先輩からのメッセージ

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春本晃江プロフィール写真
  • 春本 晃江 さん
  • 奈良女子大学理学部教授
  • 研究分野:細胞生物学、原生動物学
  • 内容:原生動物繊毛虫を用いた細胞間相互作用の研究
  • 所属学会:日本原生動物学会、動物学会、分子生物学会
  • 主な論文:Exp. Cell Res., 137:476-481 (1982), Exp. Cell Res., 190:65-68 (1990), Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 98:14446-14451 (2001), J. Cell. Sci., 118:2735-2741(2005) など数十編
  • 賞など:日本原生動物学会賞(平成14年)受賞

理学系分野を選択した時期・理由

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体が小さくて勉強でも運動でも人より遅れがち、小さい頃の私はそんな子供でした。みんなについていくのが精一杯でほんとうに取るに足らない存在だったのです。
そんな私でしたが、中学に入ったときにバレーボール部に入りました。私は今度こそみんなに遅れたくないと思い、早朝も学校が休みのときも必死で練習しました。その結果、1年生の時に2年生のチームに入れてもらえたのです。このとき、何でも一生懸命にやれば、私でも何とかなるかもしれないと思いました。
小さい頃から私は「人はなぜ生きているのだろうか」「生きているということは死んでいるということとどう違うのだろうか」「どうして世の中には男性と女性がいるのだろうか」といったことをとりとめもなく考える子供でもありました。身近な家族が亡くなったり、3人の弟とは親の期待感が異なるということを肌で感じたことも理由のひとつだったと思います。
このような疑問を解決するためにはどのような分野に進めばよいのだろうかと悩みました。文学や宗教を学ぼうと考えたこともありましたし、医学部を志したこともありました。しかし、高校で「生物」を学ぶうち、自分のやりたいことは「生命とは何か」ということを科学的に考えることだと気づき、それには理学部生物科学科が最も適していると思いました。
私の学んだ高校はいわゆる進学校ではなかったので、数学や英語の先生にお願いして添削していただいたり、予備校の高校コースに行って勉強しました。当時は国立理系を志す女子高生は少なく、模擬試験で男子高校生と席が隣になるとあからさまに嫌がらせを言われたり、家族にも反対されましたが、目的を達成するためには何を言われようと平気でした。
大学で学んだ後、大学院に進学し学位を取りました。その後、博士研究員としてアメリカで2年半を過ごしました。日本に戻ってきて医科大学で職に就きましたが、やはり自分は生物学の分野で研究をしたいと思い、日本では職が見つからなかったので、イタリアに行き客員研究員として働きました。もう日本に戻って来れないかもしれないと思ったので、イタリアでもう一度大学院に入りなおし、学位を得ました。イタリアで6年たったとき、現在の奈良女子大学に職を得て帰国し、今日まで同じ大学で原生動物の細胞間相互作用の研究を続けています。

現在の仕事(研究)の魅力やおもしろさ

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生物学は「生命とは何か」という疑問を誰にでもわかる科学の言葉で解き明かす学問だと思います。生命科学はこの半世紀の間に飛躍的な発展を遂げました。生物は進化の過程で作り上げられてきた自然の巧みな試行錯誤の結果です。今や、生命現象という神秘的でつかみどころのないと思われていたものが、分子のレベルで理解できるようになってきています。この時代に生物学を学ぶことができてよかったと思います。日々世界中で新しい研究成果が報告され、学術雑誌を手に取るたびに、これまでの常識がくつがえされ、生命の不思議さ、生物のしたたかさに感動を覚えずにはいられません。
私自身は原生動物を用い、性の起源とも言える「接合型」の研究をしています。原生動物繊毛虫では、雄と雌のような外見的な区別はないのですが、「交配」することのできる型があります。型の違うもの同士を混ぜ合わせるとくっついて「接合」が起こります。この接合開始機構の研究をしています。このような研究を通して「どうして性があるのか」という問題について考えています。
私は、生物を観察して、現象の中から真実を見つけていくことが生物学をやる醍醐味だと思っています。静かな研究室の中で顕微鏡に向かい、生物がふともらすつぶやきを聞くことができたときは、それがどんなに小さなことであっても何にも勝るよろこびです。
私は、いま、子供の頃からの疑問を、研究室の学生さんたちと共に解き明かすことのできる職に就いています。この職を選ぶことができて心からしあわせだと思っています。同じ分野で興味を分かち合える友人が世界中にいます。国内や国外の学会で顔を合わせ、生命に関する人類の新しい知識を共有することがおもしろくてたまりません。

女子中高生・女子学生の皆さんへのメッセージ

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一昔前の女性にとって理系に進むことは家庭人になることとは正反対の道で、周囲の反対を押し切ってというイメージが強かったのではないでしょうか。私が高校生の頃も多少そのような考え方が残っていたように思います。 女性だからという理由で理系の分野に行くことをためらってはいませんか。日本では科学を志す女性はまだまだ数が少ないですが、外国に行くと、科学の分野では女性も男性も区別なく共に協力しています。米国やイタリアでは、生命科学の分野では、むしろ女性の大学院生や研究者の方が多いくらいです。私も米国へ行って初めて女性であるという意識から開放されたように思います。皆さん方は、もう、そのような意識にとらわれることはないと思いますが、もし少しでも「女性だから(科学には向いていない)」と考えていたら、そのような考えはすぐに捨ててください。科学の世界であなたの能力を開花させてください。科学は一般に思われているように、暗く無味乾燥としたものではなく、叙情あふれる不思議に満ちており、生命の神秘さに心をゆり動かされることが多いのです。

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生物と日々向き合い、生物が語りかけることにあなたも耳を傾けてみませんか。その中に生命の秘密が隠されているのです。それを見つけるのは男性も女性もありません。むしろ生命を産む女性だからこそ、生物のあらわす現象に敏感で生物学の研究に適しているかもしれません。生命科学の分野では若いみずみずしい感性が必要とされています。 さあ、勇気をだして!科学の世界はみなさんを待っています。

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