第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

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第9章 貧困,高齢,障害等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

1 就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組

短時間労働者に対する被用者保険の適用について,適用拡大が短時間労働者の働き方や企業経営に与える影響を踏まえつつ,令和4(2022)年10月に100人超規模,令和6(2024)年10月に50人超規模の企業で働く短時間労働者まで適用範囲を拡大することを盛り込んだ年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律が令和2(2020)年5月に成立した(第2章第5節参照)。

厚生労働省では,複合的な課題を抱える生活困窮者について,第196回国会(平成30(2018)年)で成立した生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成30年法律第44号)による改正後の生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づき,相談支援,就労支援,家計改善支援等の実施を着実に推進し,生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化に取り組んだ。

2 ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり

内閣府では,子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう,「子供の貧困対策に関する大綱」(令和元年11月閣議決定)に基づき,官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」を展開している。具体的には,草の根で子供たちに寄り添った活動を行うNPO等の支援団体と,その活動を支援する意思と資源を持つ企業等とのマッチングの促進,民間資金を活用した「子供の未来応援基金」によるNPO等の支援団体に対する活動資金の支援等が挙げられる。本基金については,令和2(2020)年度末時点で約15億200万円の寄付が寄せられ,同年7月には,新型コロナ対策を踏まえた食料の配布やオンライン学習支援などを行う20団体に対し緊急支援を行うとともに,令和3(2021)年1月には,申請のあった327団体から96団体を審査・選定し,同年4月から実施される活動を支援することが決定された。さらに,令和3(2021)年3月には,「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策」(令和3(2021)年3月新型コロナに影響を受けた非正規雇用労働者等に対する緊急対策関係閣僚会議決定)の施策の一つとして,「地域子供の未来応援交付金」による支援を拡充し,子ども食堂や学習支援といった子供たちと支援を結びつけるつながりの場などをNPO等に委託して整備する地方公共団体を緊急的に支援することとした。

厚生労働省では,母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)及び新たな「子供の貧困対策に関する大綱」に基づき,1子育て・生活支援,2就業支援,3養育費確保支援,4経済的支援という4つの柱に沿って,

  • 支援を必要とするひとり親家庭が行政の相談窓口に確実につながるよう,地方公共団体の相談窓口のワンストップ化の推進
  • 放課後児童クラブ等の終了後にひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくり
  • 高等職業訓練促進給付金等による就職に有利な資格の取得の促進
  • 養育費相談支援センターにおける,養育費の取り決めや面会交流に関する支援
  • 児童扶養手当の支給や,母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付

等,総合的な支援を実施している。

文部科学省では,誰もが,家庭の経済事情に左右されることなく,希望する質の高い教育を受けることができるよう,教育の無償化・負担軽減に向けた取組を行っている。

例えば,初等中等教育段階における取組として,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,各市町村において行われる学用品費の支給等の就学援助事業に対する助成を行い,予算単価の増額など制度の充実を図っている。

後期中等教育段階における取組としては,年収目安910万円未満の世帯の生徒の授業料を支援する「高等学校等就学支援金」等の制度改正により,私立高等学校等に通う年収目安590万円未満の世帯の生徒を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現した。

また,低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)を対象に授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」については,給付額の増額や,家計急変支援の実施等の充実を図った。

このほか,新たに「高校等専攻科の生徒への修学支援」を創設した。

また,高等教育段階における取組として,「大学等における修学の支援に関する法律」(令和元年法律第8号)に基づき,令和2(2020)年4月から,住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生等を対象として,大学,短期大学,高等専門学校,専門学校における授業料等減免制度の創設及び給付型奨学金の支給を拡充した。また,平成29(2017)年度に希望者全員に対する貸与を実現した無利子奨学金について,引き続き貸与基準を満たす希望者全員に貸与した。大学院生に対しては,給与型の経済的支援として,ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の業務に対する給与を各大学が自主的に支給している。

また,地域学校協働活動の一環として,経済的な理由や家庭の状況により,家庭での学習が困難であったり,学習習慣が十分に身についていなかったりする児童生徒を含め,希望する全ての小・中・高校生を対象とした地域住民等の協力による原則無料の学習支援(いわゆる地域未来塾等)を推進している。

このほか,保護者が安心して家庭教育を行うことができるよう,家庭教育に関する支援が届きにくい家庭に配慮しつつ,地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チーム等が地域の実情に応じて行う家庭教育支援に関する取組(保護者に対する学習機会や情報の提供,相談対応等)を推進するため,補助事業(地域における家庭教育支援基盤構築事業)等を実施している。

法務省と厚生労働省の両省から,養育費の確保に向けて,戸籍担当部署とひとり親支援担当部署の更なる連携強化の推進を求める事務連絡を発出した。また,法務省では,養育費に関する法的な知識をわかりやすく解説したパンフレット(合意書ひな形を含む。)を作成し,パンフレットを離婚届用紙の交付を求める当事者に離婚届用紙と同時に配布する取組を行うとともに,利用者目線に立って,父母が離婚をする際に考えておくべき事項をまとめたウェブページを公開した。さらに,養育費の不払いの解消に向けた課題や対応を検討するため,有識者による「養育費不払い解消に向けた検討会議」を開催し,令和2(2020)年12月24日に取りまとめを公表した。さらに,民事執行法(昭和54年法律第4号)の改正により,現行の財産開示手続をより利用しやすく実効的なものにしたほか,債務者の有する不動産,給与債権,預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続を新設したため,関係機関等にこれらの制度を周知した。

3 子供・若者の自立に向けた力を高める取組

内閣府では,社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者に対し,様々な機関がネットワークを形成して支援を行う「子ども・若者支援地域協議会」の地方公共団体における設置・活用を引き続き推進しているほか,地方公共団体における「子ども・若者総合相談センター」としての機能を担う体制の確保も推進している。また,アウトリーチ(訪問支援)に関する研修を始めとする各種研修を実施している。

さらに,平成30(2018)年度に実施した満40歳以上の者を対象としたひきこもりに関する調査の結果について,公的機関や民間支援機関の職員を対象とする研修などを通じて広報した。

文部科学省では,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育及び後期中等教育以降における実践的な職業教育を推進している。

また,困難な状況に置かれた児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援している。

さらに,高校中退者等の高卒資格の取得に向けた学習相談及び学習の支援を実施するため,地方公共団体の取組を支援するとともに,新たな支援等における高校中退者等の学習相談・支援を可能とする体制のモデル構築を行う事業を実施した。

厚生労働省では,若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう,「新卒応援ハローワーク」等を拠点に,新規学校卒業者や中途退学者,未就職卒業者に対する正社員就職の支援を実施するとともに,フリーター等の非正規雇用で働く若者に対しては,「わかものハローワーク」等を拠点に正社員就職に向けた支援を実施している。

また,「地域若者サポートステーション事業」について,高校中退者等の支援を更に充実させるため,学校等関係機関と連携し,卒業・修了年度の1月以降において進路が未決定の在学生に対する切れ目のない支援アプローチを強化した。

さらに,各都道府県,指定都市において,ひきこもりに特化した相談窓口としての機能を有する「ひきこもり地域支援センター」による支援を実施した。