「共同参画」2013年 9月号

「共同参画」2013年 9月号

連載 その1

男女共同参画の視点からの防災・復興の取組事例(2) 仮設住宅の集会所に保育施設を開設(福島県富岡町)
内閣府男女共同参画局総務課

避難所での生活から見えた保育施設の必要性

福島県富岡町の住民は、東日本大震災直後から約4日間、福島県川内村に避難し、平成23年3月16日からは、同県郡山市の「ビッグパレットふくしま」へ避難しました。

ビッグパレットは大規模な施設でしたが、避難者数も多く、身動きがとれないような状況の中で、乳幼児のいる親は、子どもが泣いたり動き回ったりすることを気にして、避難所ではなく車で生活するケースが多くなっていました。

こうした状況を問題と考えた町の職員が、ビッグパレット内のわずかなスペースを確保し、ボランティアによる絵本の読み聞かせ等を行いました。しかし、小学生の子どもが利用すると乳幼児が遊ぶ場所がなくなるなど、きちんとした保育スペースを確保する必要性を感じながらも避難所では実現できませんでした。

また、行政職員は災害直後から出勤しましたが、保育所が閉鎖され、子どもを預ける場所がない中で、大変な状況に置かれていました。災害後しばらくは、居住地以外の市町村にある保育所に入所させることができる広域入所(児童福祉法の規定による)で対応し、町外の保育所等に預けていました。

仮設住宅の検討委員会での議論

町の健康福祉課の保育所担当の女性職員は、新しく建設する仮設住宅に必要なものとして、防災担当課へ保育所設置の要望書を提出しました。こうしたこともあり、平成23年4月に、仮設住宅設置に向けた庁内の検討委員会が立ち上がる際、同職員にも声がかかり、委員会のメンバーとして参加することになりました。

仮設住宅の集会所に保育所を設置することについては、「前例がない」、「集会所なので保育施設に向かない」、「集会所は地域住民が使うもので保育所単独で使用するのは無理である」といった理由から、検討委員会の中でもかなり抵抗がありました。

町の保育担当部署は、集会所としての機能は残し、集会所を保育所が単独では使用しないこと、小さな子どもが遊び、生活する施設とするために必要な修繕や設備は町が行うことなど、集会所と保育所を「共存」させるという提案を行い、理解を得ました。

仮設住宅集会所に保育施設を開設

平成23年7月に、富岡町は、町からの避難住民が入居している郡山市富田仮設住宅内に「とみたさくら保育施設」を開設しました。

仮設住宅の集会所を、午前7時半から午後6時までの間は保育所として利用し、それ以外の時間帯は集会所として利用できることになっています。

施設内は子どもが飛び跳ねてもよいよう床や柱にマットを付けたり、ロッカーやげた箱は動かせるよう、可動式としています。また、ドアホンや防犯ブザー等、防犯対策も講じています。

仮設住宅集会所の外観
仮設住宅集会所の外観

集会所内の保育施設
集会所内の保育施設


定員は20名で、平成25年7月末時点で、15名が利用しています。また、一時預かりも実施しています。

広域避難者を受け入れる周辺の自治体では、避難者が保育所への入所を希望した場合の対応はまちまちであり、町の保育所が設置されたことで、子どもを預けたい家庭のニーズに応えることができました。