先輩からのメッセージ

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間陽子プロフィール写真
  • 間 陽子(あいだ ようこ) さん
  • 独立行政法人理化学研究所
  • 分子ウイルス学研究ユニット ユニットリーダー

21世紀は人類がその存亡をかけてウイルスと戦う世紀です。現在、世界の死亡原因の約3割が感染症ですが、今後その割合は急上昇する恐れがあります。近年、新たなウイルス感染症が次々と現れているからです。私はその代表である年間約300万人もの命を奪っているエイズウイルスや畜産界に甚大な被害を及ぼしている白血病ウイルスなどのレトロウイルスを研究しています。これらのウイルスの複製機構とエイズや白血病発症機構の全容解明を目指すと共に、これらのレトロウイルスの新しい制御法の確立と、これら疾患の新たなる予防、診断と治療の道を拓くことを目指しています。将来は、多くのウイルスに共通する複製メカニズムを標的にした薬を開発し、新たに出現するウイルスに対抗することを目標にしています。

農学系分野を選択した時期・理由

小学校五年生の時に読んだ『キュリー夫人伝』に影響をうけました。屋根裏部屋でパンをかじりながら、全身全霊を注いで物理学や化学の勉強に打ち込むマリーの姿を思い浮かべる度に、自然現象を勉強することは野山を探索したり、野いちごやグミの実を摘んだり、月や星を眺めるのと同じように、わくわくして楽しいこと、好奇心をかきたてられる魅力的なことだと感動しました。私が理系の中でも獣医学を専攻したのは、獣医師である父の影響と、そして、幼い頃から母に、「何か一つ秀でた技術を身につけて、自立した女性になりなさい。」と言われたためです。農林水産省で動物の育種をやっていた父は、速く走る馬を育てたいという夢をかなえるために公務員をやめて、青森で競走馬の牧場を始めました。冬になると交通手段は馬ぞりしかないような雪深い片田舎です。育種学、飼料学、草地学、運動学、衛生学などを勉強し、研究に研究を重ね、"速く走れる馬をつくることは芸術だ"と丹誠こめて馬を育てる父の姿から、一つの事を成し遂げようとする純粋性、情熱や信念、何かを生み出すことの楽しさを学びました。
ウイルス学者への転機は、獣医学部へ進学した直後に、英国で口蹄疫が発生した様子を映し出した衝撃的なビデオを見たことがきっかけです。口蹄疫は蹄のある動物に感染して死に至らしめる、とても怖いウイルス感染症です。感染した動物だけでなく、周囲十数km四方の、感染の可能性のあるすべての動物が焼却処分されました。それまで、尊敬する父の後を継ぎたいと思っていましたが、焼却処分される動物たちの様子を見ていると涙があふれてきて、動物の命を救えるウイルス学者になろうと決めたのです。

現在の仕事(研究)の魅力やおもしろさ

間 陽子(あいだ ようこ) 写真

研究には、未知の世界に挑戦するスリルとサスペンスがあります。自分にしかできない新しい発見、自分のデータをみて身震いをするほどの感動を味わうことができたら本望です。
自分の好きな事が自分の仕事になっていることが一番の幸せです。私は大学の授業の中で微生物学(ウイルス学)とそれに関する実験に最も興味を持ちました。その好きな対象が自身の一生涯の研究テーマになりました。大学院で始めた牛白血病ウイルスの研究を、就職した研究所でも続けることが出来た上に、その研究を発展させ、現在では類似のエイズウイルスの研究を始めています。情熱の全てを注げるライフワークを持てたことが幸運だと思います。ですから、仕事をすることは全く苦にならず、仕事をすることによって、旭日の太陽が自分の体に昇るかのようなロマンと力が沸き上がってきます。

女子中高生・女子学生の皆さんへのメッセージ

研究職は、好きというだけではやり続けることはできません。もっと好きなことができたらやめるのか?この仕事は、使命感無くして続けることはできません。自分の興味やエゴのために生きていたのでは、研究者として普遍の真理を追求し続けるような使命感は持てません。人類のための研究なのか。地球の未来のための研究なのか。「自分がやらなければ誰がやる。地球上に自分一人しかいなくなっても、やり続けるんだ。」と思える使命に巡り会うことが大切です。宇宙を構成する全てのもの、草も、木も、空も、雲も、月も、太陽も、等しく使命があります。その中で、自分の意志で自分の使命を選べるのは人間だけです。人間に生まれたことに感謝し、人類の責任のために生きてゆきたいと日々願って研究をしています。
私の好きな言葉に「桜梅桃李」があります。研究者として、桜、梅、桃、李(すもも)らしく、自分しかない個性を研究として開花させることができたら幸せです。地球に比べたらちっぽけな存在のように思うかも知れませんが、人間には誰でも自身を取り巻く環境を変えてゆけるすごい力が備わっているのです。ですから、どんな困難が立ちはだかっても自分を信じて前進すれば、自分らしい花を咲かせる道が必ず拓けます。

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