男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年6月28日(金) 13:30~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    北村 節子 読売新聞社調査研究本部主任研究員
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 農林水産分野における女性のチャレンジ支援について
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
農林水産省説明資料 [PDF形式:388KB] 別ウインドウで開きます
資料2
第10回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
それでは、ただいまから男女共同参画会議基本問題専門調査会の第13回の会合を開催させていただきま す。
 皆様、大変お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございました。
 議事に入る前に、御報告がございます。参画会議の議員でいらっしゃる猪口委員が軍縮会議代表部大使に任命に なって、もう既に赴任しておられますので、御本人から辞任したい旨、御連絡がございました。事務局でその手続を行って いただき、本日付で辞任ということになっております。これに伴いまして、本日付で樋口委員が参画会議の議員に任命さ れております。
 それからまた、本日付で当専門調査会の委員として、読売新聞社調査研究本部主任研究員の北村節子氏をお迎えす ることになりました。それでは、北村委員から簡単に自己紹介をお願いをしたいと思います。
北村委員
御紹介いただきました北村と申します。よろしくお願いいたします。 新聞社で長いこと記者生活をやってお り、特に生活情報部というところに長くおりまして、どちらかというと暮らし全般の側から女性の在り方を考えるというスタン スでまいりました。今度、調査研究本部というところに移りまして、これはちょっと漠然としているのですが、世の中で起こっ ていることを会社に向けて、このようなことであるからこのように対処したらいかがかということを申す立場にいるんです が、私自身が手探りしながらいろいろ女性関係のことをもっと考えていかなければいけない立場です。
 当面は皆さんのお考えを伺いつつ、新聞等に現れる読者のサイドからの考え方みたいなものを御紹介することで少し はお役に立てればと思いますので、よろしくお願いいたします。
岩男会長
よろしくお願いいたします。それでは、お手元の議事次第に従いまして本日の審議を進めてまいりたいと存じ ます。
 前回まで経済分野における女性のチャレンジ支援について検討を行ってまいりました。本日は、まず農林水産分野に おける女性のチャレンジ支援について農林水産省から御説明いただきまして、それを基に検討を行った後に、これまでの 検討を踏まえて経済分野における女性のチャレンジ支援全体にわたり自由討議を行いたいと考えております。
 それではまず農林水産分野における女性のチャレンジ支援について、農林水産省経営局の齋藤京子女性・就農課長 から施策の動向や課題などについて御説明をお願いいたします。
齋藤課長
農林水産省の女性・就農課長の齋藤でございます。それでは、まずA3の1枚紙をごらんいただきたいと思 います。
 「男女共同参画社会の形成に向けて」ということで全体像でございますが、男女共同参画社会基本法が制定され、更 に間もなく食料・農業・農村基本法が制定されたものを踏まえまして、平成11年に農山漁村男女共同参画推進指針を定 めております。これは農林水産省の各局長、長官から各県知事、農政局あるいは団体の長あてに通知しているものです けれども、内容が3つの柱となっております。まず、「女性の声がとどく村づくり」ということで、あらゆるところに女性の意見 を届けていこうということでございます。次に、女性があらゆるところで参画していくためには、女性のみが非常に過重労 働にあるという状況を解決しまして、能力開発と働きに見合った位置付けなどを踏まえた農業経営参画、そういったことが できるような環境整備をしていこうということになっております。
 これらは女性自身、あるいは周りの取り巻く方々がともに進めていくものでございますけれども、3つ目は行政側から 男女共同参画をより一層プッシュしようという取り組みでございまして、農山漁村における男女共同参画を一層推進する ために、農林水産省が実施しております補助事業の事業採択、あるいは事業実施に当たっての判断材料として、どのくら い女性の参画が進んでいるかといったことを一つの指標にして、採択の優先あるいは留意といったものを決めていこうと いうものでございます。
 具体的には、優先採択としまして、その事業の内容として、担い手としての女性の位置づけを非常に重視しているよう な事業、例えば私どもの女性・就農課の実施しております男女共同参画推進をそもそも目的にしている事業といったよう な事業につきましては採択基準に入れております。
 それ以外の農水省のほとんどの事業につきましては、その事業の採択に当たっての配慮事項ということにしておりま す。例えば、2つの農協が集出荷施設を作りたいというときに、女性を中心にした研修会をやっているとか、あるいはその 地域の農協の正組合員の率が高いとか、一定の指標を基に優劣を判断しまして、それ以外の例えば集出荷施設に必要 な野菜の作付け面積とか出荷量の伸び方、見通しとかが全く同じだった場合には、女性の参画が非常に進んでいるとこ ろを優先的になるように配慮していきましょうというようなことが盛り込まれております。ただし、災害とか、あるいは病害虫 が発生してすぐに対応しないといけないとか、あるいは消費者だけを相手にしたような事業といったものは適用除外という ような扱いになっております。
 こういった取組を踏まえて、農家の中と外での地位向上に向けた施策の推進としまして社会参画の促進、経営参画の 促進、女性が住みやすく活動しやすい環境づくりの3つの施策の方向を打ち出しております。
 まず、農業農村の現状ですけれども、非常に農家人口は減少してきておりますが、農家人口のうちの65歳以上の高 齢者の率ですけれども、全体が減る中で高齢者のところは横ばい、増加という傾向の中で、非常に高まっておりまして、 現在28.5%になっております。
 また、農業就業人口に占める65歳以上の割合も約53%と、非常に高齢化が進んでいるというような状況になっており ます。
 そういった状況の中で、農業就業人口に占める女性の割合は農業において約56%、林業が14%、水産が17%という ことで、特に農業における女性の就業割合は高いものとなっております。私ども男女共同参画社会実現のための取組とし ては、先ほどの3つの柱ですけれども、社会参画、経営参画、活動しやすい環境づくりということであります。
 その手段ですけれども、まず社会参画の重要な手段としましては意識啓発、経営参画の手段としましてはエンパワー メントで、こちらの方は環境整備ということで考えております。具体的には、次でございます。
 まず社会参画の促進でございますが、まず社会参画のところですけれども、農業委員の女性の割合は1.8%と非常に 少ない状況になっております。農協の方は14%と、役員になりますと女性は0.6%にすぎないという状況でございます。
 ただ、農業委員につきましても、ちょうど6、7月は農業委員の選挙の時期でございますが、数は少ないですけれども、 人数的には急激に伸びております。例えば長野の女性の農業委員の割合は7.6%というようなことで、全国的に見るとか なりばらつきがございます。私どもとしては、そういった女性の委員の多いところをモデルにしまして、他の県もついてきて ほしいという形で取り組んでおります。
 施策の方向としましては、まず参画目標を策定していこうということでございます。具体的には、農協での女性の正組 合員の割合、あるいは理事の割合、そういったものを目標に定めて取り組んでいこうということであります。特に最近、明 らかになっておりますのは国段階、県段階あるいは市町村段階の審議会の委員における女性の割合は、3割というのを 目標に進んできておりますが、一番遅れているのが農業あるいは地域生活の一番身近な地区、地域のレベルだろう。例 えば、区長さんとか公民館長さんなどの中に女性はほとんどまだまだ少ないという状況で、地域レベルの女性の参画促 進をこれから一層進めていく必要があると考えております。そういった意味で地域社会への意識啓発、例えばあらかじめ もう年齢の順に決まっているような地域がございますので、そういったところはやはり適している人が委員になる必要が あるというようなことで進めております。
 具体的な取組ですけれども、これは平成12年に開催されました第22回のJA、農協の関係の全国大会で目標を設定し ております。目標としましては、現在のパーセントの倍ということで25%の正組合員を目指しております。また、今JAも合 併を進めており、合併した場合には理事に女性を2名以上ということで取り組んでおります。農業委員会としましては、全 国団体としまして全国農業会議所が昨年、「農業委員会系統組織の改革プログラム」を定めて全国に発出しております が、その中で、一農業委員会当たり複数の女性農業委員の設置というのを目標にしております。やはり農業委員会の中 で女性が1人ではなかなか発言力がつかないということで、複数いると非常に農業委員会の取組、活性化も進むというこ との実態を踏まえてこういった目標を設置しております。
 さらに、そういったものを踏まえまして、今年の5月ですけれども、農水省としましても「青年・女性農業者、認定農業者 等の担い手で農業・農村の活性化について学識経験のある者」を欠くことのないよう推薦及び選任がなされることが望ま しいということで、基本的には農業委員は選挙でございますけれども、学識の方の推薦の枠がございますので、それに女性が入るようにというようなことでございます。
 続きまして、実際に農業委員として活躍している方の御紹介をいたします。岩手県の方で、この方は前に民生委員も やっていらした方ですけれども、農業委員の仕事は例えば農地が荒れていて有効に使われていない、そこを農業利用が きちんとできるようにしていくという農地利用の監視というのも農業委員の大きな仕事になっているわけです。この方が、 使われていない農地と、その農地を使いたい農家の橋渡しをしたいということで、ある農家にお話を持って行ったときに、岩 手弁ですけれども、「なんたなわけで他人の財産に口出すんだべ。何をしようとこっちの勝手だべ」と言われて追い返され るというような状況がありました。女性は人の財産に口出しをするなと。ただ、それも時間をかけて本当に農業に使うこと が大事ではないかというようなことで説明した結果、お互いの信頼関係が深まって、農地の有効利用ができたというような ことがございます。
 また、同じ方ですけれども、やはり男性の農業委員では気が付かない視点、例えば一人暮らしのお年寄りに配食サー ビスをしたいとか、あるいはその地域でできる大豆を使いまして味噌を作ろうとか、そういった地域農業の活性化に向けた 提言をしまして、地域をぐんぐん変えてきているというようなことがございます。女性の農業委員が加わることで、やはり暮 らしに密着したソフト面への活躍が広がっているという事例でございます。
 次に、農協の役員になられた長野の方は、やはりまず最初から理事を目指すというのはかなり困難でして、古い言葉 ですが、40歳以下の若妻の方が中心で若妻大学というのをやっておりまして、それを3年間やる中でお互いのコミュニ ケーションあるいは自分たちの抱えている問題をそれぞれ交換する中で活動や実績を積み重ね、そういった中で女性の 参与をまず4人誕生させております。それで、それを踏まえて今年から女性の理事の枠を2人確保した。今まで、例えばJ Aの女性部が加工施設が必要だと言ってもなかなか取り上げられないわけですけれども、このように参与になり、理事に なりということでJAの長期の方針決定計画策定に役員として加わる中で、計画的に必要なものが整備できていく。突然女性部が何か変なことを要望したということではなくて、計画にのっとって確実にファーマーズガーデンとか、特別養護老人 ホームが着々とできたというような実績でございます。
 以上、社会参画の取組でございます。次に経営参画の促進ということでございますが、これは女性自身が力を付けて いくということが手段として重要ではないかと考えております。まず現状ですけれども、農業で働いている女性というのは 職業として働いているということで、当然働いた結果というものがついてくるはずですけれども、これを年間決まった報酬、 給与ということで見ますと、特に受け取っていないという方が23%います。必要なときに受け止るが24%ということで、約 50%の方の経済的地位はあいまいになっております。
 ただ、これを年齢別に見ていきますと、30歳未満の方では約6割の方が毎月決まった額を受け取っています。若い人 は結婚する前に勤めて自分名義の給料をもらっていたという経験を持っていますので、それを農業で働くようになっても 生かしているという実態が浮かび上がっております。
 その次ですけれども、これは新聞などでも時々報道されておりますが、農村女性の起業は年々増えてきております。 全体で7,323件ということで年々増えております。今までの傾向で見ますと、グループ経営が約7割以上ということで個人 経営が少なくなっておりますが、今年の実態を見ますと個人経営が対前年比23%の増加率ということで、グループに比べ て非常に個人経営の増え方が著しいという傾向がございます。
 ただ、売上金額を見ますと、300万円未満が全体の3分の2を占めておりまして、まだまだ起業のレベルというのは零 細になっております。
 施策の方向でございますが、3つ挙げております。まず、事業を起こすにしても農業経営に参画するにしても、生産技 術や経営能力の向上をしていく必要がある。もう1つは、起業に必要な資金とかを支援していく必要がある。さらに、働いた 結果をきちんと明らかにする、あるいは経営上の責任ですね。何とか担当の責任者であるとか、専務であるとか、あるい は法人化の推進というような形で経営における位置付けの明確化が必要だと考えております。
 具体的に、例えば、経営における女性の位置付けの明確化の手法としましては家族経営協定というものがございま す。全国に改良普及員という方々がおりまして、その方々の取組の紹介です。普及組織による家族経営協定の推進とい うことで、まず先進事例調査の結果を踏まえまして、自分たちの地域ではどのようにこの家族経営協定を進めていこうか ということで、農業委員会とか農協とか普及センターとかが連携しまして、家族経営協定の周知、他の県あるいは他の地 域で既に取り組まれている、あるいは取り組んでいる夫婦の方をお呼びしたりしまして、これは効果があるというようなこ とでPR、シンポジウムなどを開催する。
 家族経営協定の内容でございますが、例えば経営上の位置付け、労働時間、子どもが学校が休みのときはやはり農 業も休みにして子どもと十分触れ合えるようにするとか、報酬、家事分担をどのようにするかとか、そういったような内容 を定めております。ケース・バイ・ケースで、それぞれの農家に必要なものを定めております。
 PRをした後に、では取り組んでみようというような農家を決めまして、時間をかけて自分の家はまず給料をはっきりさ せようとか、その協定内容の話し合いを十分した後に締結をします。この締結は市町村長の立ち会いの下で夫婦と市長と か普及センター長、あるいは農業委員会の会長などが立ち会いまして調印式などを開催しております。
 それで、家族経営協定を結ぶときのタイミングというものがございます。例えば子どもが学校を卒業した後、農業をやり たいといった場合に子どもが新たに経営に入ってきますので、その子どもの経営上の分担とか給料とかをはっきりさせる というとき、あるいは子どもが結婚して、配偶者の方がどういう役割をしていったらいいかというとき、あるいは親夫婦が農 業から引退するとき、大きく3つのタイミングがございます。こういったような取組を進めているということです。
 次に、農業改良資金の創設ということで御紹介させていただきます。今国会で農業経営の改善に必要な資金の優遇 の円滑化のための農業近代化助成法等の改正というのがございまして、いわゆる金融二法と言っておりますが、それが 成立しまして7月1日施行の予定になっております。この中身ですけれども、女性起業向け優先枠ということで、全体で 634億という枠がありますが、そのうちの30億円を女性起業向け優先枠と定めております。これは法律の中で定めている わけではございませんけれども、法律ではこの資金が無利子で無担保、第三者の保証人がなくても借りられる形に初め ていたしたところです。それで、10年以内貸付限度額個人1,800万、グループ、法人でしたら5,000万ということでございま す。
 今まで農業改良資金で女性高齢者の活動資金というのがございましたが、それを廃止して、今回は起業、加工分野あ るいは新しい作物、新しい技術に取り組む分野で使える資金ということになっております。また、今まではグループでしか 借りられなかったのが1人でも借りられるというようなことで、女性が仕事起こしをするのに非常に適した資金を用意でき るようになりました。
 既に取り組んでいる事例としましては、1つは岡山県の方ですけれども、この方の夫は3年前まで会社勤めをしており まして、この方が1人で27年間、花を中心に栽培しておられる方です。この方は売上げが1,000万ぐらいある方でございま して、花の将来方向をデータの蓄積を元に見極めて、中心になる花の種類を変えてきております。したがって、ぐんぐん伸 びている。また、需要を見定めながら試験栽培を必ずやって花の切替えを、例えばカーネーションから今はラークスパー という花に変えておりますけれども、そういった切替えをスムーズにやっております。
 また、御本人がかさやラークスパー研究会の会長として地域の技術の指導、出荷の指導などもやっておりまして、例 えば相手のハウスを見て、これは品質が非常に悪いので出荷できないというようなことで出荷停止を呼び掛けているよう なこともあるようでございまして、産地全体のレベルを落とさないように取り組んでいらっしゃるというような方で、農業分野 の経営参画をされている方でございます。
 その次は佐賀の方で呼子町可部島という島なんですけれども、島に来たお客さんの、この島に来ても何もない。甘夏 も大したことないしというような声を聞いて一念奮起しまして、甘夏の味を非常によくしていこうということで有機栽培に取り 組んだ。また、出荷のできない甘夏をどうにか無駄にしないやり方がないかということで研究を重ねまして、甘夏ゼリーと いうものを開発しました。それで、これが“むかずに食べる甘夏"ということですけれども、一つの大きな甘夏を半分に切っ て、その半分のところに甘夏一個分の果汁を絞り込んだものをゼリーにして流すというようなやり方をやっておられまし て、“むかずに食べる甘夏"ということで大好評になって売られて、平成5年には100万円程度であったものが11年には3, 000万を超える売上げになっている。このグループの方は40代の方、20代の方、計4名で取り組んでいますが、大体年 間を通じて10人から15人の女性を年間雇用されているというような非常に起業として成功している事例でございます。
 3番目が女性が住みやすく活動しやすい環境づくりということですけれども、女性の労働時間は、全体の時間で見ます と男性の1.24倍になっております。ですから、農業だけではなくて家事、育児、介護も含めて仕事ということで見ますと、非 常に女性が過重になっているという実態が浮かび上がっております。
 施策の方向としましては3つ考えておりますが、まずは農作業、家事、育児、介護等の過重労働を軽減していこうという ことであります。また、家庭の中だけではなくて経営参画と子育ての両立のための施設、外部化を進める必要がある。さ らに、女性同士のネットワークを充実していこうということで考えております。
 具体的な取組例としましては、アグリサポートセンターというものを平成14年度から整理することにしております。起業 実習室、これは特産品の開発とか、特産品開発のための技術の習得のための実習なり研修ができる部屋、その横に託 児室、例えば保育室ということで保母さんの資格のある方などが女性農業者の方にもいらっしゃいますので、そういった 方がここで子どもを見てくれる、あるいは放課後児童がこの児童室で安心して遊んだり勉強ができるというような部屋と 起業実習室、研修室を一体的な施設としましてアグリサポートセンターというメニューをハード事業の中に用意することに しております。
 具体的な例としまして御紹介したいのは岩手県の石和町のグループですけれども、これは“わがママ倶楽部"と言いま す。この方々は20代後半から30代の、子育てに追われながらもやはり自分の夢を追い続けたいという人たちで、たまたま 好きになった方が農家の出身で農業をやっている。ただ、自分は農業のことを全く知らないというような方もおります。そう いったメンバー20人が集まりまして平成11年に発足したグループですけれども、子育て中もやりたいことをしようというこ とでグループの中で子守を決めたり、トレーニング農場で低農薬低化学肥料の自給野菜、あるいは切り花用のヒマワリの 生産販売をしたりしまして、子育てと生産活動の両立をしているグループでございます。臨時の保育所なども“わがママ保 育所"ということで開設して取り組んでいる若いグループでございます。
 これらを踏まえまして、今年からの施策の展開としましては2つ考えております。上への垂直型のチャレンジ支援という ことで、農業経営の参画促進と一層の方針決定の場への参画促進を考えております。また、横への水平型のチャレンジ 支援ということで起業などを中心にしました経営の多角化、多様化を考えております。
 具体的な垂直型チャレンジ支援のイメージですけれども、ポイントは女性のライフステージに合わせた支援ということ を考えております。まず、若葉マーク女性と名付けましたが、先ほどきお話しましたけれども、たまたま結婚した相手が農 業をやっている方だったというような場合は、農業の勉強をして農業を始めるわけではございません。ですから、結婚して 初めのうちは、農家、農村、農業が全くわからないということで非常に途方に暮れるわけですね。この方々に農業出身者 向けの農業の基礎的な技術の勉強会とか、あるいは交流促進というものがポイントになってくると考えております。
 その次の20代から30代にかけての出産子育て期、ここはそれぞれ子どもを預けながら農業を本格的にやっていきた いという女性もいますし、あるいはある程度大きくなるまでは子どもを自分が見てその後農業をやりたいという、それぞれ の判断がございます。私どもはそういった人たちの考え方に応じまして、家族や地域で子育てサポート体制ができるよう にしていきたいと考えております。
 さらに、小さい子どもに手が掛からなくなった次世代リーダーの方々、この人たちは本格的に経営管理をし、マネージメ ントをし、販売促進をし、また地域におけるいろいろな役を受けながら社会参画をしていく。そういうステージの方々に合っ た支援をしていきたい。
 最後に、女性エキスパートということで、自分たちの地域の女性のロールモデルとしての活躍、例えばそこの地域で非 常に発言力も増し、県レベル、国レベル、いろいろな全国的な範囲で活躍をしている方がその地域にもいらっしゃるとか、 そういったモデルになるような方々を、目標にしていただきたい。この方々は自分たちの経験、実績を踏まえて、この若葉 マークの女性あるいはこういった次世代リーダーまでを自分たちも支援する、自分たちの経験からこちらの方々に応援を する、そういった取組ができるようにしていきたいというふうに考えております。
 その次ですけれども、水平型チャレンジのイメージとしては、1つは女性起業家の育成、先ほど佐賀の事例などを御紹 介しましたけれども、農業あるいは農業生産から加工、流通あるいはグリーンツーリズム、農家民宿のような、そういった サービスの分野までの農業を基点としながら広がりを持って横に進出してウイングを広げていく、そういったようなところを 支援していく。また、地域内で例えば販売が完結している起業グループが多いわけですけれども、ITを十分活用すること によって都市部、全国にというような形で、先ほど売上金額が300万以下が3分の2ございましたが、1,000万から更に1 億を目指すような活動も、地域を超えた活動をすることによって達成できるのではないかと考えております。
 最後になりますけれども、食と農の再生のための取組としまして、昨年のBSEの問題とか、今年の1月からの表示の 問題ですね。そういった中で、消費者が「食」と「農」に対して非常に信頼を失っているという現状がございます。やはり「安 全」と「安心」をモットーに、「安全」というのは表示などを見て、これは悪いものを扱っていない、添加物はないというような ことで確認はできますけれども、でもそのことがもう一歩信頼できないというところで「安心」というのが重要になってきま す。「安心」というのは、信頼ができる、気持ちが通じる、顔が見えるという中で、ここに書いてあるものは全く正しく信頼で きるものだというようなことで、「安全」が「安心」に必ずしもつながらないといけないということがございます。そういった状 況の中で、農村の女性たちというのはこれまでも健康とか環境とか、そういった視点をしっかり持ってきている方々です。 「安全」とか「安心」には農村女性と言いましても生産者であり、また消費者でもあるわけですね。ですから、農村女性が 全面に出まして消費者との信頼回復のための交流ができる。農村女性の視点を生かして消費者との交流をしていきた い。女性の視点を生かした情報を発信して、またお互いの健康とか「安全」、「安心」についての意見交換をしていくというこ とを通じまして、「食」と「農」の再生にチャレンジしていきたいというようなことを考えております。
 以上、これまでの方向と今後の取組の方向ということで御紹介させていただきました。
岩男会長
どうもありがとうございました。
 それでは、これから委員の方々の御質問あるいは御自由な御意見を伺いたいと思います。
伊藤委員
細かいことですけれども、女性の起業で個人経営が増えているというのは何か理由があるんですか。
齋藤課長
今まで漬物とか味噌とか、そういった形ではグループが多いわけですけれども、最近は例えばアイスクリー ムとか、そういった1人のアイデアで製品にして売っていくという力がついてきているのかというふうに考えていますけれど も。
伊藤委員
グループで経営するものではなくて、もちろん自分で言い出して自分で雇ってという形の仕組みですよね。
岩男会長
農業改良資金の女性起業向け優先枠を使って手を挙げようとしている人たちが相当いますか。
齋藤課長
改良資金以外も近代化資金とか、今回大幅に変えておりますので、そういった制度の説明会がこれから開 催されることになっております。そういった中で積極的にPRしたり、要望を聞いていきたいと考えております。
伊藤委員
農水省は以前から日本の省庁の中では男女共同参画を積極的に進めておられるというので注目していま した。実際にすごく体系的な形で施策を進めておられると思います。 質問ですが、男性に対する啓発といいま すか、まだまだ主流派である男性に対してどんな形 で働きかけをされているのかお聞きしたいと思います。
 私も最近、農協の大会などで講演を頼まれるんです。参加されるのは役員ですから99%近く男性なんですけれども、 反応はほかのところよりはちょっといいかなという印象もあるんです。昔から農村は古いと言われているんですけれども、 やはり変わらなければいけないという意識は少しずつ定着しているのかなと思います。そういう男性たちにどういう形で訴 えていくのかというのも大変重要なことだと思います。そのへんのところはどうでしょうか。
齋藤課長
例えば先ほどの家族経営協定の推進にしましても、かつては女性の人たちが働いても報酬がない。大体男性の名義になっていて男性の方は不満がないわけですね。女性の方に不満があるわけです。それで、家族経営協定の 説明会をやると女性の方々がそうだそうだ、本当におかしいとなっても、家に帰ると反対が起きてつぶれてしまう。
 そういう反省を踏まえまして夫婦セミナーとか、あるいは若い人たちが必要だと言っても上の人たちが反対してなかな かいかないというのがありますので、それを一緒に聞いてもらうというような呼び掛け、そういった手法を使ったり、あるい は例えば農協に対する女性の参画でも農協の職員にも女性の幹部が少ないわけなんです。それで、女性の幹部を登用 しているJAは非常に経営が伸びているとか、そういうモデル的なところを集めて、女性の登用を進めていこうと。それも一 つのロールモデルになってくると思います。
岩男会長
今おっしゃったことは、例えばIBMなどですとダイバーシティと呼んでいるのと全く同じことですよね。それの 農村版と言うんでしょうか。
伊藤委員
その場合、男性を説得するためのロジックみたいなものが必要ではないか。私は大体農協では後継者問題 を軸にお話するんですが、例えばどういうところで男性たちが、これから男女共同参画をやっていかなきゃいけないんだと いう認識に至るのか、それをどう促進するのか。この辺についてはどんな風にお考えですか。
齋藤課長
やはり1つは実績を見せる。例えば、ある農協などは遊休化していた施設があって、それで女性が理事に なったことによって、あそこの施設を何か使えないかということで加工施設に変えまして、そこで農産加工を農協として始 めてそれが伸びている。やはり女性の理事を入れることによってこんなに変わるじゃないかと実績を見せるというようなこ と、あとは私ども昨年から農水省の男女共同参画推進本部というのを立ち上げて活動しておりますけれども、やはり行政 の幹部とか、あるいは団体の幹部の方々に男女共同参画の必要性を理解していただいて、いろいろなところで男性の上 の方が男性の方々に言うというのも一つの重要な手段ではないかと思います。
岩男会長
今の好事例実績といったようなものはいつごろまでにお集めになるんですか。
齋藤課長
協同組織課という課の方でそういう事例を集めようということを言っていました。まだ具体的には聞いており ませんけれども。
伊藤委員
町おこしなどでも女性の参画でさびれた商店街が活性化したというようなケースは結構最近聞きますので、 実績を示すのは確かに効果的だと思います。
寺尾委員
家族経営協定の件数はどのぐらいあるんでしょうか。
齋藤課長
平成13年段階で1万7,200戸が締結しております。
寺尾委員
それは全体の戸数の中の何%ぐらいになるんでしょうか。
齋藤課長
まだ約1%だと思います。
寺尾委員
これは家族の中に契約を持ち込むという話で、日本の社会は非常に嫌がる話だと思うんです。それを進め ておられるというので、そういう意味からも興味深いのですが、どこでそういう話が出てきたのかということ。あとは地域に よって差があるということですが、どのような背景があるのですか。パイロット的にどこかから仕掛けていくなり、あるいは そういうものが受容されやすい地域を見つけられて、そこである程度広がって、それで実際に締結なさった方がよかったと いうふうにおっしゃれば、それなりの伝播効果はあると思うんですが、どのようにして始められたのか、そのへんのところ も教えていただけたらと思うんですが。
齋藤課長
正確ではないんですが、家族経営協定の前に父と子、父子協定という形を進めていた時期がありまして、昭 和30年代ぐらいから農業後継者の育成確保という観点から父子間で契約をするという形で農業委員会が中心になって 進めておりました。
 ところが、何で父と子だけなのかと。例えば親夫婦、子夫婦がいて、子夫婦の方の妻が一生懸命農業をやっているの に、全然私は働いた形が見えないというようなことが出てきまして、それで平成4年に農山漁村の女性に関する中長期ビ ジョンというのを定めました。その中長期ビジョンの中で家族の中におけるルールづくりを進めましょうということが定めら れました。報酬とか、休日とか、家事の分担とかを行政的に押しつけるものではなくて話し合いの中で決めていきましょうと いうようなことで進めてきました。その後、例えば農業者年金に女性が加入する場合に、農業で働いている女性ですよと いう一つの担保というか、位置付けとして家族経営協定を結んでいることを要件にしたり、今回例えば14年に農業者年金 が改正されておりますけれども、認定農業者で青色申告をしている人とか、そういった担い手と家族経営協定を結んでい る配偶者には国の助成ができるとかというふうに位置付けております。
 また、先ほどの農業改良資金の中でも、農業改良資金を借りられる農家の中に家族経営協定というものを位置付けて おりまして、例えば経営主は男性の方が多いんですけれども、経営主以外の農業者、家族経営協定を締結していて、そ の経営のうちの一つの部門について主宰権がある、あるいはその部門についての危険負担、収益の処分権があるという ことであれば、この改良資金を借りられるというような形で入れようとしております。政策的にも家族経営協定が入ってくる ように条文などに入れてきております。
寺尾委員
関連してなんですけれども、日本で女性の地位が云々ということを男性に言うと、必ずお財布を女性が持っ ているという話に返ってくるんですが、農業経営において実際に作物や何かを出荷してそれが現金になったときに、その 管理というのは妻がやっていることの方が多いんでしょうか。
齋藤課長
農業経営と家計というのがよくどんぶり勘定と言われていて、農業経営で得た所得を次の農業経営に回し て種を買ったり、農機具を買ったりしないといけない部分と、家族の教育とか食費とか、そういうものに振り分ける部分が ごっちゃになっているというようなことがございます。
寺尾委員
サラリーマン夫婦の場合で、奥さんが財布を握っている場合、実際にお金に奥さんもタッチしているが、ただ それは自分のものにしていいというわけではない。つまり、給与は預かっているに過ぎないのであって、それはいくらでも 使っていいという話ではないのだから自分の分として堂々と好きなものを買ったりはできないと奥さんたちが言う声を耳に します。農家の場合も妻たちが自分の報酬として欲しいというのは自分のお金として堂々と使えるお金が欲しいという話と 理解してよろしいのですか。
齋藤課長
そうですね。自分の名義のお金が欲しいということですから、タンスの中にあるからいつでも自由に使ってい いよという農家がありますけれども、おじいちゃんは自由に使っても若い奥さんは気兼ねしてとても使えないというような 悩みが聞こえてきます。そういうときに家族経営協定で例えば8万円とか10万円、20万円とか自分の名義でもらって、そ のうちから食費を出す、車代を出すとかという形で、また家族で共通するお金を集めるというようなやり方もあります。
 考え方としては、例えば青色申告をすれば専従者給与ということで20万円というのを形だけではなくてきちんと私の通 帳に振り込んでくださいよと。みんなに20万円ずつやってしまうと全然家計でプールする共通経費がなくなってしまいます ので、それはまた戻すというような形をすると、その人の名義のお金というのははっきりしてきますね。
寺尾委員
税金でそういうふうにすることが有利になるというわけではないんですか。
伊藤委員
税金については計算によるでしょうね。申告の仕方とか、内容によるんじゃないですか。
齋藤課長
それぞれの農業の所得をどういうふうに分配するかということですけれども、税金はまた難しい話で、経営と して経営主にたくさん残して、それで納税するのか、経営の構成員に一回分配して、その人たちの名義で税金を納めるの か、どちらを選ぶかによるかとも思いますけれども。
住田委員
後ろに付いているパンフレットの一番最後の裏表紙の前のページの法律一口Q&Aというのがございまし て、この5番目の問いと答えについて気になります。「夫から家以外の財産を分けてもらうことはできますか」ということで すが、分けてもらうという言い方が非常に恩恵的にもらえるという印象を与えます。潜在的持ち分があり、寄与した分につ いては当然もらえるという発想をまず持っていただかないと困ります。死亡とか離婚の場合は清算され、そのときは、寄与 分は当然自分のものとして明確になるはずだと考えます。
 特に農村の場合の家事と実際の農業との時間を見ますと、女性の方が男性の1.24倍ということで、全体にわたって生 産に対しての寄与度は女性の方が高い。無償労働も含めてですけれども。そうすると少なくとも半分以上の貢献がある ので、財産への権利はあるのも当然です。確かに夫名義の収入としていれば今の税法上こうならざるを得ないと思うの で、できれば共同経営として名義を男女同様にしておいて、その割合に応じて収入を分け、そしてそれぞれの資産をきち んと持っておくということがあればこういうような言い方をしなくて済むのではないかと思います。
 もう一つですけれども、高齢者の意識改革についてもっと高齢者に働きかける何らかの運動がないかという感じがいた しました。具体的な働きかけの一つとして、少なくとも若い人がこういう考え方をしているのであれば、若い人の生き方とし て尊重しなくてはいけないというような意識転換を図るような取組を目に見えた運動として出していただきたいなと思ってお ります。
 それから、人事に関しては、女性が半分以上、農業の場合は従事しているわけですので、単に25%などという生ぬる い話ではなく、最低限3回に1回とか、トップを女性に据えるようにしませんと、副何とかだけを女性枠として与えてそれで 事足れりということになるのではないかという気がします。そういう方向での御指導ができないものかと思います。そのた めには、ロールモデルとして農水省もいつも女性何とか課長しか女性がいらっしゃらないと聞いておりますので、JAの関 係をなさるような課長にも是非女性の登用をお願いしたいと思います。
坂東局長
私はむしろこの農協の25%というふうな数値目標を立てて、農業委員も現に進んでいるということに非常に 感動しておりまして、どうしてそういう数値目標まで立てることができたか、その取組のノウハウ、知恵を学びたいと思った んですが。
寺尾委員
分けてもらうという表現はおっしゃるとおり問題なんですが、農業の場合、土地と建物、特に土地が資本に なっていて、そこにお嫁さんとして行くという型のことが多いわけですよね。このため、半分というのはなかなか難しいという ことになってしまうんではないでしょうか。
住田委員
この点では家以外の財産を分けてもらうことですから、これはおそらくお金のことを念頭に置いていますの で、やはり収入に対して半分を「分けてもらう」という発想は私は問題だろうということです。
樋口委員
今、収入をどう分けるかというお話になっているようですが、ついこの間、私が行ってきた農村部を含む飯山 市というところで、会場発言で「おてんま」「おてんま」と言われていて、初めは何だかわからなかったんです。地域共通の 作業に手間をもらうということから出たらしいんですが、この「おてんま」は古くて新しい問題です。飯山地区では「おてん ま」に出るときも女性は600円持って行くそうです。国際婦人年の1975年に熊本JA、当時の熊本農協婦人部の人が提言 して以来、ある程度改善されたものの脈々と続いている。経済的問題は財産分与の問題とか、家族協定というような形で 進めていく方がよくて、地域ぐるみのシステムの上に乗っているものは後から手を付ければいいのかと思ったりもいたしま すけれども、そこを生きる女性たちは大きな矛盾として目の前に見えているようですので、今の取組とか、あるいは新しい 情報があったら教えていただきたいと思います。
伊藤委員
滋賀県の一部の地域では共同作業で男性が休むと1万円、男性のかわりに女性が出ると5,000円払わなけ ればならない。つまり女性は半分の労働力という計算ですね。5,000円分の労働力という位置付けですね。600円どころで はない。
齋藤課長
私どもも確実に約束はできないんですが、地域で懇談会などを開催していますので、そういったときに話題 提供としてそういう実態をまた聞いてみたいとは思います。
伊藤委員
家族経営協定の話というのは私もすごくいいアイデアだと思います。むしろ商工自営業の世界にもこれを持 ち込みたいと思っています。いわゆる商工婦人という方々が同じような状況で、働いているにもかかわらず労働に見合っ た給料が払われていない。それをきちんと家族経営としてやっていくということが必要です。そういう意味でモデルになる 形だと思います。
 それと同時に、先ほどどこの地域が多いのかという話もされましたけれども、地域の特性の問題というのはかなりある と思います。今の樋口さんの話もそうなんですが、地域からの発想のときにモデル地区みたいなもので動くというような考 え方というのはないんでしょうか。滋賀県では男女共同参画のモデル地区を事業として進めています。割と農村部中心な んですけれども、いわゆる旧村で手を挙げてもらって、補助金10万円でその地域の女性あるいは男性を中心に地域の調 査をしたり、いろいろな形で集まりを持ったりして活性化を進めている。ある面、提案の仕方によっては本当に小さなお金 がすごい大きな効果を持つような事態もあるんじゃないかと思います。そういう農村地域からの男女共同参画、もちろん 既にいろいろなことをやっておられるのは分かっているんですけれども、そんなアイデアというのはないのかなと思いま す。
齋藤課長
男女共同参画推進事業というのを実施しておりまして、国が2分の1、県なり市町村なりが2分の1ですが、 今は市町村で男女共同参画を進めていこう、そのモデルを作っていこうということで、先ほどのような例えば地域レベル の参画の目標を作ったり、あるいは条例を作ったりというようなことを推進はしております。
伊藤委員
小さい規模でやって、それをむしろ実績として示していくようなやり方もあり得るんじゃないか。市町村レベル ではかなり規模的に大きくなってしまって、滋賀県などは同じ農村の町の中でここは5,000円取られるけれども、こちらは 男女で同じだとか、地域によってもかなり違ってきたりしている状況はあるみたいです。いわゆる古い習慣というのは地域 によって残っているところと残っていないところとあって、お祭りなどでも女性にお御輿を担がせないところはまだあります し、担ぎ手が少なくなったから男女でという形で変わりつつあるところもある。だから、かなり地域のでこぼこのある中でき めの細かい動きというのが必要なのかなという感じがします。
齋藤課長
先ほどの片方が5,000円だったり600円で、片方がただと、そういったものがおかしいと気が付くようなジェン ダーバイアスに気が付く目を養いましょうというようなことも推進していて、そういうことも大事だと思っています。
伊藤委員
男女共同参画というのは農村部は進めやすいところではないかと逆に思っています。自営業なので自分た ちで決められれば明日からでもやれるわけですね。大企業で就業規則を変えるわけではないですから。だから、そのへ んから日本社会が変わっていくというのはすごく大切じゃないかと思います。
岩男会長
もともと都会出身の方で農村に移り住んだという方がやはり新しい風を持ち込むというか、そういう事例を私 もいくつか伺ったような気がするんです。それから、昨今とにかく農業が好きだから農業をやりたいという、これもまた都会 の若い女性ですね。だから、こういうところからまた新しいブレイクスルーが出てくるんじゃないかなと期待しているんです けれども。
 それから、そろそろ最後にしたいと思いますけれども、ひとつ伺いたいのは最初のA3の紙の御説明の中で、起業を採 択する基準にほかの条件が同じだったら女性の位置付けが明確なものを優先するというお話をされたと思うんですね。こ の専門調査会でこれまでいろいろ補助事業、公契約における男女共同参画にどういうふうに取り組むかということを議論 してまいりましたけれども、この場合に既にこういうことで優先的に採択されたものが実際にあるかどうかということと、そ の際にやはり基準が明確でなければいけないということが明らかだと思うんですが、こういう女性の位置付けが明確であ るということがだれでもが納得をするような基準としてちゃんと機能しているのかどうか。そこらへんの問題点を伺いたい と思います。
齋藤課長
どの地区のどの施設がこれにのっとって採択されていますというお答えはちょっとできません。実はこういっ た補助事業の採択は本省は直接採択するのではなくてそれぞれの農政局に委ねております。それで、例えば九州農政 局とか、中四国農政局という中で事業の採択を決めます。したがって、農政局の中に補助事業の採択における男女共同 参画の配慮の方法について内部規定を作っておりまして、その中で例えば家族経営協定の締結状況とか、農協の正組 合員の割合とか、それぞれの局に応じて一つのメルクマール的な指標を用意して、ある局では点数化して判断をしてい る。ただ、その場合にはこの地域の生産、先ほどでしたら野菜の面積がこんなに伸びるとか、それ以外の要素も入れて、 その全体の判断要素の中の一つに入っているということであります。
伊藤委員
現状では男性からの反発はないですか。
齋藤課長
男女共同参画の推進は食料・農業・農村基本法にも言われているので、男性だから反対ということはない です。
松田委員
農林水産省の場合は、例えば厚生労働省などよりはその業界に対する働きかけは強いと思うんです。た だ、我々の感覚だと農林水産省自身はそれほど男女共同参画に乗っているようなところでないような気がするんです。こ の基本法ができて変わったのか、あるいはできた後もやりづらいようなところがあるのか、そのへんはどうなんですか。
齋藤課長
私が課長補佐をやっているころなどは、それこそ自分の働きに応じて報酬をとか給料をと言った途端に、家 族でみんなでやっているのだから報酬を出すのはおかしいというようなことで、農山漁村の女性の中長期ビジョンやその 前の国内行動計画の見直しのときにも報酬と入れましたけれども、そのときなどはやはり省内で反発がありました。
 ところが、今はそんなことを省内で言う方はいませんし、働きに応じた報酬というのは当然でしょうという形になってきて います。
伊藤委員
青年団とか、婦人会とかいわゆる旧来の農村部における既成の組織、そういうものとの関係はどんなふう にこの男女共同参画の政策の中で作っておられるのかということをお聞きしたいです。これは婦人会より青年団の方が、 重要だと思うんですが。
齋藤課長
青年団とイコールではないんですが、4Hクラブという農業青年クラブというのがございまして、どちらかとい うと農家の出身の結婚前の青年たちが入るところで、全国農業青年クラブとか各県にもございますが、そういった中で女 子青年が役員に加わろうということでブロック代表になったり、あるいはその役員に入るというようなことで大分進んできて いますが、全体は農家後継者の集団に近いものですから、大部分は男性になっています。
岩男会長
本当にありがとうございました。ますます頑張っていただきたいと思います。
 それでは次に「経済分野における女性のチャレンジ支援について」意見交換をしたいと思います。9月に中間まとめを 予定しておりますけれども、本日はこれまでの議論を踏まえて女性のチャレンジ支援の全体にわたり自由討議を行うとい うことにしたいと思っております。いつも時間が足りなくなるということでございますので、今日は自由討議をしたいと思って おります。
 それでは、まず事務局の方から御説明をお願いいたします。
村上課長
それでは、御説明をさせていただきます。
 まず、専門委員会においてなされましたこれまでのヒアリングや、委員の先生方からの指摘事項を踏まえまして議論 のために今までの論点を整理したいと思います。
 最初に基本的考え方として、「女性の元気は男性のゆとり、社会の活気へ」、チャレンジの意義、上へのチャレンジとと もに横へのチャレンジの両方向が必要で、再チャレンジを含みますということがございました。「生涯を通じた女性のチャ レンジ支援」という視点も必要、構造改革との関係、またダイバーシティー、これはIBMからのヒアリングの他に岩男先生 から日経連の報告もあるという御指摘をいただいています。これは多様な人材を生かすという戦略で、その推進策として の企業における女性の活用ということも入れてはどうか。このダイバーシティーに関しましては日経連ダイバーシティー ワークルール研究会が報告書を出しておりまして参考になるのではないか。これは日本型ダイバーシティーが異なる属 性を生かすことでビジネス環境の変化に迅速、柔軟に対応し、利益の拡大につなげるという経営戦略であり、機会均等法 を守らなければという「倫理」というよりは、むしろ優秀な人材を活用することが企業の競争力の源になるという「戦略」だ というのがいいのではないかというのが報告書にあります。
 次に、具体的検討内容として、まず「社会制度・慣行の見直し、意識改革」についてのご指摘がありました。ヒアリング では、データで現状を示すとすると、共働き世帯が増加し専業主婦世帯を逆転していること、それから女性のパートタイム 労働者の収入は年収90万から100万円台の占める割合が高く、100万円未満の人が全体の6割を占めていること、共働 き世帯数が増えている一方で現行の税制、社会保障制度は配偶者の就労に抑制的に機能しているというご説明があり ました。
 そのようなことで、阻害要因としましては税、社会保障制度、固定的役割分担の実態を反映している制度が問題。従来 の雇用システムの下で女性が能力を発揮しにくいこと。根強い男女の固定的役割分担意識があるのではないか。
 チャレンジ支援策の方向性としましては、女性のチャレンジの機会均等、機会増大をもたらすような構造改革が前提 である。働き方に中立的な税制、社会保障制度の構築、女性のライフステージにおいて長期的チャレンジを可能にするよ うな多様な働き方ができるようなチャレンジ支援策が重要。短時間正社員制度にも言及していますし、このチャレンジ支 援を具体的にアピールするための全国キャンペーンの展開はどうかだとか、男性の意識改革、それから女子学生、女子 生徒の職業指導、適職選択の支援というようなことも御指摘がありました。
 次に「意欲と能力のある女性が活躍できる職場づくり」であります。まず現状としまして、企業で女性の管理職の割合 が少ないというのが問題で、その理由として、勤続年数が短いということが指摘されることが多い。それから、入職者に占 めるパートタイム労働者の割合が30代女性では3分の2、40代女性では7割以上というのが現状です。
 それから、専門的、技術的職業従事者の女性割合が高い地域では、保健・医療、福祉などの人材サービスの割合か 高い。男性と女性で専門的、技術的職業従事者といっても中身がかなり違います。女性の新たな活動の分野としてNPO 等の市民活動においても活躍が見られます。特に保健・医療、福祉ですとか社会教育ですとか、そのような分野が目 立っています。
 それから家庭の状況なんですが、子育て時期にある30代の男性が最も就業時間が長い、35~39歳で週平均就労時 間が50時間というように残業がかなり長い。諸外国と比べても男性の育児、家事参加が日本は少なくて、最も長いカナ ダ、イギリスでは1時間半弱で日本は17分だというのが出ています。
 阻害要因としては、情報発信の不足、ロールモデルの不足、メンタリングの不足、男性中心の職場カルチャー、それか ら、女性個人の意識の問題もある。また、女性であるために結婚出産等で中途退職するということが、企業が女性をリス クの高い労働者として個人の能力や意欲をきちんと見てくれないという「統計的差別」があるんじゃないか。仕事と家庭の 両立しやすい働き方や環境整備が不十分ではないかというようなことが挙げられました。
 チャレンジ支援策の方向性としまして、ポジティブアクションの積極的な推進及び一層の効果のあるものとするための 手法を検討。それから、長期的なチャレンジを可能にする多様な働き方ができるようなチャレンジ支援策の検討が必要で ある。このため、正社員も含めた雇用システムの多元化などの御指摘がありました。
 また、再就職支援も重要でして、子育てなどで退職した女性が再チャレンジするための能力開発、職場体験など、チャ レンジ支援を一層充実する。それから、NPO法人などで将来就業機会の拡大余地の可能性の高い保健・医療、福祉分 野などで再チャレンジできる支援策を推進すべきではないか。
 さらに、女子学生、女子生徒のチャレンジ支援について。
 次に、チャレンジ支援のためのネットワーク等と環境整備、これはチャレンジのために必要な職業紹介、職業訓練など の情報をハローワーク、女性センターなどが連携し、効率的に提供していくため、ネットワークが必要じゃないかというよう なご指摘もありました。
 それから次に、社内にロールモデルが少ない組織が外部から女性を活用できるような女性のチャレンジをコーディ ネートする支援策、イメージとしては人材情報などが得られないかというようなことがあります。それから、その他女性の チャレンジ分野としてNPOなどにおける個人のニーズに応じた新しい就業の在り方を推奨、支援するというようなことがあ ります。
 「女性の起業に対する支援」については、阻害要因として経営資源の調達が難しい理由もあげられていますが、包括 的な女性の起業の統計が不十分なため結論づけられないというような御指摘もございました。
 それからチャレンジ支援策の方向性としては、起業のための専門的知識など総合的な情報提供機能を充実させること が必要であるとか、創業塾などや女性起業家に対する低利貸付制度など、各省の取組を一層推進するというようなこと が列挙されております。
 それから最後に、「経済分野における女性のチャレンジを促進する取組」として、地方自治体の条例におきまして雇用 の分野における取組を実効性のあるものにするために様々な検討がなされており、事業者から男女共同参画推進の報 告を求める等の条文を規定している例がいくつかございます。都道府県で13、市町村が4となっています。例えば東京 都、神奈川県などは、事業者から報告を求めています。
 それから、実効性が高いと思われる「公契約」及び「補助金の交付」において、男女共同参画推進の観点を一つの手 法として取り入れているものがある。これは前回のヒアリングでお聞きしたものです。それから先に述べた東京都や神奈 川県で特段公契約や、補助金と結び付けない形で情報を集める、報告を求めるということができるようなところがあるわ けですが、例えば東京都などはアンケート調査などを行い、啓発活動に活用するというような取組がなされていると聞い ております。
 阻害要因としましては、公契約については前回御説明しましたけれども、我が国の契約制度の原則の「公正性、経済 性」上、厳密に解釈すると男女共同参画の推進状況を入札参加資格の要件として求めることについては慎重な対応が必 要という見解もあります。また入札時や補助金交付において必要となる参画推進の評価の手法は確立されていないこと もあります。
 チャレンジ支援策の方向性としましては、公契約、補助金の交付において男女共同参画推進状況の報告を求めてい る地方自治体の先進的な女性のチャレンジ支援策について、これを好事例として紹介する。それから、好事例を参考に 女性のチャレンジ支援を促進するような効果的な手段としての活用方法を研究する。それから、これに関して客観的で透 明度の高い評価がなされるための男女共同参画の視点に立った評価の手法の検討を行うということが挙げられました。
 これに関連して御説明したいことがあります。公共工事で入札に参加しようとする建設業者につきましては、競争参加 資格審査があるわけですけれども、経営審査事項の審査項目において、総合評点が数式によって算出される中で、その 他の審査項目というところに労働福祉の状況が挙げられております。実際に実施されている例を見ますと、賃金不払いの 状況ですとか、建設業退職金共済に入っているかとか、そういうようなことも加味されている例がございます。
 あとは、こういう経営事項評価点数のほかに、主観的事項として工事成績など技術評価点数を合わせて、有資格者の 等級別登録(格付け)がなされている。個別工事の発注に際しては、一般競争方式の場合は有資格業者について、必要 な経営事項審査に基づく点数、施工実績等の資格要件を定めて実施するというようなことが書かれています。
 それから、公共工事の入札は、その目的物である社会資本等の整備を的確に行うことのできる施工能力を有する受 注者を確実に選定するために行われる必要があるということが、公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置 に関する指針にかかれています。
 それから、これはインターネットで公表されているものですが、宮城県の建設工事入札参加登録資格審査というのが あります。ここで主観的事項として県が定めているもので、それをみると県工事成績評点・優良工事表彰状況とともに、法 令の違反状況、建設業労働災害防止協会表彰状況、ISO取得状況が入っています。ISO9000、14000シリーズの取得 状況、これは品質管理と環境マネージメントで、環境の視点がここで入っております。こういう例はかなりあると聞いており ます。
 それから障害者雇用の状況、これは珍しい例ですが入ってきております。そうすると、例えば高齢者雇用はどうかだと か、あるいは男女雇用機会均等法に違反していないか、あるいはポジティブアクションを総合的に推進しているかといった 状況を評価することもありうるのではという議論に発展する余地もあるかもしれないと考えております。
 以上でございます。これに何か付け加えていただくなり、重点を置くところなりを御議論いただければありがたいと思い ます。
岩男会長
ありがとうございました。
 それで、どういうふうに皆様がお考えになるかなんですけれども、どういうトーンで私たちの意見を出していくかというこ とで、女性がさまざまな分野でチャレンジをすることが女性のみならず男性企業、社会全体にとってどうしても必要不可欠 なことであり、これを実現しないと日本が立ち行かなくなるというようなことの納得が得られないとなかなかうまく進まない んじゃないかという気がするんです。
住田委員
私もそう思います。やはり男女共同参画社会基本法のときにその点が明確になって、今のこういう会議がで きているわけですので、緊要な課題となっているという部分を反映していくべきだろうと思います。そして、その具体的な表 れとして今回経済分野についてどう考えるかということになったわけですから、男女共同参画社会の中でも最も遅れてい るものとして経済分野があるんだということを表から書くべきではないかと思います。
伊藤委員
前回、経済産業省の方が、ダボス会議の話をされていますね。国際的な競争力の問題の中で、女性の経済 活動への参加が弱いことが日本の弱点であるとされているということでした。国際的な観点からという視点はこの基本的 な認識の中に要らないでしょうか。
岩男会長
それは要ります。それは基本法のときから言ってきたことで、これは絶対に必要だと思います。
伊藤委員
経済分野でも、国際社会で、日本の弱点として女性の経済活動の参加が弱いという指摘がされているという ことは必要不可欠な課題じゃないかと思います。
岩男会長
それもどうしても強調する必要がありますね。
樋口委員
今おっしゃったことに続けて申し上げますと、ダボス会議はじめ、財界人はいろいろな国際会議の中で女性 の地位が問題になることを意識しておられるようでございます。ごく最近、厚生労働省の女性の活躍推進協議会の報告 書がまとまりましたね。あの会議で、ある社長さんが国際会議の席上、日本の女性の活躍の低さが日本経済の足を引っ 張っているんじゃないかと言われたとおっしゃいました。
伊藤委員
国際協力報告2001から2002にはどうも載っているようですね。まずそれは最低押さえていただきたいと思 います。
岩男会長
私がダボス会議で女性の話をしてくれと言われて行ったのがかなり前なんですね。あれは細川内閣のころ です。その時はダボスであったんですが、要するに海外の経営者は女性をいかに活躍させているか、あるいは日本の場 合はさせていないか、そういうことに当時から関心があったんです。そういう意味で本当に日本はものすごく遅れているん ですね。
坂東局長
いくつかのこの会議、この会議ということは言えると思うんですけれども、すべてを網羅するというのは不可 能だと思います。だから、例えばというのをいくつか挙げるだけでも十分じゃないかなと思います。
伊藤委員
ダボス会議は本当に重要ですよね。これは今や国際的に大きな会議として認識されていますから。
樋口委員
企業の管理職の女性比率というのは先進国で比べて日本は最低ですが、一方、途上国のアジアなど貧富 の格差、学校に行けるか行けないかの格差の方が大きいので、やはり女性管理職がずっと高くて、日本はかなり異例だと 言われました。先進国だけではなくて途上国も入れまして少し比較をしてほしい。
岩男会長
それが人間開発報告書で明らかで、要するにODAを供与している途上国などよりも日本がずっと下にな る。確かに途上国の場合はメイドさんがたくさんいたりとか、いろいろ条件が違うものですから。
寺尾委員
韓国と日本というのはそういう意味では例外的な存在だったんですが、今や韓国にも先を越されたかという 感じがしますね。
伊藤委員
韓国は今、急激に進んで、Mの谷が上がり始めているというふうなことを聞いておりますけれども。
寺尾委員
そうですね。この方面での日本の後進性は国際社会に出て行くと痛烈に感じますね。
伊藤委員
賃金格差も今100対60くらいまで韓国はいっていますけれども、まだ日本は全体で見ると50ぐらいですね。
住田委員
女性が働きにくい職場環境として男女の固定的役割分担意識と、それから男尊女卑思想があるというのは 不適切でしょうか。それで何が生じるかというと、セクハラ等の人権侵害、それから就職差別、賃金昇格差別、この間、最 高裁でようやく認められたとか、現実はこんなに厳しいんだという認識をする必要があると思います。
伊藤委員
男女間格差を数値化したら、それはすごいことになりますね。GEMでも稼働所得割合があるから比較的上 の方にいるんですけれども。
北村委員
私は今まで参加していないものですから、もしかしたらこれは既に解決済みのお話かもしれません。日本の 男性社会はとても疲れ果てているみたいなことが、最近はちょっと不況で状況が違うんですけれども言われている。その 一部に、では女性が男性型の働き方をすればいいのかみたいな話はいつもついて回ります。
 それで、どうでしょうか。少子化というキーワードが挙げられると思うんです。女性が男性と肩を並べて活動していくた めには勤続性、Mのボトムを上げるという意味なんですが、子どもを生み育てるということが阻害要因として機能してし まっている。しかし、実際に長い目で見れば、それは女性の産前産後育児休業等を整備すること、あるいはパパクォー ターみたいなものを入れることで女性が長く働き続けるということにつながって、それが結局は管理職みたいなところにつ ながる。そういった女性の子を生み、子育てに十全に配慮することによって結果的には女性の登用につながるんだという 点を考えていく必要があるのではないかという感想を持ちました。これだと、要するにスカートを履いたおじさんを作るので はないかというような印象が少しあるかなという気がしたんですが、いかがでしょうか。
岩男会長
その点については、まず最初に多様な働き方、多様性ということが一つのキーワードだろうと思うんです。そ して柔軟な働き方というようなことで、これは女性にも男性にもすべての人に当てはまることで、その結果として当然男性 のゆとりにもつながり、それが社会全体の活力にもなっていくという考え方だと思うんです。少子化の話あるいは子育てと 仕事との両立支援の話は、実は別の専門調査会で一応報告を出したものですから、いろいろなことはすべて密接に関 わっているんですが、基本的な考え方としてはそういうことは当然入ると思いますけれども、具体的なチャレンジ支援策と してこれとこれをやりましょうというようなことは、もうちょっとフォーカスしていくのではないかと思うんです。
 御自由にどこから御議論いただいてもよろしいんですけれども、水平的なチャレンジ、それから垂直的なチャレンジと 両方を当然考えるわけですが、少し具体的に例えば今までなかったこういうところにという具体例がいくつかあるとわかり やすいんじゃないかなという気もいたします。
住田委員
私の世代以上、戦後のベビーブーマーといいますのは高度経済成長期の中でかなり専業主婦になって、こ の高度経済成長を支えてきた。銃後の戦士として企業戦士を支えてきたというような認識で、その人たちが今、子育ても 終え、ある程度徐々に職場復帰して今やパート労働者の主力になってきている。彼女たちが更にこれからの高齢化社会 の中でパワーアップすることが日本の社会にとっても非常に大きな意味があるというような時代認識というのを検討する 必要があるのではないでしょうか。だからこそチャレンジ支援をその方々をターゲットにして特にしたいんだという思いがあ るということなんですけれども。あまり個別的になってバランスとして無理であれば結構なんですけれども。ただ、その 方々が変わらないと実は日本も変わらない。意識も働き方も行動も日本は変わらないのではないかと。かなり大きな層を 高齢化社会の中で占めるというふうな気がしていますので、彼女たちを応援するような部分を持たないと、この会議とか この専門調査会が大きな広がりを持たないのではないかという気がしているんです。一部の企業のエリートだけにしか目 がいっていないような言い方をされかねない気がするんです。私は本当はそういう方々ももちろんだけれども、再チャレン ジ予備軍ないしは今いらっしゃる不満を持っている方々も仲間に入っていただき一緒に向かっていくという雰囲気が欲しい なと思っております。
坂東局長
再チャレンジの中で例えば今、新しい働き方などをいくつか紹介していますね。NPOとか、そういったような ところはまさしくその世代が一番のターゲットになるんじゃないかと思いますけれども、惜しいことにそれが周辺的な労働と いいますか、十分な評価が得られていないという、そこが一番の課題なんですが、どうそれを乗り越えるのかです。
住田委員
その方々は1つはNPO等に行った人と、もう一つはパートです。その中には、実質的に正社員よりも働きな がら常にパートのおばさんで、しかも就労抑制をものすごくしている方々なのではないかと。パートのところでは待遇改善 とか、新しい働き方についての発展型を見せることが望まれます。また、NPOについても、パートなどで知り得て蓄積した 実力、能力を持ち込む。自分のベンチャーとしての企業に持ち込む。そういうふうな方向で勇気付けていただけるとありが たいなと思います。
岩男会長
リチャレンジを強調するというのはすごく大事だと思うし、是非そういうふうにしたいと思いますけれども、そ のリチャレンジのときに私が大切だと思うのは、職場に戻るだけではなくて学ぶということも含める。OECDでも随分前に 報告を出した中に、イン・アンド・アウト・スルーアウト・ライフというように書いているんです。要するに、一生を通じていろ いろなものに入ったり出たりできるという、それは学びであったり、働きであったりいろいろなんですけれども、イン・アンド・ アウトが自由にできる。そういう形でのいろいろなリチャレンジの道ですね。働くということひとつだけではない、そういう形 で入れることができればと思います。
 それからもう一つは、企業にとっても、これはやはり進めた方がいいと思ってもらわないといけない。今、日本は為替の 問題もあるんですが、世界の中で一番給料が高くなっているわけですね。それで、企業がいろいろ困っているという部分 もあって、パートはすさまじくたたかれている。ですから、私はそこがまさに構造改革の部分だと思うんですけれども、所得 配分をもう少し考え直すということではないか、それは男性もすべてを含めての話なんです。
 だから、パートと、普通に正社員として働いている人の賃金をもう少し格差を減らしていくというようにする。女性を入れ ることによって企業の中でも賃金体系を変えることができるようになるというか、それが迫られるということになるのか。結 果として企業としてもプラスになるというふうにならないかなと思っているんですけれども。
住田委員
要するにベビーブーマーの中高年の管理職の非常に高報酬を得ている方々が念頭にありまして、彼らの 待遇を下げるということは、今の日本の判例、労働法制からいきますと、ものすごく困難になっています。高止まりしなが ら、一方リストラになったらゼロになるという、その落差が激し過ぎまして、そこが今の日本の経済の賃金体系のソフトラン ディングができない一つの要因なんです。
 しかも、これは、若い方の就職を抑制している、かつリストラ後には今度は低劣なパート労働者しか生み出していなく て、その方々の労働過重問題というのもある。全部が今、悪循環になってしまっているわけなんですね。
岩男会長
そこは慎重に言わないといけないとは思いますけれども。
樋口委員
どういう内容にすればいいと明言できなくて恐縮ですが、チャレンジと言うからにはもっと目を見張るようなこ とは提言できないか、こんなものかなという感じがいたします。
 これはある意味では非常に真っ当な内容で、これが今までできていなかったということですから、社会全体のまさにリ チャレンジとして繰り返していかなければと思います。それから、日本の地域全体の地殻変動のきっかけになりそうなの は、特に介護保険導入以降のNPOの動きですね。こういうところから好事例を取り上げながら、だからこの税制も変えて くださいよと。NPO法もアメリカ並みに近い立法にしてほしいなど、もっとNPOを育てる提言はできるんじゃないかと思いま す。
 それと、今までの日本の女性の功績も載せる載せないは別として整理しておいてほしいと思うんです。例えば、私は向 井千秋さんのような宇宙飛行士の女性を出している国は先進国の中でまだアメリカと日本とロシアでしたか。そう多くはあ りません。それは恐らく宇宙開発に日本の経済的後押しがあったものとは思われるけれども、それにふさわしい知力、体 力、気力を持った女性がいなければ乗れなかったわけです。
 例えばノーベル賞クラスと言われた米沢さんとか、諸外国に引けを取らない女性がいます。アメリカはある時期までは 日本よりずっと医者も弁護士も少なかったわけで、ああいうふうに変わったのはアファーマティブ・アクションの力も大き かったと思いますけれども、日本の中にも結構いろいろな分野でチャレンジ女性がいるんだということも少し発掘しておい てほしいなと思います。
住田委員
日本の女性の才能が今、世界においても非常に注目されています。特に、スポーツとか芸術の分野で目覚 ましい活躍をしておられる方がいます。この前のチャイコフスキーコンクールのピアノ部門の優勝は世界的に言っても女性は初めてですね。バイオリンは前にいらっしゃいましたけれども、そういうこととか、ヤワラちゃんみたいな方がずっとい らっしゃることとか、マラソンもいらっしゃるとか、そういう意味では日本の女性の能力はほかの国以上に高いのに企業な ど他の分野ではさほど活躍をしていない。そういうことがわかりやすいんじゃないかなという気がするんですけれども。
坂東局長
要するに個人の評価、個人の能力や業績を明確に出すような分野では女性は活躍しているんだけれども、 経済だとか組織だとか団体で行動するようなところで女性の活躍が目立たないのはなぜだろうかと。
樋口委員
「組織がつぶす日本の女」なんですね。女性が活躍できるよう組織のあり方を見直す必要があります。
岩男会長
本当にそうです。
住田委員
ですから、その典型的な例としても非常にすばらしい方がメダリストとして出ているとかですね。
伊藤委員
司法試験の合格者とか、お医者さんの国家試験の合格者というのは完全に右肩上がりになっています。国 家試験とか客観的な試験に関しては伸びているのに、なぜ管理職はこの数字なのかというのは大変わかりやすいです ね。
岩男会長
これまで努力をしてきてうまくいかなかった。それをほんの少し推し進めるだけの小さな支援策では、チャレ ンジとまでは言えなくなってしまうんですね。だから、やはり今までないことをいくつか、知恵を絞って目玉をつくりたいと考 えています。
 日経連の報告書というのは私はまだ内容は読んでいないんですけれども、例えばIBMなどはダイバーシティ担当重 役を世界じゅうに置いているというお話だったわけです。そこで、日本経済団体連合会の加盟の企業では必ずダイバーシ ティ担当役員を入れてほしいとか、要するに人が増えるわけでも何でもないんですけれども、意識の話ですから、そして そういう人たちに集まってもらって経験談を話してもらうとかいろいろできるかもしれないですが、そんなようなこともひとつ 考えられるかもしれないですね。
伊藤委員
前からダイバーシティという言葉の定義がどうなのかなと思っていたんですが、日経連の資料を見ると、能 力の多様性、人材の多様性だけでなくて働き方の多様性というのも書いてあるんです。ダイバーシティの中に多様な人材 を生かすだけではなくて働き方の多様性もちゃんと位置付けた方がいいんじゃないかなと思います。均等待遇ができてい ないから残念ながら日本の場合はうまくいきませんけれども、将来的な方向としては短時間働いてある程度稼げるという 事情に応じた多様な働き方も戦略的にはむしろ必要だと日経連も言っているわけです。働き方の問題もダイバーシティの 中に位置付けた方が私がいいんじゃないか。それは先ほどの北村委員のお話とも重なってくるんじゃないかと思います。
岩男会長
これを私が知りましたのは少子化の会議で御報告があったからで、そこではそういう多様な働き方というよ うな観点からお話があったんです。
伊藤委員
多様性というのは人材の多様性だけではない。
住田委員
今、岩男会長がおっしゃっていました女性の再教育のお話なんですけれども、私はどこかで意見を申し上げ たんですが、アメリカでリストラに遭った後、また大学院に入って別の資格を持って再就職して活躍していらっしゃる女性 などを見ますと、アメリカの再教育にはすぐ職業、就職に直結するような資格がかなりあります。日本の教育も女性に対 しては、職業に直結するような形での訓練機関としての機能を付与したものをもっと広範に広げていくべきではないか。そ の場合には奨学金だとか、支援システムだとかの検討が必要ではないでしょうか。
伊藤委員
例えばポリテクニックみたいな形のものが、ニュージーランドとかオーストラリアなどは結構ありますね。つ まり、専業主婦の方が職業訓練を受けて、その上で次に正社員として再就職していくコースが可能な仕組みを予算措置も 含めて考えていくということが必要です。高齢者の再就職の問題や失業者の再就職の問題も含めて、政策的に多様な時 代のニーズに合わせた職業訓練の場を作っていく、特に女性というのはその中で大きなターゲットとして考えるということ が必要じゃないかと思います。
 もう一つは、学校教育の中での職業教育、学校教育の中での職業をめぐるエンパワーメント教育みたいなものもすご く必要なんじゃないか。前にもちょっと申し上げましたけれども、何で女性が社会参画しないかというと、ジェンダーの問題 がある。つまり、小さい時から一歩引いてというトレーニングを受けてしまっているところがある。その結果、自分の能力を 低く見積もってしまっている女性がまだまだたくさんおられる。自分の能力を再発見して能力を発揮できるようなエンパ ワーメント教育みたいなものを職業教育として学校教育の中に持ち込むようなことも長期的に見たら考える必要があるん じゃないかと思うんです。
岩男会長
最後の点ですけれども、自分の能力を低く評価するというようなことももちろん事実としてあると思うんです が、同時に女子学生にどういう職業に就きたいのかと言うと、自分の能力が生かせる職場に就きたいと言うわけです。
 ところが、男子学生に同じ質問をしますと、能力が伸ばせるところに行きたいと言うわけです。私は、これが違うと思っ たんです。
 例えばリチャレンジしたい子育て後の人たちに聞いても、何か能力を生かしたいと言うけれども、では能力は何かと聞く とそれははっきりしないわけです。
坂東局長
日本の職場は男の子には能力を育てようとしていろいろ注ぎ込んで、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで養成 するんですけれども、女性に対してはそういう投資をしてくれないんですね。
伊藤委員
それについて、社会心理学者のデータでいくつか研究があるんですけれども、大学卒業直前の男女の学生 の職業意欲を聞くと、女性の方が高い。5年後ぐらいに追跡調査をすると、女性は落ちているけれども男性はちょっと上 がっている。それはやはりさっきおっしゃられた「組織がつぶす女性の能力」ということだろうと思うんです。そのへんのとこ ろも認識してもらうということは必要だろうと思います。
岩男会長
それから、社会人入学というのを大学は進めていますが、例えば夜学をもっと増やすとか、もうちょっとアメ リカのコミュニティカレッジみたいな形で夜に学校に行って資格が取れるようにということもチャレンジを非常に後押しする ことができると思うんですけれども。
北村委員
最近、必要がありまして調べたんですが、特に女子大が危機感を持っているということで、アメリカの例を調 べてみましたら70年代あたりに3分の1ぐらいに減っているんです。そのときのことを見ていると、女子大はみんな結局社 会人教育あるいは一般の大学生に対する非常にアグレッシブな社会に出て行くためのトレーニング機関として生き延び ているみたいなところがありまして、そういう情報が日本の大学にうまく伝われば、大学のモチベーションを変えることもで きるのではないかという気がするんです。
樋口委員
大学としてはそんなような戦略を考えているところがありますよね。地域貢献して職業教育をしていくことと か。
寺尾委員
文部科学省に女性の再チャレンジのプログラムを考えるべきということを言ってはどうでしょうか。大学が自 分でお考えになるのもいいとは思いますけれども。
 あと、私などは発想としては、やはりメインストリーミングの発想に立って発信していくことが大切だと思います。女性の ことだけ考えてやっているのではなくて日本全体のことを考えてやっているんだよという言い方のほうが良いと思います。 今まさに日本が全体として問われている構造改革との関係とかダイバーシティとか、そういう問題との関係づけですね。 今までは組織が女性は生かさない方向で少なくともそれなりに機能してきたと思っているわけですけれども、やはり時代 は変わったんだということを積極的に言っていく。
 日本の社会でダイバーシティというのは、言うはやすし行うは非常に難しということを経営者の方に十分認識してもらう 必要があるんですね。つまり、ホワイトカラーもブルーカラーも転職ができないわけですから、会社の中でも均質化、社会 自身が均質化の方向で効率性を追及してやってきてそれなりの成功につながってきたという思い出がまだ強烈に残って いますが、今やこうしたシステムが全体として壁にぶつかっていることをきちんと指摘すべきです。このダイバーシティの 話もさっきのダボス会議の話も取り入れて、多様な国民を持っている国にこのままではかなわない時代になったこと、だ からこそ女性の問題をもっと取り入れていかないと、このままではとても生き残れないことを指摘するべきだと思うのです が。
樋口委員
これからは外国人労働力の受入れ問題とかいろいろなことがあると思います。これまで、日本は労働力を内 部で育てる。とくに、男の幹部要員を内部で育てる。今まで男だって転職しにくかったわけです。そういう構造を変えないと まさにダイバーシティにはならないわけで、そこを突破していくのが女性であり、それは逆に男の人の転職も容易にしてい く。理屈では分かるのですけれども、経営者や男性が納得できるかという心配が1つです。外国人を別とすれば、日本の ダイバーシティ資源は女しかないわけです。それは強調してよろしいんじゃないでしょうか。
 さっきの大学の問題で言えば、自治大学校副校長をなさった加藤富子さんは、官僚を退職して最初にしたことが博士 号を取ることで、私大教授として働きつづけられました。大学院にこのごろ社会人の入学が多いんです。なかなか常勤に は今はなりにくいんですけれども、家庭にいた人ならではの研究テーマを立てて非常勤講師になっている人はかなりいま す。そういうような例もたまにタウン誌をにぎわすぐらいなんですけれども、もう少しまとまれば考えようによっては日本の 学問のありようが変わっていくということも考えられますし。
寺尾委員
それに、法律以外の方が集まる研究会に行ってしみじみ感じたんですが、日本の学問が欧米のものを見て それを移植してきたものですから、社会からのフィードバックを受けるという体制に教師自身がなっていなかったんです ね。その結果、日本の学問がどこでも陳腐化して役に立たなくなっているんです。だから、そういう意味で学問なり、知的 なソフトの部分が変わっていかないと、日本は変われないというところに大学自身もきている感じがします。女性たちの問 題にしても、生活体験から得たものを、つまり女性たち自身がおかしいと思っているいろいろなことを発言していき、それを 基礎に何か物事を変えていけるというボトムアップ的な動きが出てこないと、活性化はしないという感じがすごくあります ね。
 しかし、そのへんは実際上、決定権を持っている人たちがどの程度そういう危機感を持っているかということだと思いま すが。
樋口委員
是非予算措置を付けて、そういう社会人入学のリチャレンジのための奨学金を。そんな大した金額じゃなくて いいんです。モデル的でですね。
岩男会長
国民年金は40年でフルペンションになるんですね。いくらでもリチャレンジ、いろいろなエントリーがあれば、 女性が例えば子育ての間、イン・アンド・アウトでアウトになってもいいと思っているんです。そして、私は例えば60歳で定 年になるところを、その休んだ分、女性は定年を延ばすことができるというふうにすれば40年のフルペンションがもらえる んですね。そうすると、社会保障の方でも支え手が増えますから大変結構なことなんです。だから、一つの例としてチャレ ンジ支援の中に少し入れていただければ。
伊藤委員
それは女性だけではなくて男女ともとやっておけばいいんじゃないですか。
岩男会長
そうですね。男でもいいんです。アウトになっている間定年を延ばしてよければ多様なライフコースが考えら れます。
寺尾委員
今まで私たちの言い方は、女性を職場で平等に扱わないことはけしからん、という正論を言って来ました。
 正論は正論で必要なことですが、これは考えてみるとそれなりに経済界には経済界なりの理由があったわけです。思 想の方も含めて、それを変えるのは彼らにとってのチャレンジですよね。だから、いかにそれがチャレンジングなことかと いうことは我々も十分わかっているよという理解を示して、それでも乗り越えなきゃいけないんだよという方が、それはチャ レンジだということでやる気が出る気がするんですが、いかがでしょうか。
 そういう意味で少しプレゼンテーションの仕方を変えてみるのはいかがでしょう。こういう仕組みを支えてきた構造があ るわけですね。特に経済界で、つまり組織的ですが、それが何かというのを価値判断抜きに出して、しかしそれが今チャレ ンジを迫られている。それは女性の権利が云々というよりは構造改革とかグローバライゼーションとか、そちらの方なわ けで、そういうものを出した方が経済界の人たちに理解されやすいと思うんです。そうすると、彼らにとってもどこを変えな ければいけないかがもう少し見えてきますね。
 従来終身雇用や年功序列賃金とかいろいろな慣行が発展し、それらにはそれなりに過去においては制度的に合理性 があったわけですよね。状況が変わったとはいえ、それを変えることは彼らにとってはチャレンジなわけです。
岩男会長
一緒に手を携えてチャレンジしていきましょうと。
樋口委員
一緒にチャレンジしようと。
伊藤委員
経済界も日本経済連も急激にこの問題に関しては変わり始めていて、むしろ大学の先生よりははるかにフ レキシブルな対応を始めておられるのは事実ですね。
岩男会長
それでは、今日は大変お忙しい中を御議論をいただきましてありがとうございました。本日の会合はおしまい にしたいと思います。

(以上)