第3節 子供、若年層に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

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第3節 子供、若年層に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

○ 文部科学省では、生命を大切にする、性犯罪・性暴力の加害者にならない、被害者にならない、傍観者にならないよう、幼児期から子供の発達段階に配慮した教育の充実を図るため、内閣府と共同で作成した「生命(いのち)の安全教育」の教材等について、全国の学校や保護者への周知を図った。さらに、当該教材を活用したモデル事業を49校で実施し、指導モデルの作成を行うなどの取組を進めている。【内閣府(男女共同参画局)、文部科学省、関係府省】

○ 学校等の子供が活動する場において、子供に対するわいせつ行為が行われないよう、行政機関が保有する情報を集約・活用し、有償、無償を問わずその職に就こうとする者から子供を守ることができるような仕組みの構築等について検討し、子供をわいせつ行為から守る環境整備を段階的に実施するよう取組を始めたところ、厚生労働省では、性的虐待による被害等を受けた児童に対する相談援助が適切に行われるよう、児童相談所体制整備事業(SNS等相談事業)により、SNSを活用した相談体制の整備を行った児童相談所に対する支援を行っている。また、子供や家庭からの相談について、全国どこからでも相談を行うことができるSNSの全国共通アカウントを開設し、各自治体がSNSによる相談に対応する新たな仕組みの構築を検討している。【法務省、文部科学省、厚生労働省】

○ 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者の児童相談所等への通告義務を周知徹底するとともに、児童相談所、警察等においては、性的虐待の認知・把握に努め、被害児童の保護、被害児童に配慮した聴取(代表者聴取)、加害者の検挙と適切な処罰等に向けた必要な施策を実施している。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

○ 若年女性を対象に、NPO等の民間団体が公的機関等と密接に連携し、夜間の見回り・声かけ、インターネット上での相談などのアウトリーチ支援や居場所の確保、自立支援等を実施する若年被害女性等支援事業において、相談支援体制及び医療機関との連携体制等の強化を図り、3自治体(6団体)が実施した。【厚生労働省】

○ 内閣府は、性的な暴力被害を受けた子供に対する被害直後及びその後の継続的な専門的ケアや支援が実施されるよう、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を作成し、提供するとともに、オンライン研修を実施した。

文部科学省では、児童虐待の防止のため、学校・教育委員会において、これまで発出した通知等に基づき、学校等から児童相談所等への定期的な情報提供や児童虐待の早期発見・早期対応、通告後の関係機関との連携等について周知している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

○ 内閣府では、被害児童の負担を軽減しつつ、適正な診断・治療等ができるよう、医療関係者等を対象としたオンライン研修教材を提供するとともに、オンライン研修を実施した。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省】

○ 文部科学省では、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置拡充、児童生徒等が個別に相談できる場所の確保等を通じ、学校等で性被害に関する相談を受ける体制を強化するとともに、相談を受けた場合の教職員の対応方法等について「生命(いのち)の安全教育」教材の指導の手引きの周知や研修を充実させている。【文部科学省】

○ 警察では、通学路や公園等における防犯・安全対策を強化し、性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を的確に実施している。【警察庁】

○ 文部科学省では、第204回国会(令和3(2021)年)で成立した教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)について、その規定や立法趣旨を踏まえた適切な運用がなされるよう、基本指針の策定等の必要な取組を実施した。また、児童生徒に対して性暴力等に及んだ教員については原則として懲戒免職とすることや告発を遺漏なく行うことについて各教育委員会へ徹底するよう指導するとともに、懲戒免職処分歴等の情報の検索可能な期間を直近40年間に大幅延長した「官報情報検索ツール1」の更なる活用を促すなど、実効的な方策を速やかに検討・実施した。

厚生労働省では、保育士資格についても、「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会」での議論も踏まえ、教員と同様の対応として、児童へわいせつ行為を行った保育士の資格管理の厳格化を含む、児童福祉法(昭和22年法律第164号) の改正案を第208回国会(令和4(2022)年)に提出した。【文部科学省、厚生労働省】

○ 「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について」(令和3年12月閣議決定)を踏まえ、教育・保育施設等やこどもが活動する場(放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブ、部活動など)等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入に向けて必要な検討を進めることとしている。【内閣官房、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、関係府省】

○ 子供の性被害防止プラン(「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画」。平成29年4月犯罪対策閣僚会議決定。)に基づき、政府全体で児童買春・児童ポルノ等の対策を推進している。厚生労働省では、子供の家庭内性被害について、早期発見に重点を置いた事実に基づく基礎知識の整理を行い、効果的な対応の在り方について検討し、的確な実践に繋げていくことができるよう、児童相談所職員等に向けた啓発資料を作成し、周知を行った。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省】

○ 内閣府では、アダルトビデオ出演被害問題・「JKビジネス」問題等の若年層を対象とした性暴力被害に関し、取締等の強化、教育・啓発の強化、相談体制の充実、保護・自立支援の取組強化等の施策を総合的に推進した。【内閣府(男女共同参画局)、関係府省】

○ アダルトビデオ出演被害を含む若年層の性暴力被害の実態調査を実施した。【内閣府(男女共同参画局)】

○ 令和3(2021)年度から毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS(Twitter、Facebook)等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を効果的に展開した。ポスターやリーフレットを作成し、国の関係機関や地方公共団体、全国の大学や図書館に配布した。また、鉄道会社の駅構内においてポスターを掲示するなど広く周知を行った。

令和4(2022)年度の月間に向けて、若年層のアダルトビデオ出演などの被害予防のため、ポスター・リーフレットを作成し、大学等に配布するとともに、啓発動画を作成し、文部科学省から各教育委員会を通じて、高校等についても周知を依頼した。啓発動画については、SNS(Twitter、Facebook)等で周知を実施したほか、広く一般に向けて首都圏の主要な路線のトレインチャンネルで周知を行った。さらに、若年層に影響力をもつインフルエンサーを登用し、18、19歳を含む10~20代を対象にした若年層の性暴力被害予防に関するオンラインイベントを実施した。(再掲)【内閣府(男女共同参画局)、関係府省】

○ アダルトビデオ出演被害については、令和4(2022)年3月14日、全都道府県に設置されている性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに対して、被害相談があった場合における、弁護士相談や弁護士紹介等の法的支援、警察への相談等の積極的な実施について周知を行った。また、同年3月24日に日本司法支援センター(法テラス)に対し、ワンストップ支援センターにおいて被害相談があった場合の法的支援について協力を求める事務連絡を発出した。加えて、同年3月30日、ワンストップ支援センターに対しても、法テラスとの連携について事務連絡を発出した。

さらに、アダルトビデオ出演被害に対して政府一体となって強力に取り組んでいくため、令和4(2022)年3月31日、当該問題に関する関係府省対策会議(局長級)において、アダルトビデオ出演被害に係る緊急対策パッケージを取りまとめた。【内閣府(男女共同参画局)、関係府省】

○ 子供に対する性的な暴力根絶に向けて教育・学習、積極的な広報啓発を実施している。特に、コミュニティサイトやSNS等を通じた性犯罪・性暴力の当事者にならないための教育・学習、啓発活動、子供及び保護者のメディア・リテラシーの向上等の充実を図っている。内閣府では、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。平成29年6月23日一部改正)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第5次)」(令和3年6月子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「第5次青少年インターネット環境整備基本計画」という。)に基づき、子供がインターネットを上手に、安全に使うスキルを習得するため、中高生の子供を持つ保護者向けのリーフレットを作成し、都道府県等の関係機関に配布するとともに、内閣府ホームページに掲載するなど、子供及び保護者のメディア・リテラシーの向上に努めている。また、7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、「ペアレンタルコントロール等によるインターネット利用に係る子供の犯罪被害等の防止」を最重点課題に掲げ、関係省庁、地方公共団体、関係団体等の協力を得て、青少年の非行・被害防止のための国民運動を展開した。

総務省は、関係省庁と連携の下、性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護し、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、フィルタリングの普及促進やインターネットの適切な利用等に関する啓発活動等を行っている。

具体的には、子供たちのインターネットの安全な利用に係る普及啓発を目的に、児童・生徒、保護者・教職員等に対する学校等の現場での出前講座(e-ネットキャラバン)や保護者及び教職員向けの上位講座(e-ネットキャラバンplus)を、情報通信分野等の企業・団体や文部科学省と協力して全国で開催した(令和3(2021)年度は全国2,559箇所で開催)。

また、専門家からのヒアリングを通じて、インターネットに係る実際に起きた最新のトラブル事例を踏まえ、その予防法等をまとめた「インターネットトラブル事例集」を平成21(2009)年度より毎年内容を更新して公表し、普及を図っている。【内閣府(男女共同参画局ほか関係部局)、警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省】

○ 法務省の人権擁護機関では、順次、SNSを活用した人権相談体制の整備を進めている。【法務省】

1文部科学省が平成30(2018)年度から教員採用権者(都道府県・指定都市教育委員会、国立・私立学校の設置者等)に提供している、官報に公告された教員免許状の失効の事由、失効年月日等の失効情報を検索できるツール。