第4節 性犯罪への対策の推進

本編 > II > 第2部 > 第8章 > 第4節 性犯罪への対策の推進

第4節 性犯罪への対策の推進

政府では,性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議を開催し,令和2(2020)年6月11日に「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を決定した。これに基づき,令和2(2020)年度から4(2022)年度までの3年間を,性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」として,刑事法の在り方の検討はもとより,被害者支援の充実,加害者対策,教育・啓発の強化等の実効性ある取組を速やかに進めていくこととしている。

警察では,性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置や性犯罪指定捜査員の指定,警察官等を対象とした研修の充実等,被害者が安心して被害を届け出ることができる環境づくりに向けた施策を推進する。また,関係機関・団体と連携を図りながら,性犯罪被害者のニーズを十分考慮した支援に取り組む。さらに,警察庁において,地方公共団体等と連携して,地域における関係機関・団体間の連携を促進するなどの取組を行う。

加えて,13歳未満の子供を被害者とした強制わいせつ等の暴力的性犯罪で服役し出所した者について法務省から情報提供を受け,各都道府県警察において,その所在確認を実施しているほか,必要に応じて当該出所者の同意を得て面談を行うなど,再犯防止に向けた措置を講じる。

内閣府では,地方公共団体の職員や性犯罪・性暴力被害者の支援を行う相談員を対象としたオンライン研修を行う。また,全国共通の短縮番号によるナビダイヤルを年度内に導入し,被害者がより相談しやすい環境を整える。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターについて,センターの運営の安定化及び質の向上が図られるよう,性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金により,24時間対応の推進や支援員の処遇改善等を含め,各都道府県の実情に応じた取組を支援し,性犯罪・性暴力被害者支援の更なる拡充を図る。

また,若年層の女性に対する性的な暴力である,いわゆるアダルトビデオ出演強要問題や「JKビジネス」問題等については,平成29(2017)年5月に策定した「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する今後の対策」等に基づき,SNSや薬物(レイプドラッグ)等に起因する問題も含め,引き続き,問題の根絶に向けて取組を推進する。

法務省では,平成29(2017)年7月に施行された,強姦罪の構成要件及び法定刑の見直し等並びに強姦罪等の非親告罪化を内容とする刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)の附則第9条に基づき,性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための刑事法の在り方について検討を加えるため,「性犯罪に関する刑事法検討会」を開催し,法改正の要否・当否について幅広く議論を行う。また,刑事手続の運用の在り方に関しても,被害者の事情聴取の在り方について,より一層適切なものとなるような取組を更に検討する。加えて,性犯罪者に対する再犯防止施策の更なる充実に向け,刑事施設及び保護観察所において性犯罪者に実施している専門的プログラムの更なる拡充や出所者情報の把握等による新たな再犯防止対策について検討を行う。

文部科学省では,子供を性暴力の当事者にしないための教育を推進するため,わかりやすい教材や啓発資料を作成するとともに,学校側で相談を受ける体制を強化し,相談を受けた場合の教職員の対応についての研修の充実を図る。

また,児童生徒等に対してわいせつ行為に及んだ教員については原則として懲戒免職とすることや告発を遺漏なく行うことを徹底するよう,改めて各教育委員会に指導するとともに,過去に児童生徒等へのわいせつ行為等を原因として懲戒処分等を受けた者の教員免許状の管理等の在り方について,より厳しく見直すべく検討する。

厚生労働省では,医師,保健師,精神保健福祉士等の医療従事者等を対象に,「PTSD対策専門研修」を実施する。

また,都道府県,指定都市の精神保健福祉センターにおいて,性犯罪によってPTSD等の精神的な症状が引き起こされた者に対して,精神保健福祉に関する相談支援等を実施する。

さらに,若年被害女性等に対して,公的機関と民間支援団体が密接に連携し,アウトリーチによる相談支援や居場所の確保等を行うモデル事業を実施する。