ジェンダーの主流化:アジア太平洋地域の良い事例

〔事例1〕

プロジェクト名:
石油ガス技術移転におけるジェンダーの主流化[中国とカナダ]
期間:
1993-2001年
関係機関:
中国海外貿易経済協力省、カナダ国際開発庁(CIDA)、中国石油公社(CNPC)、 中国側の5つの参加研究機関及び研修センター、トランスカナダ・パイプライン、D&S国際コンサルタント
資金援助機関:
カナダ国際開発庁

プロジェクトの概要

石油ガス技術移転プロジェクトの目的は中国の石油ガス資源開発への支援であった。このプロジェクトは中国とカナダにおける技術の移転と研修から成る。研修は中国の選ばれた5つの研究機関の技術的な能力を開発することに焦点を置いた。CIDAのジェンダー主流化政策は、女性の参画を目的にもつプロジェクトの企画に役立った。

プロジェクトの目的

  • プロジェクトにおける人材養成の体系的アプローチの一部として、ジェンダーの主流化の目的は中国とカナダの石油ガス産業において平等なパートナーとしての女性の参画を向上させること。
  • CIDAの政策目標は、英語研修、技術移転、管理開発を含み、石油ガス移転プロジェクトにおける全ての技術管理レベルで女性の参加を30%にすること。
  • プロジェクトの参加者全てに女性問題に対する意識を向上すること。

プロジェクトの活動

  • 基本データを作成するため、プロジェクトの企画段階において、参加した各研究機関はジェンダー分析を行った。成果を評価するために、プロジェクトの最終年にプロジェクト実施機関が追跡調査を行った。
  • ジェンダー分析に基づき、全ての研修プログラムにおいて30%の女性の参画という目標値が設定された。北京を本拠地とするプロジェクト管理者は、研究機関が提示した上級研修の候補者により目標値の達成することを担当した。
  • 各研究機関では連絡をとることを目的としたコーディネーターが任命され、プログラムと研究機関における女性の参画についての監視、報告、活動の計画策定を行った。
  • プログラムの中間で、5つの研究機関がそれぞれ、専門職/技術職の女性と女性経営者から構成する女性専門職開発委員会(Women's Professional Development Committee (WPDC))を設立した。WPDCは女性の専門性を支援する活動を計画し、たとえば英語とコンピュータ技能の研修、ジェンダー意識研修、上級専門職の女性によるセミナーなどを行った。
  • CIDAはジェンダー研修・ワークショップを各研究機関からのコーディネーターのために実施した。
  • カナダでは一ヶ月にわたる男女平等意識の専門職配属プログラム(Professional Attachment Program(PAP))を全ての組織、国家プロジェクト管理組織及び中国石油公社からの参加者のために開催した。このPAPはジェンダー分析手法とアプローチ、カナダにおける状況、エネルギー産業の雇用者とエンドユーザーとしての女性、多様な管理、管理の変化、行動計画を扱った。

プロジェクトの成果

  • 女性の参加を30%にするという目標値は、全ての参加した機関の中で達成され、あるいは超えるものもあった。
  • カナダの技術研修プログラムに参加した多くのものは、男性も女性も、研修後に昇進した。女性参加者は30%の目標値により、参加できなかった多くの機会を得ることができたと感じた。
  • 女性の就業の機会が改善した。具体的には、プロジェクトで支援された3人の女性が昇進して指導的立場についた。また一人は大学の学部長に昇進した。
  • 特に女性及び参加した研究機関の上級管理職のジェンダー課題と差別に対する意識が改善された。ある研究機関のWPDCはジェンダー課題に取り組む6つの異なるグループ を作り、そのうち一つは男性のためのグループを作った。男性のグループは、変化する伝統的な男性の態度とともに、男性が少ない状況、例えば外国語学部の状況を取り扱った。
  • 参加した研究機関は、研修による女性の専門性の開発の必要性と昇進の重要性が、女性の能力を認めるとともに、女性の能力実現を可能にすることを認識した。
  • ある研究機関は、就職を見つけることが非常に難しいことを認識し、定期的に女性卒業者に組織的に就職相談を行っている。
  • 男女平等のイニシアティブに関する当初の懐疑的な態度は、イニシアティブには、プラスの専門的利益(より質の高い人材)があり、女性が尊重され意欲が向上したことが全ての参加者によって認識されたことにより、プロジェクト終盤には克服された。

教訓

  • 男女平等を促す組織的な政策は、プロジェクトに男女平等の目的を確実に組み入れるために不可欠である。プロジェクトチームの指導者とプロジェクト実施機関の高いレベルからのコミットメントが、女性に利益となる政策を確実に実施するために重要である。
  • 女性の参画に現実的な目標を設定することが重要である。女性のための研修の場の割合を確保したことは、参加した研究機関が十分に質の高い女性候補者を確実に確保していなければならなかった。目標達成状況について、定期的に報告するということが、達成した目標を維持するのに役立った。
  • 参加した研究機関において、ジェンダーに対する敏感さの向上とジェンダー意識の向上は、女性の参画のための目標設定についての議論と同時に行われるべきである。
  • プロジェクト期間(8年間)は女性の参画に対する主な障壁に取り組むために相当な時間がかかったことを意味する。この事例では、女性がカナダでの研修に参加するための英語の修得に時間がかかった。比較的に長い実施期間のために、参加者は昇進という観点からプロジェクトの成果を見ることもでき始め、従って目標達成を確かなものにするために、仕事に励むことが奨励された。
  • WPDCのネットワーク作り、情報の共有、特定のレベルへの継続的な支援は、持続可能性の点から重要である。

模倣性

  • このプロジェクトのジェンダーの主流化の要素は、他の分野や他のエコノミーでも模倣可能である。
  • 問い合わせ:中国四川省南充南西石油大学学部長室(Office of the Dean, Southwest Petroleum University)
  • Tel: 86-817-2642905
  • CIDA中国局上級プログラム職員(Senior Program Officer, China Division CIDA)
  • E-mail: ron_schatz@acdi-cida.gc.ca
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