第2節 地方の政治・行政・経済分野における女性の活躍

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第2節 地方の政治・行政・経済分野における女性の活躍

1.地方の政治分野における女性の活躍

(地方議会の女性議員割合は緩やかに増加)

地方議会における女性議員の割合を見ると,都道府県議会,市議会,町村議会及び特別区議会のいずれにおいても長期的に上昇しているが,昭和51年の調査開始以降の伸びは,年平均0.2%ポイント(都道府県議会及び町村議会)~0.5%ポイント(特別区議会)にとどまっている(I-1-7図参照)。

特に町村議会では,4割近い議会で,依然として女性議員がゼロとなっている(第1章第2節参照)。

(女性議員の割合が高い地方議会は,東京圏や近畿地方に多い)

都道府県議会,市区議会及び町村議会の女性議員の割合を都道府県別に見ると5,平成26年12月31日現在,これらのいずれも全国平均以上である都道府県は,東京都,神奈川県,長野県,滋賀県,京都府及び兵庫県の6都府県となっている(I-特-3図)。これに,市区議会及び町村議会で全国平均以上である都道府県6を含めて見ると,一部に例外はあるものの,女性議員の割合が高い地方議会は,東京圏や近畿地方に多い傾向があると言える。一方,東北地方,北陸地方,四国地方及び九州地方では,女性議員割合が全国平均を下回る地方議会が多く見られる。

I-特-3図 地方議会における女性議員の割合(都道府県別,平成26年)別ウインドウで開きます
I-特-3図 地方議会における女性議員の割合(都道府県別,平成26年)

I-特-3図 [CSV形式:3KB]CSVファイル

I-特-4図 政治分野における女性の参画状況マップ別ウインドウで開きます
I-特-4図 政治分野における女性の参画状況マップ

I-特-4図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

5市区議会及び町村議会における女性議員の割合は,各都道府県の全市区議会及び全町村議会の女性議員数が各都道府県の全市区議会及び全町村議会の議員数に占める割合。

6市区議会及び町村議会で女性議員割合が全国平均以上であるのは,本文で記載した6都府県のほか,埼玉県,千葉県,三重県及び大阪府。

(女性の当選人割合は立候補者割合に比例して増加)

平成23年統一地方選挙における地方議会の立候補者と当選人の女性割合7を都道府県別に見ると,女性の立候補者割合が高い都道府県で,女性の当選人割合が高く,おおむね比例関係にある(I-特-5a図)。なお,東京都,埼玉県,京都府,秋田県,鹿児島県等では,立候補者の女性割合よりも当選人の女性割合が上回っている。

また,内閣府男女共同参画局「地域における女性の活躍に関する意識調査」(平成27年。以下「女性活躍意識調査」という。)において,地方の首長や議員に女性と男性の双方が立候補した場合,どちらに投票するか聞いたところ,都道府県平均では68.8%,都道府県別に見ても65.4%(富山県)~73.0%(高知県)の者が,性別にかかわらず立候補者の届出政党や主張する政策内容により判断するとしている。

政治分野における女性の活躍を進めるには,これまで女性の立候補者が少なかった地域も含め,まずは女性の立候補者を増やすことが重要である。

7平成23年4月の統一地方選挙において,各都道府県内で実施した全ての議会議員選挙を合算した数値を用いている。

(若年の立候補者割合が高いと女性の立候補者割合も高い)

次に,平成23年統一地方選挙における地方議会での25歳以上45歳未満の立候補者が全立候補者に占める割合(男女計)と全立候補者に占める女性割合の関係を都道府県別に見ると,25歳以上45歳未満の立候補者割合が高い都道府県で,立候補者の女性割合が高い傾向が見られる(I-特-5b図)。

さきに見たように,女性の立候補者割合が高い都道府県で女性の当選人割合が高い傾向があることを合わせて考えると,男女にかかわりなく若年層の立候補者を増やし,若年層の政治参画を通じた地方政治の活性化を進めることで,結果的に女性議員割合が高まっていく可能性も示唆される。

I-特-5図 平成23年統一地方選挙における女性候補者割合,若年候補者割合,女性当選人割合の関係別ウインドウで開きます
I-特-5図 平成23年統一地方選挙における女性候補者割合,若年候補者割合,女性当選人割合の関係

I-特-5図 [CSV形式:9KB]CSVファイル

2.地方の行政分野における女性の活躍

(地方公共団体の管理職の女性割合は緩やかに増加)

地方公共団体の管理職8に占める女性の割合を見ると,都道府県,政令指定都市,市区及び町村のいずれにおいても,長期的には着実に増加しているが,平成16年から26年までの伸びは,年平均0.2%ポイント(都道府県)~0.6%ポイント(市区)にとどまっている(I-1-9図参照)。

8地方公共団体の「管理職」とは,本特集においては,本庁の課長相当職以上をいう。ただし,内閣府「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」では,平成25年以降,地方公共団体の管理職を「管理職手当を支給されている職員(管理又は監督の地位にある職員)のうち条例等で指定する役職」と定義して調査している。

(都道府県管理職の女性割合は地方公共団体により様々)

平成26年4月1日現在で,都道府県における管理職の女性割合を地方公共団体別に見ると,東京都が14.9%,鳥取県が12.0%となる一方,依然として5%に満たない県も見られるなど,都道府県により様々である(I-特-6図)。

平成16年から26年までの変化を見ると,鳥取県,宮城県,山梨県,神奈川県,徳島県等で大幅に増加した一方で,女性割合が減少しているところも6府県あるなど,進捗状況にも差が見られる。

I-特-6図 地方公務員(都道府県)管理職に占める女性の割合(都道府県別,平成16,26年)別ウインドウで開きます
I-特-6図 地方公務員(都道府県)管理職に占める女性の割合(都道府県別,平成16,26年)

I-特-6図 [CSV形式:49KB]CSVファイル

(市区町村管理職ではさらに団体間の差が大きい)

市区町村の管理職の女性割合は,都道府県以上に団体間の差が大きい。内閣府「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」によると,平成26年4月1日現在,管理職の女性割合が30%以上の市区町村は28都道府県に計61団体(全市区町村の3.5%)あり,最も割合が高いのは徳島県板野町(54.1%)となっている。その一方で,女性管理職がゼロの市区町村も42都道府県に307団体(全市区町村の17.6%)ある。

都道府県別に,管理職の女性割合が30%以上の市区町村数の割合について,平成16年から26年までの変化を見ると,特に香川県,徳島県,滋賀県,大阪府,和歌山県等で大きく増加している(I-特-7図)。一方,女性管理職がゼロの市区町村数は,16年には全都道府県に計1,169団体(全市区町村の37.4%)あったことに比べると,各都道府県とも減少しており,滋賀県,大阪府,広島県,徳島県及び香川県では,女性管理職がゼロの市区町村はなくなっている。

I-特-7図 管理職の女性割合が30%以上の市区町村割合(都道府県別,平成16,26年)別ウインドウで開きます
I-特-7図 管理職の女性割合が30%以上の市区町村割合(都道府県別,平成16,26年)

I-特-7図 [CSV形式:50KB]CSVファイル

(都道府県上級職の女性採用割合は2割を超える)

地方公共団体の管理職の女性割合を高めていくには,まずは職員全体に占める女性割合を高めることが必要である。そこで,地方公務員採用試験合格者に占める女性割合の推移を全国平均で見ると,平成7年以降は,都道府県がおおむね2~3割の間,市区が5割前後で推移している(I-1-8図参照)。

都道府県の上級職に限って見ると,平成16~25年度の各年度の採用者に占める女性割合の平均値は,全国平均で21.2%となっている。特に,沖縄県及び千葉県では30%を超えているほか,香川県,岩手県,山梨県,高知県及び鳥取県でも25%を超えるなど,女性の上級職を多く採用している(I-特-8図)。これらの県の中には,現時点では管理職の女性の割合が必ずしも高くないところもあるが,将来的には女性の管理職が大きく増加することが期待される。

ただし,女性の採用拡大の取組だけでなく,女性が就業を継続でき,管理職を目指すことができるような環境整備を進めていくことも重要である。また,その際,単発的な取組でなく,様々な取組を組み合わせ,総合的・計画的に進めていくことが有効9と考えられる。

I-特-8図 地方公務員(都道府県)上級職採用者に占める女性の割合(都道府県別,平成16~25年度平均)別ウインドウで開きます
I-特-8図 地方公務員(都道府県)上級職採用者に占める女性の割合(都道府県別,平成16~25年度平均)

I-特-8図 [CSV形式:44KB]CSVファイル

9内閣府男女共同参画局「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」(平成21~26年度)により,平成21~25年度の5年間,「採用目標の設定」,「管理職登用目標の設定」,「計画の策定」,「採用・登用担当者の設置」及び「庁内意見交換会を実施」の5つの取組のうちいずれも実施しなかったか,または1つだけ取り組んだ都道府県と,その他の都道府県に分けて,21~26年度にかけての管理職の女性割合の伸び(26年度の管理職の女性割合と21年度の管理職の女性割合のポイント差)を見たところ,前者(0.4%ポイント増加)より後者(1.6%ポイント増加)の方が伸びが大きかった。

3.地方の経済分野における女性の活躍

(管理的職業従事者の女性割合は増加傾向)

総務省「労働力調査(基本集計)」によれば,平成26年における女性の管理的職業従事者は16万人であり,8年の22万人をピークに緩やかな減少傾向にある。男性の管理的職業従事者は,5年以降大きく減少していることから,管理的職業従事者に占める女性の割合は,相対的に増加傾向にあり,26年は11.3%となっている(I-特-9図)。

ただし,国際的に見ると,我が国における管理的職業従事者に占める女性の割合は,依然として低い水準にある(I-2-11図参照)。

I-特-9図 管理的職業従事者数(男女別)及び女性割合の推移(昭和40→平成26年)別ウインドウで開きます
I-特-9図 管理的職業従事者数(男女別)及び女性割合の推移(昭和40→平成26年)

I-特-9図 [CSV形式:3KB]CSVファイル

(管理的職業従事者の女性割合は近畿地方以西で高い傾向)

総務省「就業構造基本調査」(平成24年)により,管理的職業従事者に占める女性の割合を都道府県別に見ると10,高知県,青森県及び和歌山県の順に高くなっている(I-特-10図)。地域別に見ると,一部に例外はあるが,近畿地方以西では全国平均(13.4%)以上のところが多く,特に四国地方は全県で全国平均以上となっている。一方,近畿地方より東では全国平均を下回るところが多く,特に北陸地方と東海地方は全県で全国平均未満となっている。なお,近畿地方の中でも東側(滋賀県及び奈良県)は,全国平均未満となっている。

I-特-10図 管理的職業従事者に占める女性割合(都道府県別,平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-10図 管理的職業従事者に占める女性割合(都道府県別,平成24年)

I-特-10図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

10総務省「労働力調査」では都道府県別データが示されていないため,総務省「就業構造基本調査」によるデータを示しているが,「労働力調査」とは調査方法等が異なることに留意が必要である。

(女性の昇進意欲は制度や条件により高まる可能性)

「女性活躍意識調査」により,働く男女の昇進11に対する意識を見ると12,正社員及び非正社員のいずれにおいても,「昇進したい」とする者の割合は,男性より女性の方が低く,「そもそも昇進したいとは思わない」とする者の割合は,女性の方が高い(I-特-11図)。ただし,それ以外の回答として,女性では「昇進制度や昇進するポストがない」とする者の割合が男性よりも高く,また,正社員の女性では,「一定の条件が変われば昇進したい」とする者の割合が男性よりもやや高くなっていることを考慮すると,昇進制度や昇進の条件によっては,女性の昇進意識も高まる可能性がある。

なお,「一定の条件が変われば昇進したい」とする者について,どのような条件が変われば昇進したいのかを見ると,男女とも給与面を挙げる者が最も多いが,そのほか,女性は労働時間や休暇取得が自分の希望に合うことを挙げる者が男性より多くなっている(I-特-12図)。働き方の柔軟性を高めることにより,特に女性の昇進意欲,すなわち,より責任や権限が大きい仕事への意欲を高めることができる可能性がある。

I-特-11図 現在の職場で昇進したいか(男女別,雇用形態別)別ウインドウで開きます
I-特-11図 現在の職場で昇進したいか(男女別,雇用形態別)

I-特-11図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

I-特-12図 どのような条件が変われば昇進したいか(男女別)別ウインドウで開きます
I-特-12図 どのような条件が変われば昇進したいか(男女別)

I-特-12図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

コラム2 「地域発」女性の活躍推進を目指す地域連携の動き

11この調査で「昇進」とは,現在の職場で,権限や責任がより大きい仕事につくこととしている。

12「女性活躍意識調査」は,各都道府県500人の男女に対して調査をしているため,その集計結果は各都道府県の単純平均値であり,各都道府県の人口比に応じて調査した全国集計とは異なる点に留意が必要である。

(女性の起業は中国・四国・九州地方で多い傾向)

総務省「就業構造基本調査」(平成24年)により,有業者に占める起業者の割合を男女別に見ると,男性は11.5%であるのに対し,女性は3.3%にとどまっている。

都道府県別に女性の起業者割合を見ると,沖縄県,高知県,秋田県,山口県,東京都等でやや高くなっている。地域別に見ると,一部に例外はあるが,四国地方や九州地方で,男女共に起業者割合が全国平均以上の県が多く,また女性については中国地方でも,起業者割合が全国平均以上の県が多い(I-特-13図)。

I-特-13図 都道府県別有業者に占める起業者の割合(男女別,平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-13図 都道府県別有業者に占める起業者の割合(男女別,平成24年)

I-特-13図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

(女性の起業は能力発揮・自己実現の場として重要)

起業者の産業を男女別に見ると,女性は男性と比較して,「生活関連サービス業,娯楽業」,「宿泊業,飲食サービス業」及び「教育,学習支援業」等,生活と密接した分野で起業する者の割合が高い(I-特-14図)。

次に,株式会社日本政策金融公庫が融資をした企業を対象とした調査により,起業者の開業直前の職業を男女別に見ると,男性は前職が「会社や団体の常勤役員」や「正社員・職員(管理職)」である者が全体の約6割を占めている。一方,女性では,それらは約3割にとどまっており,前職が「非正社員」や「専業主婦」といった,事業運営の経験が少ないと考えられる者が3割近くを占めている(I-特-15a図)。

また,同調査により,開業の動機を男女別に見ると,男女とも「自由に仕事がしたかった」が最も多くなっているが,そのほかでは,女性の起業者は男性と比較して,「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」,「趣味や特技を生かしたかった」等の割合が特に高くなっている(I-特-15b図)。

こうしたことから,女性の起業は,地域経済の活性化につながるとともに,女性の能力発揮や自己実現の場としても重要と考えられる。

なお,同調査によれば,開業時にあったらよかったと思う支援策として,男女とも「低金利融資制度や税制面の優遇措置」が最も多くなっているが,そのほかでは,女性は男性よりも「先輩起業家や専門家による助言・指導」,「経営コンサルタントの紹介」,「保育施設や家事・介護支援等のサービス」等を挙げる割合が高くなっている(I-特-15c図)。これらの支援を利用しやすい環境を整えていくことも,女性の起業促進のためには重要である。

I-特-14図 起業者の産業別分布(男女別,平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-14図 起業者の産業別分布(男女別,平成24年)

I-特-14図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

I-特-15図 起業者の開業直前の職業,開業動機,開業時の支援ニーズ(男女別,平成24年度)別ウインドウで開きます
I-特-15図 起業者の開業直前の職業,開業動機,開業時の支援ニーズ(男女別,平成24年度)

I-特-15図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

コラム3 地域に笑顔と賑わいをもたらす女性たちの起業の事例