男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年4月23日(火) 10:30~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 経済分野における女性のチャレンジ支援について 
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
経済産業省資料 [PDF形式:18KB] 別ウインドウで開きます
資料2
厚生労働省資料
資料3
第7回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
ただいまから、男女共同参画会議基本問題専門調査会の第10回の会 合を開催させていただきます。大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうご ざいます。
 それでは、お手元の議事次第に従いまして、本日の議事を進めてまいります。
 本日は、女性のチャレンジ支援関連施策の取組などについて経済産業省と厚生労 働省からお話を伺い、これをもとに検討を行う予定にしております。
 それでは、まず、経済産業省大臣官房政策企画室の白石企画主任から、経済産 業省の施策について、御説明をお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたし ます。
白石企画主任
ただいま御紹介いただきました経済産業省大臣官房政策企画室の 白石でございます。よろしくお願いいたします。
 今年度経済産業省において取り組んでおります男女共同参画関連の施策の概要 を御説明申し上げますと、まず「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確 保」という柱建ての下、女性・高齢者の能力発揮の支援のための調査研究や、創業塾 による能力開発支援などを行っています。
 この創業塾による能力開発支援については、関係各方面から多大な関心を寄せて いただきまして、また実績も徐々に上がりつつあるところであります。この創業塾、す なわちこれから創業しようという方々に必要な会計等の知見、マーケティング等々の知 見を得ていただくための塾を開設するということでございますけれども、13年度につき ましては商工会議所等に対する委託という形で実施をさせていただいておりました。 今年度からは定額補助という形で切り替えて受益者負担を取り入れているということ にしてございます。ただでやるということになるとなかなか熱意の面で問題があり、ま た、定員等の問題もございますので、受益者負担を導入することによって、さらに効果 的にこの施策を展開していきたいということでございます。
 それから、多様な就業ニーズを踏まえた就業環境の整備という点につきましては、 女性・高齢者起業家支援資金やSOHO・テレワーク支援等の財政投融資による支援 を行っているところでございます。
 中でも女性・高齢者起業家支援資金につきましては、今、政府系金融機関ですと、 通常金利が、1.65%のところ、女性起業家や高齢者の起業家につきましては、特利 (1)と言われます現状では1.4%の軽減された金利でお貸しをすることになってござい ます。さらに、その事業に新規性がある場合につきましては特利(3)、0.9%の金利で お貸しをするということになってございます。貸付限度額につきましては、中小企業金 融公庫で7億2,000万円、国民生活金融公庫で7,200万円となってございます。
 こちらの方をそれぞれ合わせますと、11年4月~14年2月までで件数で7,352件、 金額で476億円の御利用をいただいているところでございます。
 2番目の柱として「男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援」という柱建て のもとにコミュニティ施設活用商店街活性化事業等を行ってございます。
 コミュニティ施設活用商店街活性化事業と申しますのは、地域にまいりますと商店 街がなかなか苦戦をしておるという中で、この空き店舗を利用して、例えば保育施設を つくろうといった方々がいた場合に、改装費や家賃等についての補助を行う制度でご ざいます。これによりまして、地域に密着した、商店街の町中に近いところで保育施設 等を充実することが容易になるわけでございまして、これによって子育てのために就業 できないといったようなことの弊害が軽減されるであろうということを期待しているもの でございます。
 平成14年度の経済産業省男女共同参画推進関連施策全体を申しますと、これか ら起業したい、あるいは少し変わったところで、SOHO・テレワークといった在宅で仕事 をしたいといったような女性の方々に対する支援策が中心となってございます。
 経済産業省におきましては、もちろんそういった支援も引き続き行っていきたいとは 思うわけでございますけれども、女性の方々が実際に就業している状況を考えます と、自分で事業を興して成功したメインストリームかと申しますと実際にはなかなかそう ではないだろうと。実際には株式会社○○のいわゆるOLさんとして入っている方とか 総合職として入られて、その中で頑張っていこうという方が実は多いのではないかとい う問題意識を持ってございます。
 こういった観点を踏まえまして、もう一つの資料の方でございますけれども、経済産 業省では男女共同参画研究会というものを立ち上げまして、さらに広い視点から、男 女共同参画の推進を図るために何が必要かということの検討を開始したところでござ います。
 4月3日に開催されました第1回研究会では、当省の松あきら大臣政務官も御出 席いただきまして、共に議論がなされたところでございます。テーマは、「企業組織に おける男女共同参画の在り方」について議論をしていただきました。
 最初に議論のポイントを御紹介申し上げますと、企業組織においては、女性に対す る「支援」というものを考えよりも、男女の区別なく能力に応じて活用するシステムを構 築していくことが企業のパフォーマンスからも男女共同参画の推進からも実は重要な 課題ではないか、という視点が提示をされてございます。
 この点につきまして、少し詳細に御説明をしたいと思います。企業組織における女性の立場は、それ自体独立の問題ではない、というとらえ方が必要ではないかという 議論の提起がされております。すなわち、企業組織を概観いたしますと、学歴制度で すとか年功序列等旧来の日本型システムと言われるものに起因する組織の問題を解 決し、組織の安定を図るためには、君よりもっと大変な人がいるのだよ、というような階 層をつくることによって組織のバランスを図ろうとするというガバナンスが働いていた可 能性があると。
 そういった中で、女性が、こういう立場に甘んじてくれという形での組織の形態とい うものをとらえている。これがそもそも問題ではないのかという問題提起でございます。
 したがって、企業組織による男女共同参画問題というのは、そういった環境にいる 女性に対して、いくら支援をしても、例えばあなたの能力開発のために、これだけの タックスマネー使いましょうと言ってみても、この根本的な企業の組織構造が変わらな い限り、解決というものが見出せないのではないかということが議論されたわけでござ います。
 逆に、女性を支援するという名目において、例えば政府が企業に対して、女性社員 に対しては、研修の機会を設けなさいといったことを規制的に数値目標置いてやるとい うことになると、企業の立場から考えますと、女性を採用して用いようとするときのコス トが高くなるということになりますから、逆に女性の足を引っ張る可能性があるのでは ないかということが議論されてございます。
 要は企業において個人の能力を基本として人材を男女の区別なく登用していくとい うことが徹底されておる企業は現に存在します。こういった企業において、逆に政府が 女性社員に対して何らかの特別扱いをしなさいという規制を課すことになりますと、能 力で採れば女性なのに、その規制があるがゆえに、逆に女性を採用するのでコストが かかってしまうと。そうするとコストパフォーマンスからいって、純粋な能力でいうと劣位 にあった男性の方を用いた方が企業にとっては得だということが起こりうるわけです。
 ここで言う問題というのは、企業組織における男女共同参画という問題の解決は、 男女関係なくFAIRにOPPORTUNITY(機会)を与えられるようにして、その上で、目標設定や 人事評価、それに基づくPROMOTION(昇進)がきちんと透明性をもって行われることに よって企業組織における男女共同参画の問題は根本的に解決されるのではないかと いう議論でございます。
 企業とパフォーマンスという観点からも、実はこのようなテーマは非常に重要だと認 識しておりまして、一番下に参考で、世界経済フォーラム、以前、ダボス会議と言われ ておりましたけれども、ことしはニューヨークで開催されましたが、こちらの「国際競争 力報告2001~2002年」、最近新聞報道もあったので御存じの方も多いと思いますが、 その中で、日本の弱点として指摘された中の3つのうちの1つが、女性の経済活動へ の参加が弱いと。これは75カ国・地域中69位であるというようなことになっておりまし て、日本の競争力の源泉として、女性が進出できていないということも1つ大きなファク ターとして国際的にも認知されるに至っておるという状況でございます。
 このように申し上げますと、女性にはそうは言っても、出産や育児等があって、キャ リアを形成していくといってもなかなか難しい問題があるという指摘がありますが、実 は問題意識を持っている先進的な企業におきましては、できる女性であれば、出産の 後も育児の後もぜひ帰ってきてほしいと。1週間に二度でも三度でもあきらめずに戻っ てきてくれと。人材をつなぎとめようとするというのが現実の姿でございます。2年のブ ランクあっても戻って来てほしい。そのためにはコストをかけようではないかという企業 が出てきているということがここでの議論でございます。
 したがって、企業組織における男女共同参画の問題は、男女を問わない企業にお ける人材活用の一般論のコンテクストで理解し、解決を図ることが適当ではないかとい うのが第1回目の議論の結論的な部分でございます。
 現状では、女性は企業組織の中でSTEP UPしていく際、なかなか伝統的にそういっ た女性が多くなかったということも一方現実でございますので、いわゆるROLE MODELが なかなか企業の中で見出しがたいという問題点はあります。これにつきましては、今 後は外資系やベンチャー系の企業等々を中心に、様々な問題がたくさん出てくるよう なことによって解決されていくことを期待したいということでございます。
 もう一つは、意識の問題で、男性は何歳になろうと働くものであるという、ほかの選 択肢が実は与えられていない。それに対して女性は、30代後半になると、そのキャリ アを捨てていって、ほかの生き方をしようという選択肢が自分にあるのだという意識が どこかに働いている。このことが実は男女共同参画が企業組織において進まない、も う一つの根本的な要因になっているのではないか。
 この点につきましては、生まれたときから、男性も女性も働いて食べていくのは当 たり前なんですよという一部の欧米型の教育を入れることによって意識改革を進めて いくというのが唯一の解決方法ではないかというような議論でございました。
 なお、本研究会につきましては、大体毎月1回をめどに開催をして、様々な問題に ついて検討していきたいと思っております。また、必要に応じまして、その状況につき ましては、このような形以外でも情報を提供させていただきたいと思いますので、よろ しくお願いしたいと思います。
 私の方からは以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に御質問、コメント 等がおありでしたら、御発言をいただきたいと思います。私、伺ってよろしいですか。
 先ほどの予算、施策の御説明があったのですけれども、13年度の予算で行われた 創業塾で、実際に起業した人はどのくらいの件数があって、大体どういうビジネスが多 かったのか。
白石企画主任
昨年は、創業塾を受けて、すぐさま創業するという形の方はまだ少 のうございますので、準備期間、資金繰りをされている方等々もございまして、にわか に定量的に何人ということはございません。我々が聞いている中で幾つか例示的に申 し上げますと、一つは絹織物等のコンピュータプリントの前処理技術を開発して事業化 した方が京都にいらっしゃいます。これは京友禅の伝統技術を活かしながら、それをカ ラープリントしていことを開発して事業化に成功されておるということでございます。今 は絹織物に対するカラープリントなのですが、さらに安価なポリエステル等に京友禅の 伝統技術を活かしたカラープリントなどに挑戦をしたいということです。
 あと、バスの中で、車いすを固定する装置。バスに乗るとき、車いすをリフトアップす とか、そういう機械はあるのですが、乗った後、これが安定しないと危ないので、その 固定する装置の製品を開発して事業化にされたという方が熊本県にいらっしゃいま す。
 このように、幾つか具体的な事例が我々のところにも聞こえてきてございますし、こ れからますます増えていくだろうということを期待しておるわけでございます。
岩男会長
もう一つ、女性・高齢者起業家支援資金による非常に有利な低率の支 援ですけれども、新規性がある場合に0.9%という大変低い利率でお貸しになるという ことなのですけれども、新規性がある、なしの判断というのはどういう基準で判断をさ れるのですか。
白石企画主任
これは運用上の問題でございますけれども、かなりおおらかに認め させていただいているふうに聞いてございます。
 といいますのも、国の政策ニーズに合って、かつ彼らもやりたいというところには資 金を提供するというのがそもそも政策金融の任務でございますので、そこは一般の都 市銀行とは違いまして、そこはできる限りおおらかに運用させていただくという方針で やっておるというふうに聞き及んでおります。
岩男会長
どうぞ、古橋委員、それから山口委員。
古橋委員
先ほどの研究会ですか、これは毎月1回開かれて、いつかは意見をまと められるという考え方があるのかどうかという1点です。
 2点目は意見になるかもしれませんけれども、「女性は男性と違って働かなくてもい いという選択が与えられているからである」という認識は、これからの日本の経済成長 が成熟化し、かつ国際競争が厳しくなっていく中において、女性は働かなくてもいいと いう選択は中長期的には与えられなくなるのではないか、中長期的に。我々が考えて いる男女共同参画というのはもっと中長期的に考えているので、この考え方はどうか なという意見。
 第2点目の意見は、ほとんどの女性は日本の企業において働くが、そこにおいて は、今までずっといろんな意味において問題点があったと思います。したがって、ある 意味におけるポジティブ・アクション的なもので同じスタートラインに並べば、今までそう ではなかった人たち、全然FAIR OPPORTUNITYも与えられていなくて、能力があっても下積 みにいる人たちをある程度、男性と同じスタートラインにのせるという問題、それが日本 の企業における大きな問題だと思うのですけれども、その点についての議論はこれか らなされるのでしょうか。
白石企画主任
まず第1点目、この研究会の取りまとめについては、特に期限を 切っていついつまでに報告書を取りまとめるといったようなことはしないという方針でご ざいます。必要があれば緊急提言なりの形で、必要に応じて中間的な取りまとめを出 していくということは想定されます。
 それから、2点目でございますけれども、これは、事実認識として、現状において は、そういった認識を持っていらっしゃる女性の方が多いのではないかと、中長期的に はこういった問題を解決していかないと、なかなか社会全体として男女共同参画が進 むということにならないのではないかという問題提起の出発点としての現状認識でござ います。当然ながら、今後とも女性が男性と違って働かなくてもいいという選択肢が与 えられるべきであるとか、与えられるであろうとか、そういったことを申し上げているもの ではございません。
 それから、第3点目でございますけれども、ここは議論が我々の研究会でもあった わけでございますが、結論的に申し上げますと、日本の古い企業のそういった構造問 題を前提としてしまうような施策は問題の根本的な解決をかえって遅らせるのではな いかという考え方の方が有力であったように思われます。すなわち今の日本企業がこ うだと、こういう構造になって、女性は下にいて、下積みというか、全体の構造の中で 不幸な状況に置かれて、30歳を超えて、何歳かになると、そろそろやめないのかなと いう重圧が高まっていくような、そういう古い体質の企業を前提とした施策を打ってしま うと、かえってこの構造を固定化してしまう可能性があるのではないか。むしろ、その 企業自体が今後生き残ろうとすれば、当然ながら女性も含めて、人材の能力を十分に 活用していかざるを得ない。そういった形に持っていって、企業がいわばそういった構 造に甘んじられないような経済構造の中に置いてやる。そのことによって企業も、根本 的に個人の能力に即した人材活用を進めるような経済構造をつくり上げていくことこそ が実は問題の解決の近道ではないのか。
 実はそういった議論の中で御紹介ありましたけれども、『フォーブス』などいろんな 雑誌で世界企業ランキングというものが出ます。それと女性の登用率の相関関係がど うなっているかというのを見ると、女性を活用しないような企業はグローバルゼーション で生き残れませんよというメッセージがほぼ明らかになりつつあるのではないか。その 証拠が、先ほど御紹介申し上げました世界経済フォーラムの報告書にも書かれてあり ますように、女性もちゃんと活用できないような経済構造というのはだめなんですよと いうのはだんだん認識として広まりつつあるのではないか。我々としては、この認識を どんどん広めていく。
 かつ企業がそういったことをしないと生き残れないですよという競争的な環境をつ くっていくということによって、問題の根本的な解決を目指す方がむしろ近道ではない かという議論が、第1回目の議論では有力でありました。
古橋委員
原則は、今おっしゃったのが正しいと思うんです。そういう方向で全ての 人が平等のFAIR OPPORTUNITY、男女ともに能力を評価してやって昇進させていく。しか し、何か一部現状を見たときに、救済的なものをある程度考えないと、短期的にはな かなかうまくいかないのではないかと思うんですけれども、そこのところは哲学論争に なるのかもしれません。あるいは同じことを重点の置き方の差で言っているのかもしれ ません。
山口委員
創業塾における能力開発支援のところですが、商工連だとか商工会議 所がおやりになっている場合に、企業規模を想定すると思いますが、これは中小企業 ですか。大体どのくらいの規模を考えた能力開発なのかということが第1点。
 第2点は、この研究会のいろいろな議論のポイントが出ておりますが、女性を用い るコストが高いということですが、この場合の女性を用いるコストというのは、企業別に 女性のコストというのは一体どのくらいなのか、そういう比較したような根拠だとかそう いうものがあるのかどうか。どうも女性の問題を言われるときに、コストが高いから採算 に合わないということがよく言われるのですが、そうなるならば、根拠は示す必要があ るのではないかということがあります。
 ノルウェーに行きましたときに、公務員では女性がとても進出している、パーセン テージも高い。しかし、いろいろ男女平等参画を、政策として取り入れた国が、企業の 中の管理職登用が非常に少ないというんですね。こういう外国例などは検討されてお られるのかどうか伺いたいと思います。
白石企画主任
まず第1点目の創業塾ですが、当然ながらいきなり大企業を創業さ れる方を想定したわけではないので、当然対象としては非常に小さいところから創業さ れ、創業しようとされている方が企業の資金繰りや会計やマーケティングもある程度自 分でごらんになるということを前提としたプログラミングを組んでおるということでござい ます。
 それから、2点目の問題でございますけれども、現時点においてコストが高いという ことを申し上げているのではなくて、現状以上に女性を優遇しなさいというような規制を かけてしまうと、その分だけ当然コストが上がるわけですね。そのことに対する懸念を 申し上げているということでございます。
 なお、よく我々が企業からヒアリングをしてお聞きするのは、コストというのは研修 等の問題というよりは、やめてしまわれるということが一番大きいと。先ほど御紹介し ましたように、例えば外資系の企業などでは非常に優秀であるということになります と、出産で、ブランクがあいてもいいから帰ってきてくださいということで、それをコストと してはじいても、なお、その人材能力が必要だということで、それをつなぎとめる努力を している企業も現実にございますので、いちがいにコストが高いことだけの問題ではな くて、それと本人の能力をどのように評価をするかというところの見合いの問題であろう と思います。
 したがって、コストというのは、研修にかける費用云々というよりは、やめてしまわ れる方が残念ながら現状ではまだ多いという問題をマスでとらえますと、企業の担当 者としては、あとは彼らがどれだけ個々の女性職員の能力を評価して、どういうふうに それを把握できるかというところにかかってくる問題であろうかと思います。
 それから、諸外国の例につきましては、当然ながら、今研究を進めておるところで ございます。
山口委員
今のコストの問題なのですけれども、どのくらいコストがかかるかというこ とは、実際にデータはいっぱい持っているのでしょうか。
白石企画主任
人件費云々というところは、企業のセンシティブな情報になりますの で、我々としては把握しておりません。
山口委員
コストが女性にかかるということは一般的に言われてしまうので、この 際、コストがかかる根拠だとか企業比較だとか、そういうのを知りたいと思いますね。
 それから、30代後半にやめるというけど、むしろ20代の終わりから30代の初めにや めてしまう人が多いのではないか。それは本当の企画する楽しさとかその仕事を遂行 する楽しさを知りかけたときにやめてしまうのが非常に問題だと。そこを企業としては サポートしていけば、もっとより能力が発揮させる場所が確保できるのではないかと思 いますので、研究会の人にもそのことを伝えておいていただきたいと思います。
住田委員
起業支援の場合に、法人格を取得するのが1つの要件かとも思うのです が、有限会社、株式会社、協同組合、NPOなどいろんな形で女性は使って起業してお られると思うのですけれども、そういうことについてどういう要件でやっておられるのか。 それに対して、どんな割合が多いのか、わかれば教えていただきたいと思います。
 それから、女性の起業支援について、ある県に行きますと、貸倒れ率、不良債権 の率が非常に低くて堅実で健全な経営をしているというような成功例を聞いたことがあ りますので、これは国レベルで見るといかがなのか。男性の中小企業、金融公庫と か、ああいうのを比較して、女性は融資するとなかなか上手にやっているという、もし 成功例が数としてあれば教えていただければと思います。
 それから、3つ目なのですけれども、今回の研究会メンバーは、重厚長大型企業で ない方々とか外資系の企業だとか、要するに女性が新しく活路を開くには非常にふさ わしい世界だと思うのですが、本当に深刻なのは大企業で総合職で入った方々がな かなかキャリアを全うできないという、実態が今のダボス会議の中でも出てきているの だろうと思います。そういうふうな大企業の中で、なぜ今まで女性の活用がうまくいか なかったかという失敗例をぜひ研究していただいて、後に活かしていただきたいという ふうに希望いたします。
白石企画主任
1点目の女性起業家の支援資金でございますけれども、特に法人 格云々という対象者の制限があるものではございません。こちらの対象者は、女性又 は高齢者の出資に関して、概ね5年以内のものということでございますので、3年前に 事業を始めましたという個人の女性の方でも御利用いただけるという制度でございま す。
 それから、どこが貸倒れ云々という情報につきましては御容赦願いたいわけでござ いますけれども、これに関連いたしまして、平成12年1月には、担保供給免除特例措 置というものを創設してございます。これは簡単に申し上げますと、中小企業金融公庫 で貸付額の50%かつ8,000万円を限度として担保は要りませんと。あなた方、今まで 貸倒れが相当あれば当然担保いただくわけですが、それは要りませんという制度を創 設させていただいたところでございます。この点、さらに、そもそも土地もないしという方 でも資金を活用していただけるという形で可能性が広がったというふうに考えておると ころでございます。したがいまして、堅実であったという実績がこういったところに反映 されたということであろうかと思います。
 それから、3点目でございますが、このメンバーだけで議論をしていこうという趣旨 の研究会ではございません。実は当初のメンバーは、小林いずみ社長以外の方々で 構成されておりまして、今回最初お呼びをしてお話を伺って、それではぜひ御参加くだ さいということで参加していただいたものでございます。今後とも伝統的な重厚長大、 最も問題が深刻な企業からもお話しを伺いたいというふうには考えております。
竹信委員
今のことについて提言をさせていただきますと、財閥系企業で深刻な問 題で訴訟が頻発しておりまして、そこの訴訟団がワーキング・ウーメンズ・ネットワーク という海外とのネットワークを組んでそういった問題をやっておりますので、もしヒアリン グ等々のときには、そういった方をお呼びすると非常に鮮明に問題点わかると思いま すので、提案したいと思います。
 もう一つ、この提言は、有能な方にとっては非常にいいと思いますし、有能な人を 上手に使おうという意味で、産業を活性化するということはいいと思うのですけれども、 誰もが食べていく社会を構想した場合には、恐らく有能でない人にどういう産業施策を 当てはめるかということが次のポイントになってくると思いますので、その点について も、ぜひ、何かやっていただける構想があるのかどうか、これは質問ですが。
白石企画主任
人事につきましては、当室、政策企画室ではNPO関係の業務もや らせていただいておりますので、ぜひ検討させていただきたいと思います。
 それから、2点目につきましては、実は有能であるかどうかにかかわらず、有能な 人だけが生き残れればいいということを我々考えているわけでは当然ございません。 その人がやっていただくことが望ましい仕事というのは常にあるという前提でございま すので、そこについては当然ながら検討させていただきたいと思います。
伊藤委員
国際的競争力の中で、女性の活用がポイントになっていることを、もっと もっとアピールをしていただきたいと思います。
 同時に、グローバル化した中で経済活動している企業体に関してはそうかもしれま せんが、先ほど少し山口委員もおっしゃっていましたが、中小企業における女性の問 題を考えておく必要があるのではないかという思いがあります。サービスや情報を中 心とした産業、あるいは外資系の産業だと比較的対応しやすい。しかし、そうでないと ころはさまざまな問題がある。待っていても多分改善できないのではないかと思いま す。産業別の対応をどうするのかということも1つ視野に入れていただきたいと思いま す。
白石企画主任
ありがとうございます。前者については頑張って周知をしたいと思い ますが。
 後者の中小企業云々という話は、中小企業自体が置かれている環境は現在特に 厳しい環境でございますので、そういったことを含めてトータルに考えていきたいと思い ます。
 産業別というよりは、むしろ今や企業別の問題になりつつあるのかなという気しまし て、同じ産業界でも、同じ産業に属している企業でもかなり対応が変わってきておると いう現状がございますので、そこはきちんと丁寧に対応させていただきたいと思いま す。
岩男会長
それでは、次に厚生労働省のチャレンジ支援関連施策に移りたいと思い ます。厚生労働省からは、雇用均等政策課の村木課長と、短時間在宅労働課の山田 課長から御説明をお願いいたします。まず、村木さんから、どうぞよろしくお願いをいた します。
村木課長
厚生労働省の雇用均等政策課長の村木でございます。
 私からは均等法をベースにしながら、当省でやっておりますチャレンジ支援の関係 の施策について簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 昭和61年から均等法が施行されておりますが、平成9年にかなり大きな改正がございまして、募集・採用、配置・昇進が禁止規定になると同時に、企業名公表の制度 でございますとか調停制度の改善といった形で均等法改正をし、平成11年4月1日か ら主な部分の改正均等法が施行になっているわけでございます。
 この中で、いわゆる"ポジティブ・アクション"の発想が均等法の中にも取り入れられ ております。一般的に女性のみを対象とした取扱い、あるいは女性を優遇する取扱い について、これは差別であるということで、原則として禁止をする中で、雇用の場で男 女労働者間に生じている事実上の格差を是正することを目的として行う措置は違法で はない、とまず均等法の9条で規定をしまして、均等法第20条ということで、男女労働 者間に事実上生じている格差を解消するための企業の積極的な取組を講ずる事業主 に対し、国は相談その他の援助を実施するということで、いわゆるポジティブ・アクショ ンを実施をする企業に対しては、国は相談その他の援助を行うとして初めてポジティ ブ・アクションというのが法律上には登場したということでございます。
 それで、均等法そのものはかなりポジティブ・アクションというのをシステマティック な取組としてとらえておりまして、実際の事業主の行う措置でございますが、まず自分 の雇用する女子労働者の配置その他、雇用に関する状況の分析を行う。その分析に 基づいて、均等実現のための支障となっている事情を改善するに当たって必要となる 措置について計画を作成する。それから実際に立てた計画を実施する。そしてそういう ことをやるための必要な体制を整備をするという形でかなり仕組みとしてしっかりしたポ ジティブ・アクションを想定をして条文は書かれておりまして、これを国はお手伝いをす るということになっているわけでございます。
 「女性の能力発揮のための積極的取組(ポジティブ・アクション)の推進」ということ で、こういう形で法律ができた中で、今何をやっているかということをごく簡単に申し上 げますと、1つは行政指導でございます。均等法違反がないかどうかを企業に入って 雇用管理の状況をお聞きしながら、もう法律上の違反があれば、実際の行政指導をす るわけですが、そのときに明らかな制度上の法違反はないのだけれども、余りにも実 態に格差がある。例えば10年間女性の採用はゼロだとか、管理職は1人もいないと か、営業は全部男で事務補助は全部女とか、それで、実はあなたのところは違反を やっているとは言わないことにしましょう、ただ、こういうふうに格差が大きいときにはポ ジティブ・アクションという手法でぜひ問題点を分析して、実際の女性の活用が進むよ うにぜひお願いをしますという形の助言をまず1つやっております。
 それから、2つ目でございますが、ポジティブ・アクションを実際に進めていくために は非常に経営トップがこの問題を理解してくださるかどうかが大事だという意味で企業 の経営トップにこの問題の重要性をわかっていただく仕組みをつくろうということで、経 営者団体、大手の企業のトップにお集まりをいただきまして、ポジティブ・アクションの ための推進協議会を去年の夏から立ち上げさせていただいております。そこからトップ 向けのメッセージを発してもらうということで、先週提言が出ましたので後で御紹介をさ せていただきたいと思います。そういう形でトップへの呼びかけをやっているというのが 2つ目でございます。
 それから、3つ目は、6月が「男女雇用機会均等月間」ということで、均等法の関係 のPRをかなり集中的にやっている時期でございますが、そのときに特に目立った取組 をしてくださっている企業を「均等推進企業」という形で表彰をさせていただいておりま す。 それから4つ目がノウハウ提供でございます。21世紀職業財団を通じてやってお りますが、ポジティブ・アクションを実際に企業で取り組むときにどういうやり方がある のかというようなセミナーや、あるいは県単位で同じ業種の主だった企業にお集まりい ただいて、何回か会合を重ねて女性活用の方法を考えていただくというようなやり方を しております。
 それからポジティブ・アクションを実際に進めていくときには、研修が非常に大事に なってきます。女性労働者自身に対する研修ですとか、それから女性の部下を使う男性の管理職の方の研修とか、中小企業ではなかなか自前ではできないような研修実 施をするというようなこともやりまして、具体的なノウハウや実際のポジティブ・アクショ ンのための企業の取組の一部を直接お手伝いを今やっております。
 こういう取組を始めている中での現状をもう少し詳しくお話しをしたいと思います。
 資料2は、地方で均等法関係の指導をしている雇用均等室という出先機関のデー タでございます。相談件数で、今年間女性労働者からの御相談が1万数千件あるとい うような状況でございます。今、圧倒的に多いのはセクシュアルハラスメント関係の御 相談でございますが、ポジティブ・アクションに関する御相談も若干は出てきておりま す。
 それから、実際に非常に深刻な女性労働者と事業主間の紛争が起こった場合の 調停あるいは助言・指導の件数でございますが、一番新しい数字がまだ12年度の数 字になっておりますが、助言・指導を行った件数が98件、調停が3件という形になって おります。こういう形で非常に深刻な、特に圧倒的に多いのが解雇の関連、その次が 配置・昇進の関連ですが、こういう深刻な問題も出てきております。
 行政指導の状況でございますが、例えば5条の募集・採用のいわゆる違反をして 指導をした件数が非常に減ってきている姿が見ていただけると思います。募集・採用 ほど端的ではありませんが、ほかの配置・昇進でも福利厚生でも定年・退職でもセク シャルハラスメント以外のものは基本的に企業へ行って、私どもがかなり丹念に雇用 管理の状況を見ても典型的な違反、明らかな制度的な違反は非常に少なくなって、そ ういう意味では制度面の改善は非常に進んだというデータで出ておると思います。
 実質はどうかというと、典型例と思う昇進と募集・採用では、まず一番端的に実質 的な女性の活躍が進んでいない状況というのは、この昇進のデータを見ていただけれ ばわかりますように、管理職比率、係長も既に伸びどまった感じがございまして、課 長、部長に関しては1%台、2%台という低いところのままで動いているということでご ざいます。
 それから、21世紀職業財団の調査でございますが、大卒の採用の状況でございま す。上が事務・営業系です。一番上の計のところを見ていただきますと、「男女とも採 用内定」というのが61.2、「男性のみ採用内定」といのうが27.4でございます。これは 結果として、たまたまた男だけだった、女だけだったというのも入っておりますので、こ れがイコール違反ではありませんが、まだかなり男性のみの採用になっているところも ある。
 それから、大卒の文系女子の比率が今大体30%でございますので、そこで見ます と、それ以上の女性を採っているというのが36.9%の企業という数字が出ております。
 下の方は技術系でございます。これはもっとはっきりしておりまして、男性のみの 採用内定が60.2%ということでございます。ただ、理系の大卒者は女性比率がまだ 10%でございますので、必ずしも女性を採らなかったというよりは、いなかったという ケースもたくさんあろうかと思いますが、コース別の総合職になると、私どもの調査で 採用、入り口のところで10%、残っている女性は2ないし3%、こういう数字が出てきま すので、そういった面で本当の実質のところがなかなか動かないというのが現状だろう と思っています。
 そういう意味でポジティブ・アクションというのは非常に大事だということで、これか ら私どもも施策の中心を、制度的なものはかなりよくなってまいりましたので、ここへ移 していきたいと思っているわけでございます。
 その次のページで、資料4は一番簡単なポジティブ・アクションの説明資料で私ど もはよく使うものでございます。ポジティブ・アクションの意味を説明しながら、先ほど申 し上げたように、自分の企業の現状分析と問題点の発見、計画の策定、実施、検証、 こういう流れでやってくださいということで今お願いをしているわけでございます。
 では、こういう形で、今一生懸命PRをしているわけですが、どれぐらいの企業で既 に取り組まれているかというのが資料の5でございます。図1、上のグラフでございま すが、産業計、一番左のところを見ていただきますと、一番下の白地のポツポツのつ いているところが既に取り組んでいる企業でございまして、企業計で言えば26.3%で ございます。ただし、このときのポジティブ・アクションは、実質的な格差をなくすための 積極的な取組ですよと。例えばこんなの、こんなの、こんなのが当たりますと言ってい ますので、何か1つでもやっていれば、恐らくマルをつけてきている。さっき申し上げた ように、きちんと計画立ててとかというものではないと思いますが、それで26.3。5,000 人以上の大手の企業で67.7ですから、私どもが思っているよりは随分やっている意識 なのかもしれません。
 具体的に既に取り組んでいる企業は何のためにやっているかということですが、そ の下のグラフにありますが、「経営の効率化を図るため」ということで、むしろ経営のた めという位置づけができているように思います。その次に「労働者の職業意識や価値 観の多様化に対応するため」という答えが返ってきております。
 もう一枚めくっていただきまして、一番高いのは「人事考課基準の規定」で、昇進・ 昇格のときの基準を明確にして労働者に示すとうようなことをやっているというのが一 番多い。2番目が「女性の積極的採用」、3番目が「女性の積極的登用」、具体的には 今の取組の主体はこういうところということでございます。
 図4では、やってない企業になぜやってないかと聞きましたところ、「十分に女性が 能力発揮し、活躍しているため」という答えが返ってきまして、広報の必要性を非常に 強く感じたところでございます。ここはまず第1ステップの現状分析ができてない企業 というふうに私どもは内心受けとめているところでございます。
 ということで、少し取組みやすいところから、それなりの企業が取り組んでいるけれ ども、まだ、それでも企業全体で言えば、3割弱の企業が少しはやっているという状況 だろうと思います。
 2枚めくっていただきまして、資料6でございます。こういう中で、私どもの印象とし ましては、平成11年の4月からの改正均等法の施行の中でセクシュアルハラスメント とポジティブ・アクション、この2つが非常に新しい概念として法律にできたと。セクシュ アル・ハラスメントは、実態よくなっているかどうかは別として、企業でこれが問題で対 策をしなければいけないし、均等法にもそういうことが書かれているということの意識は 非常に普及をしたわけでございますが、ポジティブ・アクションの方はなかなかそこま での周知度がないということと、それから経営者団体の方といろいろお話をしている中 で、特に何度も言われましたのは、結果の平等のことだと思っている等、ものすごいアレルギーがあるのは、この2つでございます。
 そういう意味では、そういうアレルギーをぜひなくして、企業のためにも非常に大事 な取組だということを理解をしていただくのにどうすればいいかということで、むしろ企 業の人を主体にした会議をつくって、そこから訴えかけようということで、この会議をつ くったわけでございます。
 提言そのものは、1枚めくっていただきますと、資料7という形で書いてあります が、これはメンバーの東大社研の玄田先生を中心に比較的若いワーキンググループ のメンバー、企業の人事の担当も含めて、そこでつくりましたので、非常に役所の文章 としてはかなりおもしろい文章になっておりまして、企業の人たちにたくさんインタ ビューして生の声をできるだけ集めてリアルにこの問題の大事さを感じ取ってもらおう という構成でやっております。
 最初に、企業の人に非常にアレルギーがあるということなので、女だからといって、 女の人をただ優遇する政策ではなくて、実際に女の人が非常に能力発揮がしにくい環 境に置かれている、それを改善するための政策ですということを一生懸命ここで説明を しております。
 それから、4ページをあけていただきますと、どういうポジティブ・アクションが企業に とって意味があるかということが書いてありまして、Iで、男性も女性もなくきちんと能 力や成果に基づいて評価をすれば、女性は当然モラルアップするし、同時に男性でも 本当にやる気のある人は同じようにモラルアップするでしょうということが1つ。
 Ⅱですが、男女にかかわりなく多様な人材をきちんと使っていくことで新しい市場の ニーズに対応できる多様な人材が得られるでしょうということが書いてあります。 ⅡIで すが、ポジティブ・アクションをきちんとやっていて公正に評価をしてくれる企業だという ことになれば、応募をする労働者が増えるでしょうということが書いてあります。
 それから、IVは、こういうことをきちんとやっていれば、企業イメージも上がるでしょう というようなことを書いてございまして、こういうメリットを訴えながらやっていくということ でございます。
 5ページからは、経営トップが一番大事ということですから、経営トップに、人事の担 当、女性社員、男性社員に訴えかけるというような形で、それぞれの立場の人が何を すればいいかというのを書いてあります。
 その中で、この提言を書く中で議論になりましたのは目標設定、数値目標クォータ という誤解が非常にある中で、それでも私どもはできるだけ数値目標を取り入れてもら いたいという思いがありましたので、そこを大議論をしつつ書き込んであります。
 7ページの一番上のところで、「ポジティブ・アクションには、具体的なわかりやすい 目標を定めることが大切になります」。そして、その目標をできるだけ企業としても内外 にオープンにしてくれというようなことが書いてあります。
 それから、9ページの2-5)以降、ここが多分最後まで議論の中で一番もめたとこ ろでありますが、実際にそのときに実態を見ていくのに、採用状況、離職率、休業の取 得状況、管理職への登用状況、従業員満足度だとか、こういうのがメルクマールにな るのではないですかということを書いた上で、目標数値を設定する場合でも、機械的に 割当てをするクォータではありませんよとか、「例えば」ということになっていますが、 「管理職について目標を設定した場合でも~」、そのためのきちんと人材育成をして、 それの結果として目標数値を達成するという仕組みですよということで書きました。
 それとあわせて今度は、これで企業にいろんな訴えかけをしたわけですが、訴えか けをして、1社でも多くの企業が取り組んでもらうために、これから行政とか協議会とか が何をしていくかということで、社会全体としての推進の仕組みづくりのところですが、 ここはまだ十分議論ができたわけではありませんが、当面これからの推進の仕組みで 皆さんのコンセンサスがとれたというところが20ページに書いてございます。
 7-1)でございます。ポジティブ・アクションの目標は、それぞれの会社が自分のと ころに合った目標を立てるのですが、それを行政がどうお手伝いをするかというところで す。何か例えば一律の目標を行政が提示するということには当然皆さんアレルギーが ありまして、議論の結果、こういう形になっております。個々の会社が目標を立てる際 にベンチマークとして活用できるよう、業種や規模ごとの女性の活躍状況や先進的な 会社における女性の活躍状況ですとか、そういうベンチマークに使えるデータをお示し をするということで、それもかなり規模や業種、先進企業、例えばトップ10、トップ5とか というイメージかもしれませんが、そういうものを示していくと会社が、自分はどれを目 標にしようかということがやりやすいという御意見でございます。
 それから、2つ目は、いろんな企業としての取組の好事例、もう一つは、女性が活 躍していく女性の方の好事例の提供をやっていかなければいけない。
 それから、3つ目は、今、表彰をやっていると申し上げましたが、何か一生懸命取 組をやっているところを顕彰できるような仕組みがいいのではないかというような、この 3つは協議会でこれからの枠組みとしてオーソライズをされたところでございます。
 それから、これを具体的にどうやっていくかというのをもう少し協議会で議論をして 枠組みをつくっていこうということになっております。こういう形の提言が先週に出まし た。これを私ども経営団体と御協力して傘下の企業へお配りする。それから地方で、6 月の「均等月間」がございますので、それを中心にして、地方でもミニ版のこういう協議 会をやってもらって、そこでまた地方レベルでの伝達をしていくというような形でやって いきたいということでございます。
 以上のような形で、まず経営トップが、企業が自ら取り組む仕組みづくりのところを 今一番力を入れてやっているところでございます。
 あとは関連資料でございますので、資料8は、企業表彰の状況。ポジティブ・アク ションを進めていただくための非常に簡単なパンフレット。それから,女性のチャレンジ 支援という意味では、女子学生・女子生徒の支援というのは非常に大事になってまい りますので、女子生徒・女子学生側が就職問題、職業の問題に関して幅広い知識を 持ってかなり大きな幅で職業選択ができるよう、このガイドブックを大学生用と高校生 用につくって、あとセミナーなどをやりながら、できるだけ女子生徒用にいろんな情報 提供をしていくということを片方でやっております。
 それから、逆に企業側に男女均等な採用選考ルールということで、女子生徒・女子 学生を差別しないように、社内での徹底ということを今企業に呼びかけているものでご ざいます。
 最後に、起業家支援でございます。女性と仕事の未来館の中で、女性起業家のた めのいろんなセミナーと相談事業を今実施しているところでございます。
 以上、私どもが今やっております均等法を中心にした形のチャレンジ支援、以上で ございます。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、続いて山田課長から御説明をお願い いたします。
山田課長
短時間在宅労働課の山田でございます。どうぞよろしくお願いします。
 私の方からは、今、政策課長からお話のありましたことと少し違った視点でお話し をさせていただきたいと思います。説明資料の<2>は、主にパートの関係、<3>について は、いわゆる女性の再就職の関係でございます。
 ただいまのお話、企業の中での女性の評価が非常に大きな役割を持っている、そ ういう話だと思うのですが、私から少しお話ししたいのは、ずっと企業に勤め続ける形 でキャリアを積んでいかれる方と、一たん子育てのために労働市場から退出をされて、 それがある程度一段落した後にもう一度労働市場に入っていくと、こういう2つのタイプ があろうかと思うのですが、後者のタイプについて、女性の活躍というものがどうやって 図っていけるのだろうか、そういう問題意識でございます。
 資料1をごらんいただきますと、これは就業意識、女性と男性と両方見ております が、平成12年女性で言いますと34.4%。これがいわゆる継続就業を希望されている女性の方です。
 それから、横線の引いてある、右側にある39.8%とあります。これはいわゆる再就 職型、子どもができたら職業をやめて、大きくなったら再び職業を持つ方がよいと、こう いう意識を持っている方です。時系列に見ますと、継続就業型の割合がかなり増えて きておりますが、依然として再就職型の方が多いという実態がございます。
 それでは、再就業の実態はどうなっているかということで2ページでございますが、 2番目の表を見ていただきますと、一般未就業者、これは学卒ではないという意味で ございますが、一般未就業者からの年齢別の入職状況というのを見ますと、パートタイ ムで入職される方の割合が7割強でございます。パートでの入職が非常に多いという ことでございますけれども、御案内のように、パートの労働条件というのはかなり正社 員に比べて見劣りしているのが実態でございます。ちなみに平成12年度女性パートの 1時間当たりの所定内給与、これが889円でございまして、高卒の女性(正社員)の初 任給が、同じ時給で見ますと884円ということでございますから、高卒女性の初任給と ほぼ同じと、こういう水準にあるということでございます。
 3ページを見ていただきますと、従来パートというのは主婦の方で、だんなさんが働 いていらっしゃるということを1つの前提に置きながら、家計補助的に働くという姿が一 般的にイメージをされていたわけですけれども、自分の収入で暮らしているパートの割 合がかなり増えております。これは平成7年で少し古い資料でございますが、平成7 年でも短時間パートの15%は主に自分の収入で暮らしていると。その他パート、これ は労働時間が正社員と同じパートのことでございますが、約4分の1が自分の収入で 暮らしており、単に家計補助だけで働いていらっしゃる方ばかりではなくなってきてい るという実態がございます。
 それから、4ページをごらんいただきますと、最初に子育てを終えて就業する就業 形態としては、当面はパートで、という感じが非常に強いというのが上の表でございま す。30代前半で36.8%、後半で45.5%の方はパート社員として働きたいと、こういうふ うに答えている。
 ところが、それでは長期的に見て希望する就業形態というのはどうですかと、こうい うふうに聞きますと、斜線のところがパートのまま続けたいということですけれども、か なり割合が減ります。そのかわりに少し見にくくて恐縮ですが、黒いところから3つぐら い右にかけたところ、30~34で言えば、18.4%、8%、1.6%、合わせて28%ですが、 この方々は、パートで経験を積んだ後、正社員になりたい。パートで資格を身につけた 後、正社員になりたい。末子の進学までパートで、その後は正社員になりたいと。要す るにライフステージの状況に応じて、あるいは経験の深さに応じて、やがては正社員 になっていきたいと、こういう希望を持っていらっしゃる方がかなり多いと、こういうこと でございます。
 さらに、5ページをごらんいただきますと、これは無業の女性の方ですが、働きたい 理由ということで、30代のところで割合多いのは、専門知識や経験を活かしたい、社会 に貢献したい、こういうような希望で働きたいと考えている女性の方が約3割くらいいる と。
 課題といたしましては、こういった子育て後の再就職のニーズ、自己実現したい ニーズというものへの対応というものをどうしていくのかということでございます。このこ とは、単に女性たちだけではなくて、社会にとっても重要な課題ではないかと。まさに 少子化というキーコンセプトの中で2つの課題があろうかと思います。1つは、かなり労 働市場が緩和をしておりまして、人余りということになっておりますが、将来少子化が 進むことになりますと、企業も若年者の確保が非常に困難になるという状況の中で、 女性の有効活用というものが求められるということがございます。
 それから、もう一つは、6ページをごらんいただきますと、いわゆる少子化という現 象そのものをとどめる対策として、これは読売新聞が行った世論調査ですが、どういう ことを重点的に取り組むべきかということを聞きますと、「出産・子育て後に再就職しや すくする」ということが非常に数としては多いというような結果も出ておりまして、そう いった2つの意味で少子化への対応というようなことにもなる。これは社会全体にとっ ても重要なことだと、こういうことでございます。
 以上が現状認識でございますが、そういった現状認識の中で、2つのタイプがあり 得るだろうと。1つは資料2の方にまいりますけれども、再就職の形態として、非常に 大きな割合を占めているパート就職で、この対応の仕方として重要なこととしては、1 つは、パート自体の処遇の改善の問題、いわゆる正社員との均衡処遇の問題でござ います。
 2番目の課題は、仮に最初は補助的なパートから入ったとしても、そこから基幹的 なパートであるとか、あるいはフルタイム正社員進んでいける道を開くということでござ います。いわばパートで入職した場合のキャリアアップルートの構築ということでござい ます。
 本日のお話の趣旨から言いますと、キャリアアップルートの構築、ここに絞り込んだ 形で少し御説明をしたいと思います。パートタイム労働対策の概要については、資料2 のところに書いてございますとおりでございまして、平成5年につくられましたパート労 働法というものを中心に政策は、基本的にはパートタイマーの雇用管理の改善というこ とに向けて、企業の自主的な取組を促すという趣旨の法律、それに基づく政策体系に なっているということでございます。
 今やっている施策の中で少しキャリアアップルートの構築的なものということで見て みますと、10ページのところですが、短時間労働者雇用管理改善等助成金ということ で、雇用管理の改善をしたところにメニュー方式で助成金を出すという仕組みがござい ます。
 それで、その中で11ページをごらんいただきますと、いろんなメニューに対して助成 金を支払うことになっているわけですが、その中で、8番目のところにキャリアアップ制 度というのがございます。昇進・昇格制度等(正社員への登用を含む)という制度を導 入することに対する助成をしております。
 こういったことを、さらに今後進めていく必要があるのではないかというようなことを 考えておりまして、昨年の3月に東大の佐藤博樹先生を座長とする「パートタイム労働 研究会」というものを設置をいたしまして、こちらで検討していただき、この前、資料3が 2月5日に中間取りまとめを出していただいたものでございます。
 この中で、キャリアアップルートの問題とかかわりますのは、Ⅱの3というところでご ざいまして、「ライフステージに応じて多様な働き方を行き来できる連続的な仕組みの 構築」というものが必要ではないかという御提言を企業の雇用システムの変化の方向 としていただいております。これはこの前の育児・介護休業法の改正という1つの流れ の中で、正社員の中において、育児・介護期に短時間勤務を企業の中で行うというこ とについては、これからかなり広がっていくであろうと考えられるわけでございます。そ れは育児・介護にとどまらず、自己啓発とかいろんな個人の活動との調和を図りなが ら企業の中で働いてもらうというような考え方が1つは広がっていく可能性があるので はないか。まさに内部労働市場の中での1つの動きとしてでございます。
 それはどういうことを意味するかというと、企業にとって短時間で働くということが決 してマイナスではなく、企業にとってもそれはメリットがあるということを感じ取れるかど うかということになってくると思います。そういうことが仮に進んでいくとしますと、これは 本格的な短時間就業というものが1つの働き方として確立をするということになってくる であろう。
 そうしますと、現在補助的なパートとして働いていらっしゃる方々もかなり仕事の内 容としては基幹的な仕事をしている方が増えてきているので、短時間でしっかり働くと いうことが1つのスタイルとして確立してくれば、補助的なパートから入ってきた人たち も新たな内部労働市場の中で短時間でしっかり働くと、それなりの処遇を得るという形 が広がっていくのではないか。これは非常に希望的な観測でございますが、そういうこ とを提言をしております。
 ただ、これはまさに企業の考え方として、こういうものがメリットがあるかどうかと感 じられるかどうかにかかわっているわけでございまして、我々としてはできるだけこうい う短時間正社員制度が企業の中で考えていただける、あるいは広がっていく、そういう 支援のスキームをこれから考えていきたいと思っている次第でございます。
 以上がパートを介した女性の活躍というようなことにかかわる1つの提言を踏まえ た、今後我々として考えなければならないと思っていることでございます。
 もう一つは、資料<3>をごらんいただきますと、これはパート以外のルートといたしま して、子育てを始める前に、女性の方が働き蓄積された能力というものを再びフルタイ ムの就職の中で実現をするとためにどういうことができるかということでございます。
 1つはポジティブ・アクションとしての再就職モデル開発事業でございまして、女性 の場合、職業能力が高いと思われる高学歴の女性ほど、労働市場から退出した後、 育児期を経ても再就職する者が少ないが、潜在的な労働力率を見るとかなり高い。こ このところの乖離が非常に大きくなっているということでございます。
 事業の内容がいろいろ書いてございますが、要はこれまであまり女性の方の再就 職が進んでこなかった、そういった領域で成功事例というものがつくれないか、そういう モデル事業でございます。現在、IT業界を1つのターゲットに絞りまして、実際に女性 の方を募集をいたしまして、その方々が企業に入っていけるようなサポートをモデル事 業として試みているということでございます。
 これはモデル事業でございますが、もう一つは、再就職希望登録者支援事業が、 21世紀職業財団でよりすそ野の広い事業としてやっている事業でございます。
 その中身でございますが、「登録した方は、再就職の準備のための支援が受けら れます」ということでいろいろ書いてあるわけですけれども、目玉は「教育訓練の受講 を支援する『割引券』の発行」ということでございます。かなり仕事から離れた方々、教 育訓練給付制度の対象にはならない方々にもこの教育訓練給付制度と類似の法制 度をつくっているということでございます。
 再就職のところについてははっきり言ってなかなか難しいところがございます。これ は八代先生御専門ですけれども、日本の企業の雇用システムがかなり長期雇用とい うものを中心に組み立てられているために、途中下車、途中乗車というものが難しいシ ステムになっているということでございます。これが非常に大きな影響を与えていると 思います。ですから先ほど来申し上げているようなことをやっていこうとしていくときに、 必ず長期雇用システムとの調整を図りながら、いかにそういう道をつくっていくのかと いう非常に難しい課題があるということが1点でございます。
 それから、先ほど少子化に向けて必要であると申し上げたわけですけれども、た だ、一方で足元の状況と将来に向けた状況との大きな落差というものの中で、我々は 今いろいろやっているということに伴う難しさがございます。今の人余りの状況の中で 有能な人材を確保するためにはこういう仕組みが必要なのですよということを呼びかけ たとしても、なかなか全体的には広がっていきにくいという面があるわけでございまし て、1つでも2つでも、モデル事業的なものを組み立てて、モデルケースのようなものを つくることによって、将来に生きていくノウハウを築くことがまず今の状況の中では重要 なのではないかという感じがしているところでございます。
 私からは以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。
 それでは、約15分ぐらい質疑応答をお願いしたいと思います。
高橋委員
3つほどお聞きしたいと思いますけれども、1つは、資料7の「ポジティブ・ アクションのための提言」の中で、9ページのところの、数値化の問題について、どん な議論がされたのか少し興味がありますのでお聞かせ願えればと思います。
 2番目は、この説明資料の<2>の中の6ページのグラフで「出産・子育て後に再就職 しやすくする」ということについての希望が非常に高いという指摘がありました。公務員 について、若いときに試験やって、子育て終わった方ではとても能力あっても受かりっ こないような試験を採用している。子育てが終わったような方の能力をきちんと評価し て採用するというようなことを私企業に注文するより、国、地方公共団体で考えるという ことをまずやるべきではないかという気がするのですね。そこら辺どんなふうにお考え なのか。
 3点目は、「パート労働の課題と対応の方向性」冊子の53ページのところで感じた のですが、パートになると不利になっているという現状があるわけですけれども、先ほ どの説明で少し誤解しているかもしれませんけれども、理由の1つとしては、日本の企 業が長期雇用を基本に考えていたからということもあるのだろうと思うのですけれども、 これは制度として企業のビヘイビアではなくて、法的な制度として企業にとってパート の方がフルタイムよりは有利だと。しかも企業内というか、内部労働市場のパートより も外から採用した方が有利と制度的になっているのではないかという印象を持ってい たのですが、そういうことはないのでしょうか。そこら辺を改善すると、企業にとってどれ も特に有利とは言えないということであれば、もう少し雇用の仕方も変わってきそうな 気がするのですが、そこは少し専門外なものですからわからないのでお聞かせ願えれ ばと思います。
村木課長
まず数値化の議論ですが、企業の中で例えば採用、昇進をするときに 数値目標を立ててしまいますと縛られる。どうしても数合わせをせざるを得なくなってく る部分があるのではないかという、結果の平等みたいなものになってしまうのではな いかということを非常に御懸念されたように思います。
 特にその中でも、皆さんが非常に嫌がられたのが管理職登用の目標でございまし て、一番時間がかかりますし、採用、配置、育成がうまくいった結果として初めて管理 職というのが出てくる。ところが目標を定めましょうというときに非常によく使われます のが管理職の数の数値目標ということなので、それは企業としてあらかじめ数字で目 標を立てるのは非常につらいものがあるのだという御意見が随分たくさんのメンバーか ら出ました。文章に落とすときには、可能なものはということで、それはできなければ、 管理職をとにかく増やすという目標でもある企業は仕方がないし、今の管理職を2倍に するという目標を立てられるところはそうするというような形で折り合うということになり ました。
高橋委員
誤解していました。違法になるから怖いということではないのですね。
村木課長
はい、そうです。
山田課長
2点目のまず公務からというお話でございますが、そこは確かにおっしゃ る面は非常にあるのではないかと思います。実態について、我々は把握をしてござい ません。これは後ほどそういう数字を入手してということでしょうか。
岩男会長
結構でございます。
山田委員
そうですか。3点目の話としても絡むのですけれども、長期雇用の仕組 みというものが非常に色濃く出ているところというのは、御案内のように大企業でござ いまして、それと同じような傾向が公務にもあるという感じがしてございます。非常に身 近な問題として考えた場合に、中途採用した方の活用の仕方について、応募されてき た方がどういう能力を持っていらっしゃるのかということをなかなかわかりにくいという制 度の未整備のところも恐らくあるでしょうし、それから日本の企業の場合は年功的な処 遇の仕組みというものが、これから変わっていくのであろうということはあるにしても、 今まで実態上としてかなりそういうものが色濃く存在をしてきていると。
 そういう仕組みの中で途中から入っていくということが難しいという側面がきっとあ るのだろうと思うのです。ですから、そこのところを、なかなかすぐに新しい地平に移動 するということが難しいというのが今の現状なのかなと。
高橋委員
中途採用ということを言えば、確かに途中から採用するというのは、それ が1つの理由になっているというのはよくわかるのですが、しかし子育てが終わった後 に正社員になりたいと言ってきた人を、正社員ではなく、パートでないとだめだというの は、会社側としては正社員にするよりはパートの方が有利だからではないかと思うの ですが、それは法制度上から来る理由からではないのですか。
八代会長代理
それは年功賃金から生じる面もあるのではないか、要するにフラット 賃金ならば大きな差はないのではないか。
住田委員
大きく3つぐらい申し上げたいと思います。まず再就職支援の関係、リ チャレンジ、これは今まさに時代に必要な制度だと思っていますので、ぜひ推し進めて いただきたいと思います。特に私の周囲の、例えば高学歴女性も全然労働市場に戻 らないというのは非常にもったいないことだと思っていますが、なぜ戻らないかの理由 としては、今までの能力を活かせるような仕事としてふさわしいものが用意されてな く、また、それに対して見合った報酬がいただけないという意味で、パートは安上がり の労働力という位置づけに終わってしまっている、これが一番の大きな問題ではない かと思います。オランダとかフランスは8割で日本の場合はその半分の4割ぐらいと聞 いておりまして、男女の賃金格差はパート入れるとものすごく今拡大しているというの は、まさにパートの低賃金の大きな問題だと思っています。
 その中で短時間正社員制度の導入を支援されるということですが、派遣労働者に 関して言えば、一定の期間が来たらどうするかという決断があるわけですので、期間 的な仕事をやっているパート労働者に対しては、どこかで決めて正社員化するというよ うなことを法的にも考えていかなくてはならないではないかと。そう働き方に応じたきち んとした給与体系をこれから日本は入れていかないといけないのではないかという気 がしております。 もう一つは、現時点では再就職支援というのは非常に私は重要な 政策だと思っているのですが、将来的には我が国の女性のM字型カーブというのは解 消すべきであると考えています。子育ての期間に一旦労働市場から撤退するというの は労働力の質の観点からしますと大きな問題でありまして、望むからこうしているのだ と言われるのですけれども、本当はそうではない方が多いと思います。
 そこで気になりましたのは、資料7、「ポジティブ・アクションのための提言」の最初 の3ページ目の例、後ろの21ページ、要するに子どもが病気になった場合にどう対応 するかというときに、最初の3ページですと、子どもが病気になったらお母さんが休まな くてはいけないということを当然の前提にして書いてありまして、子どもが病気のときは こういう方に頼めるように安定的な環境を用意しましょうということを私は言うのはいい のですけれども、そのためにふだんから一生懸命女性は倍働きなさいと言っているみ たいで、非常にこれはひっかかりがありました。
 例えば21ページですと、「相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設 置」と言われるのですが、私はそのために相互援助は出来ないのですね。なぜ、有料 ないしは公的な社会的支援としてこういう場合には用意すべきであるのに、今ベビー シッターでも医師法等で病気の子どもに対して薬を飲ませたらいけないことなどに対し てもっと柔軟に対応していただかないと、病気を持った子どもがいたときには、常に母 親と小児科医が対立するという、どうして休めないのだというような形でプレッシャーを 感じてやりにくさを感じています。病気のときにお母さんが休み、そのままお母さんが 仕事をやめてしまう例を私もたくさん見てきていまして、これは解消すべき問題ではな いかと思っております。
 最後にポジティブ・アクションの関係なのですけれども、とりあえずは数値目標とし て登用された数を拾うことは大事だとは思っていますが、私は最終的には登用される までの昇進の期間をよく見ていただきたい。どうしても女性は後回しになっているという ようなことが考えられまして、男性だったらこの程度の能力であったら許されるのに、 女性の場合は高い能力を要求されるがゆえに、大きな数を見たときにはどうしても全 体としての女性の昇進年齢が遅くなっているということは、公務員のときも言えている んですけれども、民間の場合はもっとひどいのではないかという気がしますので、指導 するときにはできるだけトップの方に当たって、そういう数字を見ながらやっていただき たいと思っております。以上です。
八代会長代理
山田さんは十分わかって言っておられるのですけど、私は基本的に 今の正社員の働き方自体にも問題があって、年功賃金制度は年金制度と同じように、 高齢化社会ではサステイナブルでないのですね。ですからそれに正社員の働き方の 矛盾からパートへの過剰な需要あるいは格差が生まれているときに、パートを正社員 に近づけるということだけでは問題の解決にならないのですね。だから、ここにも左側 のこれにはちゃんと書いてありますけれども、本来は今の正社員と今の大きな格差が あるパートの中間的な働き方を模索するというのが1つのやり方だと思うのですが、そ の際のカギは雇用保障です。ですから、正社員と同じ雇用保障、あるいは年功賃金を ベースにしたら実現は困難なわけで、時間あたり給与は正社員と同じ、しかし雇用保 障は有期雇用みたいな形に限定的なことにするというような議論は全く出てこなかった のですか。
岩男会長
今までの御意見に何かおっしゃりたいことがあれば、あわせて、これで おしまいにしたいと思います。
村木課長
M字のお話がありましたが、先ほど御説明をしませんでしたが、ワークラ イフバランスというのは男性も女性も大事というのはかなり一生懸命書いたつもりで す。ただ、現実として女性が家庭責任をかなり多く負っている部分をどう書くかというの は激論になりました。それから、男性も育児休業というのは自分の問題として考えるよ う書きましたら、今の段階で、これは経営者にとって説得的なものにならないというよう な大議論がありまして、いわゆる家族的責任のところは非常に書き方には悩みまし た。協議会全体のコンセンサスのところは非常に男女ニュートラルに書いてありまし て、誰かの言葉を引用した部分はそういう個人的な見解が入ったような形で実は構成 をするという形で現状にも少し寄り添ってみたところです。
 それで、施策的には子どもが病気のときは、今度請求権にはなりませんでしたけ れども、看護休暇を法律の中に盛り込むこと等がこれからの最大の課題だろうと思っ ています。看護休暇の話と休業が終わった後の短時間勤務というのがあって、そこ が、やめたいわけでないのにやめているM字をいかに底上げをしていくかというところ はこれからの課題だろうと思っています。
 それともう一つ、昇進スピードに差があるというのはおっしゃるとおりで、数だけでは なくて、むしろ何年でこのランクに上がっていますかと、男性と女性の昇進スピードと か、35歳で切ったときに、どれぐらい差がありますか、そういう迫り方をしておりますの で、その点はこれからもきちんとやっていきたい思っています。
山田課長
私の方からも補足させていただきます。先ほど八代委員からの御指摘で すが、本体の39ページを見ていただきますと、研究会の中でもおっしゃった正社員の 処遇をどう考えるのか、大問題だという議論がかなりございまして、そこはきっちり書く べきだと。要はフルタイム正社員の働き方ももう少しバラエティを持たせる必要がある のではないかというようなことを前提としながら、生計費であるとか家族手当、性別役 割分担を前提にできているものの見直しが必要ではないかというようなことは書いてい るつもりでございます。
 ただ、ここのところは本当に労使の中で議論をされるべき問題だろうと思っておりま して、なかなか行政としてこうすべきだという強権的なことをできる分野ではないかと思 います。
八代会長代理
いや、そんなことはない筈です。労働法の規制を見直し、有期雇用 の適用条件を緩和したり、派遣を規制緩和すればもっと労使が多様な選択肢ができる わけですから。
山田課長
雇用期間の問題は、「雇用システム多元的の下での雇用の安定性の確 保」ということで少し書いてありますが、今の正社員とパートとの関係、正規から非正 規の方にどんどん流れているという側面の中には無期雇用について非常に縛りが強 いと。有期雇用についてはこれは何でも不利というところが非常に大きな影響を与えて いるという認識は示しておりまして、無期雇用と有期雇用の取扱いについてのバラン スを考えていくということが重要ではないかというようなことは研究会の方でも提言をし ていただいております。
八代会長代理
ここの有期雇用というのは1年のことですか、3年の話ではなくて。
山田委員
これは1年のことです。
古橋委員
行政が数値目標ということをやるときにベンチマークをつくるというお話が 少し出ましたけれども、その場合にベンチマークというのはなかなか難しい話です。業 種別、規模別等についてどうお考えか、そういうものの可能性、いつ頃までにそういう ことをやられる見通しがあるのか、教えていただければ大変ありがたい。
 もう一つは、再就職というのは一番希望が多いし世界的にも今非常に大きな問題 になっています。まだまだ母性保護条約の条文中の、再就職についての問題は、批 准までとてもいく環境にないということのようですが、その進め方として、国民全体の認 識を深めさせるよう、相当啓発活動が私は必要なのではないかという気がいたしま す。その場合、再就職する個人の方に対するいろいろな支援がありますけれども、事 業主に対してのある程度の努力義務なり、それに対する税制上なり、何かのメリットを 与えればできるのか、できないのか。日本は再就職は女性が希望しても無理なんで すと言うのか、あるいはもっとフラットな給与になってくれば、ある程度将来は年功序列 がなくなっていけば可能性があると考えておられるのか。再就職について、全く今私ど もは見通しがわからないのですけれども、どの程度の可能性があると厚生労働省は考 えておられるのか。ある程度やればいけると思っているのでしょうか。それとも今の企 業の考え方からいえば、ほとんど可能性無理ですよと。そこのところの考え方を教えて いただけると大変ありがたい。
村木課長
まず1点目のベンチマークですけれども、私どももこれをどういうやり方で あれば、本当に企業が目標を立てるときに役立つものになるのかというのはまだよく 議論ができておりません。イギリスのオポチュニティ・ナウをこの協議会の中で3月に 少し勉強してまいりまして、それなども材料にしながらやっていこうかと思っておりま す。オポチュニティ・ナウの場合、業種や規模、企業が自分のライバル企業何社を選ん で、その数字を下さいということで、個別には出しませんけれども、そこまで本当に仕 組みがつくれるかどうか。これはどれだけベンチマークをつくる現状把握に企業が協力 してくださるかにもよりますので、そういうのも参考にしながら、少し仕組みを考えて、こ の協議会の設置期限の今年度中に結論を出したいと思っております。
伊藤委員
資料についてですが、もう少しわかりやすい短いものを作る必要がある のではないか。詳しいものはあってもいいのですけれども、最初の取っかかりですっと 入っていけるような仕組みが必要なのではないかと思います。例えばポジティブ・アク ションのワークシートも、簡易ワークシートみたいな、誰でもが使えるようなものがある とすごく効果的なのではないかと思っています。余りきっちり網羅的につくらずに、すっ とポイントがつかめるような、工夫されたチェック表がいると思っているんですけれども。
村木課長
今度推進協議会が今提言のリーフレットもつくっておりますが、それを協 議会でも大変お叱りを受けましたので、今工夫中でございます。
岩男会長
それでは厚生労働省からのヒアリングはここまでにしたいと思います。 大変お忙しい中をありがとうございました。
 それでは、ただいまのヒアリングを踏まえて、女性のチャレンジ支援策についての 自由討議ということにしたいと思います。御自由に御意見をお述べいただきたいと思い ます。
八代会長代理
前から会議で申し上げているのですが、今の制度を前提として、微 調整で女性のチャレンジ支援をやろうと考えるのか、それとも今の制度自体が女性の チャレンジを阻んでいるわけで、大胆な規制改革をベースに考えるかで方法論が全然 違うわけです。今、御説明いただいた厚生労働省の短時間正社員も私の理解では現 状の制度をベースに考えているということで、まず、そういう整理をした上で、もちろん 両方やるのは大事なのですが、後者の観点からポジティブ・アクションについても同じ ように議論したらどうか。
古橋委員
八代先生に伺いたいのですが、労働契約期間1年については、もっと延 長していった方が労働条件としていいと思うのですが、そこについてはどのようにお考 えになっていますか。
八代会長代理
無期と一年未満の有期のどっちかという、両極端の雇用形態だけ ではいけないというお話はそうなのですが、既に制度はあるので、それは労基法の改 正によって2000年から3年を上限とする有期雇用契約という制度がもうあるのですね。 これが実質的に使えないのです。適用条件を厳しくしており、3年の有期の契約の対 象となる人というのには2つ条件があって、1つは、専門的労働者でなければいけな い。専門的の定義はまた修士号とか博士号を持っていなければいけない。もう一つ は、対象となる仕事が臨時的なものでなければいけない。この両方の制約がかかって いるからほとんど使い物にならないわけです。
 この有期雇用がすなわち不安定雇用であるという感じで、とにかく無期の日本的雇 用慣行以外の雇用計画全てだめだということでやっていますから、まさに中途採用と いうのは非常に難しい。それは1つは雇用保障が厳格過ぎるから、外の労働市場にい る人の方が、中の労働市場にいる人よりもはるかに能力があっても、それを入れ替え ることができない。もう一つは、仮に外から入れる場合にも、年功賃金ですから、同じ 能力を持っていたとしても、子育て期の女性の場合は未婚の人よりも当然年は取って いますから、それだけ多くの賃金を払わなければいけない。そうであれば、当然雇えな いわけですよね。
 ですから逆に言うと、有期雇用の労働者がもっと自由に雇えるようになって、しかも フラット賃金であれば、能力次第に応じて子育て期であろうが何であろうが、男性であ ろうが女性であろうが自由に雇えるようになる。
 それは法律ではなくて企業の慣行なのですけれども、逆に言うと、企業の慣行を前 提とした法体系がある。むしろ今の企業の慣行を守ろうという法体系があって、それが ある意味で女性の社会進出にとって最も大きなバリヤーになっているわけで、そういう 状況で微々たる補助金を出してやるよりは、むしろそういう労働市場の規制緩和という のは、特に女性にとって最も大きなベネフィットを持つと思っております。
古橋委員
5年ぐらいまでの有期でやってもいいのではないか。それをもっとどんど ん進めていけば、相当経営者としてもいいと思うのだけれども、そういうことができない のですか。
八代会長代理
それは雇用保障を絶対視する委員が含まれている厚生労働省の 審議会で決めないと法律改正はできないからです。
竹信委員
それは職種によっても違うんですね。
岩男会長
そうですね。
竹信委員
いわゆる派遣さえも非常に単純事務的作業だけをやるもので余り短期に 切られると逆によくないと。高度な専門的な仕事だったら5年でも3年でも次に移れま すからと、こういうふうに派遣会社の人もそうおっしゃっていますからね。
岩男会長
大学の教師などの場合は、今、進めているのが有期の採用ということで 人材の流動性を確保するというのが1つの大きな流れになっているわけですね。
松田委員
1年を超える契約は結べないのですが、5年契約ですと4回しか更新し ませんという形をとるのです、形式的に言うと。だから実質的には5年、最初から5年 契約というのは当然だめなのです。裁判所によっては、これを契約社員という定義をし ている場合もあるのですが、そういう例は非常に増えています。例えば1年だけれど も、2回更新で終わりにします。1つ言えることは、有期契約が仮に更新を重ねても、 いつでも必要に応じて雇い止めができるという場合の条件は、そのかわり労働条件は いいのだということでなければなりません。同じ仕事で雇用も不安定、労働条件も低い というのはどうなのかと思うのです。
岩男会長
先ほどの八代先生がおっしゃった点なのですけれども、少しきちんとここ で整理をしておく必要があると思うんですね。ここでとりあげようとしている女性のチャ レンジ支援は、特に今までやってなかったような新しいものであって、今までやってい るものを少し微調整するとかというようなことを考えているのではないと思うのですね。
 それから、現在どういう阻害要因があるのかを明らかにすると。好事例を単に挙げ るだけではなくて、どういう共通項があるのかを好事例から促進要因として抽出すると いうようなことをしたいと考えているのだと思うのですね。
 また、少子化のときも八代先生と御一緒にやってきて、例えば働き方を変えなけれ ばだめですというようなこともさんざんやってきたわけですけれども、ここでは、今の働 き方を前提とするというようなことではなく検討する。ただ、余りフィージビリティーのな いようなことを言っても仕方がないという制約はあると思うんですね。
 ただ、私たちが時間的なターゲットを今まで一度も検討してこなかったというのは少 し問題だと思います。限られた時間内にいろんな新しいものをつくろうというような話は 無理だと思うのですけれども、大きな方向というのは示せると思うのですね。そのあた りでどのように整理をしたらいいかということについて御意見を伺って、また先へ進めた いと思います。
住田委員
私が先ほど申し上げたのは、パート労働者を最終的に正社員化と言い ましたのは、安上がりの労働力であるところを打破して、雇用保障については、今のよ うな余りにも厳格な雇用保障についてまでは望まないと。どちらかといえば私はそちら の方ではないかと思うのですね。ですから安上がりの労働力であるところを是正してい くための措置としてどういうものが有効に機能するかという方策を幾つか考えていった らよろしいのではないかという気がします。
 それとともに、結局女性が外に出て行くときの家事、介護、育児支援を、女性の賃 金が安いがためにその支援措置の賃金がまた安くなるという構造ではなく、家事、育 児、支援についても、それなりの賃金体系をきちんとつくっていただき、雇用創出に結 びつけていただきたい。そこは相互援助でなくしてきちんとした雇用として、有償労働 として位置づけていただきたい。そういう視点も1ついただきたいと思っております。
竹信委員
正社員の話は、正社員をずっとやっている立場からするととても出にくい んです。一遍やめちゃうといろんなものを失わなければいけないというのがあって、単 に解雇規制の問題だけでなく、終身雇用があると、20代は安く、40過ぎてから賃金が 上がるので、何があってもそこでやめるわけにはいかない。そこに既得権益が発生す るわけですけれども、同じ長期雇用でも、そこの部分がフラットになっていれば、出入り がしやすくなるので、それも含めたらいいかと思っております。
古橋委員
当面やるべきことと、長期的にどうしたって直すべきことはこういうことだ ということを私ははっきりと書かないと問題は解決しないのではないかと思います。
伊藤委員
賃金の問題というのは、日本型の賃金体系をどう見直すのか、それを見 直すことができるのか。個別の業種によっては、かなり大きな問題ですね。そこはかな りネックになる部分だと思います。
住田委員
大企業の労働組合は大企業賃金体系を前提にしておられるので、少し 女性の立場と相反する場合があるような気がするのですね。例えば年金問題も、社会 保障問題にしましても。内閣府のこういう会議だと、個別の労働組合の利益が間接的 なので、そこは割合自由に言えるところがあるのではないかという気が1ついたしま す。
 それと雇用の安定といいますのも非常に重要なことですけど、女性にとっては、実 を言うとそれほど、2番目か3番目の優先順位になってくるような問題だろうと思います から、そこもはっきり申し上げていいのではないか。
 雇用の安定、解雇権の制限を極めて厳しくしたのは、実を言うと判例法がつくり上 げてきたもので、正当事由と同じようなもので、どこかで法律で穴をあけないと。先ほど の3年のものをどうするか、有期雇用の関係、そういうものについても制度としてつくっ ていけば、それを前例として、こういう制度もあるから判例ものっていくというところがあ ると思います。制度をきちんとつくっていくことは大事だと思っています。
松田委員
どうあるべきかということを中長期的に考えることと、現実にいま一歩何 を踏み出すか、それでフィージビルなことですね。今現在ある制度を変えるにせよ、今 の制度を活かすにせよ、こっちの方向ということはわかっていても、そこへ現実に達す るための現実可能な第一歩というのは一体何なのかというのがいまだにどうもよくわ からない。
 例えば、現在ある最低賃金制度の中で、同一労働・同一賃金的な考え方を打ち出 す。要するに地域最低賃金というよりも職種別最低賃金というのを職種間できっちり位 置づけていくというようなやり方を考える段階にもう来ているのではないか。
岩男会長
今、松田委員がおっしゃったように、戦略的なブレークスルーのキーポイ ントみたいなものは幾つかあると思うんです。そういうところに私たちは集中的に焦点を 当てて考えていくというようなことではないかと思うのですけれども。
古橋委員
女性の再就職ができない要因、それは賃金の問題もあるしいろんな問 題があるので、もう少し企業側から聞いたり、女性労働者からも聞いて、分析し、それ に対する施策を打ち出すということは私は大きな対策だと思うんです。八代委員に賃 金のところの可能性について、再就職についての、年功序列賃金というものがあるか ら再就職できないのか、そこのところを含めてもう少し教えていただいて、書いていった らどうですか。
八代会長代理
書いてよろしければもちろん書きますが、後の調整が大変だと思い ます。大事なことは、これまでの長期雇用保障、年功賃金というのは、労働者にとって は、無条件によいものとされていたことですね、しかし、現状では、特に男女の雇用機 会均等という立場から見れば、悪い面も生じていることをこういう公の組織に書くという ことは、ある意味で1つの大きなポイントだと思うのですね、言い方は別として。
 それから、先ほど見た資料のどこかに、いわゆる正規と非正規、パートの人との格 差は社会的身分の格差ではないという判例があるということなのですが、それは古い 判例であって、今は事実上身分の差であるというものもあるのではないか。
松田委員
丸子警報機の事件では、今の労働基準法の3条、4条というのをあわせ て読んで、均等の原則というのがあるのだと。それは法律上のいわば条理というか、 基本的な原則としてあると。だからパートと正社員が同じ仕事をやっているのに賃金が 違うというのは合理性がないという、それは和解になってしまったので高裁でどういう 判断を出すかわかりませんでしたけど、そういう感覚というのはぼつぼつ育ちつつある んですね。ですから最高裁の「パートは労基法3条の社会的身分に当たらない」という 判決は今や事実上意味を失いつつある。ただ、そういう判例がありますから、もう一度 最高裁までいって変えてもらわないことには下級審としては今のような言い方しかでき ないのですね。3条、4条あわせて読むというのはかなり苦心のあるところなんです が。
伊藤委員
労働の質と賃金の関係という問題は、日本の企業社会そのものを全面 的に見直すということにつながることですね。さっきの家事労働の問題も含めてです が、かなり大がかりな仕事になりますね。いってみれば、労働と賃金の面から1940年 体制をひっくり返すということだと思います。
八代会長代理
パートタイムの研究会の報告書にも同じようなことが書いてあって、つまりパートと正規社員とでは仕事の中身がある意味で合理的に違うのだと。ですか ら合理的な範囲の中で取扱いを変えてもいいのだというようなことは書いてあるので、 逆に言うと、それをうまく1つきっかけにして、例えば、十分な賃金面の保障があれば、雇用面のリスクをいわば賃金面でカバーするとそういうような契約を認めるような法体 系をつくるべきであるということは言えると思うのです。それは判例に待っていたらきり がないので、例えば実定法で穴をあける。現在はそれも禁止されているんですね。賃 金が幾ら高かろうが、要するに雇用保障が絶対であるというのが今の考え方であって、雇用の安定を賃金面で保障するという、いわば経済合理的な考えは全くないわけ ですから、そういうものを例えばここで提言するということは十分あり得ると思います ね。
山口委員
今までの慣行的な雇用形態を変えるということは物すごい大胆なことで すよね。パートタイムというのは通常女性がほとんど占めていて、かわいそうな非常に 劣悪な労働条件にいると思われますが、パートタイムの男性とパートタイムの女性が 組み合わせて、例えばパートナーがいた場合にそれだって生活成り立つわけですよ ね。さんざんおっしゃられているように、パートタイムでもちゃんと賃金保障が高けれ ば、もっともっと技能アップして、あっちこっちトラバーユできるわけですから、私は例え ばここでは大胆に、大変だ、困難だだけでなくて、未来志向で新パートタイム構想と か、何かそういうような従来のパートタイムイメージを払拭するようなアイディアを出して いくということ。もし自分がパートタイムである程度賃金が保障されていて、週3回働いて、週2回はほかのことがやれたら、もっと自分が幅広く社会性を持てるのではないか。何か女性の場合にはそういう新しい構想を入れてもいいのではないかと私は思い ました。
岩男会長
オランダのワークシェアリングなどはまさにそういうことで、いろんな能力 を持っているのに1つのことだけに使ってしまうのはもったいないから、複数の仕事をし ているというようなケースが随分たくさんあるわけですね。
竹信委員
その場合は社会保障まで絡んできてしまうと思いますので、そのことも 課題には、入るのではないでしょうか。
伊藤委員
賃金体系の見直しはセーフティネットでペアでないと困るということです ね。
住田委員
就労継続の話ですが、パートをやりますと、女性はパートの方に行くべき だという流れで継続就労というところからどうも誘導されそうでおそれております。最初 に申し上げましたように、育児・出産で就労を中断するのは労働力の質です。特に専 門職は落ちます。今までは就労継続のための出産・育児の支援のコストは、実は女性 自身がかぶっておりました。
 今回はかなり企業のコストとして考えるようになると、それに対して企業の方の若 干の反発もあるだろうと思います。最終的には社会のコストにすべきだというふうに考 えています。そのための社会保障的な制度をもう少し考えた方がよろしいのではない かという気がしております。それを年金にするのか、それとも補助金にするのか、それ とももっと大きな制度としてつくるのか、ぜひ、そういうところも話が及べばいいなと思っ ております。以上です。
岩男会長
予定の時間を過ぎておりますので、事務局から何か御連絡ございます か。
事務局
先ほどございました本日の議論に関して言い尽くすことができなかったとい う御意見につきましては、4月30日、来週の火曜日までに事務局あてFAXで送ってい ただければと思います。
 次回は5月17日(金曜日)1時半から、内閣府の5階の特別会議室でございますので、よろしくお願いします。
 以上です。
岩男会長
それでは本日の基本問題専門調査会を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(以上)