第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

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第10章 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

1 働きたい人が働きやすい中立的な税制・社会保障制度・慣行

社会保障制度については,適用拡大が短時間労働者の働き方や企業経営に与える影響を踏まえつつ,短時間労働者に対する被用者保険の適用について,令和4(2022) 年10月に100人超規模, 令和6(2024)年10月に50人超規模の企業で働く短時間労働者まで適用範囲を拡大することを盛り込んだ年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律が令和2(2020)年5月に成立した(第2章第5節参照)。

民間企業における配偶者手当については,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について引き続き広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促した。

外務省では,旅券(パスポート)の旧姓併記について,令和3(2021)年4月1日以降の申請について,旧姓の併記を希望する場合には,戸籍謄本,旧姓が記載された住民票の写し又はマイナンバーカードのいずれかで旧姓を確認できれば,旧姓の併記を認めるよう要件を緩和するとともに,旅券の身分事項ページで,併記されたものが旧姓であることを外国の入国管理当局などに対して分かりやすく示すため,英語で「Former surname」との説明書きを加えることとした旨発表した。

内閣府では,各種国家資格等でさらに旧姓使用がしやすくなるよう,各種国家資格等における旧姓使用の現状等に関する調査を実施した。

また,政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響等について,調査研究を行った。

2 男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備

政府は,「少子化社会対策大綱」(令和2年5月閣議決定)に基づき,男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備などに取り組んでいる。

子ども・子育て支援新制度においては,小規模保育等,地域のニーズに応じた幅広い子育て支援分野において,子供が健やかに成長できる環境や体制が確保されるよう,その担い手を確保する必要があることから,育児経験豊かな地域の人材を対象として,保育や子育て支援分野の各事業等に従事するために必要となる知識や技能等を習得する子育て支援員研修事業を実施するとともに,それら支援の担い手の資質向上等を目的として,職員の資質向上・人材確保等研修事業及び指導者養成等研修事業を実施している。加えて,保育士等について,令和2(2020)年度も人事院勧告に準拠した公定価格の改定を行いつつ,平成24(2012)年度に比べ,月額最大8万4千円の処遇改善を実施した。

女性(25歳~44歳)の就業率の上昇や,保育の利用申込者数の伸びが加速している中,平成29(2017)年6月に公表した「子育て安心プラン」に基づき,令和2(2020)年度末までの3年間で女性就業率80%に対応できる約32万人分の保育の受け皿の整備を進めた。また,できるだけ早く待機児童の解消を目指すとともに,女性の就業率の上昇に対応するため,令和2(2020)年12月に公表した「新子育て安心プラン」に基づき,令和3(2021)年度から令和6(2024)年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することとしている。

加えて,保育の受け皿拡大に伴い必要となる保育人材の確保のため,処遇改善や新規資格取得者の確保,就業継続支援,離職者の再就職支援など,引き続き総合的な対策を講じている。

また,子育てや教育にかかる費用負担の軽減を図るといった少子化対策と,生涯にわたる人格形成の基礎や,その後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性の観点から令和元(2019)年10月より開始した幼児教育・保育の無償化を,引き続き着実に実施している。

厚生労働省と文部科学省は,共働き家庭等の「小1の壁」・「待機児童」を解消するとともに,次代を担う人材を育成するため,全ての児童が放課後を安全・安心に過ごし,多様な体験・活動を行うことができるよう平成30(2018) 年9 月に, 令和元(2019)年から5年間を対象とする「新・放課後子ども総合プラン」を共同で策定した。同プランでは,放課後児童クラブについて,令和5(2023)年度末までに約30万人分(約122万人から約152万人)の受け皿整備を行うとともに,全ての小学校区で,放課後児童クラブと放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し,うち小学校内で一体型として1万か所以上で実施することを目指している。

また,新たに放課後児童クラブ又は放課後子供教室を整備等する場合には,学校施設を徹底的に活用することとし,新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを目指している。さらに,子供の主体性を尊重し,子供の健全な育成を図る放課後児童クラブの役割を徹底し,子供の自主性,社会性等の向上を図ることとしている。令和2(2020)年度は,放課後児童クラブについて,施設整備費の国の補助率を1/3から2/3へ引上げを行うとともに,放課後児童支援員等の処遇改善などの人材確保対策等を推進した。

厚生労働省では,子育て家庭等の不安感や負担感を軽減するため,子育て親子が気軽に集い,交流することができ,子育てに関する相談・援助を行う場の提供や地域の子育て関連情報の提供,子育て及び子育て支援に関する講習を行う「地域子育て支援拠点事業」を促進した。

子ども・子育て支援の推進に当たって,子ども及びその保護者等,又は妊産婦がその選択に基づき,教育・保育・保健その他の子育て支援を円滑に利用できるよう,情報提供及び相談・助言等を行うとともに,関係機関との連絡調整等を行う「利用者支援事業」(基本型・特定型)を促進している。

また,国や地方公共団体が行うベビーシッター等に関する利用料等の助成について,令和3(2021)年度税制改正において「子育て支援に要する費用に係る税制上の措置」を創設し,非課税所得とした。

厚生労働省では,高齢化が一層進展する我が国において,介護保険制度が将来にわたり国民生活の安心を支え続けることができるよう,介護保険法(平成9年法律第123号)の着実な実施を図っている。

また,全国の主要なハローワークに設置された「人材確保対策コーナー」において,医療・福祉分野等のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施している。

介護人材の確保のため,介護分野への元気高齢者等の参入促進セミナーの実施,介護職員に対する悩み相談窓口の設置等への支援等を地域医療介護総合確保基金に新たに位置付けたほか,介護職の魅力や社会的評価の向上を図り,介護分野への参入を促進するため,介護を知るための体験型イベントの開催や,介護助手等多様な人材の参入を促しつつ,外部コンサルタント等を活用し,リーダー的介護職員の育成等チームケアの実践による介護の提供体制や,地域の事業者間・他職種連携による介護業務効率等について,先駆的に実施される取組を支援し,その全国展開を図るなど,多様な人材の確保等に向けた取組を推進した。

さらに,介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示)に基づき,介護労働者の身体的負担の軽減に資する介護福祉機器を導入した事業主や,賃金制度の整備等を行った事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善の相談援助及び実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を実施した。また,介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え,介護事業所の雇用管理改善に係る好事例把握やコンサルティング等を行う事業を引き続き実施した。

加えて,国民が可能な限り住み慣れた地域で暮らすことができるよう,地域包括ケアシステムの実現を目指している。

また,子の看護休暇等について時間単位での取得を可能とすることを規定した改正法令(令和3(2021)年1月1日施行)について,円滑な施行が図られるよう,改正内容の周知を図っているほか,男性の育児休業の取得を促進するため,育児・介護休業法等の改正法案を第204回国会(令和3(2021)年)に提出した(第2章第2節参照)。

国土交通省では,公的賃貸住宅等における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて子育て支援施設等の生活支援施設の導入を図る取組への支援,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行った。

さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を推進しているほか,公共交通機関,公共施設等におけるバリアフリー化を踏まえ,ベビーカーの利用等,子育てしやすい環境づくりに向けた取組を行っている。

加えて,全国の高速道路のサービスエリア及び国が整備した「道の駅」において,令和3(2021)年度を目途に,24時間利用可能なベビーコーナーの設置,屋根付きの優先駐車スペースの確保等を完了させるなど,高速道路のサービスエリアや「道の駅」における子育て応援の取組を推進している。

令和元(2019)年6月18日,「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」において策定された「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」に基づき,内閣府,厚生労働省,文部科学省,国土交通省及び警察庁では,未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検の結果を踏まえ,必要な対策を推進している。

加えて,警察庁では,子供の通行が多い生活道路等での交通指導取締りに活用できる可搬式速度違反自動取締装置の全国的な整備拡充を図り,子供の交通安全の確保に取り組んだ。

消費者庁では「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し,子供の事故防止に取り組んでいる。具体的には,保護者等に向けた注意喚起を行うとともに,事故予防のポイントなどをまとめ「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!公式ツイッター」で定期的に発信するなど,子供の不慮の事故予防に関する啓発活動を行っている。

また,子供の事故の実態及び事故防止に向けた各種取組等について「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において情報共有するとともに,「子どもの事故防止週間(令和2(2020)年度:7月20日~26日)」を定め,関係府省庁が連携して集中的な広報活動を実施している。