男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年6月10日(月) 13:30~16:10
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 経済分野における女性のチャレンジ支援について 
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
福岡県福間町説明資料 [PDF形式:649KB] 別ウインドウで開きます
資料2
広島市説明資料 [PDF形式:93KB] 別ウインドウで開きます
資料3
松田委員説明資料 [PDF形式:206KB] 別ウインドウで開きます
資料4
寺尾委員説明資料 [PDF形式:734KB] 別ウインドウで開きます
資料5
第9回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
それでは定刻になりましたので、ただいまから男女共同参画会議基本 問題専門調査会の本日は第12回の会合を開催させていただきます。大変お忙しい、 お暑い中をお集まりいただきましてありがとうございます。
 それではお手元の議事次第に従いまして本日の審議を進めてまいりたいと存じま す。当調査会では、前回から女性のチャレンジ支援のあり方について経済分野での検 討を行ってまいりましたが、本日は経済分野の最後といたしまして、公契約や補助金 の交付に男女共同参画の視点を取り入れている地方自治体といたしまして、福岡県 福間町と広島市からお話を伺い、引き続き松田委員と寺尾委員からアメリカでの取組 につきまして御説明をいただいて、それに基づいて検討を行う予定ございます。
 それではまず、公契約に男女共同参画の視点を取り入れることにより、女性のチャレ ンジ支援に取り組んでおられる福間町から、取組について御説明をお願いしたいと思 います。
福岡県福間町(総務部 青谷企画調整課長)
福岡県福間町企画調整課の課長を しております青谷と申します。よろしくお願いします。
 「男女がともに歩むまちづくり基本条例」という条例を制定しまして、平成14年4月1 日に施行いたしました。その背景というのがございます。「男女共同参画プラン・ふく ま」という実施計画を平成10年3月に策定をいたしました。基本条例を制定するに当 たっては、やはり平成11年6月に制定されました基本法の存在がものすごく大きゅう ございました。同じ時期に第4次福間町総合計画、この策定作業を進めておりまして、 ちょうど時期が同じころでして、総合計画の中に基本法ができるのであれば、基本条 例をつくろうということを、いわゆる行動目標の中に織り込むことができました。
 そういうことで平成12年4月1日から第4次総合計画そのものがスタートしたわけで す。けれども、平成12年4月に男女共同参画審議会に諮問いたしましたときに委員の 方が町長に、日本一の条例バージョンか、普通の条例バージョンかということをお尋ね になりました。町長は日本一バージョンでぜひお願いしたいということで申し上げまし た。審議会も大変だったろうと思いますし、私ども事務局も、日本一にするための努力 を私たちなりに一生懸命やったつもりでございます。
 2番目に、条例制定を支えた環境ということがございます。町議会議員の男女構成、 定数は20でございまして、女性議員が7名、35%を占めております。加えて首長と審 議会の信頼関係、これはあるんだろうと思うんです。特に男女共同参画審議会の場合 には強いものがあったと理解しております。また、非常に住民の皆さんに基本条例制 定に当たっては応援をしていただきました。
 一つおもしろい事例がございまして、今年の3月だったと思います。エンゼルプラン策 定のための住民意識調査をやりました。そのときに、あなたは子どもを健やかに生み 育てるためにどのようなことが重要なことだと思いますかという尋ねをしました。どの項 目が一番であったかといいますと、男性も女性と一緒に家事育児に参加していくという 考え方を広める、これが一番で40.9%という数字を占めました。経済的な支援などを上 回る数字を住民の皆さんが示してくれたことにものすごく喜びを感じました。そういった 住民の皆さんの応援の形があったということを申し上げたいと思います。
 それから、基本条例策定の方針ですけれども、基本法を尊重しながら福間町として の独自性を表現していこうということを肝に銘じてやっていきました。やさしく表現して 住民の皆さん、事業者の皆さんに理解され、支援される、支持される条例にしたい。こ の方針の下に策定作業に当たったわけでございます。通常ですと漢字ばかりの条例 の題名になってしまいますけれども、私どもでは平仮名つきの題名ということを採用い たしました。第4次総合計画の大きな柱の1つに、「男女がともに歩むまちづくりを進め ていこう」ということを大きな柱にしておりましてので、そのものを題名の中に織り込む ことができました。
 前文には「ですます体」を採用しております。審議の中で条文そのものも「ですます 体」にしてはどうかという提案がございました。検討はしたわけですけれども、前文の みとなりました。それから、定義で住民クォータ制というところを入れておるわけですけ れども、住民の中には、住民登録上の人たちだけではなくて、町で働く人、町で学ぶ 人も加えての住民という定義をさせていただきました。それから、クォータ制について は、平成11年ぐらいから、できるものから導入を始めております。今、私どもの町で50 を超える審議会等の設置条例がございますけれども、そのうちの半数以上は、既に クォータ制を導入しております。ほぼ3割で制定をしておりますけれども、男女共同参 画審議会だけは4割制定をしております。
 それから町の責務、住民の責務、事業者の責務のところを少し強めに表現をさせて いただいたところがございます。例えば、住民の責務ですと第5条でございますが、 「男女共同参画社会を実現するため、自立する意欲を持って、積極的かつ主体的に取 り組むとともに」という表現をさせていただきました。議会でも自立ということはどういう ことかというお尋ねがありましたけれども、答弁では、男女共同参画的自立という回答 をさせていただきました。それから、事業者等の責務の第3項が非常に注目をいただ いているところでございます。これについては、後ほどまた触れたいと思います。
 平成14年4月1日にこの基本条例を制定いたしまして、事業者の責務のところの、い わゆる指名願いの提出、この4月に建築、土木、コンサルについて1,386社から指名願 いの提出がありました。すべてが推進状況の届け出をやっていただきました。始めま す前には心配をしておったんですが、当然のように、何の問題もなく提出をいただいた ことに事業者の皆さんに感謝をしているところでございます。否定的な電話というのは 数えるほどだったと思います。本社レベルですか、あるいは支社レベルでいいんです かというお尋ねの電話がほとんどです。ほぼ順調に提出いただいたことに改めて感謝 をしたいと思っております。
 もう一つ申し上げたいのは、私どものフロアは総務課、それから財政課、企画調整課 という、いわゆる管理部門のフロアなんですけれども、課長なり課長補佐なり係長に は、女性はおりませんでした。今回4月1日の人事異動で、人事を担当します係長、財 政課の課長補佐席、企画調整課の男女共同参画係長に女性が参りました。その3人 がそのフロアに並んでいるわけです。指名願いを出しに来られ、なるほどこれを求める 町だなということを漏らされた方が何人かいらっしゃったということを申し上げたいと思 います。それから、指名願いを持ってこられた方から、市町村でこういうことをやってく ださって、ありがたいという声もいただきました。否定的なものよりも、肯定的にいろん な方が御意見を言いながら、登録事務を終えたというのは非常にうれしく思っておると ころでございます。
 推進状況のお願いも、条文では事業者の責務という形にしておりますけれども、「21 世紀のわが国社会を決定する最重要課題です。小さな町からの小さな発信ですが、 趣旨をご理解いただき、ご協力いただきますよう重ねてお願い申し上げます」というお 願いを、この文書をつけて、それから基本条例の写しをつけて、それから様式をつけて 事業者の方に出しました。報告書の内容も事業者の皆さんに負担にならないように、 できるだけ簡易なもので、その状況がわかるものということに配意して様式を作ったつ もりでございます。
 私どもの取組のいくつかを申し上げて報告を終わりたいと思います。
 小中学校に男女平等教育推進委員という方を各校に今年度から置きました。それか ら、町立の幼稚園、町立の保育所に男女共同参画指導員という職を持った職員を任 命いたしました。それから、子育てに関するいろんなことをする課がございます。それ ぞれの課が子どもに対する行政サービス、施策を総合的に展開するために、子育て支 援連絡会議を持ってやっております。
 それから、基本条例によって男女共同参画の相談窓口を持つようになりましたので、 それまでに先行している相談窓口との連携をとるために、相談窓口連絡会議というの を2月に1度行うようにしております。条例の名に恥じないようにということで、後期実 施計画が始まりましたので、男女共同参画の実現に向けて積極的な施策の展開をし ているところでございます。
 以上です。ありがとうございました。
岩男会長
ありがとうございました。それでは引き続きまして、から、補助金交付に 男女共同参画の視点を入れている取組について御説明をお願いいたします。
広島市
(市民局人権啓発部参事 藤田男女共同参画室長) 広島市の藤田でござ います。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料2に沿いまして、広島市の男女共同参画推進条例の17条に規定をしております 「補助金交付における男女共同参画の推進に関する措置」について御説明をさせてい ただきます。
 広島市におきましては、平成13年9月に条例を制定しております。前文と第1章の総 則に条例の目的、基本理念、広島市あるいは市民・事業者の責務、また性別による 人権侵害の禁止について規定しております。第2章では、男女共同参画の推進に関 する基本的施策を掲げており、第3章に雑則と、全20条で構成をしております。
 広島市の条例には3つほど特徴がございます。
 1点は前文でございます。出だしから「原子爆弾によって」というふうに書いておりま すけれども、原子爆弾によって壊滅的な被害を受け、その体験から世界の平和を希求 してきました広島市におきまして、男女共同参画社会の実現が、本市が目指します国 際平和文化都市、これは都市像として掲げておりますが、その実現に欠かせない要 件の1つであると前文でうたっております。
 2つ目といたしまして、第9条に、広島市が事業者あるいはその他の団体に範を示す ということで、政策決定過程への女性の参画の推進に努めるということをうたっており ます。
 そして3つ目が第17条「補助金交付における男女共同参画の推進に関する措置」と いうことで、「市長は、補助金の交付において、必要があると認めるときは、方針の決 定過程への女性の参画」、ですから、補助金交付団体の方針決定過程への女性の参 画の推進、「その他男女共同参画の推進に関し、適切な措置を講ずるよう求めること ができる」という規定を設けております。この3つが本市の条例の特徴となっておりま す。
 条例制定の理由、背景には2つございます。
 1つには、広島市におきましても、広島市の男女共同参画の基本計画に当たります 「ひろしま21世紀男女共同参画プラン」を策定しており、それに基づきまして各種施策 を推進してきておりますが、平成12年に本市が実施いたしました調査結果で、性別に よる固定的な役割分担などによります男女格差が存在するということが明らかとなって おります。政策方針決定過程への女性の参画ということでは、市の職員の管理職の 数、議員に占めます女性の数、審議会等の委員の数は、政令市の平均をいずれもま だ下回っているという状況がございます。
 それと、17条の補助金の関係で申しますと、同じく平成12年の調査結果で、町内会 あるいは近所づき合いなどでの男女の地位平等はどういうふうになっているかというこ とを尋ねておりますが、男性が優遇されているという割合が4割を超えているという状 況がございます。
 2つ目の制定の理由でございますが、男女共同参画社会基本法を受けまして、広島 市としても、地方公共団体の責務を遂行するということに加えまして、地方分権の時代 でございますので、広島市において、主体的に男女共同参画を市民の手によって進め ていこうということで条例を制定いたしました。この理由のほかに、市長の男女共同参 画の推進に対します積極的な姿勢が条例の制定に大きな力になったと思っておりま す。
 次に、条例の制定の経緯でございますが、平成12年9月に条例を制定する必要性を 市民にアンケート調査いたしましたところ、回答者の約5割、49.8%の方が条例は必 要という意見であり、これを踏まえまして、広島市において条例を制定することを決定 いたしました。その後、平成12年の11月から13年3月にかけまして、広島市男女共同 参画協議会で条例に盛り込む内容について御審議をいただき、また市民の方からも 意見募集を行っております。17条の補助金の交付における男女共同参画の推進につ きましても、この審議会の中で提案がなされております。その経緯といたしましては、 条例作りに取り組んでいる市民グループの集まりの中で、地域活動への男女共同参 画が進んでいないという意見が出されまして、こうした状況を解決していくために、地 域活動等を行っている団体のうち、市から補助金が交付されている団体に対しては女性が方針決定過程に参画できるよう、例えば女性の役員の割合を設定するよう規定し てはどうかという意見が出されたことがきっかけでございます。市民からの意見募集の 中でも、市の補助金交付団体に対して、そうした男女の共同参画を推進するように規 定するようという御意見を頂いており す。
 こうした意見を踏まえまして、男女共同参画協議会から提言として頂いたものが「男 女共同参画に関する条例の基本的な考え方」でございます。この中に、現在の条例 17条の基本となりますものが提言されております。その後、この提言を踏まえまして、 条例試案を作成いたしまして、更に市民の意見を聞いた上で、文言等一部修正の後、 昨年9月に市議会に提案して可決をされております。17条につきましても提言と現在 の条例の文言とは一部異なっておりますが、趣旨はそのまま反映をいたしておりま す。
 この17条の規定につきましては、市が補助金を交付しております団体に対しまして、 男女共同参画の推進に関する措置について、行政指導を行う根拠と考えております。 例えば、措置を講じる可能性が十分ありながらも、行政指導を何回も繰り返しても、な かなかそういった状況に至らないというような場合に限ってのみ、例外的に補助金交 付条件に付けるようにしていきたいと考えております。具体的な行政指導の内容と方 法につきましては、それぞれの団体の現状、団体の性格によって一律に決めることが 難しい状況がございますで、その性格等に応じた内容にしていきたいと考えておりまし て、今、運用のための基準づくりに向けた事前の作業を行っております。
 運用に向けた取組ということでは、行政指導の方法、内容を検討するため、補助金 交付団体の男女共同参画の現状調査を、各補助金を所管しております所管課に対し て実施をいたしました。調査対象は広島市が補助金を交付している事業326件につい て各団体へ必要に応じて聞き取りを行うなどの方法で調査をいたしております。調査 項目は、今後団体に措置を求めることになると考えられるものとして、「団体の方針決 定過程の女性の参画の状況」、あるいは「団体活動における男女の固定的な役割分 担の見直し」に関連する項目を聞いております。
 その結果の概要でございますが、調査回答のありましたほとんどの団体で女性が会 長職へ就任できない慣行、あるいは団体の方針決定過程に関与しない職に女性が固 定的に就任をするというような慣行はないという回答がございました。ただ、その一方 で、現実に会長、副会長職等がいずれも男性であるとした団体が約7割ございまし て、また、役員のうち女性が少数であるとした団体も7割ということで、慣行はないとし ながらも、実態としては女性が方針決定過程に参画することがまだ進んでいないとい う現状が明らかとなっております。
 今後の進め方でございますが、実数としてどれだけの女性の役員がいるかというよう なことも把握ができておりませんし、また団体における男女共同参画のための各種の 取組についても、具体のものが把握できていないということで、補足調査をいたしまし た後に、措置の基準を作成してまいりたいというふうに考えております。
 最後ですが、進めていく上での課題として3つあろうかと思っております。まず1つが 先ほどから申しております基準作りでございます。国や県の補助事業に伴って市が一 定のルールで補助していくものにまで補助金の返還に及ぶような交付条件が付けら れるのかというようなこともございます。団体の性格、現状補助金の性格を整理した上 で、それに応じた基準を作成していくというのが1つ大きな課題でございます。
 それと、2つ目といたしまして、補助金交付団体に措置を求めることとなります市の 職員が男女共同参画の必要性について十分理解を深めるための研修が必要であると 思っております。
 最後3つ目といたしましては、団体に対しまして、男女共同参画について関心と理解 を深めるための取組が重要であり、そのために啓発・学習とあわせて行っていく必要 があると思っております。
 今後速やかに作業を進めまして、こうした取組を通じまして、条例の前文にもござい ます豊かで生き生きとした「ひろしま」を実現していきたいと思っております。
 以上でございます。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、委員の方々から御質問あるいは御 意見をいただきたいと思います。
古橋委員
福間町が非常に先進的なことをやられて、独自性を出されていることに 敬意を表します。実際に協力してくれたから問題なかったと思いますが、もし協力しな いところが出てきた場合にはどういう措置をおとりになろうとしていたのか、通達におい ては協力依頼という形になっておりますけれども、その条例の解釈についてどうお考え になっているのか。
 広島市については、補助金については、裁量の余地がある。しかし、補助目的から 見て過度な条件は付けることができないということになりますけれども、農林水産省が 農林行政指針というのを出して、補助金の返還まで求めるというようなことまでやって おりますけれども、そういうことについて何か農林水産省との関係であれば教えていた だきたいと思います。
福間町
私は男女共同参画社会基本法に書いてあります国民の責務からします と、出さないというところはないということを前提に考えておりました。仮に出されないと いうことがあった場合には、こちらが登録に必要な書類として、その推進状況の報告を 必要な書類の1つとして位置付けています以上、その添付がない場合には、受付をで きないということを前提に進めるようなことになったであろうと思っております。地方自 治法167条の5の第1項の経営の状況にそれを当てはめるのは非常に難しいのでは ないかという御指摘がございました。私どもは、この基本法ができ、男女共同参画社 会を実現しようとしたときに、入らないということはないだろうというふうに思っておりま す。仮にそのことについて、事業者の方から問題提起されたときには、おそらく闘う姿 勢でということになるだろうと思っております。小さな町からの発信ではございますが、 それが一石を投じられるということになると思っております。
岩男会長
書類を御覧になった上で何かそれを判断の材料に使われたかどうかと いうことも併せて御説明をお願いします。
福間町
判断の材料には使っておりません。実際に、育児・介護休業法の改正に よって努力義務が義務規定になったところも、違反しているということを出されている事 業者もいらっしゃいます。そのことについて、あなたのところは間違っていますよとかと いったところまではしておりません。
広島市
先ほど申しましたが、補助金の返還につながるものについては、極力例外 的な場合に限るように考えております。例えば、団体の状況を確認しまして、現実にど こまで努力が可能かということを話し合いながら、計画性を持って指導をしていく。実現 が可能であるにもかかわらず、数回指導しても行わない場合について、補助金の返還 を伴うような交付条件を付そうと考えております。農林水産省の方から、特にその件に ついて指導はございません。先ほども申しましたように、補助金の性格で市の方が国 とか、県の補助金の要綱等に基づいて、義務負担という形で補助するといったものに ついては、取扱いを今後検討することにしておりまして、補助金の返還を伴う交付条件 を付すということが果たして妥当なのかどうか検討するよう考えております。これは今 年の4月1日施行ですが、今まだ基準作りをしておりまして、実際には運用しておりま せん。これから基準をつくっていきますので、まだ条件を付すということはしておりませ ん。
住田委員
先進的な取組について非常に興味深く聞かせていただきました。お二方 にお尋ねしたいんですが、今回の条例につきまして、ほかの市町村から参考にしたい とか、そういう反響はあったのでしょうか。それからもう1つは、この条例作りに当たっ て、男女共同参画のために様々なアイディアがおありだったと思いますが、今回実らな かったもので、また今後入れたいと思われるようなアイディアがあれば、参考のために ぜひ教えていただきたいと思います。
福間町
予想以上に各市町村あるいは都道府県の反応をいただきましてびっくりし ておりますし、随分勉強もさせていただいたというふうに思っています。いい条例にしよ うということで、私たちが考えておりますことすべてを捻出して条文の中に織り込んだ つもりでございまして、ほぼ、町長にも認めていただき、町議会にも認めていただきま して、私どもが持っているすべてが基本条例の中に反映されたと思っております。
広島市
新聞等でもこの条例の御紹介をいただきまして、何件か御照会等もござい ますし、同じ政令市の中で同じ取扱いを条文の中に盛り込まれた都市もございます。
 また、基本的には男女共同参画協議会の提言は、ほぼ反映しております。ただ、 個別具体のものにつきましては、条例に規定すべきことと、基本計画に盛り込む具体 的なものという仕分けをいたしまして、策定中の基本計画に盛り込んでいきたいと思っ ております。
山口委員
福間町に伺いたいんですけれども、この条例を作るときに、議会で一番 質問が集中したところ、議論の対象になったところはこの契約のところだったのでしょう か。
 また、町議会に非常に女性議員の方が多いようですが、女性議員が推進力になっ たのでしょうか。
 それから、男女共同参画推進状況報告書ですが、参画というのは物事を決定する ところに加わることですから、雇用に関しては管理者数のところだけではないのでしょ うか。このへんはちょっと曖昧かなという感じがするんですが、どのようにお考えなので しょうか。
 いずれにしても、町や村というのは非常に役割分担の強いところだから、その配慮 は私はすごく評価します。
 それから、広島市ですけれども、補助金を受けるところはすべて対象になるのです か。
広島市
今のところ、補助金交付団体はすべてを対象として考えています。ただ、 個人を対象としておりますような補助金は、団体の方針決定過程への参画などの目 的にそぐわないため、対象から外して考えております。
福間町
基本条例について議論が集中したところという点でございますが、正直に 申し上げまして、集中しておりません。議会自体も全面的に支援していただいたという ふうに思っております。本会での採決は全会一致ではなかったんですが、総務常任委 員会で審議いただき、そこでは全会一致で御賛成をいただきました。今後啓発をどの ように進めていくつもりなのかといったような議論が中心でございました。
 女性議員の推進力は本当にあったと思います。女性がいない会派が1つだけある んですが、そのほか全部会派に女性議員がいらっしゃって、その方が賛成と言えば、 その会派の男性議員も賛成してくれたような気がします。反対があったのは男性だけ の会派でございました。
 報告書については、御指摘のとおりだろうと思います。市町村ですから、まず意識 付けをしていただくということが私どもの役割と思いました。指名願いの作成は、事業 者にとってかなり労力の要ることだと思います。加えて、新たな様式を付けるわけです から、できるだけ負担にならないように考えてやってまいりました。だんだん様式を充 実させていく形で進めていきたいと思っております。
高橋委員
先ほどの話で、両者とも首長さんが非常に積極的ということに意味が あったというお話でした。やはりリーダーがそういった意識を持つことが非常に重要だ なということを感じさせられました。
 リーダーばかり頑張っても不十分だろうと思いますが、福間町では住民の非常に 強い支援を頂いたということですが、どうして支援が強かったのかという点についてお 感じになったことがあったら教えていただければと思います。それと、広島では、数字 を見ると、政令指定都市の中ではあまり進んでいないということですが、住民の支援 はどんな感じだったのでしょうか。
 もう一つ、福間町の基本条例を見ますと、クォータ制の定義は、かなりフレキシブル に考えることができるようになっていると思いますが、この条文を入れられるときにどん な議論があったか伺えればと思います。
福間町
私どもの町長は、住民参画のまちづくりを標榜しており、いろんな形で住民 参加の手法を取り入れて、総合計画を作ったり、条例作りをやったりしております。平 成13年度には住民参画のまちづくり総務大臣表彰も頂きました。
 この基本条例でも、公募を一生懸命やりました。行政を信頼いただくような形です ると、住民の皆さんものすごく応援してくださると思っております。そういう活動の積み 重ねが住民の強い支援があったと感じる1つかなと思っております。
 それから、クォータ制については、この条例に書きます前から、各種審議会等の設 置条例の中に織り込んでいるものもございまして、特に議論があったわけではござい ません。当初クォータ制を導入しますときには、候補の委員が女性委員候補がいない とか、見つけてくれるんですかという議論もありました。また、委員の選考の基準とし て、各種団体の代表者を列記しているものが多うございました。各種団体の代表者と いうのは男性が多く、こちらが選考する余地もなく、男性しか選任できない状況になっ ており,その充て職を全部取っ払うという作業もやってまいりました。選考基準が明ら かにならないから非常に不透明になるんじゃないかという御指摘もございましたけれど も、これは削除した方がいい条文だから、理解してくださいとお願いしてやっておりま す。
広島市
住民の支援ということでございますけれども、条例作りに当たりましては、 任意の女性のグループができ、その中で条例にこういうことを盛り込んでほしいという ことで、勉強会をされ、意見も出されたという動きがございます。また、協議会を傍聴さ れたり、また、市民意見の募集で意見を頂いたり、条例の試案ができた段階では、任 意の団体の方々がシンポジウムを市と共催で開催をされ、市民みんなで考えていこう という取組もしていただきました。そういう意味で、条例作りには市民の方の御支援が ありました。
古橋委員
業者登録をする場合に、いろいろな点数を付けます。男女共同参画の推 進状況は、その点数の中でカウントしておりますか。
福間町
今回はしておりませんが、将来はしたいと私は思っております。
古橋委員
カウントする基準作らないといけませんが、おやりになると考えておられ るわけですか。
福間町
私の認識不足で今の状況はどうかわかりませんけれども、仕事と子育て の両立支援策を閣議決定されて、近々指標を作成するということでしたので、その指 標を心待ちにしておったんですが、出なかったものですから、先行してやりました。そ の指標が出てくると、私どもの参考になるのかなとに思っております。
古橋委員
その場合は、点数は公表なさるつもりですか。
福間町
するのであれば、ほかの評点と同じ取扱いになろうか思います。
岩男会長
ありがとうございました。それでは次に進ませていただきたいと思いま す。海外での取組といたしまして、松田委員から資料3について御説明をいただきたい と思います。
松田委員
アファーマティブ・アクションとは、もともとは衡平法上の救済措置を指す 言葉であり、英米法系の下では、裁判所も、アファーマティブ・アクションを含む必要な 救済措置を命ずることができることになっております。この点、我が国には、そういった 手法上の救済措置というのは定められておりませんから、若干事情は異なっているか と思います。例えば、全国労働関係法における不当労働行為の救済をする場合には、 NLRBという行政委員会がアファーマティブ・アクションを行うわけです。
 公民権法の雇用平等を定めた第7編では、明確にアファーマティブ・アクション、ある いはその他の衡平法上の救済を与えることができると裁判所に権限を与えています。
 公契約を利用するのは、ルーズベルトのニューディール以降、極めて活発に用いられ た例でして、特に連邦政府が資金を交付したり、その資金によって業者を決めたりする 際には、法律、憲法に反しない限り、条件を付することができるように認められており ます。日本でいう労働基準法を制定する前に、全国一律に設けることは風当たりが強 いことから、政府関連企業について最低賃金の制度というようなことを入札要件の中 に加えることを行ったのが、法律による公契約に際しての条件付けの第1ですが、特 に差別問題については、公民権法で最初から差別の禁止規定というのが定められて いたわけで、法律の大きな枠組みがあったわけです。
 それを大統領令によって公契約の条件にするようになったのは、ルーズベルトの 1941年の大統領令8802というのが最初です。次にトルーマンの10308、それからアイ ゼンハワーの10479、共和党、民主党ともにやっているわけですが、当時は、差別をし ないということだけをうたえば、それで足りるというようになっていました。禁止条項に 反する申立てがあったような場合には調査をすることになっていますが、あまり実効性 はなかったと言われています。実効性が出てきたのは、1961年のケネディの10925と いう大統領令でして、単に差別をしない旨の条項を設けるのみならず、アファーマティ ブ・アクション、積極的な措置を採ることを義務付けました。ただし、ここでいう積極的措 置は、数値目標を掲げるということではなく、教育、研修、採用、募集という際に何らか の措置を採ることを規定にうたう、契約条件の中に会社側から自発的に取り入れさせ るということでした。これが有効に機能し出したのは、実施するための大統領委員会、 EOCの前身ですが、それを設けて、執行に当たらせたということがあります。しかし、 この程度ではあまり効果がないということで、ジョンソン大統領になってから、11246で マーケットに おける有資格の労働者の比率を配慮した上でアファーマティブ・アクショ ン・プランを作ることが具体的に定められることになります。フィラデルフィア地域におけ る連邦政府の基金による建設産業への請負業務に関して、具体的なアファーマティ ブ・アクション・プランを作るることを求めたというのが最初ですが、これが合憲・合法で あるということで、この手法が今日に至るまで用いられています。この中では、具体的 にある一定地域に何マイル四方に住んでいる人たちの技術なり資格を持ったマイノリ ティの比率を十分に配慮した上でアファーマティブ・アクション・プログラムを作ることを 求めています。
 そういうことで、1971年以降こういった制度が用いられるようになって、この年に連邦 最高裁がいわゆる間接差別、結果的にマイノリティをディスカレージするような制度は、 仮にそれがニュートラルなものであっても差別になるという判決を出した。例えば、一 定の試験を合格しないと昇格させないことは、黒人といった過去の教育差別によって 大きなハンディを負っている人たちがほとんど落ちるということになるので、意図したも のでないにしても、それが事業の遂行にとって必要であることが実証できない限りは 差別に当たるという差別的効果法理の発達によって、クォータといいますか、少数者の 割合というものを積極的にアファーマティブ・アクションの数値目標として掲げるように なった。それが合法であるためには、あまりコンクリートなものではなく、アバウトであ ることも必要ですが、同時に、目標を達成できなかったときに、直ちにその処分をする というのではなく、公平な反論の機会を与え、審理をすることが前提になっている以 上、違憲でも違法でもないという裁判所の判断に基づいて、そういう運用がなされてお ります。
 具体的には、11246、これは11375という大統領令によって女性が加えられ、連邦労 働省の中に設けられております連邦契約監視局がその運営に当たっているんです が、1991年以降、共和党政権の下では、予算措置が十分でないとか、いわゆるポリ ティカルアポイントなどでヘッドが変わるということがあってかなり低調になり、強硬措 置もとられなくなるという変遷はありますが、一貫してこの制度が今日に至るまで用い られている。
 ただ、1995年に、アダランド事件、これはいわゆる中小企業法で、特に建設業者の 場合には下請けがマイノリティによって経営されているものを何%か含まなければなら ないという規定が違法であるとされて、それ以来、ややアファーマティブ・アクションを 含む公契約についても、低調になっているということです。
 最後に、簡単に我が国へのインパクトというか、インプリケーションを申し上げたいと 思います。まず行政救済としては、不当労働行為の労働委員会による救済制度の中 に、条文上は労組法の27条の4に、申立人の請求に係る救済を運用するという見方を しておりますが、内容的には最高裁判所が第2鳩タクシー判決で認めたように、必要と 思われる救済を将来に向かって発することができるというように広い裁量権を行政委 員会が与えられておりますから、全く同じわけにはいかないかもしれませんが、日本に 全く先例がないというものではないということです。それよりも、日本の場合には、むし ろ行政指導という独特の手法がありますから、行政手法の根拠的な意味での施策を 設けるということは十分に可能ではないか。
 特に重要なのは、アメリカにおいても、当初は差別を禁止するということをもっぱらし ていたのが、ある段階から積極的に将来に向けて是正していくというように方針が変 わってくるわけです。これは1961年あたりがきっかけになるわけですが、我が国でも単 に雇用における差別を禁止するということから、男女共同参画という、いわば一皮向け た政策的な展開が示されていると私は思っているので、そういう意味では十分に日本 の基本政策と符牒が合うのではないかと思います。ただ、アメリカにおいてもそうです が、当初はそれぞれ契約の主体になっている官庁が抵抗を示す。官庁によっては全く ネガティブであったり、それが実施に際して問題とされていたようですから、我が国に おいても、そういった抵抗を排除して統一的な運用を図るための工夫は十分に考えな ければならないのではなかろうかと思っています。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、寺尾委員、よろしくお願いいたしま す。
寺尾委員
それでは、私は松田先生と多少ダブるところもあるかと思いますけれど も、実際にどうやってこのプログラムが動いているのかということを中心にお話をしよう と思います。
 初めに、押さえておきたい点が2点あります。
 1つは、政府契約との関係で要求されている基準と、それとは離れて、アメリカの企 業であれば、ほとんどの企業が従わなければならない第7編もありまして、それは明ら かに区別をされています。任意で政府と契約をするのだから、気に入らなければ契約 しなければいいんだから、これだけのことを政府は要求しますよということで、はっきり 区別されているということが第1点です。
 それから、松田先生はアダランド事件にお触れになりましたけれども、アダランド事 件では、明らかに少数者を有利にするということが明確だったんですね。つまり、マイノ リティ企業についての定義があって、そういう企業に一定割合の公共事業の請負契約 を割り振るべしという、明らかに底上げをするクォータ制だった。アファーマティブ・アク ションというのは、差別をしませんよという不作為ではなくて、差別をしないということを しないように積極的に努力しますという意味に過ぎませんので、アファーマティブ・アク ション=クォータだと思っている日本の理解は違うということを感じました。福間町が積 極的に取り組むという表現をしておられますけれども、そういう差別をしないように積極 的に取り組むのがアファーマティブ・アクションだということです。
 それでは、大統領令の11246号にどんなことが書いてあるのかということですが、政 府契約の中にこういうことを盛り込みなさいということを言っております。それが202条 です。次に、機会均等条項というのは、人種とか性別とかにかかわらず、雇用に当 たって、あるいは昇任する、配転させる際もみんなかかわってくるんですけれども、機 会均等しているかどうかの遵守報告書、これはコンプライアンス・レポートといいます が、その提出義務を課している。それから、一部の業者に限って、労働長官が例外と するという認定ができますということが204にあります。
 それから、労働省に連邦契約監視局が置かれているんですけれども、そこが全部や るわけにはいきませんので、各省庁に言うことを聞いてもらわなければいけないわけ で、203条から208条には各省庁と労働長官との関係についての規定があります。
 それから、違反した業者に対して氏名の公表という制裁規定もあります。また、違反 を発見したものから司法長官へ通知をし、司法長官のアクションを促す手続きもござい ます。
 Ⅱの場合は、連邦政府と直接に契約をするもの、Ⅲの方は補助金をもらうものと2つ 分けております。
 具体的にどうやっているかということですが、行政について、額が小さいところは義務 が軽いんですが、50人以上の従業員を雇っていて、連邦政府と5万ドル以上の契約を しているものについては、毎年コンプライアンス・レポートを出しなさいとなっておりま す。それ以上の多額契約をしている人は、先に機会均等をきちんと実施していることの 認定=お墨付きをもらわないと契約できないし、入札もできないということになっており ます。
 おもしろい点は、202条です。政府と契約をする相手が下請けに出す場合、物を買う 場合に、契約の中に同じ内容を書き込むことを要求しています。その結果、アメリカの 全労働者の3分の1がカバーされているという大きなインパクトを持っています。
 ちなみに、アメリカの連邦政府の総財政収入は、アメリカ人の税金の半分は連邦政 府に行っていますので、かなりの規模です。もちろん軍需産業等々があるんですけれ ども、州と自治体を合わせたのと同じぐらいの税収入を連邦政府は持っております。
 コンプランアンス・レポートですけれども、福間町よりはるかに厳しい中身になってお りまして、いろんな職種に資格を分類して、その中に占める男性・女性、各人種の割合 の数字を全部出させるようになっております。政府契約の中に労働長官が要求した情 報は全部出しますということを初めに契約の中でもって書かせているんですね。それか ら、会社の持っているいろんな記録へのアクセスも保証しており、立入調査もよいとい うことも初めに政府契約で書いてある上でのことですので、要求して出させておりま す。
 一方では、大きな業者ですと、法人の取締役の中に責任者を一人必ず任命しなさ い。その人の下に、この企業でちゃんとやっていますという仕組みをつくりなさいとし、 他方で、労働組合にも職員にも知らせなさいと。したがって、従業員が社内の苦情申 立機関を使って苦情を申立てていけるし、私人が、自分の雇い主はちゃんと守ってい ないよという苦情を裁判所に持っていくことはできないんですけれども、労働長官に訴 えるということはできるんですね。それを聞いて、労働長官は情報収集して動けるとい う仕組みになっております。
 制裁としては、契約解除や取引停止という厳しいものが準備されているわけですが、 救済方法の中身を実際にどうやって作っていくかということが一番問題です。こういう ふうにしなさいということを押しつけることは実際にはいろいろ難しいわけです。そこで まず、どういう状況の中にどういう差別があるのかを基本的には事業者自身に自己診 断をさせる。ユーティライゼーション・アナリシス、すなわち、ちゃんと人材活用している かという分析を自分でさせることから出発しております。メルクマールごとに数をとっ て、報告をさせる。自分で何年間かの改善計画を立てさせて、その計画の実施をモニ ターするという方式をとっております。
 例を見ましたら、当該事業所の位置する地域の女性の失業率を出させ、当該領域の 労働市場の女性労働者の割合がどのぐらいか、全体の労働人口の中での割合がどう かとか、当該職種に必要な職能を持つ女性の数、リクルートの可能性、こういう数字を 業者に出させて、それを分析するという方法をとっております。そして自分で自己診断 させて、どの分野にアンダーユーティライズドがあるのかというターゲットを設定させ、 改善計画を自分で出させるという方式で、うまく相手からいろんなことを引き出すような 方法でやっております。
 フェデラル・コントラクト・コンプライアンス・プログラムという連邦制約遵守プログラム のマニュアルがありまして、そのマニュアルには、例えば調査官が調査をするときに、 どこをどうチェックしろということも全部書いてある。それも、やりとりを通じて、規則制定 権なんかを行使してプログラムの内容を詳細化していったんだと思います。
岩男会長
それでは、大体20分ぐらい質疑応答とさせていただきたいと思います。
竹信委員
いろいろな細かい分析をするということはすごく重要なことだと思うんです けれども、日本でやった場合、何が壁になって、何があればできるのかということにつ いて、いい助言はありますか。
寺尾委員
アメリカの場合は、1950年代、60年代における日本で公民権運動と訳さ れている運動の高まりがありました。まず人種問題がわっと出てきたわけです。それ でどうにかしなきゃいけないという国民的合意が紆余曲折の上成立し、ここまでできた ということはあると思います。まずはそこですね。連邦政府がやるぞとなった。しかしど うやっていったらいいのかわからなくて、現場とのやり取りの中からだんだんと細かい 具体的なやり方が生み出されてきたんだと思います。いろいろな指標を立ててやると いうのも、訴訟で、これは間接差別の場合ですけれども、ある仕組みでプロモーション を決めているということが、マイノリティとそうじゃない人たちに違った影響を与えている ということが統計的に出ますと、強い差別の推定が働くとする判決が出ました。この推 定は、実際上覆すことは難しいので、制度が偏ったインパクトを持っているということを 言えば勝てる状況になってきた。それが背景にあって、あなたのところは何人足りない じゃないかという話が現場でできるようになっていったということもあると思います。差 別を単に禁止する法制度だけではこうはならなかったと思います。
岩男会長
アメリカの場合には、女性だけではなく、肌の色、宗教とか、いろんなカ テゴリーで差別が日常的にあって、それがにっちもさっちもいかなくなったものですか ら、そこへ女性も1つのカテゴリーとして入れることができたので比較的扱いやすかっ た。日本の場合はそういうものがなくて、女性だけがターゲットになってしまって、もろ に反発を受けてしまうということがあるのではないかと思うんですが。
松田委員
有名な話ですけれども、公民権法に女性差別の禁止もうたわれるように なったのは、公民権法の改正反対が法律をつぶすつもりで入れたんです。ただ、その 後女性を、他の少数者とちょっと違った要素がありますから、区別して、女性の社会的 進出を促進するための特別な措置というのも並行してやられているんですね。女性が 事業を興すときに特別な融資枠を与えるとか、そういう措置というのをとられています から、そのへんがちょっと参考になるのかと思います。
岩男会長
それは多分、連邦政府のレベルよりも、州のレベルでやっていると思い ます。
竹信委員
アメリカのNPOの人から日本も性差別、年齢差別、部落差別云々という 差別がいっぱいありますよね。差別禁止法というのを作れば、もうちょっと力が出るん じゃないですかと言われたことがあります。
岩男会長
もう一つは、アメリカのように、アンダー・ユーティライズしているのをもっ とユーティライズすると、もっと得になるんですよというインセンティブを与えるような形を 企業なんかに求める方が、日本的であまり抵抗がなくていくのかもしれません。
松田委員
公民権法の改正が行われたきっかけになったケネディのニューフロン ティアというは、まさにそういう発想です。我が国の場合も、今そういう時代に来ている のかなという気がしますね。
樋口委員
少子化の問題だって、アメリカでは出生率は日本なんかよりずっと上な んですよ。景気がどうなのかということは判定は難しいとは思いますけれども、考えよう によっては、育児休業だとか、あるいは公的な保育所とかはほとんど何もできていな い国で、企業の中での女性の進出は進み、出生率も先進国では最も高い国の1つで す。それはいろんな要素があるでしょうけれども、日本でも、政治や行政の分野では少 しずつ女性を出していこうという方法論とか運動は起こっているわけです。企業での女性進出というのが、一番低調じゃないと思っているものですから胸を痛めながら聞いて いました。
 松田委員に質問なんですけれども、日本の労働委員における女性比率を御存知でし たら教えてください。
松田委員
労働委員会は三者構成になっていますね。公益委員で多いところでは7 のうち3人とかですが、全体的にいうと10%までいかない。それから労使の委員です が、労側はこれでも大体1人ぐらいずつ入れる。使用者側にはあまりいないんですね。 ですから、全体的に見ると、とても1割まではいかないぐらいでしょう。
岩男会長
アメリカではダイバーシティ担当役員を決めなければいけないというよう なことがあるというお話がありました。日本でも、例えばチャレンジ支援担当役員という のを少なくとも従業員300人以上の企業では決めていただくというようなことを、このプ ログラムの中で要求をするということも考えられるのではないでしょうか。
寺尾委員
政府は国民の税金を使っているんですね。政府契約でやるという発想 は、1つはそれなんです。それが気に入らなければ、政府に物を売らなければいい、取 引しなければいいといってしていないところもたくさんあるわけですから、そこは分けて 考えられると思うんです。
岩男会長
アメリカの細かいのを見ると、これを出すのは大変というような感じがす ると思うんですけれども、アメリカの場合非常に違うと思いますのは、詳細なことを求め るけれども、わからないといくらでも聞けるんです。ですから、日本でもそういう対応が 必要だということだと思うんです。
寺尾委員
ホームページがあって、フォーム(諸種の書式)もとれるようになっている わけです。
岩男会長
要するに、教育をあまり受けていない人でもちゃんと書けるようにいろん なことをやっているんです。要求する側も手を尽くすことも併せて必要だというふうに思 いますね。
古橋委員
地方公共団体の場合でも、いろいろ議論があるわけです。国において契 約をする場合に、アメリカのように契約自由の原則で、差別禁止は大前提だから、契 約の中に入れていいというコンセンサスがある場合にはいいですけれども、我が国の 場合、同じ税金を使っているんだから、できるだけ安く単価を入れたところが優先すべ きであるという原則が強いわけです。登録条件でも大変ですけれども、契約条件として 入れるとなると、それなりの理屈がないと難しいんじゃないかと思います。そこをどう やっていくのか。我が国の場合は会計法、それに基づく予決令があって、その解釈 は、財務省がやるわけです。そこがだめだと言っているものですから、その解釈が違い ますというためには、長期的に世論に啓蒙活動をしていく以外にはないんじゃないかと 思います。
 その場合に、まず登録要件の中でカウントする。例えば、設計士が何人いる場合と か、そういう点数がみな決まっています。その中に男女共同参画の客観的な基準があ れば、それをカウントした点数を入れるとか、男女共同参画の推進状況を別の項目に 入れるとか。
村上推進課長
『会計法精解』では、「契約制度は、会計制度の一環として、公正 かつ厳格に運用されなければならない。それで、支出の原因となる契約についてはそ の支出が租税その他による国民の貴重な財源をもって充てられるものであるから最も 効率的に使用されるように配慮しなければならない。このように契約制度は、会計制 度の理念たる公正及び厳正の原則に加え、効率的予算の執行、すなわち経済性の原 則が要請され、これらの諸原則の調和を図る必要がある。」というのが大原則で、「契 約制度は、会計制度の一環として予算の執行の手続を定めるものであるから、契約の 実行を通じて、一定の行政目的を達しようとするような内容を含むことは契約制度の本 旨にもとるものといわなければならない。また、行政目的を達成するための内容を契約 制度に含めたときには、契約制度上、公正性の原則を失い、経済性の原理も確保する ことができなくなる」要は、他の行政目的をここで達成するというようなものではないと 書いてあります。
 具体的には、競争参加の資格についての条文があります。第71条は、「契約の履 行に当たり故意に工事若しくは製造を粗雑にし」云々とあります。これはわかりやすい んですけれども、第72条で、「必要があるときは、工事、製造、物件の買入その他に ついての契約の種類ごとに、その金額等に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従 業員の数、資本の額その他の経営の規模及び経営の状況に関する事項について一 般競争に参加する者に必要な資格を定めることができる」と書いてありまして、要はそ の他の経営の規模及び経営の状況に関する事項に当たると考えられるものについて 入れているわけです。
 同じことが地方自治法でも書いてあります。第167条の5で、普通地方公共団体の 長は必要があるときは、あらかじめ契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売 等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を 定めることができるということが書いてありまして、ほぼパラレルな規定状況になって います。その他の経営の規模及び状況、これに該当するという解釈の下で、地方自治 体においては、障害者の法定雇用率が何人ぐらい雇用しているかとか、ISOシリーズ の認証を受けているのを点数化して加点し優遇するだとか、登録の資格の格付けで評 価している例があるということでございます。
山口委員
これには施行規則やなんかはあるわけですか。
村上推進課長
これは政令で、直轄の場合は各省がそれぞれまたいろいろ決めて おられる。労働基準監督署の指導に従わない、安全衛生上死亡事故が出ているとい うようなところは、マイナスにカウントされたり、入札されなかったりしています。それは 工事そのもののクオリティに影響することは間違いないから、説明は可能だと思います が、男女共同参画の観点でそれと同じことが果たしてできるかということかと思いま す。
古橋委員
アメリカではこうなっていますよ、日本においても重要になってきた、した がって、そういうことをまずみんなで考えましょうということを提示する。そして、こういう 法令についても、できる限り弾力的に解釈すべきであるということを書くことが考えられ ます。具体的にできるかどうかはなかなか大変だと思いますが、そういうことを指摘す ることは、私はいいと思います。
高橋委員
今の御指摘は非常に大事だと思います。法令は、日本独自というより、 かなり外国を参考にしていると思いますから、ヨーロッパ諸国を参考にすることが多 かったのかもしれないけれども、ヨーロッパ諸国でも政府契約について、最近は差別の 問題を考えているんじゃないかと思うんです。それを調べれば、日本の行政官庁も、外 国の動向は重視してくれますから、そういうことも必要かと思います。
寺尾委員
国や地方自治体が取引をするときに、1つは、えこひいきはしませんよと いう話ですね。もう1つは、経済性、なるべく安いところから買いますと。基本的には、 それと今の問題が抵触しないと言っていければいいわけですね。
古橋委員
入札資格の登録要件で1つ被せること。それから、実際に入札したとき に、同じ価格で、最低価格が2つあったときには、男女共同参画を推進している方を優 先しますというようなことなら問題ないんです。だから、そのところをどう書けるか。しか し、最初の点数で入れるというところはなかなか大変ですよ。今や指名競争入札をだ んだんなくそう、あらゆる業者にすべて競争入札させようという感じになっているから。
寺尾委員
同じ仕事をしてくれるのだったら、小さな会社だって競争できてもいいよう な気がするんですけれども。
古橋委員
そこで格付けに、客観的な数字だけじゃなくて、施工能力というようなこ とを入れよう、あるいは、いい設計については、質の問題を加味しましょうというのが、 地方自治法の改正なんです。けれども、なかなかそこは難しいんです。
岩男会長
男女共同参画というのは、国の重要施策として基本法に基づいて進め ているわけですから、公正性や経済性と抵触しないと言えないんですか。
古橋委員
そうすると、基本法があるようなものについては、国民的な大問題なんだ から入れろと言えるかどうかですね。それは、これからの世論の動きを見ないとできな いのではないでしょうか。
松田委員
先ほどのケネディの大統領令の評価は分かれていますが、かなり有効 であったという評価の中には、マイノリティについて統計を出させただけでも結構効果 があったという評価があります。統計を出させて、同じ入札内容だったら、統計的に好 ましい方を採るということがどんどん周知されていけばいいのですが。
竹信委員
基準をつくるにも、その基盤がないとできないので、情報収集は絶対必 要なんですね。
松田委員
公契約に関するの研究書では、この部分がかなり扱われています。財務省の解釈はどちらかというと少数意見で、学説ではあまり認められていないと。しか し、これは公的な解釈であることは確かですから。
古橋委員
日本の場合、所管省の意見を変えてもらわない限りだめなんです。その 意見を変えるためにどうしたらいいかというと、データとして、外国ではこうだとかいろい ろなことを出して、意見を変えてもらうということが、現実的ですね。そのためには、ちゃ んと答申を出せばいいんです。
山口委員
そういうところは指摘しておいた方がいいと思うんです。すべての行政を 男女共同参画の視点で見ていこうということがあるんだから、こういうことで変えないと いう、強固な姿勢は変えていかなきゃならない。
寺尾委員
政府契約はどのぐらいの国でやっているのか調べたら、かなりの国で やっているんじゃないですか。
竹信委員
私もそう思う。
松田委員
ケネディのニューフロンティアを推進したのとちょうど状況が同じなんで す。経済的に停滞して、やる気がだんだんなくなってきているときに、これを刺激として 与えたわけで、日本も同じような刺激策が必要になっていると思います。
岩男会長
やはり、経済を活性化するというのは喫緊の課題ですよね。みんなそう 言っているし、財務省ももちろんそうしないと税収がないわけですから。
寺尾委員
労働組合の問題が出てきたんですけれども、アメリカでは、労働組合と の関係を配慮するように書いてある。労働協約で例えばシニオリティをカウントすると か、プロモーションのときにこうするとかというルールを採用していますね。それが必ず しも女性にやさしくなかったりするわけですけれども、それは政府契約をする会社側 と、連邦政府だけで決められる問題ではなくて、労働組合が絡んでくる。労働組合とい うのは当事者ではないものですから、そこをやんわりと書いてはある。日本でもアメリカ でもよく言われているのは、労働組合自身が非常に女性差別的で、そこを変えなきゃ ならないのですが、直接には切り込んでいけないですね。そのへんは日本の場合はど うなんでしょうか。
松田委員
日本の場合はアメリカほどは。日本の場合は体面を気にしますから、表 立って差別があるのではないかと言えば、そうではないと言うのですけれども、アメリ カの場合はどこが悪いと開き直りますからね。実際の問題としては、日本でも陰に陽 に抵抗があることは必至だと思います。
竹信委員
労働組合の組織率がどんどん下がっているので、女性を入れなければ、 もうもたないということはわかってきているんですよ。ただ、どうしていいかわからない ので、コアの部分で頭の切替えができていないというのが実際です。
住田委員
まず、こういう公契約のときにどうするかということについては、今の法律 がどうあるかということについて、基本的に研究するということを出すというのが1つの やり方かなと考えます。
山口委員
寺尾さんに伺いたいんですけれども、アメリカは結局法律があって大統 領令が出るんですよね。
寺尾委員
アメリカの方が日本より分権が強いので、大統領は、議会がこういうこと で政府を運営しなさいと言われて、それを請け負って自分の責任でやっているわけ で、かなり権限は強いんです。ある意味では首相よりは強いと思います。日本の場合 は連帯責任ですけれども、アメリカは大統領が1人で決められますから。
山口委員
私なぜ聞いたかというと、ERAが流れましたよね。ああいうものがあれ ば、もっと法律でも保護されるし、大統領令でも積極的な推進があるかなと思ったんで す。
寺尾委員
ERAは憲法の問題で、大統領はどういうふうに誰にやってもらうかという ところは、法律でもって要求されて、縛られること以外はかなり自由にできるわけです ね。特に大統領のいろんな権限にかかわる部分では。
松田委員
法律上は大統領令というのは、連邦憲法及び連邦法の解釈及び実施要 綱になると。しかし大統領の権限、例えば公務員の権利義務に関する条項に関して は、法律、議会が明白にそれを禁止していない限りはできるということになっています から、かなり広いですね。10988という連邦公務員に団結権、団交権を認めた大統領 令があります。連邦法では認めていなくても、連邦公務員に関する限りは大統領に権 限があり、それを議会が特に禁止しない限りは認められるということですから、日本の 総理大臣よりは相当広いですね。
寺尾委員
いろんな職の任命権も持っていますから。裁判所の裁判官も大統領が 選べるわけです。
住田委員
全く観点が違うんですが、女性の能力の活用が、経済性にも適うという ような、研究成果があれば非常にありがたいと思うんです。援用できる研究例を集め ておくというのはいかがでしょうか。
寺尾委員
もしそうだったら、自然に放っておいてそうなるだろうと、きっと近代経済 学の人のおっしゃるんだと思うんです。その結果どうなるかというと、少子高齢化が進 んだら、企業は結局は困るわけです。その部分はマーケットメカニズムでは絶対にカウ ントされない要素ですから、それを出していくことの方が意味があると思います。
住田委員
先ほどの会計法の議論に関して、経済原則には適う、少なくとも真っ向 から対立するものではないという1つの資料になればいいなということなんです。
古橋委員
価格だけじゃなくて、成果の質を問うことになって総合評価方式ができた わけです。質を考える場合に、例えば女性の能力、女性の知恵を活用しなければいけ ないような契約については、女性が参加している企業から受注する。そういうのは、第 一段階として出てきていいんじゃないか。そういうところからだんだん世論を広めて、全 体としていいじゃないかというふうになっていくんじゃないかという気がします。したがっ て、そういう女性の能力を必要とする事業については、男女共同参画を推進している 企業を優先するということを現実にやっていく。それは解釈上できるんじゃないかという 気がします。
高橋委員
効率的とあるのは、経済効率的だけを考えているんですか。例えば、男 女共同参画という政策目標との関連で効率的と解釈できれば問題はないんじゃない か。それと、女性が参画している会社のパフォーマンスがいいというのは会社側の都 合であって、ここで言っているのは、国の側から見た効率性ですから、ちょっと違うかな という感じはします。むしろ、国の政策との関連で非常に効率的だという主張をするの がいいのかもしれないですね。
岩男会長
私はそうだと思うんです。
寺尾委員
アメリカでも児童労働を禁止しようとして、かなり苦しんだ経緯があるん ですね。州レベルでしようとすると、その州の労働賃金が上がってしまうわけです。とこ ろが、全国でやれば各州間の競争は心配なくなります。女性の労働の場合も同じよう なことが言えて、介護休業、育児休業といったものも満たして、女性を育てようとする と、社会的費用はかかるわけです。でも、その費用は、少子化社会の中で、女性が活 躍していくために、国がみんなで負担しなきゃいけないのか、会社がやるのかという部 分があります。そういう意味で、効率性というのをもう少し社会レベルでとらえるような 発想で考えたらどうかと思いますが。
古橋委員
マクロでは全体としての国民世論なり、政治の問題になってきて、その ためには相当な啓発がいるんじゃないでしょうか。
岩男会長
先日、今度新しく合体誕生した日本経済団体連合会からお話を聞いた んですけれども、IBMと全く同じようにダイバーシティという言葉を使われて、つまり多 様な人材を戦略的にいかすことによって経営が活性化しますと。具体的に何を意味さ れたかわからないんですけれども、とにかく、そういう発言があったとのは、画期的なこ とだと思ったんです。働き方を変えなければいけないということもきちんと言及されまし た。ですから、大変意を強くしました。
古橋委員
ダイバーシティによって経営が活性化したことが、その企業のみならず、 契約する相手方にも得ということがわかるように、早く統計を作り、またリストアップをし て、そこから契約をするというシステムを作っていくということがミクロとしては必要なん でしょうね。それが全体としてマクロになってくるわけです。
竹信委員
そういう哲学があるということは重要なことだと思うので、入れておくのは 全く問題ないと思うんですが、ほかの要素が多過ぎるので、ミクロで、どういう意味のミ クロかにもよるんだけれども、難しい部分が多過ぎるという気がするんです。高橋委員 もおっしゃっていますけれども、公的費用の問題でやるのがいいじゃないかと思います けれども。
樋口委員
本当に今言われたとおりで、まさに日本の構造なんです。大企業は共働 き番外地と言ってよいくらい、大企業の管理職で共働きが少ないらしく経験者に聞くと イジメさえあるそうです。「日本の大企業風土病」とはこのことだと思いますが、単に 個々の企業の利益、不利益だったら、短期的には女性を外へ追い出している方が得 する部分もあるんです。だから、高橋委員、住田委員がおっしゃったように、マクロのシ ミュレーションはできると思うんです。こういう企業ばかりだったら日本の将来人口はど うなるか、将来の税収はどうなるか、将来の財政はどうなるか、将来の社会保障はど うなるか、と。一方で、女性を入れている企業としたら、社会保障上の問題、財源の問 題、何々はこうなりますと、そういうモデルの提示の仕方をしないと、得ですよというだ けでは通用しないんではないでしょうか。
竹信委員
保育園問題なんかも、オランダ型は早く家に帰して、代わりに保育園が 半分でいいとか、例えばですよ、そういう試算はいっぱいあるんです。社会的費用とい うシミュレーションでいろんな方向からやるということはすごく重要なことだと思います。
寺尾委員
樋口委員がおっしゃったことは、やはり文化だということですね。経済原 則以前に、まず文化だというところがあって、そこはすごく感じます。日本人の平均的 なカップルと、それから財力、経済力、社会的影響力を持っている人たちのクラスの カップル夫婦のあり方とがすごく違うんです。そこの部分が数にして多くないのに、ここ が日本の全体を決めているんですよね。
住田委員
企業は変わらざるを得ないという行き詰まりを感じていまして、しかも、企 業の一番の重荷は、50代以上の高い給料をもらっている重い管理職なんです。そこら へんを何とかしなきゃいけないという意味では、ちょうど軸としてはマッチしていると思 います。
岩男会長
それでは時間になりましたので、次に今後の検討スケジュールについて 少し変更をさせていただきたいと思いますので、村上課長から今後のスケジュール案 について御説明をお願いをいたします。
村上推進課長
次回、地域社会の意思決定機関におけるチャレンジ支援というのを 当初予定していたんですが、いろいろ手を広げすぎると十分議論ができなくなるので はないかという感じもいたしますので、9月までのまとめでは、経済分野ということに 絞っていってはいかがかという御提案でございます。ですから、この地域社会の意思 決定機関におけるチャレンジ支援とか、各種団体における女性の参画状況については 10月以降に送って、9月までは、これまで御議論いただきました経済分野のところを、 もうちょっと詰めていくということでいかがかと。
岩男会長
農山漁村における女性のチャレンジ支援ということは続きですから、次回 にして、そして自由討議にかなりの時間を使うということなんですけれども、それでよろ しければ、そのようにさせていただきたいと思います。よろしいですか。
 では、次回はそういうことでいろいろ御議論いただく時間をとってございますけれど も、もし何か今日のことで言い尽くせなかったとか、あるいは何か思いつかれたことが ございましたら、ファックスで事務局の方にちょうだいできれば大変ありがたいと思いま す。
 それから、資料の5に第9回専門調査会の議事録ができが上がっております。これ につきましては、このとおり決定してホームページで公開をさせていただきたいと思い ますので、特段の御異議がなければ、よろしゅうございますか。
 それでは、これで本日の会合をおしまいにしたいと思います。大変活発な御意見をい ただきましてありがとうございました。

(以上)