第2節 性犯罪・性暴力への対策の推進

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第2節 性犯罪・性暴力への対策の推進

○ 内閣府では、男女間の取り巻く環境の変化に応じた被害傾向の変化等に対応する施策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的に平成11(1999)年度から実施している「男女間における暴力に関する調査」について、法令改正等を踏まえ、調査項目を見直した上で、令和2(2020)年度調査を実施する等、男女間における暴力の実態の把握を行った。(再掲)

法務省では、性犯罪に関する罰則や刑事手続の在り方に関し、「性犯罪に関する刑事法検討会」を開催し、同検討会において、性犯罪に関する刑事の実体法・手続法の在り方に関する様々な論点について、法改正の要否・当否の議論が行われ、令和3(2021)年5月、検討結果として、更なる検討に際しての留意点が示されるなどした報告書が取りまとめられた。

この報告書を踏まえて検討し、近年における性犯罪の実情等に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行う必要があると考え、令和3(2021)年9月、法制審議会に対し、性犯罪に対処するための法整備に関する諮問をし、同年10月以降、刑事法(性犯罪関係)部会において、以下の事項について調査審議が進められている。【内閣府(男女共同参画局)、法務省、関係府省】

  • 暴行・脅迫要件、心神喪失・抗拒不能要件の改正
  • 対象年齢の引上げ
  • 相手方の脆弱性や地位・関係性の利用を要件とする罪の新設
  • わいせつな挿入行為の刑法における取扱いの見直し
  • 配偶者間において強制性交等罪などが成立することの明確化
  • いわゆるグルーミング行為に係る罪の新設
  • 公訴時効の見直し
  • 被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設
  • 性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪の新設
  • 性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みの導入

○ 監護者による性犯罪・性暴力や障害者に対する性犯罪・性暴力等の実態把握に努めるとともに、厳正かつ適切な対処に努めるなど、必要な措置を講じている。【法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

○ 警察では、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」について国民への更なる周知や性犯罪捜査担当係への女性警察官の配置推進等、性犯罪被害に遭った女性が安心して警察に届出ができる環境づくりのための施策を推進し、性犯罪被害の潜在化防止に努めている。【警察庁】

○ 警察では、性犯罪に関して被害の届出がなされた場合には、被害者の立場に立ち、明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除いて、即時に受理することを徹底するとともに、被害届受理時の説明によって、被害者に警察が被害届の受理を拒んでいるとの誤解を生じさせることがないよう、必要な指導を行っている。【警察庁】

○ 警察では、性犯罪等の被害者は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)等の精神的な疾患に苦しむケースが少なくない現状を踏まえ、捜査関係者を含む関係者において、被害者の精神面の被害についても的確に把握し、事案に応じた適切な対応を図っている。【警察庁、関係府省】

○ 警察では、特に電車内等における痴漢に対する徹底した取締りを行うとともに、鉄道事業者等と連携した車内放送やポスター掲示等による痴漢防止の広報・啓発活動を行っている。また、国土交通省においては、車両新造時や大規模改修時において車両防犯カメラの設置を進めるなど車内の防犯関係設備の充実を図っている。【警察庁、国土交通省】

○ 内閣府では、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金の抜本的な拡充により、ワンストップ支援センターの運営の安定化及び被害者支援機能の強化を図り、地方公共団体による被害者支援に係る取組の充実を図った。

また、全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」を周知するとともに、性犯罪・性暴力の夜間の相談や緊急対応のため、これまで夜間休日には対応していないワンストップ支援センターの運営時間外に、被害者からの相談を受け付け、ワンストップ支援センターと連携して支援を実施する「性暴力被害者のための夜間休日コールセンター」を設置した。さらに、若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施した。【内閣府(男女共同参画局)、厚生労働省、関係府省】

○ 内閣府では、性犯罪・性暴力被害の相談件数の傾向を把握するため、半年ごとに、ワンストップ支援センターにおける相談件数を集計し、公表している。令和3(2021)年度上半期にワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は2万9,425件であり、前年度同期の約1.3倍となっている。【内閣府(男女共同参画局)】

○ 内閣府では、被害者の要望に応じた支援をコーディネートできるよう、性犯罪被害者支援に係る関係部局と民間支援団体間の連携を促進するため、担当行政職員及びワンストップ支援センターのセンター長及びコーディネーター、相談員等を対象として、オンライン研修教材を作成し、提供するとともに、オンライン研修を実施した。また、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター全国ネットワーク会議」を開催し、関係機関との連携等について意見交換を行った。さらに、障害者や男性等を含め、様々な被害者への適切な対応や支援を行えるよう、支援事例に関するヒアリングを実施し、支援事例集を作成した。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、厚生労働省、関係府省】

○ 警察では、被害者からの事情聴取に当たっては、その精神状態等に十分に配意するとともに、被害者が安心して事情聴取に応じられるよう、女性警察官等の配置を推進しているほか、全ての警察署に被害者用事情聴取室を整備している。

法務省、警察庁及び厚生労働省においては、被害児童が繰り返し事情を聞かれることによる二次被害を防止して心理的負担を軽減するとともに、記憶の汚染を防止して信用性の高い供述を確保するため、検察庁、警察及び児童相談所が連携し、被害児童の事情聴取に先立って協議を行い、関係機関の代表者が聴取を行う取組を実施しており、被害児童の事情聴取の場所・回数・方法等に配慮するなどしている。また、法務省及び警察庁においては、被害者の事情聴取の在り方等について、精神に障害がある性犯罪被害者に配慮した聴取(代表者聴取)の取組の試行を行うほか、より一層適切なものとなるような取組を検討し、適切に対処している。また、被告人の弁護人は、被害者に対する尋問に際しては、十分に被害者の人権に対する配慮が求められることにつき、啓発に努めている。【警察庁、法務省、厚生労働省、国土交通省】

○ 内閣府では、性犯罪被害者等が安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を作成し、提供するとともに、オンライン研修を実施した。(再掲)

法務省では、被害者に対する不適切な対応による更なる被害を防止する観点も含め、支援に従事する関係者に対して、必要な知識・技能を習得させることを目的とした研修を実施した。また、検察官に対し、経験年数等に応じて実施する研修において、性犯罪に直面した被害者の心理や障害のある性犯罪被害者の特性や対応についての講義を実施した。【内閣府(男女共同参画局)、法務省、関係府省】

○ 医療機関における性犯罪被害者の支援体制、被害者の受入れに係る啓発・研修を強化し、急性期における被害者に対する治療、緊急避妊等に係る支援を含む、医療機関における支援を充実させるとともに、支援に携わる人材の育成に資するよう、とりわけ女性の産婦人科医を始めとする医療関係者に対する啓発・研修を強化している。【厚生労働省、関係府省】

○ 性犯罪被害者に対する包括的・中長期的な支援を推進するとともに、警察庁においては、医療費・カウンセリング費用の公費負担制度の効果的な運用を図っている。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金により、ワンストップ支援センターにおける医療費・カウンセリング費用について補助を行っており、「夜間休日対応のコールセンター設置に伴う相談対応の整備及び性犯罪・性暴力被害者に対する急性期の医療費支援について(通知)(令和2年12月25日)」により、急性期の医療的支援を必要とする被害者が、ワンストップ支援センターを通じて医療機関を受診した場合には、被害者の居住地及び被害の発生地に関わらず、医療費支援が受けられるよう依頼した。厚生労働省は、性犯罪に関する専門的知識・技能を備えた医師、看護師、医療関係者等や民間支援員の活用を促進している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、厚生労働省】

○ 厚生労働省では、医師や看護師を養成する教育の中で、性犯罪被害等に関する知識の普及に努めている。【文部科学省、厚生労働省】

○ 厚生労働省では、被害者の心のケアを行う専門家の育成等相談体制の充実を図っている。【厚生労働省】

○ 関係府省や都道府県警察において、13歳未満の子供を対象とした暴力的性犯罪受刑者の出所後の所在等の情報を共有し、その所在を確認するとともに、性犯罪者に対する多角的な調査研究を進めるなど、効果的な再犯防止対策を進めている。【警察庁、法務省】

○ 法務省では、刑事施設及び保護観察所において性犯罪者に実施している専門的プログラムの更なる拡充について検討を行うほか、仮釈放中の性犯罪者等にGPS機器の装着を義務付けること等について、諸外国の法制度・運用や技術的な知見等に関する調査を実施している。【法務省】

○ 二次被害防止の観点から被害者支援、捜査、刑事裁判手続における被害者のプライバシー保護を図るとともに、メディア等を通じた的確な情報発信により性犯罪に対する一般社会の理解を増進している。【内閣府(男女共同参画局)、警察庁、法務省、関係府省】

○ 内閣府では、女性に対する暴力の予防と根絶に向けて、「女性に対する暴力をなくす運動」を国民運動として、「性暴力を、なくそう」をテーマとして設定し、効果的な広報啓発を一層推進した。また、被害者自身が被害と認識していない場合があることや、被害を受けていることを言い出しにくい現状があることも踏まえ、女性に対する暴力に関する認識の向上や、悪いのは被害者ではなく加害者であり、暴力を断じて許さないという社会規範の醸成を図った。(再掲)

予防啓発のポスターやリーフレットを作成し、国の関係機関や地方公共団体、全国の図書館等に配布し、鉄道会社の駅構内でもポスターを掲示するなど広く周知を行った。女性に対する暴力の根絶を呼びかけるパープル・ライトアップは、初めて全国47都道府県が参加し、迎賓館赤坂離宮を始めとする全国のランドマークやタワー等、過去最高の342か所で実施された。また、地方公共団体等による展示、広報、イベント等、各地で様々な意識啓発のための取組が行われた。日本経済団体連合会を通じて企業の賛同の呼びかけを行い、5つの企業でパープルリボンバッジの着用やポスターの掲示等の協力があった。

さらに、全閣僚に対して、令和3(2021)年11月12日から25日までの2週間、シンボルマークであるパープルリボンの着用を依頼した。「女性に対する暴力撤廃の国際デー」である11月25日には、野田聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が、性暴力の実態や性暴力対策の強化について、有識者等と意見交換を行った。

○ 令和3(2021)年度から毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS(Twitter、Facebook)等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を効果的に展開した。ポスターやリーフレットを作成し、国の関係機関や地方公共団体、全国の大学や図書館に配布した。また、鉄道会社の駅構内においてポスターを掲示するなど広く周知を行った。

令和4(2022)年度の月間に向けて、若年層のアダルトビデオ出演などの被害予防のため、ポスター・リーフレットを作成し、大学等に配布するとともに、啓発動画を作成し、文部科学省から各教育委員会を通じて、高校等についても周知を依頼した。啓発動画については、SNS(Twitter、Facebook等)で周知を実施したほか、広く一般に向けて首都圏の主要な路線のトレインチャンネルで周知を行った。さらに、若年層に影響力をもつインフルエンサーを登用し、18、19歳を含む10~20代を対象にした若年層の性暴力被害予防に関するオンラインイベントを実施した。【内閣府(男女共同参画局)、関係府省】