「共同参画」2013年 4・5月号

「共同参画」2013年 4・5月号

特集1

第57回国連婦人の地位委員会の開催
内閣府男女共同参画局総務課

本年3月4日~15日に開催された第57回国連婦人の地位委員会の概要をご紹介します。

第57回国連婦人の地位委員会(CSW)が、2013年3月4日から15日まで国連本部(ニューヨーク)において「女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力の撤廃と防止」を優先テーマとして開催されました。

国連本部ビル前
国連本部ビル前

我が国からは、橋本ヒロ子十文字学園女子大学教授を代表として、外務省、内閣府、文部科学省、厚生労働省、国際連合日本政府代表部、独立行政法人国際協力機構(JICA)及び独立行政法人国立女性教育会館の政府等関係者並びにNGO代表が出席しました。

CSWでは、各国代表や国連機関、NGO代表等によるステートメントの実施、優先テーマに関するハイレベル円卓会合や対話型専門家パネル、各種テーマ(「ポスト2015開発枠組みに反映されるべき男女共同参画に関する主要な課題」及び「HIV/エイズ分野における支援を含む女性及び男性間の平等な責任配分」)に関する対話型専門家パネルの開催、合意結論や決議についての協議等が行われました。

橋本代表のステートメント

我が国は、橋本代表よりステートメントを実施しました。

ステートメントを実施する橋本代表
ステートメントを実施する橋本代表

ステートメントでは、冒頭、我が国においては、第3次男女共同参画基本計画に基づき、様々な分野で男女共同参画社会の実現に取り組んでいることを述べ、最近の取組の例として、「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」への理解を促す活動を、政府と民間の各種団体が協力して行っていること、安倍総理の指示に基づき、関係大臣が連携して、日本経済再生のために、若者と女性の活躍を推進するためのフォーラムにおいて関係者の声を聞き、女性の活躍促進策を検討することとしていること、を紹介しました。

また、優先テーマである女性及び女児に対するあらゆる暴力の撤廃及び防止について、関係法令や、第3次男女共同参画基本計画等の政府の行動計画に沿って、女性に対する暴力を根絶するため、社会的認識の徹底等の基盤整備を行うとともに、暴力の形態に応じた幅広い取組を総合的に推進していること等を述べました。

さらに、優先テーマに関連する国際協力として、ASEAN諸国を対象とした人身取引防止の研修の開催等の取組、女性に対する暴力撤廃のための国連信託基金への支援を通じた取組等を紹介するとともに、「女性・平和・安全」の分野への積極的な取組として、国連安全保障理事会決議第1325号に基づく国内行動計画の策定に向け検討を行うこと等を表明しました。

優先テーマに関するハイレベル円卓会合

優先テーマに関するハイレベル円卓会合では、橋本代表より、女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力の撤廃及び防止に向けた、我が国の以下の取組等を紹介しました。

  • 早期予防の広報・啓発活動として、予防啓発教材を活用して、効果的に若年層の指導を行うため、「交際相手からの暴力の予防啓発指導者のための研修」を実施している。
  • 女性に対する暴力について的確な施策を実施し、社会の問題意識を高めるため、被害等の実態を把握することを目的とした調査を定期的・継続的に実施するとともに、女性に対する暴力の実態が的確に把握できるデータの在り方を検討するものとして、全国の20歳以上の男女5,000人を無作為に抽出し「男女間における暴力に関する調査」を3年毎に実施している。

ハイレベル円卓会合の様子
ハイレベル円卓会合の様子

対話型専門家パネル

対話型専門家パネルでは、女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力の撤廃及び防止に向け、「予防介入」及び「多部門にわたり調整された対応」に焦点をあて、各国の経験の共有、効果を向上させるための議論が行われました。

議論では、女性に対する暴力は著しい人権侵害であり、ドメスティック・バイオレンス、性的暴力、セクシュアル・ハラスメント、売買春等に対処する法律が別々に定められている場合でも、女性に対する暴力は本質的には同じだということが見過ごされるべきでないこと等の言及がありました。

さらに、貧困、加害者と被害者の力の不均衡、不平等・差別といった構造的、根本的原因に対処しないと暴力撤廃は不可能であること、社会的規範の変更、包括的な立法、政策の枠組みを始めとした複合的、調整的、統合的、多部門的な予防介入及び対応が重要であること等が強調されました。

合意結論及び決議

今回のCSWの成果として、合意結論及び決議が採択されました。

「合意結論」では、CSWとして、女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力を強く非難するとともに、各国に対し、女性及び女児の人権を侵害し、暴力を永続化する慣行・法律の廃止に傾注すること、暴力の撤廃に関する義務を避けるために慣習・伝統・宗教的配慮を引き合いに出すことを控えること、武力紛争及び紛争後の状況で行われる女性と女児に対する暴力を強く非難すること、性的暴力被害者への効果的な救済策をとること等を要請しています。

さらに、(1)法的・政策的枠組みと説明責任の実施の強化、(2)女性と女児に対する暴力を防止するための構造的及び根本的原因と危険要因への対処、(3)女性と女児に対する暴力への多部門的なサービス、プログラム及び対応の強化、(4)証拠基盤の改善について、政府、国際機関やその他の関係者が必要に応じて取り組むべき行動が盛り込まれています。

また、決議としては、「婦人の地位委員会の将来の機構及び作業方法」、「パレスチナ女性の状況及びその支援」が採択されました。

会合の様子
会合の様子

CSWの閉会に当たり、ミチェル・バチェレ UN Women事務局長(当時)が挨拶し、10年前のCSWでは女性及び女児に対する暴力に関し合意結論を得ることができなかったが、今回のCSWでは、参加各国の決意と努力によって、女性と女児とその将来のため合意結論を得ることができたことを感謝したい、と各国の立場の違いを乗り越え、国連憲章の精神に則った対応に賛辞を述べました。さらに、この合意結論は女性と女児の権利と尊厳の実現に一歩近づけるものであり、21世紀において男女共同参画を実現させるため、さらに前進し続けなければならない、と決意を述べました。

NGOサイドイベント

CSWの開催期間中、各国、国連機関、NGO等により様々なサイドイベント及びパラレルイベントが開催されました。

国連日本政府代表部が共催したサイドイベントの様子
国連日本政府代表部が共催したサイドイベントの様子

今回のCSWでは、日本のNGO(国連NGO国内婦人委員会、国際婦人年連絡会及びJAWW(日本女性監視機構))と国連日本政府代表部が初めて共催して、「女性に対する暴力の削減に向けて現状と対策」と題するサイドイベントが開催されました。

このサイドイベントでは、我が国において増加するデートDVとその対応、JICAによる人身取引被害者の保護と取組、女性に対する暴力を撤廃するために必要な女性の経済力の強化についてスピーカーから発表が行われ、さらに、政府からは別府内閣府大臣官房審議官(男女共同参画局担当)が、被災地における女性の悩み・暴力相談事業を含む我が国における女性に対する暴力の根絶の取組について発表しました。

2013年国際女性の日

国際女性の日である3月8日には、「約束は約束─女性に対する暴力終焉のために行動する時」をテーマに、UN Women主催により特別イベントが開催されました。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長より、「女性に対する暴力は決して許容できない。これは、あらゆる国、文化、地域において適用できる一つの普遍的な真理である。事務総長として、性的暴力のすべての被害者の福祉が、我々の活動の中心であることを主張する。また、我々の和解、平和維持及び平和構築活動のすべてにおいて、性的暴力に対する防止活動を優先事項にするよう我々は取組んでいく。」と挨拶がありました。

バチェレ UN Women事務局長からは、「変化は可能であり、変化は起きている。」ことを強調するとともに、「女性と女児に対する差別と暴力は、21世紀にはふさわしくない、今こそ、政府は国際会議や国際協定と一致して、約束を守り、また、人権を擁護するときである。」との挨拶がありました。

また、この日に合わせて、UN Womenは、世界中から多くの著名なアーティストを迎え制作した、女性を称賛するテーマソング「One Woman(ワン・ウーマン)」をリリースしました。

(UN Women提供)
(UN Women提供)

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来年の第58回CSWは、2014年3月上旬に、「女性及び女児に対するミレニアム開発目標(MDGs)実施における課題及び成果」を優先テーマとして開催される予定です。

第57回国連婦人の地位委員会HP:
http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/57sess.htm

内閣府男女局HP:
http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_csw/chii57-g.html
(橋本代表のステートメント及び合意結論の全文も掲載している)