第4節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

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第4節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

○ 令和3(2021)年3月、男女共同参画会議の下に置かれた女性に対する暴力に関する専門調査会において取りまとめられた「DV対策の今後の在り方」において、児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の附則により、検討を加え必要な措置を講ずることとされている「通報の対象となるDVの形態、保護命令の申立てをすることができるDV被害者の範囲の拡大」や「DV加害者の地域社会における更生のための指導及び支援の在り方」等について見直しの方向性が示されたことを踏まえ、同年8月、同専門調査会の下に、配偶者暴力防止法見直し検討ワーキング・グループ(WG)を立ち上げ、令和3(2021)年度中9回にわたり開催した。同WGにおいて、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)の見直しに向けた法制面及び同法の運用といった実務面から検討を行い、報告書素案(中間報告)「DV対策の抜本的強化に向けて(仮題)」を取りまとめ、令和3(2021)年12月には同専門調査会に報告した。

また、配偶者等からの暴力の防止及び被害者支援に係る施策を抜本的に強化するため、令和4(2022)年1月、野田聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)を議長とするDV対策抜本強化局長級会議等を立ち上げ、被害者の生活再建に係る手続負担の軽減を含めた配偶者等からの暴力の防止及び被害者支援に係る施策について抜本的な強化を図ることとした。【内閣府(男女共同参画局ほか関係部局)、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省】

○ 内閣府では、配偶者暴力相談支援センター長、地方公共団体の支援センター主管課等の行政職員及び地方公共団体の支援センター、児童相談所並びに民間シェルター等において相談支援業務に携わる官民の相談員等の関係者を対象として、相談対応の質の向上及び被害者や被害親子に対する支援における官官・官民連携強化のために必要な知識の習得機会を提供するため、オンライン研修教材を作成し提供している。(再掲)【内閣府(男女共同参画局)】

○ DVと児童虐待が密接に関連するものであることを踏まえ、DV対応と児童虐待対応との連携強化に向けた取組を推進している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、厚生労働省、関係府省】

○ 内閣府では、令和2(2020)年度から、民間シェルター等と連携してDV被害者支援等を進める都道府県等に交付金を交付し、効果検証等を行っている。令和3(2021)年度は、計26自治体(57団体)に交付金を交付決定した。

被害者等の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者は、被害者等の安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしている。また、加害者が個人情報に係る閲覧や証明書の制度を不当に利用し被害者等の住所を探索することを防止するなど、被害者情報の保護の徹底を図っている。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、厚生労働省、関係府省】

○ 内閣府では、令和2(2020)年10月から、最寄りの配偶者暴力相談支援センター等につながるDV相談ナビに、全国共通短縮番号「#8008(はれれば)」を導入し、相談窓口の更なる周知を図っている。また、令和2(2020)年4月から、DV相談プラスを開設して、多様なニーズに対応できるよう、電話相談対応(24時間)、SNS・メール相談、WEB面談対応、10の外国語での相談対応を行うとともに、各地域の民間支援団体とも連携し、必要な場合には、同行支援なども行うこととしている。(再掲)【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省】

○ 内閣府では、内閣府のホームページ、メールマガジン、SNS(Twitter、Facebook)等を通じて、配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ情報の提供をしている。具体的には、配偶者からの暴力の被害者の支援機関である全国の配偶者暴力相談センターの連絡先のほか、配偶者からの暴力の相談窓口である「DV相談ナビ」や「DV相談プラス」の連絡先等を周知している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、厚生労働省】

○ 内閣府では、DVに関する相談件数の増減の傾向を把握するため、毎月、各都道府県の配偶者暴力相談支援センター及びDV相談プラスにおける相談件数を集計し、公表している。令和3(2021)年度は、毎月1万4,000~1万6,000件程度の相談が寄せられており、概ね前年度から横ばいで推移している(令和3(2021)年4月~翌年1月の暫定値:14万9,506件)。【内閣府(男女共同参画局)】

○ 婦人相談所において、被害者の安全の確保や心身の健康回復を十分に行うとともに、民間シェルター等の積極的活用等による適切かつ効果的な一時保護を実施する。また、婦人相談所一時保護所や婦人保護施設において、被害者に対する心理的ケアや自立に向けた支援、同伴児童への学習支援を推進している。【厚生労働省】

○ 被害者は身体的に傷害を受けたり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)等の疾患を抱えることが多いことから、配偶者暴力相談支援センターにおいて、事案に応じて、医師、相談・保護に関わる職員が連携して、医学的又は心理的な援助を行っている。

厚生労働省では、職務関係者に対する研修の充実等により、被害者に対する適切な支援を行うための人材育成を促進している。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省、関係府省】

○ 被害者は複合的な困難を抱えたり生活困窮に陥ることがあるため、配偶者暴力相談支援センター等において、関係機関や民間シェルター等とも連携しつつ、被害者への中長期的な支援として、就業の促進、住宅の確保、医療保険・国民年金の手続、同居する子供の就学、住民基本台帳の閲覧等の制限等に関する制度の利用等の情報提供及び助言を行っている。また、事案に応じて当該関係機関や民間シェルター等と連携して対応に当たるなど、被害者の自立を支援するための施策等について一層促進している。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省、関係府省】

○ 国土交通省では、被害者の住居の安定の確保のため、地域の実情を踏まえた事業主体の判断による公営住宅への優先入居や目的外使用の実施を促進している。【国土交通省】

○ 内閣府においては、配偶者等からの暴力事案の被害者に対する支援の一環として、令和2(2020)年度から、地域の民間団体と連携して試行的に加害者プログラムを実施している。令和3(2021)年度には、自治体を3自治体に増やして試行実施し、その検証結果を踏まえ、地方公共団体で活用可能な「試行のための留意事項」を令和4(2022)年5月に策定した。被害者支援の一環として、加害者の暴力を抑止するための地域社会内でのプログラムについて、試行実施を進め、地方公共団体において民間団体と連携してプログラムを実施するための留意事項の整理など本格実施に向けた検討を行っている。【内閣府(男女共同参画局)、関係府省】

○ 厚生労働省では、DVや児童虐待の関係機関相互の連携体制の強化を図り、支援の充実に資することを目的として、各機関の連携方法について事例収集、分析等を通じて、DV・児童虐待を包括的にアセスメントするためのツール・ガイドラインを作成し、周知を行った。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省、関係府省】

○ 内閣府では、配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数等について調査を実施し、交際相手からの暴力の相談件数の把握を行った。令和2(2020)年度の交際相手からの暴力の相談件数は、2,933件であり、令和元(2019)年度の3,120件と比べると、ほぼ横ばいで推移している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

○ 非同棲交際相手からの暴力(いわゆるデートDV)については、令和2(2020)年度に作成した「生命(いのち)の安全教育」の中学生以上の教材の中で取り上げているところであり、教育・学習、若年層に対する予防啓発の充実を図っている。また、今年度、文部科学省において、生命の安全教育の教材や指導の手引きを活用したモデル事業を実施した。【内閣府(男女共同参画局)、文部科学省】