第4節 子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

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第4節 子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

1 子供に対する性的な暴力被害の防止,相談・支援等

警察では,従来の検挙活動や防犯活動に加え,先制・予防的活動を積極的に推進することにより,子供や女性を被害者とする性犯罪等の未然防止に努めている(本章第1節2(3)参照)。

また,各種活動を通じて児童虐待の早期把握に努めるとともに,児童相談所,学校,医療機関等の関係機関との緊密な連携を保ちながら,児童の生命・身体の保護のための措置を積極的に講じているほか,性犯罪や性的虐待等の被害を受けた少年の再被害防止や立ち直りの支援のため,少年補導職員が中心となり,「被害少年カウンセリングアドバイザー」や「被害少年サポーター」等の協力を得て,被害少年の特性に配慮した継続的な支援活動を推進している。

2 児童ポルノ対策の推進

我が国は,児童の権利に関する条約及び児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書を,それぞれ平成6年及び17年に締結しており,関係省庁が連携しつつその履行に努めている。

平成26年6月に改正された,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)においては,自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ又はその電磁的記録を所持,保管する行為や,ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が新設された。

また,「第二次児童ポルノ排除総合対策」に基づき,関係省庁が連携して,児童ポルノの排除に向けた国民運動の推進,インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の推進等に取り組んでいる。

警察では,「第二次児童ポルノ排除総合対策」等に基づき,ファイル共有ソフト利用事犯,低年齢児童ポルノ愛好者グループ,DVD販売グループ等に対する取締りを強化するほか,関係行政機関・事業者等と連携し,児童ポルノ発見時におけるサイト管理者等に対する速やかな削除依頼の実施等の流通・閲覧防止対策,被害児童の早期発見及び支援活動等を推進している。

また,警察庁では,安心ネットづくり促進協議会や児童ポルノ流通防止対策専門委員会等に参加し,必要な情報提供や助言等を行っている。

さらに,コミュニティサイトの利用に起因する被害を抑止するため,スマートフォン等インターネット接続機器へのフィルタリングの普及,ミニメールの内容確認体制拡充の促進,実効性あるゾーニングの促進等の関係事業者等による自主的取組を支援している。

総務省では,精度が高く,より低コストで導入可能なブロッキング方式の検証を行い,その導入に向けた支援・環境整備を行うために,「児童ポルノサイトのブロッキングに関する実証実験」を実施するとともに,当該実証実験の成果等の普及・啓発活動を行っている。

総務省及び経済産業省では,関係省庁と連携の下,青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため,フィルタリングの普及促進やインターネットの適切な利用等に関する啓発活動等を行っている。

このほか,総務省及び経済産業省では,児童ポルノアドレスリストの作成・管理を行う民間団体の活動への支援を行い,警察庁では,民間事業者によるブロッキングの自主的実施がより実効性のあるものとなるよう同団体に対して関連する情報を提供するなど,民間事業者の自主的取組としてのインターネット上の児童ポルノの流通・閲覧防止対策を促進している。

3 児童買春対策の推進

警察では,児童買春・児童ポルノ禁止法に基づき,児童買春の取締り及び被害児童に対する継続的な支援等の保護対策を推進している。また,インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号。以下「出会い系サイト規制法」という。)を効果的に運用し,出会い系サイトの利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。さらに,出会い系サイト等を利用し,個人的な売春等の勧誘を装って組織的に周旋を行う事犯や,飲食店,エステ等の合法的な営業を装いながら,児童に卑わいな言動等で客に接する業務をさせるものが出現していることから,こうした悪質性の高い事犯の実態把握と情報の分析,積極的な取締り等に努めている。

厚生労働省では,児童買春の被害者となった児童に対し,相談,一時保護,児童養護施設等への入所等の対応を行い,必要に応じて心理的治療を行うなど,その心身の状況に応じた適切な支援が行われるよう,児童相談所等における相談体制等の充実を支援している。

文部科学省では,被害者を含めて児童生徒等の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援した。

4 広報啓発の推進

内閣府では,青少年インターネット環境整備法及び「青少年インターネット環境整備基本計画(第2次)」に基づき,関係省庁や民間団体等と連携して,青少年及び保護者等に対する広報啓発活動や国内外の調査等の施策を実施している。

総務省では,インターネット,携帯電話等のメディアの特性に応じたメディア・リテラシーに関する教材等の普及を図っている。

文部科学省では,インターネット上のマナーや家庭でのルール作りの重要性を保護者等に対して周知するための学習・参加型のシンポジウムの開催や児童生徒向けの普及啓発資料の作成・配布等を行っている。また,教職員等の学校関係者が,メンタルヘルスについて正しい知識をもって児童生徒等に適切な対応ができるよう,教職員向けの指導参考資料の作成や,子供の心のケアシンポジウム,子供の心のケア対策研修会を開催している。

警察では,児童ポルノや児童買春に関する情勢の深刻さや被害の未然防止の必要性等について,パンフレットの作成,警察庁等のホームページへの掲載等による広報啓発活動を推進しているほか,サイバー空間における犯罪被害から児童を守るため,犯罪被害の実態や出会い系サイトの利用に起因する被害等インターネットの危険性等に関しても広報啓発活動を推進している。

経済産業省では,保護者や教育関係者,業界団体,インターネット・サービス・プロバイダ等関係者と連携し,フィルタリング等に関する情報提供・普及啓発活動を実施して,フィルタリングの普及を行っている。