男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会

  • 日時: 平成15年9月26日(金) 10:00~11:15
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 島野 会長
      原  会長代理
      奥山 委員
      戒能 委員
      垣見 委員
      北村 委員
      小谷 委員
      小西 委員
      住田 委員
      瀬地山委員
      林  委員
      前田  委員
      若林 委員
  2. 議事
  3. 議事内容
    島野会長
    ただいまから男女共同参画会議「女性に対する暴力に関する専門調査会」の第22回の会合を開催いたします。
    まず、内閣府の幹部の方々ですが、7月から8月にかけて人事異動がございました。名取局長からごあいさつをお願いいたします。
    藤澤推進課長
    8月5日付で男女共同参画局長となりました名取でございます。この中にはかねがねお世話になっている方も多々おられまして、大変うれしい 気持ちでございますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
    土肥原大臣官房審議官
    大臣官房審議官で男女共同参画担当の土肥原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    推進課長をしております久保でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    井上内閣府男女共同参画局配偶者間暴力対策調整官
    暴力担当の調整官の井上でございます。よろしくお願いいたします。
    島野会長
    それでは、議事に入る前に前回、5月30日の会合以降の動きについて御報告いたします。
    前回会合まで、「配偶者暴力防止法の施行状況等について」の検討を行ってまいりました。報告書は、委員の皆様の御了承を得まして、最終的な文言については、原会長代理と 相談しながら、私の方で決めさせていただきました。
    6月6日に、記者会見を行い、本専門調査会の報告書の公表をいたしました。
    7月4日には、参議院共生社会に関する調査会の配偶者暴力防止法の見直しに関するプロジェクトチームの会合において、本専門調査会からの意見聴取が行われました。原会 長代理、大津委員、戒能委員、前田委員にも御出席いただきました。「法の見直しに関する論点」について、私から御説明をし、プロジェクトチームの議員の方々からの保護命令の 対象の拡大等に関する質問に、各委員から説明をしていただきました。
    なお、南野座長からは、「本専門調査会の報告を、法律を見直しする上で参考にさせていただきたい。」とおっしゃっていただきました。
    それから、7月16日には、男女共同参画会議へ御報告いたました。
    以上が、前回会合以降の主な動きですが、最近の参議院における法律改正に向けた動きは、どのような状況になっておりますでしょうか。事務局から御説明をお願いいたしま す。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    それでは、お手元の資料1を御覧いただきたいと存じます。前回の専門調査会の会合以降の状況について御説明申し上げます。
    6月2日に第7回会合がございまして、「DV被害者の自立支援」について、支援団体代表の3名の方からのヒアリングがございました。
    また、7月4日に第9回会合が開催されまして、本専門調査会で取りまとめられました「法の見直しに関する論点」について、島野会長、原会長代理、大津先生、戒能先生、前田 先生から御説明をいただいたところでございます。
    更に7月9日、16日、23日、30日と、それぞれ会合が開催されまして、「保護命令の対象範囲の拡大・暴力の定義」ですとか、「保護命令の期間・手続等の制度の改善」、「被害者 の自立支援」について、関係省庁を交えた検討が行われております。
    また、9月16日に第14回の会合が開催されまして、DV被害者と支援団体の代表の方、計4名の方からヒアリングがございました。
    次回の会合は、現在のところ未定でございます。
    それから、法の見直しに関する意見書を机の上に置かせていただいておりますが、日本弁護士連合会、全日本自治団体労働組合(自治労)などから4件ほど挙がってきていると ころでございます。以上でございます。
    島野会長
    総理大臣あての要望書もございますが、法律改正に向けて、関係団体等から多くの要望が寄せられております。配偶者からの暴力に対し、社会的にも関心が高まっ ておりますので、より良い法律に改正されるよう見守っていきたいと思います。
    それでは、次に、内閣府の女性に対する暴力対策関係予算の平成15年度分及び平成16年度概算要求状況について、事務局から御説明をお願いいたします。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    それでは、資料の4をごらんいただければと存じます。
    まず初めに、平成15年度の私どもの女性に対する暴力対策関係予算について御説明申し上げます。平成15年度の予算額は合計で約4,100万円でございまして、1番目の「女性 に対する暴力に関する研究協議会経費」では、本年11月に実施される「女性に対する暴力をなくす運動」期間中に、シンポジウムを開催するとともに、ポスター、リーフレットを作 成、配布する予定でございます。
    また、2番目の「女性に対する暴力対策情報提供事業」では、内閣府ホームページの「女性に対する暴力」に関する提供情報を充実させる予定でございます。
    それから、3番目の「女性に対する暴力に関する調査等経費」でございますけれども、2つございまして、1つは、相談員等の支援者に関する実態調査をいたしまして、相談員な どの勤務体制などの実態把握を行う予定でございます。それからもう一つは、「配偶者からの暴力の加害者更生に関する研究会」を開催いたしまして、アメリカとカナダにおける調 査を通じまして、我が国の状況などを勘案しました加害者更生プログラム(案)の策定を目指しておるところでございます。
    それから、「(参考)」の中に「人材養成」という箇所がございます。その中で、支援センター担当者の研修も行っているところでございます。
    1枚めくっていただきまして、平成16年度の概算要求について、御説明申し上げます。
    平成16年度予算の概算要求額は合計で約5,000万円でございます。
    1つ目は、「女性に対する暴力対策情報提供機能充実経費」でございまして、内閣府のホームページ上での提供情報をより充実させるための経費でございます。
    2番目の「女性に対する暴力をなくす運動等啓発費」としまして、シンポジウムの開催、ポスター、リーフレットの作成・配布とともに、新たに、法改正をにらみまして配偶者暴力防 止法の広報用ポスターですとか、パンフレットを作成・配布するための経費を要求しているところでございます。
    3番目の「女性に対する暴力の防止に関する調査研究等経費」でございますけれども、本年度調査で開発いたします加害者更生プログラムを基にいたしまして、加害者向けと一 般向けのプログラムの調査研究を実施するための経費を要求しているところでございます。以上でございます。
    島野会長
    平成15年度の予算を執行するに当たって、例えば3番目の「相談員等の支援者に関する実態調査」などは、実際に終わりましたか。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    これから調査をいたします。
    島野会長
    新聞報道などで知ったわけですけれども、できればこの専門調査会の委員に、そのような具体的な事業の実施については情報提供していただきたいと思います。新 聞より前に知りたいというのが、率直な気持ちですが、予算について、そのほかに何か御意見ございませんか。
    それでは、議事に移らせていただきます。議事次第の2で「専門調査会の今後の進め方について」です。平成14年4月から12月にかけて、性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラス メント及びストーカー行為等と、各テーマについて検討を行ってまいりました。本年2月から配偶者暴力防止法の施行状況等について、急きょ検討を行うことになったために中断さ れていました女性に対する暴力全般についての検討は、本日の会合から再開となります。
    そこで、「専門調査会の今後の進め方について」ですが、委員の皆様へは、先日事務局から「専門調査会の今後の進め方(案)」と、「これまでの意見の整理」をお送りしたところ でございます。これらの詳細について、事務局から御説明をお願いいたします。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    それでは、資料の2をごらんいただければと存じます。「女性に対する暴力についての今後の課題」に関する検討につきましては、本年 12月に開催される会合をめどに報告書を取りまとめられるという予定でございましたけれども、資料3で私どもいろいろな先生方から御意見をいただきましたものを項目立てにまと めてまいりました。
    そのテーマが、性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラスメント及びストーカー行為等と大変広範にわたる上に、いずれも重要な課題でございますことから、あと2回でおまとめいた だくのは時間的に大変厳しいのではないかと思いまして、より深い御検討をいただく時間を取るために、関係省庁からの意見聴取も含めましてあと5回ほど開催をする。具体的には 資料のとおりに日程を少し延長していただきまして、来年3月にでも報告書を取りまとめていただければと考えているところでございます。これは検討の状況に応じまして更に延長す ることも考えられますけれども、現時点で私どもが考えております案でございます。
    合わせまして、資料3でこれまでいただきました御意見を整理したところでございます。これは、昨年の4月に開催されました第12回会合から12月の第17回会合までに皆様方か らお出しいただきました御意見の項目別に列挙したものでございます。このうち、黒丸は恐らく法整備を必要とするものであろうと思われますし、白丸はそれ以外の体制整備でござ いますとか施策の実施、運用の改善などを必要とするものを示しているところでございます。本資料は、これに基づきましてそれぞれの項目がございますけれども、この柱に沿って 御検討を深めていただきたいと思っているところでございます。
    最後に資料の御紹介でございますが、検討の御参考といたしまして、基本計画の本専門調査会に関係いたします部分の抜粋が資料5でございます。
    資料6につきましては、国連の女子差別撤廃委員会の最終コメント。
    資料7といたしまして、本研究会に関係いたしました法律といたしまして、本年の9月13日に一部施行されました出会い系サイトの規制に関する法律。
    資料8につきましては、トラフィッキング対策関係の議定書の仮訳をお配りしてございます。
    島野会長
    まず、本専門調査会の今後の進め方について、事務局の御説明のとおり決定してよろしいでしょうか。
    原会長代理
    高齢者への虐待について厚生労働省では既に全国調査をなさっているということが9月2日付の朝日新聞に出ていました。このことは今までにこの専門調査会で 話題にしていなかったんですけれども、データも大分あり、テーマに入れていただきたいと考えます。
    島野会長
    資料3のこれまでの意見の整理が果たして完全に今まで出された意見を網羅しているかどうか、必ずしもそうではないかもしれないと思っております。それから、今の 原会長代理の御発言のように、追加したいというものもおありかと思います。
    そこで、今からの議論ですが、資料3のこれまでの意見の整理、テーマごとに取り上げてこれを来年の報告に入れる、入れなくてもいいという議論をしていただきますが、その最 後にこれ以外の項目があればということで御意見を承りたいと思っております。
    住田委員
    性犯罪の対象として、これまで念頭に置いていましたのは強姦罪などですけれども、最近の犯罪の動向を見ていますと、少女に対する監禁事件というのが頻発してお ります。この間の新潟の関係では最高裁の判断をいただかなければいけないような形での併合罪加重の問題、あれはそれはそれでよいとされたんですけれども、監禁罪の法定刑 についてそもそもの問題があったのではないかなという感じがしております。性犯罪にからむ犯罪概念自体についても少し広げていかないと、今の日本の女性に対するいろいろな 暴力の不安な部分というのはすくい取れないのではないかという気がいたします。
    島野会長
    それでは、まず1ページ目の1の「性犯罪について」について御意見を承ります。それで今、住田委員の御意見があったということでございますが、ほかにございませ んか。
    戒能委員
    第1点は今おっしゃいましたけれども、性犯罪というくくり、枠組みですが、これは強姦と強制わいせつということに刑法上はなるわけです。実はもっといろいろな問題が あるということが明らかにされてきた段階で、この枠組みをどうするかということが実は大きな問題としてあると考えています。
    2点目が、強姦、強制わいせつ、特に強姦のところですが、チャイルド・セクシュアル・アビューズ、子どもへの性的な虐待の問題ですね。近親姦も含めて、その問題が一つあると 考えています。
    それから、強姦罪については法定刑の引上げについて、どこまでという議論になると思うんですが、構成要件の問題はどうするのかということも考えなければいけないと思ってい ます。
    島野会長
    性犯罪について書き始めるときに、住田委員などの御意見を踏まえて、この問題の捉え方、女性に対する暴力で性的要素が含まれているものについての一般的な 文章を書いて、そして各論に入っていったらいいでしょうか。これは、書いてみないとわかりませんね。
    原会長代理
    そういうことも合わせて、今後検討してみる必要があるということですね。
    瀬地山委員
    刑法22章では代表的なものが4つ挙げられていて、強姦と強制わいせつと公然わいせつとわいせつ物頒布等の罪が並んでいます。強姦、強制わいせつに関する 論理と、公然わいせつ、わいせつ物頒布等の罪に関する論理というのは基本的に違うものだと私は認識していて、ここのところで痴漢と公然わいせつを同じようにして取締強化とい うふうにやっているのは、少し私は違和感を感じます。直接の被害者が明確にいる強姦や強制わいせつの問題と、社会規範が被害者であるというふうに論理を構成している公然 わいせつやわいせつ物頒布等の罪というのはちょっと別の論理で考えていただきたいというふうに私は考えています。
    戒能委員
    もう1点だけですが、女性に対する暴力専門調査会ではありますが、セクシュアリティの問題は必ずしも男性が加害者で女性が被害者か。同性間の問題もあるので はないか。それはどういう位置付けになるかということですね。ドメスティック・バイオレンスなども既にその問題があるわけです。その辺は大きな議論だと思っています。
    前田委員
    この専門調査会の持っている射程と言うと変なんですけれども、強姦罪の改正ということになると当然法制審議会を通さなければいけない。それで、条文を変える、構 成要件を変えるということを法制審議会抜きにやるということは今の段階では考えられません。
    そうすると、この専門調査会として何をどう投げ掛けていくか。有効な投げ掛け方としてはどういうものなのかということだと思うんです。恐らく基本的な方向性として、女性の権利 をもっと高めていく象徴として強姦罪の下限を上げるということを議論してほしいということは非常に重要な提起であって、ここの会に非常に似つかわしい議論だと思うんです。 それ に対して、それの根拠づけを行ったり、いろいろな外国の動向や実態とかというのはいいんですけれども、それより先の細かいいろいろな構成要件をどうするかというのをここでや るのは無理があるかなと思います。現に女性の側から見て困っているとか、男も入れてですけれども、ここが一番ネックである。そのときに、さっきの回数の問題がありますので、 省庁的に一番重要なポイントは何かということでここに最初に書いていただいたような点が挙げられているのであり、これは非常に大きな波紋を生ぜしめるものであるというふうに 考えます。そこを一歩出るというだけでも非常に重要だと思います。
    あとは、盗撮というのは大分レベルが違ってテクニカルですが、ただ、関係省庁の積極的な関与といいますか、これがあってこういう法案をつくるということは警察庁ならば警察 庁、法務省ならば法務省も積極的である。それで、恐らく女性の保護の観点でここに問題があるということは皆さんお感じになっていて、現行の法律の中でどうしたらいいかというこ とはあるので、これは強姦罪よりは、前に出やすいところかなという感じがします。
    あとは、痴漢、公然わいせつ対策の取締りは瀬地山先生が御指摘のとおり複数のものが入っている感じはしますけれども、現実に特にどちらの方が重要なのかということを見据 えながら提言していくということは意味があると思っております。
    ただ、一番申し上げたいのは、刑法の改正になる部分はかなり法務省というか、法制審議会マターだということがどうしても頭にある。この専門調査会があることの存在意義を十 分発揮するには、法定刑の下限を上げろということに絞って強く主張していくというのが一番合理的ではないかと考えております。
    島野会長
    住田委員がおっしゃった「性犯罪」の「加害者の厳正な処罰」という項目の中に、女性に対する監禁罪その他について取り上げるということはいかがですか。前田先生 はどのようにお考えですか。
    前田委員
    大問題なんですが、一応分けておいた方が、要するに監禁の問題は性犯罪の延長と言えば延長なのかもしれないんですけれども、監禁罪の法定刑云々という話が 入ってくるとちょっと話がこんがらかるかなという気がするんです。
    住田委員
    私自身は、あの問題自体をどういうように女性に対する暴力という視点から切り取れるかということです。このような問題が頻発している。少女たちが援助交際の延 長で赤坂で監禁されたりとか、新潟の場合は長年月にわたって表ざたにならなかった。そして、その後の加害者の問題と被害者のケアなどについて、やはりあれは性犯罪ではな かったかという思いが非常に強いものですから、罪名として表に挙がっているのはそういう問題ではなかったとしても、目的がこのようなものである以上は女性に対する暴力という 意味で今後対処しなくてはいけないのではないか、社会的にも意味のあることではないかと思っています。
    法定刑の問題は、たまたま今回こういう形で最高裁に挙がったから申し上げただけで、別にそれにこだわっているわけではなく、こういう社会事象そのものについて考える機会は ここでいただいた方がいいんじゃないかと思ったわけです。
    島野会長
    ほかに、これは要らないんじゃないかというようなことはありますか。(1)はこれでよろしいということでしょうか。後でまた御意見があったら伺います。
    次に(2)に移りまして「被害者への配慮とケア」です。これはよろしいですか。
    小西委員
    私が関わっている分野なので、これは是非話し合っていただければと思います。基本的には、制度として被害者への配慮とケアに焦点が当たりつつあることは確かな んですけれども、やはり現実の運用のレベルとか、あるいは医療という形で考えたときには経済的な裏付けですね。そういうことができないと、実際にそれが広がったり、サービスの レベルとして全国に普及することが難しいというのが現状だと思いますので、そういう実態からやっていただければと思っております。
    島野会長
    それでは、次の(3)の「犯罪の予防」に移ります。
    北村委員
    「性犯罪を助長するおそれのある雑誌、ソフト、ビデオ等の規制」というものがありますけれども、一度是非学びたいのは、我が国にあって例えばアダルトビデオなど でモザイクをかけていても、一方インターネットメディアなどでは全く規制がないまま、無造作に情報収集できるという矛盾があるんです。この辺りで国際的な規約みたいなものがあ るのかどうかを学ぶチャンスがあればいいなと思っています。
    規制をすれば事が済むのか。規制をすれば潜在化するだけであって問題解決になるとは必ずしも思えません。むしろメディアリテラシーということがよく話題になっておりますけ れども、さまざまな情報を受け止めざるを得ないわけですから、それを見極め、読み解くという能力をどう高めていくのか。きれいなものばかりを用意すれば人はきれいになるわけ ではなくて、良書と悪書の2つがあるから良書の価値がわかるということは常々言われていることですので、この辺りについての検討をお願いできたらと思っています。
    原会長代理
    まだ報告書の目次立てのところまではいかないかと思うんですけれども、「1.性犯罪」のところで監禁事件とか監禁罪について話し合う。その場合には被害者への 配慮とケアとか、犯罪の予防も含まれてくると思うんです。だから、この辺は関連する事項という位置付けで論ずることでいかがかと思いますが。
    島野会長
    関連する事項というのは、性犯罪に関連すると。
    原会長代理
    監禁罪そのものが性犯罪とは限らないということですよね。その法律の構成はよくわかりませんけれども、そうだったら性犯罪イコール監禁罪というふうに分けない でおくということが私の目次立てです。
    小西委員
    実際にこういうケースはかなりたくさんあるんです。例えば監禁の時間も何年ということではなくて、例えば1日2日などというケースだったらかなりたくさんあると思い ますが、ではそれが法律的に罪名として性犯罪が付いているかというと、実際にそういうことはあっても付いていないケースの方が多いと思うんです。だから、法律的に議論をする と、むしろ実態は出てこないんじゃないかというような気も私はしています。
    ですから、住田委員が2番目に言われたことに賛成なんです。要するに、現状というところで少し問題として取り上げていただくことは可能だろうし、かなりその人たちは後は具合 が悪いですから、それはしていただけるといいかなと思います。
    島野会長
    それでは、次の「2.売買春」に移ります。「(1)売買春一般」についてはいかがでしょうか。何かこのことについて触れておきたいという御発言がありましたらどうぞ。そ うでなければ、たたき台のような文章をつくった上で議論をしていく方が有効かなという感じもいたします。
    林委員
    売買春の最初に「女性に対する暴力となる売春の類型」とありますが、売春防止法は目的規定で売春自体が人に対する尊厳を侵すとなっているので、売春の中に女性 に対する暴力になるものとならないものがあるという立場は、少なくとも私自身はとっていませんし、そういう立場で売春の中で女性に対する暴力でないものがあるという前提での 議論というのは進められるんでしょうか。
    島野会長
    これは同義反復じゃないかという感じがします。
    瀬地山委員
    私は逆にむしろこういう感じをとらなければいけないという立場になります。だから、単純売春に関してはむしろ犯罪とするべきではないという立場です。
    林委員
    ただ、女性に対する暴力イコール犯罪ではないですね。
    瀬地山委員
    女性に対する暴力というふうにしても同じです。
    島野会長
    今の林委員の御意見のトーンで中心の部分は記述していって、ただ、瀬地山委員の意見をどうその中に入れるか入れないかは後で議論するということでいかがで しょうか。見出しは「女性に対する暴力となる」というのは削る。これは、事務局はその趣旨で、ただ修飾語的に書いただけということですね。
    藤澤推進課長
    その趣旨です。
    島野会長
    ほかに御意見ありませんか。
    では、(2)の「児童買春」に移ります。
    瀬地山委員
    「子どもの自尊感情の高揚」のところですが、別に傷付いていないと思っているのであればそれはそれで構わないんだと、感情を高揚するという規範自体が私は問 題だと思っているので、このことについては検討してくださるのは構いませんが、考え方の方向性自体は少し私は違和感を持っております。
    島野会長
    自尊感情を高めていく方法の検討。高めた方がいいとは考えていらっしゃるわけですか。
    瀬地山委員
    特にそうは思いません。
    島野会長
    そうでなくて並列的に考えていらっしゃるようだけれども、この専門調査会ではやはり子どもの自尊感情というものを高揚させる必要がある。
    瀬地山委員
    それは、自尊感情という言葉の使い方だと思います。彼女たちは彼女たちなりの自尊感情を持っていて、それが社会のある年代の人たちと同じである必要はないと いうふうに私は思っているということです。
    島野会長
    言葉の使い方ですね。瀬地山さん自身は現状の若い世代の女の子は自分なりの自尊感情を持っているけれども、その内容が我々の世代というか、もう少し別の視 点から見たときに、それは必ずしも理解されていない。
    瀬地山委員
    例えば、性交渉をある年代でするということについて自尊感情が保たれていないというふうに上の世代は判断するわけだけれども、実際の子どもたちというのはそ れなりの自分たちなりの線引きをして自分たちなりの自尊感情を持っているのであるというのが私の判断です。
    島野会長
    今、議論すると議論が尽きないようですから、記録にとどめておきましょう。ほかにございませんか。
    それでは、(3)の「人身売買(トラフィッキング)」に移ります。林委員はいかがでしょうか。
    林委員
    資料にある議定書の仮訳に従うとすると、「人の密輸議定書」ではなくて、「人身取引議定書」と呼ぶことになると思います。
    原会長代理
    この人身取引議定書という日本語訳は外務省で決まった仮訳みたいになっている表現なんでしょうか。
    外務省
    署名の際の仮訳です。
    前田委員
    確定ではないけれども、でも取引という言葉はかなり使われていますね。
    原会長代理
    「児童買春」のところか「売買春」全体のところで、性感染症の問題に2行でもいいから触れる。これは全部に関係しますね。それをしていただけるとありがたいと思 います。
    北村委員
    性感染症を入れるんだったら、リプロダクティブ・ヘルスという意味で妊娠も入れるんじゃないですか。
    原会長代理
    望む場合はいいけれども、望まない妊娠が問題なんですね。この議論を始めると大変ですけれども、大問題は10代で望む妊娠をした人が学校も退学しなきゃいけ ないとか、ちゃんと子どもを育てたいと思っていてもその環境が整備されていない。そちらの問題も同等に存在するわけですね。
    島野会長
    ほかにございませんか。それでは、3の「セクシュアル・ハラスメント」に移ります。
    原会長代理
    いわゆる雇用機会均等法とか、人事院からのお知らせ一通達とか、それから大学におけるセクシュアル・ハラスメント、こういうところでちゃんと対応できている部分 もあるし、ざるのように対応されている部分もあるけれども、これらの対象に全くならないところで起こる権力構造の中でのセクシュアル・ハラスメントというものがございます。例え ば、学会などの任意団体ですね。雇用関係はあるんだけれども、被害者が訴える場所がないという場合もある。
    戒能委員
    ただ、学会については、大学が関与する限りにおいては対象として考えられる。学生も教員も学会のメンバーですね。だから、その限りではそこで一つ考えられる。そ れから、あとは大きな学会は事務局がありますから、それは職場で考えられる。
    原会長代理
    ほかのngoなどはどうでしょうか。
    戒能委員
    ngoについてはここには入ってこないので、必要かもしれない。
    ついでに申し上げますと、大学だけに限定せず、教育機関には高校も中学も小学校もありますので、教育機関ということで入れていただければと思います。
    もう一つは大学で申し上げますと高等教育政策の中でのセクシュアル・ハラスメント問題ですね。職場の雇用関係だけではなくて、実は学生が関わってきますと最初の○に環境 整備等と書いてありますけれども、是非、文部科学省にもおいでいただいて、教育政策としてセクシュアル・ハラスメントにどう対応していくのか、御検討いただければと考えておりま す。
    島野会長
    文章の構成はともかくとして、まずはセクシュアル・ハラスメント全般というよりも一般というか、総論のようなところをきちんと書かないと、均等法とか人事院規則という 特別法が、その指定する分野においてこのような規制がされているにすぎないわけですね。そこがいつも混線して一般世間では誤解されていますから。
    奥山委員
    今の現行法の中では、セクシュアル・ハラスメント行為の禁止といいますか、防止を求めているのはおっしゃるとおり職場における問題でして、均等法と人事院規則の 下での民間企業主体と公務職場の2つなんですね。しかも、均等法の場合には禁止規定ではなくて配慮義務ですね。現行では、就業環境整備の一環として入っています。それを 例えば職場の中だけでの問題として考えても、もう少し配慮義務から格上げをしていくような形の規定にしていけるかどうか、一般的にも議論する必要があるのではないかと思いま す。
    もう一つ、私がここで気になっていますのは、今、原さんがおっしゃったように職場とか教育機関とかで限定するのではなくて、およそ日常生活というか、社会生活の中でのハラス メントに対する防止とか、そういう規制を議論していくときに考えなければいけないなと思っているんですが、1つは、現在、国会に人権擁護法案が出ていますね。あれは基本的に 日常の生活関係における人権侵害問題をつかまえている。そこには職場におけるセクシュアル・ハラスメントも射程に入れているわけです。職場とその他の生活領域におけるセク シュアル・ハラスメントの全般的な禁止、特に違法行為としての前提で議論していく場合には、恐らくこの問題はそちらの法案が通るか通らないか、そこの兼ね合いではないかと思 うんです。
    だから、ちょっとここは法案の様子を見ておかないと。それとは別個に特定の分野で法規制をするのかどうかという問題と絡みますから、今のところは私としてはこうした方がいい ということはなかなか言えないと思います。
    島野会長
    事務局、セクハラのところで整理をしていく上で委員の御意見を伺いたいことがありますか。よろしいですか。
    住田委員
    ここでのセクシュアル・ハラスメントは極めて狭義のものなのかなという感じがしています。本来の通常の意味では、当然性犯罪も入ってきます。一般的にはやはり不 法行為であって性犯罪に当たるものもあるということを表に書いていただきたい。その上で、ここで取り上げるのはこういうものに対して限定する狭義のものであるというふうにして いただかないと、セクハラはこれと大学の人事の問題だけだと法律家の中でも誤解をされている方もいらっしゃるぐらいですので。
    この黒丸の「違法行為であることを明示するための法整備」がなかったら、セクハラ自身はこれ以外はないのかと、本当に誤解されていると思いますので、きちんと書いていただ きたいと思います。
    島野会長
    総論が重要ということでございますね。
    奥山委員
    今おっしゃられたようなことは、このレジュメ的なもので言いますと3の(1)の「セクシュアル・ハラスメント全般」のところでそういう観点から少し問題の整理と提言をな さるのが一番いいのかなと思います。その中で、これまでの状況の中では非常に問題も多く頻発し、法律的にも深刻な状況を出していたという部分で職場、学校機関というような形 の分類はいいかなとは思います。
    島野会長
    そして、慰謝料その他の損害賠償と服務規定違反というか、加害者への一種の制裁的なことも一般論としてまずは押さえておいて、均等法の適用をめぐってはこう、 人事院規則ではこうというふうに整理する必要があるでしょうね。
    奥山委員
    そして、むしろ立法化ということならば立法化という前に、この前もちょっと私が報告しましたときに、現行の均等法の下での配慮義務の従業主への要請は大企業でも 7割、中小企業でも半分、小さいところになりますと3割くらいしかやっていらっしゃらないんです。あれをもっと行政指導で徹底させていくということなども強調していただいた方が、特 に私は職場の問題だけを今イメージしているんですけれども、そこで現行の規定、法的な枠組みの中でもまだまだ十分にそういうものがなされていないものですから、それをまず 徹底するということも強調していただいた方がよろしいんじゃでしょうか。
    島野会長
    「セクシュアル・ハラスメント」についてほかにございませんか。
    それでは、次の「ストーカー行為等」に移ります。
    戒能委員
    ストーカー規制法の一つの大きな問題は、これまでこの委員会で取り上げてまいりましたDV法との関連ですね。DV法の改正でストーカー法とのすり合わせをどうす るかということが常に出てくるわけです。DV法改正が今、進められておりますけれども、ストーカー規制法も法律の条文どおりだともうじき改正の時期を迎えるわけで、それが大き な課題の一つと思います。
    その関連で言えば、ここにはほとんど法制度のところで書かれておりませんが、目的規定の拡大も一つだと思いますが、例えば当事者の申し立てという仕組みはとっていないとい う点とか、構成要件のところでも繰り返し反復とか、同一行為の反復とか、その辺のところも含めてここで現状はどうなのかというところから議論を是非していただきたいと思っており ます。
    運用の問題も弁護士の方にお聞きしたいところです。ストーカー法を使いなさいということがDV法の議論の中で必ず出てくるわけですが、安全を守るという視点からどういう運用 が行われているのかももう少し突っ込んで議論をしていただきたいと考えております。
    島野会長
    ほかにございませんか。
    それでは、今までの意見の整理についての皆様の御意見、御意向を承りました。この資料3に載っているもの以外について御意見があったら承ります。
    原会長代理
    高齢者に対する虐待という項目を入れて報告書の中で触れておければ、しかもデータも少しずつ集まり始めているようですから、それについてのヒアリングをする 時間を取っていただければと思います。
    小谷委員
    今のことは、高齢者虐待の関係の学会ができたんですよね。日大の先生か何かがリーダーみたいな感じなので、その方の御意見などを伺ったらいいのかなと思うん ですけれども、高齢者の虐待は、特に女性の中で取り上げるのは、おばあさんになると女性として差別されているのと、もう一つは高齢のゆえにというのでダブルでかかってくるか ら非常に重要だと思うんです。
    それで、最近施設の中でのいろいろなセクハラということを耳にするんですけれども、この辺りも高齢者の問題とともに議論をする必要があるのかなという感じがします。施設はい ろいろな側面があって、職員が入所されている男性の高齢者からセクハラ行為をされるというケースと、それとまた逆の入っている方同士といいますか、部屋に強引に訪問してしま うような方がいるというような問題とか、そんなことも耳にするので、原先生がおっしゃるような高齢者の虐待というのはこういう新しい観点で考えてみるといろいろ問題が出てくるの かなという気がいたします。
    原会長代理
    ほかには、刑務所とか、その他いろいろな施設での問題というのもあるなと感じてはいるんですが、そういうのはその他で扱うのか。データがどのくらいあるかも確 認する必要があります。
    島野会長
    例えば、性犯罪だ、セクハラだ、それがいろいろな場面で行われている。ですから、性犯罪やセクハラのところでそこにも言及するのか。そうではなくて、今まで余り議 論されなかった、注意を引かなかった問題として女性高齢者の問題があり、それから各施設でのセクハラがありますよという別のまとめ方になるんですね。いつも女性に対する暴 力について体系化してまとめようとすると、その縦横があるんです。ですけれども、それは承知の上で高齢者とか各施設というのは特記しておく。そういう意味でとらえるという必要 がある。皆様、いかがですか。
    住田委員
    女性に対する暴力の関係で取り上げるときには、女性のいろいろな意味での社会的地位の低さ、経済力、その他を含めての低さや弱さを前提に、また女性の性的な 部分の商品性を考えての特殊な部分に対しての暴力という趣旨をやはりまず第一に持ってくるべきだと思います。私が監禁罪を申し上げたのは、女性の性を目的にして監禁してい るからです。結婚目的の誘拐もありますように、そういうふうな形での監禁罪として性犯罪的なものとして取り上げていただきたいというふうに申し上げたつもりです。 それで今、新 しくいろいろな類型をお出しになって、対象者として女性がなり得る可能性、特に高齢社会になるとほとんど女性が高齢者ですから、そういうものについてそういう問題が今回極めて 大きくクローズアップされつつあるということについてはそのとおりだと思いますが、私はいま一つ虐待の内容をよく知らないで言うので問題があったら御訂正いただきたいんですけ れども、基本的には高齢者の女性が虐待を受けるというのは、やはり経済的な弱者であるということが一番大きな前提で、何の収入も生まない、いわゆる本当に依存している弱者 に対しての虐待であって、どうも性的な側面というのは比較的弱いのではないかという感じがしてならないんです。
    児童虐待も、児童としての若年者としての弱さからの虐待という問題が大きいのであって、少女に対する児童虐待というのはその中に一部あるかと思いますけれども、そういう意 味で言うと社会的弱者に対する虐待という問題は刑務所もそういうふうな権力的な中での弱者だと思いますので、どうもそこら辺は性的なものに関しての色彩がひとつ薄いと思う んです。問題としてあることはもちろん承知していますけれども、もし時間的に限りがあるのであれば優先順位は下になるのではないかと、そんな気がしました。
    島野会長
    これは特別にスポットを当てるというのではなくて、一通り整理した上で。
    住田委員
    権力者が弱者に対して暴力を振るいたくなる構造というのはもちろんあるわけなので、その中で女性という立場の弱者というのをとりあえずはクローズアップするのが この会の使命かなという感じがします。
    原会長代理
    大局的なことで私は住田委員がおっしゃることに賛成なんですが、そろそろデータも出始めているということもあるので、そういう場合に性的な虐待、性的な要素を 含むものがどのくらいあると判断できるか否かについての情報を得られるならば得ておく。そして、今後の私たちが後任の方々に引き継ぐときにまた項目として入れておくこともあり 得るし、報告書で後ろの方になお書きのような形で付けることもありうるのでは。もしデータに性的な問題が少女に対しても割にあるとすれば、やはりそのことを住田委員のおっしゃ る枠の中で論ずるということではいかがでしょうか。今ここで決めないということで。
    住田委員
    私は事情をよく知らないものですから、つい嫁、姑の図式を想像してしまいまして、そういうものであればちょっとぴんとこないなというのが率直な感じなんです。
    島野会長
    児童に対する性的な虐待というのは、実態としてかなりありますよね。一つの大きな柱です。
    小西委員
    大きな柱として取り上げた方がいいと私も思っています。もちろん性的な被害であるし、ほかの虐待に比べるとケアが非常に今、手薄です。それで、例えば児童相談 所に行ってもどうしていいかわからないというところで止まっていることがたくさんありますし。
    原会長代理
    「茶髪をやめなさい」とか、「洋服を変えなさい」とか言われておしまいだったりして。
    小西委員
    幼児のとき、例えば5、6歳にもこういう性的被害はあるんですね。それから、11、12歳からもう少し上ぐらいまでのところでもう一つ山がありまして、これが今、原先生 が言われたような形なのかと思うんですけれども、法的にも対応がすごく難しくて、例えば繰り返し繰り返し被害を受けていましても証拠がほとんどないわけですね。そうすると、最 後の辺りではほとんど抵抗もなく行われていることも多いから、当然加害者の方は和姦だというふうに主張する。そういうことで和姦かどうか争わなくちゃいけないようなレベルのも のしか法的には今、乗ってこないんです。それで、例えばそれが抗きょ不能の状態にある準強姦だという形で取り上げられたりします。これは一つの工夫ではあるとは思いますが、 法的な対応が十分とは思えません。それからケアの方もかなりお手上げの状況があって、これはやはりどうしても取り上げていただきたいと私は思っているところです。
    島野会長
    審議会のときの児童虐待防止法でしたか、あちらの法律の分野かということで1行ぐらいしか触れていないので、それはまずかったかなと。
    小西委員
    定義上は当然児童虐待の中に性的虐待はありますから児童虐待で扱うべきことなんですけれども、実態として非常に扱われにくくてそのままになっているケースが多 いのも確かなんです。ですから、これはこちらで扱っていいんじゃないかというか、こちらで扱わないと身体的虐待の問題も非常に大きいですから、どうしても児童虐待はそちらの 方がメインにしばらくならざるを得ないんじゃないか。そうでないと、間に落ちていってしまう可能性があると思います。
    林委員
    コメントが2つあるんですけれども、1つは社会的弱者、経済的弱者ということで考えたときに、DV法の検討をし始めた最初のころに民間の婦人保護施設の方のお話を ここで聞きましたけれども、メンタルヘルスに問題があったり、身寄りのない女性が結局民間の婦人保護施設に行ってDVの被害者の人たちと混在しているという現状のお話があり ましたね。だから、そういった人たちですとか、最近不況の中でホームレスですとか、野宿者と言われる家のない女性たちが非常に増えているという研究なども出てきていますの で、そういった視点も必要なのではないかと思いました。それが一つの柱として立てられるかどうかという問題は難しいと思うんですけれども、ホームレスも女性の問題だという観点 で物を書いていらっしゃる方もいますので、視野に入れておく必要があるのではないかと思いました。
    それから全く別なことなんですが、先ほど私は特に意見を申し上げませんでしたが、性犯罪の予防のところで教育啓発ということと、それから雑誌などの規制の検討というのが 入ってございますね。私自身もこういった文化に対する批判は個人としては必要だと思うんですけれども、民間団体がそれを批判するということと、やはり政府のこういう委員会で こういう問題を提起するということでは重みも違いますし、政治的な意味も全く違うということには気をつけなければならないと思います。
    それから、先ほど奥山先生から人権擁護法案のお話がありましたけれども、せっかくああいういい法案が出ても、表現規制があるということであれだけものすごい反発を食らって なかなか国会を通らないという状況が出ているわけですので、ここでせっかくいい意見書をまとめても表現規制に言及しているじゃないかということで、それが全部否定されてしまう んだとしたら、それはつまらないことですし、私は政府の一つの機関として、特に言論とか表現行為に対する言及というのは慎重であるべきだと思います。
    前田委員
    それに関して、趣旨は全く同じなんですけれども、ただ、これを処罰するとかということは別な問題ですが、啓発ですね。それについて国は一切発言してはいけないの か。だから、表現の自由の問題とちょっと違うのは、子どもがだれでも見られるコンビニにああいう裸の写真みたいなものが並んでいることを何で規制できないのか。確かにマスコ ミは怖くて、何か言うとすぐマスコミの反発があるから触らぬ神にというふうになりがちなんですけれども、私はその時期は限界を超えてきているんじゃないかと思うんです。恐らくい ろいろなレベルで、ほかの国のレベルでもそうですけれども、地方公共団体でも、私は一歩ずつ前に出る方向に変わってきていると思います。
    それで、おっしゃるようにこれを規制して摘発とか何とかというのは非常に慎重でなければいけない。女性を強姦するゲームみたいなものがあって話題になったことはありますよ ね。こういうものが大っぴらに売れて、子どもたちがすぐ手に取れるような形になっていることに対して、国の姿勢として、女性保護の観点から何の発言もしないというのは、私は ちょっと弱過ぎるのではないか。余りにも行き過ぎたもので、そういうものをマニアックな人がこっそり買っているのを規制しろと言うのではないんです。だれでも手に取れる形でと か、テレビ番組の中での女性差別的なものとか、そういうものに対してやはり男女共同参画会議の専門調査会で女性の尊厳というものをもっと考えましょうよという提言の象徴とし て、文化的なものに対してもある程度触れるというのは私は重要なことではないかと思います。
    ただし、そのときに権力が一定の価値観を押しつける。それを刑罰をもってというようなことは極力抑えなければいけない。それから、なるべく民間の自主規制を促すべきだという のもそのとおりですけれども、民間の自主規制というのは私はある程度こういうものが出てこないと動かないという力関係にあると思います。特に子ども、幼児のポルノなども規制し てわっと変わったわけですね。
    それを本当に好きな人が見るということ自体を処罰するというところまでやるのは難しいかもしれないです。児童ポルノを処罰するというのは行き過ぎなのかもしれないんですが、 ただ、目に見える形で余りにも今、特にインターネットのことをどうするかというのも大問題だと思います。これは私の個人の意見です。
    瀬地山委員
    今のことに関係すると、内容規制ではなくて住み分けの問題なのだという意味で前田先生の言葉を受け取るのであれば私も同意見です。
    前田委員
    出し方ということでしょうね。
    瀬地山委員
    内容規制は基本的には私は余り意味がないというふうに思っています。
    前田委員
    私も基本的にはそうなんです。本当に好きな人がこっそり買うことまで規制するというのは、どこまでやってもモグラたたきみたいなもので必ず出てくるんですけれど も、ただ、大っぴらにコンビニでとか、テレビ番組でというのはやめていただきたいということです。
    島野会長
    このことについて御意見はございますか。
    配偶者暴力防止法については円滑な運用、それから法の見直しと報告をしたわけですけれども、さっき戒能委員がストーカー行為規制法との関係をおっしゃいました。DV法絡み で何かこの際、書くべき事項がありますでしょうか。法の改正、円滑な運用は一応報告は出しましたけれども。
    戒能委員
    ストーカー法との関連で言えば、法の対象範囲の問題ですね。それから規制の行為の問題、禁止事項の問題などが含まれていますが、主には対象範囲だと思いま す。
    先ほど高齢者虐待のお話がありましたが、これは運用の問題になりますが、判断能力がない人とか不十分な方ですね。これは施設における暴力の問題とも関わってくることだと 思うんですが、実は最も暴力を受けやすいかもしれないけれども、最も外に出せない人たちの問題があります。実はDVの現場でも、例えば保護命令という制度があっても使えな いというような運用上の問題があります。先ほどのホームレスの女性の問題もそうですけれども、そういう観点がDV法の改正の中では出てきているということだけ申し上げます。
    島野会長
    本当にこれをまとめる段階では非常に激論が交わされると思いますが、今日は項目でしたのでこれで終わることにいたします。
    なお、次回はこれらの項目について関係省庁から意見を聞くこととしたいと思いますが、いかがでしょうか。
    前田委員
    関係省庁からというのは、性犯罪だけではなくて第1回目から全部についてですか。
    島野会長
    全部についてです。ですから、相当な量になると思います。
    それでは、次回は関係省庁からの意見聴取を行うことにいたします。以上で議事は終わります。
    最後に、資料9をごらんください。事務局に第21回会合の議事録(案)をまとめていただきましたが、これにつきましてはこのとおり決定し、内閣府のホームページ等で公開すること としてよろしいでしょうか。

    (異議なし)

    それでは、第21回会合の議事録につきましては速やかに公開することにいたします。
    次回の専門調査会は10月31日金曜日に開催する予定としております。
    それでは、これで女性に対する暴力に関する専門調査会の第22回会合を終わります。どうもありがとうございました。