特集 仕事と健康の両立~全ての人が希望に応じて活躍できる社会の実現に向けて~

本編 > 1 > 特集 > 第1節 社会構造の変化と男女で異なる健康課題

第1節 社会構造の変化と男女で異なる健康課題

この節では、昭和の時代から現在における人口構造の変化や就業状況の変化を、男女、年代別に整理するとともに、ライフイベント時の年齢の変化を確認した上で、男女の健康及びその差異について概観する。

1.人口構造の変化、就業状況の変化

(1) 我が国の人口構造の変化

現在の社会保障制度・日本型雇用慣行が形作られた昭和時代6と現在とでは、社会の人口構造が大きく変化している。我が国の総人口は、平成20(2008)年をピークに減少が始まっているが、生産年齢人口(15~64歳の人口)は平成7(1995)年をピークに減少しており7、今後は更に大きく減少していくことが予測されている8

就業者の構成も大きく変化し、就業者数における男女差は小さくなっている。また、昭和55(1980)年時点では女性は20代前半、男性は30代前半にあった就業者数のピークが、令和2(2020)年時点では、男女ともに40代後半となるなど、就業者の年齢構成も変化している(特-1図)。

特-1図 人口構造の変化(男女、年齢階級、就業状況別・15歳以上)別ウインドウで開きます
特-1図 人口構造の変化(男女、年齢階級、就業状況別・15歳以上)

特-1図[CSV形式:1KB]CSVファイル

6 ここでいう、昭和時代とは、1960年代の高度経済成長期以降を指す。

7 我が国の総人口は、平成20(2008)年時点では1億2,808万4千人、令和5(2023)年時点では1億2,435万2千人と、15年間で373万2千人減少している。一方、生産年齢人口は、平成7(1995)年時点で8,726万人、令和5(2023)年時点では7,395万2千人と、28年間で1,330万8千人減少している(総務省「人口推計」。各年10月1日現在の人口)。

8 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)出生中位(死亡中位)推計」

(2) 就業状況の変化

(労働力人口比率と正規雇用比率)

かつて、我が国の女性の年齢階級別労働力人口比率は、結婚・出産期に当たる25~29歳及び30~34歳を底とするM字カーブを描いていたが、令和5(2023)年時点では、M字はほぼ解消し、20代から50代まで台形に近い形を描いている。

一方、正規雇用比率9をみると、女性は男性と比べて正規雇用比率が低く、男性は20代後半から50代まで7~8割で台形を描いている一方、女性は25~29歳の59.4%をピークとし、年代が上がるとともに低下する、L字カーブを描いている(特-2図)。

特-2図 就業状況別人口割合(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)別ウインドウで開きます
特-2図 就業状況別人口割合(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)

特-2図[CSV形式:2KB]CSVファイル

女性の正規雇用比率の推移を年齢階級別にみると、平成の前半までは、正規雇用比率のピークが20~24歳にあり、平成4(1992)年時点で59.3%となっていた。その後、就職氷河期10にピークが低下するとともに、大学進学率の上昇などを背景に25~29歳に移動した。25~29歳の正規雇用比率は平成14(2002)年時点では41.8%となっており、その後、しばらく40%台で推移していたが、平成24(2012)年以降、20代から40代を中心に正規雇用比率が上昇し、令和4(2022)年時点では61.1%となっている。

一方、男性は、就職氷河期に正規雇用比率のピークが若干低下したものの、その後大きな変化はなく78~79%台で推移し、年齢階級別にみても、台形を描いている(特-3図)。

特-3図 正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)別ウインドウで開きます
特-3図 正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)

特-3図[CSV形式:2KB]CSVファイル

一方、出生コーホート別に、世代による変化をみると、近年は出産・育児によるとみられる女性の正規雇用比率の低下幅は小さくなっており、ほぼ全ての年代で、以前に比べ、高水準で推移している。この状況が続けば、今後も女性の正規雇用比率の高まりが期待される(特-4図)。

特-4図 正規雇用比率の推移(男女、出生コーホート別)別ウインドウで開きます
特-4図 正規雇用比率の推移(男女、出生コーホート別)

特-4図[CSV形式:2KB]CSVファイル

このことは、今後、社会における更なる女性の活躍が期待されると同時に、後述する仕事と健康の両立の観点においても、これまでとは大きく状況が異なってくることを示唆している。

9 本特集では、当該年齢階級人口に占める「役員」と「正規の職員・従業員」の割合を「正規雇用比率」としている。

10 就職氷河期とは、いわゆる就職氷河期世代が就職活動を行った時期を指す。「第5回就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム(令和5(2023)年5月18日開催)」資料1-1では、「『就職氷河期世代』については、明確な定義が存在するわけではないが、概ね1993年~2004年に学校卒業期を迎えた者を念頭に置いており、浪人・留年等を経験していない場合、2023年4月現在、大卒で概ね41歳~52歳、高卒で概ね37歳~48歳である。」とされている。

(3) 育児・介護の担い手の変化

(未就学児の育児)

小学校入学前の未就学児の育児をしている者は、令和4(2022)年時点で965万人で、10年前の平成24(2012)年時点(1,000万人)と比べ、35万人減少している。

就業状況別にみると、未就学児の育児をしている無業者は10年間で146万人減少しており、特に、女性無業者は283万人から138万人に半減している。

一方で、未就学児の育児をしている有業者は111万人(女性72万人、男性39万人)増加しており、未就学児の育児をしている者に占める有業者の割合は71.1%から85.2%に上昇している。

なお、年代別にみると、未就学児の育児をしている者は、30代及び40代前半の男女が大宗を占めている(特-5図)(特-6図)。

特-5図 未就学児の育児をしている者の推移(男女、就業状況別)
特-6図 未就学児の育児をしている者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます

特-5図 未就学児の育児をしている者の推移(男女、就業状況別) 特-6図 未就学児の育児をしている者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-5図[CSV形式:1KB]CSVファイル
特-6図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(家族の介護)

家族の介護をしている者は、令和4(2022)年時点で629万人で、10年前の平成24(2012)年時点(557万人)と比べ、71万人増加している。

就業状況別にみると、家族の介護をしている無業者が10年間で2万人減少している一方、有業者は74万人(女性48万人、男性26万人)増加しており、男女ともに介護をしながら働く者が増加している。

年代別にみると、男女ともに50代以上が多いが、特に50代以上の女性が家族の介護をしている者の半数を占めている。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に差し掛かりつつあることから、夫や妻、親の介護をする者が増えてきているものと推測される(特-7図)(特-8図)。

特-7図 家族の介護をしている者の推移(男女、就業状況別)
特-8図 家族の介護をしている者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます

特-7図 家族の介護をしている者の推移(男女、就業状況別) 特-8図 家族の介護をしている者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-7図[CSV形式:1KB]CSVファイル
特-8図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(ダブルケア)

未就学児の育児をしながら、家族の介護をしている者(ダブルケアをしている者)は、令和4(2022)年時点で20.1万人となっている。

就業状況別にみると、有業者が16万人、無業者が4万人となっている。また、男女別にみると、女性が6割、年代別では30代後半及び40代前半の者が多くなっている(特-9図)。

特-9図 ダブルケアをしている者の数及び割合(男女、就業状況別、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-9図 ダブルケアをしている者の数及び割合(男女、就業状況別、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-9図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(出産・育児、介護による離職)

過去1年間(令和3(2021)年10月~令和4(2022)年9月)に前職を辞めた者について、離職理由別にみると、「出産・育児のため」とする者は、女性14.1万人(女性離職者のうち4.6%)、男性0.7万人(男性離職者のうち0.3%)、「介護・看護のため」とする者は、女性で8万人(女性離職者のうち2.6%)、男性で2.6万人(男性離職者のうち1.1%)となっている11

離職理由別の過去1年間の離職者の推移をみると、「出産・育児のため」とする離職者は減少している一方、「介護・看護のため」とする離職者は横ばいから増加傾向にある(特-10図)。

特-10図 育児・介護による離職者数の推移(男女、年齢階級別・過去1年間の離職者)別ウインドウで開きます
特-10図 育児・介護による離職者数の推移(男女、年齢階級別・過去1年間の離職者)

特-10図[CSV形式:1KB]CSVファイル

働きながら介護をするというワーキングケアラーの時代が到来している。今後の更なる高齢化や生産年齢人口の急減予測を踏まえると、介護離職は大きな問題である。また、介護離職は企業にとっても大きな損失であるため、仕事と介護が両立できるように取り組んでいく必要がある。そのためには、介護をしながらも、介護だけにとらわれず、自らの希望する生き方を実現できる環境や支援体制の整備が極めて重要である。ここでも柔軟な働き方への支援が求められる。

一方、「出産・育児のため」、「介護・看護のため」を理由とする離職者は、いずれも女性の割合が高く、今後、高齢化が進展していく中で、就業継続のために更なるサポートが望まれる。

前述のとおり、我が国の現状は、いわゆる「M字カーブ」の問題は解消に向かっているものの、「L字カーブ」の存在に象徴されるように、様々なライフイベントに際し、キャリア形成との二者択一を迫られるのは、依然として多くが女性であり、その背景には、長時間労働を前提とした雇用慣行や女性への家事・育児等の無償労働時間の偏り、それらの根底にある固定的な性別役割分担意識などの構造的な課題が存在している。

11 総務省「令和4年就業構造基本調査」

2.ライフイベント時年齢の変化

令和4(2022)年時点と約40年前の昭和55(1980)年時点を比較すると、平均寿命は、男女とも8年延び、女性は87.09歳、男性は81.05歳、高齢化率は、男女ともに3倍となっている。また、平均初婚年齢12は、女性29.7歳、男性31.1歳、第1子出生時平均年齢は、女性30.9歳、男性32.9歳と、40年前に比べて男女ともにおおむね3~4歳上昇している。

結婚・出産年齢等が以前と比べて高くなっている背景の1つとして、大学進学率の上昇が考えられ、令和4(2022)年時点では、大学(学部)への進学率が男女ともに50%を超えている(特-11図)。

特-11図 ライフイベント時年齢の変化別ウインドウで開きます
特-11図 ライフイベント時年齢の変化

特-11図[CSV形式:2KB]CSVファイル

このように、女性のライフイベント時の年齢は変化し、人生も多様化している。それぞれのライフイベント時の年齢に応じた、健康への支援も重要となってくる。

12 令和4(2022)年時点での初婚年齢の最頻値は、男女ともに27歳(昭和55(1980)年時点では女性24歳、男性27歳)と、平均値よりも若いことに留意が必要である。平均値、最頻値、中央値等についての詳細は、「令和4年版男女共同参画白書」コラム1を参照。

3.男女の健康課題

前述のとおり、我が国では、平均寿命が延伸し、社会全体の年齢構成が変化するとともに、個人のライフイベント時の年齢及び職業観・家庭観も大きく変化している。このような中で、男女ともに、希望する誰もが生き生きと活躍できる社会を実現するためには、健康維持・増進はより重要視すべき課題となっている。

この項では、健康課題とその影響、定期健診・がん検診の受診状況、生活時間と健康への影響について、政府統計を中心とした各種データで確認していく。

(1) 健康課題と影響

健康課題については、内容も健康課題を抱えやすい時期も男女で違いがある。

例えば、婦人科系疾患など女性特有の健康課題は、働く世代で多い。また、病気やけがなどで体の具合の悪いところがあるとする者の割合や、こころの状態で要注意とされる者の割合、悩みやストレスがある者の割合のいずれも、男性と比べて女性の方が高い。

一方で、自殺者数をみると、男性が女性の2倍程度となっている。

平均寿命の延伸により、男女ともに要介護の期間も長期化する可能性がある。女性は、70代以上の認知症の患者数が男性と比べて多い。

通院しながら働く者の割合は、男女で同程度となっているが、その割合は男女ともに年々上昇しており、何らかの疾病を抱えながら働いている者が増えている。

(病気やけがなどの状況)

病気やけがなどで体の具合の悪いところ(自覚症状)がある者の割合は、男女ともに年齢とともに上昇するが、総じて女性の方が割合が高く、特に20代から50代で男女差が大きくなっている(特-12図)。

特-12図 病気やけがなどで自覚症状のある者の割合(有訴者率・人口千人当たり)(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-12図 病気やけがなどで自覚症状のある者の割合(有訴者率・人口千人当たり)(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-12図[CSV形式:1KB]CSVファイル

一方、健康上の問題で仕事、家事等への影響がある者は、令和4(2022)年時点で621万人となっており、このうち女性が384万人(61.8%)となっている。

年代別にみると、30代、50代及び70代以上で男女差が大きくなっている。なお、高齢者層の男女差については、男女の寿命の違いのほか、固定的な性別役割分担意識により、家事等の分担が女性に偏っていることも影響している可能性がある(特-13図)。

特-13図 健康上の問題で仕事、家事等への影響がある者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-13図 健康上の問題で仕事、家事等への影響がある者の数及び割合(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-13図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(男女で異なる健康課題)

女性及び男性それぞれに特有の病気の患者数を年代別にみると、男性特有の病気は、50代以降で多くなる傾向にあるが、女性特有の病気13である月経障害や女性不妊症は20代から40代前半、子宮内膜症や子宮平滑筋腫は30代及び40代、乳がんや閉経期及びその他の閉経周辺期障害(いわゆる更年期障害)、甲状腺中毒症(バセドウ病等)は40代及び50代などの働く世代に多い(特-14図)。

特-14図 女性特有、男性特有の病気の総患者数(年齢階級別・令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
特-14図 女性特有、男性特有の病気の総患者数(年齢階級別・令和2(2020)年)

特-14図[CSV形式:1KB]CSVファイル

がんの罹患率(上位5部位)を年代別にみると、男性は60代以降で急激に増加しているのに対し、女性の「乳がん」及び「子宮がん」は30代から増加している(特-15図)。

特-15図 部位別(上位5部位)がん罹患率(男女、年齢階級別、人口10万人当たり・令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
特-15図 部位別(上位5部位)がん罹患率(男女、年齢階級別、人口10万人当たり・令和2(2020)年)

特-15図[CSV形式:2KB]CSVファイル

がん以外の傷病別の通院者率(人口千人当たり)をみると、女性と男性でかかりやすい傷病が異なっており、糖尿病や狭心症・心筋梗塞、痛風、脳卒中(脳出血、脳梗塞等)等は男性の方が通院者率が高く、脂質異常症(高コレステロール血症等)や骨粗しょう症、肩こり症、関節症等は女性の方が高くなっている(特-16図)。

特-16図 通院者率(人口千人当たり)の男女差が大きい傷病(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-16図 通院者率(人口千人当たり)の男女差が大きい傷病(令和4(2022)年)

特-16図[CSV形式:1KB]CSVファイル

13 女性に多い病気も含む。「乳房の悪性新生物」及び「甲状腺中毒症」は、男性も罹患する病気だが、患者は女性に多い。

(認知症)

前述のとおり、健康寿命と平均寿命の差をみると、男女ともに健康ではない期間が10年ほどあり、徐々にその期間が長くなってきている(特-11図再掲)。平均寿命の延伸と同時に、要介護となる期間も長くなってきていると推測される。

女性は、70歳を超えると認知症(アルツハイマー病等を含む。)の患者数が増加し、男性と比べて多くなっている(特-17図)。

特-17図 認知症総患者数(男女、年齢階級別・令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
特-17図 認知症総患者数(男女、年齢階級別・令和2(2020)年)

特-17図[CSV形式:1KB]CSVファイル

令和4(2022)年時点で、女性の死亡最頻値は93歳であり、女性の半数は90歳まで生きる。認知症になってからも、本人もその家族等も自分らしくいられるような社会の実現が重要である。

(こころの状態)

こころの状態を点数階級別にみると、全ての年代で、女性に比べ男性の方が「0~4点」の者の割合が高く、要注意とされる「10~14点」、「15点以上」の者の割合は女性の方が高くなっている。

年代別に10点以上の者の割合をみると、女性は20代及び30代で15%と高く、男性は、30代で13%と最も高くなっている(特-18図)。

特-18図 こころの状態(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-18図 こころの状態(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-18図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(悩みやストレス)

「日常生活で悩みやストレスがある」とする者の割合は、全ての年代で男性よりも女性の方が高く、20代から70代では、女性の方がおおむね10%ポイント程度高くなっている14

悩みやストレスの原因(上位5項目)についてみると、全年代では、男女ともに「自分の仕事」、「収入・家計・借金等」、「自分の病気や介護」の順で割合が高くなっている。

年代別にみると、20代から50代までは男女ともに「自分の仕事」を挙げる者の割合が最も高いが、30代から50代では男性の方が高くなっている。一方、30代及び40代の「育児」、「子どもの教育」、50代から70代の「家族の病気や介護」を挙げる者の割合は、女性の方が高くなっている(特-19図)。

特-19図 悩みやストレスの原因別割合(男女、年齢階級別・悩みやストレスのある者・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-19図 悩みやストレスの原因別割合(男女、年齢階級別・悩みやストレスのある者・令和4(2022)年)

特-19図 悩みやストレスの原因別割合(男女、年齢階級別・悩みやストレスのある者・令和4(2022)年)(続き)別ウインドウで開きます
特-19図 悩みやストレスの原因別割合(男女、年齢階級別・悩みやストレスのある者・令和4(2022)年)(続き)

特-19図[CSV形式:3KB]CSVファイル

14 厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」

(自殺者の状況)

男性の自殺者数は女性の2倍程度となっている。年代別にみると、全ての年代で男性の方が多いが、特に40代及び50代の男性が多くなっている(特-20図)。

特-20図 自殺者数(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)別ウインドウで開きます
特-20図 自殺者数(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)

特-20図[CSV形式:1KB]CSVファイル

自殺の原因・動機についてみると、男女ともに「健康問題」が最も多くなっている。また、男性は女性に比べ「経済・生活問題」、「勤務問題」が多くなっている(特-21図)。

特-21図 自殺の原因・動機別件数(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)別ウインドウで開きます
特-21図 自殺の原因・動機別件数(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)

特-21図[CSV形式:1KB]CSVファイル

これまで述べてきたとおり、健康課題については男女で違いがあるが、通院しながら働いている者の割合をみると、令和4(2022)年時点で、女性40.7%、男性40.6%と同程度となっている。

また、働く者の年齢構成の変化等から、通院しながら働いている者の割合は、男女ともに年々上昇しており、男女ともに何らかの疾病を抱えながら働く者が増えている(特-22図)。

特-22図 通院しながら働いている者の割合の推移(男女、雇用形態別・15歳以上)別ウインドウで開きます
特-22図 通院しながら働いている者の割合の推移(男女、雇用形態別・15歳以上)

特-22図[CSV形式:1KB]CSVファイル

女性の就業継続、キャリアアップの阻害要因として、長時間労働や転勤を前提とする雇用慣行があり、職場における健康支援についても、女性に対して配慮したものになっていない可能性がある。女性と男性は身体のつくりが異なっており、年代によって直面する健康課題も異なっている。

男女共同参画の一層の推進のためには、男女ともに、自分自身及び互いの身体の特性・健康課題に関する正しい理解が求められる。また、希望する全ての人が生き生きと働き、キャリアアップを目指すためには、それぞれの特性に応じた健康支援が必要となる。

(2) 定期健診やがん検診等

(定期健診等の受診状況)

健康の維持・増進のためには、健康診断(一般健診)等を毎年定期的に受診し、自らの健康状態を定期的に確認することが重要である。

令和4(2022)年時点での健診等(健康診断、健康診査及び人間ドック)の受診状況を年代別にみると、いずれの年代でも女性の方が受診率が低くなっている。特に、30代では女性の方が14.3%ポイント低く、最も男女差が大きいが、40代から60代でも女性の方が8%ポイント程度低くなっている(特-23図)。

特-23図 健診等受診率(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-23図 健診等受診率(男女、年齢階級別・令和4(2022)年)

特-23図[CSV形式:1KB]CSVファイル

就業状況別にみると、男女ともに、正規雇用労働者の場合、いずれの年代でも9割が健診等を受診しているのに対し、非正規雇用労働者では、男女ともに20代及び30代で6割、40代で7割、50代で8割と、正規雇用労働者に比べて受診率が低くなっている。

また、仕事をしていない者では、女性は、30代で3割、40代及び50代では5割、男性は30代で2割、40代で3割、50代で4割となっており、働いていないことにより、健診等を受診する機会が少なくなっている状況がうかがえる(特-24図)。

特-24図 健診等受診率(男女、年齢階級、就業状況別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-24図 健診等受診率(男女、年齢階級、就業状況別・令和4(2022)年)

特-24図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(女性のがんの検診の受診状況)

女性のがんの検診受診率(過去2年間)をみると、子宮頸がん検診の受診率は43.6%(20~69歳)、乳がん検診の受診率は47.4%(40~69歳)となっており、年代によって受診率に差がある15(特-25図) 。

特-25図 女性のがんの検診受診率(年齢階級、就業状況別・令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-25図 女性のがんの検診受診率(年齢階級、就業状況別・令和4(2022)年)

特-25図[CSV形式:1KB]CSVファイル

15 「がん対策推進基本計画」(第4期)(令和5(2023)年3月28日閣議決定)では、それぞれのがん検診について、受診率を60%とすることを目標としている。

(3) 生活時間と健康への影響

平日の生活時間をみると、単独世帯の世帯主である有業者においては、男女に大きな違いはないものの、末子の年齢が6歳未満の共働き夫婦の妻と夫の平日の生活時間をみると、家事関連時間が女性に、仕事時間は男性に大きく偏っている(特-26図)。

特-26図 時刻区分別行動者率(平日、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-26図 時刻区分別行動者率(平日、令和3(2021)年)

特-26図[CSV形式:27KB]CSVファイル

また、就業者の週間就業時間をみると、令和5(2023)年時点で、男性では、約2割が週間就業時間49時間以上、約1割が60時間以上となっている。年代別にみると、男性の場合、30代後半から50代前半で、週間就業時間49時間以上及び60時間以上の就業者の割合が他の年代と比べ高くなっているのに対し、女性の場合は、子育て期と重なることもあり、下の年代と比べて低くなっている(特-27図)。

特-27図 週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)別ウインドウで開きます
特-27図 週間就業時間49時間以上、60時間以上の就業者の割合(男女、年齢階級別・令和5(2023)年)

特-27図[CSV形式:1KB]CSVファイル

1週間当たりの実労働時間別うつ傾向・不安をみると、労働時間が長くなるにつれて、「うつ病・不安障害の疑い」がある者及び「重度のうつ病・不安障害の疑い」がある者を合わせた割合が上昇する傾向にあり、1週間の実労働時間が60時間以上の者では、26.8%となっている(特-28図)。

特-28図 1週間当たりの実労働時間別うつ傾向・不安(就業者調査)(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-28図 1週間当たりの実労働時間別うつ傾向・不安(就業者調査)(令和4(2022)年)

特-28図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(睡眠時間と健康)

厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、「睡眠は、健康増進・維持に不可欠な休養活動であり、睡眠が悪化することで、さまざまな疾患の発症リスクが増加し、寿命短縮リスクが高まることが指摘されている」とし、成人では「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」ことが推奨されている。

睡眠不足はメンタル面に影響を与えやすく、理想の睡眠時間と実際の睡眠時間との乖離が大きくなるにつれて、「うつ病・不安障害の疑い」及び「重度のうつ病・不安障害の疑い」がある者の割合が上昇する傾向にある(特-29図)。

特-29図 理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間別うつ傾向・不安(就業者調査)(令和4(2022)年)別ウインドウで開きます
特-29図 理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間別うつ傾向・不安(就業者調査)(令和4(2022)年)

特-29図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また、国際的にみると、我が国の男女の睡眠時間は短くなっている(特-30図)。

特-30図 睡眠時間の国際比較(男女別・15~64歳)別ウインドウで開きます
特-30図 睡眠時間の国際比較(男女別・15~64歳)

特-30図[CSV形式:1KB]CSVファイル

働く女性が増加し、共働き世帯数が専業主婦世帯数の3倍となっている中で、家事・育児等が女性に偏ったままの現在、女性は睡眠時間を減らすことで対応している可能性がある。一方、男性は、依然として長時間労働も多い状態の中で、睡眠時間の確保及び家事・育児等との両立に苦慮していることがうかがえる。

(テレワーク)

新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という。)下でテレワークの導入が進んだことにより、働く場所にこだわらない多様な働き方が社会全体に浸透した16。コロナ前の令和元(2019)年時点では、テレワークを「導入している」企業は約2割にとどまっていたが、コロナ下の令和2(2020)年に急増し、約5割となった。しかし、令和3(2021)年以降「導入している」企業の割合は横ばいとなっているほか、令和4(2022)年時点で「導入していないが、今後導入予定がある」企業の割合は、令和3(2021)年に比べて低下している(特-31図)。

特-31図 テレワークの導入状況の推移別ウインドウで開きます
特-31図 テレワークの導入状況の推移

特-31図[CSV形式:1KB]CSVファイル

16 テレワークの導入状況は企業規模や産業等によっても異なり、全ての者がテレワークの恩恵を受けているわけでないことには留意が必要である(従業者規模別、産業分類別等のテレワーク導入状況については総務省「令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)」参照。)。

また、雇用者のうちテレワークを実施した者の割合も、令和2(2020)年度から2年連続で上昇していたが、令和4(2022)年度以降2年連続で低下しており、コロナが落ち着いたことで、テレワークの実施率が若干低下している可能性が考えられる(特-32図)。

特-32図 雇用型テレワーカーの割合の推移(男女別)別ウインドウで開きます
特-32図 雇用型テレワーカーの割合の推移(男女別)

特-32図[CSV形式:1KB]CSVファイル

有業者で、平日にテレワーク(在宅勤務)をした者とそれ以外の者の生活時間の差(テレワークをした者の生活時間から、それ以外の者の生活時間を引いた差)をみると、テレワークをした男性は65歳未満の全ての年齢階級で仕事時間が減少し、家事時間が増加している。また、育児時間についても15~24歳を除いて増加している。一方、テレワークをした女性は、35~44歳では育児時間が顕著に増加し、25~34歳、45~54歳及び55~64歳では仕事時間が増加している(特-33図)。

特-33図 テレワーク(在宅勤務)をした者とそれ以外の者の生活時間の差(男女別・平日、令和3(2021)年)別ウインドウで開きます
特-33図 テレワーク(在宅勤務)をした者とそれ以外の者の生活時間の差(男女別・平日、令和3(2021)年)

特-33図[CSV形式:1KB]CSVファイル

テレワークの実施は、主に男性の労働時間を減らし、家事・育児時間を増やす効果があることに加え、ほぼ全ての年齢階級で3次活動や睡眠の時間が長くなっていることから示唆されるように、通勤時間を短縮した時間を余暇や睡眠時間に充てることで、心身の負担の軽減につながる可能性がある17。また、フレックスタイム制なども含めた柔軟な働き方を推進することにより、短時間勤務を選択していた女性がフルタイムで勤務することが可能となり、このことが女性のキャリア形成に寄与することも期待できる。さらに、テレワークの普及に伴い、転勤制度を見直す企業も一部出てきており、長時間労働や転勤を前提とする働き方を見直すきっかけにもなると考えられることから、コロナが収束した現在でも、テレワークの維持・一層の推進が求められる。

17 厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」においても、テレワーク実施による心身への好影響が報告されている一方で、「仕事と生活の時間の区別が曖昧となり労働者の生活時間帯の確保に支障が生じるおそれがあること、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気付きにくいという状況となる場合もあることや、ハラスメントが発生するおそれがあることにも留意する必要がある。」と指摘されている。

コラム1 働き方・休み方に関する制度のイロハ~勤務先の制度について知ろう~