理工チャレンジ 女子中高生・女子学生の理工系分野への選択

先輩からのメッセージ

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先輩に質問!
田中美栄子イメージ
  • 田中 美栄子さん
  • 鳥取大学 大学院工学研究科 教授

知識工学講座に所属し、学部生向けに「人工知能」「数値計算法」「形式言語とオートマトン」「情報科学概論」等の講義をしています。大学院生向けには、修士課程用に「確率的情報処理」「予測と意思決定」博士課程用に「複雑系科学特論」を教えています。研究テーマとして、株価など金融価格の時系列解析と統計的予測、ランダム行列理論を利用した乱数度測定法の開発とその応用、人間乱数の研究等を学生諸君と一緒にやっています。日本物理学会と情報処理学会、IEEE、日本応用数理学会に所属しています。

工学系分野を選択した時期・理由

高校時代は文系も理系も好きだったので進学にはちょっと迷いましたが、きちんと習える機会に理系の勉強をしておくのが良いと考え、科学の基礎としての物理学の勉強から始めました。大学の高学年から大学院にかけては理論物理学、特に高エネルギー素粒子理論を専攻しました。大学院の途中でアメリカに留学し、ニューヨーク州の北部にあるロチェスター大学で博士号をとりました。学位論文は日本語で言うと、「QCD和則と擬スカラー中間子」となります。この内容はPhysical Review Dというアメリカ物理学会の論文誌に1984年に発表しました。そのあと、アメリカの3つの大学でポストドクや助教授を経験しました。3つ目の大学でテニュアが取れたのでそのままアメリカに定住しようかと思いましたが、そのころ盛んになってきたコンピュータサイエンスに興味を持ち、隣の大学の大学院に入って正式に勉強し始めたのです。この頃日本の大学で雇って貰えそうになったので帰国しました。最初に就職した大学では社会情報学をやることになったので、社会問題のシミュレーションをいくつか考えました。次に移った大学は工学部の情報工学科だったので、コンピュータサイエンスを勉強した経験がとても役に立ちました。今いる所は帰国後3つ目の大学ですが、2つ目とほぼ同じ、工学部の知能情報工学分野です。学生さんたちと一緒にランダム系の数理に関する研究を行っています。

現在の仕事(研究)の魅力やおもしろさ

大量のランダム時系列(株価など)をコンピュータで自動処理して、そこから規則を見出す仕事は、根気は要るけれども、とてもワクワクすることも多いのです。ワクワクとガッカリの繰り返しともいえます。一見何をやっても駄目そうに見えるものが、苦労の末にうまく行った時には、発見の喜びを最大限に味わえます。また、人間乱数は、人に乱数を作らせるとその人特有の癖が出て、それをもとにその人の体調や精神状態を推定したり、個人判定にも利用できる可能性があるので、これは特に装置も必要とせず、誰にでもどこでもできるのでいろいろな用途が考えられます。いずれも利用価値だけでなく、研究テーマとして熱中できることが良い成果をもたらすと考えています。

女子中高生・女子学生の皆さんへのメッセージ

私たちの学生時代には、女子が理工系に進むことに協力的でない大人が多かったものです。時代は変わり、理系女子が推奨される時代になりましたが、社会の仕組み自体はそう簡単に変わるものではありません。初めはちやほやされても、ある時点で途方もない困難に遭遇する人も多くいます。それでも前向きに進んでいれば、きっと何らかの形でそれは解決するものです。困難を乗り越えたあとは、そのために努力したり思い悩んだりしたことが、実は自分が大きくなれるチャンスだったのだと思えるようになるでしょう。

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