「共同参画」2016年6月号

「共同参画」2016年6月号

特集2

「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」結果のポイント
男女共同参画局調査課

内閣府は、平成28年4月、「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」の結果を公表しました。ここではその概要をご紹介します。

近年、晩婚化・晩産化の進展に伴い、一人の女性に育児と介護の負担が同時に担う、いわゆる「ダブルケア問題」に対する社会的関心が高まっています。内閣府では、「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」を実施し、平成28年4月にその結果を公表しましたので、以下では、ポイントを紹介します。

(1)育児と介護を同時に担うダブルケアの推計人口は約25万人

本調査では、まず、総務省「就業構造基本調査(平成24年)」をもとに、ダブルケアを行う者の人口を推計しました。「ふだん育児をしている(注1)」と「ふだん介護をしている(注2)」の両方に該当する者を「ダブルケアを行う者」として、特別集計した結果、ダブルケアを行う者の推計人口は、約25万人(女性約17万人、男性約8万人)でした(図表1)。

また、15歳以上人口に占めるダブルケアを行う者の割合は約0.2%、育児を行う者に占める割合は約2.5%、介護を行う者に占める割合は約4.5% となっています(図表2)。

(注1) 総務省「就業構造基本調査」では、育児の対象を未就学児(小学校入学前の幼児)としています。また、孫やおい・めい、弟妹の世話などは育児に含めません。

(注2) 総務省「就業構造基本調査」では、介護について、介護保険で要介護認定を受けていない人や、自宅外にいる家族の介護も含めています。ただし、病気などで一時的に寝ている人に対する介護は含まれていません。

図表1 ダブルケアの推計人口


図表2 ダブルケアの割合


(2)ダブルケアを行う女性の半数は有業者

ダブルケアを行う者の平均年齢は、男女とも40歳前後で、育児のみを行う者より4~5歳程度高く、介護のみを行う者より20歳程度低くなっています。年齢階層別にみると、男女とも30~40歳が8割を占めており、子育て世代でダブルケアを担う者が多くなっています。

ダブルケアを行う女性の就業状況をみると、無業と有業が半々、有業のうち「仕事が主」な者と「家事が主」な者との割合もほぼ半々となっていますが、これは、育児のみを行う女性の就業状況とほぼ同じです(図表3)。

また、ダブルケアを行う無業の女性の約6割は就業を希望、就業したい形態に非正規を挙げる者は、約8割です。これも、育児のみを行う女性とほぼ同じです(図表4)。

図表3 女性の就業状況


図表4 無業女性の就業希望状況


(3)男性に比べ、女性で少ない周囲からの手助け

本調査では、ダブルケアを行う者の負担や周囲からの援助、ダブルケアに直面する前後の就業状況や必要とする社会的支援等、公的統計では把握できない項目について、ダブルケアを行う者に対象を絞ったインターネットモニター調査を行っています。図表5より、育児・介護ともに「主に」担う者の割合を男女で比較すると、女性が約半数であるのに対し、男性は約3割に留まっています。

また、配偶者、兄弟・姉妹、親等周囲からの手助けの状況をみると、ダブルケアを行う女性は、男性に比べ手助けが得られていない状況にあります。例えば、男性は、配偶者から「ほぼ毎日」手助けを得ているのが半数以上となっているのに対し、女性では4人に1人となっています(図表6)。

図表5 育児・介護を主に担う者


図表6 周囲からの手助けの状況(配偶者)


(4)女性で大きい就業への影響

ダブルケアに直面したことによる就業への影響をみると、ダブルケアに直面する前後の「業務量や労働時間」を「変えなくてすんだ」者は、男性は約半数であるのに対し、女性は約3割に過ぎません。また、「減らした」者は、男性で約2割ですが、女性では約4割程度います。離職して無職になった者についても、男性では2.6%ですが、女性は17.5%と、ダブルケアが及ぼす就業への影響は、女性でより大きくなっています(図表7)。

また、ダブルケアに直面することにより、「業務量や労働時間を変えなくてすんだ」理由として、男性で最も多かったのは、「家族の支援が得られた(47.3%)」でしたが、女性は27.0%と、男性に比べて20%ポイントも低い結果となっており、前節での結果(図表6)と併せ、女性は周囲からの支援が得られていない、といった現実を浮き彫りにする結果となりました。

図表7 ダブルケア直面する前後の業務量や労働時間の変化


(5)行政等に望む支援策

ダブルケアを行う者が、行政の支援策のうち「最も拡充してほしい」と回答したのは、男性では「保育施設の量的充実(22.8%)」、女性では「育児・介護の費用負担の軽減(26.4%)」が最多でした。

勤め先に「最も充実してほしい」と回答したのは、男女とも「子育てのために一定期間休める仕組み(男性18.3%、女性18.4%)」でした。

(6)まとめ

今回の調査により、約25万人がダブルケアを担っていること、ダブルケアを行う女性の約半数が無業で、その6割が就業を希望しており、うち8割が非正規雇用を希望していること、こうした状況は、育児のみを行う者と大きく変わらないことが明らかになりました。

さらに、ダブルケアを行う者を男女別にみると、ダブルケアに直面した場合の就業への影響は女性で大きいこと、また、女性は男性より周囲からの手助けが少ないことなどが明らかになりました。

今後、待機児童の解消、介護離職ゼロに向け、取組を進めるとともに、男性の家庭生活への参画に向けた取り組みも重要な課題となっていることが示唆されます。

調査結果のポイントおよび報告書は、男女共同参画局のHPを御覧ください。
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_research.html