第2節 進路選択に至る女子の状況と多様な進路選択を可能とするための取組

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第2節 進路選択に至る女子の状況と多様な進路選択を可能とするための取組

戦前からの変遷を経て,現在では,教育内容に男女で取扱いの相違はなく(コラム2参照),内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成28年)によると,66.4%の者が「学校教育の場」において男女の地位は平等になっていると回答している。この数値は,「家庭生活」や「職場」,「政治の場」11と比べても高くなっており,意識の面でも学校教育の場が男女平等だと認識している者が多いことがうかがわれる。

一方,大学(学部)における専攻分野には男女の偏りが見られ,現時点でも,高等学校卒業時点の進路選択に男女の相違があると言える。

高等学校卒業時点の進路選択には,それまで生徒が置かれていた環境と選択の先にある将来の環境の双方が影響すると考えられる。本節では,まず,高等学校卒業時までの期間において影響を与え得る要素として,好きな科目や成績,教員の性別等の状況,家族の影響に着目し,それぞれの男女の相違から進路選択に至る女子の状況を分析する。次に,高等学校卒業時の進路選択に影響を与え得る要素として,進学先となる高等教育機関における状況や,高等教育機関で選択した専門分野との連続性が強い研究者における状況について分析する。最後に,多様な進路選択を可能とするための取組としてキャリア教育12や理工系人材の育成に係る取組について取り上げる。

11「家庭生活」は47.4%,「職場」は29.7%,「政治の場」は18.9%。

12「キャリア教育」の定義は,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(中央教育審議会,平成23年1月)によると,「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」とされている。

1 進路選択までの環境等

(1)好きな科目や成績等

(女子は男子よりは国語好きが多いが,小学生女子は国語より理科が好き)

平成27(2015)年に実施された調査13によると,小学生,中学生共に好きな科目に男女で相違が見られる。女子は,男子に比べて国語が好きな割合が高く,男子は,女子に比べて社会や算数(数学),理科が好きな割合が高くなっている。特に,小学生では算数,中学生では理科で男女差が大きくなっている。もっとも女子に着目してみると,小学生の好きな科目は英語,理科,国語の順であり,国語より理科が好きな者が多く,3位の国語と4位の算数も僅差である。しかし,中学生になると5科目中数学,理科は各々4位,5位に低下している(I-特-9図)。

I-特-9図 好きな科目(小学生・中学生,男女別)別ウインドウで開きます
I-特-9図 好きな科目(小学生・中学生,男女別)

I-特-9図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また,中学生を対象にした「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」14によると,自身を「理系タイプである」もしくは「どちらかといえば理系タイプである」と回答した女子は27.1%15,自身を「文系タイプである」もしくは「どちらかといえば文系タイプである」と回答した女子は41.0%16であり,男子に比べて女子は自身について「文系タイプである」,「どちらかといえば文系タイプである」と回答した生徒が多くなっている。さらに「将来は文系/理系どちらの進路に進みたいか」との質問に対しても,男子に比べて女子は,「文系」,「どちらかといえば文系」と回答した生徒が多くなっている(I-特-10図)。

I-特-10図 文系・理系に対する意識(中学生,男女別)別ウインドウで開きます
I-特-10図 文系・理系に対する意識(中学生,男女別)

I-特-10図[CSV形式:1KB]CSVファイル

他方,「多様な選択を可能にする学びに関する調査」17によると,中学生の頃に理科が好きだった女性の割合は世代が若くなるにつれて増えている(I-特-11図)。

I-特-11図 中学生の頃に理科が好きだった者の割合(年代別)別ウインドウで開きます
I-特-11図 中学生の頃に理科が好きだった者の割合(年代別)

I-特-11図[CSV形式:1KB]CSVファイル

このように,小中学生の段階から,好きな科目や希望する進路について男女で相違が見られるが,その中でも理科においては,若年層になるほど中学生の頃に好きだったと答える女性が増えており,男女差が小さくなる傾向がうかがえる。

13ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(平成28年)。

14「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」(平成29年度内閣府委託調査・株式会社リベルタス・コンサルティング)。

15「理系タイプである」10.3%と「どちらかといえば理系タイプである」16.8%を足した数値。

16「文系タイプである」14.4%と「どちらかといえば文系タイプである」26.6%を足した数値。

17「多様な選択を可能にする学びに関する調査」(平成30年度内閣府委託調査・株式会社創建)

(女子の理系回避の原因は成績ではなく環境)

次に,義務教育修了段階(15歳児)の学習到達度における男女差について見てみる。OECD(経済協力開発機構)が平成27(2015)年に実施したPISA調査(生徒の学習到達度調査)18によると,我が国の学力は引き続き上位に位置している。各分野別に見ると,読解力19は,女子が得点,正答率ともに高くなっているが,科学的リテラシー及び数学的リテラシー20は,男子が得点,正答率ともに高くなっている(I-特-12表)。このように,我が国の女子の科学的リテラシー及び数学的リテラシーの点数は,男子に比べると低くなってはいるが,国際的に見て点数が悪いというわけではなく,むしろ諸外国の女子及び男子よりも高くなっている。

I-特-12表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2015年調査の結果別ウインドウで開きます
I-特-12表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2015年調査の結果

I-特-12表[CSV形式:2KB]CSVファイル

しかしながら,2で後述するとおり,大学等における理工系分野の女子割合は低い。また,女性研究者の割合も諸外国と比べると低い水準にとどまっており,特に,研究者の大半を占める工学分野及び理学分野の研究者に占める女性の割合は,大学等の研究本務者で12.6%(工学11.1%,理学14.6%),企業の研究者で8.1%(工学5.6%,理学14.8%)と低い水準となっている。これは,女子の理数系科目の学力不足ではなく,周囲の女子の進学動向,親の意向,ロールモデルの不在等の環境が影響していると考えられるため,生徒に学んだ知識と実社会のつながりを理解させるような環境を醸成することや,生徒だけでなくその家族や保護者に対しての支援も行うこと等が必要であると指摘されている21

コラム4 「職業学科における状況」

18OECDが義務教育修了段階の15歳児の生徒を対象に実施。生徒が持っている知識や技能を,実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかを見るもの。2015年調査は,72か国・地域から約54万人を対象に実施し,我が国からは,高等学校本科の全日制学科等の1年生のうち198校(学科),約6,600人の生徒が参加した。

19PISA2015年調査(国立教育政策研究所「生きるための知識と技能OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2015年調査国際結果報告書」(平成28年12月))における定義は,「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考し,これに取り組むこと」とされている。

20PISA2015年調査においては,科学的リテラシーは,「思慮深い市民として,科学的な考えを持ち,科学に関連する諸問題に関与する能力」,数学的リテラシーは,「様々な文脈の中で数学的に定式化し,数学を活用し,解釈する個人の能力」と定義されている。

21「理工系分野における女性活躍の推進を目的とした関係国の社会制度・人材育成等に関する比較・分析調査報告書」(平成28年度内閣府委託調査・公益財団法人未来工学研究所)

(2)教員の性別等をめぐる状況

(教育機関の段階が上がるほど女性教員は減少)

平成28(2016)年時点の教諭に占める女性の割合は,幼稚園が92.7%,幼保連携型認定こども園が93.7%である22。また,保育士に占める女性の割合は97.1 %(平成27(2015)年)であり23,小学校就学前の段階で子供が接する教諭や保育士の大多数を女性が占める状況となっている。

初等中等教育段階について女性教員の割合を見ると,平成30(2018)年5月時点で,小学校では62.2%となっているが,中学校では43.3%,高等学校では32.1%と教育段階が上がるにつれてその割合は低下している。一方,いわゆる管理職である教頭以上に占める女性の割合は近年上昇傾向にあるものの,小学校では22.9%,中学校では9.7%,高等学校では8.8%にとどまっている。

高等教育段階について見ると,短期大学では全教員に占める女性の割合は52.3%と半数を超えているが,大学・大学院では24.8%にとどまっている。特に教授等に占める割合は16.7%と,准教授以下と比べて低くなっている(I-特-13図)。

I-特-13図 本務教員総数に占める女性の割合(教育段階別,平成30(2018)年度)別ウインドウで開きます
I-特-13図 本務教員総数に占める女性の割合(教育段階別,平成30(2018)年度)

I-特-13図[CSV形式:1KB]CSVファイル

次に,教科別に女性教員の割合を見ると,中学校では国語や英語で女性教員が多くなっているが,数学や理科,社会では男性教員が多くなっている(I-特-14図)。この傾向は,高等学校においても同様であり,いわゆる文系科目に女性教員が多く,いわゆる理系科目及び社会科に男性教員が多いことが分かる。これは,好きな科目の男女の傾向と一致している(I-特-9図参照別ウインドウで開きます)。

I-特-14図 担任教科別,教員免許状別教員構成(中学校)別ウインドウで開きます
I-特-14図 担任教科別,教員免許状別教員構成(中学校)

I-特-14図[CSV形式:1KB]CSVファイル

「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」によると自身を「理系タイプである」もしくは「どちらかといえば理系タイプである」と位置付けている割合を,中学校で理数科目(数学,理科)を1科目でも女性教員から教わっている女子と,2科目ともに男性教員から教わっている女子とで比較すると,それぞれ33.8 %,22.5%となっており,前者が11.3%ポイント高くなっている(I-特-15図)。理数科目の女性教員の存在は,身近なロールモデルとして女子の目に映っているとも考えられる。

I-特-15図 理数教員の性別と女子生徒の文理傾向別ウインドウで開きます
I-特-15図 理数教員の性別と女子生徒の文理傾向

I-特-15図[CSV形式:1KB]CSVファイル

22文部科学省「学校教員統計」(平成28年度)

23総務省「国勢調査(抽出詳細集計)」(平成27年)

(教員が男女共同参画を学ぶ機会)

教員自身が,男女共同参画について理解を深め,日々の生徒への指導に役立てていくことは重要である。ここでは,全ての教員を対象として実施される「初任者研修」24と「中堅教諭等資質向上研修」25について,男女共同参画に関する研修の実施状況を見ていく。

文部科学省「初任者研修実施状況調査」(平成29年度)によると,平成29(2017)年度の「人権教育・男女共同参画」の校内研修の実施割合は, 小学校が93.0 %, 中学校が93.0%,高等学校が86.4%といずれも高くなっている。一方で,同「中堅教諭等資質向上研修実施状況調査」(平成29年度)によると,平成29(2017)年度の「人権教育・男女共同参画」の必須受講の研修実施割合は,小学校が47.8%,中学校が47.8%,高等学校が60.9%にとどまっている。また,幼稚園は42.9 %,幼保連携型認定こども園は33.3%となっている。初任者研修では「人権教育・男女共同参画」に関する研修の実施割合は高いが,中堅教諭等資質向上研修になると実施割合が全ての教育段階において低下していることが分かる(I-特-16表)26

I-特-16表 初任者研修,中堅教諭等資質向上研修における「人権教育・男女共同参画」の実施割合別ウインドウで開きます
I-特-16表 初任者研修,中堅教諭等資質向上研修における「人権教育・男女共同参画」の実施割合

I-特-16表[CSV形式:1KB]CSVファイル

24新規採用された教員に対して,採用の日から1年間,実践的指導力と使命感を養うとともに,幅広い知見を得させるため,公立の小学校等の教諭等のうち,新規に採用された者を対象に都道府県・指定都市・中核市教育委員会が実施する研修。

25公立の小学校等の教諭に対して,個々の能力,適性等に応じて,公立の小学校等における教育に関し相当の経験を有し,その教育活動その他の学校運営の円滑かつ効果的な実施において中核的な役割を果たすことが期待される中堅教諭等としての職務を遂行する上で必要とされる資質の向上を図るために必要な事項に関する研修。

26「初任者研修」及び「中堅教諭等資質向上研修」(平成28(2016)年度までは10年経験者研修)ともに,平成23(2011)年度までは「男女共同参画」について単独で研修項目が設けられていたが,平成24(2012)年度からは「人権教育・男女共同参画」という形で実施されており,「男女共同参画」単独の実施状況を把握することはできない。しかしながら,平成23(2011)年度までの「人権教育」の実施割合の高さ,「男女共同参画」の実施割合の低さを踏まえると,平成24(2012)年度以降の「人権教育・男女共同参画」においても,実施状況の内訳の多くは「人権教育」である可能性が高く,男女共同参画やジェンダー平等に関する単独の研修自体は多くないとの指摘もされている。

(3)家族等の影響

(女子は母親,男子は父親の影響が大)

「多様な選択を可能にする学びに関する調査」によると,働く上でのイメージや進路選択において影響を受けた人や物事は,小学生の頃,中学生の頃,大学・短期大学・専門学校への進学時,就職時を通して女性は母親,男性は父親と,同性の親の影響を受けていることが顕著である。もっとも,大学・短期大学・専門学校への進学時,就職時では,「その他,自分で調べた情報」の割合が高まっており,親の影響は小学生の頃,中学生の頃と比較して相対的に低くなっている(I-特-17図)。

I-特-17図 働く上でのイメ-ジや進路選択において影響を受けたもの別ウインドウで開きます
I-特-17図 働く上でのイメ-ジや進路選択において影響を受けたもの

I-特-17図[CSV形式:2KB]CSVファイル

また,「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」によると,女性保護者の最終学歴が理系の場合,その女児は,自身の認識するタイプを「理系」,また将来の進路を「理系」とする割合が高くなっている(I-特-18図)。

I-特-18図 女性保護者の最終学歴とその子(女子)の文理タイプ,進路意向別ウインドウで開きます
I-特-18図 女性保護者の最終学歴とその子(女子)の文理タイプ,進路意向

I-特-18図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(女性より男性の方が性別を理由とした制約や推奨を受けている)

「多様な選択を可能にする学びに関する調査」によると,親や家族から,勉強や進路,将来のことについて,性別を理由に制約を受けたり,推奨されたことがある割合は,勉強及び進学,職業選択のいずれも男性の方が高くなっている。特に勉強は男女差が大きく,かつ若年層で男女差が広がっている。年代別に見ると,女性は若くなるほど言われた割合が低くなっているが,男性は20代が32.8%と言われた割合が最も高くなっており,女性と異なる傾向を示している(I-特-19図)。

I-特-19図 育て方における家族の意識(勉強について)別ウインドウで開きます
I-特-19図 育て方における家族の意識(勉強について)

I-特-19図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(家族の意向や経済的理由による進学の制約は若い女性ほど減少)

満足できる進路選択ができなかった理由について見ると,「家族が進学先(学校・学科)について反対したから」や「経済力が十分でなかったから」はいずれも女性の方が高くなっている。一方で,女性について,各年代別に見ると,いずれも若い世代ほどこれらを理由に挙げる割合が少なくなっており,若い女性ほど進路選択について制約を受けることが少なくなっている。特に家族の意向による制約は20代では女性,男性ともに1割強であり,男女差が解消している(I-特-20図)。

I-特-20図 満足できる進路選択ができなかった理由別ウインドウで開きます
I-特-20図 満足できる進路選択ができなかった理由

I-特-20図[CSV形式:2KB]CSVファイル

2 進路選択の先にある将来の環境

(進路選択のポイント「就職に有利」か「就職のための資格取得」か)

大学・短期大学・専門学校への進学時に重視したことについて見ると,男性は「進学または就職に有利であること」が22.9%,「自分のやりたいことを勉強できること」が22.1%と多くなっているが,女性は「自分のやりたいことを勉強できること」が28.4%,「就職のための資格が取れること」が24.9%と多くなっている。女性について最終学歴別に見ると,「専門学校卒」,「大学(理系)卒」は,「就職のための資格が取れること」を重視する割合が半数を超えているが,「大学(文系)卒」,「短期大学卒」は,「自分のやりたいことを勉強できること」を重視する割合が最も高くなっている(I-特-21図)。

I-特-21図 大学・短期大学・専門学校への進学時に重視したこと別ウインドウで開きます
I-特-21図 大学・短期大学・専門学校への進学時に重視したこと

I-特-21図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(女子の大学・大学院進学率は上昇したが,学部による偏りは大)

平成30(2018)年度における大学(学部)及び大学院(修士課程,博士課程)の学生に占める女子の割合は,それぞれ45.1%,31.3%,33.6%となっており,いずれも過去最高となっている。一方で専攻分野別に見ると,薬学・看護学等,人文科学及び教育では女子の割合が高い一方で,理学及び工学では女子の割合が低く,専攻分野によって男女の偏りが見られる(I-特-22図)。

I-特-22図 大学(学部)及び大学院(修士課程,博士課程)学生に占める女子学生の割合(専攻分野別,平成30(2018)年度)別ウインドウで開きます
I-特-22図 大学(学部)及び大学院(修士課程,博士課程)学生に占める女子学生の割合(専攻分野別,平成30(2018)年度)

I-特-22図[CSV形式:1KB]CSVファイル

また,男子,女子の学部専攻の偏りを見ると,全体との比較において工学を専攻する女子が際立って少ないことが分かる(I-特-23図)。

I-特-23図 大学(学部)学生の専攻分野の状況(男女別,平成30(2018)年度)別ウインドウで開きます
I-特-23図 大学(学部)学生の専攻分野の状況(男女別,平成30(2018)年度)

I-特-23図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(研究者の大半を占める工学・理学分野に特に女性研究者が少ない)

我が国における女性研究者は平成30(2018)年3月31日現在で約15万人であり,研究者総数に占める女性の割合は16.2%である27。研究者に占める女性の割合は,緩やかな上昇傾向にあるものの,諸外国と比べると依然として低い水準にとどまっている。また,PISA調査(第2節1(1)参照)の女子の得点が,日本の女子の得点より低いもしくは同程度の国と比べても研究者に占める女子の割合は低くなっている(I-特-24図,25図)。

I-特-24図 女性研究者数及び研究者に占める女性の割合の推移別ウインドウで開きます
I-特-24図 女性研究者数及び研究者に占める女性の割合の推移

I-特-24図[CSV形式:2KB]CSVファイル

I-特-25図 研究者に占める女性の割合の国際比較別ウインドウで開きます
I-特-25図 研究者に占める女性の割合の国際比較

I-特-25図[CSV形式:1KB]CSVファイル

総務省「科学技術研究調査」(平成30年)によると,研究者に占める女性の割合を所属機関別に見ると,企業・非営利団体が9.7%,公的機関が18.5%,大学等が27.1%となっており,特に企業・非営利団体で低くなっている。

専門分野別に大学等の研究本務者に占める女性の割合を見ると,薬学・看護等で53.0%と半数を超えている一方で,工学,理学における女性の割合は11.1%,14.6%と低くなっている。工学及び理学についてより細かな専門分野について見ると,理学では,生物が23.9 % と高く, 工学では, 土木・建築が15.6%と他の分野に比べて高いことが分かる。また,薬学・看護等について詳しく見ると, 看護等は,63.2 % であるが, 薬学は24.5%と医学・歯学とあまり変わらない状況であることが分かる(I-特-26図)。

I-特-26図 専門分野別に見た大学等の研究本務者の男女別割合(平成30(2018)年)別ウインドウで開きます
I-特-26図 専門分野別に見た大学等の研究本務者の男女別割合(平成30(2018)年)

I-特-26図[CSV形式:1KB]CSVファイル

平成30(2018)年時点で,研究者数は大学等に約30万人,企業に約56万人となっている。専門別で最も多いのは,大学等,企業のいずれにおいても工学であり,大学等に約4万人,企業に約38万人の約42万人おり,研究者の大多数を占めている。また,次いで多いのは理学で約17万人となっている。一方で,女性研究者の割合は,工学で6.2 %(大学等11.1 %,企業5.6%),理学で14.8%(大学等14.6%,企業14.8%)であり,研究者としての需要が非常に多い工学,理学分野において女性の割合が特に少なくなっていることが分かる(I-特-27図)。

I-特-27図 専門分野別研究者数(平成30(2018)年)別ウインドウで開きます
I-特-27図 専門分野別研究者数(平成30(2018)年)

I-特-27図[CSV形式:1KB]CSVファイル

27ここで言う研究者は,自然科学系の研究者だけではなく,人文・社会科学系等の研究者も含んでいる。

3 多様な進路選択のために

(教員の男女共同参画の知見を充実させる機会を)

現時点で教員が男女共同参画について学ぶ機会は,1(2)で述べたとおりであるが,他方で,教員自身の気づきにより改善する状況が多いことは指摘されており28,また,生徒を指導する上でも,性別役割分担意識にとらわれずに,適切な指導を行うことは重要である。このような点を踏まえ文部科学省では,令和元(2019)年度より「次世代のライフプランニング教育推進事業」の中で「男女共同参画の推進に向けた教員研修プログラムの開発」を行うこととしている。この事業では,男女共同参画に関する研修事例の収集や把握等を行い,各自治体が活用できる教員研修のモデルプログラム等の作成に取り組むこととしている。

各大学においては,男女共同参画を大学独自の科目として設けたり,冊子を発行したりして,ジェンダー教育の実践方法の紹介等に取り組み,教員を目指す学生が,学生時代から「男女共同参画」について学ぶ機会を提供している例もある29

28男女共同参画推進連携会議「次世代への働きかけ」チーム第1回会合(平成30(2018)年3月14日)や男女共同参画会議重点方針専門調査会(第14回)(平成30(2018)年4月24日)で指摘がされている。

29山形大学や愛知教育大学等で取組が実施されている。

(主体的進路選択のためのキャリア教育を充実させる)

OECDの報告書では,従前,我が国の高等教育を修了した女性の就業率の低さについて指摘されていたが,平成29(2017)年にはOECD平均とほぼ同じ水準まで上昇している30

このような状況において,社会経済生活の様々な領域における男女間格差を解消するとともに女性が活躍できる場を拡大していかなければならないことは言うまでもないが,学生や生徒達に向けても,各人の生き方,能力,適性を考え固定的な性別役割分担意識等にとらわれずに主体的に進路や職業を選択できるよう,キャリア形成に係る学びを充実させていくことが重要である。

平成29(2017),平成30(2018)年に改訂された各種学習指導要領31においては,キャリア教育の充実を図ることが明示された。現在も,文部科学省を中心に学生向けのキャリア形成支援の取組32が行われているが,今後より一層キャリア教育の実践の普及・促進に向けた様々な施策を行うことが必要である。

30高等教育を修了した女性(25~34歳)の就業率が平成19(2007)年から平成29(2017)年までの10年間で10.7%ポイント上昇,OECD加盟国の中で最も急激な伸びを示し,日本は79%(OECD平均は80%)となっている。

31平成29(2017)年3月に改訂された「小学校学習指導要領」,「中学校学習指導要領」及び平成30(2018)年3月に改訂された「高等学校学習指導要領」。

32多様な進路・職業を選択し活躍している先輩たちのインタビュー記事や将来のライフイベントを取り巻く社会の現状をデータ等を用いて紹介したブックレットの作成や,男女の働き方や家庭生活に関する現状を学び,男女が共に活躍できる社会について対話から学ぶ機会として,「学生のための男女共同参画ワールド・カフェ」を実施している。

(理工系女子の裾野を広げる)

1(1)で前述した通り,理数系科目を好む女子は近年増えてきてはいるものの,女性研究者の割合は諸外国と比べると低く,大学等における理工系専攻分野の女子割合の増加にも結び付いていない。これは,女子の理数系科目の学力不足ではなく,理工系への関心や周囲の女子の進学動向,親の意向,自分の将来の仕事としてのイメージを膨らませることができるような身近なロールモデルの不在等の環境が影響していると考えられる。このような現状を踏まえ,内閣府や文部科学省等においては,女子生徒等の理工系分野への興味・関心の醸成,進路選択を促進するための様々なアプローチを行っている。

内閣府では,理工系への関心を持ってもらう機会を設けるために,「理工チャレンジ(リコチャレ)」として,様々な取組を行っている。また,平成30(2018)年に,理工系分野で活躍する多様な女性の姿(ロールモデル)を示すとともに,女子生徒等の理工系進路選択を社会全体で応援する気運を醸成することを目的に, 新たに「STEM GirlsAmbassadors(理工系女子応援大使)」を委嘱し,全国各地で講演等を行っている。

国立研究開発法人科学技術振興機構では,「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施しており,産学官連携により,女子中高生,保護者,教員を対象にシンポジウムの開催や出前講座等を行う取組を支援している。

(女性研究者が働きやすくする)

女性研究者の割合を増やすためには,裾野を広げるための取組を行うことも大切であるが,一方で,現在活躍している女性研究者が出産・育児といったライフステージを迎えても,研究活動を継続していくことが必要である。

文部科学省では,「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」事業を実施し,研究と出産・育児等のライフイベントとの両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するダイバーシティ実現に向けた大学等の取組を支援している。また,「特別研究員(RPD)」制度を設け,出産・育児による研究中断から復帰する博士の学位取得者等を対象に,研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるよう,研究奨励金を支給し,支援を行っている。

女性研究者への支援については,大学独自の取組として行っている大学もある。お茶の水女子大学では,平成24(2012)年度に,ポストドクターの研究継続や研究中断からの復帰支援を目的とした「特別研究員(みがかずば研究員)制度」(非常勤)を創設した。本制度は,要件を満たす女性であれば出身大学は問わずに申請することができる。特別研究員として勤務している間は学内の施設を利用できるだけでなく,科学技術研究費の申請ができるというメリットもある。また,在宅での研究も認めているため,育児をしながらの研究も可能となっている。特別研究員任期終了後の就職支援は,大学としては行っていないが,他大学の教員や研究職として正式に採用される等,次のキャリアにつながる場として活用されている33

33多様な進路・職業を選択し活躍している先輩たちのインタビュー記事や将来のライフイベントを取り巻く社会の現状をデータ等を用いて紹介したブックレットの作成や,男女の働き方や家庭生活に関する現状を学び,男女が共に活躍できる社会について対話から学ぶ機会として,「学生のための男女共同参画ワールド・カフェ」を実施している。

コラム5 「理工系女子を目指そう!~Robogals Kagoshima~」

コラム6 「女性社員の一言が生んだ新たな道」