ジェンダーの主流化:アジア太平洋地域の良い事例

〔事例1〕

プロジェクト名:
ジェンダー評価プロジェクト[米国のAFL-CIO連帯センター]
期間:
1999年から-継続中
関係機関:
アジア、米国、アフリカ、ヨーロッパの連帯センターの地域プログラムからの現地代表と職員、ワシントンDCにある連帯センターのプログラム運営事務局からのプロジェクト管理者
資金援助機関:
特別限定予算が、ジェンダー評価の職員向け研修の着手及び、本部チームの現地事務所巡回をするために連帯センターに割り当てられた。本部と現地職員の研修にかかる将来の必要な費用はプログラムの計画に組み込まれ、地域の職員会議で行われる予定である。

プロジェクトの概要

AFL-CIO連帯センターの目的は世界中の労働者の権利を高めかつ強化し、自由で独立した組合の発展を促進することである。連帯センターのプログラムは基本的人権と労働 者の権利を促進し保護する。連帯センターは世界60ヶ国の28ヵ所の常勤の現地事務所への支援と付加的プログラムの活動への支援を行っている。

グローバル化、経済の自由化、市場の開放はかつてないほどの数の女性を労働力として引き入れ、今日では男性と女性はおよそ同数の労働力だと言われている。しかしながら女性は男性よりも低い技能、低い賃金、パートタイム、世界経済で拡大しつつあるサービス業で働くことが多い。この状況からジェンダー評価プロジェクトは、連帯センターが支援した労働組合の男女に対するプログラムの企画と影響を検討することから始まった。このイニシアティブの長期的目的は、ジェンダー・プログラムと女性プログラムとの違いと、ジェンダーに敏感なプログラムの成果のインパクトについての組織的な理解を確立することによって、プログラムのインパクトを考える新しい方法を導入することである。

仕事と組合活動において女性をエンパワーメントすることにより、全ての労働者と全ての組合が強化される。ジェンダーの公平性は、研修や情報へのアクセスを向上させ、働く女性が組合、職場、地域社会でより良く自分たちを表現することを通じて経済的及び市民としての参画のレベルを上げるための社会の構造基盤を支える。

プロジェクトの活動

  • 2日間の研修ワークショップが初めに開催された。ジェンダー課題に関する専門知識を持つコンサルタントが経験的な国際的見解を示し、連帯センターの職員にオリエンテーションと研修を行った。ジェンダー評価プロジェクトは最初に連帯センターによって着手されたため、主題、プロセス、専門用語の理解を高めるための職員研修が必要だった。
  • フレームワークの調査が研修の第二日目に参加者によって進められた。この調査は全てのチームのメンバーが選ばれた8ヶ国のプログラムの評価を行う際に情報収集のために使用する標準的な方法となった。国の選定基準は現地事務所の存在、プログラムの期間、地理的バランスに基づいた。
  • 研修ワークショップに引き続く6ヶ月間に、AFL-CIO連帯センターは、4つの地域プログラムから選ばれた8カ国のプログラムのジェンダーの影響を検討した。連帯センターの職員は現地の代表に伴われて8カ国を訪れた。評価スタッフ全員が訪問中に情報を収集する際には同じ調査フレームワークを利用した。各国の二つのプログラムが検討された。ひとつは女性に焦点を当てたものであり、もうひとつは女性と男性が関わるものである。評価チームは彼らの解説や分析のためにプログラムに関連した文書を収集した。

プロジェクトの成果

  • 特筆すべきもっとも顕著な成果は、ワシントンと28ヶ所の現地事務所双方の連帯センターの職員の間に幅広く意識が高まったことである。ほとんどの職員は次の更なる研修にまだ参加していないが、概念をより十分に理解するため、そしてジェンダーを現在及び未来のプログラムの企画に統合するための有効な構成要因を先取りするために、参加する準備をしている。
  • 明文化された連帯センターのジェンダー政策が作成された。このジェンダー政策は定期的な職員研修と継続的にプログラムの企画を検討するジェンダー評価委員会の設立を求めている。

教訓

  • ジェンダー・プログラムは、組合員を増やす必要性、あるいは女性労働者が多数を占めるセクターの組織化への試みという理由から、労働組合が女性労働者を存続のための鍵と見なす連帯センターでもっとも強かった。
  • 連帯センターからの一貫した支援がジェンダーの公平性に対してのコミットメントを促進する影響を持った。目標設定だけでは職場での公平性を促進するのに十分ではないことが分かった。連帯センターのプログラムの全ての側面にジェンダーの意識を構築する長期的な組織的アプローチが必要である。
  • プログラムが女性と男性の異なるニーズや優先順位に特別の注意を払わなかった場合は、女性と男性のニーズ等の違いがプロジェクト活動に、あるいは成果に反映されなかった。ジェンダーに敏感なプログラムの企画と実施において、女性と男性の双方がプロジェクトの利益に対する適切なアクセスを持つことを保証することが重要である。
  • 全ての労働者のために状況を改善することは必然的に女性労働者の状況を改善することになるという前提は、女性の賃金、労働時間、労働条件を悪化させる傾向があるジェンダーによる差別による影響を見過ごしている。その結果、男女双方にとっての利益は差別という障壁によって押し下げられ、利益の増加はより低い開始位置から遂行されなけれ ばならない。
  • 明文化されたジェンダー政策はジェンダーに敏感でジェンダーの公平性を促進するプログラムへの組織的なコミットメントの証拠となる。
  • 定期的に行う職員研修は職員の養成に必要である。本部職員のために、始めの一日の定期ワークショップ、そして地域の現地職員のための同様の研修後に、年一回の比較的短い補習セミナーを行うことが推奨される。
  • ジェンダーによる影響を検討するためのチェックリストは、全てのプログラム管理者がプログラムの計画を立てる際にジェンダー課題を意識することを主流化するために、作成されるべきである。
  • プログラムの検討、地域のジェンダー能力を強化するために地域に資料の紹介、年次研修の計画と実施の監督、また、新しい考えや課題の監視のために地域を越えた常任本部委員会が設立されるべきである。
  • 連帯センターは、職員と関係者の研修が連帯センターの明文化されたジェンダー政策を実践するための最も重要な取り組みであると信じる。本部でのジェンダー検討委員会はジェンダーができる限りプログラムの企画に組み入れられるために必要なプログラム監督を提供するだろう。

模倣性

  • ジェンダー評価プロジェクトは他の機関によっても適用可能である。
  • 問い合わせ:米国国際労働連帯センター(American Center for International Labor Solidarity)
  • Tel: 202-778-4500
  • Fax: 202-778-4525
  • E-mail: Imacdona@acils.org
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019