男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会(第21回)

  • 日時: 平成15年5月30日(金) 10:00~11:16
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    会長
    島野 穹子 つくば国際大学教授
    会長代理
    原 ひろ子 放送大学教授
    委員
    大津 恵子 女性の家HELPディレクター
    奥山 明良 成城大学教授
    戒能 民江 お茶の水女子大学教授
    垣見 隆 弁護士
    北村 邦夫 (社)日本家族計画協会クリニック所長
    住田 裕子 弁護士
    瀬地山 角 東京大学大学院総合文化研究科助教授
    前田 雅英 東京都立大学法学部長
    若林 昌子 明治大学教授
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○前回会合で提示された本専門調査会報告書(案)は、会長の取りまとめにより再度提示された。

    ○「はじめに」と「第1 配偶者暴力防止法の施行状況」は案のとおり、「参考資料」は一部資料を追加することで、案のとおり了承された。

    ○「第2 配偶者暴力防止法の見直しに関する論点」については、自由討議が行なわれた。

    [自由討議]

    (住田委員)
    今回、専門調査会として急きょ取りまとめることとなった配偶者暴力防止法の見直しに関する論点は、大きな影響や混乱を防ぐため、最小限の手直しにとどめた内容であると理解 している。中期的課題については、決して先の話でよいということではない。
    (戒能委員)
    中期的課題は、現場や当事者の実情から考えると、当面の課題として可能な限り改正の可能性を追求していただきたいと思う。
    (前田委員)
    当面の課題の、保護命令の対象を子どもまで拡大し加害者と接触できないようにすることについては、子ども自身が親と会う利益という視点もあるのではないか。立法目的を達 成するためには、被害者と子どものそれぞれの法益のバランスをとる必要がある。調査研究なども踏まえて、子どもまで対象とするには慎重な検討を行う必要があると思う。
    (若林委員)
    子どもといっても乳幼児から成人間近まで入る。子どもの意思を反映する法制度とあわせて考えると、保護命令の対象とする子どもは15歳未満としたらどうか。
    (大津委員)
    加害者と会うことは、被害者と子どもに重大な影響があることを法律で明記していただきたい。
    (戒能委員)
    子どもは安全に、生命・身体に危害が与えられないように加害者に会う権利があると思う。子どもの利益と両親の利益とのバランスは、離婚調停のところで面接交渉が決められ ていくので、そこで議論すればよいのではないか。保護命令対象の子どもの年齢が15歳未満だけだと、女の子の場合、性的な虐待の問題があるのではないか。同伴する子どもに 保護命令が出ていれば、一時保護したことを児童相談所から父親に通知しない措置も取りやすいのではないか。
    (住田委員)
    改正の方向性については、時間の関係から、今回はDV法の観点からだけの改正の提案であるが、子どもを対象にすることもできるのだということは明確にしたほうがよいと思 う。
    (前田委員)
    子どもの側の権利が、「子どもの親権や監護権等」の「等」に入ってしまうと、子どもの権利条約の流れなどから弱いと思う。様々な親子関係があると思うが、母親だけをいじめて 子どもにはやさしい父親もいるので、そういう父親に子どもが会いたいというケースを形式的に切り捨てるのはどうかと思う。国会では子どもに対する接触を一切禁止することにつ いて、十分議論したのか問われるのではないか。
    (奥山委員)
    親権や監護権は親から見たときに子どもに対する権利なので、「等」だけでは、子どもが親に対して会う権利までは読めないと思う。
    (住田委員)
    「子どもの福祉、子どもの利益等との調整の上」としたらどうか。
    (戒能委員)
    子どもの福祉や利益について、どういう影響があるのか調査研究が必要ではないか。被害者が逃げる際に子どもの問題が大きいし、子ども自身も影響を受けることを理解した上 で抽象的に表現するという考えもあるのではないか。
    (若林委員)
    子どもが権利主体であることが分かるように、「子どもの人権保障に配慮し」とした方がよいのではないか。
    (北村委員)
    退去命令で、家が被害者のものである場合、加害者を完全に退去させるという表現が必要ではないか。
    (大津委員)
    退去命令は一生ということでなければ、加害者が場所を知っている限り、被害者は安心した生活が望めない。
    (戒能委員)
    退去命令の期間は、少なくとも離婚の手続の間の1年くらいは必要ではないか。1か月は短すぎると思う。
    (若林委員)
    退去命令が2週間から1か月に延長されると、加害者の生活はどうなるのか。再発や新たな犯罪の誘発など懸念されるので、社会政策的、刑事政策的な配慮が必要ではない か。
    (垣見委員)
    加害者から相談を受けたことがあるが、相当憔悴して妻がなぜ自分から離れたか理解できない。加害者のダメージをケアしないと、加害者自身が被害者意識をもち、トラブルを起 こしてしまうのではないかと思う。
    (戒能委員)
    自主的に相談に来ない加害者が問題であり、長期的に教育のところから、受刑者や保護命令違反者の保護観察の問題なども含めて検討すべきことだと思う。
    (住田委員)
    保護命令発令後の加害者については、刑事処分になっても不起訴になったり、罰金や執行猶予で出たりした場合、対応がきちんとできているのかという心配もある。加害者が社 会に戻ってきた時にどのような方策をとっているのか教えていただきたい。
    (法務省)
    保護命令の対象を子どもまで拡大することについて、その根拠が客観的に明らかになることが大事かと思われる。保護命令を受けた加害者が被害者の子どもに対し実際どのく らい働きかけがあり、周囲の支援者がどのように対応しているのか、被害者が加害者の元に戻ることを余儀なくされるというような実例があるのかといったような、立法事実となる ような事情について調査研究を続けていただければと思う。
    (警察庁)
    警察としては、DV法以前に一般刑事事件で扱えるものは一般刑事事件として処理しており、DV法違反より何倍もある。加害者からの相談は警察にもかなり来ており、ある程度 の加害者への対応はしている。
    (厚生労働省)
    被害者が保護された後の自立については、精神的ケアが必要であったり、どうやって仕事や家を見つけるかなど多岐に渡る問題であるので、どういった支援が必要なのか御意 見を伺いながら対応していきたい。配偶者暴力相談支援センターにおける被害者への自立支援は、関係機関と連携して行うことが重要だと思う。
    (瀬地山委員)
    自立支援の問題は、DV法の範囲を超えて女性の就業状況そのものの問題であると思う。被害者は専業主婦に多いとか、自立支援する上で就業状況に関するデータがあれば 良いのではないかと思う。
    (大津委員)
    一時保護の2週間ほどの期間で被害者が自立するには、現状として様々な取組がないと出て行けない。ヘルプでは、保健婦や民生委員など地域の人たちとの連携をどうやって 一緒にやっていくか、長期的な取組として考えている。

    ○本報告書の調整は、会長と会長代理の相談により行い、最終的な文言については会長に一任され、7月の男女共同参画会議に報告することが了承された。

    ○事務局より、今後の専門調査会の進め方について説明があり、平成14年12月から中断していた「女性に対する暴力全般」に関する検討を再開することが了承された。

    ○事務局から、第20回専門調査会の議事録(案)が提示され、了承された。