「共同参画」2013年 9月号
特集1
男性にとっての男女共同参画について
─男性が地域・家庭でもいきいきと活躍できる社会をめざして─
内閣府男女共同参画局推進課
男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、個性と能力を発揮することのできる男女共同参画社会の形成は、日本の社会にとっても、男性にとっても重要であり、男性がより暮らしやすくなるものであることについての理解を深める。
また、男性自身の男性に関する固定的性別役割分担意識の解消を図るとともに、長時間労働の抑制等働き方の見直しにより、男性の地域生活や家庭生活への参画を進める。
1.施策の背景
〜なぜ、男性にとっての男女共同参画か
平成22年12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画では「男性、子どもにとっての男女共同参画」が、新たに重点分野として盛り込まれています。
男女共同参画社会とは、多様な生き方を尊重し、全ての人があらゆる場面で活躍できる社会のことであり、男性にとっても暮らしやすい社会です。とりわけ、高齢化が進む中で、親の介護や高齢期における自分自身の孤立化の問題など、男性自身に関わる課題に対応するためにも、男性が仕事だけではなく、家庭や地域生活にも積極的に参画していくことが必要だと考えています。また、労働力人口が減少する中で、持続的な経済成長実現のためには女性の活躍が不可欠となりますが、そのような観点からも、男性の育児、介護への参画は重要です。
2.男性が地域や家庭でも活躍できる社会
1) 男性も「仕事中心」の人生を望んではいない
・育児への参加希望と長時間労働の課題
男性の育児休業取得希望者は約3割であるなど、男性も育児に参加したいと考えていますが、実際の取得率は1.89%に過ぎません。(図1)また、男性が育児に費やす時間は39分と低調にとどまっています。(「社会生活基本調査」平成23年:総務省)これは、男性の長時間労働がひとつの要因であると考えられ、週60時間以上の長時間労働を行っている男性労働者の割合を見ると、全体で13.7%、育児期の30歳代に限ると18.2%と約2割にものぼっています。(「労働力調査」平成24年:総務省)
一方、労働時間が長くなるほど、仕事をやめたいと思ったことが「よくあった」という傾向があります。(図2)
男性も、決して仕事だけの人生を望んでいる訳ではないと言えるでしょう。
・高まる介護ニーズ
介護や看護を理由に離職した人は、平成23年10月から24年9月までの1年間で約101,100人(男性約19,900人、女性約81,200人)に上り、男女とも増加傾向にあるとともに、男性が約2割を占めるなど男性自身の課題にもなっているといえます。(図3)
別の調査では、自分(夫)の親の介護を妻にしてほしいと考える男性が23.9%(そう思う、ややそう思うを合わせて)に対して、そう思わない(そう思わない、あまりそう思わないを合わせて)とする回答が29.7%と上回っています。(「男性にとっての男女共同参画に関する意識調査」平成24年:内閣府)つまり、自分(夫)の親が高齢になり介護が必要となった場合に、自らが介護を行うという意思を持った男性が多いという結果になっています。
・ワーク・ライフ・バランスの希望と現実
ワーク・ライフ・バランスの希望と現実についてみると、特に男性は、希望に反して「仕事優先」となっている人が多い状況です。(男性の「仕事」を優先したいという「希望」が16.8%に対し「現実」が37.7%)(図4)
育児期の人、親の介護に直面した人たちが、男女とも仕事と生活の調和を実現できることが大事になります。そのためには、仕事と生活の調和に向けて国や地方自治体が施策を推進するとともに、特に男性が自分自身や部下の方の働き方の見直しを行うことや、意識を変えていくことが必要になると考えています。
2) 生き甲斐のある生活のために
本人の老後の楽しみや普段の生き甲斐は、妻との会話の量と関係しています。妻と「よく話す」と答えた男性ほど「定年後の楽しみ、計画がある」者が増加し、「何もやる気がしないと感じたこと」が少なくなるという結果になっています。(図5)
また、男性が家事や地域活動に参加するために必要なことを調査したところ、「夫婦や家族間でのコミュニケーションをよくはかること」及び「男性が家事などに参加することに対する男性自身の抵抗感をなくすこと」が上位を占めました。(図6)
男性が家庭や地域活動に参画し、ひいては、生きがいを持って生活していくためには、夫婦間のコミュニケーションが重要だということがよくわかる数字だと思います。
3.国と地方自治体の取組紹介
1)国の取組
「男性にとっての男女共同参画」の取組のうち、男性の地域・家庭への参画に関わりの強いものをご紹介します。
・「男性にとっての男女共同参画ホームページ」運営
男女共同参画の意義について、男性の立場・視点から理解を深めることに役立つ情報を発信し、国民各層における意識改革を促すため、平成24年3月に「男性にとっての男女共同参画局ホームページ」を立ち上げ、運営しています。
アドレス:http://www.gender. go.jp/policy/men_danjo/index.html
※「男性にとっての男女共同参画」で検索してください
・地方自治体職員向け研修の実施
今年度は、「男性にとっての男女共同参画」について、地方自治体の職員の方を対象とした研修を実施します。男性が地域・家庭でも活躍できる社会をつくるにはどうすればよいかを考えるとともに、担当者間のネットワーク構築を目的に実施を予定しています。
『シングルモルトかカクテルか?「多面性」が人生にもたらす「豊かさ」について考えてみませんか。』というテーマを掲げ、「地域を舞台に多面的に活躍している男性」によるトークセッションなどを行います。「男性にとっての男女共同参画」の推進をめざすうえで「あるべき姿」をイメージするとともに、その実現のための啓発活動のあり方を検討します。
※平成25年9月20日 内閣府にて実施予定
・男性にとっての男女共同参画シンポジウムの実施
「ワーク・ライフ・バランスのGood&NGプラクティス集 選定会議」
男性の地域や家庭への参画等につなげるため、男性にとっての男女共同参画の意義を理解していただくことを目的に、なじみやすい、身近で具体的なテーマを設定し、多様な生き方を実践している男性に関する「生の声」の発信などを盛り込んだシンポジウムを毎年開催しています。
今年度は、ワーク・ライフ・バランスをテーマに、仕事だけでなく育児や地域での活動等にも貢献し、人生を豊かにする上で必要となる、ワーク・ライフ・バランスを実現するために、職場における上司・部下の立場でどうすればよいかをテーマに実施します。職場における関係性から「やってよかったこと、やってはいけなかったこと」のエピソードを募集し、有識者の議論により、「プラクティス集」を選定、ホームページで公表を予定しています。
※事例の募集は、男女共同参画局ホームページにて行っています。
http://www.gender.go.jp/policy/men_danjo/sympo/kyushu01.html
2)地方自治体の取組
男性の意識改革については、地方自治体において、各地域の実情を踏まえた様々な取り組みが進められています。そのうちいくつかについて、概要をご紹介します。なお、各取組の詳細については、「男性にとっての男女共同参画ホームページ」にて紹介しておりますので、ご参照ください。
http://www.gender.go.jp/policy/men_danjo/municipality/effortsinq.html
4.「男性にとっての男女共同参画コラム」のご紹介
男女共同参画を、男性の視点から捉えるためのヒントは、日常生活の色々な場面にみられます。「男性にとっての男女共同参画ホームページ」に掲載されている「コラム」の中で、「男性の地域・家庭参画」をテーマにしたものをご紹介します。
・男性たちに男女共同参画の重要性を認識してもらうために
著者:伊藤 公雄氏(京都大学大学院文学研究科・文学部 教授)
京都大学の伊藤公雄教授に、男女共同参画を男性の視点から捉える意義など、基本的な事柄について語っていただきました。
- 男性の長時間労働と「家庭不在」
- 女性の活躍と経済発展
- 効率のよい働き方と家庭・地域への責任
これらは「女性だけの問題」ではなく、「男性」さらには「未来」の問題でもあり、誰にとっても意義のあるものではないでしょうか。
・父親になったらOSを入れ替えよう!
著者:安藤 哲也氏(NPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダー/副代表理事)
NPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也氏は、自分の中の古い価値観を変えることを「OSの入れ替え」と言っています。父親が育児参加するために必要な「OSの入れ替え」とは何でしょう?
本コラム内で、ご自身の体験も踏まえて語って頂きました。
・団塊世代男性のつぶやき〜もっと語って〜
著者:大日向 雅美氏(恵泉女学園大学大学院教授)
恵泉女学園大学の教授であり、子育て関係のNPOの代表もされている大日向雅美氏に、仕事の第一線を退いた後の男性の生き方等について、考えることを語っていただきました。
「男は我慢・女は不満」という言葉が引用されています。
仕事と家族に対する男性と女性、それぞれの思い、そしてすれ違いを言い当てているのではないでしょうか。「仕事一筋」の生き方で日本経済の成長を支えてきた男性たちが、胸の内を吐露する場面は印象的です。
・言われてガックリきた一言・言って「しまった!」という一言
「家事・育児にがんばっているのに、パートナーから言われてガックリした一言(女性の場合、言ってしまった一言)を教えてください」という質問に寄せられた回答について語るものです。昨年2月に実施した「男性にとっての男女共同参画シンポジウムinしが」にて、ご来場の方々にアンケートをお願いしました。
「『協力するよ』と(妻に)言ったら、『その時点で上から目線だ』と言われた」男性の話や、片付けや洗濯をした夫に「『自分のやり方でやってくれなかった』と怒ってしまった」女性の話などが寄せられました。
家事・育児に参加しようとしている男性に対し、女性からかけられる様々な言葉。男女それぞれの目線から語られる短いストーリーは、身近な内容だけに、多くのヒントが含まれているように思います。
※これらのコラムは、下記のホームページでご覧いただけます。