第3節 子供の健やかな成長と安全で安心な社会の実現

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第3節 子供の健やかな成長と安全で安心な社会の実現

1 子供に対する暴力・虐待への総合的な対策

児童虐待は,子供の心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるものであり,その防止は社会全体で取り組むべき重要な課題であることから,児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)等に基づき,(ア)虐待の「発生予防」,(イ)虐待の「早期発見・早期対応」,(ウ)虐待を受けた子供の「保護・自立の支援,保護者への支援」に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制を整備・充実していくことが必要である。

厚生労働省では,(ア)発生予防に関しては,生後4か月までの乳児がいる全ての家庭を訪問し,子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握,育児に関する不安や悩みの相談等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や,養育支援が特に必要であると判断される家庭に対して,保健師・助産師・保育士等が居宅を訪問し,養育に関する相談に応じ,指導,助言等により養育能力を向上させるための支援を行う「養育支援訪問事業」,子育て中の親子が相談・交流できる「地域子育て支援拠点事業」の推進,(イ)早期発見・早期対応に関しては,虐待に関する通告の徹底,児童相談所の体制強化のための児童福祉司の確保,市町村の体制強化,専門性向上のための研修やノウハウの共有,「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」の機能強化,(ウ)保護・自立の支援,保護者への支援に関しては,社会的養護の質・量の拡充,家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う保護者支援の推進等の取組等を進めている。

さらに,平成16年から11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した広報・啓発活動を実施している。26年度においては,月間標語の公募・決定,「子どもの虐待防止推進全国フォーラム」の開催(11月24日・和歌山県和歌山市),広報用ポスター,リーフレットや児童相談所全国共通ダイヤル紹介しおりの作成・配布により,児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発した。また,民間団体(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。

内閣府では,これから子供を持つ親,子供を持つ親等の若年者層を主な訴求対象として,児童虐待は社会全体で解決すべき問題であること,妊娠前からの切れ目のない相談と支援について,ラジオ,ポスター,チラシ,政府広報オンライン特集ページ等を活用した政府広報を実施した。

警察では,各種活動を通じて児童虐待の早期把握に努めるとともに,児童相談所,学校,医療機関等の関係機関との緊密な連携を保ちながら,児童の生命・身体の保護のための措置を積極的に講じており,児童虐待の疑いのある事案では,速やかに児童相談所等に通告するほか,厳正な捜査や被害児童の支援等,警察としてできる限りの措置を講じて,児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応の徹底を図っている。また,平成12年2月に制定した「安全・安心まちづくり推進要綱」(平成26年8月一部改正)に基づき,防犯カメラの整備を促進するなど,児童が犯罪被害に遭いにくいまちづくりを積極的に推進している。

さらに,従来の検挙活動や防犯活動に加え,性犯罪等の前兆とみられる声掛け,つきまとい等の段階で行為者を特定し,検挙・警告等の措置を講じる活動(先制・予防的活動)の積極的な推進により,子供や女性を被害者とする性犯罪等の未然防止に努めている。

法務省の人権擁護機関では,子供の人権問題に関する専用相談電話「子どもの人権110番」を設置し,全国一斉「子どもの人権110番」強化週間(平成26年度は,6月23日から同月29日まで)を実施するほか,相談用の便箋兼封筒「子どもの人権SOSミニレター」を小中学生に配布したり,子供向けのインターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)を開設するなどして相談体制の充実を図っている。また,全国各地で講演会・研修会等の実施等の啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,平成22年3月に厚生労働省と協議の上で策定した,「学校等から児童相談所等への児童の出欠状況等の定期的な情報提供の実施方法等に関する指針」について,26年度においても,引き続き各種会議等で周知を図るとともに,26年12月26日に児童虐待防止対策に関する副大臣等会議において取りまとめられた「児童虐待防止対策等について」の「速やかな実施に向けて取り組む主な対応策」にある,学校間の情報共有,児童福祉施設等との連携促進及び適切な通告について,教育委員会,学校等に対して改めて周知徹底を行った。

また,被害者となった児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,学校における相談体制の充実を支援している。

2 メディア・リテラシーの向上

内閣府では,青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。以下「青少年インターネット環境整備法」という。)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(平成24年7月子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「青少年インターネット環境整備基本計画(第2次)」という。)に基づき,関係省庁や民間団体等と連携して,青少年及び保護者等に対する広報啓発活動や国内外の調査等の施策を実施している。

総務省では,放送分野における青少年のメディア・リテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自ら発信する能力)の向上を目的として開発した小・中・高校生向けの教材を,教育関係者を中心に広く一般に提供しているほか,「放送分野におけるメディア・リテラシー」サイト4を通じて,同教材や小・中学校教員を対象とした授業実践パッケージ(授業レポート,授業指導案,ワークシート等)を広く公開している。また,インターネット,携帯電話等の情報通信分野におけるメディア・リテラシーの育成に資する教材5の普及を図っている。さらに,子供を取り巻くインターネットのトラブルについて,保護者・教職員が知っておくべき事項等をまとめた「インターネットトラブル事例集」6をウェブ上に公開し,普及を図るとともに,地域における啓発講座等において活用している。

特に青少年のスマートフォン利用が進む中,青少年のインターネット・リテラシーを可視化するため,青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標(ILAS:Internet Literacy Assessment Indicator for Students)を開発した。そして,平成24年度及び25年度に引き続き26年度においても,6月から7月にかけて,リテラシー能力を測定するためのテスト及びアンケートを全国の高校等22校の協力を得て実施・分析し,その結果概要を「平成26年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」として取りまとめ,同年9月に公表した。

総務省及び経済産業省では,関係者と連携し,フィルタリング等に関する情報提供・普及啓発活動を実施して,保護者や青少年のインターネットを適切に活用する能力の向上及びフィルタリングの普及を行っている。

4総務省 「放送分野におけるメディア・リテラシー」サイト http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html

5総務省 ICTメディア・リテラシーの育成 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/media_literacy.html

6総務省 インターネットトラブル事例集 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jireishu.html

3 児童ポルノ対策の推進

「第二次児童ポルノ排除総合対策」(平成25年5月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,関係省庁が連携して,児童ポルノ排除に向けた国民運動の推進,インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策等を推進している(第10章第4節2参照)。

4 児童買春対策の推進

関係省庁において,児童買春の取締りの推進,被害児童に対する継続的な支援,出会い系サイトの利用に起因する犯罪からの児童の保護,学校や児童相談所等における相談体制等の充実の支援などを進めている(第10章第4節3参照)。

5 「人身取引対策行動計画2009」の積極的な推進

人身取引対策に関する関係省庁では,「人身取引対策行動計画2009」(平成21年12月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,子供が被害者となる人身取引対策の取組を進めている。

なお,平成26年12月の犯罪対策閣僚会議において,「人身取引対策行動計画2009」を改訂した「人身取引対策行動計画2014」が決定され,同行動計画に基づき,引き続き取組を進めている(第10章第6節参照)。

6 安心して親子が生活できる環境づくり

文部科学省では,初等中等教育段階,高等教育段階のそれぞれにおいて教育費の負担を軽減するための取組を行っている(第8章第2節2参照)。

また,障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,障害の状態等に応じ,特別支援学校や特別支援学級,通級による指導等において,特別の教育課程の編成や少人数学級の編制,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備等を活用して,適切な指導及び支援を行う特別支援教育を推進している。

さらに,いじめや不登校,児童虐待等,課題を抱え孤立しがちな家庭への地域人材によるサポート体制の構築のため,国と地方公共団体等が共同して実証的研究を実施した。

厚生労働省では,子供が地域において,いつでも安心して医療サービスを受けられるよう,小児初期救急センターや小児救急医療拠点病院,小児救命救急センター等の整備を支援することなどにより,小児救急医療を含め,小児医療の充実を図っている。

7 社会全体で子供を支える取組

文部科学省では,未来を担う子供たちを健やかに育むため,学校,家庭及び地域住民等がそれぞれの役割と責任を自覚しつつ,地域全体で教育に取り組む体制づくりを推進する「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」を引き続き実施するとともに,平成26年度より新たに地域の多様な経験をもつ人材や企業等の協力を得て実施する「土曜日の教育活動」を推進している。