先輩からのメッセージ
- 江尻 省 さん
- 国立極地研究所
- 宙空圏研究グループ・助教
- 専門分野:超高層大気科学
- 所属学会:地球電磁気・地球惑星圏学会、日本地球惑星科学連合、気象学会、American Giographical Union
- 顕彰:2001年Outstanding Student Poster Award (CEDAR/SCOSTEP)、2007年NASA's Group Achievement Award、2011年京都府あけぼの賞
理学系分野を選択した時期・理由
家族や従姉妹と比べて読書好きではなかったので、わりと子供の頃から自分は文系ではないなと思っていたのですが、明確に理数系を選択したのは高校受験のときで、理学系を選択したのは大学受験のときでした。ただ、将来に対して確固たる目標があっての選択ではなく、受験時に一番楽しくて好きだった教科が、中学生のときは理科や数学だったので理数系、高校生のときは物理だったので理学物理学科を受験した、という「やりたいこと重視」の選択でした。
現在の仕事(研究)の魅力やおもしろさ
なんと言っても、観測中の自然と対話している感覚、これが醍醐味です!
現在私は、高度100km前後の地球と宇宙の境界とも言われる中間圏・下部熱圏領域で、地球の中性大気と宇宙の電離大気が、どのように鬩ぎ合い、調和し、どのような物質交換、エネルギー交換を行っているのか、その結果何が起こっているのかを観測的に明らかにしようとしています。この領域は、今の技術では人が滞在することも、人工物を滞留させることも出来ないので、ロケットを打ち上げて一瞬の直接観測を行うか、地上か宇宙から遠隔観測(リモートセンシング)を行うしかないのですが、何があって何が起こっているのかよく分かっていない領域ですから、まずは観測されるであろう物質や現象を理論的に想像する必要があります。私は主に光を使った地上観測、最近は特にレーザーレーダー(ライダー)での観測に携わっているのですが、最初はやはり観測対象と観測装置の検討から始まりました。三年ほどかけて試行錯誤しながら組み上げてきたライダーで、初観測を行った夜、ディスプレイに表示された初めての受信信号の中に100kmも上空にある金属原子層からの共鳴散乱信号がはっきり見えた瞬間の打ち震えるような感激は忘れられません。我々の呼びかけに100km上空の金属原子が応えた!・・・感無量でした。でも、実は、研究はここからが本番。送信レーザーの波長がわずか2pm(10億分の2mm)ズレただけで、返事をしてくれなくなるツレナイ金属原子から、超高層大気の力学的・化学的情報を聞き出しつつ行う観測研究の道程は遠い・・・。だからこそ、挑戦のし甲斐があります!このような、装置開発から始まる観測研究は結果が出るまでに非常に時間がかかるのですが、信実を探る上では絶対に必要な研究スタイルだと確信しています。
女子中高生・女子学生の皆さんへのメッセージ
抽象的な表現になりますが、やらなかったことを後悔するより、やって後悔する方が、次につながるヒントを見つけ易いと思っています。やりたいと思ったことにはどんどん挑戦して、転んでもただでは起きない、欲深い生き方をしてみる時期があっても良いのではないでしょうか。