「共同参画」2015年 7月号

「共同参画」2015年 7月号

特集1

地域の活力を高める女性の活躍─平成27年版男女共同参画白書から─
内閣府男女共同参画局調査課

本年6月19日、平成27年版男女共同参画白書が公表されました。特集「地域の活力を高める女性の活躍」のポイントをご紹介します。

6月19日に、「平成27年版男女共同参画白書」が閣議決定、公表されました。

この白書は、男女共同参画社会基本法に基づいて毎年国会に報告されるもので、今回が16回目になります。

今回の白書では、特集として「地域の活力を高める女性の活躍」をとりあげました。ここでは、特集のポイントをご紹介します。

1.すべての女性が輝く社会づくりに向けた政府の動き

第2次安倍内閣では、女性の力を「我が国最大の潜在力」と捉え、「日本再興戦略」(平成25年6月)や「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月)等に基づき、様々な取組を進めています。「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」も国会に提出されました。

政府の取組の影響もあり、女性の活躍推進に向けた社会の気運は大きく高まってきました。また、女性の就業者数や就業率も近年伸びています。

一方で、女性の非労働力人口のうち就業を希望している方は303万人(平成26年)にのぼり、潜在力としての女性の力はまだ大きいと言えます。

2.地方の政治・行政・経済分野における女性の活躍

(1)政治分野

● 女性議員の割合が高い地方議会は、東京圏や近畿地方に多い

地方議会(都道府県議会、市区議会、町村議会)で女性議員の割合が高い議会は、東京圏や近畿地方に多い傾向が見られます(図1)。

図1 政治分野における女性の参画状況マップ


● 女性の当選人割合は立候補者割合に比例して増加

平成23年統一地方選挙における地方議会の立候補者と当選人の女性割合を都道府県別に見ると、女性の立候補者割合が高いほど女性の当選人割合が高い傾向が見られます。また、25歳以上45歳未満の立候補者割合が高いほど、立候補者の女性割合が高い傾向も見られます。

男女にかかわりなく若年層の立候補者を増やし、若年層の政治参画を通じた地方政治の活性化を進めることで、結果的に女性議員割合が高まっていく可能性も示唆されます。

(2)行政分野

● 地方公共団体の管理職の女性割合は、団体により様々

都道府県における管理職の女性割合は、団体による差が大きくなっています(図2)。市区町村ではさらに差が大きく、平成26年4月1日現在、最も割合が高いのは徳島県板野町(54.1%)となっていますが、管理職の女性割合がゼロの市区町村も42都道府県に307団体(全市区町村の17.6%)見られます。

現時点では管理職の女性の割合が必ずしも高くない地方公共団体でも、上級職の女性採用割合が高いところもあり、将来的には女性の管理職の増加が期待されます。

図2 地方公務員(都道府県)管理職に占める女性の割合(都道府県別、平成16年、26年)


(3)経済分野

● 管理的職業従事者の女性割合は近畿地方以西で高い傾向

管理的職業従事者に占める女性の割合は、近畿地方以西で全国平均(13.4%)以上のところが多くなっています(図3)。

図3 管理的職業従事者に占める女性割合(都道府県別、平成24年)


● 女性の昇進意欲は制度や条件により高まる可能性

働く男女の昇進に対する意識(平成27年)を見ると、正社員及び非正社員のいずれにおいても、「昇進したい」とする者の割合は、男性より女性の方が低くなっています。しかし、女性は「昇進制度や昇進するポストがない」とする者の割合が男性よりも高いこと等を考慮すると、昇進制度や昇進の条件によっては、女性の昇進意識も高まる可能性があると言えます。

● 女性の起業は中国・四国・九州地方で多い傾向

有業者に占める起業者の割合(平成24年)は、女性は中国地方、四国地方及び九州地方で全国平均を上回る県が多くなっています。

女性の起業者は、前職が非正社員や専業主婦といった、事業運営の経験が少ないと考えられる方が男性に比べて多いことや、開業の動機として、「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」、「趣味や特技を生かしたかった」等の割合が男性より高いなどの特徴があります。女性の起業は、地域経済の活性化につながるとともに、女性の能力発揮や自己実現の場としても重要と考えられます。

3.地域における男女の仕事と暮らし

(1)就業と労働時間

● 女性の就業意欲は実際の有業率よりも地域差が少ない

女性の生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者の割合(有業率)を都道府県別に見ると、71.3%(福井県)から56.8%(奈良県)まで、15%ポイント近くの違いが見られ、男性と比較して都道府県による差が大きくなっています(図4)。

有業者に、無業者のうち就業希望者を加えて見ると、上記でみた15%ポイント近くの差が8%ポイント弱まで縮小します。女性の就業意欲は、実際の有業率よりも地域差が少なく、有業率の低い地域ほど、女性の力をまだ生かし切れていない可能性があると言えます。

図4 都道府県別 生産年齢人口(15〜64歳人口)に占める有業者及び就業希望者の割合(女性、平成24年)


● 女性の有業率が高い地域は正規雇用も多い

女性の15~64歳の有業者に占める正規雇用の割合と女性の有業率の関係を見ると、正規雇用割合が高い都道府県で有業率も高くなる傾向が見られます。この傾向は、未就学児の育児をしている25~44歳の女性に限定しても、同様に見られます。

女性の有業率が高い地域では、正規雇用により、子育て期も含めた安定的な就業の継続が図られている可能性が示唆されます。

● 男性の長時間労働が多い地域では女性の有業率が低い傾向

男性の週間就業時間が60時間以上の者の割合(長時間労働者の割合)(平成24年)を都道府県別に見ると、19.1%(京都府)~11.1%(島根県)となっています。

男性の長時間労働者の割合が高い都道府県では、女性の有業率が低い傾向が見られます(図5)。

図5 男性の週間就業時間60時間以上の雇用者割合と15〜64歳女性の有業率の関係(平成24年)


● 男女の働き方の地域差には性別役割分担意識が影響している可能性

男性の長時間労働や女性の有業率と、男女の様々な意識との関係を見たところ、「自分の家庭の理想は、『夫が外で働き、妻は家庭を守る』ことだ」という考え方を肯定する者の割合が高い都道府県で、男性の長時間労働者の割合が高く、また、女性の有業率が低くなる傾向が見られます(図6)。

女性がその希望に応じた就業を実現できるよう、男性の家事や育児への参画意識を高め、男性の長時間労働の是正を図ることが重要と考えられます。

図6 性別役割分担意識と男性の長時間労働及び15〜64歳女性の有業率の関係


(2)子育てと地域活動

● 合計特殊出生率は、東京圏、大阪圏等で低い

都道府県別に合計特殊出生率(平成25年)を見ると、東京圏や大阪圏、北海道等で低く、男性の長時間労働者の割合が高い地域や女性の有業率が低い地域と重なる傾向が見られます。

● 子育てを女性だけの負担にしないことが、理想の子供数を実現するために重要

理想の子供数が1人以上でありながら、現実の子供数が理想を下回る者の割合(平成27年)は、全都道府県平均で62.3%となっています。

理想の子供数を実現するために必要な(必要だった)ことは何かを見ると、男女とも費用負担の面を挙げる者が最も多くなっていますが、それ以外では、女性は、夫や親からの協力のほか、「自分自身が、育児と両立可能な仕事についていること」、「地域の子育て環境(保育園など)が充実していること」等を男性よりも多く挙げています(図7)。

子育てを女性だけの負担とせず、家族や職場、社会がサポートできる仕組みを整えていくことが、理想の子供数の実現につながっていくと考えられます。

図7 理想子供数を実現するために必要なこと(男女別)


(3)人口移動

● 東京圏への人口移動は女性が男性を上回る

東京圏への転入超過数は、平成21年以降、女性が男性を上回っています(図8)。

平成26年の東京圏への転入超過数を年齢階級別に見ると、男女とも15~34歳の若年層が中心となっています。

図8 圏域別の転入超過数の推移(男女別、昭和60→平成26年)


● 現役世代の女性の就業拡大は東京圏で進む

平成16~26年にかけて、15~64歳の女性の就業者は、東京圏で62万人増加したのに対して、東京圏以外で33万人減少しています。現役世代の女性の就業の場の拡大は、東京圏に集中してきたと言えます。

● 地域とのつながりが女性の居住意向に影響

都市部又は地方に住むことを理想とする理由を男女別に見ると、都市部及び地方のいずれでも、女性は男性と比較して、「近くに親族や知人が多いから」を挙げる者の割合が高くなっています(図9)。

地域のつながりを生かしつつ、女性の就業意欲の高まりに対応できる就業の場の拡大が地方で進めば、地方は女性にとってより魅力ある場所となると考えられます。

図9 住むことを理想とする理由(男女別、理想とする地域別)


4.今後に向けて

ここまでみてきたように、女性の活躍の状況や、就業・生活の状況は、地域により一様ではありません。各々の地域の特徴を十分踏まえた取組を進めていくことが求められます。

本白書では、ここで紹介した以外にも、様々なデータや取組事例を紹介しています。詳しくは、内閣府ホームページを御覧ください。

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html