男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年3月8日(金) 16:00~18:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者東京大学教授
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 女性のチャレンジ支援策」に関する検討の進め方について 
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
「女性のチャレンジ支援策」に関する検討の進め方(案) [PDF形式:7KB] 別ウインドウで開きます
資料2
第5回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
ただいまから男女共同参画会議・基本問題専門調査会の第8回会合を開催させていただきます。皆様大変 お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは、お手元の議事次第に従いまして本日の審議を進めてまいりたいと思います。前回の男女共同参画会議で官 房長官の方から、女性のチャレンジ支援に関する検討の進め方を次回の男女共同参画会議で御報告をするようにという 御指示がございました。今回は、事務局の方で会議に報告する資料の案を資料1として用意していただいております。事 務局より、説明をお願いいたします。
村上推進課長
まず資料1をごらんいただければと存じます。これは今、会長からお話がございましたように、官房長 官の御指示で、次回の男女共同参画会議で女性のチャレンジ支援策に関する検討の進め方を報告をし、了解を得る必 要がございますので、その了解を得るに当たって作成しました案でございます。
 まず「検討方針」ですが、これはチャレンジ支援について基本的考え方、視点を整理しまして、現状を把握分析した上で 取組を浸透させるための方策を総合的に検討するということを書いてあります。
 「検討の視点」ですが、2つ目の丸で、女性がさまざまな分野にチャレンジすることは男性に対しても新しい発想や個性 に接する機会を与え、かつ活力をもたらすものである。また、男性に社会生活におけるゆとりをもたらす契機となり、女性 のみならず男性にとっても有意義であるということを書いています。
 3番目では内容と申しましょうか、女性が政策・方針決定過程に参画して主導的立場を担っていくことを目指す「上」への 垂直型チャレンジと共に、女性の能力を活用し、新たな分野に活躍の場を広げる「横」への水平型のチャレンジも検討す るということの両方が含まれているということを明示いたしております。
 検討の内容としましては3番目でございますが、基本的な考え方、視点の整理、それからさまざまな分野における女性 の参画の現状を把握し、参画を妨げている要因の分析、前回はボトルネックという言葉でお話がございましたが、そういう 要因を分析する。女性のチャレンジ支援に関する好事例がございますが、それはボトルネックを解消していく工夫でもあ ろうかと存じます。その辺を集めて、女性のチャレンジ支援策について提言をしていくということです。
 それから検討の今後のスケジュールですが、4月から9月にかけまして今の作業を進め、9月に予定されております男 女共同参画会議に中間的に報告するということを考えております。それから、10月以降年度末にかけて更に検討して提 言を取りまとめるということでいかがでしょうか。
 具体的な「考えられる検討分野」について事務局で検討した内容を紹介しますと、まず経済分野におけるチャレンジ支 援であります。企業の中における女性のチャレンジ支援、チャレンジを可能にする方策というのを書いてありますが、これ は厚生労働省でも企業におけるポジティブアクションの促進というのが大きな取組としてなされているわけでございますけ れども、これを更に充実して取り組んでいくということで、企業の中での女性のチャレンジが可能になる企業の仕組みづく り、具体的には社内公募を行って意欲のある人を募るとか、パートタイム労働者が正社員に転換できたり、あるいは短時 間の正社員制度を導入するとか、柔軟な働き方をもっともっと認めていくべきではないかだとか、両立支援はもちろん、働 き続けていく上で非常に重要ですし、それから女性がきちんとチャレンジして成果を上げていくことが報いられる賃金や処 遇制度が必要であるとか、いろいろな議論があるわけであります。
 それで、女性の参画に積極的に取り組んでいる優良企業は幾つかございますので、それをどのように奨励していくか、 行政からの表彰というのもあれば、企業や団体からそれをサポートするというような取組もあろう。それから、企業の中だ けではなくて起業の方の支援も必要ではないか。それから、IT分野というような新たな分野における女性の支援。それか ら、再就職の支援といいますのは一度正社員で入っても辞めてしまいますと、今度また同じような形での処遇を得るのが 非常に難しいということがあり、再就職の支援も大きな課題である。それから、女子学生・女子生徒への支援ですが、これ は労働市場に入る前の段階においても進路選択で職業を見据えた形、将来のキャリア形成を見据えた形での支援という のがあっていいのではないか。
 それから、国際社会におけるチャレンジ支援ですが、これは国際機関や国際協力の場で女性がもっと上のポジションと いうようなこと。
 それから、各種団体や地域社会におけるチャレンジ支援ですが、各種団体、これは労働組合や弁護士会等いろいろな 団体がありますが、その辺への働きかけ。それから自治会、町内会における参画の促進など。
 公的分野におきましては、特殊法人やその他の公的機関における女性の採用・登用に関する取組の促進。それから、 公契約等の際に男女共同参画状況の報告を求めることや、女性国家公務員あるいは地方公務員の採用・登用における 取組の促進。
 それから、研究分野におけるチャレンジ支援。高等教育機関や研究機関における女性教員・研究者の採用・登用にお ける取組の促進や、女性の進出が少ない分野における女性研究者への支援など。
 農林水産分野におけるチャレンジ支援、これは農協の役員などや、食と農の部分での起業支援というようなこともある。
 それから、各分野共通の問題として税制、社会保障制度の在り方、働き方の見直し、それから仕事と家庭の両立支援、 それから効果的な意識啓発の在り方、研修や能力開発の在り方や公正な評価の在り方というようなことがあげられま す。どの分野を重点的に取り上げるか、あるいは各分野でもどの項目に力を入れて議論をしていくか。どういうところから ヒアリングを行うか、あるいは情報収集するかということを考えていく必要がございますので、プライオリティを是非御議論 いただければと存じます。以上が私からの説明でございます。
岩男会長
ありがとうございました。
 それでは、意見交換を行いたいと思います。資料1ですが、ちょっと気になりましたのは、2の「検討の視点」の2つ目の 丸の2行目のところで「男性に対しても新しい発想や個性に接する機会を与え」と、私は機会と活力をもたらすものぐらい でいいので、「与え」は余り好ましくないんじゃないかということです。
 それから、最初の丸で「男女が共に個性と能力を十分に発揮できる社会の構築に向け」という形になっておりますが、こ のとおりではあるんですけれども、男性、とりわけ女性が個性と能力を十分に発揮できていないことを踏まえてこういうこと をするんですと言った方がめり張りがきくのではないかなという気がいたしました。
坂東局長
今の社会が個性と能力を十分に発揮できないというのは、女性だけではなくて男性にとってもということで、 男性、取り分け女性にとっても個性と能力ということですね。男性も個性と能力が十分発揮されているかということが問題 です。
岩男会長
十分発揮できていないんですね。この表題が「女性のチャレンジ支援策」となっておりますので、やはりそち らへ引き付けた形で書かなければいけないかなということだけなんですけれども。
山口委員
今、岩男会長が言われたとおり「検討の視点」のところで、文言の訂正は全くそのとおりだと思うのですが、 むしろその組替えとしては男性にとっても云々というところがございますね。それは最後じゃないんですか。1つ目の丸は これでいいですね。2つ目の丸が一番最後のところであって、そして3番目が結果としてこうだという視点じゃないんです か。男性に対してもというのはどうでしょうか。まず女性に障害となっているものが多いので、なかなかそれを発揮する チャンスがない。それで、上にねらうだけではなくて幅広い層を集めよう。結局そのことが男性にとってもこうだという展開 が素直ではないかなという感じが読んでいていたしました。
八代会長代理
これを最初に読んだときに、男性と女性というふうに大ざっぱに分けること自体に違和感を感じました。 それは、選択的別氏制の問題でもそうでしたが、男女共に賛成している層と男女共に反対している層が年齢別に分かれ ている。若い男性もやはりチャレンジ機会が十分になくて中高年のエスタブリッシュした層があらゆる層をブロックしている わけです。ですから、女性だけでなく、男性に対しても新しい発想や個性が必要という言い方ができないか。むしろ私は若 年男性、または引退後の高齢者の男性も、ある意味で多くの女性とかなり利害を共通にしているわけで、つまり画一的な 制度の犠牲者であるわけなんです。
 ですから、もっと社会制度が弾力化していく、または再チャレンジできるような敗者復活戦みたいな機会がどんどん広が れば女性にとってもプラスだし、そういう男性の一部にとってもプラスだしというような視点がちょっとここからは出てこな い。男性対女性の利害の対立でいくと誤解されるのもどうなのかなという印象を前から持っていた次第です。
山口委員
八代先生の御説明はわかるんですが、やはり大きな男女共同参画社会の前提としては、女性の置かれた 状況を改善していかないと本当の共同参画社会にならないというのは皆さん共通の理解だと思うんです。それで、今の八 代先生のおっしゃることも確かですが、やはり女性の状況は悪過ぎるんです。ですから、女性の状況をよくしていくことに よって結果としてそうなるという、この考え方はやはり基調ではないかと思います。
住田委員
女性に対してのチャレンジというときには、現在主婦でいらっしゃる方、子育てや何かをしておられる方が再 度高齢化社会の中で是非その力を発揮していただきたいという思いを込めまして、再挑戦、リチャレンジ、「リ」を入れてい ただく、そういう発想をどこかに加えていただきたいと思っております。リチャレンジとかリエントリー、再参入とか、今後、日 本はいっそう高齢化社会となっていくのですから一つ失敗してもまた次の新たな挑戦をすることができるような、そういう 息の長い世界であってというような方向性が出せればいいなという気はしております。
八代会長代理
山口さんのおっしゃった点がまさにポイントだと思うのは、暗黙のうちに山口委員は今の制度はそのま まにしておいてというか、あるいは変えるのが非常に難しいので、女性を男性と同じようにすることを第1の目標とすべき だというお考えじゃないかと思います。私はそれももちろんできる範囲はそれでいいと思うんですけれども、基本的に無理 な点があるのでむしろ今の制度自体を変えていく。
 例えば、なぜ今、女性がチャレンジを十分できないかというと、今の制度は基本的に官庁でも会社でも長期勤続を前提 としていて長い間、働き、年を取らなければ偉くならない仕組みである。ところが、女性はどうしても長く働くことが不利な短 期勤続型である。だからチャレンジが十分できないという問題意識なのです。
 ですから、そのときに女性も男性と同じように長く働けるようにして対等にすべきだという考え方は当然一つありますが、 もう一つは長く働かなくても良い仕事ができるようにチャレンジできるような仕組みに変えていけば、自然とそれは女性に とっても有利になってくる。逆に言うと、女性のためだけの政策を打ち出すのか、構造改革していくとそれが自然と女性に とってもプラスになるということも、この広い意味の女性のチャレンジ支援策に入れるかどうかというのはかなり大きな分 かれ目で、そこで随分選択肢が変わってくると思います。ですから、その点を是非意識してこの最初の女性のチャレンジ 支援というのを議論する必要があるのではないかと思います。
山口委員
昨年の8月に小泉総理に女性団体としてお目にかかりましたときに私は確認をいたしました。総理がおっ しゃっている構造改革には男女共同参画が入っていますねと言ったら、そうだとおっしゃっているんです。そうしますと今、 八代先生の言われたとおり、構造改革の部分は当然ある。私はそれをお聞きしているのではなくて、先ほど言ったような 伝統的な慣習があって女性が上にいかれない、そういうことを直していかなきゃならない。それはやはりあるシステムをつ くらなきゃならないということ、それは私は全く同じ考え方です。
岩男会長
ここで鮮明なスタンスとして明らかにしなければいけないことは、これまでやってきたある意味では延長線上 で更に進めていこうというニュアンスを強く出すか、それとも全く新しく構造改革をしなければ私たちが考えているような社 会は実現しないというニュアンスを強く出すかということだろうと思うんです。
高橋委員
私も八代さんがおっしゃったことに基本的には賛成なんですが、それをどういうふうに組み込むかというとき に、真正面から女性だけではなくて男性も含めた形でいくのか。それとも、ここは特に女性のチャレンジというのを中心に 考えるとすれば、女性のチャレンジを考えていくと構造改革にぶつからざるを得ないんだと。女性がなぜ出世できないかと いうことを考えれば、八代さんがおっしゃったように、結局は現在のシステムがそうなっているところに突き当たるわけで、 そこのところを改善すれば自動的に女性だけではなくて男性にとってもよい社会になるんだという、この丸のところで言え ば丸の真ん中の2つ目ですね。そこの中に織り込んでとらえていくということも可能かなと。
松田委員
みんなの問題であると。だれでも若いときがあり、年を取るという意味で、国全体を巻き込んだ形で国の変 革を今、迫られているという問題提起という意味ではそのとおりだと思うんですが、私はやはりここはその第1ステップとし て今、高橋先生がおっしゃったように女性の参画を妨げている要因は同時に若い人、高齢者とハンディキャップを持って いる人の参画を妨げているという方がわかりやすいのではないかと思うんです。
 しかし、何度も言うようにそれによって男と女という対立構造を頭につくるのではなくて、それが全体の社会の構造変革 をもたらすということで、八代先生が言われる点をどこかで強調しておくということは必要だろうと思いますけれども。
伊藤委員
今までの議論は全くそのとおりだと思うんです。
 ただ、基本的な考え方だとか視点の整理というところに少子高齢社会の問題がくるわけですから、八代委員がおっしゃっ たように、今後、労働におけるある種のフレキシビリティは求められざるを得ない。変化の中で女性のチャレンジをどうす るかを考えなければならない。例えば労働環境の問題であるとか、両立支援の問題であるとか、そういう話は基本的な考 え方の中にきちんと盛り込んでいく必要がある。
 我々が今回諮問を受けているテーマは女性のチャレンジ支援です。そこに重点を置くことは前提です。しかし、同時に、 今まで議論されたように、構造改革がなければ女性のチャレンジが進まないのも明らかです。その意味で、構造変革とい う問題についても、基本的な考え方とか視点の整理の中ではっきり打ち出すという形でまとめていったらいいんじゃないか と思います。
竹信委員
ほとんど賛成なんですが、構造改革をするには女性のチャレンジ支援が不可欠ということだとやはり思うん です。どこから手を付けるかということだと思うんです。ですからみんな矛盾しなくて、やはり女性のチャレンジ支援なしで はということが必要かなと私は思います。
樋口委員
小泉総理流の言い方で言えば、「女性のチャレンジ支援なくして構造改革なし」ということをもっと言葉として はっきり言ったらいいと思います。少子高齢化ということは、既に人生の構造改革はもう終わってしまっているというか、完 全に終わると言ったら言い過ぎですけれども、目に見えてきているのに、にもかかわらず社会のシステムがそれに追いつ くようになっていない。今ようやく動き出したところなので、先ほど住田委員のおっしゃったリチャレンジということも含めて、 実は男と女とは違うところが多々ある反面、長い一生の中での生き方というものが少子高齢の中で接近してくる部分もま たあるわけですね。ですから、その事実と意義の格差を埋める有力な方策として女性のチャレンジ、これは山口委員が おっしゃったように現状が余りにも低過ぎるということがありますから、チャレンジ支援をしていくと同時に、それによってぐ るっと回転しながら構造改革を進めていくということだと思います。私はこれは人生の構造改革であり、暮らしの構造改革 だと思っています。ただ、余りそれを最初に出し過ぎてしまうと総理のおっしゃった、女が元気になれば男も元気になり、社 会も元気になるという、このわかりやすい言葉が引っ込んではいけない。やはり女性のチャレンジ支援を具体的な政策と してここでは出していっていいと思いますが、ただ、理屈を言えばそういうことなんじゃないでしょうか。女性のチャレンジ支 援なくして構造改革なしということでやっていただけたらと思っています。
岩男委員
順番としては2番目の丸をむしろ3番目に持っていって、そこに高橋委員がおっしゃったように、構造改革の 話をきちんと入れて、皆さんの御意見は全く矛盾していなくて同じことですね。
住田委員
私も全く矛盾していないと思っておりますが、先ほど御意見を聞いたときに男女共同参画社会基本法のとき に、少子高齢化の進展、国内経済活動の政治化等、我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも必要だ という一文を入れるかどうかで全く同じ議論をした記憶がございまして、やはりこれは今の男女共同参画の政策を進める 上でのいわゆる追い風であることは間違いないし、また必要性という意味でいくと本当に必須の状況になってきているとい うような追い風でありますので、私は矛盾しないと思います。
山口委員
今、基本法の話が出て、これは言っておかなければいけないなと思ったのですが、要するに社会の変動で 女性が必要になってきたという考え方を前面にしないで、男女の人権が守られ、取り分け女性の基本的人権の保障に よって女性が差別的状況に置かれちゃいけないという、まずそれを置いてください。その次に社会の変化と、ここだけはき ちんと押さえておかないと、またいろいろな変化があって女性が要らないようになっては困るんですね。前提はまず人権と いうことがあるということだけは申し上げておきます。
古橋委員
それは1つは政治的必要性というもので、基本的理念に掲げたことはそういうことでしょう。しかし、更にそれ の緊急性ということはそれに掲げられた少子高齢化ですが、政治的必要性というのはもうちょっとレンジが長いんです。 近代化社会になってからずっと人権の尊重が主張されてきました。しかし、これだって社会的変化です。しかし、そういう長 期の政治的なものは基本法では人権の尊重ということで理念に掲げました。更に変化への対応を早めるということの緊 急性というのが経済的な理由でございますということで私どもは理解したのですが、女性の方々に大変しかられました。
 私は実現するときにはやはり経済的論理というものは政治的なそういう問題の裏にあってやはり貫徹するんじゃないか という気がしておりますけれども、人権ということを正面に出すということで、結構です。
岩男会長
実は事務局の方に私は既に本日の検討も踏まえて、参画会議でかなり具体的に御説明ができるようにして ほしいというふうにお願いをしてあります。ただ、この「検討の視点」で今それぞれ大変重要な御指摘がございましたので、 できるだけそれをうまく織り込むようにしてつくり変えたいと思っておりますけれども、余り長くなることもちょっとできません ものですから、これはあくまでも視点ということですので、大事なポイントは明快に述べるというようなことで御了承いただ ければと思います。
 それでは、次に移らせていただきたいと思います。次は、検討の具体的な進め方ということですけれども、その辺りでも いろいろと御議論があると思いますので、是非お願いします。
坂東局長
今年の9月ぐらいまでに、実際に基本問題専門調査会を開催できるのは5回ぐらいということになります。で すから、そのときに今もお話が出ましたように、具体的なインパクトのある提案ができる分野をピックアップしないといけな いなと考えております。ここで御議論いただいたことが議論で終わらないで、是非例えば法律改正とか、あるいはある程 度の拘束力を持ったようなものにも影響を与えられるような事項として何か可能なんだろうかという観点で是非選んでい ただきたいと思います。
古橋委員
今後の進め方で、これから5回議論をしていくときに、やはりこの中で優先順位を考える必要があるんじゃな いでしょうか。したがって、経済分野におけるチャレンジ支援というのは非常に大きい問題だと思いますし、それから各種 団体、地域社会におけるチャレンジ支援と農林水産業分野におけるチャレンジ支援というのは同じような地域社会の問題 とし一緒にしてやることが良いと思います。
 それから、公的分野とか国際社会におけるチャレンジというのは私どもの監視専門調査会の方でやっておりますので、 これはある程度任せていただきたいし、研究分野におけるチャレンジ支援はいろいろやっておりますが、まだ当面これを やることまでいかないんじゃないか。ただ、各分野共通の課題ということの中で働き方の見直し、研修や能力開発の在り 方、評価の在り方で、評価の在り方は経済分野におけるチャレンジ支援とか、研究分野におけるチャレンジ支援と両方に 関わる非常に重要な問題ですのでその中でやっていただきたいし、働き方の見直しとか研修や能力開発の在り方、評価 の在り方というのはまさに経済分野におけることだから、そこで大いに議論をしてそこの中でやってしまうということの方が いいんじゃないかと思います。それで、それをある程度具体的な考え方、現代における情報化社会あるいは国際化の中 における能力評価というようなことは非常に重要なことでございますので、八代委員に大いにそこのところを検討していた だいて、みんなで議論をするということが必要なんじゃないか。
 やはりこの中で重点的な問題をまずつかんで、5回の中でどういうふうにするかということを決めていただくことが非常に 重要なんじゃないかという気がいたします。
伊藤委員
テーマとして啓発というテーマ、あるいは教育というテーマは必要ないのかという気がします。意識啓発の問 題として、偏見の除去とか男性の意識改革がある。と同時に、女性のエンパワーメントを強調する必要があるのではない か。現状を否定的に扱うよりも、前向きにチャレンジというイメージを出せるような方向性というのが必要なんじゃないかと 思うからです。
 先ほども申し上げたように、この委員会は、基本理念や基本的な方向性を議論する場所です。今、古橋委員がおっ しゃったように別の専門調査会でやっている領域もあるわけです。バッティングしないようにしていかなければいけないと は思うんですけれども、今、申し上げたように、意識の問題であるとか、エンパワーメントの問題であるとか、そういうもの をどこで議論するかをはっきりさせる必要はないのかなという気がします。
古橋委員
意識の問題はまさに経済分野におけるチャレンジ支援と地域社会におけるチャレンジ支援の両方に関わっ てきますから、そのどちらかの方でその意識改革の問題を特にやったらいいんじゃないか。特にエンパワーメントの問題 というのは地域社会にけおける女性センターの問題であるとか、女性センターをどうやってネットワーク化して意識改革を 図っていくかということになりますと、まさに地域社会における女性のエンパワーメントということになってまいります。
 あとは、この意識改革の方で必要なのは、経済分野におけるチャレンジ支援は男性の意識改革がここでは非常に重要 になってくるということだと思います。
松田委員
前回議論された公契約にポジティブアクションを条件づけるというのは今、省庁の契約、入札の問題という のは大変大きくクローズアップされております。ご承知のようにアメリカでは、大統領令11246号というのがあって、こうし たことが広く行われております。日本の法律ですと予決令と言うのですが、要するに予算決算及び会計令という命令の72 条に、政府が契約を締結するときに経営の規模その他の状況等を入札資格に入れるべきということがあるわけですね。 それで、経営の状況という中に今のような政策的な視点を入れるかどうかについては財務省は慎重なんですね。
 要するに、契約という私的な営為と、政策という公的なものを混同せしむるわけにはいかぬということなんだそうですが、 学会では余り支持されていなくて、やはり国の契約行為の中に政策的な観点を条件として打ち出すことは必要ではない か。その点から言うと、地方自治法にも執行令の157条に同じ地方の市長の権限、それから今の予決令の方は各省庁の 権限として契約、入札参加条件、要件を付けることの中にそういうものを加えることが認められておりますから、現在の法 令の中でも十分に可能なわけでありまして、その点について少しここで検討する。それで、先ほど来おっしゃっておられた 横に広げるという意味から言うと、例えば建設業についても資格のある人間、女性をそういういろいろな業種、職種に入れ ていくというようなポジティブアクションプログラムを策定することを入札要件にするということは十分に可能ですし、アメリ カでは一般に行われていることですね。それを契機に今まで女性が進出していなかった分野へ進出していくという、それを 契機にして社内における、あるいは社外における職業訓練であるとか、教育であるとか、啓発とかがそれをきっかけに広 がっていくという意味で、何か一つ入れていく必要があるんじゃないかと思っております。
伊藤委員
つまり、議論の中に、現行法との関係をどう考えるかという問題や、可能ならば新しい法律の提案みたいな ものも含めながら、議論することも必要になるということですね。
岩男会長
今のお話ですと、予決令72条というところで読めるというふうに法改正をしなくても大丈夫だという御意見で すね。
松田委員
はい、最後の経営の規模、状況等の「等」というところに入るわけです。
樋口委員
やはり経済分野ということは最重点課題だと思っております。それで今、大統領令のお話が出ましたけれど も、国と同時並行あるいは国の基本法ができてから各都道府県、自治体で条例制定が進んでおります。実は国と同時並 行で当時、私が東京都の協議会の会長をしておりました。そのときは本当に労働問題中心に切り込んで、アメリカがやっ たようなことはできないまでも、受注のときに企業の女性職員の状況を書き込むということぐらいまではという議論が出さ れました。「報告書」は大幅に後退いたしましたけれども、それにしてもある程度雇用の分野が書き込まれた条例になった と思います。その後の各都道府県の条例は余り見ていないんですけれども、東京都が書いたこと以上にこの部分にも少 し書いている条例がどこかあったような気がしましたけれども。
 それと、起業についての耳学問ですが、アメリカは女性の起業を支援する法律ができておりますそうで、なかなかよくで きた法律のようです。
岩男会長
先ほどから出ております公契約の問題というのは、経済の方に移して議論すればいいと思います。
坂東局長
ちなみに今、福間町という町の基本条例の中で、事業者が町と工事請負などの契約を希望し業者登録をす る場合は、男女共同参画の推進状況を届け出なければならないと、義務付けではなくて届出というのがあります。これは 福岡県だったと思います。
樋口委員
そういう自治体の動きなどもあるわけですから、やはり国がそれこそ支援するような報告書にしていただけ ればと思っております。
岩男会長
その福間町の状況というのをちょっと調べていただいて、御報告いただければと思います。
竹信委員
そこは取材に行っていますので、今この場でも御報告ができます。現地まで行って調べておりますので、必 要なときにおっしゃっていただければと思います。
高橋委員
日本の先ほど予決令でやれるんじゃないかという発言がありましたが、そういった点をきちんと少し考えなけ ればいけないので、法律ではどういうのが使えそうだとかということまで含めてちょっと整理していただけると、その上でつ まり法律なしでポジティブアクションがどこまでできるかというのは憲法上、非常に難しい問題だと思うんです。だから、現 行法上どういう規定が根拠になりそうであるとかということまで含めて、少し事務局の方で法令の状況を調べていただけ るとありがたいと思います。
岩男会長
あるいは高橋先生に御協力いただかないといけないのではないかと思いますけれども。
竹信委員
そのときに多分問題になるのは、平等のための指標というのは一体何なのかというのが男女の平等につい ては確立していないということが私の取材でもいつも問題になってくるんですね。障害者の場合は障害者雇用、法定雇用 率がありますので、客観的にこの何%というのは入れられるんだそうですが、男女平等というものをもし指標化した場合 には何が平等かの客観的なものがないので、それをつくっていかないといけないというのを各自治体みんな気にしてい て、それがないために福間町は届出制までしかできなかったということなんです。それは入札の条件には入れられない、 ただ見るだけですということなので、それはどこかで研究をしなくちゃいけない一つの課題だと思います。
 それから、ついでなのでこれ以外のことで、チャレンジの中に2つ私はあると思っていて、これは多分働き方のところに 入ってくると思うんですが、日本IBMとか、そういった非常に先進的で生産性を上げる方向で女性を活用すると言ってい る企業と、それからそういうところにかかれないというか、入っていけないような人たちというのは結構女性の中にもいるん ですね。さっきの再挑戦の話に関わるんですけれども、長い間家庭にいて、そんなにぎゅっと詰めて短い時間で働いて早 く帰って子どもを見てみたいなことができるようなところまでいっていない。だけど、働きたいし、夫がリストラになったら困 ると。そのときにNPOなどで、違った働き方としてスローワークとかでゆっくり働く方式というのがあって、働き方の検討で チャレンジというと何となくすごく詰めて働くというイメージしかないので、2通り用意しておくことが必要なので、そういう研 究もここでやるかどうかは別として頭の隅に入れておいた方がいいかなと私は思っています。
岩男会長
そうですね。特急列車で走らなくちゃいけないようなニュアンスですからね。
寺尾委員
今のまさに構造改革との関係で、多様な働き方を可能とする良いチャンスの時にきているのではないでしょ うか。これまでの終身雇用で長時間労働という日本的な働き方、あるいは雇用の在り方というのが大分いろいろなところ で崩れてきつつあります。日本がグローバライゼーションの中で生き残っていくためにはいろいろな意味で競争にさらされ てそういう方向になっていますね。それで、ワークシェアリングというのはどちらかというと悲しい話として出てきているわけ ですけれども、今の日本の追い詰められた状況の中で悲しい話としての構造改革が出てきていろいろ動いているんです けれども、女性の能力活用が今のピンチをチャンスとしていく上で重要であることを明確にし(総理のご発言の趣旨なわ けですし)、そうした視点から、そこに女性政策としてどうしてもここは押さえてほしいということをキチンと発信していかなけ ればいけないだろうと思うんです。ただ、女性を活用したらどうかという総論を言うのではなく、全体としての進むべき方向 を示した上で、各論的なところを具体的におさえていくということが必要です。例えば、評価の問題があります。長期間働い てくれた人を評価することだけやってきて、ある意味ではその人の時間当たりのパフォーマンスを評価するシステムはな かったわけですよね。それを評価する方向を出していくことが必要なはずです。終身雇用制を前提に、組織の中だけで通 用するような人事評価を通して人の能力や働きを評価するようなやり方は、社会全体の産業構造の再編成が必要な時 代を迎えたいま、必要な変化の大きな阻害要因になっています。人の働きの量や能力の質を、客観的な形で評価できる ようなシステムを構築し、労働市場の流動性を高めることが急務になっているわけです。こうしたことが可能となれば、多 様な働き方も可能となり、また、能力ややる気のある女性たちの進出や再挑戦の機会も増えていくはずです。つまり、人 の働く能力をきちんと評価し、適材適所を社会全体の中で、労働市場の流動性を高めることで実現していくことは、なによ りの「女性のチャレンジ支援」でもあり、男性も含めたわが国全体の利益にもなるはずなのです。限られたパイをどう切り 分けて、それを奪い合うのではなく、パイ自体を大きくしていく発想が必要です。この変化への要請に対応できなければ、 パイ自信が縮小してしまうという瀬戸際にあるのが今の状態です。そこで、そうした公平で客観性のある人事評価、人の 能力の評価を実践しているような企業があるのであればそれを発掘し、大いに世の中に広めていくことが必要でしょう。
岩男会長
そういうことも含めて、八代委員からいつか時間を取ってヒアリングをお願いをするというようなことで。
松田委員
ポジティブアクションプログラムの女性の参画の基準ということで、一つの考え方としてアメリカで使われて いるのは例えば今の建設業者の場合には、その労働市場における有資格の女性の比率を用いる。そういうことになると、 その地域に資格を取る女性が増えてくるわけです。要するに、現状だけを固定的に考えるのではなくて、それによって資 格を持ってそういう職業分野に進出していく気を起こさせる。そこに行けば結構いいチャンスがあると。これは目標設定で すから逆差別にもならないし、違憲、違法の問題は起こらないというように言われておりますので、地域における労働市 場の有資格者の比率というのは一つの考え方としてあり得るのかなと思います。
八代会長代理
ボトルネックはどこかというのが実に大事であって、なぜ今、女性がチャレンジできないかという要因分 析なしにいきなり政策に結び付けようとすると、とかくいかに遅れている企業を進めるか、あるいは意識啓発とかという対 企業政策だけになってしまうのですね。私はそれも大事だと思うけれども、より大事なのは対政府政策であって、それは 実は影響調査専門調査会の方でやっておられるのですが、明確な指針をこの調査会としても出す必要があるのではな いかと思います。
 具体例としては、標準世帯モデルというのがどこの政策にもあるんです。例えば、公的年金でも医療改革でも今の標準 世帯というのは夫が奥さんを扶養するということを依然として抱えているわけで、それが今、変わろうとしている。それか ら、税制の配偶者控除でもやはりその標準世帯モデルというのは片働き世帯の要素をもっている。これを例えば、この男 女共同参画会議の方から、その標準世帯モデルを個人単位に変えてもらいたい。つまり、要するに男女の働き方に中立 な仕組みというのは、やはり個人単位の世帯ではないでしょうかというようなことを一つ入れることで随分変わると思うん です。それがボトルネックの1つです。
 それから2番目のボトルネックは、多様な働き方を規制している。これは規制緩和、規制改革の問題であって、私は規制 改革会議のメンバーでもあるのですが、そこはとにかく正社員、非正社員を問わず、多様な働き方を対等に認めましょうと 言っている。この働き方はよくて、この働き方は悪い、悪い働き方を規制するというのが今の労働法の中にかなりあるの ですが、そういう変え方を撤廃すべきではないか。少なくとも労使が自由に選べるようにすべきではないかということで す。
 3番目に、長時間労働をなぜ企業が評価するかということについては、企業のマインドであると同時に、例えば裁量労働 制というような働き方があって、時間と切り離した働き方というのを企業がとろうとすると、これをまた規制されているわけ です。特定の管理職とか、研究開発分野の人以外は裁量労働制を適用してはいけないという規制がある。これも労使に 任せたらいいでしょうというようなものもある意味で間接的かもしれませんが、企業が過度に長い時間働くということを評 価する、あるいは賃金というものを時間と常にリンクさせて働くというような仕組みを強制していることになるわけです。
 ですから、大事なのは、対企業政策と同時に政府自身が過去の日本の働き方である夫が働き、妻が家事、子育てに専 念する家庭が多かったから当然それを標準モデルにしたわけですけれども、それをいまだに引きずっているということが、 実は男女共同参画を妨げている非常に大きなボトルネックになっているということを、この会議として提言できれば非常に 進むのではないかと思っております。
竹信委員
最近の女性労働運動という分野ではかなり労働者の働き方が大きいターゲットになっていて、特にパート労 働をやっている人たちにとってはものすごい大テーマで、これがかなり今、広がりつつあるんです。
 例えば、勤続が悪いというよりは、私は高拘束、つまり転勤をしなければだめとか、残業しなければ認めないとか、そちら の方がパート労働などはかなり重要な問題になっていて、長く働き続けるのは本当は安心だからいいんだけれども、高拘 束しなければだめなのだということが嫌だとか、かなり複雑になっているんですね。ですから、そこはいろいろな意見が確 かにあるので、そこのパート労働の部分をもう少し意見を聞くとか、そこが重要なタームだと思います。
寺尾委員
男性が長時間労働と終身雇用制を中心にした労働慣行がまずあって、そこへ女性が入っていく時、男のよ うな働き方をしないと正社員になれない。これが男女の賃金格差の大きな要因の一つです。この構造を変えていくことは、 男性達にとっても、日本経済全体にとっても、悪くない。むしろ今必要とされていることではないでしょうか。一方で女性達 がかかえている問題をキチンと拾い出し、分析した上で、構造改革の本流の流れの中に、全体の問題として投げ込んで いくということが必要だと思います。女性の問題を、女性だけの問題、女性政策の課題として把握し主張する(これも大変 大切ですが)だけでなく、社会全体の変化、今議論され改革が実現されつつある政策論議の中に、経済構造全体に通用 する「表現」「言語」に置き換えて発信していく、言わば翻訳者的作業が重要だと思います。
岩男会長
こういう方からヒアリングをという御提案がございましたら、それも含めて御発言いただければと思います。
竹信委員
ゆっくり働くケースで言うと、女の人が短く働いてたくさん稼げる。それから、長く働いて少ししか稼がなくても いいという人と、そういう実態に合った労務管理をやっているNPOとかがありますので、先ほどのスローワーク系のをもし 聞いていただけるのでしたら呼んでいただけると面白いと思います。
山口委員
マツダがアメリカの社長を迎え入れて、女性を500人係長に採用したという新聞が出ておりましたね。ですか ら、ああいうところはそういうふうに管理職に限りなく近づけて採用した結果がどうなのか、それが労働意欲をかき立てて いるのか、どういう役割をしているのか。これは、要するに日本人の社長ではできないことをおやりになったと思うので、こ れは私は一度聞いてみる必要があると思うんです。
伊藤委員
多様な働き方ということを考えるとき、これは同一価値労働同一賃金の問題とも関わるのでしょうけれど、労 働の評価について考える必要がある。公正な評価を可能にするにはどうしたらいいかということが前提にならざるを得な い。ただ、新聞記事なんですけれども、たしか連合が去年ぐらいからパート部会を始めている。それが、今年はすごく盛況 になっているということです。労働の場でのパートの位置づけについての見方もすでに変わり始めている。その辺のところ もきちんと押さえる必要があるのではないかなと思います。
 あとは、女性のチャレンジの具体例として、ベネッセとか、IBMとか、その辺が大企業だと出てくるのかなと思ったりもしま す。
住田委員
労働問題のことになると本当に今いろいろ外資を始めとした動きがあって、評価できるものがたくさんあると 思いますけれども、現実の日本の大企業の在り方というのは、この間の野村證券のコース別人事のように、大企業のあ あいうものがあります。それがどういうふうに変わるかということについて全く今、展望が見えない。総合職の1期生、2期 生がどんどん脱落して辞めてしまって、結局女性は使えないというような変な前歴だけができてしまったということなんで す。
 それで今、逆にスローワーク系がいい、女性も積極的にそれを選択しているとおっしゃいました。確かにそれはそうなん ですけれども、逆に言うと女性を非正規でしかもう採用してもらえないという一種の就職差別がやはり厳然としてあるわけ なんです。そういう厳しい現実というものを一応はきちんと聞いておかないと、余りきれいな話ばかりやっても通りが悪いの ではないかなという気がしてならないんです。
 ただ、一言、言わせていただければ、女性を活用している企業は伸びていますし、そういうような旧来の終身雇用の男性優位の会社というのは正直なところ、今は衰退してきているなと私は個人的には思っているのですけれども。
伊藤委員
そういうデータがありますよね。
住田委員
そうなんです。女性を活用しているところは伸びていると白書にも出ているんです。それを実証的に是非ど こかで出していただければと思います。
寺尾委員
それをパンフレットの見やすいものに入れて配って歩くというわけにはいかないのでしょうか。
坂東局長
直接は関係ありませんけれども、ソーシャル・リスポンスブル・インベストメントというふうな形で、社会がそう いう女性にきちんとチャンスを与えているとか、環境の分野ですとか、きちんとした社会的責任を果たしている企業の方が 成長率が高いと。要するに株価が上がっているということで、そのファンドにお金を集めるというビジネスをやっている人 はいます。
住田委員
国民生活白書か何かで、女性企業を活用しているところについては非常に伸びているというようなデータが 一つ出たことがあったわけです。何年か前の国生局のときの白書だったと思います。
山口委員
参画に積極的に取り組む企業に対する奨励、顕彰の問題なんですが、これは樋口さんと一緒に東京都の 女性問題協議会でも積極的に女性を登用したところには顕彰、奨励しようというような話だったんです。
 しかし、どうなんでしょう。そんなことを企業が喜ぶだろうかということが1つあります。やったことによって自分たちの企業 にとってプラスになれば考えられる。したがって、この奨励の中身がもう少し具体的な形で税制の問題だとかいろいろなこ とになると思いますが、これもあちらこちらで出ていましたが、これはちょっと検討する必要があるなという感じがします。
 それから、農林水産分野も大企業の労使関係だけでなくて大きな経済活動だと思うんです。そう考えますと、実はこの 農林水産省の方で食料農業基本法でしたか、あれができたときに局長通達で女性を積極的に登用したところには補助金 などを出すという方策があって、私はこれは非常に具体的で興味のある問題と思ったんです。だから、むしろ農林水産省 にそういうことをやることによってどのぐらいその効果が出ているのかを聞きたいし、もしそうだったならばやはり私は農水 省の政策は非常に興味があり、面白いと思っているので、そういう意味で企業に対する奨励というのもひとつ考えていか なければいけないなと思います。
岩男会長
今、山口委員がおっしゃったことで、前に樋口さんが会長をされた両立支援のときにファミリーフレンドリーの 企業を顕彰するということがありました。しかし、やはり聞いてみますと、税制で優遇してもらうといったような目に見えるよ うなことでないと、むしろ喜ばないというようなお声も聞きました。
伊藤委員
ある自治体の例ですけれども、両立支援みたいな話でシンポジウムをやって、そのときにファミリーフレンド リー企業の表彰をやったんですね。その後でシンポジウムをやったんですが、表彰された企業に対して、お宅からパネリ ストを出してくださいと言うと、うちはちょっと困りますと言うんです。企業の構え方の問題だと思うんですけれども、むしろ そんなものを受けたら企業経営者としてちょっと問題ありだと思ってしまうような企業意識の状況がある。これが、残念な がら現実だと思います。
古橋委員
2、3関係して申し上げますけれども、今、山口委員が言われた農林水産におけるチャレンジ支援ということ は一度農林省から話を聞いていただくといいんですけれども、家族経営協定をやったところがいかにその農家の奥さんが 一生懸命になって生き生きして、全体としての経営がいかに上がったかという事例を結構持っていると思いますから、それ を見ていただく。
 2番目に私が申し上げたいのは、この間、公契約の際に男女共同参画状況の報告を求めると。報告を求めることまでは いいのですけれども、ではそれに基づいてどうするんだというときの基準が難しいというお話が竹信さんから出て、私も前 からそういう気がしております。それと同じように、奨励するときもその基準が業種によって、化粧品会社の場合はある程 度やさしい。例えば、女性の役員における割合は多いに決まっているわけですよね。だから、そういう基準というものの客 観化をするときにどういうふうにしたらいいか。そして、それを普遍化するときにどういう考え方でやったらいいかということ を考えないと、この奨励とか表彰というときには公平という見地からはなかなか問題になってくるのではないか。プラスの 場合とマイナスの場合において問題になってくるのではないか。
 それから、能力評価につきましては、民間でも最近は情報化社会あるいは国際化における金融とか証券の場合におい ては能力評価について非常にいろいろな基準をつくっているところがありまして、私は公務員制度調査会でも八代さんと一 緒に各方面の方々から聞いたことがありますので、そういうところのものを一度よく聞いていただく。
松下副大臣
先ほど山口先生のおっしゃった農林水産省の取組は、私が政務次官をしているときにつくったものです。 是非ヒアリングしてもらいたのですけれども、いろいろな農業を振興するために各地域に委員会だとか検討会だとか、ある いは農協の理事の中に女性が入っているとか、それから家族農業の契約をして女性のちゃんとしたポジションを与えてあ げるというようなことを進めているのですけれども、そういうのが地域ごとにどう進んでいるか。女性をどれだけ登用してい るかを確認して、そしてやはり頑張っているところと頑張っていないところに差を付けようと。ですから、新規事業を採用す るときにはそういうところから採用する。それから、採用した事業があったら本当は5年ぐらいかかるところは3年でできる ようにしよう。何もしていないところは5年のままとか、あるいはもう採用しないというように、そういう差を付けて頑張れとい うようなものをいろいろつくってあります。
岩男会長
ありがとうございました。
伊藤委員
今回たしか女性職員の採用拡大についても農水省はすごくまとまったものをつくっておられていた。農水省 の方から話を聞くのも必要かなと思います。
竹信委員
先ほど古橋さんが言ったのと私は同じことを言おうとしたので基本的にはあれで、税の控除とかをするの だったら本当に奨励や顕彰をどういう基準でやったのかをきちんとつくらないとできない。それで、ある県ではそれをやろう と思って提案が出たんですけれども、それがないのでできないということで戻ってしまったんですね。条例に入れられない ということになってしまったので、それはやはり先ほどのものと含めて、基準はある程度何がポイントなのかでつくった方 がいいということですね。
伊藤委員
農林水産業だけではなくて、いわゆる自営業、商工婦人と言われる方たちの条件というのも同じような課題 を抱えている。農水省関係は家族経営協定があるんですけれども、いわゆる自営業者の場合は何もないわけです。これ も、女性のチャレンジというときの一つの問題です。
高橋委員
奨励、顕彰よりは税制を考えた方がいいという点は私もそうではないかと思うんですけれども、単なる奨励 ということになりますと、もう一つのうまくいっている企業では参画が進んでいるというのとどうも整合しないのではないか。 つまり、参画が進めば企業がうまくいくのならば放っておいてもいいわけで、そうではないから奨励して何とかやってもらい たいということなんだろうと思います。
伊藤委員
ただ、ジェンダーというのはやはり経済外的なところがある。単純に経済合理主義の原理だけで動いている 問題ではないところが私は問題なのではないかと思いますが。
八代会長代理
日本の企業の内には、利益をまじめに追求していないのが多いです。それで、本来利益をきちんと追 求するならば能力主義で、男性であろうが、女性であろうが、能力のある人を登用すれば確実に利益は上がるのですけ れども、そうしていないのが問題ですね。うまくいっている企業は、単に自分の企業にとって最も合理的な方法をやろうとし たらたまたま女性を登用しているわけで、そういう企業はほかの面でも合理的なことをしているから利益を上げているわ けです。
高橋委員
税制とか社会保障で専業主婦が有利に扱われて、外で働いている女性が不利に扱われると言いますよ ね。その場合に私は専門から考えると、それは専業主婦を援助しているのか、それともそうではない男性と同じように働い ている女性を差別しているととらえるのか、どちらが実態なのかということです。つまり、憲法を考えるときにある行動を規 制するといいますか、邪魔する場合と、ある行動を奨励して援助する場合では全然考え方が違うというところがあるんで す。同じものをどちらから見るかということで難しいと思うんですけれども、そういう制度というのは一定の働くスタイルを奨 励しているものなのか、違うスタイルを阻止しているものととらえるべきか、どちらなのでしょうかということなんです。
八代会長代理
別に私は今の税制でも社会保険でも、特に意図して専業主婦世帯を保護しているとか、そういうことは ないと思います。
 ただ、それができたときにはそれが大部分の国民の働き方であったから、大部分の国民の働き方に合ったような制度を つくったにすぎない。それが社会の環境が変わってきたにもかかわらず前の制度のままになっているから、結果として固 定的な男女の役割分担型の世帯にとって優遇策になってしまっているということが大部分だと思います。
住田委員
基本法だと中立という考え方でいけるんですけれども、一方、社会的な法律になってきますと、どうしてもそ のときの政策の選択によってどれかに優位性が出てくるということになってしまいます。先ほども保護があるとおっしゃっ たんですが、実は専業主婦に対しては保護というだけではなくて、今度は逆に自分たちの働き方をある一定の線で押さえ てしまうという、逆に今や壁になって、障害になってしまっているということもいえます。全体的な流れとして、専業主婦が 多数派から少数派に今後はごくごく少数のリッチな専業主婦しか残らないというような状況になることが見えてきたときに はやはり不合理な制度になってしまいます。社会が変わることによって政策の優位性が変わってきているのだろうという ことは言えると思います。
 話を変えてよろしいですか。「仕事と子育て両立支援策」、樋口会長が最初に出された御提言で、この中で「両立ライフ へ職場改革」というのが1つ目のテーマだったんですけれども、その中には企業の評価、研修とか、両立支援制度の開発 に着手しできるだけ早く結果を公表するとか、非常にすばらしい御提言があったのですが、チャレンジ支援という中では、 やはりこの両立ライフというのが大事なのではないかと思います。これをフォローアップするという意味で基本問題専門 調査会で取り上げて何らかの形で先ほどの話とつながれば、より深みが出るのではないかという気がします。
寺尾委員
もう一つ、この委員会に適当な役割だと思うのが、意識改革の問題ですね。男性の意識改革、それから女性の意識改革の問題で、ポジティブアクションをやるといったときに女性が手を挙げないという問題もやはり残っているで しょうし、それから男性の意識改革が進まないためになかなかあの手この手とやっても動かないということもあるでしょう。 どうやってそこの部分を進めていくかということについてはほかのところがやってくれないので、やはりここでもう少し具体 的に考える必要があるのではないかと思います。先ほど女性の企業支援という話もありましたけれども、アメリカではそう いう法律もあるわけですが、もともと日本とアメリカで基本的に違っているのは、向こうでは第2のフェミニズムの波が起 こって、女性たちがどうにかしようとやっているわけです。日本の場合はそういうはっきりしたものがなくて、何となく何とな く変わってきているわけですね。
樋口委員
先ほどから気になっていたのですけれども、伊藤委員がおっしゃったことで意識改革の部分というのは職場 の風土の大問題です。やはり先ほどいみじくも言われましたように、ファミリーフレンドリー企業の表彰をされると恥ずかし いという気持ちがまだあるんです。
 私はあるとき労働組合の幹部と話していて、日本には常務クラスに女の人がいないという話になって、皆さんの上司に 女性の常務がいたらどう思いますかと何気なく質問したら、ぱっと返ってきたのが、恥ずかしいと思うでしょうねという言葉 でした。
 「恥ずかしい」の意味には、優秀な男が集まらないから、女をトップ近くに据えるような企業におまえは働いているのか と、まだそういう目が強いんです。恥ずかしいという言葉の対象を全く変えて、女性の上司がいなかったら恥ずかしいと言 えるような意識にどう変えていくかというと、その道のりの遠さにあ然としてしまうんです。
 チャレンジ支援というときにその意識の形成について、生涯を通した女性のチャレンジ支援という目で見ていくと幼い時 代、小学校とくに仕事を考え始める中学、高校生ぐらいからどういうふうに社会にチャレンジしていくか。特に職業を持っ て、ライフプランとキャリアプランを立てながらどう人生にチャレンジしていくか。まさにライフサイクルアプローチというん ですか、生涯を通した女性の支援というものをどうくみ上げられるか。
 長寿社会になれば男性もそうなのですけれども、女性はやはり一たん家庭に入ることが現実には多いわけですね。だ から、そこからリチャレンジというのか、そこからまた社会復帰していくプロセスでどういう支援があり得るか。そうすると男 も定年になってから、あるいは途中で適性がないと思ったときに、再チャレンジする、そういうノウハウを女たちが最初に 開拓しているということになるわけで、私は生涯を通してどういう支援があり得るか、あるいはそのときいろいろな分野の人 がいて、たとえば農村ではこう条件のもとこんなチャレンジ支援が予測できる、という、そういう見取り図を書いてみたいな という思いでいます。
伊藤委員
私も寺尾委員と樋口委員の御意見に賛成で、ここで意識改革という問題はかなりテーマとして考える必要 があるのではないか。読売新聞が何年か前にやった、女性の上司をどう思いますかという調査で、男性の会社員の56% か57%はやはり嫌だという答えをしていたというデータがあります。それは意識の問題ですけれども、広い意味での教育 という問題をどう考えるかということにつながってくるのだと思いますが、それは小学校から必要かなとも思ったりもしま す。女性が就業継続可能な仕組みをつくるというのはもちろん前提ですが、同時に今、樋口委員のおっしゃったように一 遍途絶えた方、これは男性もこれからもしかしたら途絶える方も出てくると思うのですけれども、ある種のリカレント型の 仕組みを就業の分野でどうつくっていくかということもかなり大きなテーマだと思います。
古橋委員
女性の上司が嫌だと言っても、女性に能力があれば私は今の経済においてはいいと思います。だから、や はり女性自身がそういう能力を持たなければいけない。しかし、その能力とは何ぞやと言うときに、客観的な評価が行わな ければいけない。グラスシーリングみたいなことになってはいけないので、その評価についての基準と、それが客観的に男性も認められるような評価であるならば、女性が上にきても、それは当然いいとなってくるので、能力評価については相当 議論しないといけないのではないか。
坂東局長
今、話が大変佳境に入っているところですけれども、そろそろ時間が少なくなってきましたので、経済分野の 方でいろいろな課題があるということは十分伺いました。それで、検討日程のことですけれども、経済分野だけは特別に2 回考えていくことでいかがか。その後、先ほど古橋先生からは、各種団体、地域社会と農林水産分野のこれをドッキング するのはよろしいということでしたが、公的分野あるいは国際社会研究分野、この分け方について御意見がありましたが、 ほかの先生方はいかがでしょうか。
古橋委員
分け方ではなくて順序です。やはり非常に関係するところが多いと思うところからまずやっていくことかと。
坂東局長
わかりました。では、こちらの団体や農林の方を3回目に行うと。経済の後はこちらの方へいって、その後、 国際分野、研究分野をやって、公的な分野の方は恐らく監視の方で公務員の後の方がよろしいのではないか。そうする と、その部分についてはもういいということになると思いますので。
岩男会長
それから、経済分野が非常に広い経済分野になっていますから、2回でできるかどうか、若干ずれ込む可 能性もあるのではないかと思います。
坂東局長
評価とか、あるいは働き方の見直しとかというところへどんどん入ってくる、あるいは公的契約も経済分野で 行うというふうなことになりますと、はみ出してくるかもしれませんね。
古橋委員
手続的なことで事務局にお願いしておきますけれども、先ほど公契約における予決算令と地方自治法施行 令の問題が出ましたけれども、地方自治法があり、地方自治法施行例によってある程度の解釈が出てきたときに、同じ会 計法の下における予決令で同じような解釈ができないというふうに財務省が言うのであるならば、同じ政令において地方 自治体と国の場合とどこが違うのか、法制局の意見を求めてください。
 ただ、予決令などは主管官庁の解釈によるというふうに言うかもしれませんけれども、しかし片方において同じような公 的経済においてそういう解釈がとれるときに予決令の方でとれないという理由があるのか。ただ、地方自治法施行例の方 の解釈の範囲も今はまだ品質とか、そういうことだけだというふうに言う人もいるし、もっと広く公害とか社会保障とか男女 共同参画まで入れろという議論といろいろ分かれていますから、そこら辺も含めて一度検討をしなければいけないし、そこ のところは技術的な法解釈の問題をよく詰めてください。どの程度言えるかというのは、それを見た上でやらないとなかな か言えないと思いますから。
岩男会長
それでは、大変お忙しい中を長時間ありがとうございました。これで終了させていただきます。

(以上)