第1節 すべての女性が輝く社会づくりに向けた政府の動き

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第1節 すべての女性が輝く社会づくりに向けた政府の動き

(女性の力は我が国最大の潜在力)

我が国では,少子高齢化による人口減少社会への突入という大きな課題に対応しつつ,経済を安定的な成長軌道にのせ,国民一人一人が豊かさを実感できる社会を実現するために,経済社会構造の抜本的な変革を進めることが求められている。

こうした中,平成24年12月に発足した第2次安倍内閣では,女性の力を「我が国最大の潜在力」と捉え,その力の発揮を持続的な経済成長のためにも不可欠なものとして,我が国の成長戦略の中核に位置づけた。

(日本再興戦略から新たな成長戦略へ)

「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)では,「女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブの付与等」,「女性のライフステージに応じた支援」及び「男女が共に仕事と子育て・生活等を両立できる環境の整備」の3つの柱により,女性の出産・子育て等による離職の減少や,指導的地位に占める女性の割合の増加に向けた施策を盛り込んだ。これに基づき,待機児童解消のための保育所等の整備や保育士確保,育児休業給付の拡充等が進められた。

さらに,翌年の「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月閣議決定)では,我が国最大の潜在力である「女性の力」は,人材の確保にとどまらず,企業活動,行政,地域等の現場に多様な価値観や創意工夫をもたらし,家族や地域の価値を大切にしつつ社会全体に活力を与えるものと位置づけ,女性の更なる活躍推進に向けた施策を,「育児・家事支援環境の拡充」,「企業等における女性の登用を促進するための環境整備」及び「働き方に中立的な税・社会保障等への見直し」の大きく3つの柱で示した。

これに基づき,小学校入学後に女性が仕事をやめざるを得ない状況となる,いわゆる「小1の壁」を打破するための「放課後子ども総合プラン」の策定(平成26年7月)や,「子育て支援員」の創設(27年4月),女性の活躍推進の取組を一過性のものに終わらせることなく着実に前進させるための新たな法的枠組みの検討,働き方に中立的な税制や社会保障制度等への見直しに向けた検討等が進められた。

(女性の活躍推進に向けた全国的なムーブメントの創出)

女性が輝く社会の実現に向けた全国的なムーブメントを創出するため,平成26年3月に首相官邸で「輝く女性応援会議」を開催するとともに,同年6月に活躍する女性とその応援者のリレー投稿による「輝く女性応援会議オフィシャルブログ」を開設,同年7月からは全国6か所で地域版「輝く女性応援会議」を開催した(コラム1参照)。

また,同年9月には,「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」(World Assembly for Women in Tokyo,略称:WAW!)が開催された。世界各国及び日本各地のトップリーダーが出席し,日本及び世界における女性の活躍促進のための取組について議論が行われ,その成果を国内外に発信した。

コラム1 地域版 輝く女性応援会議

(「すべての女性が輝く社会づくり本部」の設置)

平成26年10月,政府は,全閣僚を構成員とする「すべての女性が輝く社会づくり本部」を設置した。また,27年春頃までに早急に実施すべき施策を「すべての女性が輝く政策パッケージ」(以下「政策パッケージ」という。)として取りまとめた。

政策パッケージでは,「安心して妊娠・出産・子育て・介護をしたい」,「職場で活躍したい」,「地域で活躍したい,起業したい」,「健康で安定した生活をしたい」,「安全・安心な暮らしをしたい」及び「人や情報とつながりたい」の6つの柱により,女性が家庭・職場・地域でそれぞれの希望に応じて輝くための施策を提示し,着実に実施してきている。

(「暮らしの質」向上検討会)

すべての女性が輝くためには,家庭や地域,職場といったそれぞれの場において,女性の「暮らしの質」を高めることが不可欠である。こうした取組の結果,女性だけでなく,男性を含めた社会全体の「暮らしの質」も高まるものと考えられる。

このため,政策パッケージを踏まえ,女性の「暮らしの質」を高める財・サービスを見出し,その実現化を進めるための方策の検討に資するよう,女性活躍担当大臣の下に「暮らしの質」向上検討会を立ち上げ,女性が安全で快適に暮らせる空間づくりや,女性の暮らしのネットワーク,女性が活動しやすくする工夫等,女性の暮らしの質を向上するための官民の取組について検討を行った。同検討会は,平成27年5月に提言を取りまとめた。

(新たな法的枠組みの構築)

「『日本再興戦略』改訂2014」において女性活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築の検討が盛り込まれたことを受け,政府は,労働政策審議会における議論等を経て,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を国会に提出した2

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(以下「女性活躍推進法案」という。)では,働くことを希望する女性が,職業生活において,その個性と能力を十分に発揮して活躍できるよう,国及び地方公共団体が必要な施策を策定し,実施することに加え,活躍の場の提供主体となる事業主が,女性の採用や教育訓練,昇進等の職業生活に関する機会の積極的な提供,職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備等の取組を自ら実施することを促すための新たな枠組みを設けている。具体的には,政府による基本方針の策定,地方公共団体による推進計画の策定,事業主3による自らの事業における女性の活躍状況の把握,改善すべき事情の分析,数値目標の設定を含む行動計画の策定・公表,女性の職業選択に資する情報の公表等を求めている4

このほか,優れた取組を行う一般事業主の認定や,国や地方公共団体による支援措置,地域における協議会の設置等についても規定し,女性本人の意思を尊重しつつ,希望する全ての女性が職業生活において活躍できるようにすることを目指している(I-特-1図)。

I-特-1図 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案の概要別ウインドウで開きます
I-特-1図 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案の概要

2同法案は,平成26年10月17日に閣議決定,第187回臨時国会に提出されたが,審議未了により廃案となった。その後,27年2月20日に再度閣議決定,第189回通常国会に再提出された。

3国及び地方公共団体(特定事業主),民間事業主(一般事業主)を指す。

4常時雇用する労働者の数が300人を超える一般事業主については義務,常時雇用する労働者の数が300人以下の一般事業主については,事務負担への配慮の観点から,努力義務としている。

(地域の取組の重要性)

ここまで見てきたような政府の取組の影響もあり,経済界において,大企業を中心に,役員への女性登用や女性の活躍状況の自主的な情報開示の動きが進むなど,女性の活躍推進に向けた社会の気運は大きく高まってきた。

また,女性の就業者数及び生産年齢人口(15~64歳人口)に占める就業率(年平均)は,平成20年のリーマンショック以降,伸びが停滞していたが,24年から26年にかけては,経済の好転とも相まって,就業者数は75万人,就業率は2.9%ポイントの伸びとなった(I-特-2a,b図)。

一方で,総務省「労働力調査(詳細集計)」(平成26年)によると,女性の非労働力人口のうち就業を希望する者は303万人にのぼり,潜在力としての女性の力はまだ大きいと言える。

今後,人口減少や高齢化といった大きな課題に対応しつつ,政府が掲げる「すべての女性が輝く社会」の実現を確実なものにしていくためには,女性が家庭,地域,職場等あらゆる場で能力を発揮できる環境整備を進めることが必要である。

こうした中,女性が置かれている状況や女性の活躍に関する意識は,地域により大きく異なることから,各地域がその実情に応じて主体的な取組を進めていくことが一層重要になってくると考えられる。

そこで,次節以降では,都道府県別に見た女性の活躍の現状や,仕事と暮らしの実態を概観し,今後の課題等を明らかにしていく。

I-特-2図 男女別の就業者数及び就業率(平成16→26年)別ウインドウで開きます
I-特-2図 男女別の就業者数及び就業率(平成16→26年)

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