第2節 男女の就業の現状と変化

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第2節 男女の就業の現状と変化

1 就業の全般的な状況と変化

(就業状況の変化)

総務省「労働力調査(基本集計)」によると,日本の労働力人口(就業者及び完全失業者の合計)は,平成10年をピークに長期的に減少している。男女別に見ると,男性は9年をピークに減少している一方,女性は25年に過去最高となる2,804万人を記録した(1-特-12a図)。

労働力率(労働力人口/15歳以上人口)を見ると,男女計及び男性については,昭和40年代以降長期的に低下傾向にある一方,女性については,40年代末から50年代前半にかけて落ち込みが見られたことを除いて,50%前後で推移している(1-特-12b図)。

就業率(就業者人数/15歳以上人口)では,更に男性の低下傾向が強く,昭和43年から平成25年にかけての年平均増減率は-0.4%となっている(1-特-12c図)。

完全失業率は,平成10年以降,女性より男性の方が継続的に高い水準となっており,25年には男女の差は0.6ポイントとなっている(1-特-12d図)。

1-特-12図 就業状況の変化(男女別及び男女計,昭和43年→平成25年) 別ウインドウで開きます
1-特-12図 就業状況の変化(男女別及び男女計,昭和43年→平成25年)

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(国際的に見た年齢階級別労働力率の特徴)

我が国の男性の労働力率は,長期的に低下傾向にあるとはいえ,国際的に見て非常に高い水準にあり,生産年齢人口(15~64歳)における労働力率では世界でも最高水準にある。年齢階級別に見た場合,特に55歳以上の年齢階級において顕著である(1-特-13図〈男性〉,〈生産年齢人口(15~64歳)における労働力率〉)。

我が国の女性の生産年齢人口における労働力率はフランスやシンガポールと同水準だが,年齢階級別に見ると,55歳以上を除いて,どの年齢階級においてもおおむね主要国と比べて水準が高いとは言えない。韓国と並んで,30歳代に落ち込みが見られるいわゆる「M字カーブ」を描いている(1-特-13図〈女性〉,〈生産年齢人口(15~64歳)における労働力率〉)。

なお,国際的に見て最高水準にある男性の労働力率と比較的水準の低い女性の労働力率の組合せにより,我が国の生産年齢人口における男女合計の労働力率は,ドイツやスウェーデンを下回るがシンガポールや米国を上回る水準となっている(1-特-13図〈生産年齢人口(15~64歳)における労働力率〉)。

1-特-13図 主要国における年齢階級別労働力率(男女別及び男女計) 別ウインドウで開きます
1-特-13図 主要国における年齢階級別労働力率(男女別及び男女計)

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(定年前後の労働力率の推移)

男女共に国際的に高い水準にある我が国の55歳以上の労働力率であるが,出生年を5年ごとにまとめた世代別に見ると,女性については,若い世代になるほど上昇している。男性については,水準がもともと高く,世代間において顕著な差は見られない(1-特-14図。世代別分析の見方については,「【参考】世代別分析のねらいと結果の見方」を参照)。

1-特-14図 定年前後(55歳以上)の労働力率の変化(世代別) 別ウインドウで開きます
1-特-14図 定年前後(55歳以上)の労働力率の変化(世代別)

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(産業別の就業の現状と変化)

就業者数の産業別割合を見ると,男性では,「製造業」が20.3%で最も高く,「卸売業,小売業」(14.3%),「建設業」(11.9%)がこれに続いている。女性では,「医療,福祉」が最も高くなっており(20.5%),「卸売業,小売業」(20.0%),「製造業」(11.4%)がこれに続いている(1-特-15a図)。

平成15年から25年にかけての就業者数の増減を見ると,全産業合計では,男性は109万人の減,女性は104万人の増となっている。産業別に見ると,男性では,25年において就業者数が多い上位3産業で就業者数が大きく減少している。また,女性では,25年に就業者数第3位の「製造業」において全産業で最も大きく減少している一方で,第1位の「医療,福祉」で際立って大きく増加している。成長産業における女性就業者の増加と比べると,従来の主力産業から成長産業への男性就業者の移動は顕著ではない(1-特-15b図)。

1-特-15図 産業別の就業者の状況(男女別) 別ウインドウで開きます
1-特-15図 産業別の就業者の状況(男女別)

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(職業別の就業の現状と変化)

平成25年において男性の就業者数が多い職業は,「生産工程従事者」(17.7%),「専門的・技術的職業従事者」(15.0%),「事務従事者」(13.9%)となっている。女性では,「事務従事者」が27.2%と際立って多く,「サービス職業従事者」(19.5%),「専門的・技術的職業従事者」(17.2%)が続いている(1-特-16a図)。

平成21年から25年にかけての増減を見ると,全職業合計で男性は56万人の減,女性は52万人の増となっている。職業別では,男性において「販売従事者」,「生産工程従事者」及び「管理的職業従事者」でそれぞれ20万人以上減少している一方,女性では20万人以上減少した職業はない。また,女性では,「専門的・技術的職業従事者」及び「サービス職業従事者」においてそれぞれ20万人以上増加しているのに対して,男性で20万人以上増加しているのは「専門的・技術的職業従事者」のみとなっている。成長産業と関わりの深い職業で女性就業者数が増加しているのに対して,従来の主力職業から成長性の高い職業への男性の就業人口の移動は顕著ではない(1-特-16b図)。

1-特-16図 職業別の就業者の状況(男女別) 別ウインドウで開きます
1-特-16図 職業別の就業者の状況(男女別)

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コラム4 男性の新たな職域拡大

2.就業者の現状と変化

(労働力率の就業形態別の状況)

平成25年の労働力率の就業形態別内訳を見ると,男性では,20歳から60歳代前半にかけて,「正規雇用者」が大部分を占めている。「非正規雇用者」の割合は,20歳代及び60歳代で高くなっており,年齢が高くなるとともに「自営業主」の割合も高くなっている。

女性は,全年齢階級を通じて男性よりも「非正規雇用者」の割合が高い。20歳から30歳代前半にかけて「正規雇用者」の割合が最も高くなっているが,30歳代後半以降は「非正規雇用者」の割合が上回っている(1-特-17図)。

1-特-17図 年齢階級別労働力率の就業形態別内訳(男女別,平成25年) 別ウインドウで開きます
1-特-17図 年齢階級別労働力率の就業形態別内訳(男女別,平成25年)

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(雇用形態別に見た雇用者数の推移)

平成14年から25年にかけての雇用者数の推移を雇用形態別に見ると,男女とも,「正規の職員・従業員」が減少し「非正規の職員・従業員」が増加している。「雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合」は男女とも上昇しており,25年においては男性は19.4%,女性は53.9%となっている(1-特-18a図)。

平成15年から25年の男性の労働力率の雇用形態別内訳を出生年を5年ごとにまとめた世代別に見ると,正規雇用は25~29歳の年齢階級において1つ前の世代よりやや低下する一方,非正規雇用では20歳代後半から30歳代前半の年齢階級で1つ前の世代より上昇しており,若年層の非正規雇用率の上昇を表している。

60~69歳では,正規雇用は世代間でほとんど差は見られないが,非正規雇用では若い世代ほど割合が高くなっており,60歳代においても,若年層と並んで非正規雇用率が上昇している。

また,正規雇用の労働力率は,昭和34~38年生まれの世代が前後の世代より高くなっており,正規雇用のピークの世代であると見られる(1-特-18b図。世代別分析の見方については,「【参考】世代別分析のねらいと結果の見方」を参照)。

第1節1で見たとおり,男性の非正規雇用者の未婚率は男性就業者の平均値を上回っており(1-特-3図(再掲)),若年男性における非正規雇用率の上昇及び正規雇用率の低下が,今後の男性の未婚率に影響を与えることが考えられる。

1-特-18図 雇用形態別に見た雇用者数の変化と特徴 別ウインドウで開きます
1-特-18図 雇用形態別に見た雇用者数の変化と特徴

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(非正規雇用を選んだ理由)

総務省「労働力調査(詳細集計)」(平成25年)によると,非正規の職員・従業員が現職に就いている主な理由として,男性では,「正規の職員・従業員の仕事がないから」(30.6%)が最も多く挙げられている一方,女性では,最も多く挙げられている理由は「家計の補助・学費等を得たいから」(26.8%)であり,「正規の職員・従業員の仕事がないから」は13.3%で4番目となっている。女性が,柔軟な働き方といった非正規の職員・従業員の利点に注目している割合が高いのに対して,男性には,正規の職員・従業員を標準的な雇用形態として捉える傾向があることがうかがわれる2

2女性を年齢階級別に見た場合も,「都合のよい時間に働ける」や「家計の補助・学資等を得たい」が第1位となっており,「正社員として働ける会社がなかった」ことは全般として理由の上位に挙げられていない。「平成25年版男女共同参画白書」1-特-28図を参照

(到達した教育段階別に見た就業者の就業形態内訳)

就業者の就業形態(従業上の地位及び雇用形態)内訳を教育(卒業)別に見ると,全般として,男性は女性と比べて「正規の職員・従業員」の占める割合が高いが,男女とも,到達した教育段階が高いほど「正規の職員・従業員」の割合が高く,「非正規の職員・従業員」の割合が低くなっている。絶対数は少ないが,「家族従業者」の割合については,男女とも教育段階が高いほど低い。「自営業主」の割合は,男性については同じく教育段階が高いほど低いが,女性については教育段階と関連は見られない(1-特-19図)3

男性について,非正規雇用者において未婚者の割合が高いこと(1-特-3a図(再掲)),到達した教育段階が低いほど生涯未婚率が高いこと(1-特-3b図(再掲))及び教育段階が低いほど「非正規の職員・従業員」の割合が高いこと(1-特-19図(再掲))から,教育段階と雇用形態及び未婚率の間に関わりがあることがうかがわれる。

1-特-19図 教育(卒業)別に見た就業者の就業形態(従業上の地位及び雇用形態)別内訳(男女別,平成25年) 別ウインドウで開きます
1-特-19図 教育(卒業)別に見た就業者の就業形態(従業上の地位及び雇用形態)別内訳(男女別,平成25年)

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3総務省「労働力調査(基本集計,詳細集計)」(平成25年)によると,農業,林業従事者における小学・中学・高校・旧中卒業者の割合は,平成25年において8割を超えている。自営業主に占める農業・林業の割合は,男性で21.2%,女性で8.6%となっており,自営業主と教育段階の関係の男女差は,自営業主に占める農業・林業の割合の差が影響していることが考えられる。

コラム5 母子家庭の支援から,父子家庭を含めたひとり親家庭の支援へ

(就業者の異動)

就業者の異動は,男女とも活発化の傾向が見られる。就業者の就業異動内訳を見ると,平成24年は,男女とも14年に比べて「転職就業者」の割合が高くなり,1つの職を継続している「入職就業者」の割合は低くなっている。女性については,64歳以下の年齢階級において「離職非就業者」の割合が低下していることから,出産・育児等で一時的に職を離れることがあっても転職して就業復帰する割合が増えていることがうかがわれる。また,女性の「就業未経験者」の割合が全体として低下していることから,一度も就業せずに専業主婦になる割合も低下していると推察される。

男性は,女性ほど顕著ではないものの「転職就業者」の割合が上昇しており,平成24年では,30歳~50歳代において「入職就業者」とほぼ同じ水準となっている(1-特-20図)。

1-特-20図 年齢階級別就業者の就業異動内訳(男女別,平成14年→24年) 別ウインドウで開きます
1-特-20図 年齢階級別就業者の就業異動内訳(男女別,平成14年→24年)

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(平均勤続年数及び平均所定内給与額の現状と変化)

転職就業者の割合の上昇とともに,平成11年から25年にかけて,男女とも20歳代から50歳代前半までの平均勤続年数が減少している(1-特-21a図)。ただし,50歳代後半以降の就業継続が増えているため,全年齢階級合計では勤続年数は増加し,厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成25年)によると,25年における平均勤続年数は,男性は13.3年,女性は9.1年となっている。

平成17年から25年にかけての平均所定内給与額の増減を到達した教育段階別・雇用形態別に見ると,男性では全ての組合せにおいて減少しているのに対して,女性ではおおむね増加している。また,男性において,雇用形態にかかわらず,「中学卒」及び「高校卒」で平均所定内給与額の減少幅が特に大きい(1-特-21b図)。

なお,男性の一般労働者(常用労働者のうち短時間労働者以外の者)の平均所定内給与額を100とした場合,平成25年における女性の一般労働者の平均所定内給与額は71.3となっており,男性の方が高い状態が続いている(1-2-11図)。

1-特-21図 一般労働者における平均勤続年数及び平均所定内給与額の変化(男女別) 別ウインドウで開きます
1-特-21図 年齢階級別就業者の就業異動内訳(男女別,平成14年→24年)

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(管理的職業従事者数の推移)

男性の管理的職業従事者数は,平成4年の239万人をピークに減少が続いており,ピークの4年から25年の年平均増減率は−3.0%となっている。女性についても8年の22万人をピークに減少傾向にあるが,ピークの8年から25年の年平均増減率は−1.9%と,男性よりも減少幅が小さくなっている。その結果,管理的職業従事者における女性割合は増加している(1-特-22a図)。

就業者に占める管理的職業従事者の割合についても,男女とも低下しているものの男性の低下幅の方がより大きいため,男女の割合の差は縮小傾向にある(1-特-22b図)。

管理的職業従事者の増減を産業別に見ると,男性では,就業者数が大きく減少している「卸売業,小売業」,「製造業」,「建設業」において管理的職業従事者数も減少している。女性は,全般として減少数は少ないが,就業者数が大きく増加している「医療,福祉」が含まれる「サービス業」においても,管理的職業従事者数は横ばいにとどまっている(1-特-22c図)。

1-特-22図 管理的職業従事者数等の推移(男女別) 別ウインドウで開きます
1-特-22図 管理的職業従事者数等の推移(男女別)

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3.世帯から見た就業の状況

(夫婦の就業状態の組合せの変化)

総務省「就業構造基本調査 結果の概要」(平成24年)によると,構成員に夫婦が含まれる世帯は,平成19年の2,850万世帯から24年の2,855万世帯に微増している。夫婦の就業の組合せの変化を見ると,夫が有業者の世帯が95万世帯の減となっている一方,夫が無業者の世帯は97万世帯の増となっている。

夫が有業者の夫婦における妻の就業状態について,平成14年から24年にかけての変化を妻の年齢階級別に見ると,40歳未満において妻が「無業者」の割合が低下している(1-特-23図)。また,全ての年齢階級において,妻が「正規の職員・従業員」の割合が上昇している。

1-特-23図 夫が有業の夫婦における年齢階級別に見た妻の就業形態の変化(平成14年→24年) 別ウインドウで開きます
1-特-23図 夫が有業の夫婦における年齢階級別に見た妻の就業形態の変化(平成14年→24年)

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(共働き夫婦の到達した教育段階及び所得の組合せ)

総務省「就業構造基本調査」(平成24年)によると,平成24年における共働き夫婦の数は1,297万組であり,そのうち妻が雇用者の夫婦は1,164万組である。妻が雇用者の夫婦を雇用形態別に見ると,妻が正規の職員・従業員の夫婦が404万組,非正規の職員・従業員の夫婦が710万組となっている。また,妻が雇用者の夫婦を夫婦の到達した教育段階別に見ると,共に高校・旧制中卒業者の組合せが354万組で最も多く,大学・大学院卒業の夫と専門学校・短大・高専卒業の妻の組合せ(154万組),共に大学・大学院卒業者の組合せ(142万組)が続いている。

平成24年における共働き夫婦の所得の状況を,夫婦の到達した教育段階別及び妻の雇用形態別に見ると,共に高校・旧制中卒業者の夫婦の場合,妻の雇用形態にかかわらず,夫の所得は200~299万円及び300~399万円が最も多くなっている。妻の所得は雇用形態によって特徴が見られ,「正規の職員・従業員」では分散している中で200~299万円が最も多いのに対して,「非正規の職員・従業員」では100万円未満が半数を超えている。夫婦の所得の組合せで最も割合が高いのは,妻が「正規の職員・従業員」の場合は夫が300~399万円,妻が200~299万円であり,妻が「非正規の職員・従業員」の場合は夫が300~399万円,妻が100万円未満である(1-特-24a図)。

共に大学・大学院卒業者の夫婦の夫の所得は,妻の雇用形態にかかわらず,共に高校・旧制中卒業者の夫婦の夫よりも高い所得階級に多く分布している。妻の所得は,「正規の職員・従業員」の場合,共に高校・旧制中卒業者の夫婦の妻に比べて高い階級の間で分散しており,300~399万円と400~499万円が最も多くなっている。「非正規の職員・従業員」の場合は,共に高校・旧制中卒業者の夫婦の妻と同様,100万円未満が最も多くなっている。夫婦の所得の組合せで最も割合が高いのは,妻が「正規の職員・従業員」の場合は夫婦共に700~999万円であり,妻が「非正規の職員・従業員」の場合は夫が700~999万円,妻が100万円未満である(1-特-24b図)。

1-特-24図 夫婦の教育別・妻の雇用形態別共働き夫婦の所得の組合せ(平成24年) 別ウインドウで開きます
1-特-24図 夫婦の教育別・妻の雇用形態別共働き夫婦の所得の組合せ(平成24年)

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