男女共同参画会議基本問題専門調査会

  • 日時: 平成13年9月14日(金) 16:00~18:13
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要旨)

  • 出席者
    会長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
    会長代理
    八代 尚宏 (社)日本経済研究センター理事長
    委員
    伊藤 公雄 大阪大学教授
    猪口 邦子 上智大学教授
    住田 裕子 弁護士
    高橋 和之 東京大学教授
    寺尾 美子 東京大学教授
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
    山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事

(議事次第)

  1. 開会
  2. 択的夫婦別氏制度について(内閣府) 
  3. 自由討議
  4. その他
  5. 閉会

(配布資料)

資料1-1
「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」の概要 [PDF形式:100KB] 別ウインドウで開きます
資料1-2
「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」報告書
資料2
第2回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録 [PDF形式:84KB] 別ウインドウで開きます

(議事内容)

岩男会長
時間になりましたので、まだ若干遅れてお見えになる方があるようですけれども、第4回の男女共同参画会議基 本問題専門調査会を開催させていただきます。皆様大変お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございました。
 本日の議題はお手元の議事次第にございますとおり、「選択的夫婦別氏制度について」議論をしたいと思います。
 それでは早速議事を進めさせていただきます。まず内閣府の政府広報室から、先月公表されました「選択的夫婦別氏制度に 関する世論調査について」御説明をいただきたいと思います。既にここでもいろいろと御意見も出ておりましたけれども、改めて 御説明を頂いて、御質問などをお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
内閣府(大臣官房政府広報室杉崎企画官)
内閣府の政府広報室で世論調査を担当しております杉崎と申します。よろしく お願いいたします。座って説明させていただいてよろしいでしょうか。
 お手元に世論調査の資料を2つ配布させていただいております。1つは報告書、資料1-2でございます。もう1つは概要版で ございまして、資料1-1というのがお手元にあるかと存じます。この資料1-1に基づきまして御説明を申し上げたいと思いま す。
 本世論調査は、表紙の部分でございますが、調査対象は全国の20歳以上の者、5千人、回収率は69.4%でございました。調 査期間は本年の5月17日から5月27日でございます。
 調査項目は、選択的夫婦別氏制度に関しますものとして、1.家族と名字(姓)、2.仕事と婚姻による名字(姓)の変更、3. 婚姻と実家の名字(姓)の存続、4.選択的夫婦別氏制度ということで調査をいたしました。
 前回比較できる世論調査は、平成8年6月調査の「家族法に関する世論調査」でございます。本件世論調査につきましては、 今年の8月4日に公表をいたしました。
 それでは中身につきましての結果を御説明いたします。1ページ目でございます。
 「家族と名字(姓)に対する意識」ということで、ここにございます横の棒グラフの項目ですが、調査いたしまして、上位3つにつ きまして上に掲出しております。
 まず「名字(姓)とは、どういうものだと思うか」ということをお聞きいたしまして、「先祖から受け継がれてきた名称」とお答えの 方は45.3%(増)となっております。「他の人と区別して自分を表す名称の一部」とお答えの方は16.3%(増)となっております。 「夫婦を中心にした家族の名称」とお答えの方は11.6%で、前回の平成8年に比べて(減)という結果でございます。
 おめくりいただきまして2ページ目、2番目といたしまして、「仕事と婚姻による名字(姓)の変更」についてお聞きいたしまし た。「現在の法律では、婚姻によって、夫婦のどちらかが必ず名字(姓)を変えなければならないことになっているが、婚姻前か ら仕事をしていた人が、婚姻によって名字(姓)を変えると、仕事の上で何らかの不便を生ずることがあると思うか」という質問で ございます。「何らかの不便を生ずることがあると思う」とお答えの方は41.9%、「何らの不便も生じないと思う」とお答えの方は 52.9%という結果でございました。
 次に3ページですが、「仕事上の不便に対する考え方」の意識をお伺いしました。「何らかの不便を生ずることがあると思う」と お答えになられた方は1,454人でございまして、その方に「婚姻前から仕事をしていた人が、婚姻によって名字(姓)を変えると、 仕事の上で何らかの不便が生ずることがあるとして、そのことについて、どのように思うか」ということをお聞きしました。「婚姻を する以上、仕事の上で何らかの不便が生ずるのは仕方がない」とお答えの方は25.7%、「婚姻をしても、仕事の上で不便を生じ ないようにした方がよい」とお答えの方は56.7%、「どちらともいえない」とお答えの方は16.9%です。
 次に4ページでございますが、「婚姻前の名字(姓)の通称使用」についてお伺いしました。「婚姻をしても、仕事の上で不便を 生じないようにした方がよい」とお答えになった方が825人いらっしゃいますので、その方に「婚姻をして名字(姓)を変えても、仕 事の上で不便を生じないようにするため、婚姻前の名字(姓)を通称として使えばよいという考え方があるが、このような考え方 について、どのように思うか」という質問をいたしまして、「仕事の上で通称を使うことができれば、不便を生じないで済むと思う」 とお答えの方は56.6%、「仕事の上で通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便があると思う」とお答えの 方は41.5%でございました。
 次に5ページでございますが、「婚姻と実家の名字(姓)の存続」についての意識をお伺いしました。「例えば、男性の兄弟の いない女性が、名字(姓)を変えると、実家の名字(姓)がなくなってしまうなどの理由で、婚姻をするのが難しくなることがあると 思うか」という設問でございます。「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることがあると思う」とお答えの方は40.3% で(減)となっております。「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることはないと思う」という方は53.3%で(増)となっ ております。
 次に6ページ、「婚姻を難しくすることに対する考え方」につきまして、「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなること があると思う」とお答えの方1,396人に、「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることがあるとして、そのことについ て、どのように思うか」ということをお聞きしました。「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることは、仕方がない」と お答えの方は25.5%、「実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなるようなことは、ないようにした方がよい」とお答えの 方は51.6%、「どちらともいえない」とお答えの方は21.3%でございました。
 次に7ページですが、「婚姻による名字(姓)の変更に対する意識」につきましてお聞きしました。複数回答でございますが、上 位の4項目でございます。「婚姻によって、ご自分の名字(姓)が相手の名字(姓)に変わったとした場合、そのことについて、ど のような感じを持つと思うか」ということで、「名字(姓)が変わったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」という 方は42.8%、「相手と一体となったような喜びを感じると思う」方は26.8%、「名字(姓)が変わったことに違和感を持つと思う」と いう方は24.7%(増)でございます。「何も感じないと思う」という方が21.6%。その下の項目としては棒グラフにございますが、 「今までの自分が失われてしまったような感じを持つと思う」という方は7.6%でございます。
 次に8ページでございますが、「婚姻による名字(姓)の変更と自己喪失感」ということで、「今までの自分が失われてしまった ような感じを持つと思うと挙げた方以外の方、3,204人に「自分以外の人の中には、婚姻によって名字(姓)を変えると、今まで の自分が失われてしまったような感じを持つ人もいると思うか」ということをお聞きしまして、「そのような感じを持つ人がいると思 う」という方は45.7%で(増)でございます。「そのような感じを持つ人はいないと思う」とお答えの方は43.9%でした。
 次に「自己喪失感に関する考え方」といたしまして、「今までの自分が失われてしまったような感じを持つと思う」を挙げた方と 「そのような感じを持つ人がいると思う」とお答えの方1,728人に、「婚姻によって名字(姓)が変わると、今までの自分が失われ てしまったような感じを持つ人がいるとして、そのことについて、どのように思うか」ということをお聞きしました。「婚姻をする以 上、そのような感じを持つことがあっても仕方がない」という方、38.9%(減)でございます。「婚姻をしても、そのような感じを持つ ことがないようにした方がよい」という方は38.3%、「どちらともいえない」が20.8%でした。
 次に、10ページ、「内縁の夫婦」に関しましてお聞きしました。「世間には、正式に結婚している夫婦と全く同じ生活をしている けれども、正式な夫婦となる届出をしていないという男女(内縁の夫婦)がいる」ことを説明した上で、「そのような内縁の夫婦の 中に、双方がともに名字(姓)を変えたくないという理由で、正式な夫婦となる届出をしない人がいると思うか」ということをお聞き しました。「名字(姓)を変えたくないという理由で、正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦もいると思う」という方は57.0%、 「名字(姓)を変えたくないという理由で、正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦は、いないと思う」という方は30.0%、「わか らない」という方は 13.0%でした。
 「内縁の夫婦についての見方」についてお伺いしました。「名字(姓)を変えたくないという理由で、正式な夫婦となる届出をし ない内縁の夫婦もいると思う」とお答えの方1,976人に、「そのような内縁の夫婦は法律(民法)上は正式な夫婦として認められ ないが、そのような男女についてどのように思うか」ということをお聞きしました。「同じ名字(姓)を名乗らない以上、正式な夫婦 とは違うと思う」とお答えの方は27.1%、「同じ名字(姓)を名乗っていなくても、正式な夫婦と同じような生活をしていれば、正式 な夫婦と変わらないと思う」とお答えの方は69.6%でした。
 次に12ページ、「家族の一体感(きずな)」についてお伺いいたしました。「夫婦・親子の名字(姓)が違うと、夫婦を中心とする 家族の一体感(きずな)に何か影響が出てくると思うか」ということをお聞きしました。「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感 (きずな)が弱まると思う」という方は41.6%、(減)でございます。「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感(きずな)は影響 がないと思う」という方は52.0%で(増)でございます。
 次に13ページ、7といたしまして、「配偶者の父母との関係」につきましてお聞きしました。「夫婦の名字(姓)が違うと、自分と 違う名字(姓)の配偶者の父母との関係に何か影響が出てくると思うか」ということをお聞きしました。「名字(姓)が違うと、配偶 者の父母との関係を大切にしなくなると思う」という方は21.6%で(減)です。「名字(姓)が違っても、配偶者の父母との関係に は影響はないと思う」という方は70.4%です。
 次に14ページ、「子どもへの影響」についてお伺いいたしました。「夫婦の名字(姓)が違うと、夫婦の間の子どもに何か影響 が出てくると思うか」ということをお聞きしました。「子どもにとって好ましくない影響があると思う」という方は66.0%、「子どもに影 響はないと思う」という方は26.8%でございます。
 次に15ページ、「選択的夫婦別氏制度」についてお伺いしました。現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならな いことになっているが、「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字 (姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい」という意見があることを説明 した上で、「このような意見について、どのように思うか」とお聞きしました。「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗 るべきであり、現在の法律を改める必要はない」という方は29.9%、(減)でございます。「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗るこ とを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」という 方は42.1%で、(増)でございます。「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名 乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることにつ いては、かまわない」という方は23.0%でした。
 次に、「別姓の希望」についてお伺いしました。16ページでございます。「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望してい る場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」とお答えの方1,461人 にお伺いしまして、「希望すれば、夫婦がそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗れるように法律が変わった場合、あなたは、夫 婦でそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望するか」ということをお聞きいたしました。「希望する」という方は 18.2%、「希望しない」という方は50.3%、「どちらともいえない」という方は30.5%でした。
 次に「別姓夫婦の子どもの名字(姓)」についてお伺いしました。「希望すれば、夫婦がそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗 れるように法律が変わった場合」を想定した上で、「それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗っている夫婦に二人以上の子どもが ある場合、子ども同士(兄弟・姉妹)の名字(姓)が異なってもよいという考え方について、どのように考えるか」。「子ども同士の 名字(姓)が異なってもかまわない」という方は12.2%で(増)です。「子ども同士の名字(姓)は同じにするべきである」方は 67.5%で(減)、「どちらともいえない」という方は17.4%でございました。
 次に「別姓夫婦の子どもの成年後の名字(姓)」についてお伺いしました。「子ども同士の名字(姓)は同じにするべきである」 とお答えの方は2,340人でございまして、その方に、「子ども同士は同一の名字(姓)を名乗るべきであるとして、それぞれの子 どもが成年に達した時には、それまでと異なる父または母の名字(姓)に変えることができるという考え方について、どのように 考えるか」とお聞きしまして、「今までの名字(姓)を変えない方がよい」という方は36.2%。「変えることができるとしてもかまわ ない」とお答えの方は49.1%。「どちらともいえない」とお答えの方は12.6%でした。
 以上が、実施いたしました世論調査の結果でございます。
岩男会長
ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に御質問、御意見ございましたら、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。
伊藤委員
細かい話ですが、(増)と(減)が付いているのは有意差ですね。検定した上ではっきりした有意差のあるものが (増)、(減)となっているのですね。
内閣府
そうです。書いてございませんのは、数値的には横ばいというような感じでございます。
岩男会長
樋口委員どうぞ。
樋口委員
14ページの「子どもへの影響」のところでございますけれど、設問作成の時に「好ましくない影響」ということの中 に、どういうことが含まれるか仮説としてお立てになったり討論なさったことがあるのでしょうか。ただ「好ましくない影響」という 言葉だけで括られたのでしょうか。
内閣府
今おっしゃいましたように「好ましくない影響」という言葉で今回お聞きしました。聞かれた方が、それにどういったイ メージを持たれるかはいろいろかと存じますけれども、質問する方としては前回と同じ表現を使ったということでございます。
岩男会長
いかがでしょう、ほかに。
山口委員
ちょっと伺いますが、これは年代は出ていますね。職業的には何かとっているのですか。
内閣府
職業はフェイスシートには記入していただいていますので、クロス集計をして出すことはできます。報告書の方の後 半に集計表というのが57ページ以降付けております。そこには各項目ごとに都市別、男女・年齢別、職業別にそれぞれの答え ぶりがどう分布しているか、どういう数が出たかというのはすべて載せてございます。
樋口委員
7ページ、「婚姻による名字(姓)の変更に対する意識」ということですが、現実に婚姻によって名字が変わる方 は、御承知のように97~98%が女性の側ですから、一番男女差が知りたいところ、詳細版では出ていると思いますけれど、ど こかにあるでしょうか。
内閣府
はい、ちょっとお待ちください。男女差だけですと19ページ。
樋口委員
ありがとうございました。これですね。
岩男会長
男性の場合にはまず現実がそうではないということも多分あるでしょうね。それを踏まえた上での回答になってい るのでは。
樋口委員
ここは全体にギャップがあって興味深いところだと思います。ありがとうございました。
八代会長代理
これは内閣府の方への御質問というより委員の皆さんに聞きたいのですが、例えば12ページ、「家族の一体 感(きずな)」、「配偶者の父母との関係」では、年齢によって差が出てくるわけですね。一体感が失われるというのは男女とも 高齢者に多く、父母との関係もそうなのですが、「子どもへの影響」というのはほとんど年齢差がないというのは何か矛盾のよう な気がするわけで、一体感が弱まらない、父母との関係もないと言っている人がなぜ子どもだけ影響があると考えるのかという のは何か設問の仕方が影響しているのでしょうか。矛盾のような気がするのですけど。
岩男会長
いかがでしょう、どなたか御意見が、この点について。
八代会長代理
「好ましくない影響」というのは非常に漠としていて、もう少しスペシフィックにすれば年齢差が出てくるような 気もするのですけれども。
岩男会長
中身が違うかもしれませんね、年齢によって。
伊藤委員
子どもさんが結婚することを想定すると、娘さんがおられる場合、今までの判断でも姓が変わるというのはある程 度親の目として前提とされているというのがあるのではないかと思うのです。お年を召された方は既に経験されているわけです ね。そのへんの部分が反映しているのではないか。
山口委員
質問は時系列に見るために、5年前と同じだと聞きましたけれども、全部同じなのですか。
内閣府
同じです。概要の方ですと一番最後の18ページ、「別姓夫婦の子どもの成年後の名字(姓)」という質問がございま す。これを新しく付け加えましたので、御覧いただくと平成8年との対比がありません。ここは新規ということでございます。あと はすべて質問表、回答ぶり、平成8年と全く同じです。
住田委員
報告書の方の38ページ、表15の「選択的夫婦別氏制度」に関して、配偶関係で調べてございますが、一番下の ところで「未婚」と「既婚」だけ分けてあるのですが、未婚の男性、女性という、この性別は分からないのでしょうか。
内閣府
集計はしておりません。ただフェースシートがありますので、その下のレベルでは物はあるのですけれども、集計は しておりません。
住田委員
そうすると集計しようと思えばコンピュータですぐにでも計算上出てくるのでしょうか。
内閣府
そこまでの深めたクロス集計は予定してなかったものですから、今できるかどうか。
岩男会長
「未婚」と「既婚」で数がものすごく違うのですね。未婚者は男女合わせて541しかいないのですね。ですから数が それだけ違うグループをそのまま比較するのも問題があるかもしれないですね。
住田委員
せっかくこれから結婚しようとしている方が過半数希望しておられることが分かったわけですから、男女差もいか がかなというように興味を持ったわけです。
岩男会長
これは将来も続けて何年後かにまた調査をされるのでしょうか。
内閣府
内閣府の世論調査は、施策を所管する各省庁さんの御要望を受けて、また私どもでも検討させていただきまして、 行うか行わないかを決定しておりますので、また各省さんの方である時期に御希望があれば、また御相談していただけるもの と思っております。
猪口委員
14ページの「子どもへの影響」のワーディングのことなのですが、ここが一番気になるところですね。今後調査を続 ける場合にはここを何とか工夫しなければいけなくて、どういう聞き方が好ましいかというと、例えば「両親がそれぞれ旧姓を大 事にしていることは、子どもにとってよい影響があると思うかどうか」、そういうワーディングにするとか、何かポジティブな表現を 使った時にどういう変化が出るかということを知りたいような気もするのですね。
 それから、もし「夫婦の名字が違う」とそのままにする場合には、「子どもにとって影響があると思うか」だけ聞くべきですね。こ こだけ「好ましくない影響」というのはそもそも質問者の側に好ましくない影響があるという先入観があると思うのです。「影響が あるかどうか」と聞けば、「ある」と答えた人の中に更に「良い」のか「悪い」のかと聞いてもいいかと思うのです。それは親がそ れぞれ生き生きとしているとか、あるいは結婚することを選択したとか、そういうことで「良い」と深く考えて思う人もいるかもしれ ないから、それは聞くべきかとも思うけれども、大半の「影響があると思う」という人は好ましくないと思うのかもしれないけれど も、最初のワーディングからして「好ましくない影響があると思うか」と聞くことで、誘導尋問のような感じが少しするのですね。
伊藤委員
「影響があると思うか」という聞き方をされているのではないかと思いますが。
猪口委員
そうです。
伊藤委員
今、猪口さんおっしゃったように、回答のワーディングを「影響があるかどうか」と聞くのであれば、「好ましくない影 響があると思う」、「影響がないと思う」、「好ましい影響があると思う」、そういう聞き方をするべきだろうと思うのです。
猪口委員
ここはすごく重大で、全体としては世論調査はやってよかったと思うのですね。非常に意識改革が進んできている ことを表すのだけれども、私たちはみんな子どものことはこの社会で大事に考えているから、「子どもにとって好ましくない影響 があると思う」が66%の人があると思うということを聞いただけでも非常にネガティブなインパクトがあるのではないかということ が私はとても心配なのです。ですから、そもそもこの質問が、研究面から見ても、学術的に見ても正しい質問の仕方であったの かということを問いたいのです。
 私の結論はそうではないと思います。「好ましくない」という表現が入ったこと自体が、非常に客観性を欠いた質問であり、した がって、回答の中の66%という割合は非常に疑わしい結論であると私としては解釈します。
内閣府
私どもといたしましては、設問の内容、回答の内容は中立に作るべきであるといつもそのように心がけているつもり でございます。いろいろな設問の仕方を変える、選択肢をまた変えるとかというお話もあるかと存じます。ここでは制度そのもの が子どもに与える影響ではなくて、御夫婦のお名前が変わった時への子どもの影響の国民の意識を前回と同じように調べたい と。また、ここを変えますと今度は前回比較ができないということにもなります。今回は、施策省庁さんともお話し合いさせていた だいて、時系列で取りたいということも非常に強くございましたのでありましたけれども、また、今後更に調査が必要だと施策官 庁さんの方でお考えであれば、またその時にはよく調べてみたいとは思います。
猪口委員
今の御説明でよくその趣旨も分かるのです。私もパネル調査などやって、そういう関心があるということはよく分か るのですけれども、問題はこの結論を私たちがどう受けとめるかということで、この結論を66%の人が「本当に好ましくない影響 がある」と思っていると受けとめないことが重要だと思うのです。つまりこういう質問の仕方をすれば、相当高い率でこのように自 然に返ってきてしまうことがあり得るので、これを政策的に判断する時のこの調査の使い方、これを気をつけなければいけない ということを会長さんにお願いしたい。
伊藤委員
全体の印象なのですが、今おっしゃったようにほかの項目に関してはあまり変化してない。ただ、別氏制度に関し てだけははっきり変化があるという読み取り方もできると思うのです。おそらくこれは従来選択的ということが一般的に知られて なかったのが、選択的な別氏であるという、そのへんのところがかなり浸透した結果ではないかと読める。そのへんのところは どうでしょうか。
内閣府
私どももそう思っています。
伊藤委員
別氏をめぐる議論に関しては、選択的というイメージがこれまで一般に浸透してなかったということが従来の反発 のベースにあったのではないか。それが浸透することで大分変わってきたのではないか。全体のデータを読むとそう読めるので はないかと思います。
内閣府
私どもも、年齢別にも50%を超えたとか、前回と違って数値が逆転している、全体の傾向もこのように変わっていると いうところは、若年層ないしは中年層ぐらいまで価値観なりが多様化して意識は一定程度変化しているというようなことが出た のだろうと思っております。
岩男会長
社会調査のデータの読み方ですが、一応こういう聞き方をした時にこういう結果になりましたということはそのまま 受け取らないといけないのであって、こういう結果は存在しませんでしたというわけにいかないものです。ですからこういう聞き方 をしたらこうなったというだけであって、ほかの聞き方をしたら違った分布になるでしょうと、そういうことは言えるとは思うのです が、この結果については頭から否定するわけにいかないと思います。
寺尾委員
今話題になっている「子どもへの影響」ということについて、今後の調査の参考にということで意見を申し上げま す。一番最後の設問は今回だけだということをおっしゃったので、今後変わる部分も出てくるのかということで申し上げたいと思 います。「子どもへの影響」というのは今話題になっているように大事な点だと思うのですが、どういう影響かということを聞いて ないですね。例えばお母さんと名前が違うことの影響なのか、兄弟の間で名前が違うことなのか。従来の民法改正の提案で は、兄弟の名前を統一されるような形での提案だったと思いますけれども、そのへんについてもはっきり書いてないので、名前 が違う人の表札が2つ並んでいる家に住むことの影響なのか、そのへんをもう少し細かく見るようにした方がよろしいように思い ます。
岩男会長
そうですね。ですから次回の時に、またそのようなことを少し御意見を申し上げられるような機会があればと思いま す。
内閣府
それは私ども施策官庁から要望を受けた時に、どのように調査票を設計するかというのはいろいろ相談させていただ いております。施策を所管している省庁さんの方で、まずこれを聞いて、次にサブクエスチョンなどでどこまで落とし込んで意識 を探っていくかということは、また施策官庁さんのお考えがございます。私どもはまた技術的なこともございます。技術的という のは変な意味ではございませんで、非常に分量が多くなると調査拒否が多くなってくるとかいろいろございます。そういった意 味での技術的という意味ということですが、そういったことなどもいろいろ打ち合わせて今でもやっておりますが、これからもやっ ていきたいと思います。
八代会長代理
施策官庁というのは法務省なのですか。
内閣府
今回はそうです。
八代会長代理
そういう時に、ここが共管というか、一方的に問題について法務省がそういうことを内閣府にお願いして、こっ ちが知らない間にやってしまうということがいいのかどうか。関連するものについては当然法律であれば合議するわけで、世論 調査だから合議ということはないかもしれませんが、そういうルールはないのですか。
内閣府
それはどこまで関係省庁さんと打ち合わせるかというのは主務の省庁さんが御判断されるものと思っております。
岩男会長
どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして「選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不便・不利益についての事例募集の結果」と「選 択的夫婦別氏制度に関する審議のまとめ(案)及び骨子(案)について」御説明をお願いをいたします。
内閣府
(男女共同参画局村上推進課長) それでは、お手元の資料に沿って御説明をさせていただきます。
 まず「選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不便・不利益の事例募集の結果」でございます。
 これは8月1日~8月31日の間に募集したものでして、総計606通の事例が集まりました。うち女性が543通、男性58通、不 明5通ということで9割方女性からのものでございます。
 電子メール、ファックス、郵送等でこのような結果になっています。
 分類をお示ししていますが、不便・不利益の内容といたしまして、「ア.改姓に伴うもの」、「イ.旧姓使用に伴うもの」、「ウ.法 律婚をすることができないことに伴うもの」、大きく3つに分類されます。
 この資料は本日の調査会の配布資料として公表することとしたいと考えております。
 ごく簡単に各分類ごとの具体例を見てみますと、例えば3ページ目に「改姓に伴う手続に関する問題」としては、上から2つ目 の○などを見ていただきますと、「名義変更の手続で、運転免許証、パスポート、車検証、車庫証明、健康保険証」云々といっ ぱい、これで「それぞれの行政庁等に出向かなければならず、手続には戸籍抄本や住民票が必要で、お金もかかるし、手続が 大変だ」というようなことがるる書いてあり、その次の丸も「忙しい時に仕事を休んで行くのは大変だ」というようなことが書いてあ ります。
 その次に、3ページ目から4ページ目にかけて、「個人の同一性の問題」として、「研究者であるために、姓を変えられない」。 4ページの一番上ですが、「姓を変えると論文の実績が途切れて研究者にとっては死活問題となる」。
 「結婚前に知り合った人すべてに氏が変わったことを連絡することは不可能であるため、連絡できなかった人は自分を探索で きない」。「同業者の名簿を見ても、私であることが認識できないので、仕事のチャンスを失う」というような話。
 5ページ目を見ていただきますと、真ん中で(3)「改姓の周知・説明等に関する問題」としては、「婚姻に関する事項が必要以上 に明らかになる」。
 「職場では旧姓使用が認められていなかったため、結婚したことがすぐに知られる」。「それほど親しくない人まで、私的なこと を知られてしまうのが不愉快だ」とか、「いちいち説明して回らないと仕事に支障が出る」。「結婚はプライベートなことなのに」と いうのが、上の2つ目の○。
 さらに「離婚の時は、離婚の説明をしないといけなくなって非常に苦痛だ」というのが上から3つ目に出ていたりします。
 次の6ページ目の(4)は「改姓による精神的不利益」で、「うつ病になった」とか、上から2つ目に、「通称使用は余り解決になら ない」。結局のところ、「新姓が本名で難しい」と。「法律婚で私の心は大変傷ついた」というようなこと。
 (5)の「『家』意識に関連するもの」として、上から3つ目の例など見ますと、「姑が、改姓した途端「うちの嫁」と言って、家事や 日常の生活で、自分のやり方を押しつけると。夫が家事をやろうとすると、そんなのは嫁の仕事と言われた」と。
 その下の方に、「余りの理不尽さに姑と別居し、ペーパー離婚し、2人の子どもの氏も母親である私の氏に変更した」。そうす ると「姑の態度が変わって、いわゆる嫁扱いがなくなった」。
 次の7ページ、「旧姓使用に伴うもの」としては、(1)職場における問題、「ア 戸籍名しか使用できない場面」があると。「特にコ ンピュータで一元管理されるようになってくると、2つの名前の使い分けが難しい」というようなこと。
 上から2つ目は、「会社の中でも組織変更の度に混乱し、他社に出向すると、他社も絡んでの旧姓使用の難しさを実感した」と いうような例が挙がっていたりします。
 8ページの下の方では、「転職で旧姓で働きたいと書いたら、それがマイナスになっている場合がある」とか、「転職というよう なことになると、就職をあきらめる」というようなことになるというようなことが書いてあります。
 特に9ページの上から3つ目の○を見ますと、「通称使用を認めてきた企業でも、データベースの一元化で、『通称と戸籍名の 使い分け』が逆に困難になったり、通称使用制度を検討し始めると、システムの改修費が億単位になることが分かった」という 話。
 「生活上の不便・不利益」、特に10ページの一番上などを見ますと、「通称で働いている社員が海外のコンファレンスに招かれ ると、宿泊の予約等を通称で行っていると、持っている身分証明書の名前と一致しない。」
 10ページで「無理解・嫌がらせ」の例。
 11ページで「法律婚をすることができないことに伴うもの」としまして婚姻が妨げになっている例。最初の1つ目の○がそうです が、「結婚の話を相手とするたびに双方とも別姓をめぐりギクシャクする」。「別姓を法制化していないことで結婚を考える者同士 がギクシャクすること自体が悪影響ではないか」。
 上から3つ目、「結婚について悩んでいる」、「家の問題、親の問題、姓の問題でなかなか結婚に踏み切れない」。「田舎の本 家の男兄弟のいない長女なのですぐにお嫁に行けない」。「それぞれの姓を戸籍上で残して、子どもも認められたい」というよう なことが書いてあったり、12ページから13ページにかけては、「相続で問題が生じる」ですとか、真ん中辺のところにあります が、「銀行ローンが借りられない」というような問題が指摘されたりしております。
 というように、鮮明に苦労している例が出ておりますので、御参照いただければと思います。
 それから、「選択的夫婦別氏制度に関する審議のまとめ(案)」とその骨子(案)と参考資料をお配りしております。今のとこ ろ、この骨子は審議のまとめを説明するための概要として活用することを考えております。審議の途中でもあり、本日はこの審 議のまとめと骨子と参考資料のいずれも公表しない予定でございます。参考資料の順序は審議のまとめの関連の順番になっ ております。
 これは全体としまして、法制審議会とは異なる観点から、委員の方々の関心が高くて、事務局において重要と思われる点を 中心にまとめております。具体的には先月公表されて、今御説明がございました世論調査の結果、今御説明しました具体的に 生じている不便・不利益、理論上の問題として重要な憲法論、国民の関心の高い家族の関係や子どもへの影響についての考 え方を中心に述べております。
 審議のまとめの案に沿って、骨子も御参照いただきながら御説明をいたしたいと思います。
 まず目次がありまして、「はじめに」というところで、最初に明治政府成立以後のこの制度の話を書いておりまして、現行民法 は、旧法上の「家」を廃止しましたが、我が国の習俗と国民感情を考慮し、第750条で夫婦同氏制度を規定している。
 次の丸で、女性の社会進出等を背景に、職業生活における改姓による不便・不利益の解消を求める声が強まってきた。国際 的な動きもある。平成8年、法制審議会での「民法の一部を改正する法律案要綱」の答申の話を書いています。
 平成12年12月の男女共同参画基本計画においては、「男女平等等の見地から、選択的夫婦別氏制度の導入…について、 国民の意識の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進める」とされている。
 それで、当専門調査会は、国民の関心も高い個別課題として選択的夫婦別氏制度を検討課題とし、世論調査及び不便・不 利益の体験・事例の募集の結果等を踏まえ、これまでの議論を取りまとめたということを書いてあります。
 本論に入りまして、5ページ目でございますが、この5年ぶりの世論調査で、これまで実施してきた世論調査で初めて「夫婦 がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」とする者の割合が、「現在の法律を改め る必要はない」とする者の割合を上回った。主として、これから婚姻が予定される20歳ないし30歳代においては、法律を改めて もかまわないとする者の割合が初めて過半数を占めるに至った。
 この賛成する者の割合は、従来から総じて増加傾向にありましたが、今回の結果は、国民の理解がさらに進んだことを示す 極めて重要な変化であると考えられます。
 2番目に6ページ、「選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不便・不利益」を解消する必要性について述べてお りまして、女性の社会進出、それから「ライフスタイルの多様化」という言葉をここで使っておりますが、最近の社会経済情勢等 の変化により、選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不便・不利益の場面が増大している。先ほどの例なども少 し引かせていただいています。国の行政機関の職員の旧姓使用を認めるなど不便・不利益の解消が進みつつありますけれど も、住民票、運転免許証等多くの公的場面で旧姓使用が認められていない状況にあります。個別の運用によって旧姓が使用 できる場合と使用できない場合が生じることは不便・不利益を完全に解消させることにはならないと書いて、次に8ページで、3 番目の「憲法上の問題点」としまして、夫婦同氏制度を規定する民法第750条は、憲法とのかかわりにおいても問題があるので はないかとの指摘もあり、少なくとも立法政策上考慮されるべきではないかと考えられます。
 例えば、憲法第24条第1項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定していますが、氏名を法律上保護されるべ き利益として捉えた上で、自分の氏を維持するために婚姻を躊躇したり事実婚を選択したりしている者が少なくないことにかん がみ、夫婦同氏を規定する現行民法が事実上婚姻の自由を制約しているのではないかという指摘もある。
 次に憲法第24条第2項は、婚姻に関して、法律は両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと規定している。 夫婦同氏を規定する現行民法は、形式上平等ですが、今日事実として夫婦の97%において妻が夫の氏に改めている現状は 不平等であって、実質的に男女に不平等な効果を及ぼしているのではないかとする指摘もある、と言及いたしております。
 次に「家族の関係について」、9ページです。
 氏の問題と家族の一体感(絆)とは、別個の問題であると考えられる。今回の世論調査の結果では、家族の名字(姓)が違っ ても、家族の一体感には影響がないと思うと答えた者の割合が過半数を占めております。
 家族の一体感は同氏であるという形式によって保たれるのではなく、愛情や思いやりといった実質によって保たれるものと考 えられる。9ページの一番下ではもっと書き込んで、今日、夫婦が対等なパートナーとして互いに尊重し合うことによって強い結 びつきの家族を作ることが重要である。何よりも、夫婦が希望するならば別氏を選択すことを認めるような、多様な生き方を認め 合う社会であることが望まれると書いております。
 次に10ページ、「子どもへの影響について」です。
 子どもに好ましくない影響を与えるのではないかという懸念が見られる。この点、政府が、選択的夫婦同氏制度の趣旨や意 義について、適切に広報活動を行うとともに、社会全体が子どもが不安を感じないよう十分配慮することが重要で、これらによっ て、子どもへの影響に対する懸念が払拭されていくものと考えられるということで、広報の重要性を書かせていただいておりま す。
 11ページ、これは八代先生の御意見を踏まえて書かせていただいております。
 12ページ、6「その他」。
 夫婦の圧倒的多数が妻が改姓しているという社会的事実を踏まえると、夫婦同氏制度は男性中心の考え方や、旧来の「家」 意識の象徴という面もあったという指摘がございます。
 2番目に、国際的潮流について書いておりまして、諸外国の法制を見ても、近年選択的夫婦別氏制度の導入が進んできてお りまして、今日では主要な先進国諸国において、夫婦同氏を強制する国はありません。日本と同じように、夫婦同氏を強制する 国はインドやトルコ等に限られているというようなことも書かせていただいております。
 最後「まとめ」についてですが、まず(案1)ですが、「個人の多様な生き方を認め合い、氏の使用に関する選択肢を拡大すると いう観点から、政府は、選択的夫婦別氏制度の導入を内容とする民法改正を可能な限り早急に行うべきである。
 また、制度の導入に当たっては、政府が制度の趣旨や意義について適切な広報活動を行うとともに、社会全体が子どもに好 ましくない影響が生じないように十分配慮することが必要である」。
 (案2)についてですが、これは3行目のところ「可能な限り早急に行うべきである」の後に、「また、選択的夫婦別氏制度の導 入と併せて、同氏を選んだ者の選択的旧姓使用制度が社会的に認められるようにするべきである」ということが加えられており ます。
 選択的夫婦別氏制度の導入に併せてこういう制度を設けることの必要性等様々な議論があろうかと思います。
 (案3)については、一番下の括弧、事前に先生方にお配りしたものとしては、「(さらに選択的夫婦別氏制度が実現するまで の間、政府は各方面で旧姓使用の拡大がなされるように努めるべきである。)」という、経過的にはその必要性を述べるというこ とも考えられるという案を、この括弧を入れるかどうかということも含めてお配りしております。
 この(案3)の文言は事前にお配りしていましたので、これに対しまして、竹信先生から御意見が出ております。ちょっと御紹介 しますと、この(案3)を前提にしてみますと、括弧は削除した方がいいのではないか。内容には異論はないのですが、旧姓使 用では乗り越えられない困難が多数ある現在、このくだりを入れることによって、「旧姓使用でつなげば当面の問題は解決され るのはないか」という勘違いが広まり、もっとも深刻に不便を感じ、緊急に制度改正を必要としている人々の救済が遅れることを 心配するからです。
 竹信先生は新聞記者ですが、新聞への読者のさまざまな意見でも、二重の姓の存在によって名簿管理が複雑になって困っ ているという企業の管理職の声や、購読者の通称と戸籍名が違うため、通称で送付すると届かないことがあり名簿管理上支障 をきたしている、といった出版業者の人の意見など、旧姓使用による逆の弊害についての指摘が出てきている。
 弁護士の方からは、個人の印鑑証明が要求される場面や銀行口座開設手続などで問題があったり、戸籍名との併用によっ て、かえって混乱が増えた場合もあった、という意見もあった。
 この問題は、困っている人のための早急な救済措置としての意味があり、本当の救済につながる代替案でなければ、かえっ て別姓への改正の引き延ばしにつながって苦痛を長引かせることになりかねません。
 波及効果を懸念しておられるということがこの文面で分かります。
 この点、いろいろな御意見、御議論があろうかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。以上、簡単に御説明いたしまし た。
岩男会長
ありがとうございました。事例については、そちらにファイルされていると思えばいいわけですか。つまり御覧にな りたい方は御自由に御覧になれるような形になっていると理解すればよろしいのですね。
内閣府
プライバシーの問題がありますので、名前とか会社名とかは伏せる必要があると思います。
岩男会長
どうぞ御自由に御質問、御意見をお述べいただきたいと思います。
古橋委員
手続的なことですが、参考資料は今日の記者会見でお出しにならないのですか。
内閣府
これは審議のまとめの付録と考えておりますので。
古橋委員
私は参考資料を出して、この中において、例えば日本国憲法に関連して、ここで言っているような内容のことを説 明していただき、そういう問題点がありますよという問題点の指摘はやっておいた方がいいのではないかと思う。各国の法制の 問題とかこういうところはじっくりと説明しておく必要があります。現時点においては、これはきちんと出して、基本問題専門調査 会でこういうことを議論していますよので、世論はこういうことについて考えた上でいろんなことを考えてくださいとした方がいいと 思います。
岩男会長
参考資料の中で、特に出すとまずいものがありますか。
古橋委員
これはないですね。
岩男会長
ないと思いますけれども。
古橋委員
記者会見の時に、この中で日本国憲法の問題についてはこういう問題がある。各国法制についてはこうなってい ますけれども、実際に同氏制度をとっているのはこんなところだけですよとか、そういう記事になるところだけをちゃんと説明して いただきたいと思います。事実関係の説明ですから、こういうことが議論になったという説明ですから、そういうように説明してい ただくということは、現段階においては最低限必要だと思います。
寺尾委員
私は遅れて参ったので、あるいは御説明があったのかもしれませんが、これをいずれはまとめとしてお出しになる ことも考えておられると理解したのですけれども。
岩男会長
基本問題調査会の御報告をまとめていずれ本会議に御報告をすることになりますね。ですからこの調査会の報告 は作らないといけないと思います。そのための議論を今しているということです。
寺尾委員
そうですか。親委員会に出すものとしての報告書みたいなものですね。
岩男会長
親委員会に出せば公表もするということになると思います。
寺尾委員
そうですか。それと前回の時の委員会の感じと今回と大分トーンが違うような印象を私は持ったのですけど、何か 大きな状況の変化のようなものがおありになったのでしょうか。
岩男会長
前回は世論調査の前でしたね。
寺尾委員
ええ。
岩男会長
あの時は自由にいろいろと御発言を頂き、かつ事例を集めましょうということであの回は終わったと思うのですけ れども、例えば高橋先生から憲法上の問題とかいろいろ御指摘を頂いて。あの時には、特にこの会の結論は言語化しなくても お互いに分かっているようなところは当然あったと思います。それから、既に基本計画の中にはっきりと述べている部分がある わけですから、当然そういうものを踏まえていると思いますけれども。
寺尾委員
意見なのですけれども、この寄せられたもののまとめ方、これは「審議のまとめ(案)」の中にも取り込まれている のですね。このまとめ方ですが、選択的夫婦別氏制度がないことによって、実際不利益を受けていらっしゃる事例を集めようとい うことだったと思うのですが、反対をしている方たちにも分かりやすい事例を先に持ってきた方がよろしいのではないでしょうか。 そういう職業上の不利益がなくても、そもそも姓名が変わることが嫌だと、はんこを作らなければいけないとか、そういう話が先 に来ると説得力が弱まるのではないでしょうか。まとめ方としてはよく分かるのですけれども。
岩男会長
前回、弁護士さんの例を御説明いたしましたね。私はああいうのは非常に分かりやすい例だと思っていました。あ れが載るかと思ったら載ってなかったので、あの方もお出しにはなっているのですけれども、何かそういうものの方が説得力が あるという、こういうお話だと思うのです。
寺尾委員
事務上の不便とか手続に時間がかかるとかという話よりは。
岩男会長
そうですよね。制度的にいかに困難が生じているか、不利益が生じているか。
猪口委員
私も同意見を申し上げようと思ったのですけれども、困った体験例は政策を推進するに当たっていろいろと意見を 寄せてもらう、ということだったと思うのですね。ですからそういうものをピックアップして重点的に取り扱うということで全く問題が ないと思うのです。
 最初のページを開いてぱっと目に入る「はんこの交換が必要」、「仕事上の、名刺の作り直しが必要となる」、それは不便かも しれないけれど、そのようなことで国家の法律の根本を変えるという大作業をするのかということのアンバランスが印象にまず入 りますので、非常に良くないのですよ。
 はんこや名刺のたぐいのレベルの話と民法改正のレベルの話を同列にやっているわけではなく、もっと根本問題を扱っている ことをしっかりと頭に入れてほしいと思います。
坂東局長
例えば11ページの婚姻の妨げとなっていると。
猪口委員
竹信さんの寄せてくれた資料は非常に重要な指摘をしているわけで、本当に困っている人の話があるから、そも そも法改正までして、こういう面倒な作業を私たちはやろうと考えて議題になっているわけでしょう。だから、それに値する非常 にまずい社会の実態、1つはこの間、高橋先生がおっしゃったような憲法違反の疑いが深いというようなことで、これは法律の 論理から来ることでしょう。もう1つは、社会の実態として非常にまずい、正義の欠落があるということが証明されている場合で すね。だから証明されているような資料を作ることがこの際は重要と思います。
 あと14ページのこの書きぶりについて、私も意見がありますけれども。
岩男会長
その前に、ここにサンプルとして載せられているのは、どういう基準で選ばれたわけですか。600何件から具体的 な事例としてここに挙がっているものは。
伊藤委員
これは多いもの順で並べておられるのですね。改姓に伴うものが一番多かったわけですね、341件ということで。 おそらくその順番で多分並べておられます。
内閣府
同じパターンに属して重複しているようなものは除いて、主だったパターンは全部入るようにしています。
伊藤委員
公開で調査しているものですから、一度公表しなければいけないというのはルールだと思うのです。ただ、プレ ゼーテーションの仕方は少し工夫した方がいいのではないかという意見には私も賛成です。
 むしろ問題なのは、今までの議論ですと、「旧姓使用に伴うもの」という言葉は分かりにくいのではないかと思うのです。旧姓 をいわゆる通称使用した場合の困難というようなまとめ方だと思うのですけれども、通常の問題として、ここは一番ネックになる 部分ではないかと思うのです。それは今、竹信さんの議論も含めて議論になっている部分だと思います。「旧姓使用に伴うも の」というのは言葉を変えていただきたいと思うのです。「旧姓の通称使用に伴う困難」というような形のまとめ方にしていただい た方がいいかと思うのですけれども。
 どういう水準で並べていくかというのは難しいですね。今回は「不便である」という数が多かったものから順番に並べておられ るということですけれども、普通だったらそういう順番だと思いますが、今おっしゃったような形で問題点をクリアーにするために 並べる場合は、ある程度理論的な整合性を持った並べ方を考えざるを得ない。
八代会長代理
私も全くそうで、こういうのは引用されやすい資料ですから、ある程度まとめみたいな解説が要ると思うので す。ですからこういう事例を理論的に並べるということですが、まずきちんと事務局で要約を作る必要があると思います。例え ば、ここである本文の6ページ以下の「選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不便・不利益について」ということで まとめてあるので、これみたいな解説書を付けないと、単に統計集と事例だけだと誤解されやすいと思いますね。
 きちんとした説明をつけた上でやられた方がいいのだと思います。説明の仕方がかなり大変なので、できればもう一度議論で きるような形でした方がいいと思います。
坂東局長
もう少し加工し直します。材料はこうなんですけれども。
八代会長代理
解説です。
岩男会長
猪口委員、御質問がおありですか。
猪口委員
案の話の方でいいですか。まず「子どもに好ましくない影響」云々の表現が14ページの1、2、3の案のいずれにも 入っているので、こういう表現を使うべきではないと思うのですね、全体的に。
岩男会長
「子どもに好ましくない影響」ということ。
猪口委員
何か言葉を考えてください。「子どもへの影響」だけでもいいかもしれないし、「好ましくない」、「好ましくない」が わっと来るので、本当に好ましくないことをやっているのだなという感じがしてくると良くないということですね。
 あとトルコとインドのことですが、これはもう少し前の方に持ってくるべきではないですか。第1の「はじめに」の終わりぐらいとい うか、みんなが見落とさないところに持ってくるべきではないかと思うのですけれども、項目を立ててやるほどのことは大げさか と思いますが、もうちょっとみんなが「そうか」と愕然とするようなところに持ってくるべきだと思いますね。
樋口委員
その点、猪口委員にむしろ伺いたいと思っていたのですけれど、12ページの「インド、トルコ」という書き方、日本が 先進国の中で珍しい国になっているということはわかるのですけれど、インド、トルコは先進国と言えるのでしょうか。
猪口委員
いえ、発展途上国です。
樋口委員
そうすると「主要な先進諸国において」、つまりインド、トルコに代表されるような途上国だと夫婦同氏がもっとあり 得るのではないですか。
坂東委員
途上国の方のデータは法務省の方で。
樋口委員
例えば「ファーザーズ・ネーム」といって、夫の姓だけ身分証明書にも書いたりとか、アラブ系の国であった記憶が あります。
法務省(民事局清水参事官)
データ自体はございませんが、この問題で先進国、後進国という、そういうインプリケーション を持つのがいいのかどうかという問題があると思います。トルコはoecdに加盟していたのではないかという気はしますが、 ちょっと専門でないので分かりませんが、以上です。
猪口委員
ということは、これは先進国として扱って書いているということですか。
法務省
私が書いた文章ではございませんので、御質問がありましたのでお答えしただけでございます。
樋口委員
夫婦同氏を強制している国を資料として入れるのでしたら、できるだけ広範に正確にお願いしたいと思います。
坂東局長
例えばアフリカの小さな国などでどうか、絶対ないですねと言われると確かに自信はないです。
岩男会長
寺尾委員どうぞ。
寺尾委員
また、先ほどのこのまとめ方についてなのですが、まとめ方の枠組みをもう少し工夫できないかと思うのです。例 えばアの<2>は「個人の同一性の問題」となっているのですが、例えばそこに研究者が旧姓で論文発表しているので、旧姓を維 持したかったら結婚できないし、結婚したら今度その不利益を被るというジレンマの話が出てくるのですけれども、この話は、イ の「旧姓使用に伴うもの」と本質的には同じ話なのですね。それが分かれて扱われてしまっていて、旧姓使用に伴うものは、現 在では別氏が認められてないので旧姓を維持するしかないわけです。旧姓を選んでいるのではなくて。ですから、<2>の問題と実 は同じ問題なのですけれども、分けられてしまっているのは私にはおかしいことのように思われます。
 その次のウのところも「法律婚をすることができないことに伴うもの」、この日本語自身が私はよく分からなかったのですけれど も、<1>と<2>の問題は全然別の問題のように思います。<1>は、先ほどの憲法論の婚姻の自由にかかわるところの問題であり、<2> は、そうではなくて、実際事実婚状態になっている人たちがこうむっている不利益の話なので、もう少し整理の仕方を変えられた 方がよろしいのではないか。代案がなくて申し訳ないのですけれども、そういう気がいたしました。
岩男会長
ほかにこの資料のまとめ方、この事例のまとめ方について何か御意見がありましたらお出しいただいて、そして事 務局の方でもういっぺんまとめ直していただくことにしたいと思います。
樋口委員
これだけぼんと出されると分量的にも重いですね。概要版と詳細版両方を作って、先ほどからお話が出ているよう にまとめてイントロ、解説を付けて、事例は2行ぐらいに分かりやすくまとめて公表した方がいいと思います。
 日本で男女共同参画社会を実現しようというとき、これは21世紀の改革ですから必ず反発する人がいます。しかし、夫婦別氏 の選択制という点も、これが男女共同参画社会実現の理念にかなうということであれば、正攻法で出すべきだと思います。現 に、手に職を、腕に技能を、知に専門性を身に付けて、公的な資格・免許を取得している女性は実に幅広い層にわたっていま す。そういう女性が増えて日本社会を支えてきた。婚姻によって、改姓の大手を占める女性が一方的に不便不利益を被る状況 をこのままにするのはフェアではないと思います。
岩男会長
先ほど猪口委員が言われたことは、結局言い方の問題ということですね。別氏にかなり抵抗する方たちがあるわ けですね。ですから、まず、これは特殊な人たちの話であると誤解されないようにし、問題があることを納得して、それを解決し なくてはいけないのだなという気持ちになっていただくような表現をするということなのだと思うのですけれども。
猪口委員
まとめ方なのですが、皆さんからの事例募集の答えの中に必ずしも含まれていなくても、前回の国家試験の資料 でお出しいただいて、助産婦だとかいろんな人の資格で困る話が出ましたね。あれは説得的だったので、政府の方でまとめを 作る時に、理論的に考えられるまずい場面、まずい事例などを書いてもいいのではないですか。本当に困っている人が意見を 寄せるだけの精神的、時間的な余裕があったかどうかも分からないですし、その人たちの目に届いていないところで本当に困っ ているかもしれないし。
 1つは、こういうように一般からの意見を聴取することがいいことですけれども、同時に政府として理論的に考えられるいろいろ まずい事態を前面に出すのもいいと思うのです。ですからまとめる時に、考えられるまずい場面、困るであろう場面のことを書い てもいいのではないかと思ったのですけれども、国家試験関連では、この間の資料をもう少し活用したらいいのではよろしいの ではないですか。
樋口委員
それに関連してですけれど、例えば26~27ページ、ついでにもう一段、「その他」というところを足せばいいのか。 「実例」という欄を設けて、この間、岩男会長が言われたようなことは弁護士のところにこの一覧表の中にそういう実例を書き込 むわけですね。この前も申し上げたのですが、医者はその日に免許書換えが難しいし、現実にどう困っているという実例を各資 格ごとに、例えば学位授与とかそういうことも含めて、全部書き並べたらどうでしょうか。
伊藤委員
提案なのですけれども、もう少し簡単にまとめてほしい。ここで問題になってきているのは、女性の社会進出という ことで議論しているわけですから、就業上・職業上の問題をはっきり1つ出す。
 次に、日常生活上の問題という形で出す。例えば婚姻の妨げになっている。これは、日常生活上の問題なのだろうと思いま す。
 3番目に、精神的な不利益ということで、例えば家制度の問題であるとか改姓による精神的不利益であるとか。こんな風に、 3点ぐらいに整理したらどうでしょうか。就業上の問題、日常生活上の問題、精神的な不利益みたいな形の整理の仕方です。
山口委員
法制審議会が法案要綱をまとめた時は、まだ男女共同参画社会基本法もできてないし議論の最中だったと思う。 ですから夫婦別氏による子どもへの影響とか夫婦の関係の問題、割合そういう議論で反対論が強まってしまったと思うのです ね。
 今基本法もできて男女の人権が尊重されるということ、経済社会の変動に対応してという2点が論調です。ここに書いてあり ますとおり、これが旧民法を引きずった形で戦後の民法親族編で、この国の習俗と国民感情を考慮して750条を作ったというの ですから、本来は憲法13条の個人の尊重、14条の平等ということできているわけですよ。ところがここでちょっと違ってしまった わけですね。もし民法750条がなかったならば、男女の関係も違ってきただろうと思うのです。50年間、これを引きずってきた法 律的要因なのだから、私はむしろ論理的に基本法を受けて書くべきだと。
 そして、さっきのいろいろな事例は、その結果、社会の変動という中で、こうこうこういう事例があると。ゆえに、この基本となる 民法改正をして選択的夫婦別氏は採用すべきであると、こういう理論構成の方が、私はここらしいと思うのです。ジャーナリズム や何かに、言っていることは分かるのですよ。だけど、ここは論理の筋道はちゃんと立てた方がいいなと私は思います。
住田委員
そういう意味では、まず現在の法律制度は同氏強制の制度であって、それに基づく不便・不利益を正面に据える べきではないかと思います。同氏を強制することによって戸籍名を変えれば、社会生活上の不利益・不便があるということがま ず第一に挙がってくるかと思います。場合によっては、今までの業績などの断絶を強いられることによって学術上又は社会生活 上のいろいろな不利益が生ずるということ。
 もう1つは、同氏を強制されることによってアイデンティティの喪失感とか精神的な面、逆に「家」制度の残滓による感情的なも のがあるかと思う。これをどの程度書くかは非常に難しい問題だと思います。
 同氏を強制することによって、逆に社会生活上の不便を免れようとして通称使う場合が出てまいりますので、その時は二重の 氏を持つことによる混乱がその次に出てくるのではないかと思います。
 逆に二重の混乱を避けるために事実婚を選択する場合もあるかと思います。事実婚によって、また別の不利益・不便というの があるのではないかと思いますので、そういう分け方を1つ御提案したいと思います。
古橋委員
私は山口さんが言われたことに全面的に賛成で、男女共同参画社会基本法ができ、その趣旨からいくと、夫婦同 氏制というものは問題があるということを説明した方がいいと思います。現代の社会情勢から見ても、女性がどんどん社会的進 出をし、かつ晩婚化ということは女性の社会的な蓄積というものが非常に重要になってきているとか、選択的夫婦別氏制度は 結果的には男性にとっても得なのですよということまで含めて、男女共同参画社会の形成との関係でもう少し強く出すという方 向がいいのではないか。
 男女共同参画社会基本法は国会が全会一致で賛成したわけですから、憲法的な問題もあるというのみならず、夫婦同氏制 度は男女共同参画社会基本法との関係においても問題があるということを強く出して、それを世論に訴えていくということをやる 努力が必要なのではないかという気がいたします。
寺尾委員
正統派もいいと思うのですが、1つの折衷案としては、憲法上の婚姻する権利の妨げになっているという憲法論を 先に出してくるという考え方もあると思うのですね。それで実際上こういうことで結婚できなかったり、結婚を迷って悩んでいる人 たちがいるというのを先に出しますと、特に今度の世論調査の結果も若い人に別姓制度支持が増えているわけですから、婚姻 の自由から切り込んでいくと説得的な議論になると思います。ですから導入としてそれを使って、若い人たちの意見というところ へ持ってきて、その後に、結婚した後に待っている不利益、改姓をした時の不利益というのを出して、今度それを回避しようとし て通称使用するか、事実婚にすると、またこういう不利益があるという・・・・。そういう構成にするのも1つの考え方かなという気 もしますが。
樋口委員
提案ですけど、構成案をこの次ぐらいまでに出していただけないのでしょうか。寺尾さんおっしゃったのもいいし、 今さっき住田さんがおっしゃったのもいいし。
岩男会長
1案、2案というような形で複数のものをお出しするというような。
伊藤委員
あまり結婚で云々かんぬんとやってしまうと一般化しないのではないか。若い世代だけから導入するという展開で はなくて、もう少し一般的に説明するような構成の方が説得力あると思うのです。皆さんおっしゃりたいことはよく分かるのです けれども。
住田委員
その意味では、竹信委員の今日の資料で書いておられる趣旨は、通称を使うことによる二重の氏の混乱というこ と、これはとりあえずの一時的なもし便法として出すとしても、根本的な解決にならないということをきちんと強調すれば、それは それで1つの在り方ではないかと思いますが、逆にこれを出すことによって、苦痛を長引かせるというおそれがあるなら、これを よく考慮して、そういう案はもうおくびにも出さないというのも1つ戦略としてあり得ると思います。
寺尾委員
その点については合意をこの際作った方がいいかもしれないですね。
岩男会長
そうですね。「まとめ」のところに、今1案、2案、3案と出ているわけですね。3案というのが竹信さんが御覧になっ たというか、皆様が御覧になった案だと思うのですけれども、それに対して竹信さんも御指摘になっていたと思いますけれども、 こういう旧姓使用の拡大をすると後退していると、そういう批判があるわけで、それは一時の便法として考えれば当然そういう御 批判になるのだと思うのですね。
 そうではなくて、個人の多様な生き方を認めるということで、選択的夫婦別氏制が導入された時に同氏又は別氏を選択をする 人もいれば、戸籍上は同氏を選び職業上は別氏という選択肢も認めても良いのではないかと思います。つまり、3つのチョイス があるということです。既に両方の姓を使いながら十数年あるいはもっと長いことやってきているから、仮に民法が改正されても 自分は選ばないという、改正は支持するのだけどという方も一方であるのですね。だから私は多様な選択が可能な生き方を認 め合う、そういうことも考えるべきではないかと思って出しているのが案の2なのですね。これはですから並列になっていて、選 択したい人には自由にできますよという、そういうことなのですね。しかし、その場合にも不利益はこうむらないように社会的にき ちんとそれは認められるような制度づくりをきちんとしておきましょうと。
山口委員
きょうは1案、2案、3案から選ぶという話ではないですね。自由に討議ということですね。
岩男会長
そうです。
山口委員
この次に結論をというような声もありますが、私も意見として申し上げたいのは、通称使用という便法があるよみた いな話になってしまい、民法改正は何のためにやるのと、ほっとけばいいのではないのとなってしまう。きちんと選択的夫婦別 氏による民法改正というようにしないと、今回主張する点が何を言っているのか分からなくなるのではないのか。私は民法改正 の方向にすべきだと思うのですが、意思統一は、どなたかもおっしゃったと思いますが、した方がいいと思いますね。
 ああでもない、こうでもないという書き方をしてしまうと、何を言っているのかと、こういう話にもなりますから。
古橋委員
今の考え方と同じような考え方なのですけれども、選択的夫婦別氏制度というものはあくまでも制度として確立す る。それを打ち出すタイミングはいろいろと考えなければいけない。それは後ほど私もいろいろと考え方を申し上げますけれど も、そういうことで1案はあくまでも貫いていかないと。
 質問があるのですが、同氏を選んだ者の選択的旧姓使用制度が社会的に認められるようにするべきであると言った時に、認 められるようにする社会的制度とはどういう制度なのでしょうか。同氏制度の下で旧姓使用制度が社会的に認められるようにす るとすれば、基本的な問題が解決されず、例えば戸籍法の改正で対処すべきという意見が出てきます。
 そのへんのところを、岩男先生の考え方を教えていただきたいです。
岩男会長
先にどうぞ。
住田委員
全く同じ意見ですが、少し付加して申し上げたいと思いますけれども、これまで長年使ってきた通称が定着してお られる方に関して言えば、わざわざこの制度を使わずとも社会的に認められるようになれば良いという御希望があるというの は、おそらくはこれは選択的夫婦別氏制度の話ではなく、通称氏の社会的受容の問題ではないかと思うのですね。通称氏の 社会的な受容というのは、結局ペンネームとか学名とか芸名が社会的に定着している事実を表しているのではないか。それに よって世の中に通っているから不便を感じないので、これをある程度通していただきたいということで、一種の氏に関してのライ フスタイルの多様化の全く別の社会学的な意味合いのお話だと思うのですね。
 ここで大事にしなくてはならないのは、今同氏を強制している法律がある。これに対して変えていくという時に、その制度改正 の話をするべきであって、その制度改正と社会的受容の話と全く別次元なので、ここで一緒に入れ込むことによって法律制度に 対する改正案が後退したりとか悪影響を及ぼしたりとか、そういった逆の懸念がされるという竹信委員と私は同様の気持ちがご ざいます。
 それで、もう一つ申し上げますと、通称氏、芸名とかペンネームが社会的に定着している方にとっては、それはそれで私我が 国の豊かな社会を反映しているのだと思います。価値観の多様化を受け入れている社会だと思いますので、それはそれで結 構なことだと思いますけど、この議論から外すことの方が相当ではないかと思っております。
樋口委員
私も全く同様な意見なのですけれど、外部からこの専門調査会が、結局「通称使用」という結論を出すのではない か、選択的夫婦別姓制に正攻法で切り込むことをあきらめたのか、というようなことを言われました。いや、結論が出たわけでは ない、現在堂々と議論している最中と申しましたけれど。世の中これだけ情勢が変わってきたのですから非常に期待感はある わけで、今、古橋委員も言われましたとおり、確かにタイミングの問題とかどういう形で出すかという方法論はいろいろ工夫しな ければなりませんけれど、基本法ができ、女性の社会参画が進みつつある時に、今まででもあった線で妥協するというようなこ とはいかがなものか、残念だという思いは選択的別姓を望む女性の中に残ると思います。
 確かに一般的な通称使用は割に広く認められていて、国会議員にも、閣僚にも扇千景大臣がいらっしゃるわけで、岩男会長 もそうでいらっしゃるし、それはそれで何も妨げるものではないと思います。しかし、一方で実は印鑑証明の問題とかクリアーで きない問題が現にあるわけですね。これを少しひとつひとつ洗い上げて、本当にクリアーできているのかできてないのか、それ を見ていく必要があると存じます。
 繰り返し正攻法で出していくべきではないかというのが私の意見でございます。
高橋委員
よろしいですか。
岩男会長
どうぞ、高橋委員。
高橋委員
私も第1案といいますか、通称の問題は書かない方がいいのではないか。憲法論をかなり重視して考えると、通 称使用が認められると憲法問題が解消するということにはならないだろうと考えていまして、基本的にはそういう方向で考えた 方がいいのではないかと思います。
 ちょっと話をずらしていいですか。憲法上の問題、8ページでまとめていただいているのですが、これを憲法の専門家でない方 が読むと誤解される危険があるかと思うものですからちょっとコメントして、きちんと理解をしていただいた方がいいかと思いま す。
 ここで2つを取り上げて書いていただいているのですが、1つは氏名を変更しなければならないというのが婚姻の自由を制約し ているのではないかということです。この点で最高裁が氏名権を認めているということを述べておられる。
 ところが正確に言うと、これは韓国の方が名前を日本語読みされているのをおかしいといって争った事件で、その事件の中で 最高裁が自分の名前を正しく呼んでもらうということは法律で保護された利益なのだということを言った事件なのです。別に別姓 の問題とは関係のない事件でありますから、それをここで持ってくるのはおかしいという議論があり得ると思うのです。確かにそ うなのですけれども、自分の名前を正しく呼んでもらうことが法律で保護される利益だというならば、当然の推論として自分の名 前を変えるよう強制されない利益は法律上認められた利益と考えていいのではないか、そういう趣旨でお書きになっていると思 いますので、もし聞かれることがありましたら、そういうことなのだと理解していただきたいと思います。
 と同時に、憲法学の学説の中には氏名権というのは実は法律上の利益に限らず憲法上の利益と考えるべきだ。人権、憲法 13条で根拠づけられるところの新しい人権と考えるべきだということを主張されている方もあります。
 私自身も必ずしもそういう考え方に反対ではないのですが、ただ、学会の状況としては、その点は新しい人権ということでどこ まで認めるかという議論があって、学会でコンセンサスがあるという状況ではありませんので、そこまでは書かない方がいいか ということで、こういう書き方で私は賛成しているということです。
 もう1つは平等権との関連です。平等違反というのはおかしいのではないか。つまり男性でも女性でも平等で、話し合いでどっ ちにもしてもいいというのだから、性差別があるというのはおかしいのではないかと疑問を持たれる方があると思います。これは 法律を文面上見れば、確かにそのとおりだと思うのですね。ただ、何度も出てきましたように、実態から言うと、97%が女性の 方が変えているということであります。そういう場合にそれを差別問題ととらえるかどうかという問題があるわけですが、学説上 は最近は、これはアメリカの影響がかなり強いのですけれども、一方の集団に対して法律自身は文面上は差別してないのだけ れども、特定集団に対してその法律が非常に不均衡な影響を及ぼしている場合、アメリカではディスプロポーショネット・インパク トを与えている場合と言っているのですけれども、そういう場合には差別問題になり得るのだということです。アメリカでよく引き 合いに出されるものが、警察官の採用に当たって能力テストをやった。これは黒人の場合は教育を十分受けられなかった時が ありますから、結果としては黒人が排除されるということになっていますね。これは差別ではないかということが争われたのです けれども、そういった事例の中で、アメリカの最高裁では場合によって差別になり得るのだということを言いました。ただ、どうい う場合に差別ととらえるかというと、差別の意図があった場合、インテンションがあった場合だというのがアメリカの最高裁の判 例になっています。
 ただ、学説上は、私の見た限り、この最高裁の意図が必要だというのに賛成している者は非常に少ない、ほとんどないと言っ ていいのではないかと思うのですけれども、というのはこれを証明することは非常に困難です。立法者、行政官が表面上「平 等」と装いながら、差別する意図を持っていたということを証明しようとすると非常に困難で、ほとんど救済ができないのではない か。だからもう少しそこのところを緩めるべきだという議論が学説上は支配的であって、そのアメリカの学説が日本に影響を与え ていて、日本でもそういうように考える考え方が強くなってきているということです。
 この夫婦別姓について、そういう考え方を適用するとどうなるか。例えば立法した当時に差別意図があったということを証明し ようとすると、かなり困難、不可能かもしれない。日本の戦前の慣行を尊重したというようなことが書いておりましたけれども、そ ういうことがきちんと証明できれば、それは予測できたことではないかといった形で、ある程度意図があったという証明ができる のかもしれない。あるいは立法当時においては、戦前の「家」制度を廃止しようということだったので、そういう意図はなかったの だとしても、その後の立法事実を見ると97%女性だということですね。それを知ってそのままほっておくとしたら、これは現段階 では差別的意図と同じだと言っていいではないかという議論もできるかと思いますけれども、しかし意図だということを論証する のはなかなか大変で、むしろアメリカの学説でいろんな見解がありますが、その1つでこういう考え方があります。
 つまり過去の差別、現在の不平等な影響が過去の差別の結果として出てきているということが論証できれば、差別と認めて もいいのではないかという考え方です。それを使うと、女性が97%というのは、戦前の「家」制度の影響が残っていて、その結果 として出てきていると言わざるを得ないのではないか。そういう証明はそんなに困難ではないだろうと思うのですね。
 だから、この場合は憲法14条に、文面上は平等だけれども、実態から見ると違反していて、差別と考えるべきではないか、こ ういう議論になっているわけです。ですからそのあたりのところを委員の先生方にも理解しておいていただいた方がいいかと 思ってコメントさせていただきました。
古橋委員
その点はまさに男女共同参画社会基本法を作る時の間接差別の問題として大議論があったところでして、ただ、 我が国の場合は間接差別に対して人によっていろんな意見が出るものですから制度化できなかったわけですけれども、国会に おける議論において、この問題についてはもっと日本政府は詰めるべきであるということが附帯決議にありますし、かつまたilo からもこれについての報告を求められていると思うのですね。
 したがって、この問題は基本問題専門調査会における非常に大きな将来の検討事項であると思います。この問題は差別の 意図などに関係なく、結果として片方に著しく不平等になっているものについては、それは差別であると認定することです。ヨー ロッパ諸国においてはそういういろんな規定があるわけですから、そういうことをやるべきかやるべからざるかというような議論も ここで私はしていく必要があると思っております。
 したがって、そこのところは実質的には男女に不平等な影響を及ぼしているのではないかという指摘もあるという、こられのと ころをどういった表現にしていくか。もう少し強調するのか、まさに高橋先生が言われているような議論をもっと詰めるべきだと思 います。間接差別のいわゆる典型だと、私は前から思っておりました。
岩男会長
それでは、もう皆様の御意見が大体同じような御意見ですから、まとめのところでは、案1にしようというようなこと ですので、あえて時間をとって御説明をするまでもないと思うのですけれども、ただ、おそらくここでは私だけが実際に複数の氏 を使い分けている人間であることからきているのかもしれないのですね。ですから社会的に認めるというのは、よく「合法的通称 使用」というような表現で書かれていることがありますけれども、要するに証明、きちんと法律上の氏ではないものでも通称とし て長年使ってきている、あるいは使いたいでもいいのですけれども、そういうものを合法的に使うことができるという、そういう意 味なのですね。
古橋委員
そうすると合法的ということになってくると法律を改正しないといけないのではないでしょうか。
岩男会長
必ずしもそうではない。公的な証明として今使われているものがいくつかあるわけですね。例えば銀行口座を開設 する時に住民票であるとか、運転免許証であるとかパスポートであるとか、パスポートはもちろん今併記ができるようになってい るわけですけれども、そういうものが希望者に対しては可能になると、そういう意味なのですけれども。
古橋委員
現在いろんな不都合になっているものを直すためには法律改正事項だけというのは、この間の資料でいっぱいご ざいましたよね。
岩男会長
必ずしもそうではないのですね。法律を改正しなくてもできるものはあるのですね。
古橋委員
そうすると法律を改正しなくてもいいということですか。
岩男会長
ですから別氏制のためには民法ももちろん改正するわけです。
古橋委員
それは改正するわけです。それができるわけですね、選択的別姓。それから、同氏制度があって、同氏制度に 伴って通称を利用するといった時の不便を直すためには、今の不便というのは法律を改正しないとできないものが今残されてい るだけなのではないでしょうか。
岩男会長
必ずしもそうではないですね。
古橋委員
そこらのところの認識が事務局から聞かないと分からないのですけれども。
寺尾委員
今の点なのですが、憲法論として見ても、差別になっているかどうかというところで、どのレベルで議論するかとい うことではあるとは思うのですけれども、少なくとも立法した時は違憲ではなくても、女性がそれだけ社会に進出するようになり 晩婚化するようになって、一方の性に不平等な不利益を婚姻ということについて課しているということを明らかに言える状態には なっていると思うのですね。
岩男会長
もちろん1案が一番すっきりしていることは間違いないと思うのですね。
寺尾委員
あるいはそれを一本にして、別姓制度を導入した後に、通称使用の要望があれば、それはそこで考えるというの が順番ではないかという気がいたします。今の段階でこれを入れると、せっかく積み上げたこういう事例等の集積があまり意味 のないものになってしまうのではないかという気がいたしますけれども。
住田委員
話題を変えてよろしいでしょうか。
岩男会長
はい。
住田委員
まだ少し今後時間があるとすれば、あとクリアーすべきは「子どもへの影響について」という世論調査のところで す。これをいかにしてクリアーしていくかということになるかと思います。
 今現在は「子どもへの好ましくない影響」ということで想定しておられる事例というのは皆さんばらばらではないかと思っている のです。親と子どもと名前が違うことによる不安感みたいなものが1つはここに書いてあるようなのですが、私は具体的な反対 論として聞いたことがありますのは、母親と父親との名前が違うということに関して、その子どもが、おまえのお母さんは籍に入 れてもらえない未婚の母だというようないじめの問題が具体的な事例として出たことがあるわけです。これはどうも夫婦別氏の 話というよりも、非嫡出子とかそういう差別につながるような、そういう流れで私としては記憶しておりましたので、これが一体ど ういうものなのかということについてきちんと確認した上で、これは夫婦別氏制度に由来するものと全く違うものではないのか、 そういうところを少し考えるようなことを模索したらいかがと思います。
 そして、今回の世論調査については、それをまるで前提として書いてしまうのではなくして、猪口委員がおっしゃいましたよう に、この調査の設問に対してはこういう答えが出るのはやむを得ない結果であるとしても、それをまるごと評価して書き込むよう な案を少し修正していくような形にしてはいかがかと思います。
寺尾委員
案1、2、3全部が「個人の多様な生き方を認め合い」というところから始まっているのですけど、問題の深刻化さ はもう少し進んだものなのではないでしょうか。どういうスタンスで議論を積み上げていくかということはあると思うのですけど、も う少し切迫した問題としてこれをとらえて書いてみるのも1つのやり方かと思います。
古橋委員
話が違うのですが、11ページなのですけれども、「なお」書きの文章がありますが、ずっと読んだ時何か読みづら い文章だと思いました。「国家が」という話がここに急に出てくるのですけれども、ここいらのところの背景をもう少し書かないとよ く分からない。この文章も何となく私にとってはすっと頭に入らないので少し検討していただきたい。
伊藤委員
細かい話ですが、「はじめに」のところです。ファックスでも申し上げたのですが、旧民法と新民法は一回段差があ ると思うのです。そのへんのところをつなげて書き過ぎているのではないかという気がします。旧民法の場合、戸主の姓に統一 するという形になっていたものが、新民法では一応選択同一姓という形になっているわけで、段差は書いておいた方がいいの ではないか、ということです。個人的な感想ですけれども。
住田委員
ただ、新民法の時の立法の経緯で、もし違っていたら訂正いただきたいのですが、たしかもとの原案は夫の氏 だったのですね。
伊藤委員
夫の氏だった。
住田委員
それをghqが、それはさすがにまずいということで、こういう形で形式的に平等にしたといったような。
伊藤委員
その時のたしか中川さんという人の民法論の議論で、妻の姓で同一にしたらどうだという有名な議論があるはず ですけれども。
寺尾委員
日本の場合は、婿養子という制度が歴史的にもずっとあるのですね。割に珍しい制度なのですけれども、その影 響もあったのではないかと思われます。
伊藤委員
おっしゃるように、もともとは旧民法をそのままいかそうとした動きに対して、そうでなくてghqの圧力で選択的な 同姓となったわけです。そのへんの経緯をある程度書いておいた方がいい。旧民法がそのまま続いているというイメージではな く、戦後一度変わったものを、今、再度変える必要があるという歴史的な流れを確認しておきたい。
古橋委員
2ページのところに、後でその時の中川さんなどの反省文が出ているわけでしょう。当時は、国民感情を考慮し と、極めて妥協の産物であったという趣旨のことが分かると思います。
伊藤委員
中川さんの意見は、たしかそういうお話だったですね。
古橋委員
そうですね。後で彼が書いているものの中で、あの時にやるべきだったということを書いているのがありますから、 極めて妥協の産物だったというような趣旨のことをここのところへも、入れられるかどうか。
伊藤委員
少なくともそのへんの一回転換をしようとして妥協の産物として現行民法がある。けれども、旧民法から一歩前に 出ようとした新民法だという面もあったということをどこかで示しておいた方がいいのではないかという印象です。
岩男会長
今の御指摘だけではなくて、ほかにもいろいろまだ御提案とかこういう修文をしたらいいというのがおありだと思い ますので、それを事務局までファックスで9月21日までにお寄せいただきたい。先ほど寺尾委員が言われた、冒頭はどう書き直 したらいいのかということも含めて、それぞれ御提案をお寄せいただきたいと思います。
古橋委員
タイミングの問題で、これはいつごろ報告をまず出そうとお考えになっているのか、それだけまず伺ってから私の 意見を申し上げたい。私はタイミングについては、従来の男女共同参画審議会という諮問機関と違いまして、男女共同参画会 議というのは内閣に置かれた内閣府の機関なのですね。これは閣僚がメンバーになり、極めて政策決定そのものに直結してい る特別な機関なのですね。国家行政組織法の適用もない、そういう非常にある意味では強い機関なのです。
 このタイミングについては、まず法務大臣はどう思っているのか。男女共同参画会議の議長である官房長官、さらには内閣府 の長である総理大臣がどういう見解、現在の政治情勢のことについてどういう考え方を持っておられるのか、そこいらを会長なり 局長がよく伺っておく必要があると思います。
猪口委員
それでの関係でもあるのですけれども、専門調査会としての意見集約は、早い時期に確立した方がよろしいので はないでしょうか。政治のさまざまな御意見の中を、先ほど住田委員の御意見など伺って、筋を立てていただいたところで押し ていくためにも、専門調査会としては意見を早めに集約して、これ以外の方法はないという法律論で詰めていただくと。
古橋委員
それはそのとおりで私はいいと思います。しかし出すまでの間に、ここで議論されているようなことは、ちゃんと広 報していただいて、さっき申し上げたような、諸外国ではこうなっていますよと。最近は憲法論がありますよとか、世の中に知ら せる努力が必要だと思います。
猪口委員
そうですね。この会議及び専門調査会らしく理論を立てて、そして専門家としての意見としては、これ以外には考 えられないというところでまずまとめて。
古橋委員
そこまでやって説明して、あとは上の判断でやればいいと。
寺尾委員
まとめとして書面でもって作る時に、憲法論、正論できちんとやるのはそれが筋であろうとも思うのですが、結局 今後少子高齢化社会を迎えて、女性が社会進出していかないと日本は困るのだと。今のいろんな構造改革の中でも、女性の 才能を生かすという方向をとらざるを得ないという趨勢であることをきちんと押さえた上で、その上に憲法の議論を乗っけるという ことが私は大事なように思います。あまり直接正面切って書かなくてもいいかもしれませんけれども、多少表現を工夫されたらと 思います。個人の多様な生き方というよりはもう少し書きようがあるのかなというように思うのは、そういうところでございます。
岩男会長
今いろいろ大変貴重な御意見を頂きまして、私もいろいろ心配をしながら慎重に進めていかなければいけないと 思っておりますので、今御提案ございましたようなさまざまな書きぶり、できるだけ筋はきちんと通すけれども、しかし皆さんに御 賛同をいただけるような、そして真意がきちんと伝わるようなまとめにするという方向で、今後専門調査会の外のさまざまな方の 御意見も伺いながら、進めていきたいと、こういうように思っております。
 それで、先ほどお願いをいたしましたように、御意見を21日までに事務局に案としてお寄せいただければありがたいと思いま す。現時点の予定といたしましては、10月11日に次回の専門調査会を17時から開催をしたいと思っております。
 それから、10月3日に男女共同参画会議が開催される予定になっており、その場では、審議をしておりますという簡単な御報 告を私からしておくと、こう考えております。
 それでは、きょう時間が超過いたしましたけれども、どうもありがとうございました。以上で、本日の会合をおしまいにしたいと 思います。

(以上)