男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会

  • 日時: 平成15年5月30日(金) 10:00~11:16
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 島野 会長
      原  会長代理
      大津 委員
      奥山 委員
      戒能 委員
      垣見 委員
      北村 委員
      小谷 委員
      小西 委員
      住田 委員
      瀬地山委員
      前田  委員
      若林 委員
  2. 議事
  3. 議事内容
    島野会長
    ただいまから、男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会の第21回会合を開催いたします。本専門調査会では、2月以降、配偶者暴力防止法の施 行状況等について調査検討を行ってまいりました。本日は、これまでの議論を取りまとめ、7月16日に開催される第11回男女共同参画会議への報告書を作成するための検討を行 いたいと思います。なお、前回会合と同様に、本日も関係省庁の方々にも入っていただいた方がより実質的な議論ができると考えましたので、内閣府、警察庁、法務省、厚生労働 省の方々に同席していただいております。それでは、本日の議題に移りますが、その前に参議院共生社会に関する調査会における配偶者暴力防止法の見直しに関する、その後 の検討状況について内閣府から説明していただきます。
    村上内閣府男女共同参画局推進課長
    資料1を御覧いただきたいと思います。資料1の参議院共生社会に関する調査会「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関す る法律」の見直しに関するプロジェクトチームにおける検討状況についてですが、前回の4月18日の専門調査会で、それまでのお話はさせていただいておりますので、それ以降の 2ページ目のところから御覧いただければと思います。5月7日にのプロジェクトチームの第5回会合が開催されました。このときには、関係省庁からのヒアリングを行っております。 内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省、最高裁判所から施行状況などについてヒアリングをして、質疑応答を行っております。次に、5月26日のプロジェクトチーム第6回会合で は、保護命令の拡充についての有識者からのヒアリングということで、井口弁護士と長谷川弁護士から意見陳述があり、質疑応答がございました。次回の第7回会合では、「DV被 害者の自立支援」について、関係団体からのヒアリングが予定されているという状況で、逐次、開かれております。それから、席上の資料についてご説明いたしますが、配偶者暴力 防止法の見直しに関する要望書が6件出ております。埼玉県、東京都、神奈川県、それから日本フェミニストカウンセリング学会の理事会から、日本臨床心理士会などからの要望 書が出ておりますので御報告いたします。
    島野会長
    それでは、本日の議題である「配偶者暴力防止法の施行状況等(案)について」の検討に移ります。配布資料の中の「委員限り」と書かれた「配偶者暴力防止法の施 行状況等について(案)」を御覧ください。なお、本資料につきましては、昨日29日に各委員にお送りしてあります。それでは、まず「はじめに」と「第1 配偶者暴力防止法の施行状 況」及び「参考資料」につきまして、あわせて議論したいと思います。なお「はじめに」と「第1 配偶者暴力防止法の施行状況」につきましては、前回の第20回会合において既に御 覧いただき、特にご意見がなかったものでありますが、今回はこのうち「はじめに」の3ページの本調査検討の目的や「第1 配偶者暴力防止法の施行状況」(5、6ページ)の調査 の日付等をより分かりやすくするために書き加えました。修文箇所は下線部のとおりです。また、「参考資料」につきましては、「第1 配偶者暴力防止法の施行状況」の内容を踏ま え、内閣府をはじめ関係省庁において作成された資料を添付しております。以上につきましては、特に議論すべき部分はないように思われますが、今、拝見していて気がついたの は、「参考資料」のところに、配偶者暴力防止法、ストーカー規制法等の条文があればなお使いやすい報告書になるかと存じます。それは追加していただこうと思います。そのこと も含めて、この内容で取りまとめたいと考えておりますが、何か御意見等はございますか。〔異議なし〕ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。次に、「第2 配偶者暴力防止法の見直しに関する論点」につきまして議論したいと思います。この第2につきましては、今月15日に私が作成した案を各委員にお配りし、21日までにこれに対す る意見を出していただくこととしておりました。15日の案については、戒能委員、小西委員及び大津委員から御意見をいただきました。この御意見は26日に各委員にお送りしたところ でございます。お三方の委員の御意見については、私の判断で適宜取捨選択しまして、本日お配りした案になっております。これについては28日に御送付しております。なお、修文 した箇所については、分かりやすいように下線を引いております。まず「1当面の課題」の部分です。26ページの「<3>退去命令の期間延長」につきましては、戒能委員の御意見を踏 まえた修文であります。この部分につきましては、戒能委員から「退去命令の本来の目的は、新居探し、荷物の運び出し期間なのではなく、あくまでも被害者がその住居にとどまる ことの保証ではないか。制度の原則に立ち戻るべきである。その期間も1か月に限らず、もっと長くするべきだ」との御意見がありました。1か月を超えるような大幅な期間の延長に つきましては、相手方の居住の自由や財産権の行使等への著しい影響が及ぶこともあり、今回の法改正では難しいと考えております。ただし、委員の御意見については、その観点 を取り入れ、これを下線部のとおり、書き加えることといたしました。次に30ページの「<7>自立支援の明確化」につきましては、戒能委員の御意見を踏まえた修文であります。この部 分につきましては、戒能委員から「3条のDVセンター機能に自立支援(生活再建支援)をより明確に規定すべきである。現行法の規定では、情報提供だけ行えばよいと解釈される 恐れがある。さらに都道府県に複数のDVセンター設置を義務づけ、人口当たりの設置基準を明記できないか。政令指定都市には設置を義務づけることを検討してほしい。」等の 御意見がありました。複数あるいは政令指定都市における配偶者暴力相談支援センターの設置の義務付け等については、予算、人員体制の確保や各自治体のばらつきの調整等 を行わなければならないことから、中期的課題としているところです。ただし、配偶者暴力相談支援センターの機能が情報提供だけに限られてはならないとの委員の御意見につい ては、同センターのより積極的な取組を求める趣旨で、下線部のとおり加筆しました。次に、「2中期的課題」の部分です。33ページの「<3>電話等による接触の禁止」につきまして は、戒能委員の御意見を踏まえた修文であります。この部分につきましては、戒能委員から「電話は極めてよく使われる接近・威嚇行為であり、恐怖を与えるとともに被害者に接近 するための情報獲得手段となっており、その後の身体的暴力、攻撃へつながることが多い。DVの特質を考慮するならば、電話だけを独立して扱うことは意味がない。したがって、 当面の課題に含めるべきである。また、検討の方向性の最後、「ただし、これは現行の保護命令制度を大きく変更する」以降は不要である。」との御意見がありました。電話等によ る接触の禁止につきましては、生命や身体に対する危害の防止を対象としている現行の保護命令制度の趣旨の変更を必要とするものであることから、中期的課題としているところ です。なお、「現行の保護命令制度の趣旨が不明確である。」という委員の御指摘を踏まえ、これを明確にする意味で、下線部のとおり加筆いたしました。35ページの「<6>外国人被 害者の保護」につきましては、戒能委員と大津委員の御意見を踏まえた修文であります。この部分につきましては、戒能委員から「当面の課題として、在留許可の有無にかかわら ず最低限、一時保護などのDV被害者からの救済を対象とすることを検討すべきである。」との御意見があり、大津委員からも同様の御意見がありました。外国人被害者の保護に つきましては、既に現行法に含まれているところであり、これをあえて確認的に規定する必要性については慎重な検討が必要であると思われること、特に在留資格を有しない者に 対する入管法上の特例を改正法に盛り込むことについては、より慎重な検討が必要であることから、中期的課題としているところです。なお、「外国人被害者の保護対策の徹底が 必要である」という両委員の御意見を踏まえ、実際の運用においてこれを徹底する意味で、下線部のとおり加筆いたしました。次に、「3長期的課題」の部分です。37ページの「<5>子 どもの位置付け」につきましては、小西委員の御意見を踏まえた修文であります。この部分につきましては、小西委員から「DVは家族全体の病理ではない。」との御意見がありまし たので、その御意見を踏まえ、下線部のとおり修文いたしました。以上でございます。それでは、ただいま申し上げた修文箇所を含めた「第2配偶者暴力防止法の見直しに関する 論点」全体及び3人の委員からの御意見につきまして議論したいと思います。なお、本日欠席された林委員と小西委員からは「本案に対して意見はない。」との御連絡をいただいて おります。それではどうぞ御意見をお出しください。
    住田委員
    小西委員と林委員から「意見はない」という御連絡があったということですが、私自身も最終的にはこれで結構かと思っております。その趣旨を明確に議事録に残して いただきたいために一言申し上げますと、今回はこのような形で、急きょ、取りまとめることになったということで、私としては大きな影響や混乱を恐れるので、最小限の手直しにとど めたものであるというふうに理解しております。急いでいるからやむを得ないだろうということで理解はしているのですけれども、本来、中期的課題自体がこの法律の立法趣旨やス トーカー規制法との関係で、きちんと議論して決めるべきものであったというように考えております。ですから、今回、中期的課題というのは決して先の話ではなく、今すぐにでも、3 年後の見直しであれば間に合わせるべきものであったが、今回は時間不足でこういう経過になったのだということを、この改正を非常に心待ちにしておられた皆さん方にもそういう ふうな趣旨であるということを是非お伝えしていただきたいと思います。
    戒能委員
    私は意見を出させていただきまして、今の住田委員と基本的な考え方は同じでありますが、中期的課題は現場や当事者の実情から考えますと、是非「当面の課題」 の方へ移して、立法府で十分議論していただいて、可能な限り、改正の可能性を追求していただきたい、それを議事録に残していただきたい。この考え方は、私は今も変わりません で、こういうふうに3つに分けることで、どういう影響が出てくるかということをちょっと危惧しております。
    島野会長
    中期的課題というのは、本当に短期間でこれを改正すべきというにはあまりにも検討不足という気がいたします。決して先送りの意味ではありません。今から正面にあ げて取り組むべき課題だと考えてはおります。
    前田委員
    基本的に住田先生のおっしゃることと、私、前回申し上げたように同じで、やはり3年後の見直しということできちんとやればもっと進めるところがある。ただ、逆にいう と、私は「当面の課題」の中でもちょっと気になる点が、前回もちょっと申し上げたのですが、「子どもへの拡大」の部分なのですね。ここに書かれた基本的な流れも全く私は同意見 で、場合によって子どもをきっかけに事実上、このDVに対して接近禁止命令が実質的な効果を失っていってしまう、マイナスであるというのはそのとおりだと思うのです。ただ、調整 しておかなければいけないので、私がここで気になるのは、子どもの「親権」とか「監護権」とか、大人の側だけの言葉しか出てこなくて、子ども自身が親と会う利益みたいなものへ の配慮ですね。確かに、暴力をふるうような父親に、母親の下にいる子どもが普通は会いたくないだろうし、会わせるべきでないというのは自然に出てくる面もあるのですが、いろい ろなパターンがあり得るでしょうし、実際上、接近禁止命令が実効的なものであるようにしなければいけない手だてをつくるということは、全く異存がないのです。ただ、一律、子ども に会うことを全部シャットアウトしてしまうような法案に拙速になってしまうことにも非常に危惧感を持つ。ですから、もうここの段階まできて、そんな大きな直しをしていただくということ を申し上げるのはできないことはよく分かっておりますので、26ページの3行目ですけれども、「こうした加害者の行為は、被害者に対する接近禁止命令の趣旨を減殺するもので あり」の後に、「子ども自身の利益に配慮することや、子どもの親権や監護権との調整は必要であるが」。要するに、子どもの視点といいますか、子どもの利益の視点をやはり入れ ておいていただきたい。「子ども」といってもいろいろなバリエーションがあるわけで、それは幼児から中学生、高校生まであるわけですね。もちろん施設に入るときにそんな大きな 子が入っている例は少ないのかもしれないのですけれども、あと「接触禁止すること」も、本当は私は「検討すべきである」くらいが法律的な感覚からいくと穏当なところであって、も ちろんある部分で必要だというのは全面的に認めるのですが、制限することの仕方が両方の法益のバランスをとってやっていくときに、どういうやり方をすればその両方の利益を 損なわないで、最大限、立法目的を達成できるかというようなことを詰めていくと、かなり難しいことになる。ここで、「必要である」と書くこと自体、反対ということではないのですが、 「禁止することを検討すべきである」という方が穏当かなと。今の段階になって、大きな流れの趣旨を変えるという意識はございませんけれども、検討会が議員さんに出していく案と しては、こういう慎重な問題もありますよというのをやはりどこかに入れておいた方がいいのではないかと思って、もちろん個人的な意見として申し上げます。
    島野会長
    立法する側で留意すべき点が、特に子どもの側ということですね。
    前田委員
    子どもの問題に関しては、パッと現象面だけ見ますと、特に被害女性の側から見たら、子どもに接触されたら怖くてというのは非常によく分かるのですが、それだけで いくなら、元の法案のところでスッといっていたのだと思うのですね。やはり、ここで子どもの利益、親と会う利益みたいなものをどうクリアするか。それに関しての、前回教えていた だいた調査研究とか、そういうものを踏まえても、それを大きく全面的に変えなければいけないほどの立法事実はまだ積み上がっていないという感じを私はしたのですね。だから、 調査などで、それは子どもの利益の問題もあるけれども、ネビルジブルに近いほど小さいと。それは理屈をつければそういう議論もあるけれども、実際、そんなことはないよというこ とがある程度はっきりすればいいのですけれども、いろいろな家庭のパターンがあって、そういうやくざな親だけれども、子どもから見たら、親にも会いたいと。ところが、法律は形式 的に親と一切会わせてもらえないというようなことで、あまりにも杓子定規に行き過ぎるのもどうかと思います。だから、そこのところを慎重に検討していただきたいということを申し上 げるので、方向性としてはこのまま進めていただきたいなと思います。
    島野会長
    その場合、子どもが加害者である親に会う利益がないとは言い切れない、あるのではないかということですね。
    前田委員
    ある程度あるのではないかと、私は思うのです。
    島野会長
    そのときは、客観的に見た利益、子どもの意思はお考えになりますか。子どもが会いたいとか、子どもの意思能力といいますか。
    前田委員
    ですから、意思能力とかいいますともう年齢で、意思能力のない子どもに関しては行為をしなくていいかというのはありますけれども、もうちょっと大きな概念で、その 子どもの成長過程において、親の関係をどう見ていくかということだと思うのですね。ですから、そこも含めて慎重に捉えるべきで、だから、私は3年後の見直しくらいに含めてやる のはいいと思うのですが、今回、子どもが一つ大きな目玉になっていますから、この案で出すことを否定しろという気は全くないです。ただ、そこのところをちょっと慎重に、こういう意 見がありますというメッセージは送っておきたいということでございます。
    若林委員
    私も前田委員と同じ趣旨の意見です。子どもといっても、言われたように乳幼児から成人間近まで法律的には入ってしまいますので、ほかの法制度でも15歳以上で あれば意思を聞くようにとか、子どもの権利条約の意見表明権とか、それから子どもに利害を及ぼす行政上、司法上、あらゆる手続に子どもの意思を反映するというようなことの 法制度ともあわせて考えますと、やはり子どもについて年齢で枠を設ける、15歳未満の子どもということに法律としては一応の枠を設けてはどうかということを意見として申し上げま す。
    大津委員
    親権、監護権ということになりますと、今まで離婚調停のときには親権とか監護権で子どもに面会権も含めて会わせないといけないというところで、小さい子どもでも父 親に対しての恐怖があり、私はここで明記されているのが、きっと暴力を受けた母親も子どもも心の傷つきがあるので、そのことに対しては十分な配慮が必要であるということがこ の目的だと思うのですね。それは、多くの被害者女性と子どもたちが調停や裁判のときに父親に会わせると、その後の子どもに対するケアがどんなに大変か、母親や関係者が 会ったことに対してのケアがどんなに大変かということがあると思うのです。やはり子どもは父親の暴力の現場を見て育ってきていますから、大きくなってから子ども自身が判断で きたら、会いたいかどうかというのはあると思いますけれども、そのところを法律できちんと明記していただいて、それは重大な影響があるのだということをここで書いていただきたい と思うのです。だから、DV法でしか出せないものをつくっていただきたいと思います。
    戒能委員
    子どものところは、積極的な方向を示しているということで大変大事なところだし、私は「必要である」というふうに明記していただきたいと思っています。私も子どもの 権利のメンションが一つもないことは問題だとは思っております。しかし、これは保護命令でありまして、危険な状態があることを前提としている。それは母親だけではなくて、私の意 見では子ども自身の問題としても取り上げております。母親が逃げる際に、安全を阻害する要因になるのだ、逃げられないようになるのだということも含めてここでは書かれており ますが、子どもに意志があって親に会うということは確かに子どもの権利であるかもしれません。しかし、DV法ができて、子どもが安全に、生命・身体に危害が与えられないように 会うという権利だという考え方ができてきたのではないかということですね。それから、もう一つは、保護命令であり、6か月だけです。延長しても1年ですから、その後に、あるいは 同時に調停手続があって、そこで面接交渉のことが決められていく。子どもの利益あるいは父親、母親との利益のバランスをどうするかということは、そこで議論すればいいことだ と思っています。年齢の問題は、この報告書でも「同伴する子ども」という限定がついておりますね。ですから、「すべての子ども」という書き方ではないと思います。ただ、15歳未満 だけでいいかというと、特に女のお子さんの場合に、性的な虐待の問題が実はあるわけですね。そういうときに、このDV法でも子どもの安全が守られない。では、児童虐待防止法、 児童相談所では本当に動けるのかといったときに、保護命令がきちんと同伴する子どもにも出てきて、例えば加害者が父親だとしますと、一時保護をしたことを児童相談所から父 親に通知しないという措置もとりやすいとか、立ち入りもしやすいとか、子ども自身の安全を守る方策がここでリンクできる、そういうこともあるのではないか。ですから、本当に実質 的にどうやったら安全を守れるか。そして、保護命令というのは一時的な安全を守るだけの制度であるのだということ、あまり広げて考えるとにっちもさっちもいかなくなってしまうと 思っております。
    住田委員
    25ページから26ページの件で、私としては最小限の修文の意見を出させていただきたいと思います。26ページの最後の3行なのですが、どういう趣旨で修文するかと いいますと、今回はDV法の観点からだけの改正の提案であって、児童虐待法など児童の関係のものについては基本的にはさわらないということだということです。それともう一つ の観点は、子どもを対象にすることもできるのだということをもう少し明確にするという、この2点からです。「こうした加害者の行為は、被害者に対する接近禁止命令の趣旨を減殺 するものであり、子どもの親権や監護権等との調整の上」、これは「必要」という言葉が2回入りましたので、最初の「必要」は削ります。「子どもの親権や監護権等」、ここで子ども の福祉の気持ちも入れます。「等との調整の上、何らかの方法で加害者による子どもへの接触をも禁止することができるように検討すべきである」というような趣旨です。
    前田委員
    住田先生の御意見ですが、ただ少しだけ思いが違うのは、子どもの側の権利というのが「等」の中に入れられてしまうと、今の子どもの権利条約の流れとか、大きな 流れの中でちょっと弱いかなと。大津先生のおっしゃること、非常によく分かるのですけれども、いろいろな親子関係があって、メジャーな部分は先生のおっしゃるとおりだと思うので すが、もっと陰険なDVを働く父親は、母親だけをいじめて子どもにだけはうんとやさしいというパターンもあるということをチラッと聞いたことがあるのですね。そっちの方がもっと私は 悪質だと思うのですけれども、そういう場合に父親は慕っていると。偽の姿かもしれないのですけれども、そういう子どもが父親に会いたいというのをこれで形式的にスパンと切って しまうような形はどうかと思います。それも調べてから、屁理屈を言うけれども、そんなのはほとんどないのだというのであれば消せばいいのだと思うのです。恐らく議論になって、 国会などにいったときには、やはり子どもに対して接触を一切禁止するというのはかなりドラスチックなものですから、詰めたのかという問題になると思うのですね。ですから、そうい うことを検討するという意味で、私、子どもの権利という思いはありますけれども、それを入れなくてもいいです。住田先生のおっしゃった形で直していただければ、私の趣旨、ここの 発言も含めてとおると思いますので、よろしくお願いします。
    島野会長
    分かりました。では、前田委員、若林委員、大津委員、戒能委員、住田委員の御意見を議事録にきちんと載せ、最終的な修文は私にお任せいただければと思います。
    奥山委員
    感想だけですけれども、住田委員がおっしゃったように、この監護権の後ろに「等」を入れることについて、今、聞いている限りにおいて非常に趣旨はよく理解できるし、 私もそれで賛成なのですが、ただそういう形でこれが入ってそれを御覧になった方、この中での議論の実質を見ていらっしゃらない方からすると、せっかくの趣旨が必ずしも適切に 伝わらないのではないか。子どもの親権や監護権というのは、言ってみればこれは親から見たときに子どもに対する権利ですね。今、前田委員がおっしゃっているのは、むしろ子ど もの人権擁護ということで、いろいろなパターンがあるということは分かりますけれども、子どもが親に対して会う権利というか、そういうものの観点でしょうから、「等」だけではそれ が読めないと思います。
    住田委員
    もうちょっと増やしてもいいのだったらいくらでも書けるのですが、「子どもの福祉、子どもの利益」、これは通常の子どもの親権、監護権のときのキーワードですので、 これにそれを入れていただければよいかと思います。
    奥山委員
    もちろんそういうのが入ってくれば十分理解できるかと思います。
    住田委員
    通常は「親権・監護権」ですね。それから、子どもの形からいくと「子どもの福祉、子どもの利益等との調整の上」ということで。
    奥山委員
    そういうふうに分けた方がいいと思います。
    前田委員
    そうしていただければ、よいと思います。
    住田委員
    最小限と思ったのでそうしただけで、気持ちはそうです。
    奥山委員
    委員の趣旨は十分理解しています。
    戒能委員
    子の福祉や、子の利益というのは、一般的・抽象的な概念ですから、そこに含めるのはいいのですが、きちんと調査研究がないということは大きいですね。どういう影 響を与えているのか。それは家裁の現場も同じだと思うのです。そのときに、前提として、一般的・抽象的に言えば会いたいかもしれない、いい父親かもしれないということはあるか もしれないけれども、現実にどうか、きちんと見ないと、この法律の趣旨は生かされないですね。DV法ですから、配偶者が対象で子どもは直接入らないということは重々承知してお りますし、必ずしも母子一体ではなくて子どもに独立性があることも重々承知しております。しかし、現実には子どものファクターは逃げる際に大変大きいし、戻ってしまうということで も大きい。また、子ども自身も影響を受けているということを御理解していただいて、そういう意味も含めて抽象的に表現するという考えもあるのだということをちゃんと書いていただ きたい。
    若林委員
    今、戒能委員の言われた趣旨を明確にするために「子どもの福祉」とか「子どもの利益」というのではなくて、はっきりと子どもが権利主体であるということが分かるよ うに、「子どもの人権保障に配慮し」というふうに入れていただいた方がいいと思います。
    北村委員
    法的なことでよく分からないのですけれども、退去命令の部分で、一般的には被害者が遠くに避難するというような事態になるわけですけれども、被害者の持家であ るとか、そういうことによってもう少し厳しい対応表現ができないのですか。例えば、被害者の持家であることは十分あり得るわけですね。そのときに、退去を命ずるというような表現 を使うことがこのDV法の中では必要ではないのですか、あるいはほかの法律によってそれは十分対処できることなのですか。被害者が遠方に遠方にという、避難という発想が常 にありますけれども。
    島野会長
    28ページの<5>の「退去住居付近のはいかい禁止」、この趣旨に入りますか。
    北村委員
    退去というか、2週間から1か月に延長する云々という部分がありますね。その際に、実は家は被害者のものなのだというときに、加害者を完全に退去させるという、そ ういう必要はないのですか。
    原会長代理
    つまりこの部分が書かれた時点では、住居というものは加害者である夫の持物であることを前提にして話が進められたのではないでしょうか。
    北村委員
    そこら辺が何か工夫がされる必要があるでしょうということです。
    戒能委員
    被害者自身の名義でなくても、同居していて親の家にいるということは大変多いですね。そうすると被害者が逃げて、1か月の退去命令の間しかはいかい禁止が効か ないですね。そうすると、何か変なことになってしまって、1か月の間に親も含めてどこかに逃げないといけないということになりかねない。現実に問題は出てきて、それにどういうふ うにこの法律はこたえるのでしょうかという御質問と思ったのですが。
    大津委員
    退去命令というのは、私は1か月というふうに書いたのですが、確かに親と一緒に住んでいらっしゃって、当事者の方だけが逃げてくるというのもヘルプの場合もある のですけれども、逃げる期間を、その1か月の間にいろいろな準備をするわけです。私は1か月か一生か、もうずっとというとであればいいのですけれども、中途半端な立ち退き命 令では、女性がそのところにとどまっていても、夫がその場所を知っているためにやはりたびたび電話をかけたり、家を訪ねたりというような気配をすると、女性が一つも安心して安 定した生活が望めない。そういう意味では、本当にもう一生であるならばこの法律は生かされるのですけれども、どうしても女性がどこかに行かなければならないというのがこのd vの問題なのかなと思うのですね。
    戒能委員
    今度の提案でも「退去住居付近のはいかい禁止」ということを入れましたね。大津委員のおっしゃるように、中途半端さは一生でないとなくならないのかもしれません。 例えば、接近禁止と同じ期間にするとか、私の考えは1年、少なくとも離婚手続の間はと考えております。根本的な解決にはならなくても多少は効果があるのではないでしょうか。 やはり1か月は短過ぎるのではないかと思います。
    島野会長
    北村委員のおっしゃる論点は、28ページあるいはその前の退去命令期間の延長というところで、問題意識は十分持っている。しかし、当面の改正としてはこれにとど めておくということで取り上げているわけでございます。
    若林委員
    退去命令が、下線部分もありますので趣旨は伝わるのではないかと思いますが、これに記載されていないことなのですが、今ごろこういうことを言うのは時宜に遅れ ているかもしれませんが、被害者については不十分ながらも今回のDV法によって支援センターとか警察の意識も変わり、さまざまな行政上の配慮とか制度とか施設とか、そういっ たものが徐々に準備されつつありますね。刑事政策の面から考えると、加害者に対して2週間から1か月に延長して退去命令が出るということになると、加害者はどういう生活をす るのだろうということを考えますと、加害者が再発しないように、あるいは他の犯罪を起こさないようにという社会政策的、刑事政策的な配慮というのが必要ではないかということを 懸念いたします。何らかの形で、今後、長期的課題として検討されることだと思うのですが、実務的な経験からすると、退去命令が出ると加害者はもう思慮分別はもちろん、荒れ 狂った状態になるわけです。それが2週間で、カプセルホテルとか友人知人とかそういうところに身を寄せて緊急にしのぐ、加害者の立場から考える社会的資源としてはそういった ものしかないと思うのです。それが1か月ということになると、かなり大変なことになるのですね。加害者の日常生活の安定といいますか、多分、職業もあるというようなことを考えま すと、職場でつつがなく体面を維持して、職を失わないようにするということをまず考えないといけないでしょうから、それが加害者に対して懲罰的な意味で退去命令というのを考え るのであれば、それは1か月でも半年でもということで、あとのことは考えなくてもいいということになるのかもしれませんが、そのことによって新たな犯罪の誘発になるとか、さまざま な問題を懸念します。ですから、ぜひその辺のことを何か早急に社会資源として考える必要があるのではないでしょうか。
    島野会長
    若林委員の御立場は、当面の課題にこの部分の法律改正は賛成というか、よろしい、あえて異は唱えないと。しかし、それによって発生する加害者への手当て、これ をどの部分でどのように手当てについて検討すべきというお考えですか。先ほどは長期的とおっしゃいましたけれども。
    若林委員
    その辺を御議論いただきたいと思います。
    島野会長
    分かりました。今の若林委員のお考え、いかがでしょうか。
    戒能委員
    働いていればお金もあるし、泊まるところもあると思います。それから、すぐに犯罪に結びつく人や、凶悪な人はいるかもしれませんが、ほとんどが妻だから暴力をふ るうという人が多いのではないかと思います。今までの調査などから、推測の域を出ませんけれども。加害者の再発を抑えるようにケアをしていくことは、こういう法律をつくる以上、 必要だというのはそのとおりなのですが、1か月で具体的にどういうことが考えられるのでしょうか。
    原会長代理
    カプセルホテルが想定されていたのでしょうか。
    戒能委員
    被害者もカプセルホテルに泊まることがとても多いし、被害者とどういうふうにバランスをとればいいのでしょうか。
    垣見委員
    つい最近、私はいわゆる加害者から相談を受けました。奥さんは保護所で一時預かっていただき、その後、どこにおられるのか場所は分からない状況で、相談に来ら れた方は、相当憔悴していて、なぜ奥様がそういう状態で自分から離れていってしまったのか理解できない旨縷々話されました。その様子や話を伺いますと、やはり加害者につい てもケアが必要な部分があるのだろうと感じました。そのケアをしてやらないと、自分が逆に被害者のような感じになって異常な行動に出るというか、被害者との関係のトラブルを起 こしてしまうことになりかねないと思いました。被害者の心情等についても知識・経験を有している方が加害者をケアし、トラブルを大きくさせないようにする必要があると痛感いたし ました。
    戒能委員
    ただ、そういうふうに感じて自主的においでになれば、被害者の意識の固まりにならないように、それから本人もいろいろ考えていることを聞くというのはとても大事なこ とだと思うのです。問題は自主的にほとんど来ないというところで、だから長期的にもう少しきちんと、本当に教育のところからやる。また、例えば受刑者の教育や、保護命令違反の 後の保護観察の問題などの検討をきちんとしましょうということだと思うのですね。民間でも今幾つかやっているようですが、そういうお話を聞いても、そこまでたどりついた人はかな り考えようとしている人なのですね。でも、大半はそうではないので、どうアプローチするかとても難しいと思うのです。だから、お考えは本当によく分かって、必要性も感じておりま すけれども、実際に社会資源として具体的にやるのは難しいと思います。
    島野会長
    若林委員は、とにかく1か月、家から出されて接近禁止、この期間の暮らしぶりをどうするかということをおっしゃっているわけですか。
    若林委員
    はい。実際に家事事件の非常に激しい対立関係を見ていますと、物事を一度決断して、その直後、住まいに火をつけるという事件を経験したことがあります。それか ら、自分が焼身自殺をするとか、そういう経験があります。そういったことで、加害者の思考というのはちょっとなかなか難しいものがあって、いろいろリスクを伴う。だから、何かサ ポートするシステムがある方がいいのかなと思うのです。
    島野会長
    家事調停で離婚の話が持ち上がった場合は、そこはじっくりと家庭裁判所で取り組めますから、加害者というよりは夫ですね、配偶者のカウンセリング的なこともなさ るわけです。離婚調停に展開していったら、そこではケアはかなりされると思います。
    若林委員
    調停でのプロセスは、あくまで当事者の任意のプロセスですから、そこではそれほどシリアスな問題は起きないのですが、訴訟に移行するとかなりインパクトが強く て、東京地裁で廷吏さんを刺した事件がありましたね、第1回弁論期日に刃物を持って。今は東京地裁に入るのに刃物を持ったら入れませんからそういうことはないのでしょうが、 裁判所を出たところで待ち伏せをするとか、そういうことは十分考えられます。
    住田委員
    この話はやりだしたらすごく長くなるのと、きょう小西先生がいらっしゃらないので、私としては確たることが言えないのですけれども、これは中期的ないし長期的な課 題として今後も検討していくことになるのだろうと思っています。今、若林先生がおっしゃるのは、保護命令が出た後の加害者対応ですけれども、私自身、保護命令違反で刑事処分 になっても、場合によっては不起訴になったとか、罰金ですぐ出たとか、執行猶予で出たとか、こういうときの社会内処遇になったときに、弁護士がついていたけれども、ちゃんと対 応できているのだろうかと、その心配も実はあるわけです。そういう意味では、場面場面にその加害者対応というのは気になるところはたくさんありますので、あまりここで今検討し ても実りが今日は出ないのではないかという気がいたしました。ただ、今のことで言いますと、資料15、DV法の保護命令違反事件調査表、今回中身をまとめていただいて非常にあ りがたかったのですが、以前、質問させていただいたのは、さっき言いましたように実刑にならないで、もしくは実刑になってもいいのですけれども、その後、社会に戻ってきたときに どういうふうな方策をとられているかということを是非調査して、教えていただければ非常にありがたいと思います。特に、どんどん不起訴が多くなってきているようなのが気になっ ていまして、どのような刑事政策上の配慮をしておられるかということも聞かせていただければと思っております。
    島野会長
    せっかく各省庁からお見えいただいていますので、既に述べられた論点あるいは新しい論点について御意見をいただきたいと思います。
    法務省
    私の方から若干感想めいたことを幾つかお話しさせていただきたいと思います。まず、前半の方で子どもの関係のお話が各委員の先生方からたくさん出ましたので、こ ちらとしても興味深く聞いておりました。保護命令を受けた者の、被害者が同伴する子どもへの接触についてどうするのかということについては、本日もいろいろな根拠付けがあった と思います。それは前回も同じで、まさに子どもを守るのだという考え方もあれば、被害者を守るのだという考え方、それはいろいろあろうかとは思うのですけれども、いずれにしても 何らかの形で規制をかけるべきであるという御意見がこの専門調査会においては多かったのかなというような認識をしております。この点に関しまして、被害者が加害者の下を離 れると、その離れたまさに特に直後なのだと思うのですけれども、加害者から例えば有形無形の追及がある。そういうことによって、被害者が恐怖感を抱くことがあるということは、 私どももそこは十分理解できるところでございますし、また、内閣府で調査検討された被害者でもある程度裏付けになるようなことが出ているのではないかなというふうに考えてい るところでございます。本日の話を伺っていて、若干、気になっているのは子どもの関係のところ、今の調査報告書の案では2カ所のところで記載がされているのではないかという ふうに認識しておりまして、まさに第1点が「当面の課題」のところで掲げられておりますのと、もう一つは「長期的な課題」というところの最後に、子どもの位置づけということでまさに 子どもの利益を中心の方でとらえたような記載の項目があると思うのですね。本日の議論をお聞きしておりましても、そこら辺はある程度いろいろな方向からの御意見が出ていると 思いますので、そこら辺、適宜、分かりやすいような形で最終的にまとめていただければ大変ありがたいなという感じで思っております。そのことの関係で、今、「当面の課題」として 挙がっているところの「子どもへの拡大」の改正の方向性というところなどを拝見しておりますと、まさに一つの考え方として、子どもへの接近を禁止することによりまして配偶者の生 命・身体の危険の発生を防止するのだと、こういう考え方に基づいてお考えになっているのだろうと考えているところなのでありますけれども、先ほど前田委員の方からお話が出た と思いますけれども、今後の課題としてはそれをやるだけの根拠というものがどれだけあるのかということがまさにこれから議論していくべき問題になってくるのだろうと思うのです ね。具体的に多少考えたところでいうと、例えば具体的には保護命令を受けた後に、その保護命令を受けた人が実際どの程度被害者の子どもあるいは子どもに限らないのかもし れませんけれども、働きかけるといった行為が実際にどの程度行われているのだろうかといったことでありますとか、あるいはそのような働きかけがあったときに、例えば被害者で あり、また周囲の人がいるでしょう、DVセンターや警察とか、またさらに周りの方もいらっしゃると思いますが、そのような方は実際にどのような対応がとられているのだろうかと。ま た、子どもへ手紙を書いたり、あるいはどこかで会ったりというようなことがあった場合に、被害者が加害者の下に戻ることを余儀なくされるという、どういう経緯でこういうことになる のかという、実例があるのかといったものについて、何分、これもまさに時間がなかったということにもなるのかと思いますが、やはり率直に申し上げると、なかなか客観的な資料と いうところまでは揃っていないのかなというところもありまして、こちらとしても最近お話を聞かせていただく機会がございますので、そういう意味でこちらの方も一つひとついろいろな お話を聞きながら勉強させていただいているという状況でございます。まさに改正の必要性をもし検討するということになってまいりますれば、やはりこのような立法事実となるよう な事情ということが客観的に明らかになってくるということが大変大事なことになってくると思いますので、ぜひその辺のところの調査研究といいますか、そこら辺のところをぜひ今後 とも続けていただければというふうに思っているところでございます。
    島野会長
    ありがとうございました。警察庁はどのようにお考えですか。
    警察庁
    特別ありませんけれども、DVの裁判所での扱いの例というのは、これはDV法違反があるものが並んでいるのですね。実際、警察の取り扱いというのはDV法だけでな く、一般刑事事件で扱えるものは一般刑事事件で多く処理していますので、この何倍もあるとお考えになっていただければいいのです。DV法というのは、警察の関与は相談が来た ときの保護命令を出すために対応するのと、あとは保護命令違反の検挙です。その保護命令違反で検挙するよりもっと刑法で重いものはいくらもありますから、刑法に触れる場合 であれば、DV法違反以前に刑法で対応するのが基本でございます。あと、加害者の話が出ましたけれども、はっきり言えば理由がある相談かどうか分かりませんけれども、警察 にもかなり加害者からの相談が来ているのも現実ですし、自殺した事例もあります。あと暴力の原因が例えば奥さんがパチンコで金を大分浪費するなどが原因であったりとか、い ろいろなこともありますので、ある程度加害者への対応というのは現実にはやらざるを得ないですね。
    島野会長
    厚生労働省、何かありますか。
    厚生労働省
    いろいろ貴重な御意見を聞かせていただきました。私の感想めいたことでございますけれども、特に保護から自立ということが重要だという御意見を多くいただいて おります。その自立支援の問題につきましては、当座しのぎをどうするかという話からはじまって、徐々にどうやってまた生活に復帰していくかという面では、精神的なケアもあれ ば、またどうやって今度は仕事を見つけるとか、家を見つけるとかということがあるかと。本当にさまざまな、ものすごく多岐にわたる問題だと思っております。また、実際にそういっ た支援をする人たちがDVに対する理解がないということで、被害者の方がさらに傷つくといったことも多く聞いておりますので、本当にかなり大きな問題でございますので、どういっ た支援が必要なのか、どのように進めていけばいいのか、またいろいろ御意見を伺いながらそこはこちらとしてもいろいろ考えていきたいというふうに思います。この場でこういうこと がということはなかなか言いかねる面がございますけれども、そこはいろいろ御意見を伺いながら勉強していきたいと思います。
    島野会長
    30ページに「自立支援について明文で規定すること」、これは検討になっているのですね。さらに最後の「なお」書き、修文した下線のある3行をこのように書くことで支 援センターが運用でも自立支援で動く部分というのがイメージされますか。
    厚生労働省
    実際問題として、センターというのは婦人相談所であったり、福祉事務所であったり、あるのですけれども、やはり現実にはかなり各種機関と連携してやっていると いうところもありますし、連携というのが一番重要ではないかと思っておりまして、そこは自ら手掛ける部分と、あとよりふさわしいところにうまくつないでいく。つなぐときにどこまで一 生懸命つないでいくかということがございますので、ここでおっしゃっている趣旨というのは非常に分かりますが、そこを法律でどのようにというのはなかなか今難しいなという感じが します。
    島野会長
    DV防止法に、特にDV被害者についての自立支援について、<7>は、実際上の運用も指摘して、専門調査会は今のままでいいと思っているわけではないのですね。連 携といっても、もう少し何かイニシアチブをとって積極的なアクションをしてもらえないかなという考えはあるのですけれども。
    厚生労働省
    センター等の対応ということになりますと、内閣府の方でもその辺のお考えがあると思いますので、そこはちょっとお聞かせいただければと思います。
    島野会長
    自立支援については、今回はこういう30ページの最後のまとめ方でよろしいでしょうか。
    瀬地山委員
    今回については全くこれでいいのですが、自立支援の問題というのは恐らくDV法の範囲をある意味では超えていて、女性の就業状況そのものの問題なわけです ね。被害者の女性の就業状況を見る限り、パート層で若干高い傾向があるなどデータを元に対策を考える必要があると思います。母子家庭の問題とも恐らくつながっていくはず で、今、婚姻の件数の4割くらい離婚があるわけですから、多分、それと一つは重なっていくような問題なのではないかと思っています。そういうデータはあまりないですね。
    事務局 あまり踏み込んだ分析をしておりません。
    警察庁
    自立支援の就業などに関しても、警察がいろいろやっておりますけれども、当面の保護だけで手いっぱいというのが関係機関も含めて現状ではないでしょうか。
    大津委員
    自立支援に関して本当に頭が痛いのです。というのは、ほぼ2週間が緊急避難所では滞在期間なのですが、2週間で自立するためにはさまざまな取組がないと出て いけない現状なんですね。もちろん、その後、母子支援施設に入られたり、単身者であれば婦人保護施設に入られたり、アパートに行かれるのですが、その地域に行ってからがさ まざまな問題が起こってくる。それは例えば子どもさんに関しては登校拒否の問題、いじめの問題、それからお母さん自身がちょっとメンタル的な方の場合には、支援者がそばにい ないので、より深い心の問題を持っていかれるということがあるのです。ヘルプでは、例えば地域の人たちにつなげるとすると保健婦さんであったり、民生委員であったり、その連携 をこれからどうやって一緒にやっていくのかということを考えています。ですから、まずアパートに行くにしても、だれが保証人になるのか、その辺がとてもネックでして、保証人の要 らない不動産屋さんを地域で探すとかいうことも必要なのだと思いますが、本当に自立支援に関しましてはこれから長期的に取組をしていかなければならないと思っております。
    島野会長
    それでは、御議論ありがとうございました。「配偶者暴力防止法の施行状況等について」につきましては、本年1月21日の男女共同参画会議(第9回)におきまして、内 閣官房長官からその調査検討を行うよう御指示を受けていたものでありますが、ただいまの議論でいただいた皆様の御意見を踏まえて、7月16日に開催される男女共同参画会議 (第11回)に報告することといたします。これはあくまで会議への報告になります。会議で決定という形をとるものではありません。なお、本案の調整につきましては、これまでの本専 門調査会の報告書と同様に、私と原会長代理とで相談して行わせていただき、最終的な文言につきましては、私に御一任させていただきたいと考えておりますけれども、いかがで しょうか。
    〔異議なし〕
    ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。なお、最終的な報告書につきましては、委員の皆様には男女共同参画会議に報告する前に お送りしたいと考えております。次に、2つ目の議題、「今後の専門調査会の進め方について」の検討に移ります。資料2をごらんください。「配偶者暴力防止法の見直し」に関する 検討は今回で終了し、次回からは昨年の12月から中断していた「女性に対する暴力全般」に関する検討を再開する予定です。それでは内閣府から説明をお願いいたします。
    村上内閣府男女共同参画局推進課長
    資料2に日程の予定が書いてあります。今、会長からご説明がありましたけれども、この「配偶者暴力防止法の見直しに向けた検討につ いて」は今回をもって終了いたします。来年1月に男女共同参画会議、親会議の開催が予定されていますけれども、そこでこの専門調査会におけるこれまでの議論の結果を報告 するための取りまとめなどを行いたいと予定いたしております。それに向けまして、具体的には次回の9月の22回会合では、女性に対する暴力についての今後の課題、女性に対す る暴力を根絶するための基盤づくり、最終的に24回会合で取りまとめを行い、それからまたそれ以降の検討テーマについても検討していきたいというような、あらあらの日程として はこのようなことを考えております。
    島野会長
    今後の会合について、ただいま説明があった予定どおり取り進めてよろしいでしょうか。

    (異議なし)

    それでは、そのようにさせていただきます。以上で議事は終わりま す。次に、資料3を御覧ください。事務局に第20回会合の議事録案をまとめていただきましたが、これにつきましてはこのとおり決定し、内閣府のホームページ等で公開することとさ せていただいてよろしいでしょうか。
    〔異議なし〕
    それでは、第2回会合の議事録につきましては、速やかに公開することといたします。これで女性に対する暴力に関する専門調査会 の第21回会合を終わりにいたします。本日はどうもありがとうございました。