APECにおける女性の統合のためのフレームワーク(仮訳)

  1. ジェンダー分析

    ジェンダー分析とは何か?

    ジェンダー分析は、APECの活動とプロセスの主流に女性を統合するためのAPEC のアプローチの重要な要素である。それは、以下のことを行う方法である。

    • 男女の生活の相違及び女性自身の間の多様性について特定化し、理解すること(例:あらゆるコミュニティもしくはエコノミーにおける、現行の経済、社会、文化、環境、組織的及び政治的な構造の中での多様な状況、責任、社会的関係及び地位)。
    • 政策、プログラムもしくはプロジェクトが女性と男性、少女と少年にどのように異なる影響を与えるかを評価すること。
    • 定性的及び定量的両方の性別データの収集と活用を通じて、どのように、そしてなぜ男性と女性が異なる影響を受けているか比較すること。
    • 計画の立案、企画、実行及び評価のプロセス全般にわたってジェンダーへの配慮を取り入れること。

    ジェンダー分析の付加価値とは何か?

    • 男女の生活の異なる現実に関するさらなる包括的な知識と意識
    • APECの目標と男女平等の達成に至る、情報が与えられた形での意志決定
    • 政策やプロジェクトのデザイン、実行、監視、評価及びコミュニケーションの効率向上と改善
    • 女性及び男性にとって、意図した結果や均等な成果を達成するためには、異なる戦略や措置が必要であるとの認識
    • APECにおける女性の統合のためのフレームワークを調整、実行及び監視するためのより効率的なAPECのプロセスやメカニズム

    ジェンダー分析をどのように実行するか?

    ジェンダー分析は、政策もしくはプロジェクトレベルでの適用が可能である。この両ケースにおいて、政策とプロジェクトの結果により、ジェンダーの関係が変わるのみならず、APECエコノミーの今後の成長と繁栄において、女性と男性双方にとっての公平な経済的機会及び双方の参画が強化される。ジェンダー分析を支援するために、「APECジェンダー分析ガイド(APEC Guide for Gender Analysis)」が利用可能である。

  2. 性別データの収集と利用

    性別データとは何か?

    性別データとは、女性・男性別及び少女・少年別に情報を提示し、性別に横断的に分類されたデータのことを意味する。性別データは、識字度、教育水準、ビジネスのオーナーシップ、雇用、賃金格差、扶養者、家屋と土地の所有、融資や信用、負債といったすべての領域、側面における女性と男性の役割、現実、条件及び状況を考慮するという考え及び手段に基づき収集される。

    なぜ性別データを収集するか?

    性別データの欠落は、我々のエコノミーに対する、人口の半分の潜在的のみならず実際の貢献を覆い隠してしまい、効果的な政策の開発を阻害することもあろう。我々は、APECがデータ収集の方法及び過程における格差を明確にし、費用上最も効率的な方法でこれらの格差に取り組むよう勧告する。 各メンバーエコノミーにおいては、可能な部分については国際的に認められた基準と比較が可能な、自身の公式の性別データベースを構築することが望まれる。(APEC女性問題担当大臣会合、マニラ、1998年)

    性別データは、ジェンダー分析及び女性と男性の異なる経済的貢献、境遇及び現実を理解するために不可欠である。性別データは、女性が、有償・無償両方の能力において社会及び経済活動の全ての局面にどれだけ貢献しているかの情報を提供する。性別データの活用により、APECのフォーラムが、エコノミーにとってだけではなく男性及び女性にとって効率的で公平で有益な活動を決定し遂行することができ、そして、その仕事から最大の便益を得ることができる。

    性別データは、以下のことに活用できる。

    • 女性と男性の異なる状況を時間的な変化を含めて特定すること。
    • APECの活動が女性と男性に与える影響を考慮し、その影響を追跡すること。
    • 問題を特定、又は明確化し、選択肢を開発し、女性と男性双方にとって最も効果的で有益な選択肢を選択すること。
    • 地域的な経済危機のような出来事が女性に与える影響をより完全に理解し、出来事に対応して活動を形成することを支援すること。
    • 資源と努力をより公平な形で配分すること。
    • 性別の結果と成果を評価し、監視すること。
    • 指標と定期的なデータを用いて女性の進歩や不足を示すこと。

    性別データを用いたジェンダー分析がなされる場合に、より公正な結果を得ることが期待できる。経済上の進歩に対する男女の現在の又は潜在的なインプットの範囲が分かり、それが経済上の意志決定に活用される場合に、エコノミー、企業、人々すべてが便益を受ける。

    APECフォーラムにとって性別データの収集と利用がどのように改善されるか?

    メンバーエコノミー及びいくつかのフォーラムでは、現在、その領域の範囲において何らかの性別データを収集し利用している。個々のエコノミーにより収集された統計や情報に加え、国際機関や研究・学術センター、ビジネス・非政府の機関など、多くのデータの出所元がありうる。

    国連や世界銀行などによる国際的イニシアティブはエコノミーの性別データ収集の改善のための支援を既に行っている。データ収集の基準と最良の実行例も十分に文書化されている。APECの性別データの収集と利用のガイドは、APECの優先事項を支援する有用な性別データの出所及び例を提供するだけでなく、エコノミーを支援するために利用可能なリソースに関する情報をも提供する。

    いくつかの性別データの収集及び利用についての取組が、既に多くのAPECのフォーラムにわたって優先事項の分野において進行中である。

    他の分野において性別データの収集と利用を増加させることにより、APECが経済的発展を促進する機会が増えることもあり得る。APECのフォーラムは、女性と男性の状況の違いを分析するために、多くの異なる形態のデータを利用することができる。定性的データや調査研究も定量的統計と同様、有用な洞察をAPECのフォーラムに提供する。APECのフォーラムが特定のプロジェクト及び政策を開発するか、また、見直すときには、どのようなデータを収集すべきか、個々にそしてひとまとめにしても考えることが適当である。分類されたデータを民族、年齢のような他の要素を含むまで拡張することは、APECの情報基盤にとってはさらに有益である。APECが収集できるデータの一例としては、APECのフォーラムとAPECの指導的役割における男女の参画率がある。その他の例については、「APEC性別データ収集・利用ガイド(APEC Guide on the Collection and Use of Sex-Disaggregated Data)」において提供している。

  3. APECにおける女性の参加

    なぜ女性をAPECに参加させるか?

    1998年のAPEC女性問題担当大臣会合において、すべてのAPECのフォーラムにおける女性の参画を促進及び奨励することが勧告された。特に言及されたのが、意志決定への女性の参画についてであった。

    APECのフォーラムにおける女性と男性の参画についてのデータは不完全であり、手に入りにくい。例えば、大抵の参加者リストは性別ではない。しかし、数多くのAPECの会合と活動の出席者リストによると、女性は、参加者の約4分の1を構成するに過ぎないことが示唆される。これは、人材養成ワーキンググループ(HRDWG)のプロジェクトと活動の現状把握調査により報告されたものとおおよそ同じ程度である。

    1998年と1999年、委員長、ワーキンググループ議長、会議の主催者及びその他のリーダーにおける女性の参画の割合は17%から28%の間で散らばっていた。これらの数値は、APECにおける女性の参画状況を監視する上での、おおよその参照値となる。

    どのように女性をより関与させるか?

    女性の関与とは、APECのフォーラム、活動及びプロジェクトにおける女性の参画のことをいう。女性は、政策やプログラムを形成し、実行する意志決定者、首脳、委員会、ワーキンググループもしくは他のAPECにおける集合体の長として、また、個人の立場であるいは組織として(APECのビジネス諮問機関(ABAC)や女性指導者ネットワーク(WLN)のように)APECやメンバーエコノミーに相談を受けるパートナー及び専門家として参画することが可能である。

    APECにおける女性の参加は以下を通じて改善しうる(APECにおける女性の参加についてのガイド(APEC Guide on the Involvement of Women)参照)。

    • エコノミー及びAPECのフォーラムに、その活動及びプロジェクトおける女性の、特に意志決定者としての存在や参加を増やし、それらの会合や他のフォーラムの、特に高級事務レベル、閣僚及び首脳のようなハイレベルの会合への代表者にさらに女性を含めることを奨励すること。
    • APECにおける女性の関与の現状を分析することにより。また、女性の参画を制限する要因に取り組むことによって。
    • フレームワークの実行により女性の参加の拡大が広がるようなAPEC及びメンバーエコノミー内の環境づくりの促進を通じて。
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