特集 仕事と健康の両立~全ての人が希望に応じて活躍できる社会の実現に向けて~

本編 > 1 > 特集 > 第2節 仕事、家事・育児等と健康課題の両立

第2節 仕事、家事・育児等と健康課題の両立

この節では、内閣府で実施した調査18及び個別インタビュー調査19等の結果を基に、女性特有の健康課題である「月経」及び近年は男性についても注目されている「更年期障害」も含めた健康課題の仕事、家事・育児等への影響度やこれからの働き方等について深掘りする。

18 「令和5年度男女の健康意識に関する調査」(令和5年度内閣府委託調査)。以下、本文中に具体的な調査名がなく、「調査」と記載してあるものは、全て同調査の結果を引用。

19 「令和5年度男女の健康意識に関する個別インタビュー調査」(令和5年度内閣府委託調査)。以下、本文中で「個別インタビュー」と記載してあるものは、全て同インタビューの結果を引用。

1.健康課題の現状

(1) 健康への関心・認識と健康状態

(関心)

第1節で確認したとおり、男女でそれぞれの健康課題は異なるが、「医療のかかり方・女性の健康に関する世論調査」によると、自分自身の健康については、男女ともに、9割以上が「関心がある」又は「どちらかといえば関心がある」としている。年代別にみても、男女ともに全ての年代で「関心がある」又は「どちらかといえば関心がある」とする者が9割となっているが、「関心がある」とする者の割合は、上の年代ほど高くなっており、18~29歳では4~5割であるのに対し、70歳以上では7~8割となっている(特-34図)。

特-34図 自分の健康への関心(男女、年齢階級別・令和元(2019)年)別ウインドウで開きます
特-34図 自分の健康への関心(男女、年齢階級別・令和元(2019)年)

特-34図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(気になる症状)

第1節で、「令和4年国民生活基礎調査」によって、体の具合が悪いところ(自覚症状)がある者の割合を確認している(特-12図再掲)が、内閣府の調査で過去1か月の間で気になる症状の有無についてみても、男性よりも、女性の方が気になる症状がある者の割合が高くなっている。

症状別にみると、男女ともに「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」を挙げる者の割合が最も高く、次いで、女性は「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「頭痛、めまい、耳鳴り」の順、男性は「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「不眠、いらいら」の順となっている。

年代別にみると、「記憶力の低下」、「頻尿、尿失禁」は男女ともに上の年代ほど割合が高い傾向にあり、女性は「口腔内の不調」も同様の傾向となっている。

また、女性は「のぼせ、顔のほてり、異常な発汗」が50代で高くなっており、更年期障害に関わる症状と推測される(特-35図)。

特-35図 気になる症状(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-35図 気になる症状(男女、年齢階級別)

特-35図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(最も気になる症状)

気になる症状のうち、最も気になる症状についてみると、男女ともに「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」を挙げる者の割合が最も高く、次いで、女性は「頭痛、めまい、耳鳴り」、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」の順、男性は「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「胃腸の不調(胸やけ、下痢、便秘など)」の順となっている。

年代別にみると、「記憶力の低下」、「頻尿、尿失禁」は男女ともに上の年代ほど割合が高い傾向となっている(特-36図)。

特-36図 最も気になる症状(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-36図 最も気になる症状(男女、年齢階級別)

特-36図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(2) 就業状況別の状況

(健康認識、症状への対処、心理的なストレスの状況)

「健康認識」、「最も気になる症状に十分に対処できているか」、「心理的なストレスの状況」について、就業状況別にみると、「健康認識」については、男女ともに、「健康だと思う」とする者の割合は、正規雇用労働者20、非正規雇用労働者、無業者の順に高くなっている。

「最も気になる症状に十分に対処できているか」、「心理的なストレスの状況」は、男女で傾向が異なる。男性は、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、無業者の順に、最も気になる症状に「十分に対処できている(計)」とする者の割合が高く、非正規雇用労働者、正規雇用労働者、無業者の順に心理的なストレスの状況で「0~4点(問題なし)」の者の割合が高くなっている。

一方、女性は、無業者、非正規雇用労働者、正規雇用労働者の順に、「十分に対処できている(計)」とする者及び心理的なストレスの状況で「0~4点(問題なし)」の者の割合が高くなっている。

なお、最も気になる症状に「十分に対処できている(計)」とする者の割合については、女性は、就業状況による差が男性ほど大きくなく、就業状況にかかわらず、気になる症状に十分に対処できていない状況が表れているが、加えて、正規雇用労働者の女性は何らかの理由で、心理的な負荷がかかっていることが推測される(特-37図)。

特-37図 健康認識、最も気になる症状に十分に対処できているか、心理的なストレスの状況(男女、就業状況別)別ウインドウで開きます
特-37図 健康認識、最も気になる症状に十分に対処できているか、心理的なストレスの状況(男女、就業状況別)

特-37図[CSV形式:2KB]CSVファイル

20 本節の「正規雇用労働者」には、特段の注記がない限り「会社などの役員」を含む。

(最も気になる症状への対処法)

過去1か月の間の最も気になる症状への対処法を、年代、就業状況別にみると、20~39歳女性については、いずれの就業状況でも「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」の順となっている。ただし、正規雇用労働者で「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」を挙げる者の割合は、非正規雇用労働者や無業者に比べて特に低くなっている。

20~39歳男性については、正規雇用労働者では「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「仕事の量や時間、働き方(在宅勤務など)を調整している」の順となっている。非正規雇用労働者では「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」、無業者では「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」を挙げる者の割合が最も高くなっている。

40~69歳女性については、いずれの就業状況でも、「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」、「病院や診療所に行っている」を挙げる者の割合が高くなっている。40~69歳男性については、正規雇用労働者では、「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「病院や診療所に行っている」の順となっている。非正規雇用労働者及び無業者では「病院や診療所に行っている」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」の順となっている。

男女ともに20~39歳よりも、40~69歳の方が「病院や診療所に行っている」を挙げる者の割合が高くなっている。また、いずれの年代でも「特に上記のようなことはしていない」とする者の割合も3~4割となっている。

なお、「家事・育児・介護などの時間や量を調整している」を挙げる者の割合に注目すると、女性では、20~39歳、40~69歳ともに、正規雇用労働者と非正規雇用労働者ではあまり差がなく、無業者で高くなっている。一方、20~39歳男性では、正規雇用労働者の方が、非正規雇用労働者及び無業者に比べて高く、40~69歳男性では、正規雇用労働者、無業者、非正規雇用労働者の順となっている。

「家事・育児・介護などの時間や量を調整している」を挙げる者の割合は、女性に比べて男性で低くなっている。もともと男性の家事・育児等への参画が少ないことが要因の1つと推測されるが、その中でも20~39歳の正規雇用労働者では男性の9.8%が「家事・育児・介護などの時間や量を調整している」を挙げており、女性(11.2%)との差が縮まっていることは、男性の家事・育児等への参画が進んでいることの裏返しであると推測される(特-38図)。

特-38図 最も気になる症状への対処法(男女、年齢階級、就業状況別)別ウインドウで開きます
特-38図 最も気になる症状への対処法(男女、年齢階級、就業状況別)

特-38図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(仕事と家事・育児・介護のプレゼンティーイズム損失割合)

有業者について、最も気になる症状があったときの「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合をみると、男女ともに、いずれの就業状況・役職であっても、「仕事」よりも「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合の方が高くなっており、健康課題を抱えていても、「仕事」の生産性は何とか維持し、「家事・育児・介護」で調整していることがうかがえる21

一方、女性無業者の「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合は、他の就業状況・役職における「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合と同程度となっている(特-39図)。

特-39図 最も気になる症状があったときの「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合(男女、就業状況・役職別)別ウインドウで開きます
特-39図 最も気になる症状があったときの「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合(男女、就業状況・役職別)

特-39図[CSV形式:1KB]CSVファイル

21 個別インタビューによると、不調時であっても、仕事は責任があるため、あるいは周囲に迷惑がかかってしまうため手を抜けないが、家事については、最低限のことのみを行い、掃除や片付けは後回しにして調整しているという声があった。一方、子供のいる女性からは、「家事(育児)の方が代替が効かない」、「しんどくても自分の代わりはいないのでやらなければならない」という声もあった。

「プレゼンティーイズム」とは

WHO(世界保健機関)によって提唱された健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標で、プレゼンティーイズムとは、欠勤には至っておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態を意味する(経済産業省「健康経営オフィスレポート」から引用。)。

プレゼンティーイズムにはいくつかの評価手法があるが、例えば、「病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%とした場合の過去4週間の自身の仕事を評価してください」というアンケートによりデータを取得する方法がある。100%から当該数値を減算したものがプレゼンティーイズム損失割合となり、この数値が大きいほど生産性が低いといえる。

(小学生以下の子供と同居している者の状況)

小学生以下の子供と同居しており、最も気になる症状に十分に対処できていないとする者について、その理由をみると、女性正規雇用労働者では「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」、「病院の空いている時間に行けない・予約できない」を挙げる者の割合が、非正規雇用労働者及び無業者と比べて、10%ポイント程度高くなっている。

一方、女性無業者では「金銭的な余裕がない」、「我慢すればいいと思っている」、「どこの病院に行けばよいのかわからない」が有業者と比べて高くなっている。

また、正規雇用労働者について、男女別にみると、「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」は、男女差が大きくなっている(女性40.0%、男性24.6%)。

小学生以下の子供と同居している正規雇用労働者の女性は、仕事と家事・育児等に追われて、自分の身体のメンテナンスを後回しにしている傾向が高いことがうかがえる(特-40図)。

特-40図 最も気になる症状に十分に対処できていない理由(女性就業状況別、正規雇用労働者男女別・小学生以下の子供と同居している者)別ウインドウで開きます
特-40図 最も気になる症状に十分に対処できていない理由(女性就業状況別、正規雇用労働者男女別・小学生以下の子供と同居している者)

特-40図[CSV形式:1KB]CSVファイル

「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合について、小学生以下の子供との同居の有無別にみると、「小学生以下の子供と同居していない」有業の女性と男性は、「仕事」よりも「家事・育児・介護」の損失割合の方が10~20%ポイント程度高くなっているが、「小学生以下の子供と同居している」有業の女性は、「仕事」と「家事・育児・介護」の損失割合が同程度となっている。

前述のとおり、体調が悪いときでも「仕事」は手を抜けないため、「家事・育児・介護」を減らして調整することが多いが、小学生以下の子供のケアは手を抜けないため、「仕事」と「家事・育児・介護」の損失割合の差が小さくなっており、「仕事」にも「家事・育児・介護」にも影響が出ているものと推測される(特-41図)。

特-41図 最も気になる症状があったときの「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合(男女、小学生以下の子供との同居の有無別)別ウインドウで開きます
特-41図 最も気になる症状があったときの「仕事」と「家事・育児・介護」のプレゼンティーイズム損失割合(男女、小学生以下の子供との同居の有無別)

特-41図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(3) 健康課題と仕事

(体調が悪い日の頻度)

正規雇用労働者について、体調が悪い日の頻度を男女別にみると、「月に3~4日以上(計)」とする者の割合は女性の方が高くなっている。

年代別にみると、女性では40代で34.1%と最も高く、次いで30代で32.1%、20代で31.8%、50代で28.6%となっている。一方、男性では、40代及び50代で25.5%、30代で24.7%となっている(特-42図)。

特-42図 体調が悪い日の頻度(男女、年齢階級別・正規雇用労働者)別ウインドウで開きます
特-42図 体調が悪い日の頻度(男女、年齢階級別・正規雇用労働者)

特-42図[CSV形式:1KB]CSVファイル

女性は、毎月の月経に伴う不調及び更年期の症状などから、男性に比べて体調が悪い日の頻度が高くなっているものと推測される。

(仕事のプレゼンティーイズム損失割合)

体調が悪いときの「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合22をみると、20代、30代及び50代では男女であまり差はないが、40代及び60代では男性の方が損失割合が高くなっている。

しかしながら、体調が悪い日の頻度及び体調が悪いときのプレゼンティーイズム損失割合から、体調不良による仕事のプレゼンティーイズム年間損失日数(年間勤務日数245日と仮定。体調不良による休暇や欠勤は含まない。)を、男女、年代別に算出すると、女性の方が体調が悪い日の頻度が高いことから、年間損失日数も多くなっており、特に40代女性で15.6日と最も多くなっている(特-43図)。

特-43図 体調が悪いときの「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合と年間損失日数(男女、年齢階級別・正規雇用労働者)別ウインドウで開きます
特-43図 体調が悪いときの「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合と年間損失日数(男女、年齢階級別・正規雇用労働者)

特-43図[CSV形式:1KB]CSVファイル

22 プレゼンティーイズムの考え方についてはこちらを参照。プレゼンティーイズム年間損失日数は、年間勤務日数に体調が悪い日の頻度を乗じて、年間の体調が悪い勤務日数を算出し、さらに、体調が悪いときの「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合を乗じて算出している。なお、正規雇用労働者の年間勤務日数は245日(一律)と仮定して算出している。

(健康課題による仕事への影響・支障)

心身の健康課題による仕事への影響・支障について、男女、健康認識別にみると、男女ともに「健康でない」と思っている者は、「健康だ」と思っている者に比べて、「人間関係がスムーズにいかなくなった」、「就いていた仕事を自ら辞めた(転職含む)」等様々な影響・支障の割合が高くなっており、健康課題が就業継続にも大きな影響を与えていることが表れている(特-44図)。

特-44図 健康課題による仕事への影響・支障(男女、健康認識別・働いたことがある者)別ウインドウで開きます
特-44図 健康課題による仕事への影響・支障(男女、健康認識別・働いたことがある者)

特-44図[CSV形式:2KB]CSVファイル

また、現在働いている者の働く上での困りごとについて、役職・雇用形態別にみると、管理職の女性では、非管理職の女性と比べて、「自分が休もうとしても代わりに任せられる人がいない」、「働きながら治療のために通院しづらい・時間がとれない」、「役職者ほど、労働時間や健康状態に気を配れなくなる」を挙げる者の割合が高くなっている。一方、管理職の男性では、「自分が休もうとしても代わりに任せられる人がいない」、「役職者ほど、労働時間や健康状態に気を配れなくなる」を挙げる者の割合が高くなっている。

また、正規雇用労働者/非管理職の女性では、他の区分と比べて「月経(生理)の不調など女性ならではの悩みが言い出しにくい」を挙げる者の割合が高くなっている(特-45図)。

特-45図 健康課題に関する働く上での困りごと(男女、役職・雇用形態別・有業者)別ウインドウで開きます
特-45図 健康課題に関する働く上での困りごと(男女、役職・雇用形態別・有業者)

特-45図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(改善に向けて)

働く上での健康課題に関する困りごとへの改善策について、男女別にみると、男女ともに「待遇・給与の改善」、「仕事の量・仕事時間の改善」、「職場・働く場所の環境・快適さ向上」がおおむね上位となっている。

一方、「女性の健康問題への理解」、「育児・介護との両立支援」については、女性の方が割合が高く、男女差が大きくなっている。また、「男性の健康問題への理解」については、男性の方が割合が高くなっているものの、「女性の健康問題への理解」に比べると男女差が小さくなっている。

役職・雇用形態別にみると、全ての区分で、女性は「女性の健康問題への理解」、「育児・介護との両立支援」、「人手不足解消・従業員の離職防止」を挙げる者の割合が男性よりも高く、男性は「男性の健康問題への理解」を挙げる者の割合が女性よりも高くなっている。

上記以外の項目についてみると、管理職では、女性は「仕事の責任・プレッシャーの緩和」、「仕事の量・仕事時間の改善」、「勤務先のメンタルヘルス不調への理解」等を挙げる者の割合が男性より高く、男性は「管理職のマネジメント力向上」等を挙げる者の割合が女性より高くなっている。

非管理職の正規雇用労働者では、女性は「職場内コミュニケーション全般の改善」を挙げる者の割合が男性よりも高く、男性は「肉体的な疲労度の軽減」を挙げる者の割合が女性よりも高くなっている。

非管理職の非正規雇用労働者では、女性は、「職場内コミュニケーション全般の改善」、「職場・働く場所の環境・快適さ向上」等を挙げる者の割合が男性より高くなっている(特-46図)。

特-46図 健康課題に関する働く上での困りごとの改善策(男女、役職・雇用形態別・有業者)別ウインドウで開きます
特-46図 健康課題に関する働く上での困りごとの改善策(男女、役職・雇用形態別・有業者)

特-46図 健康課題に関する働く上での困りごとの改善策(男女、役職・雇用形態別・有業者)(続き)別ウインドウで開きます
特-46図 健康課題に関する働く上での困りごとの改善策(男女、役職・雇用形態別・有業者)(続き)

特-46図[CSV形式:2KB]CSVファイル

2.女性特有の健康課題等

(1) 健康課題への関心・認識

(関心)

「医療のかかり方・女性の健康に関する世論調査」によると、女性の健康課題23については、女性の9割が「関心がある」又は「どちらかといえば関心がある」としている一方、男性は、6割が「関心がある」又は「どちらかといえば関心がある」、2割が「どちらかといえば関心がない」又は「関心がない」、1割が「わからない」としている。

「関心がある」とする者の割合を年代別にみると、女性は30代が8割と最も高く、他のいずれの年代でも6~7割が「関心がある」としている。一方、男性は、いずれの年代でも2~4割となっている(特-47図)。

特-47図 女性の健康課題への関心(男女、年齢階級別・令和元(2019)年)別ウインドウで開きます
特-47図 女性の健康課題への関心(男女、年齢階級別・令和元(2019)年)

特-47図[CSV形式:2KB]CSVファイル

23 女性の健康課題とは、ここでは、月経関連疾患、妊娠出産や月経による心身の変化、乳がん、子宮頸がん、更年期障害、骨粗しょう症等のことを指す。

(認知度)

女性の健康課題の認知度についてみると、「更年期には、いらいら、不安感、発汗、頭痛などの症状が見られることがある」については、女性9割、男性7割となっているが、その他の項目では、女性でも7割以下、男性は5割以下となっており、男性だけでなく、女性自身の女性の健康課題への認知度も必ずしも高くない。

男女間で認知度の差が大きい項目は、「症状の重い月経痛は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因である可能性がある」(女性60.4%、男性16.1%)、「女性ホルモンは1ヶ月の間に変動し、体調や気分の変化の原因になる」(女性57.4%、男性34.6%)、「クラミジアなどの性感染症、子宮内膜症、子宮筋腫などの病気が不妊の原因になることがある」(女性44.6%、男性22.6%)等となっている(特-48図)。

特-48図 女性の健康課題で知っていること(男女別・令和元(2019)年)別ウインドウで開きます
特-48図 女性の健康課題で知っていること(男女別・令和元(2019)年)

特-48図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(2) 月経(生理)

(月経(生理)に関するイメージ)

内閣府の調査によると、月経(生理)(以下「月経」という。)に関する理解度は男女差が大きく、女性の半数近くが「生理痛は多くの女性が感じている症状である」、4割が「月経に関する知識は、男性も知っておく必要がある」、「月経に関する精神的な不調は多くの女性が感じている」と考えているのに対し、同様に考えている男性は2~3割となっている(特-49図)。

特-49図 月経に関するイメージ(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-49図 月経に関するイメージ(男女、年齢階級別)

特-49図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(月経に関わる不調の生活への支障の程度のイメージ)

月経に関わる不調(以下「月経不調」という。)の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度のイメージ(女性は自分以外の女性を想定)についてみると、女性の8割が「支障があると思う」としているのに対し、男性の「支障があると思う」は5割となっている。なお、男性では「よくわからない」、「月経(生理)自体がどのようなものかよくわからない」がそれぞれ2割となっている。

また、女性においても「よくわからない」が14.5%となっているが、月経不調は個人差が大きいこと、女性同士であっても、月経不調についてあまり話をしない場合が多いことも影響していると推測される(特-50図)。

特-50図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度のイメージ(男女別)別ウインドウで開きます
特-50図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度のイメージ(男女別)

特-50図[CSV形式:1KB]CSVファイル

月経のある女性について、自分自身の月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度をみると、月経のある女性全体では「支障がある」とする者の割合が8割となっており、特に20代及び30代では「支障がある」とする者の割合が9割となっている。

また、支障の程度も若い年代の方が高く、20代及び30代では、「かなり支障がある」とする者の割合が4割となっており、多くの女性が月経不調による支障を抱えながら生活している状況が明らかになっている(特-51図)。

特-51図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度(年齢階級別・月経のある女性)別ウインドウで開きます
特-51図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度(年齢階級別・月経のある女性)

特-51図[CSV形式:1KB]CSVファイル

次に、月経不調の症状別に生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度をみると、「月経痛(下腹部の痛み、腰痛、頭痛等)」で「支障がある」とする者の割合が最も高く、次いで、「月経中の体調不良(だるさ、下痢、立ちくらみなど、痛み以外)」、「月経前の不調(月経前症候群(PMS24)等)」、「月経中のメンタルの不調」の順となっており、月経のある女性の6~7割が、上記の症状について生活への支障があるとしている25(特-52図)。

特-52図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度(症状別・月経のある女性)別ウインドウで開きます
特-52図 月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度(症状別・月経のある女性)

特-52図[CSV形式:1KB]CSVファイル

月経不調がつらいときの仕事のプレゼンティーイズム損失割合のイメージ(月経の不調がない者は「もしあったらどれくらいになるか」を考えて回答)について、男女、年代別にみると、女性はおおむね50~55%程度であるのに対し、男性はおおむね65~70%程度となっている。なお、女性は20代から40代の月経のある世代では、若い年代の方が損失割合が高くなっている。

月経不調は仕事のパフォーマンスに影響している一方で、女性は月経不調にうまく対処しながら仕事のパフォーマンスを上げようとしているが、月経及び月経不調への理解不足により、月経不調時の女性の仕事のパフォーマンスについて、男性側が過小評価している可能性も推察される。男性にも月経及び月経不調について、正しい知識と理解が必要である。

なお、月経不調には個人差があることから、一律で評価せず、それぞれの人の支障の程度に応じた対応が重要であることにも留意する必要がある(特-53図)。

特-53図 月経不調がつらいときの仕事のプレゼンティーイズム損失割合のイメージ(男女、年齢階級別・有業者)別ウインドウで開きます
特-53図 月経不調がつらいときの仕事のプレゼンティーイズム損失割合のイメージ(男女、年齢階級別・有業者)

特-53図[CSV形式:1KB]CSVファイル

24 月経前症候群(PMS)とは、月経開始の3~10日前から始まる様々な心身の不快症状で、月経が始まると症状が軽快、消失する。

25 個別インタビューでも、「月経の2週間前からPMSとみられる頭痛、腹痛、眠気や倦怠感等の症状があり、月の約半分は不調である」、「月経期間中は月経痛の痛みに気を取られ業務のスピードが落ちてしまう」、「吐き気、食欲不振などが重なると全く集中できず、頑張ってもほとんど仕事にならない」という声があった。

(職場において月経に関して困った経験)

職場において、月経に関することで困った経験についてみると、「経血の漏れが心配で業務に集中できない」を挙げる者の割合が最も高く、次いで、「生理用品を交換するタイミングを作りにくい(長時間の会議や窓口業務等)」、「立ち仕事や体を動かす業務で困難を感じる」、「生理休暇を利用しにくい」の順となっている。

年代別にみると、20代及び30代では、上の世代に比べて「立ち仕事や体を動かす業務で困難を感じる」、「生理休暇を利用しにくい」、「職場のトイレにナプキンなど必要なものが常備されていない」、「生理用品を持っていない場合に気軽に買いに行けない」、「月経に関する不調は我慢できるという雰囲気がある」等を挙げる者の割合が高くなっており、女性の社会進出が進み、女性の意識が変わる中で、依然として職場環境がその変化に対応していない可能性が示唆されている。

例えば、長時間の会議や窓口業務に際しては、定期的なトイレ休憩時間があるだけで、女性が働きやすくなる可能性があり、また、経血の漏れや生理用品に関する心配は、テレワークでは軽減され、より業務に集中できる可能性を示唆している(特-54図)。

特-54図 職場において月経に関して困った経験(年齢階級別・女性)別ウインドウで開きます
特-54図 職場において月経に関して困った経験(年齢階級別・女性)

特-54図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(3) 不妊治療

婚姻年齢の上昇や晩婚化に伴い、不妊に悩む者や不妊治療を受ける者の数は増加傾向にある。「第16回出生動向基本調査」によれば、令和3(2021)年時点で、不妊の心配をしたことのある夫婦の割合は39.2%(約2.5組に1組)、実際に検査や治療を受けたことのある夫婦は22.7%(約5組に1組)となっている(特-55図)。

特-55図 不妊に悩む夫婦の割合の推移別ウインドウで開きます
特-55図 不妊に悩む夫婦の割合の推移

特-55図[CSV形式:1KB]CSVファイル

不妊治療は、治療時間の確保等の観点からも負担が大きく、不妊治療と仕事との両立をサポートする取組が一層重要となる。

3.加齢による健康課題(更年期障害)

更年期障害とは、卵巣あるいは精巣の機能の低下により現れる様々な心身の不調で、日常生活に支障を来す状態であり、女性は閉経の前後5年間くらい、おおむね45~55歳くらいが更年期の対象年齢と言われているが、早い人は、40代前半から更年期の症状が現れ、更年期の時期を過ぎても症状が残る場合もあるとされている。

更年期障害は女性特有の症状というイメージが大きいが、近年は、男性の更年期障害も注目されてきている。更年期障害は多くの女性に現れる症状であり、働く女性が増加する中で、社会として向き合うべき課題である。更年期障害への理解を深めることが、女性及び更年期障害に関わる症状に悩む男性が働きやすい環境の整備へとつながる。

(更年期障害に関するイメージ)

更年期障害に関する理解度は、男女及び年代で差がある。

女性の4割が「更年期障害は多くの女性にあらわれる症状である」、「更年期障害が起こりやすい年齢はあるが、個人差があり、若くてもなる可能性がある」、「更年期障害に関する知識は、男性も知っておく必要がある」と考えているのに対し、同様に考えている男性は2~3割となっている。

また、加齢とともに現れる症状であるため、上の年代ほど理解度が高くなっているが、若い世代の女性及び男性全体においては、更年期障害に関する理解が進んでいないことがうかがえる(特-56図)。

特-56図 更年期障害に関するイメージ(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-56図 更年期障害に関するイメージ(男女、年齢階級別)

特-56図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(更年期障害に関わる症状の有無)

更年期障害に関わる症状(更年期障害以外の原因による症状も含む。)の有無について、年代別にみると、男女ともに50代で症状がある者の割合が高く、特に50代女性で「症状があり、更年期障害だと思う」、「症状はあるが、更年期障害かどうかよくわからない」とする者の割合が56%となっている。また、50代男性も「症状があり、更年期障害だと思う」とする者が1割、「症状はあるが、更年期障害かどうかよくわからない」とする者が2割となっている(特-57図)。

特-57図 更年期障害に関わる症状の有無と認識(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-57図 更年期障害に関わる症状の有無と認識(男女、年齢階級別)

特-57図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(更年期障害に関わる症状)

更年期障害に関わる「症状があり、更年期障害だと思う」40~59歳の女性及び40~69歳の男性についてみていく。

過去1か月の間で気になる症状について、「更年期障害に関わる症状はない」とする者と比べると、「症状があり、更年期障害だと思う」とする者は、いずれの症状も割合が高くなっている。

40~59歳女性では「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」を挙げる者の割合が最も高く、次いで、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「頭痛、めまい、耳鳴り」、「不眠、いらいら」、「手足の冷え、むくみ、だるさ」の順となっているが、「のぼせ、顔のほてり、異常な発汗」の割合は、「更年期障害に関わる症状はない」とする者に比べて顕著に高くなっている。

一方、40~69歳男性では、「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「不眠、いらいら」の順となっているが、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」、「不眠、いらいら」を挙げる者の割合は、「更年期障害に関わる症状はない」とする者に比べて特に高くなっている(特-58図)。

特-58図 気になる症状(男女、更年期障害に関わる症状の有無別・40~59歳女性、40~69歳男性)別ウインドウで開きます
特-58図 気になる症状(男女、更年期障害に関わる症状の有無別・40~59歳女性、40~69歳男性)

特-58図[CSV形式:1KB]CSVファイル

更年期障害に関わる「症状があり、更年期障害だと思う」とする者について、体調の悪い日の頻度をみると、「月に3~4日以上(計)」とする者は、40~59歳の女性で5割、40~69歳の男性で4割となっており、同年代で更年期障害に関わる「症状はない」とする者と比べて2倍以上となっている。

また、心理的なストレスの状況をみると、更年期障害に関わる「症状があり、更年期障害だと思う」40~69歳男性の4割、40~59歳女性の3割が「10点以上(要注意)」となっており、同年代で更年期障害に関わる「症状はない」とする者と比べて2倍以上となっている(特-59図)。

特-59図 体調が悪い日の頻度と心理的なストレスの状況(男女、更年期障害に関わる症状の有無別・40~59歳女性、40~69歳男性)別ウインドウで開きます
特-59図 体調が悪い日の頻度と心理的なストレスの状況(男女、更年期障害に関わる症状の有無別・40~59歳女性、40~69歳男性)

特-59図[CSV形式:2KB]CSVファイル

更年期障害に関わる症状の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度をみると、「症状がみられ、更年期障害だと思う」女性の9割、男性の6割が生活に「支障があると思う」としている。

なお、更年期障害に関わる「症状がみられ、更年期障害だと思う」男性のうち、3割が支障の程度について「よくわからない・何とも言えない」としており、不調はあるが更年期障害かどうか分からず、対処にもつながっていない可能性がある(特-60図)。

特-60図 更年期障害に関わる症状の生活への支障の程度(男女別・更年期障害に関わる症状がみられ、更年期障害だと思う40~59歳女性、40~69歳男性)別ウインドウで開きます
特-60図 更年期障害に関わる症状の生活への支障の程度(男女別・更年期障害に関わる症状がみられ、更年期障害だと思う40~59歳女性、40~69歳男性)

特-60図[CSV形式:1KB]CSVファイル

更年期障害に関わる症状への対処法についてみると、女性では「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」を挙げる者の割合が最も高く、次いで、「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」、「病院や診療所に行っている」の順となっている。

一方、男性の7割、女性の5割が「特に上記のようなことはしていない」としており、更年期障害に関わる症状に対し、十分に対処できていない可能性がある(特-61図)。

特-61図 更年期障害に関わる症状への対処法(男女別・更年期障害に関わる症状がみられ、更年期障害だと思う40~59歳女性、40~69歳男性)別ウインドウで開きます
特-61図 更年期障害に関わる症状への対処法(男女別・更年期障害に関わる症状がみられ、更年期障害だと思う40~59歳女性、40~69歳男性)

特-61図[CSV形式:1KB]CSVファイル

更年期障害に関わる症状は、男女ともに仕事で大きな責任を負い、介護との両立が課題となる世代で大きく現れる。管理職として働く女性が増加する中で、更年期障害に関する理解や症状との付き合い方についての理解は、今後ますます重要になってくる。また、女性の更年期障害に比べ、男性の更年期障害は注目されることが少ないが、心身の不調を抱えながら、特に何も対処をしていない男性も少なくない点については、見過ごすことのできない論点である。男女両方の更年期障害に目を向け、働きやすい社会にしていく必要がある。

4.これからの働き方と健康

(1) 健康認識と昇進意欲

健康認識と昇進意欲の関係をみると、男女ともに20代から40代のどの年代においても、「健康でないと思う」者に比べて、「健康だと思う」者の方が、「現在より上の役職に就きたい」とする者の割合が高くなっている。

健康認識と昇進意欲の間には相関関係があり、「健康でない」ことで「現在よりも上の役職を目指せない」と考えている人もいることを示唆している26(特-62図)。

特-62図 健康認識と昇進意欲(男女、年齢階級別・有業者)別ウインドウで開きます
特-62図 健康認識と昇進意欲(男女、年齢階級別・有業者)

特-62図[CSV形式:2KB]CSVファイル

また、気になる症状と昇進意欲の関係をみても、男女ともに、最も気になる症状について「十分に対処できている」とする者の方が、「十分に対処できていない」とする者よりも昇進意欲が高くなっている(特-63図)。

特-63図 最も気になる症状への対処状況と昇進意欲(男女、年齢階級別・有業者)別ウインドウで開きます
特-63図 最も気になる症状への対処状況と昇進意欲(男女、年齢階級別・有業者)

特-63図[CSV形式:3KB]CSVファイル

前述のとおり、女性は、働く上での健康課題に関する困りごとの改善のために「女性の健康問題への理解」を挙げる割合が高いことから、女性活躍推進、女性の管理職を増やすためには、企業側にも、女性特有の健康課題への対応が必要となっている(特-46図再掲)。

26 個別インタビューにおいても、「機会があればキャリアアップしたいという気持ちはあるが、月経による不調があるので躊躇してしまう」という声や、「自分の体調や子供のことを考慮すると、キャリアを求めると様々なものを犠牲にしなければならないため、現実的ではないと思い、諦めてしまった」という声があった。

(2) 健康経営

近年、大企業を中心に、健康経営の取組が広がりつつある。健康経営とは従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することである。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されている27

27 経済産業省ホームページ「健康経営」から引用。

(健康経営の取組状況)

勤務先の健康経営への取組状況に関する認識をみると、企業規模が大きいほど健康経営に「取り組んでいる」(「かなり取り組んでいる」と「ある程度取り組んでいる」の累計値。以下同じ。)とする者の割合が高くなっている。

雇用形態別にみると、正規雇用労働者に比べ、非正規雇用労働者の方が、健康経営に「取り組んでいる」とする者の割合が低くなっており、健康経営に取り組んでいるか「わからない」とする者の割合が高くなっている。

非正規雇用労働者には、健康診断等を含む健康支援や健康経営が十分に行き届いておらず、正規雇用労働者に比べ、健康経営の恩恵を受けられていない可能性が考えられる(特-64図)。

特-64図 勤務先の健康経営取組に関する認識(男女、雇用形態、勤務先の企業規模別・雇用されている者及び会社などの役員)別ウインドウで開きます
特-64図 勤務先の健康経営取組に関する認識(男女、雇用形態、勤務先の企業規模別・雇用されている者及び会社などの役員)

特-64図[CSV形式:2KB]CSVファイル

さらに、健康経営の項目ごとに取組状況に関する認識をみると、特-65図に掲載する全ての項目で、男性に比べ、女性の方が「取り組んでいる」とする者の割合が低くなっている。

また、「女性特有の健康課題など、女性の健康保持・増進」に着目してみると、女性では、「健康経営全般」を除いた11項目の中で「取り組んでいる」とする者の割合が最も低く、また、男性の4割が「取り組んでいる」としているのに対し、女性は「取り組んでいる」が3割、「取り組んでいない」(「あまり取り組んでいない」と「全く取り組んでいない」の累計値。)が4割となっている(特-65図)。

特-65図 勤務先の健康経営取組に関する認識(男女、健康経営項目別・雇用されている者及び会社などの役員)別ウインドウで開きます
特-65図 勤務先の健康経営取組に関する認識(男女、健康経営項目別・雇用されている者及び会社などの役員)

特-65図[CSV形式:3KB]CSVファイル

女性の方が勤務先が健康経営に「取り組んでいる」とする者の割合が低くなっている背景には、男女の健康課題の差異を踏まえた健康経営を実施している企業が必ずしも多くないことを示している可能性があり、今後は、より多くの企業が女性の視点を踏まえた健康経営を推進することで、女性を含めた多様な人材が、生産性高く働ける職場環境を整えていくことが望まれる。

次に、企業規模別に健康経営の効果を様々な視点から確認する。

(体調が悪い日の頻度、心理的なストレスの状況)

男女ともに企業規模にかかわらず、勤務先が健康経営に「取り組んでいる」とする者の方が、体調が悪い日の頻度が低い者の割合が高くなっている。また、体調が悪い日の頻度が「月に2~3割程度以上」とする者の割合についてみると、女性の方が、勤務先が健康経営に取り組んでいると考えているか否かによる差が大きい。心理的なストレスの状況についても同様の傾向となっている。

(体調不良によるプレゼンティーイズム年間損失日数)

体調が悪い日の頻度から算出したプレゼンティーイズム年間損失日数28(体調不良による休暇や欠勤は含まない。)は、勤務先が健康経営に取り組んでいると考えているか否かで違いがあり、男性では4~6日程度、女性では4~7日程度、健康経営に「取り組んでいる」とする者の方が少なくなっている。健康経営により、年間の従業員の労働損失を4~7日程度減らすことができ、何よりも、従業員のウェルビーイングの向上にも資する取組であると考えられる。

(健康経営と昇進意欲)

健康経営と昇進意欲の関係についてみると、男性は勤務先が健康経営に取り組んでいると考える者の方が、「現在より上の役職に就きたい」とする者の割合が高いが、女性では男性ほどの効果がみられない。これは、健康経営が女性の視点からみると、いまだ不十分であるということを示唆している可能性もある(特-66図)。

特-66図 健康経営の効果(男女、勤務先の企業規模、健康経営取組の有無別・雇用されている者及び会社などの役員)別ウインドウで開きます
特-66図 健康経営の効果(男女、勤務先の企業規模、健康経営取組の有無別・雇用されている者及び会社などの役員)

特-66図 健康経営の効果(男女、勤務先の企業規模、健康経営取組の有無別・雇用されている者及び会社などの役員)(続き)別ウインドウで開きます
特-66図 健康経営の効果(男女、勤務先の企業規模、健康経営取組の有無別・雇用されている者及び会社などの役員)(続き)

特-66図[CSV形式:4KB]CSVファイル

28 プレゼンティーイズムの考え方についてはこちらを参照。プレゼンティーイズム年間損失日数は、年間勤務日数に体調が悪い日の頻度を乗じて、年間の体調が悪い勤務日数を算出し、さらに、体調が悪いときの「仕事」のプレゼンティーイズム損失割合を乗じて算出している。なお、年間勤務日数については、正規雇用労働者は245日(一律)、非正規雇用労働者は、アンケート回答者の1週間当たりの勤務日数×52週として算出している。

(女性特有の健康課題に対して職場に求める配慮)

女性特有の健康課題に対して、職場にどのような配慮があると働きやすいと思うかについてみると、20~39歳の女性では「生理休暇を取得しやすい環境の整備」を挙げる者の割合が最も高く、次いで「出産・子育てと仕事の両立支援制度」、「女性の社員全体の理解」、「婦人科健診・検診への金銭補助」の順となっている。40~69歳の女性では「病気の治療と仕事の両立支援制度」を挙げる者の割合が最も高く、「更年期障害への支援」、「介護と仕事の両立支援制度」、「経営陣・トップの理解」の順となっている。

一方、男性では、どちらの年代でも「経営陣・トップの理解」、「男性上司の理解」、「男性の社員全体の理解」が上位となっているが、その割合は、女性と比べ同程度以下となっている。

女性の上位の項目についてみると、いずれも同年代の男性と比べて割合に大きな差があり、女性が求めている支援と男性が考える配慮に大きな違いがあることが示唆されている。

また、女性は、「女性上司の理解」、「女性の社員全体の理解」を挙げる者の割合も高く、女性の求める健康支援の充実とともに、男女ともに、自分自身及び性別により異なるお互いの健康課題に関する知識を深め、相互に健康課題について話し合える環境の整備が必要である29(特-67図)。

特-67図 女性特有の健康課題に対して、どのような配慮があると働きやすいと思うか(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-67図 女性特有の健康課題に対して、どのような配慮があると働きやすいと思うか(男女、年齢階級別)

特-67図[CSV形式:2KB]CSVファイル

29 個別インタビューでは、「女性の多い職場なので、ほかの人も同じような不調を抱えていて、弱音を吐かずやっていると考えると、相談しても突っぱねられるかもしれないと思い、言い出せない」、「男性の多い職場であるため、女性特有の不調について相談できる環境にはない」、「上司は男性なので、月経のつらさを経験しておらず、絶対に理解出来ないと思い相談もしていない」という声がある一方、男性管理職からは、「女性特有の病気についてはどう声をかけていいか分からないこともあり、健康関連については話しにくい」という声もあった。このほか、「女性特有のつらさについて産業医から社員に向けて定期的に講習が実施されれば女性特有の不調への理解も浸透し、つらさを訴えやすくなったり、休んだりしやすくなるかもしれない」、「女性活躍の推進により、社内の雰囲気や制度が変わり、休暇も取りやすくなったり、周囲の理解も進んできている」、「個人からの発信には限界があるため、経営トップからの発信が非常に効果的だと感じている」などという声もあった。

コラム2 生理休暇の国際比較