の減少をとても補えないぐらいしか女性の収入は増えていない。
 その状況の中で、働くか働かないかを選択する前に、まず働く場を確保しないまま選択と言われても、困る女性が多くなってくるのではないかと思っております。ですから、コンセプトとして全員が望めば正社員として働くのを前提とした状況から、正社員でさえも首が切られる状況への変化を見据えた男女共同参画の雇用の分野、家庭生活の分野、両立の分野のあり方を考えていけたらと思っております。
袖井会長
どうもありがとうございました。山田先生にちょっとお聞きしたいのですが、こういう厳しい状況にもかかわらず、女子大生、若い女性が専業主婦を望むというのはどういうことでしょうか。あり得ないと思いますが。
山田委員
ちょっとエピソードを述べさせていただきますと、「こういう状況で、もう収入が高い男性が少なくなっているという話をしただろう。聞いたか」と言いましたら、「私は先生の授業に出て、すべてAだった」とその女性は言いました。そして、「私は収入の高い男性を見付ける自信がある」とはっきり断言いたしました。そういう、いわばギャンブル的な専業主婦志向が増えているのだと、私は感じています。
袖井会長
「にもかかわらず」という感じですね。では、鹿嶋委員。
鹿嶋委員
いくつかありますけれども、まず、第2次基本計画の21ページにある「社会的性別」(ジェンダー)の視点です。第3次計画の重点項目は、勿論、今の計画のようにたくさんあると思います。特に住田委員がおっしゃったような経済変化は大変大事な視点だと思いますが、重点項目の中に、第1次、第2次、第3次の共通基盤として、男女共同参画社会の形成の根底にしっかり置いておかなければならない視点は、絶対に外せないと思うのです。この「社会的性別」(ジェンダー)の視点は、政治決着した部分であったと思います。第2次基本計画策定中に十分な議論はしていなかったと思いますが、書いてあることはそのとおりだと思っています。ここは基本的なことで、いわゆる社会的性別の視点で捉える対象には、性差別、性別による固定的役割分担、偏見等があるのだということ。この視点だけは、やはり第3次計画の中でもきちっと入れておく必要があるということです。
 もう一つ。日本語として、「「社会的性別」(ジェンダー)の視点」とあるので、これを「社会的性別の視点」と言われても、意味がいまひとつわからないのです。「ジェンダーの視点」ならまだわかりますが、その辺はなかなか難しい。最近の私どもの報告書では皆、「男女共同参画の視点」という言葉を使っていますので、「男女共同参画」(ジェンダー)とするならいいのですが、「社会的性別」はなかなか難しいのです。その辺りの書き分けは、今後検討していく必要があると思いますけれども、やはり、このような視点は絶対になくしてはいけない。これがあるからこそ男女共同参画があるので、ここだけは十分に私どもで認識しておく必要があるのではないかと思っています。この議論の中では大変難しい問題も出てくると思いますけれども、やはり、絶対に外してはならない視点だということを、まず第一に考えておきたいということです。
 それからもう一つ。山田委員がおっしゃったこともよくわかるのですが、リアリズムを書いていくのか、あるべき視点をここで述べていくのかというのは大事だと思います。最近、「正社員というのは幻想だ」、「正社員幻想にとらわれている」などという指摘もありますけれども、やはり雇用が安定し、ある程度長期ビジョンが立つような働き方は大事だと思うのです。そのためになすべきことはいろいろあるとは思いますが、あまり現状にとらわれた基本計画の書き方をしますと、行政展開する上での問題点が生じないのかどうかということ。ある程度理想的なあるべき姿を書いていって、我々自身はそういうことを十分踏まえて議論をしているのだということを理解していただく必要があります。その辺りはどういうふうに判断をすればよいのかと思って、今、お聞きしました。
 もう一つはCSRです。経済同友会が4、5年前に出した『CSR白書』を見ますと、女性重視の視点は入っています。女性の処遇向上はCSRの大事な課題ということで入っていますが、経済状況がこう逼迫しますとプライオリティーがかなり下位の方に行ってしまって、どこかで消える可能性はあると思いますので、その辺りは十分チェックして歯止めをかけるということは、計画の中でやるべき仕事の一つだろうと思っています。
袖井会長
ありがとうございます。他に。桜井委員、どうぞ。
桜井委員
2点あります。一つは推進体制です。この論点の2の「男女共同参画の推進体制等」のところですが、「地域における多様な主体間の連携・協働のあり方」となっています。これも勿論そうですけれども、その前に、今は何か一つのテーマ、イシューでも一つの省庁で済む話ではないわけですよね。いくつもの政策あるいは法制度が関わってきていることですので、厚生労働省だけ、文部科学省だけということはまずなくて、それらが一体になって一つの問題、例えば女性の貧困問題や母子家庭の問題に当たれるような新たなあり方のようなものが、それこそ「あるべき姿」ではありませんが、何か提案できないかと思います。
 それは地方公共団体においても全く同じです。やはり「縦割りはやめましょう」と言っていても、ずっとそれで来ている。ここのところは女性の暴力の問題で本当にはっきりしましたが、これは一つの政策、あるいは一つの部署だけで片付く問題ではない。それは、例えば行政と企業、NPOといったものが連携していくということだけでなく、行政自体の中での連携のあり方をもう少しやっていかないと、難しいのではないかと思いました。
 それから、ここの「広報のあり方」のところに、「世代の違いに応じて」とか「男性」と書いてあり、その下のところに「男女共同参画への誤解がある」とか「この用語を使うと事業が敬遠される」と書いてあります。しかし、それ以前に、男女共同参画ということが本当に必要な人に届いているのだろうかということがあります。例えば、母子家庭のお母さんなどは全然知らないし、一体何の恩恵を受けているのかもわからない。施策がその方たちに見えにくくなっているといいますか、具体の解決に続くような施策が打てているのだろうかということが、すごく問題といいますか、疑問に感じているところなのです。この「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」という報告書で書きました第2ステージということで、具体の課題解決に向けた施策が必要というところにこれが結び付いていくのだろうと思っています。広報のあり方だけではなくて、届けるべきところにちゃんと届くような施策の打ち方、あるいは見せ方といいましょうか、そこが見えてくるような計画だといいなと思っております。
袖井会長
ありがとうございました。
 では、加藤委員、どうぞ。
加藤委員
この基本問題専門調査会を含めて、参画会議にはいくつかの専門調査会がございますが、その専門調査会を含めた参画会議の役割といいましょうか、もう少しスピード感、それから発信力を持たせられるといいなと思います。長期的な視点に立っての提言も大事にしながら、一方でスピード感や発信力を更に高めていくようにしないといけないと考えておりました。
 今回は、3次計画のとりまとめに向けての初回という位置付けだろうと思いますけれども、事務局の方でタイムスケジュールをどうお考えになっていらっしゃるのか。できましたら、各省のヒアリングをスケジュールの中に、それもなるべく早い時期に入れていっていただきたいと思っております。
 具体的には、例えば厚生労働省に対しては、第2次計画の中に「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」とうことが盛り込まれておりますけれども、こういう経済情勢の中で、均等法に基づく行政指導を具体的にどのように行っているのか、増えているのか、指導をした結果がどうだったのか、それから各都道府県の雇用均等室長の助言・指導・勧告等々、及び調停等はどうなっているのかといった、進捗状況について話を聞く。企業の募集・採用における差別的な取扱いが行われているのか、いないのか。あるいは、女性の能力発揮の促進のための具体的な支援ということは数々出てまいりますけれども、具体的な支援が行われているのか、急速にしぼんでいるのか、あるいは家内労働者の労働条件や生活の変化は起きているのか、いないのか。あるいはハローワークの職業紹介がどうなっているのか。この辺りは男女共同参画センターや公民館等と連携・協働しながら進めるようになっているようですが、この連携・協働は進んでいるのか、いないのか等を含めて、やはりヒアリングをなるべく早い段階にした方がいいと、かねがね考えているところでございます。
 それを考えることのきっかけになったのは、この間、地方分権改革でも、雇用均等室を含めた都道府県の労働局、47都道府県にあるものをブロック化しようというような勧告がまとめられてましたけれども、では、これは現状に逆行することにならないのか。今、消費者行政の組立て方を見ていますと、各都道府県に置かれる消費者センターは、消費者行政の充実・強化の観点から市町村でももっと充実・強化をしていかなければいけないと言われている折でもあります。雇用均等室のようなところをブロック化するのではなく、むしろ市町村レベルでの充実・強化も図っていかなければいけない分野かもしれない。そういうことに対して専門調査会並びに参画会議は、経済財政諮問会議も含めて他の重要政策会議に対してスピード感を持って提言をできるような組立て方をしていかないといけないと考えております。ですから事務方には、今後のスケジュールについて少しお聞かせいただけるとありがたいと思います。
袖井会長
どうでしょうか。
塚崎推進課長
まだ具体的に決まっているわけではありませんが、来年の大きな流れとしましては、初めに計画の諮問がありまして、計画の大枠について御議論をいただいてから省庁のヒアリングを行います。今言われましたように、省庁のヒアリングは、早い時期にやりたいと思います。それからまとめていくということを考えております。
袖井会長
よろしいでしょうか。ただ、省庁のヒアリングと言いましてもいろいろでして、男女共同参画の視点が全くおざなりになっているような報告のところもありましたよね。ああいう報告をたくさん積み重ねていってもあまり意味がありませんので、どのように報告してもらうかということが重要だと思います。「こういうのをやってください」と言うと、その役所で持っている女性関連の政策を集めてきて、ただ並べるというだけのところもありますし、きちんとしたデータを持っていないところも結構あるわけです。その辺のところはどうアプローチしていったらいいか、ちょっと局長にお聞きしたいのですが。
板東局長
やり方自体についても、これからいろいろ御議論をいただくと思いますけれども、恐らく3月に男女共同参画会議が開かれ、そこに諮問をさせていただく形になるかと思います。ですから、先ほどおっしゃった「スピード感を持って」という意味ではちょっと遅いのかもしれませんが、重要政策会議、各省の政策などに対していろんな意味で提言をしていくことは、もう少しこまめに、計画づくり以外の場も含めて考えていかなければいけないのかなと思っております。
 それから、計画自体の進め方、検討の仕方でございますが。前回もそうだったようでございますけれども、全体会議、この専門調査会で議論をするというよりは、いくつかの分野に分けて、論点もかなり明確に出しながら、実質的な議論ができる形で検討を進めるということと、その全体をこの専門調査会で議論するということを組み合わせていく必要があるのではないかと思っております。例えば雇用の分野とか、あるいは先ほどお話がございましたポジティブアクションも含めて政策方針決定過程のへの女性の参画をどうしていくかとか、そういう個々の課題についてどういう議論の進め方をしたら効率的なのかということも含めて、いろいろ御意見をいただければありがたいと思っております。
袖井会長
それでは、他に。どうぞ、帯野委員。
帯野委員
先ほどからお話に出ている経済情勢のことですが、一般的に2年から3年は悪かろうというエコノミスト等の意見が多いのですが、問題は経済の実態が悪いことよりも、これからもっと悪くなるだろうという経営者のマインドの方がもっと大変だと思うのです。そういう点では、個人的には最低4、5年は覚悟しなければいけないのではないかと思っています。
 その中で大変気になりますのが地方の経済です。前のバブルが崩壊したときは、まだそれなりに地方にも財産は残っていました。しかし、今や財政は破綻し、そして何よりもこの失われた10年、12年の間に、企業の本社機能が全部東京に移ってしまった。もう、都市部の大阪ですら本社はほとんどないと言っていいと思います。ましてや各地方がどうなっていくか。各県とも知事は政策に企業誘致を挙げていますが、はっきり言って、必然性のないところに企業は来ないという点で、企業誘致といいますか、産業創出は地方にはますます難しかろうと思います。
 その点で、この12番の「新たな取組を必要とする分野」ですが、以前から申し上げていますけれども、地域おこし、まちづくり、観光、そして環境というのは、女性が得意とする分野、ある意味では女性を活かし切れないとなかなか成功しない分野であると認識しております。この経済の状況が悪化している中での訴え方として、男女共同参画、従来の枠組みの中で捉えたものだけではなくて、新産業の創出とか地域の雇用の創出という点で各省庁を巻き込んで、今、ヒアリングのお話が出ましたけれども、特に経済産業省は今までどれぐらいコミットしてきているのか。今、経済産業省は二階大臣ですね。二階大臣はもともと観光に大変強く、得意にしておられて、この間も新聞で、以前の雇用促進のときは観光人材の育成を中心に何兆円ほど創出したということも言われておりました。その点で経済産業省などをうまく巻き込んで、今までもやってきましたけれども、第2次計画の3番をより深く、産業創出という視点でより具体的に絞り込んでいただけたらと希望しております。
袖井会長
ありがとうございます。それでは、河野委員。
河野委員
3点、少し考えを申し述べたいと思いますが、もし、外れたことを申し上げてしまったら、御示唆ください。
 1点目はダブるので、もう詳しくは申し上げませんが、経済の上での雇用がどう変わっていくかというビジョンが必要だと思っていました。例えば、今まで出ていない例としてですが、正社員を目指すのではなく、そうではない形だとしても、というような。例えばですが、テレワークに一つ望みがあったかもしれませんが、個人情報の問題、いろいろなトラブルの問題があって、今は逆にこのモバイルが危なくなり、正社員が企業内でしか仕事ができずに拘束時間が増えているという実態があったりします。そのワーク・ライフ・バランス、テレワークが改めて検討されたりして、これはプラスもありますので、実情を踏まえた上で、単にIT、テレワークということではなくて、今後の雇用のビジョンが重要だと思いました。
 2つ目ですが、先ほども出ていましたけれども、研究者のところです。私は研究者の前に理工系出身の女性を一つの切り口にして、これは今の日本の大きな課題ですので、そこを是非膨らませていただきたいと考えていました。私が存じ上げているのは企業のことだけではありますけれども、『日経ウーマン』が20周年記念で日経リサーチを使って企業評価をしたものや、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の結果を見てきますと、専門性を持ったうえで人の上に立つ人たちが質として高まっていて、数としても少しですが、そこだけは確実に増えています。管理職全体でいうと、そういう状況にないと思いますけれども、ただ、トップが目立つというのは非常に重要なことだと思っています。例えばR&Dの研究者として活躍することのみではなく、そのようなMOTだと思います。専門性があった上でマネジメントがないと、やはり企業や社会への発信力がなくなりますので、非常に重要なことだと思います。専門性を持った方々が更にManagement of Technologyの分野で経営に携わり、活躍していくことを、上の何%かもしれませんが、是非推進していただきたいと考えました。
 3つ目が広報についてです。広報については、大きい課題というよりも私が個人的に考えていた点ですが。今年、板東局長に大きな御支援をいただきまして、日経の方で「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の後援をしていただいたのです。非常に評判がよくて、「官民一体」といいましょうか、「知らない、知らない」と言われていても相乗効果ができていて、民間が一生懸命やっているところに内閣府が付いてくると、非常に評価が高まってくるといいますか、相乗効果があるということを改めて感じ、心から感謝しています。できれば、あまり経費がかからないのだとすれば、そのような機会をたくさん設けていただきたい。大臣が忙しくなってしまうかもしれませんが、やはり官民で盛り上げていく、なるべく、あまり費用をかけずに名前が出ていくということを計画的に推進していくことが非常に重要ではないかと思います。そのときには質を見なければいけませんし、数も見なければいけません。1年、2年ではなく、中長期の、例えば講演回数のビジョン、計画というようなものも必要かと思いますけれども、その辺も有効ではないかと感じました。
 それから、底辺の部分ですが、これは最初にメルマガができたときから、私が個人的に企業の担当者に必ずお知らせしているのですが、本気でやろうとする場合には、ノルマとは言いませんが、関係している人たちがいいと思っているものを、それぞれの関係者に1か月に何件ぐらいは普及しようというきっちりとした目標を持って、アクションプランを持たなければいけない。精神論だけでは絶対に駄目ですので、アクションプランをきっちり盛り込んで部下を動かすということを、関与されている全員の方にやっていただくことが、広報の一つにもなっていくのではないかと思いました。以上です。
袖井会長
どうもありがとうございました。今まで主として重点項目についてお話しいただきましたが、推進体制や広報などについても、何か御意見がありましたらお聞かせください。はい、どうぞ。
伊藤委員
今の河野委員の話とも絡むのですが、これも言っておかなければいけないなと思っていました。書いてあることですけれども、大学をどうするかということは、男女共同参画の中でもう一度、今回は推進体制の中でも位置付けていただいた方がいいのではないかと思っています。
 それは今、理系の女子学生の話もされましたけれども、僕も先ほど申し上げたように、やはり4年制大学に、あるいは大学院に女性を増やしていくことを意識的に進めることがすごく大切だと思います。同時に、地方自治体と企業、もっと言えば労働組合まで含めて、大学の女性の人材を活用するようなネットワークづくりのようなものが必要です。京都では今つくり始めていますけれども、目に見える形で女性のポテンシャルを社会的に浮上させていけるような仕組みをつくる必要があると思います。
 それから広報についてです。これは桜井委員がおっしゃったように、実際にやりながら広報をしていくのはすごく大切だということはそのとおりだと思いますけれども、と同時に、やはり、広報そのものがまだ足りないというところもあると思うのです。一年か二年、重点的に広報に特化したような作業もあっていいと思います。例えば年次プランのようなものの中で、最初は周知に焦点を絞った形で何か進めることはできないかと思います。つまり、男女共同参画について日本に住んでいる人に周知し、それがどのような意味を持っているのか、日本の社会にとってどのような意味があるのかということを周知すると同時に、男女共同参画に関わるいろんな施策、例えば育児休業法であるとか、次世代育成支援対策推進法であるとか、DV防止法であるとか、具体的に「こうやれば、これが活用できるのだ」という制度の活用の方法まで含めた、意味と活用の方法を含めた広報をする。その中で、先ほど桜井委員がおっしゃったように、実際に知ると同時に活動ができるような広報の仕組みを考える。それは行政に関わる人もそうだと思うのです。ほとんどの方は十分な知識をお持ちでないわけで、企業の方もそうだと思います。そういう広報に特化した施策を一年乃至二年を設定するやり方もあり得るのではないかと思います。勿論、これは経済状況を見てのことですけれども。今は確かに厳しいですけれども、男女共同参画をやらなかったら10年、15年先はもうないわけですから。情勢を見ながらですけれども、長期的な展望を踏まえてその方向を目指すという形の方向付けを推進体制の中でやっていただきたいと思います。
 もう一つ、国際的な連携の話です。男女共同参画に対しては、確かに経済的状況の中で問題があるのはわかりますけれども、風向きがちょっと変わり始めているという印象を、この一年、二年持っています。それは、男女共同参画に反対されてきた方があまり大きな声ではおっしゃらなくなっているということです。地方議会などではいまだに声がありますけれども、ちょっとタイムラグがあるのではないかと思うのです。いわゆる論壇などでは、ちょっとおとなしくなり始めています。僕は、一つは、昨年のアメリカの慰安婦の決議の問題が大きかったと思うのです。あれで国際社会がジェンダーを共有の問題だと考えているということに、多くの男性たち、政治に携わられている人や文化に携わられている人がやっと気が付き始めた。御存じのように、オランダ、カナダ、オーストラリア、EU議会で同じような決議を上げられているわけですし、韓国、台湾は二度目の決議を上げました。そういう国際情勢の中でジェンダーを巡る大きな動きがあることを周知していただくことがすごく大切です。特に今の「ちょっと風向きが変わった」というのは、僕はダボス会議のジェンダーギャップの数字の影響も結構あったと思います。国連の数字に関してはあまり反応がなかったのですが、このジェンダーギャップ指数については、ランキングの位置がすごく低かったということもありますけれども、大変な衝撃を持って受けとめられている部分があると思います。
 そういう意味で、国際的な連携の中で国際的な大きな動きを国内に周知するということも、前に進めるためにはすごく重要ではないかと思います。それは国際会議も含めてです。先ほど、「担当大臣会議が始まった」とおっしゃいましたけれども、これもすごく大切なことだと思います。政治に携わる方に、アジア地域でどういう形で男女共同参画、ジェンダーについての動きがあるのかということを体験していただくことが、やはり政治に反映していくということもあります。そういう国際的な情報の流れ、連携というよりもそういう情報の流れを国内にうまく持ち込むような広報、あるいは周知の方策を考えていただくことが大切だと思います。
袖井会長
どうもありがとうございました。でも、これを全部やるとかなり大変ですね。例えば、「ある年」というと「男女共同参画推進年」とか、そういう感じですか。
伊藤委員
周知のための行動計画というようなもの。全体の基本計画とは違う特別の枠で、この年はこれを集中してやるというようなことです。
袖井会長
なるほどね。そうですね。確かに男女共同参画はかなり浸透していった面もあるけれども、一方では、アンケート調査結果にあるように、男女共同参画という言葉を出すと人が引いてしまうという面もありますので、やはりまだまだという面も少なくないですよね。
 その他にありますでしょうか。はい、どうぞ。
坂本委員
第3次計画の課題のところでですが、第2次計画の中の「女性のチャレンジ支援」というところは、私たちの周辺にいる人たちがとても期待をしていて、実際に活用もし始めているところです。ここに関してはさまざまなチャレンジ、先ほど山田委員から御指摘があったような女性のチャレンジもあれば、もう少し高等教育を受けられた方たちのチャレンジもあり、幅広いと思いますので、そこをきめ細かく充実させていくことを、是非、第3次計画で発展させていただきたいと思います。今進んでいる計画では、今までの議論の中でも御指摘があったように、正社員モデル、それから組織に入ることを前提としたところからスタートしているのですが、地域を見るとさまざまなチャレンジがあるんですね。そこにきめ細かく対応していくということを、この経済情勢を考えると、本当にスピードアップしてやっていただきたいと思います。
 実際に、今うちにインターンシップで来ているお母さんは、埼玉県でも男女共同参画センターに通って、チャレンジ支援の中でいろいろやっていますが、きめ細かさがないのでとても自分にフィットしないと、逆にフラストレーションを抱えるようなことがあります。やはり期待している分、裏切られたように感じる部分も大きいようですので、今後は早目にいろんな支援・施策をきめ細かく充実させていただきたいと思います。ここで感じるのは、男女共同参画センターやハローワーク等だけではなかなか手詰まりで、地域の商工団体なども巻き込みながら、それからコミュニティビジネスやNPOという裾野を広く社会的な活動と捉えて展開していくことが、やはり第3次計画には必要なのではないかと感じています。
 それから、こういう不況になってくると、やはり小規模なビジネスに注力していただきたいなと思います。これは第3次計画ではとても重要だと思います。そうなると、女性が出ていく機会が自ずと増えてきますので、そういう意味では裾野を広げていくという役割も非常に効果的に果たせるのではないかと感じています。
 それとNPOのところで、今、中間支援組織が、各地にかなり育ってきています。そういったNPOの中間支援団体は、まだ男女共同参画という視点を持ち得ていませんので、そこに積極的に働きかけて連携のパートナーとして育成していくということも、第3次計画に盛り込んでいただきたいと思います。
 それから、第2次計画で5番に挙げていただいている「男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援」です。ここは言葉では進んできて、意識としても出てきていますが、では、男性がその役割を地域や家庭でどう果たしていくかという具体的なノウハウ、アクションにつながるようなもう一段の後押しが、次に用意されるべきかと思います。「育児もしてあげたい、家のこともしてあげたいと思うけれども、では、どうやってやればいいのかわからない」という状況の中で、気持ちだけが空回りしている男性たちがとても増えてきていますので、そういう人たちを具体的に掬い上げる。女性の両立支援策はかなり具体的に進められてきたと思いますけれども、男性の両立支援策を後押しするようなことを、制度の整備と運用だけではなくて、実施につながるような後押しを第3次計画では盛り込んでいただきたいと思います。
 それと、男性の相談先が地域の中にないのです。うちでもDVの問題などを抱えている家庭があって、子育て支援の現場や男女共同参画の相談員はどうしても女性ばかりなので、男性が行きづらいうえ、なかなか打ち解けて相談ができない。最初からレッテルを張られたような印象を受けて相談がスタートするというような逆の問題も起こっていますので、相談員における男性の育成ということも、是非、次は進めていただきたいなと思います。以上です。
袖井会長
いろいろ貴重な御意見をありがとうございます。確かに、最初におっしゃった中間支援団体は、この「地域における多様な主体間の連携・協働のあり方」などに、是非入れる必要があると思います。
 それから就労の問題ですけれども、「雇用の分野」はありますけれども、小規模ビジネスや起業のようなことがあまり入っていませんので、この辺りも第3次計画では入れる必要があると思います。
 それから男性の問題ですね。男女共同参画と言っていますが、全体的に女性の問題が重要視されてきました。これまでマイノリティーとしていろいろ差別されてきた面、搾取されてきた面もありますけれども、今の状況は、男性にもいろんなしわ寄せがかなり行っている面がございます。
 それから、御指摘のあった男性の相談先がないということですが、昨年の監視・影響調査専門調査会で「高齢の男女の自立」というテーマで調査をしたときに、やはり男性の孤立の問題が非常にクローズアップされていました。ですから、男女共同参画ということであれば、今、御指摘になったような男性の相談先とか、例えば母子家庭だけではなく父子家庭の問題とか、そういう問題もやはり第3次計画では視野に入れていく方がいいのではないか、あるいは入れていくべきではないかと感じております。
 特に就労が厳しい状況になってくると、派遣切りなど、男女ともにいろいろ厳しい状況に置かれておりますので、もう少し広い視野で捉えることも必要かと思います。
 はい、どうぞ。
伊藤委員
坂本委員のお話は、全くそのとおりだと思います。男性の相談は、電話相談などではいくつかの自治体は既にやっておられるわけですが、それをもうちょっと積極的に進めていかなければいけない。男女共同参画に対する批判の中にも、「男性の差別につながっている」というような声がございますので、男性を対象にした政策は、今後、実質的につくっていく必要があるだろうと思います。
 現行の政府の施策の中でも関係するものがありますけれども、それが男性のジェンダー問題として見えていない部分もいくつかあると思うのです。例えば、自殺予防に関しては法律ができましたけれども、見ているとやはりジェンダー視点が欠落している。つまり、男性が圧倒的に多いにもかかわらず、ジェンダーの視点できちんとした形で提案がされていない。それから、鬱の問題も明らかに男性が多いわけで、この経済状況の悪化の中で、多分、更に男性の自殺等が増える可能性があると思います。生活習慣病等でも男性が罹りやすい病気がございますので、そういう男性を対象にした性差医療の問題なども出てくる。今、申し上げたように精神的な、メンタルな問題も考えなければいけないと思います。今回はやはり、「男性にとっても男女共同参画がプラスになるのだ」というメッセージをもう少し打ち出せるような第3次基本計画をつくっていただくと、ありがたいなと思います。
袖井会長
では、桜井委員。
桜井委員
そのことに関してですが、大変難しいと思います。といいますのは、ジェンダー視点で捉えるということをかなり意識してやらないと、例えば男性の就業問題をやった途端に、これは内閣府の男女共同参画局でやるべき問題なのかどうかということになるわけです。ですから、男女共同参画だからといって、あらゆるイシューで男性も女性も俎上に載せるということではないのではないかと思います。
伊藤委員
そういうことを期待しているわけではありません。
桜井委員
そうですよね。でも、一般的にはそういうふうに受け取られてしまうのです。男性の就業問題もやらなければという話になってしまって、そのときには、ジェンダー視点をどう入れていくかということをきっちりしておかないと、他の厚生労働省などがやるのと同じになってしまいます。
 健康問題も確かにそのとおりだと思います。一般的な保健衛生のところで鬱を捉えるということではないはずですので、男性を扱うときには、そこのところをかなり意識的にやっていかないと、「一体、何なんだ」という話になってしまいます。特に地方自治体にこの問題がおりていったときに、そういうところで話が進んでしまって、「もう男女共同参画施策は要らないのではないか」ということに直結しがちだなと思います。
伊藤委員
今のことに関連して、いいですか。
袖井会長
はい、どうぞ。
伊藤委員
まさにそのとおりで、この間も申し上げたかもしれませんが、実はある自治体の審議会で、「女性に対する暴力というのはおかしいのではないか」という声が委員から出ました。これは内閣府の調査でもそうですが、被害者のうち男性の割合が2割ぐらいあるんです。女性3割に対して2割あるところがいくつかね。ただ、その2割の中身が問題で、例えば「妻に厳しく言われた」とか、身体的な暴力の段階ではないものが多いのです。ただ、男性たちがDV問題で、ある種の被害者意識を持って動き始めている。それに対応して「両性の暴力」というようなことをおっしゃる方がおられます。それはやはりおかしいわけで、明らかに圧倒的多数の被害者は女性なわけですから、政策はやはり女性に対する暴力という形できちんと打ち出すべきでしょう。
 DV防止法は両性に関わっているわけで、法律は両性に中立でなければいけませんが、政策は現状の問題を抱えている部分に重点的に光を当てるべきだという議論で、「女性に対する暴力」という言葉を残していただきました。そういう議論にならないように、おっしゃるように、ジェンダー視点をきちんと持ちながら、男性への対応をしていくということはそのとおりだと思います。
袖井会長
では、鹿嶋委員。
鹿嶋委員
簡単に申し上げますと、基本法施行後の10年間というのは、男女共同参画の理念の周知ということがあったのです。次はどうするかというと、やはり、この論点に書いてあるように、セカンドステージに入ってきたということです。セカンドステージは何かというと、理念の周知と同時に、もう一つは、「私たちの生活の中でこの男女共同参画という考え方が実際に役に立つのだ」という考え方ですね。「男女共同参画という看板を掲げると、皆、引いてしまう」といいますけれども、しかし、この経済危機の中でどういうふうに生活をしていくかという知恵は、男女共同参画という考え方の中にかなりちりばめられている感じがあります。ですから、そのことを今度の計画の中でもう少し周知していく必要がある。
 それと同時に、後退しかねない懸念もたくさんあります。先ほどから指摘されていますように、例えばワーク・ライフ・バランスなどはどこへ行くかわからないとか、この100年に一度の危機の中でどうなるかわからない要素がたくさんあります。
 そういうことを基本的な考え方の中できちっと踏まえて、そこの中できちっと書きつつ、そのセカンドステージがどうあるべきかをこの計画の中に盛り込む。そういう姿勢が第2次基本計画と第3次基本計画の差別化の出発点になるのではないかと思います。
袖井会長
住田さん、どうぞ。
住田委員
そういう意味では着実な進展があったことは事実ですので、このパンフレットでは数値目標がかなり書いてありますが、この数値目標の進展具合を見て、そしてそれを一旦振り返って、例えば「女性のポジティブアクションをこれだけ増やしたことによって、企業においてはどのような意識や活性化につながった」とか、そういうことのヒアリングをする。お役所も大事かもしれませんが、私は現場の声を聞いていただくことの方がもっと意味があると思っています。
 特に、「保育待機児童ゼロ作戦」がこの男女共同参画会議の少子化と男女共同参画に関する専門調査会で最初に出された数値目標で、これが最初に設定されて、更にそれについて、認定子ども園などいろんなものが制度として拡充してきたわけです。そういうような進み具合、そして、それについての満足度調査といいますか、「こんないいことがあった」というようなプラスのイメージが上げられるものをたくさん出していただければいいなと思っています。
 そういう意味で「男女共同参画が進むと、10年間でもこんないいことがございました」というようなことを出して、この経済危機の中でもこういう視点を持っていけば、更にこれに対する危機感を打破できる可能性があるというようなことを打ち出していただきたい。また、ゴール・アンド・タイムテーブル方式を更に進めるということですが、私は数値の目標よりも、「それを着実に進展して、これだけの成果が上がった」という方向で出していただいた方がいいかなと思っております。
袖井会長
どうもありがとうございました。他に。では、辻村委員。
辻村委員
これまで出ていなかった論点で、実施は難しいのかもしれませんけれども、この2番の「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し」のところで、法改革、あるいは国際条約の履行の問題をどのようにするのかということを、真剣に考えなければいけないのではないかと思います。
 具体的には、例えば19ページでは民法改正の問題があって、「引き続き努める」と書いてあります。けれども、担当府省は法務省にある程度任せる。そうすると、法務省が今から家族法改正を実現していくと思いますけれども、本当にジェンダー視点といいますか、男女共同参画視点を持って法改正ができる状況にあるのかどうかということがあります。
 それは女性差別撤廃条約選択議定書の問題は別としても、CEDAWの方から指摘されていることでもあり、また、先ほど申し上げた人権規約委員会の方からも国際的なプレッシャーがかかっている中で、民法改正のことがたくさん出てくるわけです。あるいは、今回、刑法177条の強姦罪の見直しについても明示されているわけです。そういう問題は法務省が担当府省だから法務省にお願いしますというだけでは、やはりこれまで動いてこなかったと思います。ですから、先ほど、省庁ヒアリングのこともありましたけれども、是非、男女共同参画視点からのプレッシャーといいましょうか、あるいはナショナル・マシナリーとして、縦割り、省庁担当というのではなく全体として取り組む姿勢、機構をどう確保するかをお考えいただければ幸いです。
 さきほどの人身取引の問題でも、これは例えば「外務省だ」、あるいは「ODAの関係だ」というようになって、皆、第11項の「地球社会への貢献」という形でまとめられていますが、そうではないのではないかと思います。
 国際条約については、政府自体が国際的な履行義務を負っているわけですから、どこかの省庁が考えれば済む話ではありませんので、もう少しトータルな視点から見直すことができないか。だから、第2項や第11項に入れてしまえば、各論になってしまうという危惧を持っています。
住田委員
夫婦別姓のことだけは、誤解があっては困るのでちょっと申し上げたいと思います。ここの別の調査会でやりましたとき、当時の森山法務大臣も本気でやろうということで取り組まれていました。法務省でも、あの案件と非嫡出子の差別の関係等は法制審議会でとっくに改正案を出しているのですが、通らないのです。要するに政治情勢なのです。ですから、法務省の問題というよりも、国会で店ざらしにされたという経過が繰り返されてきたということなのです。これはお役所に対して言うというより、やはり国会ないしは国民意識の反映だということです。そういう方々を後押しする一定の強い勢力があるわけでして、今、そういう意味でのバッシングがたまたまないだけで、底流としては常にあるわけです。
 今回のパブリックコメントの結果でも、もう例によって例のごとくのことがちゃんと出ています。ですから、鹿嶋委員がジェンダーについて「きちっともう一遍押さえるように」とおっしゃることは、なお必要でしょう。これは何回も言わなくてはしょうがない。正直なところ、そういう方々に対しては繰り返しても届くかどうかわからないのですが、言うしかない話だろうと思っています。
 ですから、夫婦別姓の話は法律問題というよりも、意識問題です。男女共同参画を阻むものは何かというと、結局、少子化の問題、子どもの非行の問題、晩婚化、離婚の増加の問題、家庭の崩壊につながるという問題、全部、結局は表で言うか言わないかだけの話だろうと思うのです。そういうことに対して理論的にきちんと反論できるように、この基本計画の中のどこになるかわかりませんけれども、やっておかないと、やはり固定的性別役割分担意識を強固に支持する方々の層のその岩盤がなかなか崩せないだろうという気はいたします。
伊藤委員
いいですか。
袖井会長
はい。
伊藤委員
今の意見に関連してですが、一番大きな問題は、「男女共同参画が家庭を崩壊させる」という議論がベースになっていると思うのです。やはりそれは違うわけで、日本の場合は家制度の問題があるので、家族を擁護すると抵抗がすごく強いのですが、多様な家族、同性カップルの家族であったり独り暮らし世帯であったり、国連の国際家族年のスローガンのような形で多様な家族を認めながら、その上での家族政策としての男女共同参画政策を示す。それが反論になるのではないかと僕は思っています。
 勿論、個々の誤解に対して反論していくのも大切ですけれども、むしろ、積極的に家族や地域の問題を男女共同参画の視点でどう捉えるのかということを提案していく。2004年の男女共同参画社会の将来像の検討会、山田委員も御一緒だったと思いますけれども、そのときにまとめたものは割と家庭や地域に目を向けた形のまとめをしていて、これに関しては説得力があるという形で多くの方に受け入れられたという印象があります。
 地域や家族を男女共同参画の視点でどう再編するのか。そのときに、何度も申し上げますけれども、多様な家族の相互承認のような視点を入れながらですけれども、家族政策としての男女共同参画をどこかできちんと提案していくことが、すごく重要なのではないかと個人的には思っております。
袖井会長
どうもありがとうございます。何人かの方の御指摘がありましたけれども、確かに「男女共同参画になると、こんなにいいことがあるんだよ」というポジティブイメージを出していかないと、なかなか難しいかなと思いますね。企業にとっても、家庭にとっても、地域にとっても、こんなメリットがあるということですね。なかなか広がらないという面では、そういうプラスのイメージを広げていくことが必要ではないかと思います。
 それから、ちょっと局長にお聞きしたいのですが、この第2次計画の項目はもっと増やしても、変えても構わないのでしょうか。
板東局長
これはあくまでも現在の計画の項目でございます。先ほどから御指摘がありますように、今までは取り組んでいなかったけれども新たに取り組みましょうということで、前に位置付けていなかった分野を新たな柱として真正面に出していくことも一つあるかと思います。それから、先ほどのお話のように、例えば項目についても、国際関係のところは少しわかりにくいということもあろうかと思います。いろんな意味で、今回、一から新たに考えていくべき事柄だとお考えいただければと思います。結果としてそんなに大きな違いにならないかもしれませんけれども、少なくともこの項目に縛られる必要はないと思っております。
袖井会長
そういうことでございます。皆様方が先ほどから、「これは2に入るのか、11に入るのか」といろんなことをおっしゃっていますけれども、無理やり押し込めることではなくて、ここ数年、社会情勢も経済情勢も非常に大きく変わってまいりましたので、もう少し別の視線で項目を立てることも可能かと思います。
 それから、最後の12の「新たな取組み」も、科学技術分野を独立させることも可能ですし、地域おこし、まちづくりも別項目として立てることも可能ではないかと思います。ですから、今ある項目にあまりにとらわれないで考えていただければいいと思います。
 他に何か、是非とも御発言されたいという方。では、田中委員と平野委員、何か御発言はありますでしょうか。
平野委員
私が申し上げたかったことを皆さんがおっしゃっていただいたので、特に付け加えることもないのですが、私はこの第3次の計画が、男女共同参画というテーマについての極めて重要な位置を占めると思っております。第1次は、言い方が適当なのかどうかはわかりませんが、とにかく希望に溢れてつくった。第2次はその流れでつくったということです。第2ステージという展開もありましたけれども、先ほどいろいろなお話がございましたとおりに、今は経済的、社会的、政治的に大きな転換期が来ている。そういうところに第3次の計画が策定されるということでございますので、先ほどの会長のお言葉ではございませんけれども、この1から12の項目にとらわれることなく、いわば新しい気持ちでつくることが極めて大事ではないかと思っております。
 その際に絶対に必要なことの一つは、やはり現状分析だろうと思います。それは経済・雇用対策に限らず、これまで男女共同参画の様々なことが行われてきたいきさつ、成果、それからいろいろな問題点、こういったものを全部捉えて、その上で新たに考えることが極めて大事なことだと思っております。その場合に、鹿嶋先生、その他の先生がおっしゃったように、ジェンダーの視点を必ず、忘れないでやっていくことが必要だと私は思っております。
 そういう意味で言いますと、広報には極めて重要な問題があると考えております。「男女共同参画」という言葉自体も非常に難しいと私は思っているわけでございますけれども、それに対する誤解も含めて、もう一度、推進年をつくらないまでも、計画的な広報を進めていくということですね。つまり、今までは場当たり的だったとは決して言いませんけれども、いろんなことをやっていれば新聞社が書いてくれるのではないか、マスコミが報道してくれるのではないかというのではなく、報道してもらうという立場で計画をつくっていただきたいということです。
 各省のヒアリングをするときにお願いしたいのは、「来年度は何をしますか」ということではなく、事前に「こういうことを聞きたい」という設問をきちっとつくって、それに対して回答をいただくということです。「今はどうなっていますか」「これまでの成果はどうですか」という抽象的なことではなくて、それぞれの省庁にこういうことを聞きたいということを、各先生の御意見も踏まえてつくった上でヒアリングをすることが極めて大事だと思っております。
 いずれにいたしましても、この第3次計画でこれまでの成果が問われると思っています。時あたかも100年に一度の大事態ということでもございますので、ある意味では絶好のチャンスだということで、是非、そのようにこの第3次計画をつくっていただきたいと願っております。
 以上です。
袖井会長
どうもありがとうございました。大変力強いお言葉で、「絶好のチャンスにしたいな」と思います。
 では田中委員、どうぞ。
田中委員
今おっしゃったように、この危機は好機の裏返しですから、私は、この危機だから私たちは何もできないとは全く思っていなくて、危機だからこそ、今明らかになってきたことがすごくあると思うのです。
 1990年代、バブル崩壊後、「失われた10年」とか、不況に非常に苦しんだりしましたけれども、私はセーフティネットをつくることなく規制緩和に走ったことが、もろに女性に被ってきていると思うのです。このセーフティネットをつくるときにジェンダーの視点が必要。例えば、最低賃金の話はなされているけれども、5円、10円上がって生活できるかと言えば、生活できない。そこのところの視点があらゆるところに関係しているのではないかとずっと思っています。今度、基本計画のビジョンをつくるときには、「日本の社会の仕組みを変えるのだ」ぐらいの、皆が「ええっ」と思うような、「そうか」と思わせるようなものがビジョンとして背景にあってほしいなと思うのです。そのときに、今、目の前にあることにどう対応していくかではなくて、10年、20年先の将来を見据えて変えていく。まさに、今、その好機なのではないかと思います。
 具体的には、論点のうち、男女共同参画の推進体制のところですが、私が問題提起の一つの突破口になるのではないかと思っているのが、全国に展開する女性センターです。女性センターは、「官製ワーキングプア」というように、女性のやる気が搾取される典型的な仕組みになっています。数年で首を切られていくという不安定な雇用になっていることを見ていると、そこから何か同一価値労働、同一賃金という議論も展開することができる。女性の賃金のあり方自体についても、どういうふうにして賃金のあり方を決めていくのか。それを企業でやるととても難しいのですが、女性センターのようなところであれば、もっとパブリックな形で最低賃金の議論などでも、生活ができる賃金と、生活ができるような賃金の仕組みの議論もできるのではないかと思っています。
袖井会長
どうもありがとうございました。桜井委員、何か発言がありますか。
桜井委員
はい。「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」の報告をまとめる中で、女性センターの賃金について緊急に調査をしていただきまして、ありがとうございました。ああいった調査結果が、今、田中委員がおっしゃったことに生きていくのではないかと思います。まさに、本当におっしゃるとおりといいますか。しかし、それは女性センターの問題ではなくて、自治体の男女共同参画政策をどうしていくかという設計の問題です。そのことははっきりさせておきたいと思っています。
袖井会長
では、どうぞ。帯野委員。
帯野委員
先ほど、この項目は組み替えていいというお話でしたので、地域おこし、まちおこし、観光、この辺りを別項目で捉えることを是非検討していただきたいと思います。
 私たちも随分ヒアリングをしてきましたし、私も地方でいろんな女性の声を聞いていますが、女性は活躍しているけれども、地域おこしにしてもお勉強の範囲で、悪く言えば趣味、奉仕に止まっている。それを本当の地域づくりに活かしていけるように、あるいは経済活動に活かして地方の活性化に活かしていくように、仕組みをつくるところをもう少し深く掘り下げていくことによって、新しい国づくりの一つの柱にもなると思います。是非、御検討いただけたらと思います。
袖井会長
どうもありがとうございます。他に何か、御発言なさりたい方。
 よろしいですか。それでは、そろそろ予定の時間になりましたので、第3次基本計画の策定に向けた意見交換はこの辺りで終わらせていただきます。
 次に資料6をご覧ください。第39回~41回の調査会の議事録(案)を事務局でまとめていただきました。このとおりに決定して、内閣府のホームページ等で公開させていただいてもよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

袖井会長
皆さんの同意が得られましたので、速やかに公開することにいたします。
 それでは、今期で私の会長が終わりということでございますので、今期の基本問題専門調査会の最後に当たって、ちょっと御挨拶をさせていただきたいと思います。
 本当に不慣れで、皆様にも御迷惑をおかけしたかと思いますが、私にとっていろんな意味で非常に貴重な経験でしたし、いろんな意味でいい結果が出たかと思います。
 今期の一番大きな仕事は、「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」という報告書をまとめたことかと思います。それをまとめる過程において皆様方といろいろ議論をしていて、一つはバッシングとか反対運動があるにもかかわらず、男女共同参画が地域に根付いてきたという印象がございます。各地でその地域の実情や風土、伝統などに合わせた形で、中央で出している男女共同参画基本計画に合致しないものもあったかもしれませんけれども、やはりその地域なりの形での男女共同参画が進んできているという印象を受けました。
 それにもかかわらず、まだまだ不十分な面がございます。今日、皆さんのうち何人かの方が御指摘になったように、「2020年までに指導的地位に占める女性の割合が30%」という目標ですが、これはなかなか実現していない。審議会は30%を超えて、全体の3分の1になっておりますけれども、その他の分野では、特に国家公務員の管理職が非常に低いなど、そういう問題がかなりございまして、いろんな面でまだまだという感じがございます。
 それから、先ほど平野委員に力強いお言葉をいただきましたが、まさにピンチはチャンスです。こういう酷い経済情勢、それから少子高齢化の進行などの中で、男女共同参画という非常に重要なイシューが飲み込まれていく恐れがあります。ですから、やはり、第3次基本計画ではそれをはね返すような、本当に真っさらな気持ちで踏み出すことが必要ではないかという感じがいたします。
 本当に長い間、皆様に御協力をいただきまして、ありがとうございました。それでは、最後に板東局長からの御挨拶があります。
板東局長
本日を含めて2年間にわたりまして、先生方には、本当にお忙しいところ御指導をいただきまして、ありがとうございます。計画づくりについての考え方も含めて、ちょっと長目にお話をさせていただければと思います。
 先ほどからいろんなお話をいただきまして、私自身もいろいろと、新しい面もお教えいただいたり、あるいは再確認をさせていただきながら聞かせていただきました。平野委員からもお話がありましたように、あるいは他の先生からも御指摘がございましたけれども、今、大きな社会・経済の変化があるということは、今までの日本のシステムがうまくいかなくなっていて、それを変えていくことが本当に切実に必要になっているのではないかと思います。
 それを変えていく大きな柱の一つが、まさにここで議論をしております男女共同参画の考え方に立ったシステムを考えていかないと、うまくいかなくなっているのではないかということです。先ほど「ピンチはチャンス」というお話がございましたけれども、まさにそれを本当に考えないと我が国は次の段階に進めない、あるいは今の苦難を乗り越えられないという状況になっているのではないかと、私自身、そう強く思っているところでございます。女性も含めて多様な人材が活躍できるような社会のあり方をつくっていかないと、我が国の企業、組織なり社会なりが活力を失う、持続性を失うのではないかということが、思っているところの一つでございます。
 それから、今、社会の中で必ずしも十分に対応できていない分野については、先ほどから地域おこしやまちづくりなど、あるいはNPOや社会的起業などについてのお話がありましたように、女性たちが中心になりながら、その新しいニーズにいろんな形で対応していく新しい芽が随分出てきていると思います。ただ、社会的には、大企業などに比べますとまだまだ根が弱いといいますか、光も十分に当たっていない分野だと思います。そういったところに、その新たなニーズに対応しながら芽生えてきている部分を伸ばしていく、光を当てていくということが非常に必要なのではないか。これが我が国の社会にとって次のステップとして非常に求められるのではないかと思っております。
 先ほどから、そういった視点を、これから計画の中にきちんと位置付けていくようにというお話がございまして、大変、力強い御指摘をいただいたなと思っているところでございます。
 第2次基本計画は、事務的な形のまとめになってしまっている部分もあると思います。先ほどの御指摘のように、この計画自体をもう少しいろんな方々に発信することを考えながらつくっていかなければいけないと、改めて感じさせていただいたところでございます。
 それから、広報を考えたときには、その裏返しとしていろいろな人、必要だと思う方々の意見をお聞きすることが、逆に非常に重要な手段ではないかと思っております。例えば先ほどのお話のように、本当に支援の必要な方々や、本当に重い課題を抱えていらっしゃる方々になかなか男女共同参画が届いていないとすれば、そういう方々に個々にお話をお聞きするのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、少なくともその支援に関わっている方々や、それに関連して発信をされているような方々の御意見をきめ細かく聞くことによって、そしてそういうものを積み上げながら計画をつくっていくことにより、この計画づくりという過程自体が、一つの広報の過程として非常に重要な意味を持ってくるのではないかと思っております。先ほどから御指摘がございましたように、この計画づくりのプロセスも非常に重要ではないかと思います。計画の中身をどうつくっていくのか、そのためにプロセスをどう組み立てるのかということが非常に重要だと思いますし、これをつくるということ自体を広報の非常にいい機会と捉えて、少し思い切った形でいろんな工夫をしていく必要があるのではないかと、改めて感じさせていただいたところでございます。
 そのプロセスにしろ、中身にしろ、まだ我々としても十分な検討が済んでいない段階でございますけれども、この計画について本格的に議論を始めるときには、そういった工夫を最大限にしながらやっていきたいと思っております。今日、大変よい御指摘をたくさんいただきましたので、それを是非活かしながら、様々な分野で非常に大きな変化というものを十分に、それから中長期的に見据えながら骨太な計画づくりを考えていきたい、そういうプロセスにしたいと改めて意を強くしたところでございます。
 今期は今回で最後になりますが、地域における男女共同参画推進のセカンドステージということで、課題の解決、実践を通じて具体的に男女共同参画社会を実現していこうという新しい方向を出していただいたところでございます。そういった精神を男女共同参画全体の推進の中に活かしながら、次の段階として非常に重要な計画づくりの話に取り組んでいきたいと思っております。
 本当にどうもありがとうございました。
袖井会長
それでは、これで基本問題専門調査会の第42回会合を閉会いたします。皆様どうもありがとうございました。

(以上)