第1節 配偶者等からの暴力の実態

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第1節 配偶者等からの暴力の実態

(配偶者からの暴力についての被害経験)

内閣府「男女間における暴力に関する調査」(令和2年)によると,これまでに結婚したことのある者のうち,配偶者(事実婚や別居中の夫婦,元配偶者も含む。)から「身体的暴行」,「心理的攻撃」,「経済的圧迫」又は「性的強要」のいずれかについて「何度もあった」とする者の割合は女性10.3%,男性4.0%,「1,2度あった」とする者の割合は女性15.6%,男性14.4%となっており,1度でも受けたことがある者の割合は女性25.9%,男性18.4%となっている(I-7-1図)。

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I-7-1図 配偶者からの被害経験

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(配偶者間における暴力の被害者の多くは女性)

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)の施行(平成13(2001)年10月)後,警察が把握する配偶者からの暴力事案は増加傾向が続いている。

配偶者間における暴力の被害者は,女性である場合が多く,令和2(2020)年に検挙した配偶者間における殺人,傷害,暴行事件は6,759件であり,そのうち6,006件(88.9%)は女性が被害者となった事件である。

女性が被害者となった割合を罪種別に見ると,殺人の144件中86件(59.7%)を除いて,傷害で2,253件中2,027件(90.0 %), 暴行で4,362件中3,893件(89.2%)と圧倒的に女性が被害者となる割合が高くなっている(I-7-2図)。

I-7-2図 配偶者間における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者の男女別割合(検挙件数,令和2(2020)年)別ウインドウで開きます
I-7-2図 配偶者間における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者の男女別割合(検挙件数,令和2(2020)年)

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警察庁「令和2年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」によると,警察における配偶者からの暴力事案等の相談等件数は,継続して増加傾向にあり,令和2(2020)年は8万2,643件と配偶者暴力防止法施行後最多となっている。保護命令違反の検挙は76件と前年と比較して増加した一方,配偶者からの暴力事案等に関連する刑法犯・他の特別法犯の検挙は8,702件であり,前年と比較して減少した。

同資料によると,令和2(2020)年の配偶者からの暴力事案等の相談等件数の被害者のうち76.4%(63,165件)は女性であるが,男性の割合も上昇傾向にある。

また,配偶者間における犯罪のうち,女性が被害者であるものの検挙件数の推移を罪種別に見ると,令和2(2020)年は,傷害は2,027件と前年に比べ減少し,暴行も3,893件と前年と比べ減少した23(I-7-3図)。

I-7-3図 夫から妻への犯罪の検挙件数の推移別ウインドウで開きます
I-7-3図 夫から妻への犯罪の検挙件数の推移

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23数値については解決事件を除く。解決事件とは,刑法犯として認知され,既に統計に計上されている事件であって,これを捜査した結果,刑事責任無能力者の行為であること,基本事実がないことその他の理由により犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件をいう。

(配偶者からの被害経験の相談状況)

配偶者から暴力等の被害経験のある者のうち誰かに相談した者の割合について,平成20(2008)年以降の推移を見ると,平成26(2014)年までは女性は5割前後,男性は2割前後で推移していたが,令和2(2020)年は女性53.7%,男性31.5%となっている(I-7-4図)。

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I-7-4図 配偶者からの被害経験のある者のうち誰かに相談した者の割合の推移

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(配偶者暴力相談支援センター等への相談件数等)

配偶者暴力防止法では,都道府県における配偶者暴力相談支援センターの設置は義務(市町村は努力義務)であり,同センター数は年々増加している。令和3(2021)年4月現在,全国300か所(うち市町村が設置する施設は127か所)が同センターとして,相談,カウンセリング,被害者やその同伴家族の一時保護,各種情報提供等を行っている。

また,令和元(2019)年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数は11万9,276件と過去最多となり,5年連続で10万件を超える高水準で推移している(I-7-5図)。

I-7-5図 配偶者暴力相談支援センター数及び相談件数の推移別ウインドウで開きます
I-7-5図 配偶者暴力相談支援センター数及び相談件数の推移

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(保護命令の申立て及び発令状況)

配偶者暴力防止法では,被害者の申立てにより,裁判所が加害者に対し接近禁止命令又は退去命令を発する保護命令の制度を創設し,この命令違反に対して刑事罰を科すこととしている。

最高裁判所によると, 法施行(平成13(2001)年10月)後から令和2(2020)年12月末までに終局した保護命令事件は4万9,019件である。

令和2(2020)年に終局した配偶者暴力等に関する保護命令事件(1,855件)のうち,保護命令が発令された件数は1,465件であった。そのうち被害者に関する保護命令のみ発令されたものは26.1%,被害者に関する保護命令と「子」への接近禁止命令が発令されたものは40.4%,被害者に関する保護命令と「子」と「親族等」への接近禁止命令が同時に発令されたものは20.9%となっている(I-7-6図)。

I-7-6図 配偶者暴力等に関する保護命令事件の処理状況等の推移別ウインドウで開きます
I-7-6図 配偶者暴力等に関する保護命令事件の処理状況等の推移

I-7-6図[CSV形式:2KB]CSVファイル

また,令和2(2020)年に終局した事件のうち,生活の本拠を共にする交際相手からの暴力等に係る被害者からの申立てにより保護命令が発令された件数は,141件となっている。