男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成14年1月28日(月) 17:00~19:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    委員
    猪口 邦子 上智大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    松田 保彦 帝京大学教授
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 第5回男女共同参画会議の報告について 
  3. 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大について
  4. 男女共同参画の基本的な考え方について
  5. その他
  6. 閉会

(配布資料)

資料1
基本問題専門調査会の検討状況及び今後の進め方について [PDF形式:35KB] 別ウインドウで開きます
資料2
女性の政策決定参画状況調べ
資料3
第4回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録(案)

(議事内容)

岩男会長
ただいまから男女共同参画会議基本問題専門調査会の第7回会合を開催させていただきます。
 まず初めに、1月18日に開催されました第5回男女共同参画会議の結果につきまして、私から簡単に御報告をさせていただきます。
 この会議の席上、私から選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめの概要について御報告をいたしまして、中間まとめという形式ではございますけれども、委員の意見や これまでの検討の結果を反映させ、基本問題専門調査会として男女共同参画社会の形成の促進という観点からの考えをまとめたものであるということを御説明をいたしました。こ れに対して森山法務大臣から、『中間まとめにおいて選択的夫婦別氏制度の導入について大変前向きなお言葉をいただき、心強く思っているところでございます。法務省といたしま しても、関係各方面の御議論を踏まえながら、更にこの制度の導入に向けて努力を続けてまいりたいと考えています』という御発言がございました。
 また、基本問題専門調査会の検討状況及び今後の進め方についても御説明をいたしまして、検討状況としては昨年5月の第1回専門調査会以降、6回の会合を開催したというこ とをお話いたしました。特に、第5回専門調査会において選択的夫婦別氏制度の導入に関する中間まとめを取りまとめたこと、それからその後の第6回会合では男女共同参画に関 する基本的な問題について意見交換をしたことを御報告いたしました。
 今後の進め方としては、基本的な考え方に関するものと、それから基本的な考え方に関わりが深く、国民の関心も高い個別課題に関するものというのが、この専門調査会で扱う ものになっておりますけれども、これらについて引き続き検討、調査していくことを申し上げました。
 それから、各専門調査会からの御報告がございました後に小泉総理大臣から、『いろいろな分野で女性がチャレンジしていくということを促進していきたいと思いますので、今後と も皆様方のいろいろなお知恵を拝借したり、御指導をいただきたい』との御指示がございました。
 更にそれをフォローする形で福田官房長官から、『この問題を女性のチャレンジ支援という形で基本問題専門調査会で検討を行って、次回の男女共同参画会議で検討の進め方 を報告してもらいたい』という御発言がございまして、このことが会議において決定されました。
 したがいまして、今後基本問題専門調査会において、女性が持てる能力を十分に発揮し、新たな分野に夢と志を持ってチャレンジする女性のチャレンジ支援について皆様と検討 をしていくということになりましたので、どうぞよろしくお願いをいたします。
岩男会長
それでは、次に総理から御指示がございました女性のチャレンジ支援の方策について、本専門調査会として今後検討を進めていくに当たり、まずは政策方針決定過 程への女性の参画状況について実態を十分に把握して、データをもとに現状について概観をしたいと思います。
 また、女性のチャレンジ支援の検討の進め方につきましては事務局から御説明をお願いをいたします。
内閣府(男女共同参画局村上推進課長)
それでは、御説明をさせていただきます。
 資料といたしましては、お手元に「女性の政策決定参画状況調べ」という冊子がございますので、これに沿って御説明致します。
 まず行政でございますが、国につきまして国家公務員の行政職の俸給表1の区分で見ますと、女性の比率は平成11年で17.1%、指定職、行政職(1)の9級以上になりますと 1.2%でございます。
 次に女性国家公務員の採用・登用にかかる取組についてでございますけれども、平成13年5月に人事院は女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針を策定いたしてお ります。これは非常に重要な内容でありまして、計画を立てて進めてくださいということでありまして、各省庁はこれに基づいて計画を立てるわけでございます。
 次に、国の審議会等における女性委員の割合です。国の審議会は政策方針決定過程への参画の促進の取組といたしまして、登用の割合を定めて実施しております。現在の目 標は平成12年8月の男女共同参画推進本部で決定されまして、平成17年度末までの早い時期に30%を達成するというものであります。この調査は昭和50年1月から実施してお りまして、当時の女性委員の比率は 2.4%です。直近の平成13年9月末では24.7%というように大幅に伸びております。
 次に、民間企業における役職別女性の管理職の割合です。これは厚生労働省の女性雇用管理基本調査によるものですが、部長相当職、課長相当職、係長相当職でそれぞれ 女性の割合は低いながらも増加してきておりまして、平成12年では部長相当職は1.6%、課長相当職が2.6%、係長相当職が7.7%となっております。
 次に、専門職における女性の比率であります。これは平成12年の国勢調査に基づいておりますが、医師は15.6%、看護婦は96.2%、会計士、税理士は10.2%、裁判官、検察官、 弁護士は10.7%でございます。
 次に教員について見てみますと、平成12年の学校基本調査におきまして小学校の教員は62.3%が女性ですが、校長は15.6%です。中学校で見ますと教員が40.5%、校長が 3.5%です。次に高校を見ますと教員が25.6%、校長が3.5%です。大学で見ますと全体で13.5%、学長で7.4%となっております。
 労働組合の女性の中央執行委員の比率は6.6%でございます。これは、平成 13年3月の連合の調査によるものです。
 次に農業協同組合を見てみますと、正組合員で女性の比率は14.0%でございます。これは平成11年度農林水産省の調査です。これに対しまして農業協同組合の役員に占める 女性の比率は0.44%でございます。
 最後に国際機関を見てみますと、国連の事務局の女性の比率は59.0%で女性の方が多い。これは平成13年の外務省の調査に拠っております。この参画状況調べの55から58 ページにかけてこの関係部分が掲載されております。数値の話は以上でございます。
 次に、今後の検討の進め方について御説明をさせていただきます。
 検討方針といたしましては、基本的な考え方、視点を整理して、女性の参画の現状を把握、分析した上でこうした取組を浸透させるための方策を総合的に検討することとしてはい かがか。それから、検討事項としましては基本的な考え方、視点を整理する。それで、政策等の立案決定への共同参画の意義ですとか、政策方針決定過程への女性の参画の拡 大を進めていく上での論点、取組の進捗に差異がもたらされておりますけれども、その背景は何かとか、意識の相違とかもあるのではないか。それから、さまざまな分野におきまし て女性の参画の現状を把握、分析して、その参画を進めるための方策を検討する必要があるであろう。
 それから、政策方針決定過程への女性の参画の拡大に向けた総合的な取組について提言していくことを目指すというもので、検討スケジュールとしましては1月から3月にかけて は基本的な考え方、視点について検討し、検討の進め方について意見を交換し、4月の男女共同参画会議に検討の進め方等について報告を行うこととする。それで、4月から本格 的にこの課題に取り組んで必要な方策を検討し、秋に男女共同参画会議に中間的に報告できることを目指すというスケジュールでいかがか。
 現状を把握、分析するに当たりましてモデルとなるような取組事例を紹介して、よい事例といいましょうか、どうすれば隘路が切り開けるのかというような方向からのアプローチ、 ここに問題がある、ここに問題があると言って指摘していくというのもあるかもしれませんけれども、むしろよい事例を探して現状を打破する方策を模索するというふうなアプローチ はいかがかということが考えられます。
岩男会長
ありがとうございました。ただいまの御説明について私としては、横への広がり、それから上への広がりというようなことで、私はチャレンジ支援ということをもっと柔軟 に、広く考えていいのではないか。だから、これまでここで考えてこなかったようなことをむしろ議論をして、新しいアイデアを出す。それが目に見えるような形で具体化されていく、そ の道筋についてもきちんと見ていかないといけないと思いますけれども、その辺りをもうちょっと自由に議論をしてもいいんじゃないかというのが私の今、御説明を伺っての感想でご ざいます。
坂東局長
基本計画の中でもう既に行政が政策決定参画を増大するために何をするかというのは、今申しましたような国家公務員の採用・登用の拡大ですとか、あるいは審議 会の女性委員をこれは数字を挙げて17年度末までに30%というふうなことでやっているわけですけれども、どうしても基本計画に記述されたことだけを、行政が責任を持って17年 度までにやりますということですと、とても硬い確実にできるものになってしまって、余り夢と志がないんですね。
 ですから、是非この基本問題専門調査会ではそうした行政が直接権能を持ってやれる分野からはみ出した部分について、こういうアイデアがあるんじゃないか、こんなことをした らどうかということをいろいろお聞かせいただければありがたいなと思っております。もう現に参画会議においては官房長官の方からは、特殊法人の理事長を任命するときに女性の 採用・登用に努めますという誓約書を出させてはどうかなどというアイデアが出されております。
 どうも政策決定、方針決定の参画というと、どうしても上へのチャレンジというか、偉くなっていくというようなイメージが非常に強い、むしろ横へのチャレンジといいますか、今まで 女性が向かないと思っていたような分野、職業でいいますと、例えば技術者全体として6.4%、特に機械関係1.9%、電気・電子関係2.6%など、非常に職業分野でも女性が少ないと ころがあるわけですが、そういうようなときに、教育がもう終わって職場へ入っている人たちをつかまえてこの分野に出ろ出ろと言っても非常に効果は少ないので、むしろ中学校、高 校のときの進路指導の辺りからどういうことが考えられるんだろうか、あるいはグット・プラクティスを紹介するとか、いろいろな形で是非女性たちの能力を発揮させ、女性を元気に することを支援をするアイデアというのを出していただきたいと思います。
 21世紀に女性が元気になるということが日本の社会を元気にするためにも絶対不可欠だと思いますし、女性が元気になれば男性も元気になると、そういうウィンウィンの考え方 でいろいろなアイデアが出てくるんじゃないかと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
古橋委員
女性のチャレンジということをまずここで議論する場合に活躍する範囲というものを頭の中で一回整理しておく必要があるんじゃないかと思います。女性が活躍する 場としては政治という場の問題がある。それから職域ですね。それから、ここで家庭における意思決定過程への参画をどうするか。それから地域社会の中の問題ですね。職場の 中における、国なり地方公共団体、特に地方公共団体は地域において大変多く雇っているわけですから率先垂範すべきであるというふうな問題であるとか、そういう場の問題をど ういうふうにここで議論するのか。
 第2番目に横の問題でありますけれども、チャレンジ精神という場合においてまず女性のエンパワーメント政策をどういうふうに考えるのか。現在のいろいろなエンパワーメントを やる場合には女性センターなりいろいろなものがありますけれども、それがうまく機能しているかどうか。それから、女性のチャレンジ精神を進める場合の環境づくりとして、一つは エンパワーメントであり、ネットワークであり、それから男性の役割というものをどうするか。そういう横の一般的な考え方からひとつ考えていく必要があるのではないかと私は思い ます。
竹信委員
賛成ですが、もう一つ別の軸があって、社会保障制度という話がありますね。それプラス社会保障で表に出ていきやすい仕組みをつくった後で、出て行く先が設定さ れていないというのがすごく大きいネックに今なっているので、政治的な意思決定の話と経済的決定権と両方あるので、それをどういうふうに位置付けていくかだと思うんです。それ ともう一つは、起業支援にしても、いまだにどういう融資制度が零細な自分で稼げない人にうまくマッチングするのかということのスキームがほとんどできていない。経済的決定権 みたいなものをどうやってそこにはめていくか。それもやらないと、だめなんだろうと思います。
 大体、第3号被保険者問題などにしても出て行く先の出方がうまくできていないので、専業主婦の人の批判が非常に強いというのは、では私は退路を断たれてどこに行けばいい わけというふうに必ず言うんです。だから、あなたは働きたいんだったら、ここでこういう職業訓練をやって、それから、もし仕事に行った先でひどい目に遭った場合には社内的解決 や地域労組がありますからというようなネットワーキングも含めてやらなくてはいけないんですけれども、チャレンジと言ってしまうとすごくチャレンジ精神のある立派な人だけを引き 上げていくというイメージがあるんだけれども、出口がないために本来ならばチャレンジできそうな人ができなくてどつぼにはまっているというのが今の状況なんですね。ですから、 意思決定権でのチャレンジプラス経済的決定権のチャレンジをどうやってもっと充実させていくかということを考えた方がいいということだと思います。
八代会長代理
私も全くそのとおりだと思うんですが、まずどこからやっていくかというときに、社会保障の問題というのはたとえ経済的なある程度の決定権があったとしても、余 りにも働くことのコストが大きいという現状がある。ですから、まず足を引っ張るものをなくすことによって少なくとも今の被扶養者のままでいることよりもはるかに大きなメリットがあ る人しかチャレンジできないという状況を何とか改善させようというイコールフッティングの考え方で社会保障の問題をまず取り上げたわけです。それは税制も同じですけれども、そ こはニワトリと卵だと思います。
 それからもう一つは、まず女性のチャレンジ支援というのが目的であって、そのための一つの手段として政策方針決定過程への参画の拡大という方が、より広いのではないか。
 それから、今のチャレンジ支援政策というのは男性のような働き方をする女性を助けるような仕組みであって、それで対象となる人はもともとごく一部にすぎない。普通の人でもで きるようなやり方に持っていくためには男性の働き方自体を変えていかなければいけない。今は企業でもそうですけれども、専業主婦のバックアップを受けなければできないような 働き方なので、これを放置したまま無理やり女性の登用比率を上げようとしても成功しない可能性が大きい。
 ですから、先ほど女性が元気になることが男性を元気にすることだと言われましたが、逆に男性の働き方は男性自身にとっても極めて厳しい働き方であって、これをもっと多様性 のあるものにしていく。何も今の働き方を禁止する必要はないわけで、問題はもっと働き方の多様化を進めていくことの中で結果的に女性の登用比率も高まるような、病気の根本 を治す方をこの参画会議でも考えていくべきではないかと思います。
樋口委員
そのとおりだと思います。私は今の日本の現状というのは戦前から続いていると思いますけれども、とくに戦後長い間、男は仕事一辺倒、女は家庭一辺倒という時代 が続きました。長年の偏食による生活習慣病にかかってしまっているというのが日本の社会の現状で、これを解決していくためには女性も家庭一辺倒の偏食から脱していくと同時 に、男性もまた一緒に変わっていくというのが男女共同参画ということだと思います。
 だから、例えば『女性の元気、男性のゆとり、社会の活気』、タイトルを付けるとすればそういうことになるんじゃないか。男も選択ができてゆとりができてくるということですね。それ から社会の活気で、今、出ているようなワークシェアリングと男女共同参画と結び付けるような考え方とか、あるいはこういうことでチャレンジというならばそういうような制度を新しく つくっていくような企業というものを好事例として広めるとかが考えられますね。
 別な話かもしれませんが、これは未来館で制作したビデオなんですけれども、いろいろな職種を紹介する中で、英国航空の50歳になる日本人スチュワーデスが新婚なんです。 そこで、50%社員に希望してなりましたと、ほとんど説明はないんですけれども、どうやらそういうことがイギリスでごく一般化しているらしいんです。勤務時間も50%、給料も50%、 社会保障も50%のようですが、本人が選択して50歳の新婚ライフを楽しんでいるというのを聞いて、そのような選択ができる柔軟な雇用システムはいいと思いました。そういうシス テムづくりへのチャレンジを女の人だけではなくて企業社会全体としてとか、地域社会全体としてチャレンジしているようなところも見ていいんじゃないかと思いました。
 おっしゃるとおり、本当に職場の受け皿がないと、つまり経済的自立がないとなかなかチャレンジできないんですね。だから、そういう柔軟なシステムをきちんとつくっていくこと。一 方で、そのような現状に関わらずの中でチャレンジして一定の成功をおさめている人がいることも事実なんですね。だから、その両面にらみで、女性のチャレンジをプロモートする というか、支えるような現に行われている社会的支援活動というもののリストをつくっていただけないかなと願っています。
 例えば、会長も私もかつて選考委員を務めましたが、エイボン女性大賞などというのがあるでしょう。女性の活動に対していろいろな賞を与えている企業や自治体があると思うん です。それだけでなくてそういう女性の活動、チャレンジを応援しているような民間団体とかnpoとか、あり得るんじゃないかと思っているんですけれども、そういう例とその効果な どを探してみたらどうかなと思います。
岩男会長
樋口委員がおっしゃったイギリスのbaのスチュワーデスの件ですが、いわゆるオランダ型というか、オランダにそのモデルがたくさんありまして、私も前の審議会のと きに見に参りました。それで今、言っているワークシェアリングというのはちょっと違うんです。若い人とか職のない人が職を分け合いましょうという発想とはちょっと違うと思います。
 それは余計なことですけれども、でも先ほどのキャッチフレーズともども是非これを使わせていただけたらいいと思いますし、賞のお話も是非事務局の方でデータを集めていただ いたらよろしいんだと思います。
樋口委員
一定の予算がかかりますけれども、内閣府女性チャレンジ大賞とか、やれたらやってもいいと思います。
坂東局長
検証するだけではなしに、本当はグラミンバンクじゃないですけれども、新しく起業する人をマイクロクレジットで支援するというようなことを日本でもやっているところな どもありますし。
岩男会長
既にありますね。筑紫みずえさんとおっしゃいましたか。
坂東局長
グッドバンカーの方ですね。
古橋委員
エミリープランだってあるし。
坂東局長
そうですね。
岩男会長
それでは、猪口委員どうぞ。
猪口委員
おっしゃっていることはみんな賛成で、いい意見ばかりが出ていると思いますが、大きく分けると啓発してこういう方向に持っていってほしいという顕彰活動などもそう だと思うんですけれども、そういうやり方と、あとは政府が権能を持ってやる範囲のことでできることは何かという、この2つの分野があると思うんです。それで、啓発活動は従前通 りやるのですが、権能を持ってやるという場合にどういう提案があるかなと思いますのは、まずは国家公務員についてはこういうふうに直接できるから、あとは地方公務員について もかなりそういう方向でやってもらう。
坂東局長
地方公務員はお願いベースなんですね。
猪口委員
お願いベースですよね。お願いベースだけれども基本法もあるわけだし、そこはもうちょっと仕掛けを考えていただきたいと思います。
 それで、次にお願いベースではなくて直接できることが実はあるかなと思うのは、政府というのは予算を付ける立場にあるわけですから、補助金とか政府調達がありますね。です から、補助金を付与している対象ですね。特殊法人について官房長官がおっしゃったのは、理事長というポストのことを言っているのではなくて、特殊法人における職員登用につい て理事長がそのジェンダー・センシティビティを十分に持つというふうに指導したいということだったのではないかと思いますので、その結果最終的に理事長も女性になるということ であれば、それは非常に結構だと思いますけれどもということではないかと思います。
 特殊法人の場合は言わずもがなですけれども、そうでなくても部分的に補助金をもらっている場合、あるいは政府調達の場合、すぐと言ってもちょっと大変だと思うんです。この 公示をするので女性の幹部割合が一定の割合以上の企業のみ入札してよろしいというようなことはすぐは言えないでしょうけれども、5年後からはそうするとか、そういう予告をし た上で一定の基準を設けてもいいかと思うんです。とにかく基本法があるわけだし、内閣府の会議形式があって、最重要課題という答申も出して受け入れられているわけですか ら、国政の根本であると考えれば、女性の登用について何の努力もしていないところから政府調達をしたり、そこに大量の補助金を提供するということでは、政策のツールとしてそ の部分を十分に活用していないということになりますので、そこを対象として集中的にやったらいいのではないかと思うんです。
 公務員の登用ということは直接最も根幹的にできることなんですけれども、そこのもう一歩外縁のところになると思うんです。政府のための何らかの仕事をしているところについ て、とにかく納税者の負担においてその活動が賄われている部分が少しでもある場合には、この日本国における基本理念を共有してもらう私企業でなければ、あるいは団体でなけ ればならない。それは財団法人でも何でもそうだという感じです。
 あとは、やはり人生設計の中で見た場合に転勤の問題というのが出てきますね。ですから、転勤に伴う休職を公務員制度の中で何とか実現できないかと思うんです。それがまた ほかの職場、一般の民間の職場にも波及するように何かやっていただけないかなと思います。
 それから、ボトルネックが一体何なのかについてですが、先ほどマイクロクレジットの話が出ましたけれども、女性が融資を受けにくいというのは日本などでもそうなんですが、バ ングラディシュなどのマイクロクレジットの例を見ますと、そもそも担保を不動産のような形で要求する場合にはもともとジェンダーバイアスが以前からあって、女性が不動産を所有 できないわけだから、何の女性の差別をしていなくても不動産を抵当に入れなければならないということを条件にするだけで女性を排除することが事実上でき、内戦以前のジェン ダーバイアスをそのまま内戦復興後の状態に持ち込んでしまっているわけなんです。ですから、本当のボトルネックをよく見極めなければならない。
古橋委員
この間テレビを見ていたら東京都が公害の関係で、東京都に納品を搬入するトラックについてはディーゼルはもうだめだよというふうに決めたといっていました。国の 場合でも今それは地方自治法施行令で契約の内容について総合的評価方式ということになって、契約の場合において価格の低いものだけではありませんよ、品質を評価しますよ という考え方を導入したんですね。それの敷衍的な考え方として、その品質の中に公害問題というものを考えて条例をつくるということだと思うんです。
 したがって、この場合においても男女共同参画というものを契約の条件に入れることができるのかできないのか。そこら辺のところについてもう少し事務的に詰めて、それができる ということをちゃんと言えば地方公共団体が条例をつくるときにそのことを規定できるし、国の場合においても価格だけではなくて品質以外の公害問題に、あるいは男女共同参画に 資するということを積極的に補助条件、あるいは契約条件として付することができるのかどうかもう少し事務的に私は詰める必要があると思います。それは非常に一つのポジティ ブアクション的な大きな広い意味のものだと思います。
竹信委員
なぜ男女共同参画ができないかということを言っている自治体の意見を聞くと、要するに何が差別で何がプラスのことなのかの評価に当たるものについての蓄積が 足りないので、文句を言われた場合に言い返せない。それで、福祉がやりやすかったのは法定雇用率があるので、そこを満たしたものはできた。だけど、実際に男女の場合にはそ れがまだちゃんとでき切っていないので、それで困る。確かにいろいろ既ににやっていて、そういったボトルネックが出てきているんですね。それはちょっと読んでいただけるとありが たいんですが、朝日新聞の解説面で書きましたので。
寺尾委員
今のことに関して一言だけなんですけれども、政府調達を受けたい団体等に男女共同参画を要求するときに具体的にどういう基準を設定することが有効か、また適切 かというのを詰めていかなければ実現できないですよね。できるだけ効果が上がるようにするためには、やはり研究が必要なのではないでしょうか。ボトルネックのところにかかる ような基準の設定の仕方ができれば非常に有効だと思いますし、先ほど猪口委員がおっしゃいましたように国の税金を使っているわけですから、国の政策を実現するためにという 論理でいけば、私は当然やれることだと思います。
住田委員
私自身、今日のこのチャレンジ支援という言葉が非常に広い意味であるということを知って、それは非常にうれしく思っています。
 といいますのは、得てしてここの調査会とか女性の問題を取り上げるときには女性の登用、上、縦ということに目が向きがちなわけなんですけれども、今日はっきり横の広がりをと 打ち出されたわけです。全体として裾野が広がらないと上に持ち上げていくだけの力にはなり得ない。そういう意味では、このチャレンジ支援というのは単に一部のエリート女性を 生むものではないということをはっきりと銘記しておいた方がいいのではないかと思います。その上で申し上げたいんですけれども、やはり女性はいろいろチャレンジするような場を 今まで持ち得ていなかった。今、竹信委員がおっしゃったとおりなんです。ですから、本来であったら男性だったら持っている当然の経験を経ていない方々がたくさんいらっしゃるわ けなんですけれども、ポジティブアクションとして女性の場合はいわゆる下駄を履かせて、ある意味では能力はあるんですから、その能力を発揮していただくための場を積極的に 与える。それは構わないんだということで、実例をいろいろと出していく必要があるのではないかと思います。
 例えば、そのために先ほどの審議会ですと公募をやっているところはかなりあると思いますので、そういう方々の活躍ぶりとか、それから今、専業主婦向けに教育助成をするとい うことで、都道府県レベルではありますけれども、そういう助成金を出しているような制度も出てきていますのでそういう成功例とか、そういうものを幾つか拾い上げてきて、それを収 集していろいろな広報宣伝活動の一環に使い、またその中ですばらしいものを先ほどのように推奨する。例えば賞を差し上げるとか。こういういい事例があるという元気がつくよう な、そういうものをどんどん挙げていくということがまず必要ではないかと思います。
 政策決定過程への数字というのは、これはこれで大事だと思っているんですが、私が気に入りませんのは常に女性のいくところは女性職なんですね。政治の分野にしても、福祉 とか教育にかなり偏っています。環境もそうです。それで、ここには全然拾い上げていませんけれども、女性が昇進するときのネックとしては枢要な官房部門、企画だとか総務だと か、そういうことを経ていない方が非常に多いんですね。企業におきましても、もちろん公務員においてもそうです。そういうところを若いときに経て、また係長クラス、課長クラスで経 ているということが、ある意味で枢要ポストを経ていることが一つの資格であるとしたら、そういうところを調査するということがひとつ必要だろうなと思っています。
 それから、最高裁判事は先ほどお話が出ましたけれども、今年ものすごくたくさんの方が退職されて交替されるということがはっきり見えております。私は今回これだけ多数の交 替がある中ではやはり女性がある程度の数を占める必要があることを何らかの形でアピールするチャンスがあればいいかなと思っております。以上です。
山口委員
私は全体としてはやはり政策決定参画に短期的なところと長期的なところがあるなと思います。それで、かつて例えばおよそついたことのないポストに女性がつくと、私 どもはそれを奨励する意味で女性団体などではその人を激励するとかしますが、それに対して批判があるんですね。そういうトップに立った人ばかりやって何の意味があるのと言 うけれども、やはりその分野にいない人がそこを最初に開拓するということは大変なことなんです。
 私はさっきの統計を見ていて思うんですが、まだまだ当分の間、やはり刺激策というか、こういう分野に女性が出たんだと。宇宙飛行士もいろいろ出たけれども、まだまだ出ていな い分野があるから、それはそれで一つはチャレンジというジャーナリズムに乗るような言葉もあるから、そういうことを奨励するというか、それは私はとても大事じゃないかと思うんで す。
 それからもう一つ、構造的なものを深く追い求めていくというか、その両論でいかなければならないなと思います。さっき映像を見ていて思ったんですが、本当に日本の企業と労働 組合の管理職の登用というのは遅れているなと私はつくづく思いました。ですから企業とか研究者とか、そういう分野にとても男性が出ているんですよね。それで、企業でどうしたら 女性が管理職になれるのか、なる道を開くのか、これは私は大きな課題だなと思います。
 それから審議会の問題なんですが、審議会の平均が今24.7%で、間もなく 30%だよと。30%達成したからと言ってだれも喜ばないと思うんです。2.4%から始まったところがそこ まできたなということであって、内容は住田さんがおっしゃるとおり、女性は福祉とか教育だとか、そういう分野があるよというのは、これは国会などもそうなんですが、ただ、国会は 議員は増えてきたからいろいろな委員会に全部1人ずつは女性が入ってくるようになりました。しかし、入っているからいいという話でもないんですけれども、そんなふうにして例え ば審議会から見ても偏りと同時に人材不足ということは皆さんお聞きになっているとおりですね。そうすると、結局掘り下げていくと職業の経験だとか、その前の教育の問題だとか、 そういうところになっていくから、それがわかって常識だと私たちの間で思っているようなことでも、やはりここでは一応は丁寧に書き上げていく必要があるなと私は思うんです。
 そういうことで申し上げたいことは、やはり刺激的な部分、この分野に女性をということであえてやればできる分野と、それから構造的な分野と基本的なことと、こういうことでいくし かないんじゃないかと私は思います。
伊藤委員
3ページのデータを見ると、どの分野でこの5年間女性の参画が増えているかがよくわかります。基本的には保険医療従事者と法律関係と教育関係ですね。私はプ ラス指向で女性の動きを見ることも必要だと思います。増えている領域は、基本的に資格試験のある部分ですね。今までのジェンダーバイアスのきつい採用がまかり通っている領 域とは違う、客観的な資格試験のある領域で女性が増えつつあるということは押さえておいた方がいいと思います。
 もちろん社会システムの問題というのは先ほどのボトルネックのものを含めて今なお存在しています。同時に古橋委員がおっしゃっていますようにエンパワーメントの問題という のも、裾野の問題という点では考えざるを得ないんじゃないかと思うんです。ジェンダートラックがあったり、ある種の成功不安みたいなもので女性がジェンダーに縛られている状 況というのはやはりあるわけです。だから、裾野のことを考えたときには、教育の問題におけるエンパワーメントプログラムみたいなものをどういうふうに導入していくかが課題にな る。これは学校教育だけではなくて社会教育も含めてだと思うんですけれども、エンパワーメントプログラムみたいなものの準備がすごく重要な課題なんじゃないか。学校でも、総 合学習がこれから始まりますから、総合学習に適用できるような形でのエンパワーメントプログラムみたいなものを教育の場でどう組み立てていくのか、あるいは生涯学習の場で どうやって提供していくかを考える必要がある。
 いずれにしても、10年、20年先を考えるときに、教育分野でのエンパワーメントの問題を視野に入れる必要があるのかなと思います。
高橋委員
やはり問題は2つに区別して議論していった方がわかりやすいのではないかと思うんです。1つは、女性参画に対するディスインセンティブになっているような制度等 にはどういうものがあるかということをもう少しはっきりさせていく。社会保障の問題であれ、税制の問題であれ、現に存在している制度が女性の参画にマイナスに作用しているとい うことが指摘されているわけですね。それ以外にいろいろあるんだろうと思います。どういうものがあるかということをかなり網羅的に事務局の方でピックアップして出していただくと、 この議論がもう少しやりやすくなるのではないか。
 もう一つは、現状がそういうボトルネックになっているということではなくて、もっとよりよい積極的な政策、共同参画を推進し、発展させていくためにどういうアイデアがあるかという 問題だろうと思うんです。この点について、補助金等の御提案がありました。これは非常にいいアイデアで、アメリカなどでやられているということを指摘されましたけれども、私も日 本でどこまでできるかなということを考えていまして、是非今後の課題として考えるべきことだと思いますけれども、同時にアメリカではこれは非常に法律的、あるいは憲法的に難し い問題にたくさん直面していて、裁判所の争いもあるところなんです。ですから、そういった辺りを少し調査して参考にしながら、どういった形で日本ではできるのかということを考え ていく必要があるのではないかという気がいたします。
猪口委員
先ほど申し上げたことの続きなんですけれども、とりあえず尋ねるだけでも効果があるんです。いろいろな団体や企業もそうですけれども、例えば学会では学術会議 というのがあって、本当に女性は代表にされなかったんです。それに対して政府は何もできないんですけれども、しかしお尋ねするということはできるんです。おたくの学会で女性の 理事は何%ですかと。それで、そんなことは聞かれたことも考えたこともない立派な先生方がたくさんいるわけです。そして、突然こんなお尋ねが政府からきた、ゼロだと。そういうこ とが意識に上ることだけでも、ちょっとは改善があるんです。
 ですから、特にそういう職能団体で政府との接点のある場合には、とりあえずお尋ねする。労働組合でも、農協でも何でもみんなそうなので、お尋ねして統計を取ってみる。そし て、統計をインターネットなどで公表する。こういうことでまずどうかと。
 それからもう一つは、女性だけが職能団体をつくっている場合があるんですね。例えば女性医師、女性校長の団体ですが、そういうものをどう考えるかですね。今後長期的には そういうことを奨励するのか、それともやはり本来の職能団体の中で登用されなければいけないのであって、団体への参加の仕方も実は本当に女性は家庭を持っては参加できな いような活動の仕方を要求されるような場合、労働組合などもそうかもしれないけれども、職場と同じような問題に直面して、結局最後までそれだけつき合えるのは男性でしかなく、 その地域の部長になるのは男性でしかなくということで、これがボトルネックということなんです。
 次は、先ほど女性分野は福祉、教育、環境というようなことで問題だという御指摘がありましたが、そういうふうに思う面と、私はやはりそれをそういうふうに言ってしまうと少し悲し いかなという面もあるんです。つまり、そういう分野で女性がいい働きをするということは非常に重要なことなんです。そういうふうに実績のある分野は、今度こそ本当のエリートが そこから出てこなければだめだということで、それだけ女性の職業人がその分野に入っていることは高いエリート登用がなされる母体となるわけです。それで、それは女性分野じゃ ないかというふうに言ってしまうと、日本社会全体としてのゆがみも出てしまうと思うんです。そういうところでいい能力を発揮している女性たちを応分に評価しないということにもなっ てしまうし、そこは気をつけてとらえてほしいと思います。
 私は教育、環境、福祉というような分野において女性のいい働きがあるということはとても重要だし、それが応分にちゃんと評価されて、そこから高い地位につく人がちゃんと出ると いうことが重要なので、ほかのチャレンジで出たとき、例えば自衛隊の幹部に女性がなったときというようなことを考えますよね。それで、こういう教育、福祉、環境という分野で女性 が十分な実績があるときは、そういうチャレンジで横で別の今まで実績のない分野に女性が出たときに、実はそういう価値を体現できるんです。
岩男会長
ちょっと一言申しますと、女性の領域というのを大事にするということは賛成ですが、あわせてその影響も考えておく必要があります。
 なぜかといいますと、例えばアメリカ歴史学会の女性会員が増え会長に女性が続いたわけです。その結果、歴史学者の地位が待遇面で下がったと聞きました。ですから、そうい う現実というか、女性が増えるのは単純に喜べないという部分がありますので、その辺りはちょっと気をつけなくちゃいけない。この問題はかなり複雑だということです。
住田委員
私自身の気持ちとしても同じで、それは今まで活躍していた分野をおとしめるものではなくて、ここだけにとどまっていてはならないということなのです。しかも女性だと 安易にこういうところにつけておけばいいだろうという、その方の資質にかかわらず、そういう安易な登用があったので、そこで結局上までいかないでそこ止まりになってしまうという 実績が余りにもあり過ぎたことに対してなんです。
竹信委員
先ほどの条例の話でちょっと補足しますと、福岡県の福間町という小さい町が今度条例で入札のときに女性を登用しているかどうかということを一応お尋ねをするとい う書類を付けることにしたんです。だから、何でもいいわけで、おたくは何をやっていますかというのをお尋ねをする。それは別に書かなくても入札はバッテンになりませんよと。その 代わり、見るとうちは何もやっていない、どうしようとか、そこで考えさせましょうというシステムで、そこから初めて積み上げていきますよという話なので、いい事例だと思います。
伊藤委員
関連で一言。今、幾つかの自治体で条例作りに参加しているんですけれども、今おっしゃったように民間企業をチェックするということになってしまうと、法律的な問題 で問題が出てくる可能性もある。今ある自治体で準備しているのは1つやっているのは男女共同参画協定というのを自治体と企業が結ぶ方式です。直接の効果はないかもしれな いけれども、協定を結んだところは県と協定を結んでいますということがアピールできる。そういう形の刺激をしていくことは、企業活動に不利益を与えるものだという形の争いに なったときにそれを超えられるような準備をしておかないと、難しい問題が生じうるということは押さえておかなければいけないと思います。
竹信委員
これまで女の人が働きにくかったのは労務管理がすごく拘束義務的だからだと思うのです。拘束義務優位で、長くいると賃金が高くなる。
 オランダが何で面白いかというと、短時間労働でも同じ賃金とか同じ社会保障にしてしまったということは、反対に時間型優位性をなくしちゃったんです。そこのところがすごく面白 いので、それははっきり言って男性にとってもプラスになる。だから、別に女性にうまくいかなかったものを調べてみたら男性もよくなかったじゃないということになるわけですね。
 それからもう一つ、さっきの融資の担保の話で、担保主義は土地がなければお金を借りられないということが80年代にすごく大きい問題になって、サービス産業を育てる上ではこ れはネックじゃないかと言われたのに、大手金融機関ではいまだにちゃんとその審査ノウハウを身に付けていないためにあんなおかしな融資をしてバブルで失敗したということです ね。だから、さっきのボトルネックを探すところから始めて、その次にアイデアがあって、3つ目ぐらいに、これは性中立的に見てもよくないということの基準を変えようというのを付け ておくと、きっとすごく説得力があるということを提案したいと思います。
樋口委員
女性のチャレンジ支援ということを小泉総理がおっしゃってくださったのはとてもうれしいことで、女性が元気になれば男性も元気になると、これをすっと言える男の人と いうのはそれほど多くはないんですね。女の元気は男の不元気とか、女の元気は男の不機嫌とか、女が強くなるから男が弱くなるとか、そういうことを言いたがる人が多い中で、総 理のストレートな言い方に私は非常に賛成で、ことの本質をぱっとつかんでいらっしゃるなと思いました。
 それは結局、去年の初めにやらせていただいた女性と仕事の子育て両立支援策に関する提言したところで、5本の柱の中で私たちは一番最初に「両立ライフで職場改革」という ことを打ち出しましたが、肝心の職場が変わらなかったら幾ら労働法規や自治体関係でいい法律制度ができても、そこからこぼれていく人がどんどん多くなってしまって、今のとこ ろ構造改革がむしろ女性たちにしわ寄せされるのではないかという問題があります。
 それから、上昇指向じゃなくて横へ広がるというお話がございまして、それも基本的には賛成なんですけれども、まだ上へいっていないんですね。
 参画局でこうした参画状況を示す表をつくっていただいて大変ありがたいんですけれども、例えば裁判所の調停委員にしても、そこの中で監事役というかリーダー役がいるはずで す。また、人選をする人がいるはずですが、そこに男女がどのぐらいいるか。このごろだんだん女性の比率が上がってきたもので、医学の世界でも女性の教授の比率はごく僅かで す。女性法律家協会もありますが、法律家の中の女性はどんな位置を占めているのでしょうか。民生委員・児童委員は昨年で女性部会というのを解消しました。つまり、女性の比 率が50%も超えた中で今更女性もないだろうということのようです。同じことが、家庭裁判所の調停委員にもいえるようで、女性が43.1%でしょう。女性の勉強会はもう古いのでは ないかという意見が出てきているそうです。
 それから、民間の団体で日本pta協議会に母親部会というのがあって、これにも賛否両論があったようでした。団体の中での女性部会というような存在を今どう考えていったらい いかなどというのを一度御検討いただきたいと思います。それはとりも直さず、今度は大学という分野で女子大をどう考えるか、女性のリーダーシップを育てるにはどんな場が必要 かなどという議論にもつながってくると思います。
 という具合で、上へ行くこともまだ奨励しなくてはならない状況だと思います。それから、性差が埋没しやすい問題として地域の問題、まちづくりがあります。現実には女性か入って きているところも増えてきて、いていろいろな賞もあります。例えば、総務省のふるさとづくり大賞などがあります。そういうところに常に男女共同参画の視点を入れていく。まちづくり もこれから女性がチャレンジする重要な課題だと思います。
古橋委員
例えば研修というものについてクォーター制を義務付けたときに、女子差別撤廃条約ではそういうものは差別と解してはならないと書いてあるけれども、国家公務員法 における刑事罰に当たるのかどうか詰める必要がある。
 高校、大学における進路指導の実態としてどういう人が今やっているのかということを文部科学省を通じて調べていただきたい。それは、女性と男性の教官が組になってそれを指 導しているのか、進路指導をするときに男女共同参画の視点がどういうふうに入っているのか。3点目は、先ほども私が申し上げましたように、これから政府調達であるとか、ある いはファミリーフレンドリー企業とかというようなことをやる場合、どうしても男女共同参画に貢献する度合いの基準というものが必要になってくる。ジェンダー統計というものについ て、世界的にはhdiとかgemがありますけれども、それ以外に日本の場合におけるジェンダー統計というもの、そういう基準というものをどういうふうにこれから統計として考えてい くのか検討する必要があります。
伊藤委員
附帯意見ですが、isoみたいな形でジェンダー・エンパワーメント・スタンダードみたいな形のものを準備してもいいのではないか。うちはその資格をとっていますよと いうのを企業が言えるような形の準備をするというのは、裁判にもならないし、企業活動を妨害することにもならない積極的な方策の一つではないかと思います。そういったものは この委員会でつくれるんじゃないかと思います。
岩男会長
今の何がふさわしいかというときに、パブリックコメントを求めるというようなこともいいかもしれないですね。皆さんからいろいろなアイデアを出していただくということ で。
松田委員
私も雇用保障に代わる何かが必要であると。終身雇用とか年功が崩れたことが非常に混乱を招いて、それに代わる基準というのがまだ見出せないままにこういう厳 しい時代を迎えているというのが現状なんですが、私はやはりきっちり仕事といいますか、労働を評価する。成果だけで評価するとか、働く時間だけで評価するとか、勤務年限で評 価するとか、あるいはどのぐらい家族を抱えているかとか、そういうようなことに代わって客観的に経験、知識、努力等々の要素に分析して、どんな仕事であってもこれだけ働けば 幾らになるかということが客観的にわかるようなものが日本ではできていないんですね。男性がやっている仕事は何となく高度で、女性のやっている仕事は何か低いというけれど も、客観的に基準はあるはずなんですね。それに必要ないろいろな要素に分解するとか、そういうものをつくっていくということがある意味ではこれから一番必要なことだというのが 1つです。
 それからもう一つは、全くこれも賛成なんですが、私が前から言っていたのは、こういう男女共同参画にせよ雇用平等にせよ、私がこうして基本問題専門調査会に加わった全くの 動機は、男性がこのままではだめになってしまう。疲れ切っている。ですから助けてくれと、そういう意味なんです。
 そういう意味から言っても労働時間がいい例ですけれども、女性のチャレンジ支援は男性のためだと。男性がそれに一番裨益というか、利益を得ているんだということをもっと具 体的な形で、今の労働時間もいい例ですね。サービス残業等々、先ほど八代委員がおっしゃったように不況に備えて労働力を抱えている。その代わり、それが今できなくなったも のだから所定の人数で不況を乗り切ろうとするから手当の付かない残業がどんどん増える。そういうものに代わって今の労働力のきっちりした評価基準というものをつくると同時 に、男女に共通の人間としての働き方の基準を打ち出すためのキャンペーンを全国的に展開しないと日本の先行きが危うくなるのではないか。
山口委員
1つはナイロビ将来戦略も、それから北京の行動綱領も、あらゆる分野への全面参画ということが前提で、そのために女性差別をなくすという仕組みだと私は思うの で、ここはやはりあらゆる分野への全面参画ということはもう一回確認しなきゃいけないということです。
 それからもう一つ、さっき伊藤先生がおっしゃっていたことで、4月から子どもたちの教科の中に総合学習が入りますよね。それはまさに男女共同参画を教える一番いいチャンス だと思うんです。ですから、それには早くここで男女共同参画の学習方法というか、そこに参考になるようなことを言わなきゃいけないと思います。
 それから、私は松田先生の意図するところはとてもわかるんです。それは、今のいろいろな話の中で確かに働くコストだとか社会保障だとか、そういう数字的に出てくるものという のはとらえやすいんです。しかし、おっしゃるようにボランティアだとかngoだとか、多くは女性たちはそこで社会的貢献しているけれども、この国は非常にそういうものが低い。だ から、そこも底上げの大事な部分だと思うので、ここはやはりちゃんと議論しなきゃいけない。最近何だかngoの問題はいろいろあるけれども、あれもどこかのかげりだと私は思う んです。だから、ボランティア活動だとかngoだとか、そういう部分で人材を養成するとか、そこで経験した人たちを物事を決定するところに登用するとか、そういうことも今後議論 をしていきたいと思います。
高橋委員
全然関係ないことですが、先ほどちょっと女子差別撤廃条約というのが出たんですが、我々の仲間内では女子というのは非常によろしくないんじゃないかという意見 が強くて、我々が書くときには女性というふうに書き直しているんですけれども、公的文書だとやはり名前でそうなっていますからそういうわけにもいかないので、これは何とかすべ きではないかという意見が非常に強くなっているということを一言申し上げておきたいと思います。
岩男会長
ありがとうございました。まだたくさん御意見はあると思いますけれども終了時間も迫っております。
 最後に、男女共同参画に関する基本的な考え方の検討について、事務局から御説明をお願いいたします。
内閣府(男女共同参画局村上推進課長)
「男女共同参画に関する基本的な考え方」については、前回の議論を踏まえ、「男女共同参画とは結果の平等を押しつけることではな いか」、「少子化が更に進行するのではないか」といった、よく聞かれる質問についての答え方について考えていきたいと思います。ただし、当面基本問題専門調査会では、「女性 のチャレンジ支援」について検討を進めていくことといたしますので、しばらくは、事務局において委員の先生方とも適宜御相談をしながら考えていきたいと思います。
 よろしゅうございますか。
 今日は本当に大変御熱心に御審議いただきまして、お忙しい中ありがとうございました。

(以上)