平成22年版男女共同参画白書

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第1節 就業における女性の参画の状況

(産業構造の変化と増加傾向にある女性の雇用機会)

ここではまず,産業構造の変化に伴う女性の雇用機会の状況を見ていくこととする。

雇用者数の推移を男女別にみてみると,平成14年から21年までの間に,男性雇用者は21万人減少している一方で,女性雇用者は150万人増加している(第1-特-1図)。

これを産業別に見ると,同じ期間(平成14年~21年)に,例えば,建設業では82万人,製造業では96万人,それぞれ雇用者が減っているのに対して,医療・福祉では148万人増加している1。一方,21年における各産業の雇用者に占める女性の割合は,建設業で15%,製造業で29%であるのに対して,医療・福祉では78%である。

すなわち,男性雇用者が多い産業では雇用者数が減っているのに対して,女性雇用者が多い産業では雇用者数が増えている。産業構造の変化が,女性の雇用者数を増やす方向に働いてきているものと考えられる。

1 こうした傾向は,就業者数全体でみても同様である。総務省「労働力調査」によれば,平成14年から21年までの間に,男性の就業数は92万人減少しているのに対して,女性の就業者数は44万人増加している。女性就業者数の増加については,医療・福祉の分野で就労する女性が108万人増加していることが大きく寄与している。

第1-特-1図 男女別産業別雇用者数の増減(平成14年→21年) 別ウインドウで開きます
第1-特-1図 男女別産業別雇用者数の増減(平成14年→21年)

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(女性で高い非正規労働者割合と男女の給与格差)

女性雇用者数が増加する一方で,同時に進行しているのが,非正規労働者の割合の増加である。非正規労働者の約7割は女性であり(総務省「労働力調査」(平成21年)),女性労働者に占める非正規労働者の割合も5割を超えている(第1部第2章 第1-2-5図参照)。

また,男性一般労働者の給与水準を100とした場合,女性一般労働者の給与水準は69.8となっており,1時間当たり平均所定内給与額の差についてみると,男性一般労働者の給与水準を100としたとき,男性短時間労働者は54.8,女性短時間労働者は49.1となっている(第1部第2章 第1-2-13,14図参照)。

(M字型の女性労働力率)

我が国の女性の労働力率の現状を年齢階級別にみると,30歳代を底としたいわゆるM字カーブを描いている(第1-特-2図)。米国,ドイツ,スウェーデンでは,年齢階級別労働力率にM字のくぼみは見られない。我が国においてM字カーブが見られることの背景には,依然として結婚,出産,子育て期に就業を中断する女性が多いことが挙げられる。

一方で,M字のくぼみの年齢階級を中心に,非労働力人口2のうち就業を希望している女性の数は,345万人に上っており,男女合わせた就業希望者全体(471万人)の約7割となっている(第1-特-3図)。

2 15歳以上人口のうち,就業者と完全失業者(就業はしていないが,求職活動をしており,仕事があればすぐ就くことができる者)を合わせた人口を「労働力人口」という。労働力人口以外の人々を「非労働力人口」というが,そのうち仕事に就きたいと思っている人を「就業希望者」という。

第1-特-2図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較) 別ウインドウで開きます
第1-特-2図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較)

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第1-特-3図 就業希望者の男女別・年齢階級別内訳 別ウインドウで開きます
第1-特-3図 就業希望者の男女別・年齢階級別内訳

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(変化しているもののいまだ根強い固定的性別役割分担意識)

内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成21年10月)によれば,「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方について,全体では,「賛成(=「賛成」+「どちらかといえば賛成」)」が41.3%,「反対(=「反対」+「どちらかといえば反対」)」が55.1%となっている。平成4年には,「賛成」が60.1%,「反対」が34.0%であったことを踏まえると,このような考え方に反対する人の割合は増えてきているが,依然として我が国では固定的性別役割分担意識は根強いといえる。年齢別には,「賛成」の割合は70歳以上で,「反対」は,20歳代,40歳代,50歳代でそれぞれ高くなっている。

働き手や稼ぎ手は男性で女性が働くのは家計補助の目的であるという固定的性別役割分担意識は,就業の場面において,女性は男性よりも非正規雇用の対象になりやすく,また就業中断が生じやすく,出産等によりいったん退職した女性の再就職が難しく,再就職できても非正規雇用とならざるを得ない場合も多いといった状況に影響しているものと考えられる。

(国際的にみて不十分な女性の活躍機会)

以上より,我が国においては,産業構造の変化等を背景に女性の雇用機会自体は増えているものの,固定的性別役割分担意識などを背景とし,女性においては相対的に低賃金で雇用が不安定になりがちな非正規雇用者の割合が高いことや,一般労働者においても男女の給与格差が大きく,結婚,出産,子育て等で就業を中断する女性が多いこと,また,就業の希望を持ちながらも就業に結び付いていない女性が相当数に上っている現状が明らかとなった。

次に,この現状について国際的な比較の観点からみてみる。

国連開発計画(UNDP)では,各国の人間開発の程度を表す人間開発指数(HDI:Human Development Index)という数値と,女性の政治や経済への参画の程度を表すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM:Gender Empowerment Measure)という数値を毎年公表している。2009(平成21)年の数値を見ると,日本はHDIが測定可能な182か国中10位であり世界の中でも高い水準にあるのに対し,GEMは測定可能な109か国中57位にとどまっている(第1部第1章 第1-1-14表参照)。

他の先進国は,HDI及びGEMの双方とも高い順位にあり,両者にこれほどの乖離があるのは日本のほかには韓国(HDI26位,GEM61位)のみである。

これは,我が国においては,人間開発の達成度では実績を挙げているが,国際的にみて男女の格差が大きく,女性が政治・経済活動や,意思決定に参画する機会が不十分であることを意味している(コラム1)。

コラム1 GEM・GGIについて

(経済成長と女性の参画の拡大)

国際的には女性の参画の拡大と経済成長とを積極的に関連づけて取り組もうとする動きがある。女性の経済への参画を促進し所得を増やすことは,財政や社会保障の担い手を増やすことだけでなく,可処分所得の拡大を通じた消費の活性化にもつながるとの考え方が背景にある(コラム2)。

また,近年世界の様々な地域で,持続的で均衡ある成長を目指そうとする「あまねく広がる経済成長(Inclusive growth)」を目指す動きがある。そのためには成長の恩恵を社会のすべての層の人が享受できる機会を高めることが必要であるとされ,男女共同参画はその中で必要な施策とされている(コラム2(2),(3))。

さらに,国際機関の推計によれば,女性の参画が現状よりも進んだ場合の経済成長への影響については,現状において女性の労働力率が低い国ほどプラスの影響が大きいことが示されている。そのような指摘を基にすれば,我が国における女性の社会参画の拡大による成長余力は,先進国の中で大きいものと考えられる(コラム2(5))。

コラム2 女性の活躍と経済の活性化:国際機関の提言等

コラム3 APEC女性リーダーズネットワーク(WLN)会合の開催について