男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年5月17日(金) 13:30~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 経済分野における女性のチャレンジ支援について 
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
日本IBM株式会社資料 [PDF形式:144KB] 別ウインドウで開きます
資料2
特定非営利活動法人「たすけあい ゆい」資料
資料3
特色ある取組を行う企業の事例
資料4
第8回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
それでは、時間がまいりましたので、お手元の議事次第に従いまして本 日の審議を進めてまいりたいと思います。今回は、男女共同参画会議基本問題専門 調査会の第11回の会合になります。
 本専門調査会では、前回から女性のチャレンジ支援の在り方について個別の分野 の検討を行ってきております。本日は、企業等における女性のチャレンジ支援の取組 などについて日本IBM株式会社と、特定非営利法人「たすけあい ゆい」からお話を伺 い、その後で事務局から特色ある取組を行っている企業の事例を紹介していただきま して、それを基に検討を行う予定になっております。
 それでは、まず日本IBM株式会社から渡辺善子アジア・パシフィック公共サービス 担当理事からIBMの取組についてお話をいただきたいと思います。
渡辺理事
それでは、お話をさせていただきたいと思います。
 早速ですが、私どもの会社の概要を少しお話をさせていただきます。グローバルにIB Mコーポレーションというのがございまして、売上げとしては859億ドルということで11 兆円ぐらいの会社なんですけれども、税引き後利益というのが77億ドルで、今の円換 算に直すと1兆ぐらいの規模の会社でございます。
 研究開発費を年50億ドル出しています。この50億ドルというのを頭に入れておいてい ただきたいと思いますが、IBMで2年前、みんなが本来持っている力をもっと出せるよ うないろいろな施策を考えていこうということで、そのファンドが発表されました。その金 額がちょうど50億ドルということで、1年間の研究開発費に相当するぐらいの金額を今 そこに投資しようとしています。1年間の税引き後利益でいいますと、3分の2をそれに 投資するというぐらいの規模で今行っていこうと考えています。
 その下に日本IBMという会社があるわけです。各国に何とかIBMというのがあるわ けですけれども、日本のIBMの状況ですが、大体全世界の15%ぐらいのビジネスを日 本で今やらせていただいておりまして、利益もグローバル全体で言うとパーセンテージ としては1%ぐらい良いという状況でございます。
 それで従業員の数なんですけれども、2万1,000人ということで、そのうち女性が 3,200人です。1998年から特に女性にもっとチャレンジしてもらおうという施策をいろい ろしていまして、ようやくここまでたどり着いた。15%ぐらいの数字なんですけれども、 今そういう状況にあります。
 それで、私たちが女性にもっと頑張っていただこうという活動を始めたのが1998年1 月なんですけれども、そのときが13%ぐらいだったんですね。それで15%と、2%しか 上がっていないじゃないかという言い方と、この2万人に対して1%上げていくというの は200人ということですから、2%というのはこの短い間で400人増やしたということでそ ういう評価もあるわけです。三千何百人という女性の社員の中で、ほとんどがプロ フェッショナルと呼ばれる社員ですね。90%を超える女性社員がプロフェッショナル職 位と呼ばれる職位の社員であるというのが一つの特徴かと存じます。
 日本流に言うと総合職という言い方が一番近いのではないかと思っておりますけれ ども、では各国でそういう女性プロフェッショナルの社員が全体から見て女性の社員比 率というのはどれぐらいあるかというお話なんですけれども、大体アメリカ、ヨーロッパ が30%ぐらいの数字なんです。それで、アジア・パシフィックの中を見ますと、IBMは 今アジア・パシフィックを5つの地域に分けて管轄しているわけですけれども、オースト ラリア、ニュージーランドを中心としたところで、そこがいつも30%前後という数字です。 それで中国、台湾、香港というのが一つの大中国グループというのを形成しているん ですが、大体いつもここが一番女性化率という意味では進んでおりまして、30%をいつ も超えていて34、35%くらいの数字を呈しています。
 それで、お隣りの韓国がやはり日本とカルチャーが非常に近いということもあって、ア ジア・パシフィックの中でも日本と韓国がいつもビリ争いをしているというのが現状でご ざいます。日本の中ではIBMという会社は女性の登用とか活躍の場が非常に進んで いると言われているんですが、残念ながらアジア・パシフィックの中では今ビリをいって いるというのが現状でございます。
 それでインド、インドネシア、シンガポール、アセアンと呼ばれる地域なんですけれど も、やはりここも30%前後という数字です。人口的には日本の社員が非常に多いもの ですから、アジア・パシフィック全体としては20%をちょっと超えたという数字を呈してお ります。
 これは2001年の数字なんですけれども、1997年ぐらいから各国、特に女性に対して フォーカスが当たっておりまして、かなり頑張った結果、今ここまできているというのが 現状でございます。それで、ここまでだんだん増えてくると、今までの感覚で言うと3割 前後女性社員がいると、通常仕事をしている段階で自分が女性だとか、そういうことを 全く意識せずに仕事ができるんです。
 やはり30%というのは一つのいい線なのかなと思っておりますけれども、私自身の 経験でお話ししますと、1995年から98年の3年間アメリカに駐在という形で行きました が、それまで自分は日本IBMの中で結構言いたいことも言って好き勝手にやってきた と思っていたんですが、アメリカに行って30%ぐらい女性社員がいる中で仕事をする と、日本の中にいると自分もやはり女性だということを意識して、少し言いたいことをそ れでも抑えていたのかなということを実感しまして、アメリカで女性が働くというのはい かに自分の実力を出しやすい環境にあるかというのを実感したという経験がございま す。
 それで、是非もっともっと女性社員を増やしたいという活動で今やっておりますけれど も、結果、1997年ぐらいにいろいろなところで女性にフォーカスが当たって、いろいろな 活動を展開してきたんですが、各国のIBMの社長に相当するところですね。この活動 を始めるまでは、女性社長というのはいなかったんです。一番最初に登場したのが南 米、コロンビアだったと思うんですけれども、そこで女性社長というのが誕生しました。 アジア・パシフィックの中では、インドネシアで一番最初に女性社長というのが誕生し ました。それから、今シンガポールも女性社長になりました。大体30%近くなってくる と、もう女性社長は当たり前のように出てくるということです。それから中国、台湾のグ ループなんですけれども、香港の社長はやはり女性です。アジア・パシフィックのこれ だけの国で今3人女性社長がいるということになります。
 それで、ダイバーシティに取り組むというお話なんですけれども、IBMのお話を少しし しますと今、皆さんにお配りした資料の中にはIBMの業績の推移という資料があるか と思いますけれども、1990年の初めごろ、実は80年代の後半から非常に技術的な革 新がかなり変わっておりまして、市場もやはりお客様の求める製品とかサービスという のが変わってきていたわけですが、IBMはそれに手を打つのが非常に遅れたんです。 それで、90年代の初め以降、社員の数も業績も赤字になったというのがありまして、 有名なガースナー会長がやってきまして、それでIBMの大改革を行い、彼が一番に 言ったのがこの「ダイバーシティ」なんですね。それで、やはりこういういろいろな力を借 りて活気のある企業じゃないと業績も伸びない、市場の変化にも気付かないというの がメインテーマで、そこをもっとやれという大号令が出ました。
 ダイバーシティという切り口では、人種とか身体障害の方の対応だとか、セクシュア ル・オリエンテーション、性的志向ということで、そういういろいろな考え方の人をもっと 能力が活用できるような施策だとか、場の提供というのをやっていこうという取組があ りました。
 IBM全体で言うと、大きく言うと8つのグループに分けております。1つは人種という ので、ブラックとかアジアンとかヒスパニックとかネイティブアメリカンという人種のところ が4つありまして、性的志向のところでゲイとかレズビアンという一つのグループがあり ます。それで、男性、女性という性のところと、障害者というこの8つのグループを組み まして、日本IBMとしては女性と障害者というところにフォーカスを当てて今、活動を続 けています。
 それで、もう少しなぜダイバーシティかということなんですけれども、ガースナーはそう いうことで着任して大号令はかけたんですが、日本の状況を話します。私どもの最高 顧問の椎名が、経済新聞の「私の履歴書」というので掲載した言葉がわかりやすいの かなと思いまして、引用させていただきますけれども、「私は以前から若者、女性、地 方、外国人というグループに期待すると言ってきました。それの反対に位置する中高 年、男性、中央、日本人というのは過去、戦後非常に頑張って努力されて成功体験、 エスタブリッシュメントを築かれたわけですね。それをやはり否定するというのは非常に 難しいんだ。それが否定できるのが若者とか、女性とか、地方とか、外国人という切り 口なんだ。こういうのが将来を変えていくんだ」ということを言ってくれているわけですけ れども、これが非常にわかりやすいかなということで一文お話をさせていただきまし た。
 よく女性はということで、何かあると女性というのでひとくくりにされて、総称で悪いと きには評価される。それで、いいときにはあの人は特別ということで評価されるわけで すけれども、そうではなくてやはり個で評価していただきたい。個を大切にしていくとい うことが必要なんじゃないかということで、1998年の1月23日、日本IBMにおける女性 社員比率はやはり最悪で、みんなプロフェッショナル職位ですけれども、職位の低い人 が多く、なかなか高い人の数が多くならないということで、もっと本来女性社員の能力 が活用できるかを検討しろということで、社長の諮問機関としてカウンセルが発足しま した。
 それで、カルチャーを変えるという大変な話なので、短期間ではなかなか改善はされ ないだろうということで、5年先の目標をつくって今日まで活動を続けているということで す。
 それで、まず最初に私たちが取り組んだのは、最初の半年ぐらいをかけて、感覚で は日本IBMは女性が非常に活躍できる場があるとか、処遇されているという話がある わけですけれども、実態はどうなんだろう。数字でやはりデータに基づいて判断してみ ようということで、最初はデータの分析をやりました。
 それで、女性社員の比率が、なぜ上がらないかというと、もともと採用比率が低いん じゃないか。では、この採用比率を上げるための活動をやっていきましょう。
 それからもう一つは男性のマネージャーからよく言われるんですけれども、せっかくそ うやってもすぐ女の人は辞めちゃうからねということです。では、定着率というのはその 当時、男性と女性という切り口で言うと、残念ながら倍の差があったということで、では 男性と同等にするという活動をやはり展開していこう。
 それから、管理職比率というのもやはりある特定の部門に1人、2人いるという話だと なかなか進みませんので、当たり前のようにいるぐらいのレベルにしていこう。具体的 には数字目標を全部つくったわけですけれども、こういうことでやっていきました。
 データの分析で、では何で辞めるのかという定着率なんですけれども、辞める真の原 因というのを押さえた方がいいんじゃないかということでサーベイをやっていきました。 それで、このデータ分析をするまでにみんなが考えたのは、例えば結婚したぐらいで辞 める人というのはうちの会社はほとんどいないんですけれども、子どもを生んで両立と いうのが一番大変なんじゃないか。それで辞めていくんじゃないかというお話があっ て、一応原因を調べてみましょうということだったんですが、結果は育児と両立というの は第2位なんですね。第1位はやはり自分のキャリアが見えないというのがあって、こ れはやはりちゃんとデータ分析してよかったなと思っています。その後、アジア・パシ フィックのキーの女性が集まっていろいろなディスカッションをしたときも、やはりこの キャリアアップの阻害要因ということで将来像が見えません。それから、仕事と家事、 育児とのバランス、ワークライフバランスということですね。それからオールド・ボーイ ズ・ネットワークということでいわゆる男性社会の中でいきていくのが大変だという話が 出てきたわけです。そういうところを取り除いていけばいいのかなということで活動を展 開してきたわけです。
 それで、まずその将来像が見えないというところに対するアクションなんですけれど も、やはり職場に女性が1人しかいないという職場はあるんです。そうすると、私の将 来はどうなるんだろうと相談する人もいないしというのがありますので、1つはメンタリン グという制度があります。それから、君1人ではなくてこの会社にはもっともっといっぱ い活躍している女性がいるよというのを見せる女性フォーラムとか女性セミナーというこ とをやってきました。 それから3つ目なんですけれども、日本は残念ながら余り数が いないんですけれども、海の向こうにはトップエグゼクティブレベルの女性がたくさんい るわけです。そういう人たちが仕事で日本を訪問した際にラウンドテーブルで、大体8 人から10人ぐらいの将来を嘱望されている女性に集まっていただいて、どういうふうに キャリアをその人が築いてきたのか、当たり前のようにぽんぽんとキャリアを築いてき たのではなくて、その人たちもいろいろ悩みながら乗り越えてきたという話など、いろい ろな話を聞かせてもらう機会をつくりました。そういうことで、この会社は皆さんのキャリ アの将来はあるんですよということを見せてきたということです。
 それから、仕事と家事、育児とのバランスなんですけれども、ここもやはり結婚して子 どもがいても両立している人はいっぱいいますよということを見せる必要があるし、実 は会社の制度としてはこれを支援する制度というのはたくさんあるんですね。だけど、 意外に知らない。それで、男性のマネージャーも、いいガイダンスができないというの がありますので、そういう人事制度のリマインドとか、整備をしてきました。それから、 ワークライフバランスセミナーというようなセミナーを開いて、それをうまく乗り越えてき た人の紹介だとか、会社の支援策というのをみんなにお話をしてきました。
 ここで公表だったのは、スピーチをする人が女性ばかりではなくて男性で例えば育児 休職を取った人とか、子どものケアをメインにやっている人とか、そういう人に話をして もらったんです。それで、すぐに家事とか育児という話になったら、イコール女性という 話が一番よくないわけで、別にそれが男性であってももちろんいいわけですし、女性で あってもいいし、逆に共同してやっていかないと意味がないんだというような話をさせて いただきました。
 それから、オールド・ボーイズ・ネットワークに対する対策なんですけれども、1つはこ れもメンタリングのお話がありますし、逆にせっかくいろいろな機会を得て昇進していっ た女性のネットワーキングというのもやって、1人で頑張るというのではなくてみんなで 頑張るというようなネットワークづくりのところも支援をしていきます。
 時間の関係で全部お話できませんけれども、具体的にどういう活動をやってきたかと いうところです。このウィメンズ・カウンセルというのが1998年に設立しました。20人ぐら いそれぞれの部門で推薦されて、トップレベルの女性が集まったんですけれども、一 番最初の会合のときにみんなが何といったかというと、何で私はここに集められたの、 日本IBMはもう十分やっているじゃないの、処遇されているじゃないのというのが大部 分の人の意見でした。それで、私たちは日本の中ではそうかもしれないけれども、この 会社はそんなレベルの会社じゃないんですよと、アジア・太平洋地域の中、グローバ ルの中で女性の比率が日本はビリなんですよとか、上位の職種の人がこんなに少な いんですよということを見せて、みんなショックを受けたというのが実態です。
 同じように、かなり意識の高い人でもそういうふうに思っていたわけで、その下の社 員というのはもっとそういう思いがあるわけです。十分自分は処遇されている。そこを 変えないとやはりだめだということで、最初に中規模女性フォーラムというのを1998年 の後半から拠点の事業所でやってきて、非常に私たちは将来があるんだとか、会社は こんなにみんなに期待しているんだというお話を中心にやってきたんです。そのときに やはり集まってきた人もみんな同じように十分満足していますというふうに答えている わけです。
 それで、男性のマネージャーからは、会社からはそういうことを言われるので、せっか くその機会を与えると、私はとても部長なんかいいですよ、今で十分満足していますと 答えが返ってくるということが非常によく言われていて、それではやはりだめだというこ とで、みんなにもっとキャリアについて考えるとかということを徹底しました。
 これでかなり数は打ったんですけれども、先ほどお話ししたように女性社員が3,000 人ということで、100人規模でやっていてもなかなかみんなに浸透しないわけです。そ れで、1999年、2000年と大規模女性フォーラムをやって、一気に1,400人1,500人集め てやりました。一気に集めてやったよかった点は、やはり部門で1人2人しかいない女性だと孤立していたというのが現状としてあるわけですけれども、こんなに女性がうち の会社の中にいるのかということをみんな改めて認識したという話で、意を強くしたとい うコメントもたくさんいただきました。
 逆に男性の上位の管理職の方は大体100人ここに参加していただいたんですけれど も、日ごろとは全く違う光景で、この人たちの反応は、女性社員はいつもこんな肩身の 狭いところで働いているのかというのがよくわかりましたというコメントがあったんです ね。大体会議をやっても、日本ではこれくらいの人数がいても、上位職の会議ですと1 人か2人が女性で、あとは全部男性ですね。アメリカに行くと全然そんなことはなくて 逆転していたり、半々だったりという世界なんです。そういう意味では、男性の上位の マネージメントにも気付いていただいたという意味では非常によかったんです。
 次が、では辞めるところをなるべく少なくするという活動と、逆に採用するところに力を 入れていこうということで、女子学生フォーラムというのをやりました。学生の時代に意 識を高く、世の中のことをしっかり知って入ってきていただきたいというのがあって、理 系の女子学生に女性のプロフェッショナルとしての意識を持って入ってきてもらおうとい うような趣旨でセミナーをやってきました。それで、これは各大学に出向いたり、私ども の会社に来ていただいたりということでやってきました。
 もう一つ、これはうちの会社の社員だけがお話するのではなくて、私たちのお客様で あるほかの会社も女性の能力活用という意味で力を入れていただかないと意味はな いわけです。それで、私どものお客様の女性にもっと進出していただきたいというのも ありまして、こういうセミナーをやってきました。
 それで、女性の採用率というのはかなり上がってきたんですけれども、もう少し頑 張って理系という話で大学の理系の女子学生を採用するという活動もやったんです が、IBMは理系がもう少し欲しいということで、これ以上女性の社員比率は増やせな い、採用比率は増やせないと言われました。何となれば大学に理系の女性がそんな にいないからだという話が出てきましたので、ではもうちょっと前倒しで中学生、高校生 向けにセミナーをやって、これはエキサイトキャンプと言ったんですが、夏休みのちょう ど1週間私どもの方に通っていただきまして、本当は数学はとても嫌いなので理系向 きじゃないんですけれどもと書いてきた子も含めてこういうエキサイトキャンプをやって、 科学全般にもう少し興味を持ってもらい、将来そういう理系に進んでもらおうという思い でやりました。これは日本IBMだけのプログラムではなくて全世界のプログラムです。 22か所、1か所大体30人ぐらいやりましたので、600人とか700人です。それで、それ ぞれの国がいろいろ工夫をして、日本IBMの場合は女子中高生25名に来ていただき まして、これに対して女性社員が50名ということで支援しています。自分たちでいろい ろプログラムを組んでやります。
 それで、これは1週間のキャンプだけではなかなかすぐにというわけにはいかないと 思います。それで、学生1人についてうちの社員を1人付けて1年間Eメールでメンタリ ングを行い、いろいろ進学相談とかをやってきました。今年もまた同じようにやる予定 です。
 男性の社員に対しては、やはりこういう活動というのはトップマネージメントのリー ダーシップというのは不可欠なんです。先ほどお話ししたのは女性社員の意識を変え ていくという活動ですね。それだけではやはりだめで、男性のトップマネージメントの リーダーシップ、理解というのは必須なので、部門長支援インタビューと言いながら、 おたくの部門はこれだけしか女性がいませんよと言ってプレッシャーをかけながら、 せっかく登用してもらった女性が何か困っていることがあればそこを支援していこうとい う活動を展開してきました。
 それで、次の女性ラインICPセミナーとして、ICPという非常に上位職のプロフェッショ ナル職位の人たちがちょっと相談するというのはなかなか男性にはしにくいとか、女性 のトップがいないということもあって、ネットワーキングを組んでお互いに悩みを打ち明 けたり、相談したりとか、そういうところに手を打っていきました。
 ワークライフバランスセミナーというのをやりまして、ちょうど一番辞める時期、可能性 の高い人たちに対してこういうセミナーをやって、もっとだんなさんの協力をうまく相談し て受けるようにしなさいよとか、実際に育児休職を取った男性の成功体験とかというの もいろいろお話をしていただきまして、あとは産業医の先生にメンタルヘルスというよう なお話もしていただきながらみんなで頑張っていきましょうというお話をしています。
 それから、メンタリングです。女性が将来について相談していくところがなかなかない ということで、一番最初に考えたのがメンタリングなんですけれども、基本的には部門 長クラスの方に1人3人ずつぐらいの将来有望な女性社員を面倒を見ていただいてい ろいろな相談に乗っていただくということでやりましたけれども、現実にはもっと身近な 人だとか、またはそういう意識の高い人に忌憚のない意見を相談するとか、キャリアの 相談をするということで、部門長が、例えば私の上司が3人持っているんですけれど も、なかなか女性の話はわからないから渡辺さん代わりにいろいろやってよというよう な話がありましたので、私は喜んでそれをやらせていただきました。そのときには私が お願いしたのは、必ず男性の上司にも同席してもらいたい。これは女性の話だからわ からないと言われて、いつも全部女性というふうになってくると余り意味ないわけで、や はり男性にもどういうふうに女性が悩んでいるかとか、どういうふうにガイドするかという のを是非理解していただきたいと思いまして、同席をお願いしました。
 それで結果なんですけれども、一応数字目標はいろいろつくっておりまして、女性社 員の比率は、2003年に16%まで持っていこうと考えているんですけれども、かなりい い線で上がってきているというのが実態です。それで、採用比率も傾向としては35%ぐ らいは女性でいきたいというふうに思っておりまして、そういう数字をねらって活動をし ています。
 管理職の比率なんですけれども、40歳以上という区分けをしますと、一応男性のせ めて半分ぐらいは女性でもっていきたいというのがありまして、一応今の段階で目標を 超えたくらいのところまできました。それで、40歳未満で取ってみますと、非常に順調 に推移しているのかなというふうに考えています。
 一応私のプレゼンテーションはここまでにさせていただきまして、皆さんから御意見を いただきたいと思います。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、どうぞ御自由に御質問をしていただ きたいと思います。
樋口委員
私は20年前に女性が働きやすい企業というのをある出版社の企画で20 社ほど選んでグループで訪問調査しましたが、IBMは20年前注目の企業でした。だけ ど、そのとき1つ気が付きましたのは、女性比率が低いなと。逆に言えば、低いからこ そ手厚い待遇をしていられるんじゃないかということも考えました。それで、今こうして 30%台まで進めていこうというときに、IBMさんは充実した両立支援策をやっていらっ しゃいますけれども、女性比率が倍になって産休を取ったり育休を取ったりする人が増 えても、経営に影響しないという自信を持っていらっしゃるんだろうと思いますがいかが でしょうか。
 それから2番目、女性たちでさえ私たちもこれだけ十分に働かせてもらっていますと いう日本の風土の中で、男性たちに抵抗はないだろうか。その男性の意識風土をどう 変えていらっしゃるか 3番目に、それを全部払拭するのは、こういう会社の方が発展 するんだということを社会に示すことだと思うんですけれども、それが単にダイバーシ ティというキーワードだけで納得できるのか、もうちょっとどういうことがあるんだろうかと いう3つです。
渡辺理事
全部覚えているかどうか自信はないんですが、1つはやはり市場という のが非常に動いているわけで、特にこのIT業界は技術革新もすさまじくて、市場をか なり敏感に見ていく必要がある。先ほど椎名の一文を紹介しましたけれども、やはり下 手に成功するとこれでいいんだということでとどまってしまうということで、女性と男性で 違いが言われるときに、女性は回りのことを余りいろいろ考えないでずけずけ物を言う とよく言われますが、何か気付いているからずけずけ物を言うわけですね。それで、気 付いていてもやはり物が言えない環境というのはよくないと思っていまして、日本IBM の場合は男性でも言える環境というのはあるんですけれども、女性の場合も言っても 女性だからねと言われるんじゃなくて、ちゃんとわかっていて意見を述べるというのが 大事なのかなと今、考えています。
 それで、市場の変化ともう一つ、私たちはITの会社なんですが、ITを使うことによって みんなの生活スタイルや、仕事のやり方が変わるというのを私たちは実践する必要が ある。実践して見せることによってお客様を獲得するということが非常に大事だと思っ ているんです。
 1つは、場所の問題というのがあったわけです。だけど、例えばパソコンが出てきまし た。パソコンを使って勉強すればいいんだったら、場所は構いません。家でもいいです ね。時間もいいですね。日中できます。それで、私たちの活動の中でもEワークという のを提唱してきました。もともとEワークを提唱したのは、退職理由を調べたときに、本 当はもう少し仕事をしなきゃいけないんだけれども、子どもの病気とか朝夕の送り迎え の制限があって本来、自分がやりたい仕事ができないとか、つけないという話があっ たわけです。家にそういう環境があって、夜でも仕事ができればいいじゃないですか。 極端なことを言えば、会社に来なくてもいいわけです。
 これは私がUSに行ったときに実感したんですけれども、IBMという会社は、ではオ フィススペース、スペース代がもったいないからみんななるべく家で仕事をしてください というガイドなんです。それで、日本で例えば私たちの活動があってお話を進めていっ たときはどうしても、例えば介護の理由とか育児の理由があって、在宅勤務を認めてく ださいというところからスタートしたわけですね。アメリカは違うんです。しかも、かなり 上位レベルのマネージメントがやっているんです。私の上司もある日突然、私はこれか ら在宅勤務になりましたからということで会社に来なくなったんですね。上から率先して いけばいいわけです。
 今、日本でそれを、理由は関係なくある部門で男性女性関係なくやってみましょう と。それで、やってみたら問題ないというのであれば全社に広げましょうということで、 今、合計473人の人がEワークをやっています。
 育児事由とか介護理由の人というのは、理由なしの人よりも少ないんです。こういう ふうになってくると後ろめたさとかなくて、むしろEワークをやることによって生産性が上 がるとか、お迎えの心配をしなくていいとか、子どもが病気のときの対応ができると か、そういうのをやはり私たちは実践して示すことによって、お客さんにもこういう働き 方ができますよというようなお話ができるわけです。
 ちょっとお答えになっているかどうかわかりませんけれども、突破口は最初のトリガー はやはり女性のいろいろな阻害要因ということでアイデアとしては出てくるわけですけ れども、私は最終的には常に全社員が対象にならないような制度はだめだと思ってい まして、それに早く持っていく。そうすると男性も当然恩恵を受けるわけで、最近の男性もかなり変わってきております。
 私がマネージャーになったときに若い男性が電話をかけてきました。今日は子どもが ちょっと具合が悪いので病院に連れて行くので午前中は休みます。どうぞどうぞと私は 言いました。そういうふうにみんなが変わっていけば、女性だから登用の機会が与えら れないとか、そういう話にはならないわけです。
岩男会長
先ほど50億ドルという金額を働きやすい職場づくりのために使うというこ とでしたが、その50億ドルを十分にカバーするような利益がこのダイバーシティの結 果、上がってくればだれも文句を言わないと思うんです。IBMというのはものすごくもう かっているのかもしれなくて、私はそこがわからないものですからもうかっていればこん なことは先行投資みたいなもので、当分目に見えるような形でコストが利潤につながら なくてもいいというお話かもしれないんですが、その辺りはどうなんですか。
渡辺理事
50億ドルの内訳なんですけれども、一応2001年から5年間で50ミリオン ダラーというお話を今させてもらっていまして、やはり私たちはプロフェッショナルの集 団で、人が会社の非常に大事な財産なんです。優秀な人が辞められるということは大 変なインパクトなんです。それで、その人たちが生き生きと働き続けられる環境という のを実現していくことが非常に大事だというふうに私たちは考えています。
 それで、日本ではいろいろな人が集まっていろいろな案を出していったんですけれど も、やはり病気のときの子どもの対応が非常に困るのよねとか、長い夏休みにどう やって子どもを安心して云々していこうかというようなところとかいろいろな意見が出て きまして今、日本IBMでやり始めたのは1つはファミリーケアネットワークというサービ スなんです。子どもが急に病気になったときにベビーシッターの人を手配するとか、い い病院を紹介してもらうとか、今までは電話番号は教えていただけるというサービスは あったんですけれども、一本電話をかければベビーシッターの方の手配から諸々の病 院の手配とか、そういうところを一つの窓口で全部やってくれるサービスというのを始め ています。
古橋委員
Eワークをやった場合の業績評価と、能力評価、それに伴う給与水準、そ の評価というものについての考え方はどういうふうになっているのでしょうか。また、高 度情報化社会の中で、中間管理職の従来型の役割はなくなっていくと思いますけれど も、今後予想される中間管理職におけるプロデューサー的な役割についてどう評価す るのか。Eワークをやりますと、評価がちゃんとしているところはいいんですけれども、な かなかできないところがあるものですから。
渡辺理事
皆さんそこにコンサーンがあるんですね。なぜかというと、日本の会社は 長時間勤務をやっていると何か働いているような気になっているんですね。いればアウ トプットを出さなくても何か働いているような気になっているし、上司もあいつは毎日夜 遅くまで頑張っているなと、変な評価をするというのがあると思います。
 それで、やはり一番大事なのはアウトプットで評価していく。それで、優秀な人であ れば短い時間でも期待されるアウトプットを出せば丸なわけですね。アウトプットで評 価していくように変えていかないと1つはだめだと思うんです。評価制度そのものです ね。
 それで、IBMの場合はPBCという制度がありまして、年頭に上司と部下の間で今年 1年の具体的な目標を立てます。それで、会社全体の公式なガイドとしては年1回そ れを上司と部下がインタビューしてどうだったという評価をしているわけです。そういうこ とをやってもやはり不満は残るんです。だから、年1回ではなくて、例えば3か月に1回 とか、そういう細かい単位で評価をしていく。それで、悪い評価が付いたら何でそれが 悪かったのかということをもっと具体的に言ってもらうということをやらない限りは、何と なくいいとか、何となく悪いというのは特に若い人は通用しなくなっているのかなという のがあります。だから、評価制度という話と在宅勤務とは非常に密接な関係があると 思うんですけれども、在宅ではなくても評価制度というのはきちんとやっていく必要が あると考えています。
竹信委員
この制度の中でEワークとか育児オプショナル勤務制度というのがありま すね。いずれも優秀な人とか、ある程度達した人とあって、権利じゃないということはか なり明記されている。優秀じゃない人はどうなるんだろうかという疑問が出てくるのが1 つです。
 もう一つは、IBMは成果主義だということは前から聞いているんですが、育児オプ ショナル勤務制度ですと勤務時間に合わせて50%勤務で、多分給付、賞与は時間に 合わせて時間比例で出しているということなので、そのアウトプットで評価し、それでお 金を出すというものとの兼ね合いをいつも私は混乱して非常にわかりにくいのですが、 その辺を教えてください。
渡辺理事
オプショナル勤務の方は、形としては休職扱いなんです。休職扱いとい うことで、そこは時間で評価する。時間でお金を払うという形になっています。
竹信委員
それと、会社の認定が非常にはっきりしているというか、認定権が非常 に強いものなんだというのはよくわかるので、その辺でもし認定されない人はどうする んでしょうか。
渡辺理事
在宅勤務というのは、家にいて本当に仕事をしているかどうかよくわから ないとかという話もよく出てくる意見なんですけれども、やはり自己で管理できる人で ないと困るなというのがありまして、そういうことができる人ということで上司とその人と 話し合って認定する、しないという話になります。
伊藤委員
女性のキャリアアップ阻害要因を3つ挙げられています。これはすごくよ くわかる。女性にとって上が全く、日本の場合はガラスの天井じゃなくてコンクリートの 天井だと言っているんですが、女性にとって上が全く見えない状況です。これはIBM 独自の問題として考えておられるのか、あるいは日本全体にある種の特徴的なものな のか。それが1つ。解決の方法として、フェイス・ツー・フェイスの目に見える形のコミュ ニケーションの中でキャリアアップを図っていくという戦略が成功したんだろうと思うん ですが、その辺のフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションの中でのキャリアアップ の意義をお尋ねしたいと思います。
渡辺理事
1つは、ガラスの天井というのは多分日本だけではなくてUSなどの女性 と話してもやはりそういう問題はあったと言っているんですね。やはりそこを破っていく という話は必要なわけで、日本でも自分は入社したときにこの会社の社長になってや ろうと思って入ってくる人というのは女性の場合は余りいないと言われているんです。 男性の場合は結構、高い意志を持って入ってくる人が多いと言われているんですけれ ども、例えば外国の人にメンタリングを受けたときに一番に聞かれるのは、あなたはこ の会社でどこまでポジションを上げたいのというのが最初の質問だったりするんです。 これはかなりカルチャーショックで、そんなことを考えてこの会社に入ってきていない。 もう一つはガラスの天井だけではなくてやはり横の壁ですね。横の壁を破っていくとい うことをやらないと、女性が本当に生き生きと働けるということにならないんじゃないか と思うんです。
 横の壁というのは、ある特定の部門には女性がいっぱいいるけれども、この部門に はとても女性は無理よとか、本当はそこをやりたいんだけれどもと言ってもやらせても らえないということがあっては意味ないし、せっかく上司がそういう機会を与えてくれて も、いやいやあそこはちょっと難しそうだからやめておくわという女性がいても困るわけ です。それで、上の壁と横の壁を破っていって、当たり前のように女性が普通に働いて いるという環境が出てこないとだめなのかなと思っています。
 それからもう一つは、フェイス・ツー・フェイスの話し合いだけではなくて、実はメンタリ ングといったときにはEメンタリングと言って、例えば自分のメンターは日本にここにいる んだけれども、自分の仕事に非常に近い人でもっと上のポジションにいる人がたまた まアメリカにいました。その人に頼んでその人にメンタリングしてもらうということもある わけですね。そうすると、それは電子メールでのやりとりでメンタリングをやっていると いうケースもあります。
伊藤委員
明らかに目に見える形で具体例が示された時、効果を発揮しているよう に思います。例えば外国人のエグゼクティブでも目の前にいるかどうかということがや はりすごく効果を発揮しているんじゃないかと思います.。
渡辺理事
それは絶対そうだと思います。
岩男会長
それでは、特定非営利法人「たすけあい ゆい」の御説明に移りたいと 思います。こちらからは飯野やすこ事務局長においでいただいております。どうぞよろ しくお願いをいたします。
飯野事務局長
私どもは横浜の南区というところで介護関係の在宅サービスを主に やっております団体でNPO法人、特定非営利活動法人の法人格を取っております「た すけあい ゆい」と申します。
 私ども、十数年前に地域の主婦が集まりまして、その地域で援助を必要としている 方たちの何かしらのサービスを届けてあげられればなということから始まった団体でご ざいます。それで、対象者は特に高齢者に限定をしませんで、本当に必要なときに必 要な人に必要なサービスを届けるという活動を行ってきました結果、現在でもさまざま な生活を抱えていらっしゃる利用者の方たちを対象にして活動をしております。
 まず利用者があって必要とされている部分があって、それに制度を張り付けていくと いうことで現在に至っているという発展の仕方をしております。
 その結果、かなり多岐にわたっての事業展開に結果的になったという経緯がござい ます。事業高の方は、13年度分が介護保険等の報酬等々を含めまして全体で約2億 8,400万をお陰様で今期は上げることができました。
 事業高は、この会が発足いたしましてから本当にボランティア活動でずっと行ってき ましたのが10年間ありまして、介護保険制度が始まったがためにここで大きく、2000 年の事業高そのものとしてはとても大きく跳ね上がっております。
 あとは人員構成と給与につきまして、現在170名の職員が働いております。その中 で常勤者が全部で32名おります。それで、残りの人数はいわゆる登録ヘルパーと言 われている、自分の時間を訪問介護の仕事に当てるという形で活動しております。今 どんどん新しい人を、それも核になって働いていただけるような方たちを常勤として雇っ ていこうということで、上智の社会福祉専門学校の卒業生の方を紹介していただいて 雇わせていただいているとか、いろいろな御関係の中で職員を採用しております。
 それで、今度は給与体系の話になるんですけれども、常勤者はもちろん固定給で賞 与等を払いまして、あとは厚生年金、健康保険、それからもちろん雇用保険等のそう いう社会的な社会保障の部分も通常の法人と同じように付保しております。
 あとは、登録のヘルパーさんについては時間単価をそれぞれのサービスごとに変え て時間設定をしております。例えば身体介護という介護保険のサービスがあるんです けれども、そちらの身体介護をやった場合にはヘルパーさんには1時間1,800円、身 体・家事の複合というサービスを行った場合には時給1,500円、それから家事援助とい うサービスには時給1,100円という賃金体系を設定いたしまして、それで、例えば委託 の事業の場合については委託の制度に張り付いている利用者さんのところに行ってそ ういう訪問介護、ホームヘルプの仕事をした場合には委託の給与設定というのがあり ますので、その時間数を出していただくような給与設定をしている。それから、例えば デイサービスのお手伝いをした場合にはデイサービスの時間設定、時間単価というも のがありますので、その時間単価の計算をしている。そういうヘルパーさんのお給料に ついてはかなり細かい賃金体系をとって、その方が活動をした時間数に応じて1か月 分の総額のお給料をお支払いするという給与計算を120人分、毎月のようにやっており ます。
 それで、もともと私どもの活動が営利を目的としようとか、何か大きな事業を起こそう とか、そういう事業性のあるところから始まっている活動ではありませんので、働き方 に関しましても多分、普通の企業の働き方とはちょっと違うところがあるのかなというふ うに感じております。それで、「たすけあい ゆい」の倫理綱領と、それから利用者の権 利の中に、実は私どもの活動につきましてはその働き方について、それから利用者さ んに対するサービスの仕方について、その理念というのが倫理綱領と、それから利用 者の権利というところにうたわれている内容に集約されているといっても過言ではない というところです。
 この権利の方と倫理綱領の方は、私どもがサービスを行うときの利用者さんの権利 をうたったものではあるんですが、それは個々の生活、個々の利用者さんの命にでき 得る限りこたえていこうという多種多様なサービスの仕方をしておりまして、それに先 ほども言いましたように後から制度を張り付けていっているという流れになっておりま す。これは実は利用者だけの流れではありませんで、同じく私どもの事業所で一緒に サービスをやっていこう、働いていこう、関わっていこうとする働き手の方にも同じことが 言えます。結局スタッフ一人ひとりの個々の生活ですとか個性とか、そういったものを 尊重した関わり方、それを受け入れていこう。そこのところを堅いものにしまうと、思い が入らなくなるというのと、それぞれが本当に自分の持っている力を出し切れなくなる という考え方でありますので、10年前も今も同じようにスタッフの個々の生活をまず尊 重しようという形で考えています。
 それで、170名の職員は一番若い人は19歳の男性から一番高い方は70歳、71歳ぐ らいの女性のヘルパーさんまでで構成されています。それで、例えば働き方につきま してもヘルパーさんのお給料をずっと見ていきますと、1か月当たりにお支払いするお 給料が例えば6,000円とか8,000円という方から、一番多い方は三十数万のお給料を お支払いしている方まで、この170名の中にはそれだけ多種多様な方たちが働いてく ださっているというのが現状です。
 なぜこういうことになるかといいますと、例えば利用者さんにそれぞれの家庭の状況 があるのと同じように、働いている人たちもそれぞれ家庭の状況があるわけで、これは 実は男性も女性も余り変わりなくそれぞれ家庭の状況があるわけです。例えば男性に してみましても、仕事の内容そのものが介護の仕事というのは昔から女性の方がなじ みやすいという特徴がありますので、どうしても男性、女性の割合としてまだ1割強が 男性という人員構成にはなっております。ただ、働いている方たちの背中に背負ってい る部分というのは男性も女性も全く同じでして、この18名の男性の中には例えば通常 の一般の企業を昨今の景気の不況の折で職を失われて、それで御自分でヘルパー2 級の研修を受けられて、2級の資格を取って私どものところにお見えになった方が男性 でもいらっしゃいます。あとは、例えば御自分の親御さんの介護のために会社をお辞め になって、御自分の親御さんの介護をしながら残りの時間を私たちのこの活動に時間 を費やしてくださっている方というのもいらっしゃいます。
 この後ろに抱えている生活が違う、それぞれの個々の生活があるというのは実は女性も男性も全く同じ扱いを私どもしておりまして、自宅で親御さんを介護なさっている方 ですとか、障害のお子さんをお持ちになっている方ですとか、何かの理由で離婚をな さって子どもさんを抱えている人ですとか、それから反対に御主人がリストラになって 御自分が働かないといけない方ですとか、何かしらそういうバックに持っている生活の 状況に応じて働いていただいているというのが集まってこの人数であり、この数字とい うのが現状です。 例えば、どうしても生活を支えないといけないという方は、お仕事を していただくときにそういう御相談を聞いていくんです。それで、どうしても高収入が欲 しいという方は先ほどここで見ていただいたような1,800円のサービスをたくさん張り付 ける。1日に何件もそういうところに行ってもらう。それで、そうではなくて自分は子ども もいるし、健康保険証をちゃんと持って子どもを扶養に入れたいという方については常 勤の形にして社会保障を付けて、それで子どもさんも扶養にしてという働き方をしてい ただく。それから、自分は年金をもらっているから収入は少なくてもいい。でも、社会保 障は欲しい。それから、それなりに責任ある仕事がしたいという65歳以上の方につい てはやはり常勤という形で来ていただいて、時間数を短くして毎日お仕事に入ってい ただいて、その時間数に応じた割合の固定給をお支払いする。そういう個々のお給料 設定を人ごとに全部変えておりまして、それでこの170人のスタッフに働いていただい ています。
 ほかにも利用者にさまざまな人がいるのと同じように、働き手の方もさまざまな人が おりまして、子どもがいて、大きな公立の保育所ですとかベビーシッターですとか、そう いうところに預けられない方については幼稚園教諭ですとか保母の資格を持った方に お願いして、ここの同じ建物の中の事務所を一室借りまして託児所にいたしまして、お 母さんたちの訪問時間が終わるまで、いろいろな保母さんが、御自分の空いた時間に 子どもさんをお預かりすることに時間を割いていただいているということでお願いしてい ます。
 どうしても子どもがいるから働けないとか、そういう部分については事業者の方でで きる限りの対応をしていきましょう。それで、自分の持っている時間、働ける時間という のを私たちの活動のために使ってくださいというスタンスでしております。
 あとは今、働いてもらっている方で生活保護を受けて、母子家庭で子どもがいて、何 かの事情でお一人になって生活のツールがない。スキルもなければキャリアもないと いう方たちは、今の中では生活保護を受ける制度の中で生活をしていくという形になり ますので、そういう方たちはヘルパーの仕事をしてもらいながらスキルとその資格を 取ってもらおう。それで生活保護から脱却してもらおうという目的で、そういう人たちも お預かりしています。この方たちは保護費の関係がありますので、単価を下げて働い てもらっています。そういうようなさまざまなやり方をしておりまして、利用者さんに対し てのサービスの柔軟な部分と、それから働き手にとっても柔軟な部分ということでやら せていただいているのが私たちの今の団体です。以上です。
伊藤委員
オランダモデルを日本でちょっと変えた形で進めているみたいな感じのイ メージもある。大変興味深くお聞きしました。ところで、運営上で困っていることについ てお聞きしたい。例えば行政機関のこういう援助があればもっとうまくいくのにというよ うな部分があれば、その辺のところをお聞かせ願えますか。
飯野事務局長
やはり今、扱っている利用者というのが本当にさまざまな状態の方 というふうにお話申し上げましたけれども、例えば介護保険の制度にもはまらない方、 それからいろいろないわゆる今の行政の方の制度にはまらない方は実はたくさんいま す。そこのあふれた部分についてはやはり何かしらの制度というのを張り付けないとい けないというのがどうしても出てきますので、それはこのことが困っているとか、あのこ とが困っているとか、羅列できるものではなくて、やはりどうしても今の制度の中には まらない部分がたくさんあるのは現実は現実です。
住田委員
私自身、こういうNPO活動の女性の雇用創出ということと、それから社 会の助け合いがうまくリンクすればこれから本当に発展性のあるものだということで非 常に期待はしているんですけれども、ただ、こういうときのネックといいますのは、最終 的にはボランティア活動ということで、結局中心になる方がそれほどの利益を上げられ ずに疲れてしまわれるというような話をよく聞いておりますので、役員の方が実際にど のぐらいの報酬を得ておられるのかということを、もし差し支えなければお教えいただき たいと思います。
 それからもう一つは、女性でスキルのない方がとりあえず社会の中で仕事を獲得し ていく上でこういうのがあるというので、私自身も離婚した女性がヘルパー資格を取っ て自立していくというようなステップを見ていますので、非常にこれも期待はしているん ですけれども、最終的に1,800円の単価であれば月30万ぐらい手に入るとしたらかなり 望みはあると思うんですが、そうじゃない方々との足の引っ張り合いとか、それからこう いう仕事をしていると、主婦のボランティア意識の方は時間について非常にルーズで あって、やはり責任を果たせなくて上の管理者が困っているということをよく聞いており ますので、実際にきれいごとではないそういう問題点を聞かせていただければと思い ます。
飯野事務局長
まず役員の報酬につきましては、役員は8名おりますけれども、大 体月額報酬で40万から70万の間で、この部門の一覧表を先ほど見ていただきました が、それぞれに責任者がおりまして事業をそれぞれ預けておりますので、その事業の 規模ですとか、そういったことでその報酬は払っています。
 それからもう一つ、私たちはワーカーとは全然のところで事務局というのをかなり強 化して付けています。私どものところは事務局とワーカーの方と経営の方とを全く分け る形で、それで両輪で運営をしています。それでないと、疲れて倒れてしまうというの は現実だと思います。
 それから足の引っ張り合いについては、実際に自分の働ける時間にこの仕事をする よという形で動いてもらっていますので、自己申告なんです。私はこの時間、この仕事 をやるよと、どこができるというのを全部ヘルパーさんの方から出してもらって、それを1 か月分全部張り付けをして、それで仕事をしてもらっているという作業を毎月毎月やっ ています。
 確かに1,800円と1,500円と1,100円の違いというのは大きいんですけれども、例えば 身体介護ができるできないというのはどうしても出てくる。ヘルパーさんの技量によっ て家事援助しかできない方なのか、身体介護ができる方なのか。管を入れた方ですと か、そういう方の体を拭いたりとかというのはそれなりのスキルがないとできないもの ですから、そこのところの仕事の密度の濃さで賃金の単価を設定していますし、それ からあとは自分が何ができる、どこができるということで、かなり緻密な張り付けの課し 方をしていますので、今のところ事務局の方には足の引っ張り合いであの人の方がい い仕事をしているとかというようなことは聞かないのが現実です。
 それから、時間にルーズな点については確かに利用者さんの方から、何時に来るこ とになっているんだけれども、実は来ないという電話はやはり正直あります。ただ、ヘ ルパーのカンファレンスと、それからこれだけの人数ですので地区ごとにグループをつ くっていて、それなりにそれぞれの担当者、責任者を持たせていますので、地域会と 全体の定例会というのを月に必ず1回、そこの中にカンファレンスも全部入れた形で 行ってきていますので、その中でかなり怪しい人には一応注意をすることもできます。 それから、やはり10年の長いおつき合いの中でやっていることですので、利用者の方 が、あの人に来てもらったけれども、やはり人対人なので相性が合わないというのは 確かに出てくるものですから、変えてほしいとか、そういう要望というのは、正直それが 全部入ってこないような形にしてしまうと、だれがどこで何をやっているのかわからない ということにもなってきますので、そこのところは受け入れられるような形でケアマネー ジャーなり何なりがお伺いして話を聞くようにしているのが現状です。
古橋委員
特定非営利活動法人で、この組織図の一番右側の部分は収益事業 じゃないわけですね。これは税金は法人税はかからないんですか。
飯野事務局長
いえ、かかります。いわゆる有償の対価を得るものについては幾ら ボランティア活動であっても、今の法人税法上は課税になります。
古橋委員
法人税法の収益事業に該当すれば課税されます。そうした場合に、税 務申告上いろいろ先ほどのような収益が出ているとすれば、税理士さんとかちゃんと だれか税務申告について指導をしてくれる人は今はおるんでしょうか。
飯野事務局長
います。会計事務所と顧問契約を結びまして、それで法人税の申 告等はやってまいりました。
古橋委員
そうすると、女性のこういう活動についての経理面における問題はないと 考えていいですね。そういうふうにしっかりしておられるということですね。
飯野事務局長
事務部門と、あとは労務管理の部分も就業規則賃金規程は全部つ くりまして監督署に届出をして、一応整備はしております。
坂東局長
登録ヘルパーの方は1年に2,000時間働いたとしても300万とか、あるい はあるいは1,100円の単価だとしたら……。
 普通の日本人の製造業の労働者だと1年に1,800時間ぐらい働くんですけれども、も し非常に収入が必要で登録ヘルパーで働こうと思っても300万以上というのはちょっと 難しいわけですね。
飯野事務局長
そうですね。でも、登録ヘルパーで今、月で三十数万という方もいま す。ですので、大多数はやはり頑張っても10万、20万という台になるかと思いますが、 実際に二十数万、20万台、30万台の登録ヘルパーさんも……。
坂東局長
20万台の所得を得ている人は1か月何時間ほど働くわけですか。
飯野事務局長
サービスの内容によって時間給が1,100円のサービスもあれば 1,800円のサービスもあるということと、あとは早朝とか深夜というのは当然時間外の 割増しの形で支払っていますので、一番多い人で60時間くらいですか。それに時間 外、それから夜と言っても8時くらいまでなんですけれども、その割増しの分が入るとい う形です。
坂東局長
非常に登録ヘルパーの方たちが食べていくだけの収入を得るというのは 難しい働き方ですね。
飯野事務局長
実際に登録ヘルパーで数十万で自分で食べている人というのは、 この中で5、6人はいます。ただ、そういうシチュエーションのある人は常勤の形で賞与 も出して、ある程度1年間で300万少し出るぐらいの年俸を設定して、それで常勤とし て働いてもらうという形に切替えをしています。途中まで登録ヘルパーだったんだけれ ども、例えば御主人がリストラになってしまって収入がなくなったからというので常勤に なるとか、そういう方は実はたくさんいます。
坂東局長
常勤の方は1週間の働く時間は40時間とかですか。
飯野事務局長
40時間です。だから、例えば31日だと160時間から170時間ぐらい の勤務時間ですね。
岩男会長
リチャレンジしていく女性たちをどういうふうに支援していくかというような ことも考えているものですから、長いこと主婦だった方が事業者にどうやったらなってい くんだろうというようなことなんですけれども。
飯野事務局長
実は、今回厚生労働省の雇用開発機構の方から職業訓練校の研 修の依頼がありまして、この8月から介護事業のマネージャーを養成する研修を行い ます。3か月で324時間の中に介護論から、社会保障から始まって、人的管理、労務 管理、会計、介護保険の請求方法、開業のための資金調達、介護のスキルの部分、 ヘルパー2級研修も全部織り込んだ形で324時間の研修を私どもの事業所で行う計画 で今、準備を進めています。実はそれはもちろん私たちの事業所で働いてくれる人で もいいんですが、そういうことではなくて、やはりそういう事業を立ち上げていける人を 育てていこうという目的の研修になりますので、今回たまたま雇用開発能力機構の方 から依頼があったんですけれども、できる限り続けていきたいと思っています。
岩男会長
どうもお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございました。
 それでは、次に事務局から、特色ある取組を行う企業の事例の御紹介がございます のでよろしくお願いをいたします。
村上課長
それでは、資料の3をごらんいただきたいと存じます。
 まず「特色ある取組を行う企業の事例」についてであります。ここで3つ挙げておりま すが、まず1番目のマツダ株式会社についてです。これは自動車会社ですけれども、 女性の活用のために人事システムや処遇の改善、社内託児所の設置、それからスー パーフレックスタイム、半日有給制度など、女性が働きやすいシステムを導入したとい うことであります。
 1996年にフォードと提携した後に経営再建と積極的な女性活用策を進める。最初の ところに1997年4月新人事システム、ここで新しいシステムの下で職種別採用、社内 公募制、女性の活用を積極的に推進する。それから、上から3つ目のところに女性社 員の活用と処遇の改善策、ここで一般職採用の女性について格付けをやり直して、女性社員の約半分に相当する500名が昇格したと、割に積極的な対応であります。これ はまた後でごらんいただきたいところですが、新聞記事として4ページ目のところに取 り上げられております。
 それから、マーク・フィールズ社長の話として「性別にかかわらず、ベストな人材を使 うことは企業の成長に不可欠だ。かつてのマツダは、有能でやる気のある女性でも補 助的な事務職にとどまっていた。まずは能力の高い女性たちに、その能力を十分に発 揮できる機会を与えることが大切だと考えた」。また、下のところですが、国内自動車 メーカーで初めて事業所内託児所を本社に開設したというような、男性だけだった職域 に女性が入ったことは男性社員にも刺激になり、社員の活性化につながっていくという ような社長のコメントが出ております。
 2番目に、エイボン・プロダクツ株式会社の取組でございます。ここはエイボン女性文 化センターというところで、社会の中で目覚ましい成果を上げている女性の功績と社会 貢献に焦点を当てた表彰事業を行うなど、女性が参加、活躍できる機会と場を提供す ることを目的に、さまざまなプログラムを企画実施しているということでありまして、5 ページ目にエイボン女性文化センターの御説明があります。プログラムの一番上のと ころにエイボン・アワーズ・トゥ・ウィメンということで、女性を顕彰している顕著な業績で 広く知られている女性ばかりではなくて、地道な努力でもその道を開いている女性や、 新しい可能性を示唆する活動をしている女性の発掘に力を注いでいるということで、こ こに女性大賞、功績賞等々の賞の御紹介をしております。この委員会を開いておられ まして、ここで岩男先生や樋口先生はこの委員を経験をされておられるというようなこ とも書かれてございます。
 3つ目の、株式会社グッドバンカーという例でございます。グッドバンカーはいわゆる ベンチャー企業なんですけれども、証券投資顧問業で、SRI、社会的責任投資を専門 とする投資顧問会社で、新しい金融商品を企画開発して、それに関連する調査やマー ケティングを行っている。それで、エコファンドというので成功した。これは環境問題に 積極的に先進的に取り組んでいる企業を投資、資産運用を対象とするファンドだと。そ れで、これが証券会社と組んで商品化をして、それで環境に着目した商品を開発して 短期間で大きな売上げを出した。
 このエコファンド、社会的責任投資というファンドと同じ考え方は女性のエンパワーメ ントにも活用できるのではないか。そもそも諸外国でも女性はマイノリティを平等に雇 用しているかとか、そういうような観点からの事業もあるわけだし、日本でも女性エン パワーメントファンドを立ち上げたいというふうに言っておられたのですが、ただ、現在 の段階ではなかなか証券会社に持ち込んでも商品化はすぐには無理だというふうに 言われて若干苦労をしていると言っておられました。ただ、この社会的責任投資という のを日本で成功させたという意味では非常に先駆的な方で、賞もいただいているとい う話であります。 それからもう一つは働き方でも配慮されておりまして、柔軟な雇用 形態を社内で実現している。週3日だけ働くだとか、男性の方でも残業をしない形で働 いてもらっている方ですとか、在勤勤務をどうぞどうぞというような形で認めているだと か、そういう形での働き方の柔軟性を採用しています。
 この3つが比較的面白い例かと思います。そのほかにも、後ろの方に新聞記事を付 けております。最初の例が、ポジティブアクションを日本で取り入れておられる企業を 幾つか紹介しておられます。資生堂さんですとか旭化成、松下電器の例が書かれて います。
 その一番上の欄を見ていただきますとメンターといいましょうか、旗振り役に役員を擁 している。社長や会長の強力なバックアップがある。彼らメンターの多くは海外勤務を 経て、女性の活力を目の当たりにしたというふうなことが書いてあります。
 それから、やはり女性が何ができるかという雑音を抑えるためには部課長以上の肩 書きである人でないと無理だというようなことが真ん中の辺りに書かれております。そ れで、そのメリット等について、この記事はいろいろな面から書かれております。
 それから次の新聞記事の2ページ目の方ですが、これは女性の活躍度に注目して 業績評価するというグッドバンカーさんと同じような視点の例が出ております。
 それから、グッドバンカーのところでもう一つ、さっきの資料の一番後ろでSRIで、こ れはオーダーメイドのエコファンドの例ですが、東京都の教職員互助会がそういう商品 を使っている。環境のほかに社会貢献だとか女性の雇用という観点からも銘柄を選ん でいるということです。これはスクリーニングと言っておられるようですけれども、そのス クリーニングの企業評価の指標というのをどうするかというのが問題になるわけです が、そういうことをやっている会社の例が今の新聞記事の2ページ目の例でございま す。
 3つ目が働きやすい企業に変身というインテルの例だとか、新聞記事の4つ目がイ トーヨーカ堂の例ですけれども、パートからも管理職の公募に応じることができる。全管 理職を立候補制にしたということで、新聞記事の5番目が社内の保育園が大企業にど んどんできている。日本郵船の例とマツダの例が出ております。あとは女性を顕彰す るという意味で放送ウーマン賞というのを受賞した方の例が出ていたりしております。
岩男会長
ありがとうございました。それでは自由討議に移りたいと思いますが、た だいまの課長からの御説明についても何か御質問がございましたら、どうぞ御自由に 御発言いただきたいと思います。
 ちょっと私から伺いたいんですけれども、この東京都の教職員組合が自主運用して いる先にSRIファンドを選んでやっているということですが、そこに銘柄を判断するとき の一つのメルクマールとして女性の雇用というのが入っていますけれども、実際にこれ でどんな銘柄が具体的に挙がってきているのか。単にそういうものも一応考慮したとい う程度なのか、実際にこれでちゃんと運用しているのかどうかですね。
村上課長
これはグッドバンカーさんがアドバイスして、これは一種のエコファンドだ と言っておられましたけれども、その中の項目の一つに入っている。それで、実際にど ういう企業が入っているかと私は聞いたんですが、リコーが入っているとか言っていま した。IBMも入っているかもしれませんけれども、全部聞いたわけではないので、それ なりの視点で選んでいるということです。さっき新聞記事に出ていましたところとも提携 しているというようなことも言っていました。
伊藤委員
たたき台だということですね。今日私はIBMの方の話を聞いて、あるい は「ゆい」の話を聞いて思ったんですけれども、やはり目に見える形での情報提供みた いなものがどうしても必要なんだろうと思うんです。
 IBMの場合は本当に具体的にいろいろな方を交流させながらエンパワーメントしてい くという形でした。我々がやれることというのは例えば企業研修とか、あるいは起業活 動の情報提供のためのビデオを作ることなどが考えられる。例えばIBMの動きをこうい う形である企業はやっていますよということを他の企業に研修という形で提供するよう なビデオの作成です。「ゆい」の活動などでも報告書よりビジュアルで見せていただい て、どういう形で給料を同一価値労働同一賃金の原則でやっているのか、経営をどう いう形でやっていくのかみたいなことは、それこそ起業したいという人たちに一つのモ デルとして提供していただくような形にしたらどうか。こうした啓発の工夫で女性のチャ レンジも活性化するんじゃないかと思ったりもします。
 対象をIBMに限ってしますとこれは偏りがあって問題があるので、複数の企業を示し ながら、例えばこんな形で企業におけるポジティブアクションの方法があるんだ、やり 方があるんだということをビジュアルで見せるような工夫も要るのではないか。それは 同じように起業についてもいえることだと思います。もう一つ韓国などでは今、急激に 進んでいるらしいんですけれども、女性の起業活動に対する融資の問題ですね。これ は、きちんとチェックして将来の可能性まで含めて判断した上で、融資する。そのため にはきちんとした組織が必要になってくるのかもしれませんが。この景気の悪いときで 財政事情の悪いときでどうするんだということになるかもしれませんけれども、韓国で はここ数年急激にそれを進めていてかなり成功しているという話を聞いております。日 本の場合は特に女性の業を起こす活動に対する融資活動というのは幾つかの自治体 でやっていますけれども、まだまだ不十分です。その辺のことも考えていただきたいと 思います。
岩男会長
最初の点は、前から伊藤委員が広報活動ということを盛んにおっしゃっ ていた必要性のお話だと思います。それから、2番目の融資の話も、例えば女性に投 資すると非常に堅いから、こんなに確実に不良債権にならないんですよというような目 に見えるような数字が出てくると説得力を持つんだと思うんです。やはり女性に投資す るといいんですよというようなことを言っただけではなかなか……。
伊藤委員
さっき申し上げたように、韓国の場合は比較的女性対象の融資が成功し ていて、事例としてもかなり挙がっているみたいです。ほかの国はどうなっているか知 りませんけれども、そういう事例を調査してまとめるということも必要なんじゃないかと 思います。女性の起業は融資対象として手堅いというふうに大体一般に思われている ようですけれども、本当にそうなのかどうか裏付けがないと確かに提案しにくいと思い ます。
住田委員
タウンミーティングでどこかの県に行ったときにその話が出まして、女性 に対する融資というのは非常に不良債権率が低いと、私はじかに聞いています。そう いうような調査をすれば、どこかからは出てくるのではないかなという気はします。
 また、ここのどこにもあてはまる話だと思うんですけれども、固定的な役割分担意識 があることによる、いろいろな問題があり、それに対するチャレンジ支援をやっていただ きたい、先ほどのIBMの方のお話でも、やはり女性特有の業務、職種にしか進出して いない。横にいかなくてはならないと思いますので。職場において、お役所でも女性の 多い部署と少ないところとあります。大体総務、企画という根幹部分について女性が 少ないと言われていますので、その辺りに広がるようなものにしていただきたいと思っ ています。
岩男会長
最初のときにも、垂直的なチャレンジだけではなくて水平的なチャレンジ をということがありましたね。ですから、そういうのは最初のスタンスを書くところにきち んと出さなければいけないと思います。
住田委員
やはり理系に女子学生が進まないということですが、理系というのは何 となく女性にとっては苦手である、そして一方、女の子は算数ができなくても構わない んだみたいなところもあり、それが小さなときから知らず知らず醸成されていってしまっ ているんじゃないかと思います。職業に向けた教育ということも、啓発に関する取組の 一環としてどこかで入れていただければと思います。
坂東局長
IBMさんはちゃんとやっていらっしゃるんですけれども、行政では特にそ ういうのは考えられないんですか。
上杉審議官
今は科学技術の理解の普及という観点から、例えば弾薬の研究所と か、あるいは国立の研究機関で先ほどのような泊込みでの中高生の勉強会というよう なものが大分取組が進み始めているところです。先ほどのようなことは大変ありがたい 取組で、もっともっと増やしていきたいところです。
岩男会長
今、育ち盛りというか、伸び盛りの人たちに対するそういった支援という のも必要だと思いますし、それから実は今、文部科学省の方で21世紀センター・オブ・ エクセレンス、COEプログラムというのをやっておられて、私はその委員をしているん ですけれども、それに実は私は女性と外国人教員の採用比率というのを大学の実績 評価に入れる提案をしたんですけれども、全員から無視されました。つまり、そういうこ とを進めている大学にお金を出すという実績評価の指標に使ってほしいと書いたんで すけれども。
 ですから、委員じゃない方からも是非声を出していただきたいと思います。まさにダイ バーシティなんですね。
山口委員
先ほど私は「ゆい」の活動を聞いていまして、これだとどれに入るのか。 もちろんチャレンジの中なんだけれども、地域活性化の促進なのか、あるいは市場でも 競争力を発揮するというと、これはちょっとなじまないんじゃないかと思うんです。それ で、これからNPOとか、そういうものをもっと社会的に支援しようということで、その分野 というのは新しいので、女性が中心になってそこをチャレンジするというのは非常に開 拓していく分野だと思うんです。そうなると、一体その位置付けはどこに入ってくるんだ ろうか。むしろそういう言葉もどこかに入った方がいいんじゃないかと思うんです。単に 働き方の見直しとか、こころにはくくれない。やはりNPO、そうすると今後の方向性と いうのか、どこかにやはり私はNPOという分野、これは日本の社会全体に欠けている ことだから、それは私はひとつ位置付けた方がいいんじゃないかと思います。
岩男会長
それから、アメリカなどにあって日本にないものはいわゆるカタリストみた いな団体で、企業で、では女性を採りましょう、こういう人材を採りたいというときにリス トを持っていて、そこへ推薦していくというNPOが必要なんだろうと思うんです。
 それから、実はこの間ちょっとある企業の方から、男性の経験を積んだ方でいろいろ な事情で企業を早く辞めた方を迎えると、すぐ「個室と車と秘書は?」とおっしゃるとい うわけです。ところが、女性の重役ですと自分で地下鉄に乗ってくるというわけです。で すから、その辺りを少しきちんと説明して、いかに女性はお買い得というか、とにかく男性をああいう形で雇っていたら企業はつぶれちゃうとおっしゃるんです。今はそういう時 代じゃないのにメンタリティが全然変わっていないと。
伊藤委員
今おっしゃったカタリストの話というのは入れる必要がある課題ですね。 コーディネートしてつないでいくという女性のチャレンジの仕方ですね。
住田委員
こういう場ですと、通常は企業とか男性とかに意識を変えてくださいとい うのがまず第一に出てくると思うんですが、今日IBMさんにお尋ねしたかったのは、女性側の問題です。これを一度きちんと抜き出して、それについてはやはり意識啓発、 教育という面で私たち自身も考えておかなくてはいけないものがあると思います。
 女性の参画を妨げている要因としては総合的職務遂行能力というところが出ていま すが、この中で意識というものが非常に大きな割合を実は占めているのではないかな という気がしているんです。よく女性とお話をしていて思うんですけれども、高学歴女性 ほど専業主婦願望が強い。それで、高学歴女性で一流企業に入ったブランド志向な方 ほど結婚して幸せな家庭をつくるということに対してものすごく大きな意義を認めておら れて、一生懸命頑張っていい企業に入った方は割とすぽっと辞めてしまう。これははっ きり言って役所も同じだと思っておりまして、それは同じ女性から見て非常に歯がゆい 気がいたしております。それはもちろん多様な生き方を認めるという美名の下ではそれ も認めなければいけないんですけれども、全体的な底上げのときに非常に惜しい人材 を失っているなという気がしてならないので、そこら辺の問題点を一度きちんと整理し ておいていただいたらと思います。
古橋委員
そのことを私は言いたかったんです。個人の期待することがここに書いて いないということです。政府、都道府県、企業ということだけではなくて、一番問題なの は女性の意識がないといけません。チャレンジと言ったときの大前提です。そこのとこ ろはやはりきちんと言っておく必要があるのではないでしょうか。
岩男会長
それに関連して、やはり定着率をIBMさんでは目に見える目標に掲げて おられる。採用だけではだめなんですよね。定着率を高めていくということが大事だろう と思います。
竹信委員
意識の問題は、恐らく個人に身近な形で情報提供をする仕組みが非常 に少ないということに私は関係があるんじゃないかと思うんです。いつもメディアの問題 とか、いろいろな問題になりますけれども、出てくる情報というのは、いいところの女の 子は早く結婚してとか、それからいい男をつかまえてみたいな、今時はもう違います が、でもそれは随分長く続いてきたというのがあるわけです。いろいろな意味で本当に 考え違いをしていると思うことがいまだにたくさんあって、こんなに状況が変わってし まったのに何も浸透していないということがあちこちで見られる。
 それからもう一つはカタリストという、どこにだれがいるかを提供するのももちろん大事 だけれども、職業訓練でどういうふうにすれば自分がそちらにいけるのかとか、そう いったものは機関に入ればその機関に言えばいいわけだけれども、女の人は機関に 入っていないとか、フリーの人がすごく多いとか、それから仕事もずっと一つの会社に いられないとか、問題がすごく多い。あと主婦が多いとかですね。ですから、やはり私 は地域とかそういったところで職業訓練ないしはそのときにちゃんと仕事関連の情報 提供をするようなNPOでもいいし、そういった機関が地域にやはり1つみたいな形であ るといいなと思うので、それをどういう形で組むかというのは私も個人的に考えていると ころです。
古橋委員
それはNPOなり、民間にやらせた方がいいですね。
竹信委員
会社もノウハウはあるんですけれども、やはりそこは自分のところが人材 を売るのにいいという方にやはり偏ってしまうところもあるので、一概にそこだけにも任 せられない。むしろそういうところをだれかが情報を持っていて、あなたはこれが欲しい のならばリクルートに行けとか、あなたはこれが欲しいならばハローワークに行けと か、振れるようなものがきっといいんだろうと思うんです。
伊藤委員
先ほどの意識の問題なんですけれども、IBMの話を聞いていて思ったの ですが、やはりある種のジェンダー意識の問題があると思います。やはり一歩引いて みたいなトレーニングの中である種の成功不安、つまり女性は前に出たらいけないん だというような自己規制みたいなものが女性たちの一部にはあると思うんです。だか ら、遂行能力の不足というよりも、ある種のジェンダーによる縛りみたいなものを問題に する必要があると思います。
 私はIBMが成功したのは、ロールモデルの呈示が女性の成功不安というようなもの を、目に見えた形で払拭していったというプロセスがあったと思う。意識のかなり細か いところまで入っていって、それをどうやって解消するのかということも、女性の参画を 妨げる要因を考えるときには分析しなければいけないのではないかと思います。先ほ どのIBMの例というのはそういう意味でもわかりやすい例かなと思います。目の前に アメリカのエグゼクティブがいる。それは女性が成功してもいいんだということを目に見 える形で示すということですよね。それがなかったというのも1つの大きな阻害要因 だったのかなと思います。
松田委員
私が一番印象的だったのは小中校生のリクリーティングから始めるとい う長期的なことで今、日本に一番必要じゃないかと思うんですね。短日月にこれだけの IBMが果たしたような成果を日本の全企業がやるなどというのはとても現実、考えら れないことです。やはり先ほどの話にもありましたけれども、IBMがやったことはアメリ カの小学校にコンピュータを寄附して全部使わせるわけです。将来IBMを買ってくれる ということもあるでしょうけれども、何よりも情報へのアクセスを小中学校のレベルから させる。それともう一つ、母校訪問というプログラムをNHKでやっていますけれども、あ れを見ていると余り女性の人が来てやらないですね。要するに、見本を見せるというこ とが余り、見本がないのかどうかわかりませんけれども、あれは一つの例ですが、そ のレベルからの意識改革をやっていくと。
伊藤委員
女性の科学者というのは、マリー・キュリーがきっかけになって科学に 入っていくというパターンが結構ある。ある種のロールモデルがあるかどうかというの はすごく大きいわけですね。
岩男会長
確かに情報がというのは非常に大事なことで、ちょっと宣伝になりますけ れども、実はIBMさんの中高生のキャンプにも本を差し上げたのですが、『科学する心 少年少女のための科学者への道』という本をつくっておりまして、これは女性だけで はなくて、男性で女性を非常に盛り立てた人たちも一緒に入れて14人の科学者を紹介 して、英文でも出しております。
 これには実は皇后様からお金をいただいているのですね。皇后陛下が非常に心配さ れて、日本の女性科学者が少ないというようなこと、それから男の子も科学離れが進 んでいるということで、その御寄附を基にしてつくったというものです。
山口委員
私は、昨日監視・苦情処理専門調査会で役所の参画、登用の方を聞い ていて今日IBMさんとか「ゆい」さんのお話を聞いていまして、やはり違うなと。企業は 目標があって非常に戦略が明快だというか、まだケースとしては少ないし、これがどう いうふうに広がっていくかということなんですが、やはり私はIBMくらいの気概がないと この国は変わらないなという感じが非常にするんですね。ですから、そういうモデルはI BMさんだってそうでしょうし、それを知らせていかなければならないと思うんです。
 ネットワーク不足、ロールモデル不足と言うけれども、実際に女性が進出していない んだから女性から得ることは無理なんですよ。先ほど松田先生がNHKの課外授業の ことをおっしゃったけれども、確かに女性は少ないですよ。指揮者の松尾葉子さんなん かも出てこられるけれども、モデルは少ない。問題はあそこに男の子も女の子も一緒 に対等に教える。普段踊ったことがない男の子を一緒に対等に扱うということが私はい いと思うんですね。ですから、私は不足だからと嘆いてはいられない。女性たちにとっ てネットワーク、ロールモデル、男性の人たちの中だってすごくいい人たちはいるの で、それは私は大いに活用したらいいと思うんですね。現実がそうだから、私はそんな ふうに思います。もっとそういう例を入れて知らせていくということは、大いにこことして は強調していいのではないかと思います。
住田委員
ロールモデルの不足のことですが、今、山口委員がおっしゃったように、 まさに進出していなかったわけなのですけれども、今の若い、特にいいお嬢さんのロー ルモデルはいいお母さんなんですね。専業主婦であるお母さんなんです。そのお母さ んの発言権が非常に大きい。
 今ちょっと話は飛びましたけれども、女性にとってのロールモデルの不足というのは、 具体的には歴史から出てきたものなので、そこら辺をきちんと認識していくことが必要 でしょう。第一陣の頑張った女性ははっきり言って結婚しないで子どもをつくらなかっ た。それは今の欲張りな女性たちにとっては非常に物足りなくて、ロールモデルには なり得ないんです。総合職の1期生、2期生がほとんど脱落したのは、やはりそういう ところが背景にあるのだろうと思いますので、ロールモデルがないのはなぜかというこ とまできちんとやっておかないと、いつまでたってもないないでいってしまいそうな気が します。
古橋委員
今、山口さんが公務部門におけるチャレンジのことで言われましたので、 昨日ずっとヒアリングした中で、環境庁で川口さんが長官をやっておられるときに、この ロールモデルに関係して、環境庁は歴史が浅く、上の方に女性の管理者がいないか ら、そのためにはやはりよその庁から、あるいはよそのどこからか連れてくるということ を女性公務員の登用方針の中に彼女自身が書き込んだんですよ。さらに、よそから連 れてくるときに、いい人を連れてこなければいけませんよということまでちゃんと書いて ある。私はそのときに、確かに彼女は男女共同参画について相当考えているなという 気持ちがいたしました。
 役所の場合について女性の昇進を考えるときにも、いい女性の管理職を多方面から 連れてくるためにはどういう人がいいか、やはりその情報の問題を相当考慮しなけれ ばいけないということを提言の中に入れようかなと思っておりますので、御参考まで に。
 IBMの場合は中に人材がいるからいいけれども、役所の場合は今、自分の役所の 中だけではつかまらないわけですから、よい人材をどうやって引っこ抜いてくるかという ところを工夫する必要があると思います。いろいろと民間との交流法であるとか、任期 付きの採用法とかいろいろな法律ができてきましたので、それをいかにしてうまく活用 し、その人材を確保するかということが、このチャレンジについて非常に大きな問題だと 思います。
岩男会長
ここに女性の総合的職務遂行能力の不足ということが書かれているわ けですけれども、これをいかに克服するか。そうしないと、まずいい人というか、こういう ことができる人。
古橋委員
まずそれを目指す人。いい人がいるんだから、我々もできるんだと思わ せなければいけませんね。意識改革です。
山口委員
この妨げている要因の中には、男性中心の職場カルチャーというのがあ りますが、また同時に女性中心の職場カルチャーという考え方も一つあると思うんで す。女性は企画するとか参画するというか、その時期に辞めてしまうということが多い んですね。そこをどう超えていくかということは私はとても大事だと思うんです。だから、 男性中心の職場カルチャーと女性というのを比較してここで書き込んでいく必要がある と思います。立案するとか、企画するとか、その面白さを知らないでいる女性たち。
古橋委員
役所の場合で問題になったのは、やはりそういう企画立案能力を発揮す る課長補佐の段階で一番訓練するわけですね。そのときにはまさに女性は結婚し、出 産する時期になってしまうのでそこで辞めていく。だから、企画とかそういうことを立案 する能力を養うチャンスがない。そういうチャンスのある人というのは結婚しなかった り、子どもを生まなかったり、子どもは生んでも御両親が苦労しているとか、大変苦労 しています。総合的職務遂行能力が不足と書いてあるけれども、それに対する対応策 というものをどういうふうに考えるか。民間の場合ですと、それは随分仕事の内容が標 準化したり、Eワークや何かでできるのかもしれませんけれども、役所の場合はなかな かそれがうまくいかない。だから、具体的な職務遂行能力の不足というものを解消する 方策を具体的に考えないといけないと思うんです。
竹信委員
それは職場によると思うんですけれども、トレーニングの方法そのものが 従来型のものはOJTでとにかく頑張ってついてこいみたいな形で長い時間引っ張るん ですよね。だから、これとこれとこれを習得してくれみたいなことがもう少しきちんとでき ていると、そんなに長いこといなくても身に付くのに、徒弟的にそこにいてしょっちゅう見 ていろとか、支店長とか課長のそばにいて見ていないと覚えられないみたいなトレーニ ングでは絶対子育てなんかしながらできないと言ってもいいぐらいで、まずそのトレー ニングの方法の分析もどこかでやらなくちゃいけないのかもしれないんです。
古橋委員
能力基準というものをちゃんと客観的に書いて、それに対するトレーニン グの仕方なんでしょうね。
住田委員
そういうのを聞いて思いますのは、高学歴の女性がだんなさんの外国転 勤に付いてリチャレンジとして留学して、その後外資系の企業に入って、そこで大きな 経験を習得されて日本に戻ってきたときに割合大きなところのポストにつかれるという ような例です。外国では、割と大きなレンジで、社会人になってもう一回一から勉強し 直して、そこから出発できて十分対応できるというようなものがある人です。日本もそう いう意味では人材の流動化を考えるのであればそういうふうな長いレンジでもう一回 新規巻き直しができるような形での人事の在り方というのが是非考えられたらいいの ではないかと思います。
古橋委員
それは能力評価なんでしょうね。職務に期待される能力はこれですよと いうことを客観的にもっと明らかにして、オープンにして、それに耐えられる人はどんど ん来てください。そして公募制であるとか、そういうふうなシステムをつくっていくことが 必要です。
竹信委員
それがないとリクルートもできなくて、フォルクス・ワーゲンなどの例で、 理科系の女子学生を捜しに大学院とかに行って幹部候補生としてその人に、あなた来 ないと言って連れて来るみたいなことをしているんです。 でも、そのあなた来ないとい うときにどういう要件が要るかという当面のあれがないとやはりできないんだと思うん です。
岩男会長
そうですね。ですから、さっき古橋委員がいい人を連れてこなくてはと おっしゃったけれども、そのいい人の判断が透明にきちんと客観的にできなければだ めだと思うんです。
古橋委員
今度の新しい公務員制度改革の中では能力給にするんですけれども、 その能力の階層をずっと書いて、その各々について能力の基準を書くということになっ ているんですが、これは私はなかなか公務員の場合は難しいなと。だけど、来年中に 公務員法を改正するものですから、なかなか大変だと思うんです。きっとまた民間の 方々のいろいろなお知恵を拝借しながらやると思うんですけれども、この職務について この能力が要りますよということを客観化するということだと思います。それについて は、役所についての目標というものを毎年決めて、それに基づいて各部局ごとの目標 水準を決めて、それを個人まで分けて、あなたは今年はこれまでやりますよということ を決めて、最後にそれについて終わってから上司と協議をして自分の自己採点もして やっていくということの評価方法を考えているんですけれども、なかかこれは難しい。し かし、そういうふうになれば女性の能力発揮にはいいと思います。
住田委員
全く違う観点からで、今のはかなりトップのお話しなんですが、実は女性 の一番多いパート労働者のいろいろな意味での水準を上げていくというときには、有給 が取れるだとか昇進していくというような一つのルートができ上がっていかないとうそだ と思うんです。
 そのときに、実を言うと女性同士の足の引っ張り合いというのがすごくありまして、同 じ主婦の仲間で一緒に入ったときに、彼女だけが職階とか職位が上がっていくことに 対してほかの女性は非常にあれで、そういう仲間内の雰囲気を壊すんだったら私も上 がりませんという形で、常に常に補助職だけで女性はみんな手をつないで甘んじてし まうというようなところがすごくあると思うんです。だから、そういう辺りでもどんどん上 がっていくようなシステムが当たり前になっていけば、パート労働者もよりちゃんとした 法律の支援制度を持っていけるんじゃないかという気はしています。
伊藤委員
今の話とも絡むんですけれども、夫の海外赴任で一緒に付いていった女性がどこでエンパワーメントしているのか。例えば語学ができるようになった、あるいは その土地の女性の活躍を見た、あるいは学校に通って力を付けた。どの辺で力をつけ て帰ってこられるんでしょうね。
 いろいろなコンビネーションがあるんでしょうが。それもやはり考えなければいけない 部分じゃないかと思う。日本の女性が特にアメリカに行って帰ってくるとエンパワーメン トされてるというケースがかなりある。それは文化に触れる中で得ている部分が大き い。だから具体的に目に見えるかどうかがすごく大きいと申し上げたのはそのことで あって、どこでどんな風にこうした女性たちがエンパワーメントしているのかというのは きちんと考える必要があるんじゃないかという気がしています。
住田委員
外国の場合は、MBA一つ取ることによってきちんとした就職の道があり ますね。
伊藤委員
資格の問題もありますね。でも、資格を取らなくても一緒に付いて行って 帰ってきたら元気になって、私は働くみたいな形の方というのも結構おられるんですよ ね。もちろん資格の問題も含めてなんですけれども。
古橋委員
資格の問題は、私のかつての職場で女性がいっぱいいるところでやはり どれかを上げようと思うとやっかみがあってできなくなったときに、私はその職務につい ての試験というものを、例えば年金なんですけれども、年金について1級、2級、3級と いう試験をつくって独自に実施して、受かった人は上げますよという形にして上げて いったんです。だから、女性のチャレンジをするときにある程度そういうものをつくって いって、その資格の内容をオープン化していくということが非常に重要だということは言 えると思います。
伊藤委員
女の人がチャレンジしてもいいんだという、それが理解できるかどうかと いうのが最初の一歩なんじゃないか。それを阻害している要因が日本の社会にはある んじゃないか。
古橋委員
IBMの場合は極めてプロフェッショナルで、ほとんどみんな大体同じなの かもしれませんけれども、そういう場合に資格というのはどういうふうに考えておられる んでしょうか。
渡辺理事
基本的には私どもも例えば何年かたったら主任になるとか、何年かたっ たら課長になるという、どちらかというと年功序列に近いです。というのは、設立が65年 前なんですね。外資系企業といえども、かなり日本の体質を引きずっているという現状 があります。これではやはりいけないということで、基本的には先ほどおっしゃったよう な資格試験みたいなものを内部で新たに導入しています。それで、その試験に通れば 何年たたないとこのレベルになれないという話ではなくて、その試験に通ればその実 力があるということで、お客様のところでもそういう仕事ができるんだという認定をして 対応するということをやっています。それはまだ10年ぐらいの前の話ですが、そういうこ とで今はやっています。
 先ほどちょっとロールモデルの話がありましたけれども、IBMには確かにあったんで すが、本当に外国のトップレベルの人を連れてくるという活動を始めたのは私たちがこ のJWCという活動を始めてからのことであって、まだ本当に4、5年前の話なんです ね。それまでは、そういうロールモデルがこの会社にいるということをみんな知らなかっ たわけです。
 それで、とても古い話になりますけれども、私も最初にこの会社に入ってエンジニアと して頑張っていこうというふうに考えて、子どもを生むという話になったときに上司に相 談しました。だれかそういう事例があったらいろいろ相談したいので紹介してほしいと。 そうしたら、そういう人はいませんというふうにやはり言われたんですね。それで、いな いからだめだという話ではなくて、私はそのときに、では自分がそのパイオニアになろ うというふうに思ったんです。それで、今は女性を集めていろいろなフォーラムをやって いるのも、だったらもう辞めようとかという発想じゃなくて、では自分がパイオニアになろ うというくらいの意識をみんなに持ってもらいたいということでセミナーで動機付けした いということをやっているというのが現状です。
岩男会長
どうもありがとうございました。それでは、これで本日の会合をおしまいに させていただきます。

(以上)